説明

ニードリング装置及びこれの運転方法

【課題】表面に反復模様の無い布生地及び/又はフェルト、あるいは所望の模様を備えた布生地及び/又はフェルトの製造が可能なニードリング装置を提供する。
【解決手段】ニードリング装置に関し、特に、運転中に軸方向に前後移動可能なトラバースローラを少なくとも一つ備えた、抄紙機用フェルトの製造に用いられるニードリング装置および、ニードリング装置の運転方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲第1項、第2項、第7項前文に記載のニードリング装置及びニードリング装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のニードリング装置は、ニードルパンチ不織布の分野で用いられており、これらのニードリング装置はまた、抄紙機用フェルトの製造にも用いられている。ニードリング装置は、特定の反復模様に針を配置した専用のニードルボードを備えている。この針の配置に共通している特徴は、特定の前送り領域があり、これによってニードルボードの1ストローク毎にフェルトがミリメートル単位で前送りされるが、フェルト表面に概して好ましくない斑紋も形成されてしまうので、例えば抄紙機に用いられるフェルトなどのように要求の高い用途には向かないという問題がある。
【0003】
さらに、ニードリング中に幅方向に起きる自然収縮によって、目立つ反復模様がフェルト表面上に形成されるという問題がある。
このような反復模様は加工後のフェルト上に見苦しく不自然なパターンを形成するため望ましくない上、フェルトを抄紙機に用いた場合は、製造する紙にも模様が現れてしまう。
【0004】
この欠点は従来のニードリング装置に固有のものであり、フェルト全体に渡って均一な生地表面の外観を得ることは、不可能とはいわないまでも非常に困難である。これまでは、加工後のフェルトが均一な表面外観を有するように、ニードルボード上の針分布を不規則にするなどの手法がとられてきたが、このような不均一な分布を用いる方法は常に妥協を伴い、多くの用途において満足とは言えない結果を招いていた。
【0005】
逆に、これまでに知られているニードリング装置では、フェルトに特定の反復模様やパターン、構造などを意図的に設けることもまた不可能であった。その場合もまた、これらの装置に固有の反復模様が問題となるためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決し、表面に反復模様の無い布生地及び/又はフェルト、あるいは所望の模様を備えた布生地及び/又はフェルトの製造が可能なニードリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、特許請求の範囲第1項、第2項に記載のニードリング装置及び特許請求の範囲第7項に記載の方法により達成される。
すなわち本発明は、特に抄紙機用フェルトの製造に用いられるニードリング装置であって、トラバースローラとして構成された少なくとも一つのローラを備え、運転中に該ローラが軸方向の、好ましくは前後に移動可能であり、このローラにより、ニードリング処理される製品が、トラバースローラの動きに従って、ニードリング方向に対して横方向、すなわち軸方向に移動可能であることを特徴とするニードリング装置を提供することにより上記目的を達成する。
【0008】
また、特に抄紙機用フェルトの製造に用いられるニードリング装置であって、軸方向の前後に移動可能な少なくとも一つの延展機を備え、これにより、ニードリング処理される製品が、延展機の動きに従って、ニードリング方向に対して横方向、すなわち軸方向に移動可能であることを特徴とするニードリング装置を提供することにより上記目的を達成する。
【0009】
本発明の重要な特徴点は、フェルトあるいはその他の布生地における針の挿入点が特定の横方向に移動することで、挿入点の分布を均一にすることができる。この効果は、針配置がどのようなものであっても関係なく得られる。従って、本発明によれば、前後移動するローラによって望ましくない反復模様の形成を避けることができ、また、ニードリング装置の一又は複数のローラの軸方向移動に特定の制御を行なうことによって、加工中の例えばフェルトなどの布生地に所望の反復模様やパターン、凹凸模様などを設けることができる。
【0010】
また本技術により、ニードル処理される生地表面の「ニードルアレー」と呼ばれる反復的な模様の形成を避けることも、あるいはこれを特に強調させることもできる。
【0011】
本発明によれば、少なくとも一つの被駆動あるいは共動ローラが前後に、すなわち、前送り動作に対して横切る横断方向、すなわち、該ローラの軸方向に駆動される。
【0012】
ニードリング装置のローラを幾つ動かすか、また、どのローラを動かすかによって、反復模様あるいはパターンに関しては異なる結果が得られる。ちなみに、トラバースローラを複数用いる場合は、全てのローラを同方向に動かしても、反対方向に動かしてもよい。また、各ローラのストローク長及び頻度はそれぞれ個別に調節でき、好ましくは無段調節される。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、トラバースローラ及び/又は延展機のストローク長は0mm〜15mm、好ましくは0mm〜12mm、特に0mm〜10mmである。用途や所望パターンによっては、上に挙げる数値の3倍までの値、あるいは、1.5mm程度の特に小さいストローク長も可能である。
また、トラバースローラ及び/又は延展機のストローク長は無段調節可能であり、運転中に変更することもできる。
【0014】
本発明によれば、ストローク頻度は1分あたり1〜120回の範囲であるが、トラバースローラ及び/又は延展機の動きは軸方向に間断無く続くものであることを付記しておく。トラバースローラ及び/又は延展機のストローク長と同様に、ストローク頻度もまた無段調節可能である。
【0015】
少なくとも一つのトラバースローラ及び/又は延展機の往復動作は、機械式、液圧式、電気式、磁気式、空圧式のいずれかあるいはこれらの組み合わせにより駆動されるが、ストローク頻度及びストローク長、また、トラバースローラ及び/又は延展機のサイズや重さによっては、その他の駆動方法も可能であることは勿論である。ちなみに、延展機は一つのローラか、あるいは3〜5個のローラから成るローラ集合体の形で設けることができる。
【0016】
また、ニードリング装置とテンション台間のフェルト搬入出口側にさらに一対のローラを設けて、布生地に横方向の動きを与えることも可能である。さらにまた、ニードリング装置で用いられる延展機、すなわち前述の延展装置を、フェルトの走行方向に対して横向きの横断部として構成してもよい。ちなみに、本発明におけるローラは、前後に移動可能な領域として設けてもよく、この領域が回動することなく、加工中の布生地がこの上をスライドするようにしてもよい。
【0017】
ローラや一対のローラ又は延展機の、フェルトの走行方向に対して横向きの往復動作の駆動方法としては、本発明によれば次のようなものが挙げられる。例えばクランク駆動、偏心駆動、カム板や斜板カムその他の機械式駆動装置など、駆動ロッドを用いた機械的駆動法や、例えば液圧シリンダや液圧モータなどの液圧式駆動装置でもよい。あるいはまた、ギアやスピンドルを備えた電気モータなど電気式方法で往復動作を駆動してもよい。同様に、ギアやスピンドルを備えた空圧シリンダや空圧モータを用いた空圧式駆動装置でもよい。
【0018】
本発明はまた、特に抄紙機用フェルトの製造に用いられるニードリング装置の運転方法であって、ニードリング装置の少なくとも一つのローラが、運転中に軸方向の、好ましくは前後に移動することを特徴とするニードリング装置の運転方法を提供して上記目的を達成するものである。本発明によれば、ローラは0mm〜15mm、好ましくは0mm〜12mm、特に、0mm〜10mmのストローク長で駆動され、ローラのストローク長が、特に運転中において無段調節及び/又は無段再調節される。
【0019】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項に記載の通りである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、ニードリング装置の概略図であり、符号Aで示すローラが本装置の駆動ローラである。符号Dで示すローラはガイドローラであり、これらによって、搬送中及びニードリング中の布生地が移動し、かつ、張りつめた状態に保たれる。符号Zで示す装置は、ニードリング装置のそれぞれのニードリング部であり、布生地の延展機(符号B)を図の上方に略示している。図の下方には符号Cで示す外部横断部が設けられている。布生地、特にフェルト地は図に示すローラにより供給され、ニードリング装置内を反時計方向に移動する。本発明においては、ローラA、B、C、Dのうち一又は複数のローラを横断モードにて運転することができる。
【0022】
図2はトラバースローラを示し、その軸方向の往復動作を符合0−X及び両頭矢印にて示している。符合0−Xはトラバースローラのストローク長を示す。
【0023】
図3に拡大して示すように、トラバースローラはクランク駆動により左から右、右から左へと横移動する。
【0024】
尚、上記の部材は全て、特に図面に示す詳細については、単体であっても組み合せであっても、本発明の必須要件として権利請求されている。当業者には自明の通り、これらを変更することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ニードリング装置の概略図。
【図2】往復動作のための駆動部を備えたトラバースローラの概略図。
【図3】図2の駆動部を備えたトラバースローラの詳細を示す概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に抄紙機用フェルトの製造に用いられるニードリング装置であって、トラバースローラとして構成された少なくとも一つのローラ(A、B、C、D)を備え、運転中に該ローラが軸方向に前後移動可能であり、これにより、ニードリング処理される製品がニードリング方向に対して横方向、すなわち軸方向に移動可能であることを特徴とするニードリング装置。
【請求項2】
特に抄紙機用フェルトの製造に用いられるニードリング装置であって、軸方向に前後移動可能な少なくとも一つの延展機(B)を備え、これにより、ニードリング処理される製品がニードリング方向に対して横方向、すなわち軸方向に移動可能であることを特徴とするニードリング装置。
【請求項3】
前記トラバースローラ及び/又は延展機(A、B、C、D)のストローク長が0mm〜15mm、好ましくは0mm〜12mm、特に、0mm〜10mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のニードリング装置。
【請求項4】
前記トラバースローラ及び/又は延展機(A、B、C、D)のストローク長が無段調節可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニードリング装置。
【請求項5】
ストローク頻度が無段調節可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニードリング装置。
【請求項6】
少なくとも一つのローラ及び/又は延展機(A、B、C、D)の往復動作が、機械式、液圧式、電気式、磁気式、空圧式のいずれかあるいはこれらの組み合わせにより駆動されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のニードリング装置。
【請求項7】
特に抄紙機用フェルトの製造に用いられるニードリング装置の運転方法であって、ニードリング装置の少なくとも一つのローラ及び/又は少なくとも一つの延展機(A、B、C、D)が、運転中に軸方向、好ましくは前後に移動することを特徴とするニードリング装置の運転方法。
【請求項8】
前記ローラ及び/又は延展機(A、B、C、D)のストローク長が0mm〜15mm、好ましくは0mm〜12mm、特に、0mm〜10mmであることを特徴とする請求項7に記載の運転方法。
【請求項9】
前記ローラ及び/又は延展機(A、B、C、D)のストローク長が、特に運転中において無段調節及び/又は無段再調節されることを特徴とする請求項7又は8に記載の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−169869(P2007−169869A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−325708(P2006−325708)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(501330488)
【氏名又は名称原語表記】Huyck Austria G.m.b.H.
【Fターム(参考)】