説明

ネットワークアクセス規制方法及び該方法のための移動機並びに移動機に用いられるプロセッサ

【課題】移動機において、ネットワークからアクセス規制のために報知される情報のデコードや乱数発生等の処理が、無駄に行われることを防いで、負荷を軽減する。
【解決手段】ネットワークが何らかのアクセス規制を必要とする状態にある場合(S110)、移動機において、自機が属するアクセスクラスとして特別な種類のアクセスクラスを有するか否かを判断し(S120)、有すると判断した場合、規制情報のうち、各アクセスクラスの移動機がアクセス規制を受けるか否かを指定するための第1の規制情報を参照して(S170)アクセス可否を定め、有さないと判断した場合、規制情報のうち、各移動機がそれぞれ発生する数値との関係でアクセス可否を定めるための基準となる値を示す第2の規制情報を参照し、自機が発生した数値(S130)と第2の規制情報の示す基準との関係によって(S140)アクセス可否を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線アクセスネットワークに接続可能な移動機からネットワークへのアクセスを規制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の無線アクセス方式として実用化されているLong Term Evolution(LTE)方式のネットワークにおいては、図8に示すようなアクセス規制方法により、ネットワークの混雑状況を制御する(非特許文献1を参照)。
【0003】
LTEのネットワークアクセス規制方法には、アクセスクラス(AC)という概念が導入されている。各移動機は、少なくとも一つのACに属しており、ACには、通常の種類のAC(AC=0〜9)と、特別な種類のAC(AC=11〜15)が存在する。
【0004】
特別な種類のACは、例えば、ネットワークのオペレータ用の移動機にAC=11が割り当てられ、警察サービス用の移動機にAC=12が割り当てられ、政府使用の移動機にAC=13が割り当てられ、救急サービス用の移動機にAC=14が割り当てられるというように、使用される。特別な種類のACが割り当てられる移動機に、通常の種類のACも付加的に割り当てられていてもよい。
【0005】
LTEのアクセス規制では、各ACが、規制を受けないACである(0)か、規制を受けるACである(1)かを、ac−BarringForSpecialACという情報として報知する。なお、ネットワークが何らかの規制を必要としているのに通常の種類のAC(AC=0〜9)が規制無し(0)となることはないため、報知されるのは特別の種類のAC(AC=11〜15)についての情報だけでよい。
【0006】
つまり、LTE方式では、特別な種類のACのうちの優先すべきAC(例えば、AC=12、14)に規制無し(0)を指定し、特別な種類のACのうちの残り及び通常の種類のAC(例えば、AC=0〜9、11、13、15)に規制有り(1)を指定する情報が、報知されることになる。
【0007】
LTEのネットワークアクセス規制方法では、上記の規制有り(1)であるACの少なくとも一部が、アクセス不可となるが、長時間、同じACだけをアクセス不可にし続けるのは、通信サービスの公平性の観点から問題があるため、時間経過と共に、アクセス不可となる移動機が移り変わるように、移動機が発生する乱数との比較により、アクセス可否を判断する。
【0008】
例えば、30%を規制したい場合、「70%」を示す値を報知しておけば、各移動機の方で発生した乱数と比較することにより、70%の確率で(規制情報を受信した規制有りの移動機のうちの7割が)アクセス可と判断され、30%の確率で(規制情報を受信した規制有りの移動機のうちの3割が)アクセス不可と判断されることになる。各移動機は、ネットワークにアクセスしようとする都度、乱数を発生するから、同じ移動機から見れば、いずれの移動機も、平均して10回のうち7回はアクセス可と判断されることになり、公平性が保たれる。
【0009】
LTEでは、この目的のため、0〜95%の間の5%刻みの値(規制を受けるACの移動機が乱数と比較すべき値)を特定するための情報を、ac−BarringFactorという情報として報知する。
【0010】
そして、上述した規制情報を受信した移動機は、図8に示すように、ac−BarringForSpecialACにより、特別な種類のACのうち0が指定されたAC(例えば、AC=12、14)は、S910Yesに進んでアクセス可と判断し(S950)、特別な種類のACのうち1が指定されたAC及び通常の種類のAC(例えば、AC=0〜9、11、13、15)は、S910Noに進んで乱数を発生する(S920)。発生された乱数が、ac−BarringFactorにより特定される値より小さければ(S930Yes)、アクセス可と判断し(S1050)、大きければ(S930No)、アクセス不可と判断する(S1040)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】3GPP TS36.331
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したLTE方式におけるネットワークアクセス規制方法では、特別な種類のACのうち規制有り(1)が指定されたACの移動機は、ac−BarringForSpecialACとac−BarringFactorという二種類の規制情報の両方を参照しなければならず、そのデコード処理に加えて、乱数を発生させて比較する処理も必要となるために、移動機のプロセッサの負荷が高くなる。
【0013】
しかも、ac−BarringFactorが、乱数と比較しても必ずアクセス不可となる値(0%)であった場合、最初からアクセスできないと決まっていたのに、上記のデコードや乱数発生の処理により無駄にリソースを消費してしまったという結果となる。
【0014】
本発明は、上記の事情に鑑み、移動機において、ネットワークからアクセス規制のために報知される情報のデコードや乱数発生等の処理が、無駄に行われることを防いで、負荷を軽減することを可能にするネットワークアクセス規制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の原理に従うネットワークアクセス規制方法は、無線アクセスネットワークに接続可能な移動機からネットワークへのアクセスを規制する方法である。前記無線アクセスネットワークに接続可能な各移動機は、少なくとも一つのアクセスクラスに属するものであり、前記アクセスクラスには、特別な種類のアクセスクラスと、通常の種類のアクセスクラスとが存在し、前記無線アクセスネットワークから各移動機へ報知される報知情報に、当該ネットワークへのアクセスを規制するための規制情報が含まれ、前記規制情報には、各アクセスクラスの移動機がアクセス規制を受けるか否かを指定するための第1の規制情報と、各移動機がそれぞれ発生する数値との関係でアクセス可否を定めるための基準となる値を示す第2の規制情報とが含まれる。前記移動機は、無線アクセスネットワークへの接続を確立しようとする際に、自機が属するアクセスクラスとして前記特別な種類のアクセスクラスを有するか否かを判断し、特別な種類のアクセスクラスを有すると判断した場合、前記第1の規制情報を参照し、前記第1の規制情報による指定に従ってアクセス可否を定め、特別な種類のアクセスクラスを有さないと判断した場合、前記第2の規制情報を参照し、前記第2の規制情報の示す基準と自機が発生した数値との関係によってアクセス可否を判断する。
【0016】
上記の構成によれば、いずれの移動機においても、参照すべき規制情報を二種類のうちの一方のみに限定することが可能になり、数値を発生させる処理も最小限に抑えることが可能になる。
【0017】
なお、上記の第1の規制情報は、特別な種類のアクセスクラスについてのみ規制を受けるか否かを記述するものであってもよく、その場合、第1の規制情報を報知すること自体で、通常の種類のアクセスクラスについてはアクセス規制を受けることを指定したものと解することができる。
【0018】
上記の構成において、前記移動機は、前記第1の規制情報を参照する場合に、受信した前記規制情報のうち前記第1の規制情報をデコードし、前記第2の規制情報を参照する場合に、受信した前記規制情報のうち前記第2の規制情報をデコードするようにしてもよい。
【0019】
これにより、二種類の規制情報のうち、参照すべき一方のみについてデコード処理を行えば済むため、移動機におけるリソースの浪費を防止することが可能になる。
【0020】
なお、二種類の規制情報が独立して受信可能な態様で報知される方式のネットワークであれば、参照すべき一方の規制情報のみを受信し、他方の規制情報は受信しないということが可能になるため、リソース節約の効果がさらに高くなる。
【0021】
上記の構成において、前記移動機は、前記第2の規制情報を参照する場合に、前記第2の規制情報の示す基準が、移動機の発生する数値が何であってもアクセス不可と定まるような値であるか否かを判断し、そのような値であるならば、前記数値を発生させることなくアクセス不可と判断し、そのような値でないならば、前記数値を発生させて前記基準となる値との比較を行うことによりアクセス可否を判断するようにしてもよい。
【0022】
これにより、特別な種類のアクセスクラスのうち規制有り(1)が指定されたアクセスクラスの移動機は、第1の規制情報をデコードする必要がなくなるのに加えて、第2の規制情報がアクセス可になり得ない内容の場合には、数値を発生させる必要も、デコードした第2の規制情報を実際に発生させた数値と比較する対象となる値に変換する必要も、なくなるため、処理が簡略化され、移動機におけるリソースの浪費を防止することが可能になる。
【0023】
なお、移動機の発生する数値が何であってもアクセス可と定まるような値が報知される可能性のあるネットワークであれば、受信した第2の規制情報がそのような値を示すものであるか否かを判断し、前記数値を発生させることなくアクセス可と判断するようにしてもよい。
【0024】
上記の構成において、前記第1の規制情報が、ある移動機がアクセス規制を受ける一方で別の移動機はアクセス規制を受けないような指定を行うものである場合は、前記第2の規制情報の示す基準が、移動機の発生する数値が何であってもアクセス不可と定まるような値となっているようにしてもよい。
【0025】
これは、特別な種類のアクセスクラスは、通常の種類のアクセスクラスよりも優先的な取り扱いを受けるべきであるところ、移動機において上記の構成を採ると、次のような不都合が生じる可能性があるため、無線アクセスネットワークから報知する規制情報の内容に制限をかけるものである。
【0026】
その不都合は、仮に、第2の規制情報として70%(3割の移動機はアクセス不可となる)を示す値が、第1の規制情報として特別な種類のアクセスクラスの中に規制無し(0)のものと規制有り(1)のものとが混在した指定が、ネットワークから報知されたとすると、生じるものである。
【0027】
このような規制情報を受信すると、上記の構成に従えば、特別な種類のアクセスクラスのうち第1の規制情報により規制有り(1)が指定されたアクセスクラスの移動機は、アクセス不可と判断するのに対し、通常の種類のアクセスクラスの移動機は、発生させた数値と第2の規制情報による70%とを比較する結果、7割の移動機はアクセス可となる。つまり、優先的な取り扱いを受けるべき特別な種類のアクセスクラスの移動機が全てアクセス不可になるのに、非優先のはずの通常の種類のアクセスクラスの移動機は7割がアクセス可になるという、不合理な事態が生じることになる。
【0028】
上述した不都合をなくすためには、規制情報を作成するネットワークの方で、第2の規制情報の示す基準を、移動機の発生する数値によってはアクセス可となることのあり得る値とする場合は、第1の規制情報を、特別な種類のアクセスクラスは全て規制無し(0)となるような指定とすればよい。言い換えると、第1の規制情報を、ある移動機がアクセス規制を受ける一方で別の移動機はアクセス規制を受けないような指定とする場合は、第2の規制情報の示す基準を、移動機の発生する数値が何であってもアクセス不可と定まるような値とすればよい。
【0029】
上記の構成において、前記基準となる値は、前記ネットワークにおいてアクセス可としたい移動機の割合に基づいて決められたものであり、前記各移動機が発生する数値は、ランダム数として機能する数であるようにしてもよい。
【0030】
ランダム数として機能する数としては、例えば、各移動機内でプロセッサにより発生される擬似ランダム数や、各移動機に固有の値に対して時間経過に伴って変化する処理を加えた数等を実装してもよい。要するに、同じ通常の種類のアクセスクラスの中で、各移動機によってアクセス可となる確率が異なるのは、通信サービスの公平性の観点から問題があるため、毎度発生する数を同じ基準値と比較し続けたならばアクセス可となる確率が異なる移動機間で同じになるような数が、ここでいうランダム数として機能する数である。
【0031】
上記の構成において、前記移動機は、アクセス可であるという判断に応じて、前記ネットワークに対する無線リソース制御(RRC)コネクションの設定手順を開始するものであってもよい。
【0032】
これにより、無線インタフェースのプロトコルアーキテクチャは、物理レイヤ(L1)、データリンクレイヤ(L2)、ネットワークレイヤ(L3)から構成されるところ、移動機のL3レイヤにおけるアクセス規制が可能になる。
【0033】
上記の構成において、前記無線アクセスネットワークは、LTE方式に従って動作するものとすることができる。
【0034】
本発明の原理に従う移動機は、無線アクセスネットワークに接続可能な移動機であって、前記無線アクセスネットワークに接続可能な各移動機は、少なくとも一つのアクセスクラスに属するものであり、前記アクセスクラスには、特別な種類のアクセスクラスと、通常の種類のアクセスクラスとが存在する。前記移動機は、前記無線アクセスネットワークから報知された報知情報を受信する受信手段と、当該ネットワークへのアクセスを規制するための規制情報であって、各アクセスクラスの移動機がアクセス規制を受けるか否かを指定するための第1の規制情報と、各移動機がそれぞれ発生する数値との関係でアクセス可否を定めるための基準となる値を示す第2の規制情報とを含む規制情報を、前記報知情報から取り出して格納する格納手段と、自機の属する少なくとも一つのアクセスクラスを示す情報を記憶している記憶手段と、数値の発生を指示される都度、複数のとり得る数値の中の一つを選択して、指示された時点の数値として発生させる発生手段と、前記記憶手段の情報に基づいて前記特別な種類のアクセスクラスを有するか否かを判断し、有すると判断した場合、前記格納手段に格納されている第1の規制情報を参照して、前記第1の規制情報による指定に従ってアクセス可否を定め、有さないと判断した場合、前記格納手段に格納されている前記第2の規制情報を参照して、前記第2の規制情報の示す基準と前記発生手段により発生された数値との関係によってアクセス可否を判断する判断手段とを備える。
【0035】
本発明の原理に従うプロセッサは、移動機に搭載されて用いられる。ここで、無線アクセスネットワークに接続可能な各移動機が、少なくとも一つのアクセスクラスに属するものであり、前記アクセスクラスには、特別な種類のアクセスクラスと、通常の種類のアクセスクラスとが存在し、前記無線アクセスネットワークから各移動機へ報知される報知情報に、当該ネットワークへのアクセスを規制するための規制情報が含まれ、前記規制情報には、各アクセスクラスの移動機がアクセス規制を受けるか否かを指定するための第1の規制情報と、各移動機がそれぞれ発生する数値との関係でアクセス可否を定めるための基準となる値を示す第2の規制情報とが含まれる。そして、前記プロセッサは、無線アクセスネットワークへの接続を確立しようとする際に、自機が属するアクセスクラスとして前記特別な種類のアクセスクラスを有するか否かを判断し、特別な種類のアクセスクラスを有すると判断した場合、前記第1の規制情報を参照し、前記第1の規制情報による指定に従ってアクセス可否を定め、特別な種類のアクセスクラスを有さないと判断した場合、前記第2の規制情報を参照し、前記第2の規制情報の示す基準と自機が発生した数値との関係によってアクセス可否を判断する動作を行う。
【0036】
なお、上述したネットワークアクセス規制方法の各発明は、移動機の発明としても、移動機に用いられるプロセッサの発明としても、成立し得る。このプロセッサは、半導体チップとして移動機内部に組み込んでもよい。
【発明の効果】
【0037】
以上のとおり、本発明により提供されるネットワークアクセス規制方法に従えば、移動機において、ネットワークからアクセス規制のために報知される情報のデコードや乱数発生等の処理が、無駄に行われることを防いで、負荷を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を適用可能な無線ネットワークシステムの一例の全体構成図。
【図2】LTE方式の無線アクセスネットワークから移動機へ報知される情報の一例を示す図。
【図3】図2の情報のさらに詳細な構成の一例を示す図。
【図4】本実施形態における移動機(端末)の内部構成の一例を示すブロック図。
【図5】本実施形態における移動機(端末)の動作の一例を示すフローチャート。
【図6】図5の動作の変形例を示すフローチャート。
【図7】図4〜6の移動機に対する図2の報知情報として好ましい内容を示す図。
【図8】LTE方式における従来のアクセス規制方法を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜7を参照しながら説明する。
【0040】
図1は、LTE方式の無線ネットワークシステムの全体構成を表す図である。LTE方式における無線アクセスネットワークは、E−UTRANと呼ばれ、コアネットワークと移動機UE(User Equipment)との間に位置する。E−UTRANは、無線基地局及び無線ネットワーク制御装置として機能するeNodeBが、多数設置されることにより、構成される。
【0041】
図1の例において、通常の種類のアクセスクラス(Normal AC)は、AC=0〜9であり、特別な種類のアクセスクラス(Special AC)は、AC=11〜15であり、UE#11がAC=6(通常)に、UE#12がAC=11(特別:オペレータ用)に、UE#13がAC=12(特別:警察サービス用)に、属している。UE#12、#13は、それぞれAC=11、12に加えて、例えばAC=5、3(通常)を有しているかもしれないが、特別なACを有していれば、通常のACとしてどれに属しているかには関係なく、アクセス規制の有無や態様が定められる。
【0042】
図1のUTRANからUEへ、ブロードキャストチャネルにより報知される情報は、図2に示されるように、システム情報ブロック(SIB)タイプ2と呼ばれる情報を含み、その中に、AC−BarringConfigと呼ばれる規制情報を含む。AC−BarringConfigが含まれるのは、無線アクセスネットワークが何らかのアクセス規制を必要としている状態であると解することができる。
【0043】
より具体的には、図3に示されるように、SIBタイプ2(SIB2)の中には、ac−BarringInfoという情報要素を含ませることができ、さらにその中に、ac−BarringForMO−Signalling(移動機が発するシグナリングのためのRRCコネクションを設定しようとする際に参照される情報要素)と、ac−BarringForMO−Data(移動機が発する呼のためのRRCコネクションを設定しようとする際に参照される情報要素)の、いずれか一方または両方を含むことができる。
【0044】
ac−BarringForMO−Signallingも、ac−BarringForMO−Dataも、AC−BarringConfigを含むことになっている。よって、SIB2を受信した移動機では、ac−BarringInfo及びac−BarringForMO−Signallingが含まれていること、もしくは、ac−BarringInfo及びac−BarringForMO−Dataが含まれていることが検出されると、規制情報(AC−BarringConfig)が含まれているものと判断することが可能である。
【0045】
AC−BarringConfigの情報の構造は、ASN.1(抽象構文記法1)により定義することができ、(1)ac−BarringFactor(第2の規制情報の一例)と、(2)ac−BarringTimeと、(3)ac−BarringForSpecialAC(第1の規制情報の一例)という、3つの要素を含む。これら3つの要素は、順序列型(SEQUENCE)で記述され、各要素の出現順序に意味があるところ、(1)、(2)、(3)の順に記述されるものである。
【0046】
上記(1)は、p00、p05、p10、p15、p20、…、p85、p90、p95という0〜95%の間の5%刻みの値を特定するための情報である。この情報は、列挙型(ENUMERATED)で記述されるから、実際に乱数と比較する対象となる数値に変換してから、後述する乱数との比較処理を行うことになる。
【0047】
上記(2)は、s4、s8、s16、s32、…、s256、s512という値を特定するための情報であり、アクセス規制によりRRCコネクションの設定が開始できなかった場合に、どの程度の時間RRCコネクションの設定を禁止するかを決めるタイマにセットする数値を計算する基礎となる。
【0048】
上記(3)は、ビット列であり、AC=11〜15に対応する5個のビットから成り、各ビットのビット値が、0であれば規制無しであることを示し、1であれば規制有りであることを示す。
【0049】
AC−BarringConfigを受信した移動機が、これをデコードする際には、例えば、ASN.1仕様を参照しながら、(1)、(2)、(3)のうち必要な情報要素の内容をデコードするという処理が、可能である。
【0050】
また、AC−BarringConfigの情報は、一般的には、eNodeBが、自装置の制御対象となるネットワークの混雑の程度に応じた内容を、ブロードキャストチャネルに載せるSIB2に書き込む。
【0051】
以上のように報知されたSIB2を受信した移動機の動作を、図4のブロック図及び図5のフローチャートを参照して説明する。
【0052】
移動機は、RRCコネクションの設定を開始しようとする際、まず、報知情報受信部10において直近に受信していたSIB2が、AC−BarringConfigを含むか否かを判断する(S110)。含まない場合は、アクセス可と判断し(S180)、アクセス実行部50により、RRCコネクションの設定手順を開始する。
【0053】
SIB2がAC−BarringConfigを含む場合は、アクセス制御処理部40は、ユーザ識別モジュール(UIM)カード60内のAC情報記憶部65を参照して、自機が属するACとしてAC=11〜15のいずれかが記憶されているか否かを調べる(S120)。
【0054】
自機が通常の種類のACしか有さない(AC=11〜15のいずれも記憶されていない)場合、アクセス制御処理部40は、乱数発生部70に命令して、0以上1未満の乱数(擬似ランダム数等)を発生させる(S130)。アクセス制御処理部40は、一方で、規制情報デコード部30に命令して、規制情報格納部20に格納されているAC−BarringConfigのうちのac−BarringFactorの情報をデコードさせる。
【0055】
そして、ac−BarringFactorの情報(p00〜p95を示す情報)を、0%〜95%の実際に乱数と比較する対象となる数値に変換し、その数値と、発生させた乱数との大小関係を調べる(S140)。
【0056】
例えば、ac−BarringFactorが、p60(60%をアクセス可にし、40%をアクセス不可にする意図で指定されるもの)を示し、発生された乱数が45%であれば、アクセス制御処理部40は、45<60であるので、アクセス可と判断し(S160)、アクセス実行部50により、RRCコネクションの設定手順を開始する。同じ状況で、発生された乱数が88%であれば、アクセス制御処理部40は、88>60であるので、アクセス不可と判断する(S150)。
【0057】
アクセス不可と判断した場合は、アクセス制御規制部40は、規制情報格納部20に格納されている後続のac−BarringTimeの情報を、規制情報デコード部30にデコードさせる。そして、その情報に基づいて、タイマにセットする値を計算し、セットしたタイマが切れたら、必要に応じて再度RRCコネクションの設定を開始すべく、再度S110から動作を始める。
【0058】
自機が特別な種類のACを有する(AC=11〜15のいずれかが記憶されている)場合、アクセス制御処理部40は、規制情報デコード部30に命令して、規制情報格納部20に格納されているAC−BarringConfigのうちのac−BarringForSpecialACの情報をデコードさせる。そして、自機の属する特別な種類のAC(図1の例では、UE#13であれば、AC=12)に対応するビット(図2の例では、AC=12は2番目のビット)の値(図2の例では、2番目のビットの値は「1」)を調べる(S170)。
【0059】
そして、自機の属する特別な種類のACに対応するビット値が「1」の場合、アクセス制御処理部40は、規制有り且つアクセス不可であると判断する(S190)。その後、ac−BarringTimeの情報が既にデコードされていればそれを、未だされていなければ規制情報デコード30にデコードさせたものを用いて、タイマをセットし、RRCコネクションの設定を禁止する期間を定める。この場合、ac−BarringForSpecialACに、自機の属する特別な種類のACが規制有りと指定されていても、アクセス制御処理部40は、乱数発生部70に乱数を発生させることなく、また、ac−BarringFactorの情報を比較対象となる数値に変換する処理も行うことなく、アクセス不可と判断することが可能になる。
【0060】
一方、自機の属する特別な種類のACに対応するビット値が「0」の場合、アクセス制御処理部40は、アクセス可と判断し(S180)、アクセス実行部50により、RRCコネクションの設定手順を開始する。
【0061】
図6には、無駄な処理をさらに省くことを可能とする変形例を示す。図6は、図5のAで示した部分(S120No〜S160)を置き換えるものであり、同じステップには同じ番号を付している。
【0062】
アクセス制御処理部40は、ac−BarringFactorの情報をデコードさせると、それがp00(乱数と比較しても必ずアクセス不可となる0%を示す情報)であるか否かを判断する(S200)。
【0063】
p00以外である(p05〜p95である)場合は、移動機の発生する数値によってアクセス不可となることもアクセス可となることもあり得るので、上述したように、実際に乱数を発生させ(S130)、ac−BarringFactorの情報を比較対象となる数値(5%〜95%)に変換し、その数値と、発生させた乱数との大小関係を調べて(S140)、アクセス可否を判断する。
【0064】
p00である場合は、アクセス制御処理部40は、何もせずに、アクセス不可と判断する(S150)。これにより、乱数発生部70に乱数を発生させることなく、また、ac−BarringFactorの情報を比較対象となる数値に変換する処理も行うことなく、アクセス不可と判断することが可能になる。
【0065】
以上に説明した移動機の動作によれば、自機の内部情報であるACの情報に基づいて、ac−BarringFactorを参照してアクセス可否を定める(S120No)のか、ac−BarringForSpecialACを参照してアクセス可否を定める(S120Yes)のかを、最初に判断するため、参照しない方の規制情報をデコードしなくて済む。
【0066】
図7は、図4〜6を参照して説明した動作を行う移動機に対して、無線アクセスネットワークからSIB2で報知することが望ましい規制情報の内容を説明するためのものである。
【0067】
図7(a)は、ac−BarringFactorとして、p00を設定する場合を示し、E−UTRANは、この場合にのみ、ac−BarringForSpecialACのビット列の中に、規制有り(1)を指定できるものとする。
【0068】
図7(b)は、ac−BarringFactorとして、p00以外を設定する場合を示し、E−UTRANは、この場合は、ac−BarringForSpecialACのビット列を、全て「0」(規制無し)で構成するものとする。逆に言えば、ac−BarringForSpecialACのビット列を、全て「0」(規制無し)で構成する場合にのみ、ac−BarringFactorを任意に設定できるものとする。
【0069】
このようにネットワークから報知される規制情報が制限されていれば、ac−BarringForSpecialACに規制有り(1)と指定されているために、特別な種類のACの移動機がアクセス不可と判断する(S190)一方で、ac−BarringFactorにアクセス可となり得る情報(p05〜p95)が設定されているために、通常の種類のACの移動機がアクセス可と判断する(S160)という、優先度の逆転現象が生じる事態を、防止することが可能になる。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上述の実施形態を本発明の範囲内で当業者が種々に変形、応用して実施できることは勿論である。
【符号の説明】
【0071】
10 報知情報受信部
20 規制情報格納部
30 規制情報デコード部
40 アクセス制御処理部
50 アクセス実行部
60 UIMカード
65 AC情報記憶部
70 乱数発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線アクセスネットワークに接続可能な移動機からネットワークへのアクセスを規制する方法であって、
前記無線アクセスネットワークに接続可能な各移動機は、少なくとも一つのアクセスクラスに属するものであり、
前記アクセスクラスには、特別な種類のアクセスクラスと、通常の種類のアクセスクラスとが存在し、
前記無線アクセスネットワークから各移動機へ報知される報知情報に、当該ネットワークへのアクセスを規制するための規制情報が含まれ、
前記規制情報には、各アクセスクラスの移動機がアクセス規制を受けるか否かを指定するための第1の規制情報と、各移動機がそれぞれ発生する数値との関係でアクセス可否を定めるための基準となる値を示す第2の規制情報とが含まれ、
前記移動機は、
無線アクセスネットワークへの接続を確立しようとする際に、自機が属するアクセスクラスとして前記特別な種類のアクセスクラスを有するか否かを判断し、
特別な種類のアクセスクラスを有すると判断した場合、前記第1の規制情報を参照し、前記第1の規制情報による指定に従ってアクセス可否を定め、
特別な種類のアクセスクラスを有さないと判断した場合、前記第2の規制情報を参照し、前記第2の規制情報の示す基準と自機が発生した数値との関係によってアクセス可否を判断する
ことを特徴とするネットワークアクセス規制方法。
【請求項2】
前記移動機は、前記第1の規制情報を参照する場合に、受信した前記規制情報のうち前記第1の規制情報をデコードし、前記第2の規制情報を参照する場合に、受信した前記規制情報のうち前記第2の規制情報をデコードすることを特徴とする請求項1に記載のネットワークアクセス規制方法。
【請求項3】
前記移動機は、前記第2の規制情報を参照する場合に、前記第2の規制情報の示す基準が、移動機の発生する数値が何であってもアクセス不可と定まるような値であるか否かを判断し、そのような値であるならば、前記数値を発生させることなくアクセス不可と判断し、そのような値でないならば、前記数値を発生させて前記基準となる値との比較を行うことによりアクセス可否を判断することを特徴とする請求項1又は2に記載のネットワークアクセス規制方法。
【請求項4】
前記第1の規制情報が、ある移動機がアクセス規制を受ける一方で別の移動機はアクセス規制を受けないような指定を行うものである場合は、前記第2の規制情報の示す基準が、移動機の発生する数値が何であってもアクセス不可と定まるような値となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のネットワークアクセス規制方法。
【請求項5】
前記基準となる値は、前記ネットワークにおいてアクセス可としたい移動機の割合に基づいて決められたものであり、前記各移動機が発生する数値は、ランダム数として機能する数であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のネットワークアクセス規制方法。
【請求項6】
前記移動機は、アクセス可であるという判断に応じて、前記ネットワークに対する無線リソース制御(RRC)コネクションの設定手順を開始するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のネットワークアクセス規制方法。
【請求項7】
前記無線アクセスネットワークは、Long Term Evolution(LTE)方式に従って動作するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のネットワークアクセス規制方法。
【請求項8】
無線アクセスネットワークに接続可能な移動機であって、
前記無線アクセスネットワークに接続可能な各移動機は、少なくとも一つのアクセスクラスに属するものであり、
前記アクセスクラスには、特別な種類のアクセスクラスと、通常の種類のアクセスクラスとが存在し、
前記移動機は、
前記無線アクセスネットワークから報知された報知情報を受信する受信手段と、
当該ネットワークへのアクセスを規制するための規制情報であって、各アクセスクラスの移動機がアクセス規制を受けるか否かを指定するための第1の規制情報と、各移動機がそれぞれ発生する数値との関係でアクセス可否を定めるための基準となる値を示す第2の規制情報とを含む規制情報を、前記報知情報から取り出して格納する格納手段と、
自機の属する少なくとも一つのアクセスクラスを示す情報を記憶している記憶手段と、
数値の発生を指示される都度、複数のとり得る数値の中の一つを選択して、指示された時点の数値として発生させる発生手段と、
前記記憶手段の情報に基づいて前記特別な種類のアクセスクラスを有するか否かを判断し、有すると判断した場合、前記格納手段に格納されている第1の規制情報を参照して、前記第1の規制情報による指定に従ってアクセス可否を定め、有さないと判断した場合、前記格納手段に格納されている前記第2の規制情報を参照して、前記第2の規制情報の示す基準と前記発生手段により発生された数値との関係によってアクセス可否を判断する判断手段と
を備えることを特徴とする移動機。
【請求項9】
移動機に搭載されて用いられるプロセッサであって、
無線アクセスネットワークに接続可能な各移動機が、少なくとも一つのアクセスクラスに属するものであり、
前記アクセスクラスには、特別な種類のアクセスクラスと、通常の種類のアクセスクラスとが存在し、
前記無線アクセスネットワークから各移動機へ報知される報知情報に、当該ネットワークへのアクセスを規制するための規制情報が含まれ、
前記規制情報には、各アクセスクラスの移動機がアクセス規制を受けるか否かを指定するための第1の規制情報と、各移動機がそれぞれ発生する数値との関係でアクセス可否を定めるための基準となる値を示す第2の規制情報とが含まれ、
前記プロセッサは、
無線アクセスネットワークへの接続を確立しようとする際に、自機が属するアクセスクラスとして前記特別な種類のアクセスクラスを有するか否かを判断し、
特別な種類のアクセスクラスを有すると判断した場合、前記第1の規制情報を参照し、前記第1の規制情報による指定に従ってアクセス可否を定め、
特別な種類のアクセスクラスを有さないと判断した場合、前記第2の規制情報を参照し、前記第2の規制情報の示す基準と自機が発生した数値との関係によってアクセス可否を判断する
動作を行うものであることを特徴とするプロセッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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