説明

ネコ免疫不全ウイルスを検出するための方法および装置

動物においてネコ免疫不全ウイルス感染またはワクチン接種を判定するための方法および装置。該方法は、ネコからの生物学的サンプルをenvFIVポリペプチドと接触させ、サンプル中の抗体のポリペプチドに対する結合を検出することを含むアッセイである。アッセイは、サンプルおよび試薬の濃度,およびインキュベーションの時間および温度を調節することにより、ワクチン接種した動物からのサンプル中の抗体がポリペプチドに実質的に結合しないように最適化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願との相互参照
本出願は,2004年6月30日に出願された米国特許仮出願60/584,573に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明はネコ免疫不全ウイルスに対する抗体の検出に関するものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
従来は,ネコTリンパ球レンチウイルスと呼ばれていたネコ免疫不全ウイルス(FIV)は,1986年にカリフォルニア州ペタルマ(Petaluma)の大きな飼いネコ集団から初めて発見された(Pederson et al., Science (1987) 235: 790)。ネコがFIVに感染するとエイズ様症候群を呈する。FIVは形態的および病理学的にヒト免疫不全ウイルス(HIV)と似ているが,抗原性ではHIVと明確に区別される。HIVと同様,ネコが一旦FIVに感染すると。初期感染期(ウイルス血症,発熱,一般的なリンパ節炎)から長期の無症候期を経てCD4リンパ球の減少による極めて難治性の免疫機能障害が出現し,二次感染を併発して遂には死に至る。
【0004】
FIVはレトロウイルス科レンチウイルス亜科に分類される。レトロウイルス科にはヒト免疫不全ウイルス,サル免疫不全ウイルス,ウマ伝染性貧血ウイルス,ヒツジのマエディ・ビスナ・ウイルス,ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)が含まれる。FIVのゲノムは他のレンチウイルスと同様に,gag,polおよびenvに対応する3つの長いオープン・リーディング・フレームを有する構造をしている(Talbott et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (1989) 86: 5743; Olmsted et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (1989) 86: 2448)。gag遺伝子はウイルスの主要な構造要素,env遺伝子はエンベローブの糖タンパク質,pol遺伝子はポリメラーゼ・タンパク質をコードしている。
【0005】
gag遺伝子からは55kDのポリタンパク質が発現し,これはプロセシングされてp15マトリックス・タンパク質,p24カプシド・タンパク質,p10核カプシド・タンパク質の3つのサブユニットとなる。pol遺伝子は,プロテアーゼ,逆転写酵素,それに機能不明のp14.6タンパク質の3つのタンパク質をコードしている。この遺伝子のプロテアーゼ部分の自動プロセシングにより,pol領域の3つのタンパク質すべての産生が増加する。さらに,このプロテアーゼはgag前駆物質のプロセシングにも重要な働きをする。pol遺伝子はgag-pol融合タンパク質として発現する。エンベローブ遺伝子は160 kDの糖タンパク質gp160として発現する。FIVコア・タンパク質の抗原性は他のレンチウイルスとよく似ている。
【0006】
世界中でいくつかのウイルス株が分離され,ウイルスの構造を決定するためいくつかの独立した研究が実施されてきた。用いられた分離株は米国のペタルマ株(Talbott et al. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 5743-5747; Philipps et al., J. Virol., 1990, 64, 10, 4605-4613),日本のTM1株とTM2株(Miyazawa et al., Arch.Virol., 1989, 108, 59-68),スイスのFIVZ1株とFIVZ2株(Morikawa et al., Virus Research, 1991, 21, 53-63)である。
【0007】
米国のFIV分離株(ペタルマ株)から得られた3つのプロウイルス・クローン(FIV34TF10,FIV14,分離PPRの各クローン)のヌクレオチド配列が誌上発表され(Olmsted, et al. 1989; Philipps et al., 1990; Talbott et al., 1989),2つのスイス株と比較されている(Morikawa et al. 1991)。Morikawaらは,この比較研究により,FIVのenv遺伝子にはいくつかの不変領域と可変領域が存在することを明らかにした。フランス株(Wo株とMe株)も分離されている(Moraillon et al., 1992, Vet. Mic., 31, 41-45)。
【0008】
このウイルスは,最適には,血液中の単核球の中で複製されて増殖し,Tリンパ球,腹水マクロファージ,脳マクロファージ,星状膠細胞に対する指向性がある。他のレトロウイルスで一般的なように,FIVの遺伝子物質はRNAであり,ウイルスRNAからDNAコピーを産生する過程は宿主中でFIVが複製するために必要不可欠なステップである。このステップには侵入したウイルスが宿主に持ち込んだ逆転写酵素が必要である。ウイルスゲノムのDNAが感染宿主細胞の遺伝物質の中に挿入され,ここでウイルスはプロウイルスの形で住み続ける。このプロウイルスは,細胞が分裂するたびに複製され,新しいウイルス粒子を産生することができる。FIVに感染した細胞は死ぬまで感染したままである。
【0009】
感染したネコの唾液には相当量のウイルスが存在することから(Yamamoto et al., Am. J. Vet. Res. 1988, 8:1246),このウイルスは通常,主に感染したネコが噛んだ傷からの水平感染で伝染すると考えられる。垂直感染の報告もあるが,これはまれである。
【0010】
FIV感染の現在の診断スクリーニング試験では,血清中の抗FIV抗体(Ab)を検出している。ウイルス検出キットも入手できるが,普及していない。感染動物中の抗FIV抗体の存在を判定する診断試験が多数利用できる。例えば,PetChek(登録商標)FIV抗体試験キットおよびSNAP(登録商標)Combo FeLV Ag/FIV抗体試験キット(IDEXX Laboratories, Westbrook, Maine)は,免疫測定法に基づいたFIV感染の診断試験である。
【0011】
FIV感染が世界中で広がっていることがいくつかの研究により明らかになっていることから,FIV感染の検出は益々重要となっている。この疾患に対処するためにワクチンが開発されていることから,ワクチンの効果を判定すること,またワクチン接種されたネコと自然感染したネコを識別することがさらに重要となってきている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
生物学的サンプルにおいてネコ免疫不全ウイルス(FIV)に対する抗体を検出する方法であって、この方法は、生物学的サンプルをFIV envポリペプチドと接触させ、ポリペプチドがサンプル中の抗体と実質的に結合するか否かを検出することを含み、ここで、反応条件は、該方法が、自然に感染した動物からのサンプル中のFIV抗体を検出するが、ワクチン接種した動物からのサンプル中の抗体を検出しないように最適化されている。
【0013】
本発明の種々の観点においては、方法は、サンプルを希釈することにより,ポリペプチドの濃度を調節することにより,反応の温度を調節することにより,および/または反応の時間を調節することにより,最適化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面の簡単な説明
図1A−1Cおよび2A−2Cは、血清サンプルの連続希釈に対するイムノアッセイの結果を示す。FIV envポリペプチドに実質的に結合するFIV抗体が検出された。
【0015】
詳細な説明
本明細書に記載される発明を詳細に説明する前に,いくつかの用語の定義を記す。本明細書において用いる場合,単数形の“a”,“an”,および“the”は,文脈が明らかに示しているのでない限り,複数形の関係項も含めるものとする。
【0016】
本明細書において用いる場合,「ポリペプチド」という用語はペプチド結合でつながっているアミノ酸残基の単鎖もしくは2つ以上の鎖の複合体からなる化合物を指す。ペプチド鎖はどのような長さでも良い。タンパク質はポリペプチドであり,これらは同義語として扱う。本発明の範囲内には,機能上同等のFIVポリペプチドの変異体および断片も含まれる。ポリペプチドはそのポリペプチドに特異的な1つまたは複数の抗体と結合することができる。
【0017】
FIVに由来するポリペプチドには、FIVプロテオームの任意の領域が含まれ、例えば、gagおよびenv領域の一部、およびこれらのミミト−プが含まれる。米国特許5,648,209,5,591,572,および6,458,528(その全体を本明細書の一部としてここに引用する)は、FIV envおよびgagタンパク質に由来するFIVポリペプチドを記載する。これらのペプチド,およびenvおよびgagタンパク質からの同様の他のペプチドは,本発明の方法において使用するのに適している。適当なenvポリペプチドの例は、天然のFIV env配列のアミノ酸696-707であり、本明細書においては、非天然のN−末端システイン残基とともに示される:
CELGCNQNQFFCK [配列番号:1]
【0018】
別の有用なポリペプチドには、配列番号:1の変種が含まれ、例えば、以下のものが挙げられる:
CELGSNQNQFFSK [配列番号:2]
ELGSNQNQFFSKVPPELWKRYNKSKSKSKSKNRWEWRPDFESEKC [配列番号:3]
【0019】
「結合特異性」または「特異的結合」とは,第1の分子が第2の分子を実質的に認識することを表し,例えばポリペプチドとそのポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体あるいは抗体の断片(例えば,Fv,単鎖Fv,Fab’,またはF(ab’)2断片)である。
【0020】
「実質的な結合」または「実質的に結合する」とは,特定の測定条件下における測定混合物中の分子間の特異的な結合あるいは認識の程度をいう。最も広い観点においては,実質的な結合は第1の分子が第2の分子と結合するか,または第2の分子を認識する能力の欠如の程度と,第1の分子が第3の分子と結合するかまたは第3の分子を認識する能力の大きさの差,すなわち分子の相対濃度などの特定の測定条件下において,実質的な結合を識別する意味ある測定を実施するための十分な差に関係している。別の観点においては,分子の相対濃度やインキュベーションなどの特定の測定条件下において,第1の分子が第2の分子に対して,第3の分子に対して示す反応性の25%以下,好ましくは10%以下,さらに好ましくは5%以下の反応性を示す場合,交叉反応という意味において,1つの分子が別の分子と結合するかまたは別の分子を認識する能力が実質的に欠如している。特異的な結合は広く知られている多くの方法,すなわち免疫組織化学法,酵素免疫測定法(ELISA),放射性免疫測定法(RIA),またはウェスタン・ブロット法で試験することができる。
【0021】
FIVに感染する動物はネコ類であり,飼いネコ,ライオン,トラ,ジャガー,ヒョウ,ピューマ,オセロットなどネコ目のすべての動物が含まれると理解されている。本明細書において用いる場合,「ネコ」,「動物」の用語はすべてのネコ類を指す。
【0022】
「生体サンプル」とは唾液,全血,血清,血漿,その他FIV抗体を含んでいると考えられるサンプルなどの,被検動物から得られたサンプルを指す。
【0023】
FIVワクチンは,例えば米国特許6,667,295,5,833,993,6,447,993,6,254,872,6,544,528,および米国特許公開20040096460に記述されており,それぞれはその全体が参照として本明細書に組み込まれている。米国特許6,447,993および6,254,872は,異なるFIV亜種の細胞フリーウイルス単離物,または異なる亜種からの異なるプロトタイプFIVウイルスに感染したいくつかの細胞株の組み合わせから調製されたワクチンを記述している。米国特許5,833,933は,FIV gagタンパク質およびFIV envタンパク質をコードしているDNA配列を含むワクチンを記述している。これらのワクチンにはその配列を発現するための発現システムが含まれている。利用できるワクチンの1つに,FEL-O-VAX(登録商標) FIV(Fort Dodge Animal Health, Overland Park, Kansas)がある。
【0024】
FIV感染に対してワクチン接種された動物の生体サンプルは,ワクチンに反応して生成された抗体が存在しているため,FIV感染に対する試験で陽性結果を示す可能性がある。1つの観点においては,本発明は,FIVに自然感染した動物を,FIV未感染またはFIVワクチンを接種された動物から鑑別する方法を提供する。
【0025】
本発明は、自然に感染した動物からの抗(FIV env)抗体の親和性および/または結合速度論を、ワクチン接種した動物からの抗体と比較したときの相違を利用する。一般に,この方法は、動物からの生物学的サンプルをFIV envポリペプチドを固定化した固相と接触させることを含む。固相を洗浄した後、標識した抗(ネコIgG)第2抗体を用いて、イムノアッセイの技術分野においてよく知られる方法により、固相上のFIV envポリペプチドに結合する抗(FIV env)抗体を検出することができる。この方法は、アッセイが、自然感染に対する動物の免疫応答である抗体を検出し、ワクチン接種に対する動物の免疫応答である抗体を検出しないよう、最適化することができる。
【0026】
1つの観点においては,本発明は、FIV感染に対する動物の免疫応答の成分であるがワクチン接種に対するものではない、サンプル中の抗体を検出する方法を提供する。この方法は、動物から生物学的サンプルを取得し、サンプルをFIV envポリペプチドが固定化されている固相と接触させることを含む。固相は、一般にはマイクロタイタープレートまたは側方流デバイスの固相マトリクスであるが、本発明は、イムノアッセイの技術分野で一般に知られるあらゆるフォーマットで実施することができる。FIV envポリペプチドの固相への結合は、ポリペプチド固定化の技術分野の当業者によく知られる方法によって行うことができる。
【0027】
1つの観点においては,この方法は、サンプルを希釈することにより最適化する。図1および2は、種々のサンプル希釈および反応時間で行ったアッセイの結果を示す。これらの図面は、5,10および60分間の反応時間における、サンプル希釈とアッセイシグナル(A650nm)との間の相関を示す。図1においては,相対的サンプル抗体濃度が2倍サンプル希釈列で示されている。図2においては,サンプル抗体濃度(希釈)は、320倍希釈の血清サンプルを任意濃度10として、これに対する相対値で示されている。図1および2に示されるように、適当なサンプル希釈および反応時間を用いた場合、自然にFIVに感染した動物をワクチン接種した動物から区別することができる。
【0028】
本発明の方法による抗体検出は、部分的には、標識抗(ネコIgG)の濃度により決定されるため,ワクチン接種した動物からのサンプルがもはや陽性の結果を与えない正確な希釈率は、部分的には、コンジュゲートの作業濃度に依存する。コンジュゲートの適当な作業濃度は、特定の希釈率での陽性対照についての最大シグナルおよびその希釈率での陰性対照についての最小シグナルに基づいて決定することができる。
【0029】
一旦、コンジュゲートの作業濃度が決定されれば、ワクチン接種したサンプルが陽性の結果を与えない希釈率は、ワクチン接種した動物からの対照血清をこのアッセイ方法において滴定することにより決定することができる。
【0030】
サンプルの希釈と同様に,本発明の方法は、作業コンジュゲートの濃度を調節することにより最適化することができる。例えば、コンジュゲート濃度が比較的低い場合には、より低いサンプル希釈率はワクチン接種した動物について陽性の結果を与えないはずである。同様に、コンジュゲート濃度が比較的高い場合には、より高いサンプル希釈率は、ワクチン接種した動物についてなお陽性の結果を与えるはずである。当業者は、サンプル希釈率および/またはコンジュゲートの濃度を容易に調節して、アッセイが自然感染に対する動物の免疫応答を検出し、ワクチン接種に対する動物の免疫応答を検出しないように、本発明の方法を最適化することができる。
【0031】
本発明の方法を最適化する別の方法には、インキュベーション工程の時間および温度の調節が含まれる。本発明の方法の種々の観点においては、インキュベーションは室温(約20℃)で行い、インキュベーション時間は可能な限り短い時間に保つ。本明細書において説明されるように、本発明の方法は、多くの方法により最適化することができ、当業者は、この方法において用いられる希釈率,濃度,温度および時間を同時に調節して、FIV感染またはワクチン接種に対する抗体を有する血清の鑑別検出を実施することができる。
【0032】
動物におけるワクチンに対するFIV抗体の生成は、ワクチンにより異なる。例えば、動物は、FEL-O-VAX(登録商標)ワクチンを用いるワクチン接種の約2−4週間後に、FIV p24(gag)タンパク質に対する抗体について血清陽性となることが見いだされている。しかし,そのようにワクチン接種した動物は、envタンパク質の1またはそれ以上の領域に対する持続性の抗体を生成することができない。これに対し、自然に感染した動物は、典型的には、FIVgagおよびenvタンパク質の両方に対する抗体を生成する。
【0033】
ある場合には、ワクチン接種後の初期段階の間,動物は一時的に(過渡的に)、特定のFIVポリペプチドに対するある種の抗体を、自然感染に応答して生成される抗体と比較してより低いレベルで生成することができる。これらの抗体のレベルは、ある期間の後に次第に衰え、初期段階が過ぎた後ではこれらのポリペプチドに対する抗体は検出されない。一般に,この時間の長さは、10から12週間であるが、種によって、および個々の対象動物によって異なる。これらの抗体は、初期段階が過ぎた後では、ワクチンに対する動物の免疫応答の重要な成分としては検出されない。
【0034】
例えば、FIVgagタンパク質p15およびp24は、死滅させた全ウイルスFIVワクチンの免疫原性成分でありうる。これらの成分は、動物に投与したときに、比較的持続する抗体応答を誘導すると予測される。一方、ある種のワクチンは、免疫学的に有意な量のある種のFIV envポリペプチドを含まないかもしれず、またはこのポリペプチドはウイルス不活性化の過程で変化しているかもしれず,またはワクチン接種によるこのタンパク質の抗原提示は、自然感染に対する抗体(存在する場合には)がある期間内にp15およびp24に対する抗体より少なく検出される点で、自然感染に対する抗原提示と異なるかもしれない。すなわち,ワクチン接種後の初期段階の間、動物は、一時的にある種のFIV envポリペプチドに結合する低いレベルのそのような抗体を生成することができるが、そのような抗体の生成はいずれも、時間の経過とともに低下し、約12週間後には検出されない。この例においては,一時的に生成された抗体は、ある期間の経過後では、ワクチンに対する動物の免疫応答の有意な成分としては検出されない。
【0035】
ある種のFIV envポリペプチドに対する検出可能な抗体の生成は、通常はワクチン接種の完了の約12週間後に低下するため、本発明の1つの観点においては,生物学的サンプルは、好ましくは約12週間以内にFIVワクチンの接種を受けていない動物から採取する。ワクチン接種の状態が不明であり、かつ試験の結果が陽性である場合には、さらに12週間後の再試験を推奨することができる。
【0036】
本発明の1つの観点においては,ポリペプチドは適切な固形支持体の上に固定化される。生体サンプルをポリペプチドと接触させ,サンプル中に抗体が存在する場合には抗FIV抗体はポリペプチドに結合する。結合は,酵素,放射性物質,粒子,蛍光標識など適切な方法によって検出することができる。適切な実施形態では,検出試薬は抗FIV抗体(もし存在するなら)を捕捉するのに使用されるものと同じかまたはこれに類似するポリペプチドと結合させることができる。
【0037】
本発明に使用するポリペプチドは,天然のFIVタンパク質の1つおよびこれらのミミトープおよび機能的に同等の変異体に見出される少なくとも6個のアミノ酸,通常は少なくとも9個のアミノ酸,さらに通常は12個以上のアミノ酸を含む。
【0038】
「機能上の同等」または「機能的に同等」とは,元来のFIVエンベローブ(env)およびウイルス・コア(gag)のポリペプチド配列に関係するか,またはこれに由来するポリペプチドのことを指し,そのアミノ酸配列が1個または複数のアミノ酸の置換,挿入,欠失により修飾されている場合,およびアミノ酸類似物などアミノ酸が化学的に修飾されているが,なお実質的に同等の機能を保持している場合である。機能的に同等の変異体は,自然の生物学的多様性として発生することもあり,または化学合成,部位特定の突然変異,無作為突然変異,アミノ酸の酵素的切断および/または結合などの既知の技術を使って作製することもできる。このように,変異体配列を得るためのアミノ酸配列の修飾は,ポリペプチドの機能が影響されない限り起こり得る。
【0039】
本発明の範囲内における機能的に同等のFIV変異体は,保存的に置換された配列を含んでいてもよく,すなわち,FIVポリペプチドの1個または複数のアミノ酸残基がFIVポリペプチドの二次元および/または三次元構造を変えないように別の残基で置き換えられていてもよい。そのような置換には,荷電密度,大きさ,構成,親水性/疎水性などの同じような生理化学的特性を持つ残基でアミノ酸を置き換えることが含まれる。例としてのみの目的で挙げれば,そのような置換には1つの脂肪族残基(Ile,Val,Leu,Ala)を別の脂肪族残基に置き換える,あるいは塩基性残基(LysとArg),酸性残基(GluとAsp),アミド残基(GlnとAsn),ヒドロキシ残基(SerとTyr),芳香族残基(PheとTyr)を互いに置き換えることが含まれる。保存的な変異体は通常,本発明のポリペプチド配列を修飾し,修飾されたポリペプチドの抗原性を,例えば免疫組織化学法,酵素免疫測定法(ELISA),放射性免疫測定法(RIA),またはウェスタン・ブロット法によって評価することにより同定できる。表現形質的に表立たないアミノ酸変換体の作製に関する詳細は,ボーウィらの論文(Bowie et al., Science 247:1306-1310, 1990)に見ることができる。
【0040】
その他の変異体も本発明の範囲内で企図されており,そのような変異体には,例えば不特定数の残基のアミノ酸配列の追加ならびに1つまたは複数のアミノ酸の配列内への挿入により得られる,アミノおよび/またはカルボキシル末端の融合が含まれる。例えば,追加されるアミノ酸配列は,別のポリペプチドまたはタンパク質の全体または一部に由来するものであってもよく,またはFIVのエンベローブまたはウイルスのタンパク質の対応する位置に提供されているものであってもよい。より長いペプチドは1つまたは複数のポリペプチド配列の複数のコピーを含んでいてもよい。さらに,複数のコピーのポリペプチドをポリリジンの主骨格のようなポリアミノ酸の主骨格と組み合わせて多抗原ペプチド(MAP)を形成してもよい。
【0041】
アミノ酸配列の欠失変異体は,配列から1つまたは複数のアミノ酸残基が除去されている変異体である。挿入変異体は,1つまたは複数のアミノ酸がポリペプチドのあらかじめ定められた部位に組み込まれている場合に相当するが,無作為挿入法は結果的な産物の適切なスクリーニングを有するオプションである。いずれの場合も,用いられるこれらおよびその他のFIV変異体は実質的にFIVポリペプチドと同じ抗原性を保持している。その他の変異体も企図されており,例えば,このタンパク質の抗原認識領域以外の領域のアミノ酸が置換されているものがある。FIVの2つ以上のポリペプチド配列を含む融合タンパク質も,その配列が適切な抗原性を提示する限り,本発明の範囲内にある。そのようなポリペプチドは一般的に,FIVの特徴であるエピトープまたはミミトープの少なくとも1つに対応している。特徴とは,エピトープまたはミミトープが,生体サンプル中のFIVに対する抗体の免疫学的検出を妥当な確かさで可能にすることを意味する。通常,エピトープまたはミミトープ,変異体または融合タンパク質は,免疫学的にFIV以外のウイルスから明確に区別されること(すなわち,FIV以外のウイルスを認識する抗体と交叉反応しないこと)が望ましい。
【0042】
抗原性を発揮する変異体は,配列番号1−3またはその断片と,例えば1,2,3,5,6,10,15または20個のアミノ酸残基が異なる。この比較にアライメントが必要なときは,配列を最大相同性に対してアライメントする。欠失,挿入,置換,反復,逆位,あるいは不一致は相違と考える。相違は非必須の残基での相違または変化,あるいは保存的な置換であることが好ましい。でき上がった変異ポリペプチドが,抗原的に配列番号1−3と実質的に類似している限り,ポリペプチドのどの場所でも変位部位が生じうる。機能的に同等の変異体の例には,50%以上のアミノ酸が相同性を示すものが含まれる。相同性は60%,70%,あるいは80%より大きいことが好ましい。しかし,そのような変異体は全体的に少ない割合の相同性を示すかもしれないが,相同性の領域が保存されている点でなお本発明の範囲内である。
【0043】
場合によっては,特定のキャリアーとの結合を促進するため,あるいはジスルフィド結合が抗原ループを模倣できるようにして抗原性を高めるために,1個または複数のシステイン残基をポリペプチドの末端に付加することができる。さらに,デリバリーベヒクルへの取り込みを容易にし抗原性および免疫原性を増すために,ペプチドに脂肪酸または疎水性尾部を付加することもできる。
【0044】
本発明のポリペプチドはまた、配列番号:1−3のフラグメントを含むことができる。例えば、ポリペプチドのフラグメントは、配列番号:1−3に示されるポリペプチドの少なくとも約5,6,8,10,12,15,18,20,22,24,または26個の連続するアミノ酸を含むことができる。
【0045】
検出試薬として使用するFIVポリペプチドは自然のもの,すなわち自然界から分離されたFIVタンパク質全体または断片であってもよく,または合成されたものであってもよい。自然のタンパク質はアフィニティ・クロマトグラフィなど慣用の方法でFIVウイルス全体から分離することができる。既知の技術で,ポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体を使用して適切なアフィニティ・カラムを調製することができる。
【0046】
自然界のFIVタンパク質と免疫学的に交叉反応するポリペプチドを化学的に合成することができる。例えば,アミノ酸を連続的に付加して長くしてゆく既知のMerrifield固相合成法により,約100個以下,より一般的には約80個以下,典型的には約50個以下のアミノ酸からなるポリペプチドを合成することができる(Merrifield, 1963, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2156)。組み換えタンパク質を使用することもできる。これらのタンパク質は,FIVゲノムの目的部位をコードしている組み換えDNA分子を持った培養細胞中で発現させることにより製造することができる。FIVゲノムの部分はそれ自体自然でも合成でもよいが,自然の遺伝子は分離されたウイルスから慣用の技術により取得することができる。もちろんFIVのゲノムはRNAであり,逆転写酵素を使った慣用の技術により自然のRNAをDNAに転写する必要がある。ポリヌクレオチドも既知の技術で合成することができる。例えば,短い単鎖DNA断片はBeaucageおよびCarruthersによって記載されているたフォスフォアミダイト法を用いて製造することができる(Beaucage and Carruthers, 1981, Tett. Letters 22:1859-1862)。二本鎖断片は,相補性の鎖を合成した後それを適当な条件下でともにアニールするか,適当なプライマー配列とDNAポリメラーゼを使って相補性の鎖を加えてゆくことにより作製できる。
【0047】
目的のFIVタンパク質または断片をコードした自然のまたは合成のDNA断片は,生体外(in vitro)で細胞培養に導入でき発現させることができるDNAコンストラクトの中に組み込むことができる。通常,DNAコンストラクトは酵母や細菌のような単細胞内で複製させるのに適したものである。それらを哺乳動物の培養細胞または他の真核細胞のゲノムに導入し一体化させることも企図される。細菌や酵母に導入するために用意されるDNAコンストラクトには,宿主細胞に認識される複製システム,目的のポリペプチド産物をコードしているFIV DNA断片,FIV DNAの5'末端に結合している転写および翻訳の開始制御配列,および断片の3'末端に結合している終末制御配列が含まれる。転写制御配列は宿主細胞によって認識される異種プロモーターを含む。便利なことに,多数の宿主細胞のための多くの適切な発現ベクターが市販されている。
【0048】
本発明の検出方法に有用であるためには,ポリペプチドは実質的に純粋な形,すなわち典型的には純度が約50%w/w以上であって,妨害タンパク質や不純物が実質的に含まれていない形で得る。FIVポリペプチドは少なくとも80% w/wの純度で分離あるいは合成するのが好ましく,少なくとも95% w/wの純度ならさらに好ましい。慣用のタンパク質精製法を使って少なくとも約99% w/wの純度の同種ポリペプチド成分を取得することができる。例えば,上述のイムノアフィニティ・カラムを使用して,以下に示す抗体を用いてポリペプチドを精製することができる。
【0049】
本発明の方法は,マイクロプレートや側方流(lateral flow)装置などの使用を含む(ただしこれらに限定されない),当業者に知られる免疫測定技術を用いて行なうことができる。1つの実施形態では,FIVポリペプチドは固形支持体上の特定の位置に固定化される。固形支持体上のポリペプチド抗体複合体の検出は,当業者に知られる任意の方法で可能である。 例えば,参照のため本明細書にその全体が組み込まれている米国特許5,726,010には,本発明に有用な側方流(lateral flow)装置であるSNAP(登録商標) 免疫測定装置(IDEXX Laboratories)の例が記載されている。市販されているWITNESS(登録商標) FIV診断試験(Synbiotics Corporation, Lyon, France)のようなコロイド粒子に基づく試験も使用可能である。
【0050】
例えばFIVポリペプチドなどの1つまたは複数の分析物捕捉試薬を装置あるいは固形支持体上に固定化して,分析物捕捉試薬がサンプル,希釈液および/または洗浄操作により洗い流されないようにする。物理的な吸収(すなわち,化学リンカーを使用せず)または化学的結合(すなわち,化学リンカーを使用して)によって,1つまたは複数の分析物捕捉試薬を表面に付加することができる。化学的結合は特異的結合物質を表面により強く取り付け,表面結合分子の明確な方向と配座を提供することができる。
【0051】
本発明の別の実施形態では,側方流(lateral flow)測定法に適切な装置を提供する。例えば,試験サンプルをフローマトリックスの第1の領域(サンプル適用ゾーン)に添加する。試験サンプルは毛細管現象により液体流路に沿って流れてフローマトリックスの第2の領域に運ばれ,ここで標識物質は試験サンプル中の分析物と結合して第1の複合体を形成することができる。第1の複合体は,FIVポリペプチドが明確な部位に固定化されているフローマトリックスの3番目の領域に運ばれる。固定化されたポリペプチドとサンプル中の抗体を含む第1の複合体との間で第2の複合体が形成される。例えば,金ゾル粒子とFIV抗体に結合しているFIVポリペプチドを含む第1の複合体は,第2の固定化FIVタンパク質またはネコの抗体に対する第2抗体と特異的に結合して第2の複合体を形成する。第2の複合体の一部を成す標識物質は直接可視化できる。
【0052】
別の観点においては,本発明は,本発明の装置に適用する前に試験サンプルと混合できる1つまたは複数の標識化特異的結合試薬を含む。この場合,標識化特異的結合試薬を装置の特異的結合試薬パッドに沈着させ乾燥させる必要はない。標識化特異的結合試薬は,例えば試験サンプルに加えるにしても装置にあらかじめ沈着させるにしても,FIVに対する抗体に特異的に結合する標識化FIVポリペプチドでありうる。
【0053】
上記の実施形態のいずれもキットとして提供することができる。1つの具体的な例において,そのようなキットは,特異的結合試薬(例えば,非固定化標識化特異的結合試薬および固定化分析物捕捉試薬)および洗浄試薬,ならびに所望の場合または適切な場合には検出試薬および陽性および陰性コントロール試薬を備えた装置を含む。さらに,安定化剤,バッファなどのような他の添加物を含むことができる。種々の試薬の相対量は,測定法の感度を実質的に最適化する溶液中の試薬濃度を提供するため,様々であることができる。特に,試薬は乾燥粉末(通常は凍結乾燥)で提供することができ,溶解してサンプルと混合するための適切な濃度の試薬溶液とする。
【0054】
FIVポリペプチドは反応ゾーン(固相)中の固定化分析物捕捉試薬でありうる。標識物質とコンジュゲートさせた第2の分析物捕捉試薬,すなわち第2のFIVポリペプチドは,サンプルを装置に適用する前にサンプルに添加してもよく,第2の分析物捕捉試薬を装置に組み込むこともできる。例えば,標識化特異的結合試薬は,サンプル適用ゾーンと固相の間の液体連絡を与える液体流路に沈着させ乾燥させることができる。標識化特異的結合試薬が液体サンプルに接触すると,標識化特異的結合試薬が溶け出す。
【0055】
この装置には,結合していない物質(例えば,未反応の液体サンプルや未結合の特異的結合試薬)を反応ゾーン(固相)から除去する液体試薬を含めることができる。液体試薬は洗浄試薬であって,未結合物質を反応ゾーンから除去することのみに作用してもよく,検出試薬を含み,未結合物質を除去し分析物の検出を促進することの両方に利用することができるものであってもよい。例えば,酵素とコンジュゲートさせた特異的結合試薬の場合,検出試薬は反応ゾーンで酵素抗体コンジュゲートと反応して検出可能な信号を発生する基質を含む。放射性物質,蛍光物質,または吸光分子とコンジュゲートさせた標識化特異的結合試薬の場合,検出試薬は単に未結合の標識試薬を洗い流すことによって反応ゾーンでの複合体形成の検出を促進する洗浄液としての役目のみを果たす。
【0056】
装置には2つ以上の液体試薬が存在していてもよく,例えば装置は洗浄試薬として働く液体試薬と検出試薬として働き分析物の検出を促進する液体試薬を含むことができる。
【0057】
液体試薬にはさらに限定された用量の「阻害物質」,すなわち検出可能な最終産物の発生を阻止する物質を含むことが可能である。限定された用量とは,過剰の未結合物質のほとんどまたはすべてが第2の領域から運び出されるまで最終産物の発生を阻止し,その時点で検出可能な最終産物が生成するのに十分な阻害物質の量である。
【0058】
以下は例示目的のためだけに提供され,上記の広範な項で記述した本発明の範囲を限定することを意図するものではない。この開示で引用しているすべての参考文献は参照として本明細書に組み入れられている。
【実施例】
【0059】
実施例1
FIV陰性であり感染したことが確認されたネコ、およびFEL-O-VAX(登録商標)FIVワクチン(Fort Dodge Animal Health, Fort Dodge Iowa)でワクチン接種したネコから採取した血清について、マイクロプレートELISA分析を行った。このワクチンは、複数の株の全死滅FIVウイルスから作成したものである。ワクチン接種の84日後にワクチン接種したネコからサンプルを得た。
【0060】
以下のenvFIVポリペプチドに対する抗体が検出された。ポリペプチド(タンパク質)は、コンジュゲーションの化学反応において用いるためにN末端システイン(C)を含む。
CELGCNQNQFFCK [配列番号:1]
CELGSNQNQFFSK [配列番号:2]
ELGSNQNQFFSKVPPELWKRYNKSKSKSKSKNRWEWRPDFESEKC [配列番号:3]
【0061】
遊離ペプチドまたはウシ血清アルブミン(BSA)とコンジュゲート化したポリペプチドを,緩衝溶液(pH8)中5-10ug/mlでマイクロプレートウエルにコーティングした。次に、マイクロプレートウエル上のタンパク質結合部位を、例えばBSAでブロッキングし、ウエルを緩衝化ショ糖溶液でオーバーコーティングした。
【0062】
血清サンプルは、最初に10倍に希釈し、この初期希釈から,FIV抗体の濃度が2,4,8,16,36,64,128,256,512,1024,2048,および4096倍に希釈されるように希釈列を調製した。希釈バッファは、50%ウシ胎児血清を含むPBSであった。
【0063】
希釈したサンプルをウエルに加え、プレートを室温で5,10または60分間インキュベートした。インキュベーション後,マイクロプレートをPBS/Tweenで洗浄した。市販のヤギ抗(ネコIgG):ペルオキシダーゼコンジュゲートを50%ウシ胎児血清中で希釈して、ウエルに加えた。プレートを室温でさらに15分間インキュベートし、PBS/Tweenで2回目の洗浄を行った。ペルオキシダーゼの基質を加え、プレートを室温で10分間、3回目のインキュベートを行った。ペルオキシダーゼの生成物(活性)は、分光光度計を用いて測定した。
【0064】
図1A−Cは、感染したネコおよびワクチン接種したネコについて、ELISAシグナルに及ぼすサンプル抗体濃度(希釈)の影響を示す。この実験では、配列番号3のポリペプチドをコーティングしたマイクロプレートウエルを用い、希釈サンプルを最初にウエル中で5,10および60分間インキュベートした。A650を測定した。S−Nは、サンプルシグナルから陰性対照シグナルを差し引いたものである。高いサンプル希釈率(低いサンプル濃度)においては、感染したネコはこの方法により陽性として検出され、一方ワクチン接種したネコは陽性として検出されない。感染したネコとワクチン接種したネコとの間のアッセイシグナルの相違は、いずれのサンプル希釈率についても、サンプルインキュベーション時間を60分間から5分間に短くすると増加した。したがって、より短いサンプルインキュベーション時間もまた、この方法を用いる感染したネコの鑑別検出に好ましい。
【0065】
図2A−Cは、FIV env配列を含む3つの異なるポリペプチド(配列番号1,2および3)をコーティングしたマイクロタイタープレートを用いる間接フォーマットELISA法による、感染したネコからのシグナルとワクチン接種したネコからのシグナルとの比率を示し、最初のサンプルインキュベーション時間は、5,10または60分間のいずれかであった。サンプル濃度は10倍の初期血清サンプル希釈に対するものであり、この初期希釈から、サンプルの濃度が20,40,80,160,および320倍に希釈されるように、希釈列を調製した。用いた最低サンプル濃度(最高希釈)を任意値10とし,用いた増加するサンプル濃度は、この値に対して、20,40,80,160,および320であった。図1A−Cに示されるように,図2の3つすべてのポリペプチドについて、より低いサンプル濃度およびより短いサンプルインキュベーション時間の場合に、ワクチン接種したネコと比較した感染したネコのアッセイシグナルの差異(比率)が増加した。
【0066】
これらの結果は、FIVに感染したがワクチン接種していないネコからの血清中の抗体についての抗体/抗原結合反応の速度論的パラメータは、ワクチン接種した,感染していないネコからの血清中の抗体と比較して、相違していることを示す。さらに,これらの速度論的パラメータを体系的に操作することにより,感染したネコ中の抗体が鑑別検出され、ワクチン接種したネコ中の抗体が検出されないよう、FIV抗体のイムノアッセイを最適化することができる。
【0067】
本明細書において本発明の様々な特異的実施形態を説明したが,本発明はそれらの厳密な実施形態に限られるわけではなく,当業者は本発明の範囲や精神から逸脱することなくそれらに様々な変更や修飾を与え得ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1A】図1Aは、FIV envポリペプチドに対するFIV抗体の検出を示す。
【図1B】図1Bは、FIV envポリペプチドに対するFIV抗体の検出を示す。
【図1C】図1Cは、FIV envポリペプチドに対するFIV抗体の検出を示す。
【図2A】図2Aは、FIV envポリペプチドに対するFIV抗体の検出を示す。
【図2B】図2Bは、FIV envポリペプチドに対するFIV抗体の検出を示す。
【図2C】図2Cは、FIV envポリペプチドに対するFIV抗体の検出を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプルにおいてネコ免疫不全ウイルス(FIV)に対する抗体を検出する方法であって,生物学的サンプルをFIV envポリペプチドと接触させ、ポリペプチドがサンプル中の抗体と実質的に結合するか否かを検出し、ここで、該方法は、自然感染した動物からのサンプル中のFIV抗体を検出しうるが、ワクチン接種した動物からのサンプル中の抗体を検出しないように反応条件が最適化されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
FIV envポリペプチドが固相に結合している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該方法が、サンプルを希釈することにより最適化されている、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該方法が、ポリペプチドの濃度を調節することにより最適化されている、請求項1記載の方法。
【請求項5】
該方法が、反応の温度を調節することにより最適化されている、請求項1記載の方法。
【請求項6】
方該法が、反応の時間を調節することにより最適化されている、請求項1記載の方法。
【請求項7】
動物におけるFIV感染を検出する方法であって、
(a) サンプルをFIV envポリペプチドが固定化されている固相と接触させ;
(b) サンプルおよび固相を、標識とコンジュゲート化されている種特異的IgG抗体と接触させ;
(c) 標識を検出し,このことにより動物におけるFIV感染を検出する;
ことを含み、ここで、該方法は、ワクチン接種に対する動物の免疫応答であるFIVに対する抗体を検出することができないように最適化されていることを特徴とする方法。
【請求項8】
該方法が、サンプルを希釈することにより最適化されている、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該方法が、標識された抗体の濃度を調節することにより最適化されている、請求項7記載の方法。
【請求項10】
該方法が、インキュベーションの温度を調節することにより最適化されている、請求項7記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2008−505314(P2008−505314A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519191(P2007−519191)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/007587
【国際公開番号】WO2006/011917
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(300004500)アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】