説明

ニット製家具

【課題】組み立て部材の形状や製作工程が煩雑とならず、製作が簡単でかつサイズ調整ができるダンボールで形成された土台部を有するニット製家具を提供する。
【解決手段】帯状のダンボールをロール状に巻き所望のサイズに形成した土台部と、横編機で形成した無縫製ニットであり、開口部の周縁に袋状組織を配した筒面と、その袋状組織内に挿通する緊縛可能な紐部材と、複数の三角形で形成された閉じ面による袋状のニットカバー部とを備えた、製作が簡単でかつサイズ調整できるニット製家具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニットカバーに覆われた土台部がダンボールで形成された家具に関する。
【背景技術】
【0002】
一枚のダンボール紙等板紙を用いて、座部、背もたれ、肘掛け部、脚部等に折り目を設け、折り目で折り曲げて組み立てをできるようにした組み立て椅子が文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−21199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この椅子は立体物として一枚の板紙で形成できるものの、山折りと谷折りを多数組み合わせて複雑な形状に形成するため、組み立て部材の形状と製作工程が煩雑となる。また、製作後の椅子のサイズは決まっており、設置スペースに合せて小さくするなどのサイズ調整機能も有していない。
【0005】
本発明では、製作が簡単でかつサイズ調整できるダンボールで形成された土台部を有するニット製家具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のニット製家具は、帯状のダンボールをロール状に巻き所望のサイズにした土台部と、一方に閉じ面が形成され他方が開口部となる袋状のニットカバー部とからなり、該ニットカバー部で前記土台部を覆ったことを特徴とする。
【0007】
また、前記ニットカバー部は、前記開口部の周縁に袋状組織を配した筒面と、複数の三角形で形成された閉じ面を備え、袋状組織内には緊縛可能な紐部材を挿通することを特徴とする。
【0008】
更に前記ニットカバー部の筒面と閉じ面は、横編機で形成した無縫製ニットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、帯状のダンボールをロール状に巻くことで土台が簡単に形成でき、且つニットカバーは、伸縮性を有するためユーザーの好みにより土台のサイズが変化しても装着することができる。
【0010】
本発明によれば、ニットカバー部の開口部の周縁に袋状組織を設けることで、形成後にゴム糸などの伸縮糸や紐部材を挿通してニットカバーを土台に固定することができる。また、複数の三角形で形成された閉じ面を形成することで、円形である土台の上面に対して隙間なく密着することがきる。
【0011】
本発明によれば、ニットカバー部は縫製することなく形成することができ、形成された編目は均等な伸縮性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例である椅子の全体写真である。
【図2】本発明の実施例である椅子の底面写真である。
【図3】本発明の実施例である椅子のニットカバー部の、型紙の一部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の一形態としての椅子1の全体写真である。また、図2は、図1の閉じ面3に対向する底面の写真である。図1で示す頂部9が中心付近にある閉じ面3を座面とし、図2に示す底面7を床側にして設置する。ニットカバー部2と、帯状のダンボールをロール状に巻き形成された土台4と、筒面8に繋がる開口部端部の袋状組織5内に挿通して縛った紐6で構成された椅子1を示している。ニット製家具は、様々な分野に使用できるが、特に椅子やテーブル、置き台など、ファーニチャー関連で、簡単に筒径を調整して大きさを変更したり、カバーを交換したりできるコーディネート可能な製品として適している。
【実施例】
【0014】
本実施例ではニット製家具としての椅子を例に説明を行う。図1、2で写真に示す椅子1は、土台4を準備した後、別途、横編機を用いて無縫製に形成されたニットカバー部2を覆い被せ、ニットカバー部2の開口部の周縁に設けた袋状組織5に紐6を挿通して縛っている。
【0015】
土台4の形成は、帯状のダンボールをロール状にユーザーの所望の筒径となるように巻いている。土台4の筒径は、巻き数に応じて簡単に調整することができる。また、特別な工具を使うことは必要ない。ここでは、ダンボールの種類で、片面ダンボールを使用している。片面ダンボールは両面タイプに比べて若干強度は落ちるものの、折り目なく曲げることが簡単にでき、非常に巻きやすい。また、高さ方向には片面ダンボールの丈を調整し、座面の筒径と合せて自由に変更が可能となる。ダンボール素材であるため、カッター等で簡単にカットできる。
【0016】
また、限られた長さの片面ダンボールで筒径を大きくするためには、筒径の中心に円筒状の芯を用いてもよい。ニットカバー部2で覆うために、見栄えの問題もない。椅子1の底面に位置する袋状組織5内に紐6や伸縮糸を挿通し、ニットカバー部2を縛って動かないように固定することができる。本実施例では、紐6を挿通しているが、伸縮強度が高いゴム糸を用いてもよい。
【0017】
図3は、本発明の実施の一形態としての椅子1のニットカバー部2の型紙の一部の図である。これは片面の表示であって、実際には同じものが前後2層に重なっており、形成時にはその両端部が繋がった筒状編地となる。ニットカバー部2は、図面で示す矢印の方向に向けて編成する。まず、少なくとも前後一対の針床を有する横編機を用い、開口部の周縁に設ける袋状組織5を前後の各針床に編出した後、前後ともに袋状組織5を形成する。そのため4層の状態となり、紐6やゴム糸を挿通できる空間を筒状に形成できる。各層の編成に使用できる編針は半分となり、筒面8の編目に対して形成する編目が大きくなる。続いて、前後各針床を使って周回編成し、筒面8を形成する。
【0018】
さらに、閉じ面3を形成するため、頂部9に向けて編成する。閉じ面3は、図では表示しない三角形を含めて12個集まっている。ウェール方向に向けて、複数個所で、重ね目を設けて編幅を順次減らし、その減らしを行う位置を規則的に設定することで、閉じ面3の中心に向けて三角形の頂部9が収束するような形となる。ここでは、減らしの回数と位置が同じため、各三角形は二等辺三角形となる。各三角形の底辺からの高さは全て同じで、底辺に対するその高さの比が高くなる場合には三角形の数を増やせばよい。高さの比が低くなる場合は、三角形の数を減らせばよい。ともに閉じ面3をフラットにできる。
【0019】
最終的に、三角形の頂部9が収束して2目〜10目程度まで編幅を減らした後、伏目処理を行い完了する。ニットカバー部2は無縫製で編成しており、各三角形の接合は、減らしによる重ね目の形成のみであるため、ミシン等による縫製で編目の伸びを阻害することもない。土台4の筒径を変更しても、閉じ面3が円形である土台4の上面に密着し、それに繋がる筒面8の底面7に位置する袋状組織5に挿通された紐部材を縛ることで、ずれを無くすことができる。本実施例では、ニットカバー部2の形成に綿糸を使っているが、伸縮糸を使用すれば、さらに、フィット感を高められる。
【0020】
本実施例では、ニットカバー部2の編成組織として、ウェール方向とコース方向ともに表目と裏目が交互になる組織で形成されている。この組織では凹凸感がうまく表現できているが、勿論、天竺組織やリブ組織、または、メッシュなどの組織でもよく、編み込みのジャカード組織やインターシャ組織でもよい。リバーシブルに形成したり、物を収納できるポケットを付加したり、異ゲージや異素材による組み合わせなど、横編機を用いて形成するため、ニットウェアや小物に対応している多彩な編成が行える。
【0021】
本実施例で形成された椅子1は、ダンボールや糸などのリサイクル可能な素材で構成し、ダンボールについてみれば、それを再生紙として処分してもよい。また、カバー部が損傷すれば、カバー部のみ交換して使用することができるエコロジーな製品となる。土台4の素材はダンボールのため、強度的には金属や強化プラスチックに比べると限度があるが、多層に巻きつけているために同素材で空間を設けたものに比較し、強度が増している。さらに、適度な重量なために座った際にも安定している。
【符号の説明】
【0022】
1 椅子
2 ニットカバー部
3 閉じ面
4 土台
5 袋状組織


【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のダンボールをロール状に巻き所望のサイズにした土台部と、一方に閉じ面が形成され他方が開口部となる袋状のニットカバー部とからなり、該ニットカバー部で前記土台部を覆ったことを特徴とするニット製家具。
【請求項2】
前記ニットカバー部は、前記開口部の周縁に袋状組織を配した筒面と、複数の三角形で形成された閉じ面を備え、袋状組織内には緊縛可能な紐部材を挿通することを特徴とする請求項1に記載のニット製家具。
【請求項3】
前記ニットカバー部の筒面と閉じ面は、横編機で形成した無縫製ニットであることを特徴とする請求項2記載のニット製家具。


【図3】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−284376(P2010−284376A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141416(P2009−141416)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)