説明

ネジ締め工具

【課題】全体のコンパクト化を達成する。
【解決手段】モータ4と、モータ4を収容する本体ハウジング2と、本体ハウジング2に延設されたハンドル10と、ハンドル10に設けられるスイッチ11と、本体ハウジング2の前方に配置されるハンマーケース6と、モータ4により回転可能なスピンドル7と、ハンマーケース6の前端に保持され、ビット27を保持可能なアンビル9と、を有するインパクトドライバ1であって、アンビル9に、ビット27の挿着孔28を設けると共に、挿着孔28と連通するように貫通形成される軸受孔25を設け、軸受孔25の内部に、スピンドル7の前端を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インパクトドライバ等のネジ締め工具に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、ネジ締め工具の一例であるインパクトドライバの一部縦断面図で、このインパクトドライバ40は、ハウジング41内でモータ42によって回転するスピンドル43と、そのスピンドル43の前方でハウジング41に同軸で軸支され、ビット46の挿着孔45を有する前端をハウジング41の前方へ突出させたアンビル44と、スピンドル43に外装されるハンマー47等を含んでスピンドル43の回転を回転打撃力としてアンビル44に伝達する打撃機構48とを備えている。
このうちスピンドル43の前端には、小径部49が同軸で突設される一方、アンビル44の後面には、小径部49が嵌合する有底の軸受孔50が形成されて、小径部49を軸受孔50に嵌合させることで、スピンドル43の前端がアンビル44に同軸で軸支されるようになっている(このようなインパクトドライバとして特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−231067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなインパクトドライバ40においては、狭い場所等での使い勝手を考慮して全体のコンパクト化を図るのが望ましい。このコンパクト化にはアンビル44の軸方向長さL2を短くするのが有効であるが、アンビル44の後面に軸受孔50を設ける関係上、この軸受孔50と干渉しない位置にビット46の挿着孔45を設ける必要があり、アンビル44の短縮化には限界があった。
【0005】
そこで、本発明は、全体のコンパクト化が達成できるネジ締め工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、モータと、モータを収容する本体ハウジングと、本体ハウジングに延設されたハンドルと、ハンドルに設けられるスイッチと、本体ハウジングの前方に配置されるケースと、モータにより回転可能なスピンドルと、ケースの前端に保持され、ビットを保持可能なビット保持部材と、を有するネジ締め工具であって、ビット保持部材に、ビットの挿着孔を設けると共に、挿着孔と連通するように貫通形成される貫通形成部を設け、貫通形成部の内部に、スピンドルの前端を配置したことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、スピンドルの前端には、凹部が形成されることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、ケースは、軸受を介してビット保持部材を保持しており、軸受の内径側にスピンドルの前端が配置されることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項3の構成において、凹部の外側に軸受が配置されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、全体のコンパクト化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】インパクトドライバの一部縦断面図である。
【図2】従来のインパクトドライバの一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、ネジ締め工具の一例であるインパクトドライバの一部縦断面図で、インパクトドライバ1は、左右の半割ハウジング3,3を組み付けて形成され、モータ4を収容する本体ハウジング2と、その本体ハウジング2の前方(図1の右側)に組み付けられ、スピンドル7、打撃機構8、アンビル9を収容する断面釣り鐘形状のハンマーケース6とを備えてなる。10は、本体ハウジング2の下方に延設されたハンドルで、ハンドル10の下端には図示しないバッテリーパックが装着され、ハンドル10の上方には、スイッチトリガー12の押し込み操作でONしてモータ4を駆動させるスイッチ11が収容されている。また、本体ハウジング2におけるスイッチトリガー12の上方には、アンビル9の前方へ向けて照射するライトユニット13が装着されている。
【0010】
モータ4の出力軸5は、本体ハウジング2に組み付けられたギヤケース14に軸支されて、ハンマーケース6内に突出するピニオン15を嵌着している。ハンマーケース6内において、スピンドル7は、インターナルギヤ16内で公転する2つの遊星歯車17,17を保持してピニオン15に噛合させて、後端部が、ギヤケース14に支持されるボールベアリング18によって、出力軸5と同軸で軸支されている。
【0011】
打撃機構8は、スピンドル7の前端に外装されるハンマー19と、そのハンマー19を前方へ付勢するコイルバネ20とを備え、ハンマー19は、スピンドル7とに跨って嵌合するボール21,21を介してスピンドル7と連結されている。具体的には、ハンマー19の内周面に前端から後方へ向けて凹設されて後端が先細りとなる山形溝22,22と、スピンドル7の外周面で先端を前方に向けて凹設されたV字溝23,23とに跨ってボール21,21が嵌合することで、ハンマー19は、ボール21が山形溝22の後端とV字溝23の先端とに位置する前進位置に付勢されてスピンドル7と連結されている。
【0012】
アンビル9は、ハンマーケース6の前端に保持されたメタル軸受24によって中間部が軸支され、後面軸心に形成した軸受孔25に、スピンドル7の前端に突設した小径部26を嵌合させて、スピンドル7の前端を同軸で軸支している。また、アンビル9の軸心には、ビット27の挿着孔28が、軸受孔25に連通するように貫通形成されて、挿着孔28に対向する小径部26の前面には、後方へ向かって先細りとなるテーパ状の受け凹部29が形成されている。すなわち、挿着孔28に挿入されたビット27の後端を、小径部26の受け凹部29に当接させて軸方向で受ける構成としたものである。
【0013】
一方、ハンマーケース6から突出するアンビル9の前端には、挿着孔28に挿入されたビット27を抜け止め装着するボール30及びスリーブ31等を備えたチャック機構が設けられている。
そして、ハンマーケース6内でアンビル9の後端には、ハンマー19の前面に突設した図示しない爪が回転方向で係合する一対のフランジ32,32が放射状に延設されている。
【0014】
以上の如く構成されたインパクトドライバ1においては、スイッチトリガー12を押し込み操作してモータ4を駆動させると、出力軸5の回転が遊星歯車17,17を介してスピンドル7に伝わり、スピンドル7を回転させる。スピンドル7は、ボール21,21を介してハンマー19を回転させ、ハンマー19が係合するアンビル9を回転させるため、アンビル9の先端に装着したビット27によってネジ締め等が可能となる。ネジ締めが進んでアンビル9への負荷が高まると、アンビル9に係合するハンマー19の回転とスピンドル7の回転とにずれが生じるため、ハンマー19は、ボール21,21がV字溝23,23に沿って転動することで、スピンドル7に対して相対的に回転しながらコイルバネ20の付勢に抗して後退する。
【0015】
そして、ハンマー19の爪がアンビル9のフランジ32,32から外れると、ハンマー19はコイルバネ20の付勢により、ボール21,21がV字溝23,23の先端に向けて転動することで回転しながら前進する。よって、ハンマー19の爪が再びフランジ32,32に係合して回転打撃力(インパクト)を発生させる。このアンビル9への係脱を繰り返すことで増し締めが行われる。
【0016】
ここで、アンビル9において、ビット27は、スピンドル7の小径部26に設けた受け凹部29に当接する位置で挿着されているため、従来よりも挿着位置は後退し、アンビル9の軸方向の全長L1は、図2で示したアンビルの全長L2よりも短くなる。よって、インパクトドライバ1の全長を前後方向に短くすることができる。また、アンビル9の短縮化により、アンビル9を軸支するメタル軸受24やこれを保持するハンマーケース6側の軸受部分の長さも短くて済むため、ハンマーケース6も軸方向の全長が短くなる。
【0017】
このように、上記形態のインパクトドライバ1によれば、アンビル9の挿着孔28を、軸受孔25に連通するように貫通形成して、スピンドル7の小径部26の前端に、挿着孔28に挿入されるビット27の後端を受ける受け凹部29を形成したことで、アンビル9を大幅に短縮化でき、全体のコンパクト化が達成できる。
特にここでは、受け凹部29を、後方へ向かって先細りとなるテーパ状に形成したことで、同形状となるビット27の後端をがたつきなく受けることができる。
【0018】
なお、受け凹部の形状はテーパ状に限らず、半円状や、横断面円形や角形で底部まで同径となる有底孔とする等、ビットの後端形状に合わせて適宜変更可能である。
その他の構造においても、例えばハウジングは本体ハウジングとハンマーケースとからなるものに限らず、本体ハウジングとハンマーケースとを一体した格好の左右一対の半割ハウジングで形成する等、ハウジングや打撃機構の形態等は適宜変更可能である。勿論インパクトドライバ以外に、アングルインパクトドライバやインパクトレンチ等の他の打撃工具であっても本発明は採用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1・・インパクトドライバ、2・・本体ハウジング、4・・モータ、5・・出力軸、6・・ハンマーケース、7・・スピンドル、8・・打撃機構、9・・アンビル、19・・ハンマー、25・・軸受孔、26・・小径部、27・・ビット、28・・挿着孔、29・・受け凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを収容する本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに延設されたハンドルと、
前記ハンドルに設けられるスイッチと、
前記本体ハウジングの前方に配置されるケースと、
前記モータにより回転可能なスピンドルと、
前記ケースの前端に保持され、ビットを保持可能なビット保持部材と、
を有するネジ締め工具であって、
前記ビット保持部材に、ビットの挿着孔を設けると共に、前記挿着孔と連通するように貫通形成される貫通形成部を設け、
前記貫通形成部の内部に、前記スピンドルの前端を配置したことを特徴とするネジ締め工具。
【請求項2】
前記スピンドルの前端には、凹部が形成されることを特徴とする請求項1に記載のネジ締め工具。
【請求項3】
前記ケースは、軸受を介して前記ビット保持部材を保持しており、前記軸受の内径側に前記スピンドルの前端が配置されることを特徴とする請求項2に記載のネジ締め工具。
【請求項4】
前記凹部の外側に前記軸受が配置されることを特徴とする請求項3に記載のネジ締め工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−52505(P2013−52505A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−246519(P2012−246519)
【出願日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【分割の表示】特願2009−103286(P2009−103286)の分割
【原出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)