説明

ニュートンリング防止シート

【課題】ニュートンリング防止性が良好で、かつ、ぎらつきが発生しにくい上、高透過鮮明度及び低ヘーズ値を有し、視認性に優れるニュートンリング防止シートを提供する。
【解決手段】透明プラスチックフィルムの片面に、活性エネルギー線硬化型化合物の硬化物と微粒子を含む厚さ0.1〜15.0μmのニュートンリング防止層を有し、かつ前記透明プラスチックフィルムのもう一方の面に、微粒子を含有しないハードコート層を有するニュートンリング防止シートであって、透明鮮明度が400以上で、ヘーズ値が2.0%以下であり、かつニュートンリング防止層表面の粗さ曲線より求められる最大高さRyが0.8〜4.2μmであることを特徴とするニュートンリング防止シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニュートンリング防止シートに関する。さらに詳しくは、ニュートンリング防止性が良好で、かつ、ぎらつきが発生しにくい上、高透過鮮明度及び低ヘーズ値を有し、視認性に優れており、各種のディスプレイ画面上に用いられるニュートンリング防止シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの上にタッチパネルを載せたものが情報端末機などとして多く使用されている。タッチパネルの方式の1つとして知られている抵抗膜式タッチパネルにおいては、透明プラスチックフィルムと基板との間に隙間を設けて、入力面を指やペンなどで押すことで透明プラスチックフィルムと基板を部分的に接触させることで入力を行う。
しかしながら、入力時に透明プラスチックフィルムと基板が接触することで光の干渉によるニュートンリングが生じ、視認性を悪化させる問題が生じる。
この問題を改善するために、透明プラスチックフィルムの片面、又は両面に微粒子などによって微細な凹凸を塗工によって形成させることで、ニュートンリングの発生を防止し得ることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明支持体の一方の面に、電離放射線硬化型樹脂組成物、及び平均粒子径が0.5μm〜3.0μm、粒子径分布の変動係数が20%〜80%である微粒子から形成されてなるニュートンリング防止層を有し、好ましくは前記透明支持体のもう一方の面に微粒子を含有してなるハードコート層を有するニュートンリング防止シートが開示されており、また特許文献2においては、透明支持体の一方の面に電離放射線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂、及び好ましくは粒子径分布の変動係数が20%〜80%である微粒子から形成されてなるニュートンリング防止層を有し、前記透明支持体のもう一方の面に微粒子を含有してなるハードコート層を有するニュートンリング防止シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−265864号公報
【特許文献2】特開2010−42671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1及び特許文献2に記載のニュートンリング防止シートにおいては、ニュートンリングを防止すると共に、スパークル(ぎらつき現象)を抑えるために、透明支持体の一方の面に微粒子を含むニュートンリング防止層を有すると共に、該透明支持体の他方の面に、微粒子を含むハードコート層が設けられている。このようなニュートンリング防止シートにおいては、例えば特許文献1における実施例5、6及び特許文献2における実施例4、5で示されるように映り込み防止性やスパークル防止性は良好であるものの、ヘーズ値が9%と高く、視認性に劣るという問題があった。
さらに、これらの技術においては、微粒子として、粒子径分布の変動係数が20〜80%、好ましくは30〜70%、さらに好ましくは40〜60%(実施例では変動係数50%の粒子を使用)である粒子径のばらつきの大きな粒子が用いられている。
本発明は、このような状況下になされたもので、ニュートンリング防止性が良好で、かつ、ぎらつきが発生しにくい上、高透過鮮明度及び低ヘーズ値を有し、視認性に優れており、各種のディスプレイ画面上に好適に用いられるニュートンリング防止シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
透明プラスチックフィルムの片面に、ニュートンリング防止層として、活性エネルギー線硬化型化合物の硬化物と微粒子を含む特定の厚さの層を形成し、該微粒子の粒子径や、ニュートンリング防止層の表面粗さを最適化すると共に、前記透明プラスチックフィルムのもう一方の面に、微粒子を含有しないハードコート層を形成することにより、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1]透明プラスチックフィルムの片面に、活性エネルギー線硬化型化合物の硬化物と微粒子を含む厚さ0.1〜15.0μmのニュートンリング防止層を有し、かつ前記透明プラスチックフィルムのもう一方の面に、微粒子を含有しないハードコート層を有するニュートンリング防止シートであって、
(a)JIS K 7374−2007に準拠して測定される、5種類のスリットの合計値で表される透明鮮明度が400以上であること、
(b)JIS K 7136−2000に準拠して測定されるヘーズ値が2.0%以下であること、及び
(c)前記ニュートンリング防止層における、JIS B 0601−1994に準拠して測定される粗さ曲線より求められる最大高さRyが0.8〜4.2μmであること、
を特徴とするニュートンリング防止シート、
[2]ニュートンリング防止層からの微粒子の突出量が0.7〜6.0μmである、上記[1]項に記載のニュートンリング防止シート、
[3]微粒子の平均粒径が、2.0〜15.0μmである上記[1]又は[2]項に記載のニュートンリング防止シート、
[4]微粒子が、下記の式で表される粒子径分布の変動係数(CV値)30%未満のものである、上記[1]〜[3]項のいずれかに記載のニュートンリング防止シート、
CV値(%)=(粒径の標準偏差/平均粒径)×100
[5]ニュートンリング防止層が、有機・無機ハイブリッド硬化樹脂をマトリックスとする層である上記[1]〜[4]項のいずれかに記載のニュートンリング防止シート、
[6]微粒子が有機系微粒子である、上記[1]〜[5]項のいずれかに記載のニュートンリング防止シート、及び
[7]有機系微粒子がシリコーン系微粒子である、上記[6]項に記載のニュートンリング防止シート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ニュートンリング防止性が良好で、かつ、ぎらつきが発生しにくい上、高透過鮮明度及び低ヘーズ値を有し、視認性に優れており、各種のディスプレイ画面上に好適に用いられるニュートンリング防止シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のニュートンリング防止シートは、透明プラスチックフィルムの片面に、活性エネルギー線硬化型化合物の硬化物と微粒子を含む厚さ0.1〜15.0μmのニュートンリング防止層を有し、かつ前記透明プラスチックフィルムのもう一方の面に、微粒子を含有しないハードコート層を有するニュートンリング防止シートであって、
(a)JIS K 7374−2007に準拠して測定される、5種類のスリットの合計値で表される透明鮮明度が400以上であること、
(b)JIS K 7136−2000に準拠して測定されるヘーズ値が2.0%以下であること、及び
(c)前記ニュートンリング防止層における、JIS B 0601−1994に準拠して測定される粗さ曲線より求められる最大高さRyが0.8〜4.2μmであること、
を特徴とする。
【0010】
[透明プラスチックフィルム]
本発明のニュートンリング防止シートにおいて、基材として用いられる透明プラスチックフィルムについては特に制限はなく、従来光学用ハードコートフィルムなどの基材として公知のプラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルムを挙げることができる。
【0011】
これらのプラスチックフィルムの厚さは特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常15〜300μm、好ましくは30〜200μmの範囲である。また、このプラスチックフィルムは、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法はプラスチックフィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、同様の目的でプラスチックフィルム表面にプライマー層を設けることもできる。
【0012】
[ニュートンリング防止層]
本発明のニュートンリング防止シートにおいては、前述した透明プラスチックフィルムの片面に、活性エネルギー線硬化型化合物の硬化物と微粒子を含むニュートンリング防止層が設けられる。当該ニュートンリング防止層は、有機・無機ハイブリッド硬化樹脂をマトリックスとする層であることが好ましい。この場合、無機成分が微粒子と微粒子の隙間を埋めることで、透過鮮明度の向上に寄与するものと考えられる。
当該ニュートンリング防止層の厚さは、ニュートンリング防止性、及び後述する上記防止層表面の粗さ曲線より求められる最大高さRyや、該防止層からの微粒子の突出量を所望の値に制御する観点から、0.1〜15.0μmであることを要し、好ましくは0.5〜12.0μm、より好ましくは1.0〜10.0である。
【0013】
(微粒子)
当該ニュートンリング防止層に含まれる微粒子は、活性エネルギー線硬化型化合物への分散性の観点から有機系微粒子であることが好ましく、さらに透過鮮明度及びヘーズ値の観点から球状の有機系微粒子であることが好ましい。
有機系微粒子としては、例えばシリコーン系微粒子、メラミン系樹脂微粒子、アクリル系樹脂微粒子、アクリル−スチレン系共重合体微粒子、ポリカーボネート系微粒子、ポリエチレン系微粒子、ポリスチレン系微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、活性エネルギー線硬化型化合物への分散性の観点から、シリコーン系微粒子が好適である。
【0014】
この微粒子の平均粒径は、ニュートンリング防止性の観点から、2.0〜15.0μmであることが好ましく、3.0μm超12.0μm以下であることがより好ましく、4.0〜11.0μmであることがさらに好ましい。
また、当該微粒子は、ニュートンリング防止層表面の粗さ曲線から求められる最大高さRyを所望の値に容易に制御する観点から、粒径のばらつきはできるだけ小さい方が好ましい。したがって、本発明においては、当該微粒子は、下記の式で表される粒子径分布の変動係数(CV値)が30%未満であるものが好ましく、25%以下であるものがさらに好ましい。
CV値(%)=(粒径の標準偏差/平均粒径)×100
このCV値が小さいほど、微粒子の粒径のばらつきが小さい。
なお、前記微粒子の平均粒径及び変動係数(CV値)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した値である。
【0015】
(ニュートンリング防止層の性状)
本発明においては、ニュートンリング防止層表面の粗さ曲線より求められる最大高さRyは、0.8〜4.2μmであることを要し、好ましくは1.0〜4.0μmである。このRyが0.8μm未満では表面の粗さが小さすぎるためニュートンリングの発生を防止することができず、一方4.2μmを超えると表面粗さが大きくなりすぎ、透過鮮明度が低下すると共に、ぎらつきの抑制が不充分となり、画面の視認性が低下するおそれが生じる。
なお、上記Ryは、装置として接触型粗さ計を使用し、JIS B 0601−1994に準拠して測定される粗さ曲線より求められる値である。
【0016】
また、ニュートンリング防止層からの微粒子の突出量は、ニュートンリング防止性と透過鮮明度の観点から、0.7〜6.0μmであることが好ましく、1.0〜5.0μmであることがより好ましい。この突出量が0.7μm未満では、表面粗さが小さすぎるため、ニュートンリングの防止性が不充分となり、一方6.0μmを超えると、表面粗さが大きくなりすぎ、透過鮮明度が低下すると共に、ぎらつきなどが生じ、ディスプレイ画面の視認性が低下するおそれがある。
なお、この突出量は、ニュートンリング防止層の膜厚から、微粒子の平均粒径を引くことにより算出された値である。
【0017】
当該ニュートンリング防止層における活性エネルギー線硬化型化合物の硬化物と、前記微粒子の割合は、ニュートンリングの防止性や、透過鮮明度及びヘーズ値などの観点から、通常、質量比で100:0.05〜100:1.0程度、好ましくは100:0.1〜100:0.5である。
なお、当該ニュートンリング防止層が有機・無機ハイブリッド硬化樹脂をマトリックスとする層である場合、前記の活性エネルギー線硬化型化合物の硬化物量が、この有機・無機ハイブリッド硬化樹脂量となる。
【0018】
次に、当該ニュートンリング防止層の形成について説明する。
当該ニュートンリング防止層は、前述した透明プラスチックフィルムの片面に、ニュートンリング防止層形成材料を用いて形成される。
【0019】
[ニュートンリング防止層形成材料]
ニュートンリング防止層形成材料としては、ニュートンリング防止層が、例えば、有機・無機ハイブリッド硬化樹脂をマトリックスとする場合について説明する。
ニュートンリング防止層(以下、「NR防止層」と略記することがある。)形成材料としては、(A)(a)活性エネルギー線硬化型化合物と、(b)重合性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子を含む活性エネルギー線感応型組成物、及び(B)前述した微粒子、好ましくは有機系微粒子を含有するものが用いられる。
【0020】
((A)活性エネルギー線感応型化合物)
前記NR防止層形成材料において、(A)成分として用いられる活性エネルギー線感応型組成物には、(a)活性エネルギー線硬化型化合物と、(b)重合性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子が含まれる。
なお、本発明において、活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線や電子線などを指す。
【0021】
<(a)活性エネルギー線硬化型化合物>
本発明においては、(a)活性エネルギー線硬化型化合物として、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーが用いられる。
前記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
一方、前記(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系などが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。さらに、ポリオールアクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。これらのプレポリマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーと併用してもよい。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を指し、他の類似用語も同様である。
【0023】
<(b)重合性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子>
本発明における(b)重合性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子とは、前記多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーと反応することができる官能基を表面に有しているシリカ微粒子をいう。
上記重合性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子は、例えば、通常、平均粒径0.5〜500nm程度、好ましくは平均粒径1〜100nmのシリカ微粒子表面のシラノール基に、該シラノール基と反応し得る官能基である(メタ)アクリロイル基を有する重合性不飽和基含有有機化合物を反応させることにより、得ることができる。
前記シラノール基と反応し得る官能基を有する重合性不飽和基含有有機化合物としては、例えば一般式(I)
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2はハロゲン原子又は
【化2】

で示される基である。)
で表される化合物などが好ましく用いられる。
【0024】
このような化合物としては、例えばアクリル酸、アクリル酸クロリド、アクリル酸2−イソシアナートエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2,3−イミノプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなど及びこれらのアクリル酸誘導体に対応するメタクリル酸誘導体を用いることができる。これらのアクリル酸誘導体やメタクリル酸誘導体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このようなシリカ微粒子に重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる化合物を含む活性エネルギー線感応型組成物(A)として、例えばJSR(株)製、商品名「オプスターZ7530」、「オプスターZ7524」、「オプスターTU4086」などが上市されている。
本発明においては、この(b)成分の重合性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子の含有量は、(A)成分の活性エネルギー線感応型組成物の固形分中に、通常5〜90質量%程度、好ましくは10〜70質量%である。
なお、この(b)成分の重合性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子における一次平均粒径は、コールター・カウンター法によって測定することができる。
【0025】
((B)微粒子)
当該NR防止層形成材料において、(B)成分として用いられる微粒子については、前述で説明したとおりであり、有機系微粒子が好ましく、シリコーン系微粒子が特に好ましい。
当該NR防止層形成材料におけるこの(B)成分微粒子の含有量は、前記(A)成分として用いられる活性エネルギー線感応型組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは0.05〜1.0質量部、より好ましくは0.1〜0.5質量部である。
【0026】
(光重合開始剤)
当該NR防止層形成材料には、所望により光重合開始剤を含有させることができる。この光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステルなどが挙げられる。
これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その含有量は、前記(A)成分として用いられる活性エネルギー線感応型組成物の固形分100質量部に対して、通常0.2〜10質量部の範囲で選ばれる。
【0027】
(NR防止層形成材料の調製)
当該NR防止層形成材料は、必要に応じ、適当な溶媒中に前述した(A)成分の活性エネルギー線感応型組成物、(B)成分の微粒子、及び所望により用いられる光重合開始剤や各種添加成分、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤などを、それぞれ所定の割合で加え、溶解又は分散させることにより、調製することができる。
この際用いる溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。
このようにして調製されたNR防止層形成材料の濃度、粘度としては、コーティング可能なものであればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
【0028】
[NR防止層の形成]
前記透明プラスチックフィルムの片面に、前記NR防止層形成材料を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、コーティングして塗膜を形成させ、乾燥後、これに活性エネルギー線を照射して該塗膜を硬化させることにより、NR防止層が形成される。
活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線などが挙げられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどで得られ、照射量は、通常100〜500mJ/cm2であり、一方電子線は、電子線加速器などによって得られ、照射量は、通常150〜350kVである。この活性エネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、光重合開始剤を添加することなく、硬化膜を得ることができる。
【0029】
本発明のニュートンリング防止シートにおいては、前述した透明プラスチックフィルムのもう一方の面に微粒子を含有しないハードコート層が形成される。このハードコート層は、フィルム表面の傷つきを防止し視認性を維持する目的、及びシートのカールを抑制する目的で形成される。
[ハードコート層の形成]
透明プラスチックフィルムのもう一方の面にハードコート層を形成するには、まず当該ハードコート層の形成材料を調製する。
(ハードコート層形成材料の調製)
当該ハードコート層形成材料は、必要に応じ適当な溶媒中に、活性エネルギー線硬化型化合物として、多官能(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマー、及び所望により用いられる光重合開始剤や各種添加成分、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤などを、それぞれ所定の割合で加え、溶解又は分散させることにより、調製することができる。
この際用いる溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。
このようにして調製されたハードコート層形成材料の濃度、粘度としては、コーティング可能なものであればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
当該ハードコート層形成材料における多官能(メタ)アクリレート系モノマーや(メタ)アクリレート系プレポリマー、光重合開始剤などについては、前述したNR防止層形成材料において説明したとおりである。
また、当該ハードコート層形成材料を用いて、透明プラスチックフィルムのもう一方の面にハードコート層を形成する方法としては、前述した透明プラスチックフィルムの片面に、NR防止層形成材料を用いて、NR防止層を形成する方法と同じ方法を採用することができる。
このようにして形成されたハードコート層の厚さは、傷つき防止やカール防止の観点から、通常0.1〜15.0μm程度、好ましくは0.5〜10.0μm、より好ましくは1.0〜5.0μmである。
【0030】
[ニュートンリング防止シートの性状]
本発明のニュートンリング防止シートにおいては、視認性に優れるものにするために、JIS K 7374−2007に準拠して測定される、5種類のスリットの合計値で表される透過鮮明度が400以上であることを要し、好ましくは420以上、より好ましくは440以上である。
また、JIS K 7136−2000に準拠して測定されるヘーズ値が2.0%以下であることを要し、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.5以下である。
なお本発明のニュートンリング防止シートにおいては、NR防止層の反対側に設けられるハードコート層に微粒子を含有させると、当該ニュートンリング防止シートの透過鮮明度の低下とヘーズ値の増加をもたらすので、微粒子は含有させない。
【0031】
このようにして得られた本発明のニュートンリング防止シートは、ニュートンリング防止性が良好で、かつ、ぎらつきが発生しにくい上、高透過鮮明度及び低ヘーズ値を有し、視認性に優れており、各種のディスプレイ画面上に好適に用いられる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例における諸特性値及び各例で得られたニュートンリング防止シートの性能の評価を、以下に示す方法により求めた。
【0033】
<NR防止層>
(1)粗さ曲線より求められる最大高さRy
JIS B 0601−1994に準拠して測定される粗さ曲線より求められる最大高さRyを、(株)ミツトヨ製接触型粗さ計、機種名「SV3000S4」を用いて測定する。
(2)NR防止層からの微粒子の突出量
下記の式より、微粒子の突出量を算出する。
突出量(μm)=NR防止層の膜厚(μm)−微粒子の平均粒径(μm)
【0034】
<微粒子>
(3)平均粒径及び下記の式で表される粒子径分布の変動係数(CV値)
CV値(%)=(粒径の標準偏差/平均粒径)×100
平均粒径及び粒子径分布の変動係数(CV値)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置[(株)堀場製作所製、機種名「LA−920」]を用いて測定する。なお、サンプルとして、分散媒であるメチルエチルケトンを用い5質量%濃度の分散液を調製し、測定装置に適切な濃度に希釈して使用する。
【0035】
<ニュートンリング防止シート>
(4)透過鮮明度
スガ試験機(株)製写像性測定器「ICM−10P」を使用し、JIS K 7374−2007に準拠して測定する。5種類のスリット(スリット幅:0.125mm、0.25mm、0.5mm、1mm及び2mm)の合計値を透過鮮明度と表す。
(5)ヘーズ値
日本電色工業(株)製ヘーズメーター「NDH2000」を使用し、JIS K 7136−2000に準拠して測定する。
(6)ニュートンリング防止性
ニュートンリング防止シートを表面が平滑なガラス板上に置き、ニュートンリング防止層がガラス板に密着するように指で押し、ニュートンリングの発生を目視で評価する。下記の評価基準で評価を行い、3点以上のニュートンリング防止シートをニュートンリング防止性良好とし、2点以下のニュートンリング防止シートをニュートンリング防止性不良とする。
1点:未処理のポリエステルフィルムと比較して同程度にニュートンリングが見える。
2点:未処理のポリエステルフィルムと比較してニュートンリングが若干見えづらい。
3点:ニュートンリングが僅かに見える。
4点:ニュートンリングが見えない。
(7)ぎらつき防止性
ヒューレット・パッカード(株)製のパソコン「HP Compaq 6730/CT Notebook PC」の画面を緑色にし、ニュートンリング防止シートのニュートンリング防止層面をパソコンの画面に密着させてぎらつきの発生を目視で評価する。下記の評価基準で評価を行い、3点のニュートンリング防止シートをぎらつき防止性良好とし、2点以下のニュートンリング防止シートをぎらつき防止性不良とする。
1点:大量にぎらつきが発生する。
2点:少しぎらつきが発生する。
3点:ぎらつきが発生しない。
(8)視認性
ニュートンリング防止性とぎらつき防止性の評価結果を基にニュートンリング防止シートの視認性の評価を行う。
○:ニュートンリング防止性が4点、及びぎらつき防止性が3点であり、視認性良好。
△:ニュートンリング防止性が3点、及びぎらつき防止性が3点であり、視認性概ね良好。
×:ニュートンリング防止性が2点以下、又はぎらつき防止性が2点以下であり、視認性不良。
【0036】
実施例1
(1)ニュートンリング防止層の形成
溶剤としてポリプロピレングリコールメチルエーテル(PGM)を用い、第1表−1に記載の配合組成を有する、固形分濃度20質量%のニュートンリング防止層形成材料(塗工液1)を調製した。なお、第1表−1では、固形分換算した配合組成比を表わす(以下同様)。
次いで、透明プラスチックフィルムとして、厚さ188μmのポリエステルフィルム[東洋紡績社製、「コスモシャインA4300」]の片面に、前記塗工液1をマイヤーバーNo.18で塗工し、70℃で1分間加熱することで溶剤を蒸発させた後、紫外線照射によって[紫外線照射装置:アイグラフィックス(株)製、「アイグランテージECS−401GX型」光源:高圧水銀灯、照射条件 ランプ電力:2kW、コンベアスピード:4.23m/min、照度:240mW/cm2、光量:307mJ/cm2]塗膜を硬化させ膜厚3.5μmのニュートンリング防止層を形成した。
(2)ハードコート層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のハードコート層形成材料(塗工液2)を調製した。
次に、ニュートンリング防止層を塗布したポリエステルフィルムの反対側の面に、前記塗工液2をマイヤーバーNo.8で塗工する以外は、ニュートンリング防止層と同様の方法で膜厚3.2μmの微粒子を含有しないハードコート層を形成し、ニュートンリング防止シートを作製した。
このニュートンリング防止シートの諸特性を第1表−2に示す。
【0037】
実施例2
(1)ニュートンリング防止層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1に記載の配合組成を有する、固形分濃度20質量%のニュートンリング防止層形成材料(塗工液1)を調製し、前記塗工液1をマイヤーバーNo.10で塗工する以外は、実施例1(1)と同様の方法で膜厚2.6μmのニュートンリング防止層を形成した。
(2)ハードコート層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のハードコート層形成材料(塗工液2)を調製し、実施例1(2)と同様にして、膜厚3.2μmの微粒子を含有しないハードコート層を形成し、ニュートンリング防止シートを作製した。
このニュートンリング防止シートの諸特性を第1表−2に示す。
【0038】
実施例3
(1)ニュートンリング防止層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1に記載の配合組成を有する、固形分濃度20質量%のニュートンリング防止層形成材料(塗工液1)を調製し、前記塗工液1をマイヤーバーNo.6で塗工する以外は、実施例1(1)と同様の方法で膜厚1.8μmのニュートンリング防止層を形成した。
(2)ハードコート層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のハードコート層形成材料(塗工液2)を調製し、実施例1(2)と同様にして、膜厚3.2μmの微粒子を含有しないハードコート層を形成し、ニュートンリング防止シートを作製した。
このニュートンリング防止シートの諸特性を第1表−2に示す。
【0039】
実施例4
(1)ニュートンリング防止層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1に記載の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のニュートンリング防止層形成材料(塗工液1)を調製し、前記塗工液1をマイヤーバーNo.14で塗工する以外は、実施例1(1)と同様の方法で膜厚6.0μmのニュートンリング防止層を形成した。
(2)ハードコート層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のハードコート層形成材料(塗工液2)を調製し、実施例1(2)と同様にして、膜厚3.2μmの微粒子を含有しないハードコート層を形成し、ニュートンリング防止シートを作製した。
このニュートンリング防止シートの諸特性を第1表−2に示す。
【0040】
実施例5
(1)ニュートンリング防止層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1に記載の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のニュートンリング防止層形成材料(塗工液1)を調製し、前記塗工液1をマイヤーバーNo.18で塗工する以外は、実施例1(1)と同様の方法で膜厚9.1μmのニュートンリング防止層を形成した。
(2)ハードコート層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のハードコート層形成材料(塗工液2)を調製し、実施例1(2)と同様にして、膜厚3.2μmの微粒子を含有しないハードコート層を形成し、ニュートンリング防止シートを作製した。
このニュートンリング防止シートの諸特性を第1表−2に示す。
【0041】
実施例6
(1)ニュートンリング防止層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1に記載の配合組成を有する、固形分濃度10質量%のニュートンリング防止層形成材料(塗工液1)を調製し、前記塗工液1をマイヤーバーNo.4で塗工する以外は、実施例1(1)と同様の方法で膜厚1.3μmのニュートンリング防止層を形成した。
(2)ハードコート層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のハードコート層形成材料(塗工液2)を調製し、実施例1(2)と同様にして、膜厚3.2μmの微粒子を含有しないハードコート層を形成し、ニュートンリング防止シートを作製した。
このニュートンリング防止シートの諸特性を第1表−2に示す。
【0042】
実施例7
(1)ニュートンリング防止層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1に記載の配合組成を有する、固形分濃度20質量%のニュートンリング防止層形成材料(塗工液1)を調製し、前記塗工液1をマイヤーバーNo.4で塗工する以外は、実施例1(1)と同様の方法で膜厚1.6μmのニュートンリング防止層を形成した。
(2)ハードコート層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のハードコート層形成材料(塗工液2)を調製し、実施例1(2)と同様にして、膜厚3.2μmの微粒子を含有しないハードコート層を形成し、ニュートンリング防止シートを作製した。
このニュートンリング防止シートの諸特性を第1表−2に示す。
【0043】
比較例1
(1)ニュートンリング防止層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1に記載の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のニュートンリング防止層形成材料(塗工液1)を調製し、前記塗工液1をマイヤーバーNo.8で塗工する以外は、実施例1(1)と同様の方法で膜厚3.4μmのニュートンリング防止層を形成した。
(2)ハードコート層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のハードコート層形成材料(塗工液2)を調製し、実施例1(2)と同様にして、膜厚3.2μmの微粒子を含有しないハードコート層を形成し、ニュートンリング防止シートを作製した。
このニュートンリング防止シートの諸特性を第1表−2に示す。
【0044】
比較例2
(1)ニュートンリング防止層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1に記載の配合組成を有する、固形分濃度20質量%のニュートンリング防止層形成材料(塗工液1)を調製し、前記塗工液1をマイヤーバーNo.10で塗工する以外は、実施例1(1)と同様の方法で膜厚2.6μmのニュートンリング防止層を形成した。
(2)ハードコート層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のハードコート層形成材料(塗工液2)を調製し、マイヤーバーNo.10を用い、実施例1(2)と同様にして、膜厚3.2μmの微粒子を含有するハードコート層を形成し、ニュートンリング防止シートを作製した。
このニュートンリング防止シートの諸特性を第1表−2に示す。
【0045】
比較例3
(1)ニュートンリング防止層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1に記載の配合組成を有する、固形分濃度35質量%のニュートンリング防止層形成材料(塗工液1)を調製し、前記塗工液1をマイヤーバーNo.8で塗工する以外は、実施例1(1)と同様の方法で膜厚4.3μmのニュートンリング防止層を形成した。
(2)ハードコート層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のハードコート層形成材料(塗工液2)を調製し、実施例1(2)と同様にして、膜厚3.2μmの微粒子を含有しないハードコート層を形成し、ニュートンリング防止シートを作製した。
このニュートンリング防止シートの諸特性を第1表−2に示す。
【0046】
比較例4
(1)ニュートンリング防止層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1に記載の配合組成を有する、固形分濃度20質量%のニュートンリング防止層形成材料(塗工液1)を調製し、前記塗工液1をマイヤーバーNo.10で塗工する以外は、実施例1(1)と同様の方法で膜厚2.0μmのニュートンリング防止層を形成した。
(2)ハードコート層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のハードコート層形成材料(塗工液2)を調製し、実施例1(2)と同様にして、膜厚3.2μmの微粒子を含有しないハードコート層を形成し、ニュートンリング防止シートを作製した。
このニュートンリング防止シートの諸特性を第1表−2に示す。
【0047】
比較例5
(1)ニュートンリング防止層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1に記載の配合組成を有する、固形分濃度20質量%のニュートンリング防止層形成材料(塗工液1)を調製し、前記塗工液1をマイヤーバーNo.10で塗工する以外は、実施例1(1)と同様の方法で膜厚2.0μmのニュートンリング防止層を形成した。
(2)ハードコート層の形成
溶剤としてPGMを用い、第1表−1の配合組成を有する、固形分濃度40質量%のハードコート層形成材料(塗工液2)を調製し、実施例1(2)と同様にして、膜厚3.2μmの微粒子を含有しないハードコート層を形成し、ニュートンリング防止シートを作製した。
このニュートンリング防止シートの諸特性を第1表−2に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
[注]
1)A−1:JSR(株)製「オプスターZ7530」、紫外線硬化型の有機・無機ハイブリッド材料、固形分73質量%、含光重合開始剤
2)A−2:荒川化学工業(株)製「ビームセット575CB」紫外線硬化型材料、固形分100%、含光重合開始剤
3)A−3:大日精化工業(株)製「セイカビームEXF−01L(BS)」微粒子含有紫外線硬化型材料、固形分100%、含光重合開始剤
4)B−1:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「トスパール145」、平均粒径4.5μm、CV値24%の球状シリコーン微粒子
5)B−2:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「トスパール1110」、平均粒径11.0μm、CV値10%の球状シリコーン微粒子
6)B−3:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「トスパール120」、平均粒径2.0μm、CV値20%の球状シリコーン微粒子
7)B−4:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「トスパール130」、平均粒径3.0μm、CV値19%の球状シリコーン微粒子
8)B−5:富士シリシア化学(株)製「サイリシア430」、平均粒径4.1μm、CV値40%の不定形シリカ微粒子
【0050】
【表2】

【0051】
[注]
NR防止層:ニュートンリング防止層
HC層:ハードコート層
【0052】
第1表−2の評価結果のとおり、請求項1の要件を満たす本発明のニュートンリング防止シート(実施例1〜7)は、いずれもニュートンリング防止性が3点以上で良好であると共に、ヘーズ値が2.0%未満で、かつ透過鮮明度が400を超えており、視認性にも優れている。
これに対し、請求項1の要件を少なくとも一つ満たさない比較例1〜5のニュートンリング防止シートは、透過鮮明度が400未満、又はヘーズ値が2%を超えたりして視認性に劣るか、あるいはニュートンリング防止性が不良となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のニュートンリング防止シートは、ニュートンリング防止性が良好で、かつ、ぎらつきが発生しにくい上、高透過鮮明度及び低ヘーズ値を有し、視認性に優れており、各種のディスプレイ画面上に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックフィルムの片面に、活性エネルギー線硬化型化合物の硬化物と微粒子を含む厚さ0.1〜15.0μmのニュートンリング防止層を有し、かつ前記透明プラスチックフィルムのもう一方の面に、微粒子を含有しないハードコート層を有するニュートンリング防止シートであって、
(a)JIS K 7374−2007に準拠して測定される、5種類のスリットの合計値で表される透明鮮明度が400以上であること、
(b)JIS K 7136−2000に準拠して測定されるヘーズ値が2.0%以下であること、及び
(c)前記ニュートンリング防止層における、JIS B 0601−1994に準拠して測定される粗さ曲線より求められる最大高さRyが0.8〜4.2μmであること、
を特徴とするニュートンリング防止シート。
【請求項2】
ニュートンリング防止層からの微粒子の突出量が0.7〜6.0μmである、請求項1に記載のニュートンリング防止シート。
【請求項3】
微粒子の平均粒径が、2.0〜15.0μmである請求項1又は2に記載のニュートンリング防止シート。
【請求項4】
微粒子が、下記の式で表される粒子径分布の変動係数(CV値)30%未満のものである、請求項1〜3のいずれかに記載のニュートンリング防止シート。
CV値(%)=(粒径の標準偏差/平均粒径)×100
【請求項5】
ニュートンリング防止層が、有機・無機ハイブリッド硬化樹脂をマトリックスとする層である請求項1〜4のいずれかに記載のニュートンリング防止シート。
【請求項6】
微粒子が有機系微粒子である、請求項1〜5のいずれかに記載のニュートンリング防止シート。
【請求項7】
有機系微粒子がシリコーン系微粒子である、請求項6に記載のニュートンリング防止シート。