説明

ネットワークサービスを利用する利用者間の関係を提供するためのサーバ

【課題】異なるWebサービスのサーバ同士がソーシャルグラフを表す情報を直接授受しなくとも、利用者が複数のWebサービスに分散したソーシャルグラフを統合して利用することができ、このことで利用者にとっての利便性を高め、さらに各Webサービスの利用を促進する。
【解決手段】第一の利用者をネットワークサービスの利用者の中で一意に特定するための情報である認識票を受信する受信手段と、前記ネットワークサービスの第二の利用者および第三の利用者を、一意に特定する第一の検索結果認識票および第二の検索結果認識票をそれぞれ検索する検索手段と、第一のスクランブル認識票および第二のスクランブル認識票を生成する変換手段と、前記第一の検索結果認識票と前記第一のスクランブル認識票とを関連付け、かつ前記第二の検索結果認識票と前記第二のスクランブル認識票とを関連付けて記憶する記憶手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、サーバと連携してWebサービスなどのネットワークサービスを提供する情報処理の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)と呼ばれる、コミュニティ型の会員制Webサービスの普及が著しい(例えば、特許文献1参照。)。SNSにより、インターネット上で利用者同士の繋がりを構築および促進することができると考えられる。SNSとしてたとえば非特許文献1などに開示されるウェブサイトが知られている。さらに、最近ではインターネット上にある、検索、写真や動画の共有、販売、チャットや音声によるメッセージ交換を目的とするWebサービスにおいても、やはり利用者同士の繋がりを構築および促進する目的で上記のSNS的な機能が提供されている。
【0003】
SNS、もしくはSNS的機能を有する各種Webサービスにおいては、該当サイトへ様々な情報の入力や登録を行う。さらに、これらの情報を知人と共有、知人と通信をおこない、さらに参加者の中から知人を検索することで、該当サービス上での新たな人間関係を構築、促進することができる。これを実現するために、SNS、またはSNS的機能を有する各種Webサービスの利用者は、あらかじめ何らかの手続きにより該当Webサイトにログインし、さらに他の利用者から検索されるための利用者自身の情報を入力しておく必要がある。
【0004】
しかし、このようなSNS、もしくはSNS的機能を有する各種Webサービスの数が増大した結果、利用者は数多くのWebサイトで、ログイン、自分の情報登録、共有する情報の入力や登録、知人との通信、知人の検索等を繰り返し実行する必要が生じている。この結果、ログイン情報や共有する情報、さらに知人に関する情報の管理が困難になっている。
【0005】
この問題の解決に向けて、様々な試みがなされている。SNSを含む各種Webサービスでは、API(Application Program Interface)へのアクセスを外部に許可することで、Webサービス間で利用者が共有する情報の相互融通を実現している。また、OpenID(例えば、非特許文献2参照。)によって、異なるSNSを含むWebサービスに唯一のログイン情報でログインすることを可能にする試みもなされている。
【0006】
ネットワーク上の知人同士の関係は、ソーシャルグラフと呼ばれる。上記のような、異なるSNSを含むWebサービス間での相互融通の対象となる情報には、ソーシャルグラフが含まれる。最近では、これまで各Webサービス内で独立して保持されていたソーシャルグラフを、Webサービスを超えて融通し合うという試みがなされている。(例えば、非特許文献3参照。)Social Graph APIはその試みの1つである。Social Graph APIは、ある利用者の特定のWebサービスにおけるIDを与えると、戻り値としてその利用者の他のWebサービスにおけるIDを返す。また、ある利用者の特定のWebサービスにおけるIDを与えると、戻り値としてその利用者と様々なWebサービスにおいて知人関係にある利用者の、各々のWebサービスにおけるIDを返す。Webサービスを超えた、ソーシャルグラフの融通によって、上記情報管理の困難が解決され、その結果各Webサービスへの利用者の訪問が増えることが期待されている。
【特許文献1】米国特許第7069308号明細書
【非特許文献1】マイスペース株式会社、“MySpace”、[online]、[平成20年11月26日検索]、インターネット〈URL:http://www.myspace.com/〉
【非特許文献2】オープンアイディーファウンデーション、“OpenID Authentication 2.0 − Final”、[online]、平成19年12月5日、[平成20年11月26日検索]、インターネット〈URL:http://openid.net/specs/openid−authentication−2_0.html〉
【非特許文献3】Brad Fitzpatrick、David Recordon著、“Thoughts on the Social Graph”、[online]、平成19年8月17日[平成20年11月26日検索]、インターネット〈URL:http://bradfitz.com/social−graph−problem/〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、SNS、もしくはSNS的機能を有するWebサービスを提供する多くの事業者にとって、そのWebサービス内のソーシャルグラフは、収益の源泉である。また、Webサービス内に閉じたソーシャルグラフは、利用者が他のWebサービスに移ることを抑止する効果を持つ。従って、主として事業的観点から、ほとんどのSNSを含むWebサービス事業者は自分のWebサービス内のソーシャルグラフに対する、他の事業者からのアクセスを許可していない。このため現実には、上に述べたWebサービスを超えたソーシャルグラフの融通は、ほとんど行われず、上記利用者によるログイン及び情報管理の困難の解消や、各Webサービスの活性化は実現していない。
【0008】
図1、図2および図3を参照して、Webサービス間でのソーシャルグラフ融通に関する問題点を説明する。図1は、外部からのソーシャルグラフ取得要求に応答する機能を備えたWebサービスXのサーバ100の概略構成図である。サーバ100は、記憶手段110、検索手段120、API提供手段130、送受信手段170を有する。さらに送受信手段はソーシャルグラフ取得要求を外部のサーバより受信した上で検索キーを検索手段120に送る要求受信手段171と、検索手段より得た検索結果を、送信したサーバに送信する結果送信手段172を含む。このAPI提供手段130は、WebサービスXの利用者をWebサービスX内で一意に特定するための情報である認識票が入力されると、検索手段120に要求して、その認識票を有する利用者となんらかの関係がある他の利用者の認識票を戻り値として返す機能を有する手段である。認識票としては、そのWebサービスを利用するために用いるログイン名、電子メールアドレスなどの利用者を一意に特定する識別情報を用いることができる。
【0009】
いまたとえば、WebサービスXのサーバの記憶手段110に、図2に示すソーシャルグラフが記憶されているとする。図2において1つの点は1人の利用者を表し、一つの直線は2人の利用者の間に関係があることを示す。点はノード、線はエッジと呼ばれる。エッジはその両端のノードの関係を表している。例えば、図2では、たとえば利用者A201と利用者B202との間に関係211があることを示している。同様にたとえば利用者A201と利用者C203との間に関係212が、また利用者A201と利用者D204との間に関係213が、さらに利用者C203と利用者D204との間に関係214が、各々ある。なお、図2ではソーシャルグラフをノードとエッジを用いて図示したが、記憶手段110に記憶されるソーシャルグラフは、いかなる形式であってもよい。多くの場合、データベースの表として記憶されている。例えば、なんらかの関係のある2人の利用者の認識票を同じ行に記憶することで記憶される。
【0010】
ここで、たとえばWebサービスYのサーバ190が、WebサービスXのサーバ100に対して、利用者AのWebサービスXにおける認識票IDxaを送信する。この認識票IDxaは利用者Aの認識票であるとする。このIDxaの送信は、利用者Aと関係のある利用者の認識票を要求することに対応する。WebサービスXのサーバの要求受信手段171がIDxaを受信し、API提供手段130の指示により検索手段110がこのIDxaを検索キーとして、記憶手段110に記憶された、図2に示すソーシャルグラフを検索する。検索の結果、利用者Aと関係のある利用者B、利用者C、および利用者Dの認識票IDxb、IDxc、およびIDxdが得られる。API提供手段130がこれらの認識票を、結果送信手段172を通じてWebサービスYのサーバ190に返信する。図3には、WebサービスXのサーバの送受信手段170に対する入力と出力の関係の一例を示す。すなわち、WebサービスXのサーバ100に対して、たとえば利用者A、および利用者Bそれぞれの認識票を入力したときの出力される認識票を示している。
【0011】
なお、本明細書では、認識票の表記はすべてIDで始まるとする。また3文字目はWebサービスを、また4文字目は利用者を表す。たとえば、IDxaは、WebサービスXにおいて利用者Aを一意に特定するための認識票である。
【0012】
図1、図2、および図3に示す一例は、ソーシャルグラフを異なるWebサービス間で融通する典型的な方法である。以下に、この方法のWebサービス事業者Xにとっての問題を示す。この方法では、WebサービスYのサーバ190は、各利用者に入力させるなど何らかの方法でWebサービスXの利用者の認識票を入手すれば、各々の利用者と関係のある利用者のWebサービスXにおける認識票を、たとえば図3のように入手できる。WebサービスYのサーバ190は、このような情報から、図2に示すWebサービスXにおけるソーシャルグラフの一部または全部を再現できる。通常、Webサービスで使われる認識票は数字または文字の組み合わせである。このため、WebサービスXのサーバに対して、数字または文字の組み合わせを総当たりで要求すれば、WebサービスYがWebサービスXの有するソーシャルグラフを全て入手することができる場合もある。
【0013】
WebサービスYが、WebサービスXのソーシャルグラフの一部または全部を入手することにより、WebサービスXにとっては、以下の利点と欠点が生ずる。
【0014】
WebサービスXにとって利点は、2つある。第1の利点は、利用者がWebサービスXとWebサービスYを組み合わせて使うことで、WebサービスX利用者の利便性が向上する点である。たとえば、WebサービスXがSNS、WebサービスYがリアルタイム性のあるチャットサービスだったとする。WebサービスXでリアルタイム性のあるチャットサービスを提供していない場合、WebサービスXの利用者は、WebサービスYと組み合わせることで、SNSで知人同士が情報交換をしながら、必要に応じてリアルタイムでチャットすることが可能になる。WebサービスXは、自らチャットサービスを提供するコスト無く、ユーザに対してより高い利便性を提供できる。第2の利点は、利用者がWebサービスYと組み合わせて使うことで、WebサービスXの利用が促進される点である。この例では、WebサービスXの利用者同士が、チャットで情報交換を始めることで、これまで以上の情報交換をWebサービスXで行うようになる。
【0015】
一方、WebサービスXにとっての欠点もある。WebサービスXとWebサービスYとが共にSNSであると仮定する。このとき、WebサービスXと競合関係にあるWebサービスYが、前記の方法でWebサービスXのソーシャルグラフを何の対価も支払わずに入手できることになる。したがって、WebサービスXの利用者の享受する利便性を、そのままWebサービスYも実現し提供できるので、WebサービスYは、WebサービスXの利用者を奪うかもしれない。
【0016】
本願発明によれば、このような従来のAPI公開によるソーシャルグラフの融通に係る、前記の利点を維持しながら、かつ前記の欠点を解決することが可能となる。また、本願発明によれば、前記のように異なるWebサービスのサーバ同士がソーシャルグラフを表す情報を直接授受しなくとも、利用者が複数のWebサービスに分散したソーシャルグラフを統合して利用することができる。このことで利用者にとっての利便性を高め、さらに各Webサービスの利用を促進するための方法を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の側面において、ネットワークサービスを提供するためのサーバであって、そのネットワークサービスの利用者をそのネットワークサービスの中で一意に特定するための情報である認識票を受信する受信手段と、受信された認識票と関連付けて記憶された他の利用者の認識票を検索する検索手段と、スクランブル認識票を生成する変換手段と、検索された認識票と生成されたスクランブル認識票とを関連付けて記憶する記憶手段と、生成されたスクランブル認識票を送信する送信手段と、を有することを特徴とするサーバが提供される。ここに、受信された認識票と関連付けて記憶された他の利用者の認識票が複数存在する場合には、変換手段は、複数のスクランブル認識票を生成し、記憶手段は、第1の認識票と第2の認識票と、複数のスクランブル認識票と複数の認識票とのそれぞれを関連付けて記憶し、送信手段は、複数のスクランブル認識票を送信してもよい。
【0018】
このようなサーバを提供することによる効果の一つとして、受信された認識票の間の関係を秘密に保つことができ、課題が解決される。
【0019】
また、本発明の第2の側面おいて、上記第1の側面において提供されるサーバからスクランブル認識票を受信する手段を有する第2のサーバが提供される。
【0020】
このような第2のサーバを、上記第1の側面において提供されるサーバにより提供されるネットワークサービスとは別のネットワークサービスに用いることによる効果の一つとして、別のネットワークサービスから上記第1の側面において提供されるサーバをアクセスすることが可能となり、課題が解決される。
【0021】
また、本発明の第3の側面において、第一のサーバによって提供される第一のネットワークサービスの利用者を第一のネットワークサービスの中で一意に特定するための情報である認識票を第一のサーバに送信する送信手段と、送信された認識票と第一のサーバにおいて関連付けて記憶された認識票を第一のサーバより受信する受信手段と、スクランブル認識票を生成する変換手段と、第一のサーバより受信された認識票と生成されたスクランブル認識票とを関連付けて記憶する記憶手段と、を有することを特徴とするサーバが提供される。ここに、一の認識票の送信に対して第一のサーバより受信された認識票が複数存在する場合には、変換手段は、複数のスクランブル認識票を生成し、記憶手段は、第一のサーバより受信された複数の認識票と生成された複数のスクランブル認識票とのそれぞれを関連付けて記憶してもよい。
【0022】
このようなサーバが提供される効果の一つとして、複数のネットワークサービスを横断してスクランブル認識票を生成して認識票と関連付けることができるので、認識票の間の関係などを秘密に保つことができる、課題が解決される。
【発明の効果】
【0023】
本願発明の方法およびサーバによれば、複数のWebサービス間で各々のWebサービス内にある利用者同士の関係を利用し合うことで、各々のWebサービスの利用を促進しながらも、ひとつのWebサービスにおける利用者同士の関係を、他のWebサービスの提供者が再合成することを防止でき、各Webサービス提供者の資産である利用者同士の関係を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本願発明を実施するための、現在考えられる最善の形態について説明する。本願発明の範囲は、添付特許請求の範囲によって明確に定義されているため、この説明は限定的な意味に解釈すべきではなく、単に発明の一般原理を例示する目的で行う。
【0025】
(実施形態1)
図4は、本願発明の実施形態の一例である、WebサービスXのサーバ400の概略構成図である。サーバ400は、外部のWebサービスとソーシャルグラフについて連携する機能を備えている。サーバ400は、記憶手段410、検索手段420、認識票変換手段430、API提供手段440、演算手段450、送受信手段470を有する。さらに送受信手段は特定の利用者と関係を持つ利用者一覧の要求を外部のサーバより受信した上で検索キーを検索手段420に送る要求受信手段471と、検索手段420より得た検索結果を、特定の利用者と関係を持つ利用者リスト要求の送信元に送信する結果送信手段472を含む。特定の利用者と関係を持つ利用者リスト要求は、サーバ、例えば、他のWebサービスのサーバから送信される。API提供手段440は、WebサービスXの利用者をWebサービスX内で一意に特定するための認識票が入力されると、検索手段420に検索を要求する。そして、API提供手段440は、その認識票を有する利用者と関係がある他の利用者の認識票が検索されると、さらにこれをスクランブル認識票に変換した上、戻り値として返す機能を備える。
【0026】
いまたとえば、WebサービスXのサーバの記憶手段のソーシャルグラフテーブル411に、図2に示すソーシャルグラフが記憶されているとする。図2ではソーシャルグラフをノードとエッジを用いて図示したが、ソーシャルグラフテーブル411に記憶に記憶されるソーシャルグラフは、いかなる形式であってもよく、ここではデータベースのテーブルの形式として記憶されていると仮定する。また、ソーシャルグラフにより関係が存在するとされる利用者は、知人同士であるとみなされることが想定される。例えば、Webサービスに入会するためには、すでに入会している人の招待が必要になっていてもよい。
【0027】
ここで、たとえばWebサービスYのサーバ490が、WebサービスXのサーバ400に対して、利用者AのWebサービスXにおける認識票IDxaを送信することで、利用者Aと知人である関係にある他の利用者のスクランブル認識票および付加情報を要求する(ステップS501)。付加情報としては、名前、ニックネーム、写真、コメントなど、各々の利用者がWebサービスXに登録している情報なら何でもよい。なお、付加情報の要求は必須ではない。WebサービスXのサーバの要求受信手段471がIDxaを受信し、API提供手段440の指示により検索手段420がこのIDxaを検索キーとして、記憶手段410に記憶されたソーシャルグラフテーブル411を検索する(ステップS502)。検索の結果、利用者Aと関係のある利用者B、利用者C、および利用者Dの認識票IDxb、IDxc、およびIDxdが得られる。
【0028】
次にAPI提供手段440は、検索キーであるIDxa、および検索結果であるIDxb、IDxc、およびIDxdを、認識票変換手段430へ送る(ステップS503)。次に、認識票変換手段は、検索結果であるIDxb、IDxc、およびIDxdの各々に対応するスクランブル認識票S0、S1、およびS2を生成する(ステップS504)。S0、S1、およびS2の生成方法は後述する。次に認識票変換手段は、IDxbとS0、IDxcとS1、およびIDxdとS2を各々関連づけて、記憶手段の変換テーブル412に記憶する(ステップS505)。次に、API提供手段440は、結果送信手段472を通じてS0、S1、およびS2を各々、利用者B、C、およびDの各々の付加情報に関連づけた上、WebサービスYのサーバ490に送信する(ステップS506)。
【0029】
図6に、変換テーブル412の一例を示す。変換テーブルは検索キーからなる列、および検索結果の認識票からなる行のマトリクスである。この例では、検索キーはステップS501でWebサービスXのサーバ400が受信した認識票であり、例えばIDxaとなる。このため、変換テーブルにおけるIDxaの列610の、IDxbの行612にS0が、IDxcの行613にS1が、IDxdの行614にS2が、各々記憶される。図6は、変換テーブルの一例であり、異なる形態のテーブルであっても、図6と同じ情報が表現されていればよい。
【0030】
次に、たとえばWebサービスYのサーバ490が、WebサービスXのサーバ400に対して、利用者BのWebサービスXにおける認識票IDxbを送信することで、利用者Bと関係のある利用者のスクランブル認識票および付加情報を要求する(ステップS507)。WebサービスXのサーバの要求受信手段471がIDxbを受信し、API提供手段440の指示により検索手段420がこのIDxbを検索キーとして、記憶手段410に記憶された図2に示すソーシャルグラフを検索する(ステップS508)。検索の結果、利用者Bと関係のある利用者A、利用者D、および利用者Eの認識票IDxa、IDxd、およびIDxeが得られる。
【0031】
次にAPI提供手段440は、検索キーであるIDxb、および検索結果であるIDxa、IDxd、およびIDxeを、認識票変換手段430へ送る(ステップS509)。次に、認識票変換手段は、検索結果であるIDxa、IDxd、およびIDxeの各々に対応するスクランブル認識票S3、S4、およびS5を生成する(ステップS510)。S3、S4、およびS5の生成方法は後述する。次に認識票変換手段は、IDxaとS3、IDxdとS4、およびIDxeとS5を各々関連づけて、記憶手段の変換テーブル412に記憶する(ステップS511)。図6を参照すると、この例で検索キーは、ステップS507でWebサービスXのサーバ400が受信したIDxbである。このため、変換テーブルにおけるIDxbの列620の、IDxaの行621にS3が、IDxdの行624にS4が、IDxeの行625にS5が、各々記憶される。次に、API提供手段440は、結果送信手段472を通じてS3、S4、およびS5を、各々利用者A、D、およびEの付加情報を関連づけた上、WebサービスYのサーバ490に送信する(ステップS512)。なお、図6には上記IDxaおよびIDxbに加えて、参考のためにIDxc、IDxd、IDxe、IDxf、IDxgの各々について、WebサービスXのサーバが知人の情報提供要求した場合の、スクランブル認識票も記した。前記変換テーブルはWebサービスXのサーバの記憶手段410に記憶されていてもよく、またはWebサービスXのサーバにネットワークを経由して接続された他のサーバの記憶手段または外部記憶手段に記憶されていてもよい。
【0032】
ここで、ステップS504およびステップS510におけるスクランブル認識票の生成方法について説明する。本願発明の一実施形態において、検索結果である認識票をスクランブル認識票に変換するのは、WebサービスYのサーバの要求により上記ステップS501からS512までのステップが実行されても、WebサービスYのサーバがWebサービスXのソーシャルグラフを再合成できないことが目的である。
【0033】
図7は、WebサービスXのサーバ400に対する要求および結果の関係について、従来の方法と本願発明の一実施形態による方法を比較したものである。従来の方法による結果を受信したWebサービスYのサーバ490は、図8(a)に示すように、図2に示したソーシャルグラフの一部を再合成できる。たとえばこの結果、WebサービスYのサーバ490では、図8におけるエッジ801とエッジ802から、認識票IDxdを持つ利用者Dが認識票IDxaを持つ利用者Aと認識票IDxbを持つ利用者Bとの共通の知人であることを知ることができる。本願発明による方法では、WebサービスYのサーバ490が得る情報は図8(b)のとおりである。このS0からS5を適切に生成することで、WebサービスYのサーバ490では、WebサービスX上のソーシャルグラフを再合成することができない。すなわち、本願発明による方法によれば、利用者Dが利用者Aと利用者Bとの共通の知人であることを知ることができない。
【0034】
ステップS504およびステップS510における、認識票からスクランブル認識票への変換は、このようにWebサービスYのサーバ490でWebサービスXのソーシャルグラフを再合成できないようなスクランブル認識票の変換方法であれば、どのような方法でもよい。このような変換方法としてのスクランブル認識票の生成方法の一例としては、演算手段450が生成する乱数を、順次S0、S1、S2、S3、S4、S5とする方法がある。この方法では、図8(b)に示すようにWebサービスYのサーバ490が受け取るS0からS5は無作為に選択された数値、文字列のいずれか1以上を含んでいてよい。無作為とは、検索結果である認識票とそれに対して生成されるスクランブル認識票との対応関係に法則性が存在しないことをいう。無作為であっても、生成される認識票は全て等しくなく、言い換えると異なるのが好ましい。この場合、たとえば同じIDxdから変換されたS2およびS4は異なる値となるため、WebサービスYのサーバ490では、利用者Dが利用者Aと利用者Bの共通の知人であることを知る手段はない。
【0035】
またスクランブル認識票を生成する方法の他の一例としては、要求と結果の演算結果をスクランブル認識票とする方法がある。たとえば、WebサービスXのサーバXの演算手段450がステップS501で受信した認識票IDxaと、検索結果であるIDxb、IDxc、IDxdそれぞれとの所定の演算(例えば、積の演算など)の結果を各々S0、S1、およびS2とする。なお、認識票が文字列であれば、積の演算は文字列の連接などとして定義できる。同様にたとえば、認識票IDxbと、検索結果であるIDxa、IDxd、IDxeそれぞれとの積などを各々S3、S4、およびS5とする。この場合、IDxdから変換されたS2およびS4は異なる値となるため、WebサービスYのサーバ490では、利用者Dが利用者Aと利用者Bの共通の知人であることを知る手段はない。また、所定の演算の一例としては、Webサービスに固有の数値(もしくは種値)を定数として含む演算であってもよい。すなわち、Webサービスに対して一意に決まる数値(もしくは種値)を変数としてもつ演算であってもよい。もし3つ以上のWebサービスが本願発明の一実施形態による方法でソーシャルグラフを利用し合う場合には、各Webサービスが数値(もしくは種値)として相互に異なる定数を用いることで、ソーシャルグラフの秘匿性を高めることができる。サービスXがインターネット上で一意に決まるような値を数値(もしくは種値)として用いてもよい。
【0036】
次に、スクランブル認識票および付加情報を受信した後の、WebサービスYのサーバ490における処理について図9、図10、および図11を参照して説明する。図9は、WebサービスYのサーバ490の概略構成図である。WebサービスYのサーバは、送受信手段911、記憶手段912、HTML(HyperText Markup Language)生成手段913、リダイレクト手段914を有する。WebサービスYのサーバ490は、ネットワークを通じてWebサービスYの利用者の情報端末920に接続されている。図10は、WebサービスYのサーバ490の処理を説明するフロー図である。
【0037】
ステップS506でWebサービスXのサーバ400から送信されたスクランブル認識票S0、S1、S2、および各々に関連づけられた付加情報を、WebサービスYのサーバの送受信手段911が受信し、記憶手段912に記憶する(ステップS1001)。同様に、ステップS512でWebサービスXのサーバ400から送信されたスクランブル認識票S3、S4、S5、および各々に関連づけられた付加情報を、WebサービスYのサーバの送受信手段911が受信し、記憶手段912に記憶する(ステップS1002)。
【0038】
次にWebサービスYを利用している利用者Aの情報端末920から、WebサービスYのサーバ490に対して、利用者AのWebサービスXにおける知人の一覧を取得する要求が送られる。ここで、利用者AはWebサービスYとWebサービスXの両方を使っていると仮定する。次に、WebサービスYのサーバ490が前記要求を受信する(ステップS1003)。次に、WebサービスYのサーバのHTML生成手段913が、前記ステップS1001で受信したスクランブル認識票S0、S1、S2、および各々の付加情報を含むHTMLコードを生成する。埋め込まれたHTMLコードの一例は後に図11を参照しながら説明する。次に送受信手段911が、生成されたHTMLコードをWebサービスY利用者の情報端末920に送信する(ステップS1004)。WebサービスYの利用者の情報端末が前記HTMLコードを受信すると、HTML解析手段923がこれを解析し、表示手段924を使って表示する。
【0039】
図11は、表示手段924に表示された利用者AのWebサービスY画面の一例である。利用者Aは、WebサービスY、WebサービスXの両方の利用者である。利用者AのWebサービスXでの認識票はIDxaである。図11では、WebサービスYのウィンドウ1100の中に、WebサービスXにおける利用者Aの知人の情報1101が表示されている。図2に示すとおり、利用者AのWebサービスXにおける知人は、利用者B、C、およびDである。このため、WebサービスXの知人の情報1101には、利用者Bの付加情報1110、利用者Cの付加情報1120、および利用者Dの付加情報1130が表示されている。これらの付加情報は上記ステップS1004で生成されるHTMLコードに組み込まれたものである。たとえば、図11の例では、利用者Bの付加情報として、WebサービスX上のニックネーム1111、アバター1112、およびメッセージ1113が表示されている。
【0040】
図11の利用者B、利用者C、および利用者Dを表示するHTMLコードには、前記スクランブル認識票S0、S1、およびS2が各々埋め込まれている。いま、たとえばWebサービスXのサーバ400のURL(Uniform Resource Locator)をhttp://www.webserviceX.com/、WebサービスYのサーバ490のURL(Uniform Resource Locator)をhttp://www.webserviceY.com/、WebサービスYのサーバの中でサービスXを表すサービス認識票がserviceIDXだったとすると、図11に示す画面のHTMLコードにおいて、利用者Bの付加情報1110は、<a href=“http://www.webserviceY.com/?serviceID=serviceIDX&id=S0”>と</a>との間に記述される。
【0041】
したがって、利用者Aが画面1100上の利用者Bの付加情報1110を、入出力手段922を通じて選択すると、S0が埋め込まれたURIが送受信手段921を通じてWebサービスYのサーバ490に送信され、これを送受信手段911が受信する(ステップS1005)。WebサービスYのサーバでは、リダイレクト手段914が、WebサービスYの利用者の情報端末920から受信した前記URIからリダイレクト先を計算し、WebサービスXのサーバ400にリダイレクトする(ステップS1006)。もし、利用者BもWebサービスYの利用者であり、WebサービスYのサーバ490が利用者Bの情報端末からWebサービスXにおける知人の一覧を表示するという要求を受信した場合にも、前記ステップS1003からステップS1006と同様の処理がおこなわれる。
【0042】
次にWebサービスYのサーバからリダイレクトされたURIを、WebサービスXのサーバ400が処理するステップを、図12を使って説明する。まず前記ステップS1006でWebサービスYのサーバ490からリダイレクトされたURIであるhttp://www.webserviceX.com/?id=S0を送受信手段470が受信する(ステップS1201)。次にAPI提供手段440がスクランブル認識票S0を抽出した上、これを検索キーとして変換テーブル412を検索し、検索結果として認識票IDxbを得る(ステップS1202)。次に、API提供手段が、認識票IDxbに関連づけられたコンテンツ情報を記憶手段410のコンテンツ記憶領域413からロードする(ステップS1203)。次にAPI提供手段がコンテンツ情報を情報端末のWebブラウザで表示するためのHTMLコードを生成する(ステップS1204)。次に送受信手段470が、生成された前記HTMLコードを、ネットワークを通じてWebサービスYの利用者Aの情報端末920に送信する(ステップS1205)。
【0043】
次にWebサービスYの利用者の情報端末920は、前記ステップS1205で送信されたHTMLコードを受信し、HTML解析手段923がこれを解析した上、表示手段924が解析結果としてのWebサービスXのコンテンツ情報を表示する。たとえば利用者Aが、図11に示すWebサービスYの画面に表示されたWebサービスX上の知人である利用者Bのプロフィール1110を、入力手段922を使って選択すると、表示画面はWebサービスX上のコンテンツである利用者Bの写真や日記に遷移する、というような使い方が可能である。
【0044】
なお、本実施形態に示す一例ではサービス認識票およびスクランブル認識票をURIやURLとしてHTMLコードに埋め込んだが、WebサービスYのサーバ490から送信する情報にスクランブル認識票が含まれており、利用者Aの情報端末920において、WebサービスYの画面上に、WebサービスXにおける利用者Aの知人の情報を表示することができれば、データの形式は何でもよい。また、本実施形態に示す一例では、図11の利用者B、利用者C、および利用者Dを表示するHTMLコードに含まれるURLにはサービスYのサーバのURLとサービスYの中でサービスXを表すサービス認識票とスクランブル認識票を埋め込んだが、サービスXのURLとスクランブル認識票を組み合わせたURLとしてもよい。また、本実施形態に示す一例では、WebサービスXは、利用者の有する何らかのコンテンツ情報を表示するサービスとしたが、本願発明では、WebサービスXはどのようなサービスでもよい。たとえば、WebサービスXやWebサービスYはチャットや音声通話などのメッセンジャーサービスであってよい。
【0045】
また、WebサービスXのサーバとWebサービスYのサーバの間の、ネットワークを通じた認識票やスクランブル認識票の送受信が暗号化された状態で実行されてもよい。
【0046】
以下では、本願発明の効果について説明する。本実施形態に示す一例で、利用者AがWebサービスXとWebサービスYの両方を利用しており、WebサービスXをチャットサービス、WebサービスYをSNSであると仮定する。いま、利用者AがSNSサービスYにチャットサービスXにおける利用者A自身の認識票を登録しておく。図11に示したように、利用者AはSNSサービスYの表示画面において、チャットサービスXにおける友人一覧を表示させることができる。さらに利用者Aは、SNSサービスYの画面に表示された友人一覧の中の1人を選択すると、チャットサービスXの画面に遷移した上、選択した友人とチャットサービスXを通じて通信が開始できる。このようにして、XおよびYの2つのWebサービスを統合して、ソーシャルグラフを使うことができるようになる。この結果、利用者の利便性が増大するとともに、チャットサービスX、およびSNSサービスYの両方の利用が促進される。
【0047】
これと同等の複数サービスの間でのソーシャルグラフの融通は、APIを通じて各サービスの認識票同士の関係を直接サービス間で授受する従来の方法によっても、または本願発明の方法によっても実現可能である。しかし、従来の方法によれば、図7および図8(b)を使って既に説明したように、SNSサービスYのサーバ490でチャットサービスX上のソーシャルグラフを再合成可能であった。もし利用者B、C、D、E、F、およびGが、上記利用者Aと同じようにSNSサービスYからチャットサービスXを利用すると、図2に示すチャットサービスXのソーシャルグラフを、WebサービスYのサーバが再合成することが可能となる。これはほとんどの場合、事業的観点からチャットサービスXの望むところではない。このために、従来の方法によるソーシャルグラフの相互利用が進まなかった。その結果として利用者の利便性向上やチャットサービスXやSNSサービスYの利用促進が実現しなかった。
【0048】
しかし、本願発明の方法によれば、このような複数サービスの間でのソーシャルグラフの相互利用を実現したとしても、図7および図8(a)を使って説明したように、SNSサービスYのサーバ490が、チャットサービスXのソーシャルグラフを再合成することは困難あるいは不可能である。このため、Webサービスを超えたソーシャルグラフの相互利用が促進され、利用者の利便性とチャットサービスXとSNSサービスYの両方の利用が促進されるという効果がある。
【0049】
(実施形態2)
図13に、本願発明の実施形態の他の一例の概略構成図を示す。本実施形態では、WebサービスXのサーバ1310とWebサービスYのサーバ490との間でのソーシャルグラフの相互利用に、ソーシャルグラフ交換サービスZ(以下サービスZ)のサーバ1320が存在する。またサービスZのサーバで作成した暗号化変換テーブルを外部記憶手段において保存する場合には、暗号化変換テーブル用サーバ1350を使う。なお、暗号化変換テーブルは暗号化変換テーブル用サーバの外部記憶手段1351に記憶することは必須ではない。これら4つのサーバ、およびWebサービスYの利用者Aの情報端末920は、ネットワークで接続されている。本実施形態では、WebサービスXのサーバ1310は、送受信手段1311、記憶手段1312、検索手段1313、およびHTML生成手段1316を有する。またサービスZのサーバ1320は、送受信手段1321、主記憶手段1322、認識票変換手段1324、暗号化・復号化手段1325、API提供手段1326、および検索手段1323を有する。なお、WebサービスXのサーバの記憶手段にあるソーシャルグラフテーブル1315には、図2に示すソーシャルグラフがあらかじめ記憶されているとする。図2に示すソーシャルグラフは、いかなる形式で記憶されていてもよく、ここではデータベースのテーブルとして記憶されている。
【0050】
以下では、本実施形態による、WebサービスXとWebサービスYとの間のソーシャルグラフの相互利用の方法を説明する。まず図14を参照して、WebサービスXのサーバ1310が、サービスZのサーバからの、特定の利用者の知人の認識票要求に対して、結果をWebサービスZのサーバに送る各ステップを説明する。はじめに、サービスZのサーバ1320が、WebサービスXのサーバ1310に対して、利用者AのWebサービスXにおける認識票IDxaを送信することで、利用者Aと知人である利用者の認識票および付加情報を要求する(ステップS1401)。付加情報としては、名前、ニックネーム、写真、コメントなど、利用者AがWebサービスXに登録している情報なら何でもよい。また、付加情報は必須となるものではない。WebサービスXのサーバの送受信手段1311がIDxaを受信し、検索手段1313がこのIDxaを検索キーとして、記憶手段1312に記憶されたソーシャルグラフテーブル1315を検索する(ステップS1402)。検索の結果、利用者Aと知人関係にある利用者B、利用者C、および利用者Dの認識票IDxb、IDxc、およびIDxdが得られる。送受信手段1311はこれらの認識票に付加情報を各々関連づけてサービスZのサーバ1320に送る(ステップS1403)。同様に、WebサービスXのサーバ1310は、サービスZのサーバ1320からのIDxbの要求に対して、検索結果として利用者Bと知人関係にある利用者A、利用者D、および利用者Eの認識票IDxa、IDxd、およびIDxe、および各々に関連づけられた付加情報を送信する(ステップS1404からステップS1406)。
【0051】
次にサービスZのサーバは、WebサービスYのサーバがWebサービスXの有するソーシャルグラフを再合成できないように、前記ステップS1403でWebサービスXのサーバが送信した情報を以下のように処理する。サービスZのサーバ1320は、利用者Aと知人関係のある利用者B、利用者C、および利用者Dの認識票IDxb、IDxc、およびIDxd、および各々に関連づけられた付加情報を受信する(ステップS1501)。次に、認識票変換手段は、検索結果であるIDxb、IDxc、およびIDxdの各々に対応するスクランブル認識票S0、S1、およびS2を生成する。S0、S1、およびS2の生成方法は、例えば、実施形態1で図7および図8を用いて説明した方法と同じである。これをもとに図6に示すような変換テーブル1327を、サービスZのサーバの中で他のサービスを一意に表す情報であるサービス認識票などと関連付けて作成する(ステップS1502)。
【0052】
前記変換テーブル1327は、主記憶手段1322に存在するが、ディスク装置などの外部記憶手段には記憶しない。もし、変換テーブルを外部記憶手段で記憶することが必要な場合には、暗号化・復号化手段1325が前記変換テーブルを秘密鍵で暗号化し、これを暗号化変換テーブル用サーバ1350に送信する。暗号化のための秘密鍵はサービスZのサーバ1320内でのみ保存し、サービスZのサーバから外部に送信しない。暗号化変換テーブル用サーバ1350はその外部記憶手段1351に、暗号化変換テーブルを記憶する。サービスZのサーバは、必要に応じて暗号化変換テーブルを暗号化変換テーブル用サーバ1350から呼び出し、主記憶手段において暗号化・復号化手段が秘密鍵を使って復号化した上で、以下に説明する処理をおこなう。なお、IDxb、IDxc、およびIDxdと関連づけられた付加情報は、そのままサービスZのサーバの外部記憶手段などに記憶してもよいし、上記ステップS1502においてスクランブル認識票S0、S1、およびS2と各々関連づけた上で、付加情報を含めて暗号化したものを暗号化変換テーブルとしてもよい。また、暗号化の粒度としては、たとえば図6のような暗号化テーブル全体を暗号化してもよく、または検索キーとなる利用者の認識票およびその知人を表すスクランブル認識票群とを単位として暗号化をしてもよい。たとえば、IDxa、S0、S1、S2を単位として暗号化し、さらに別途IDxb、S3、S4、S5を単位として暗号化するなどの方法がある。
【0053】
いま、利用者Aは、WebサービスYとWebサービスXの両方を使っていると仮定する。WebサービスYを利用している利用者Aの情報端末920が、WebサービスYのサーバ490に対して、WebサービスXで認識票IDxaを持つ利用者Aの、WebサービスXにおける知人の一覧を取得する要求を送る。この要求をWebサービスYのサーバ490が受信する(ステップS1503)。次に、WebサービスYのサーバがIDxaとともにこの要求をサービスZのサーバに送る(ステップS1504)。これをサービスZのサーバが受信する。次に、検索手段1323がIDxaを検索キーとして主記憶手段にあるサービスXの変換テーブルを検索し、スクランブル認識票S0、S1、およびS2および各々に関連づけられた付加情報を得る。送受信手段1321がこれらをWebサービスYのサーバ490に送る(ステップS1605)。
【0054】
次に、WebサービスYのサーバのHTML生成手段913が、サービスXを表すサービス認識票、スクランブル認識票S0、S1、S2、および各々の付加情報を含むHTMLを生成する。次に送受信手段911が、生成されたHTMLコードをWebサービスY利用者の情報端末920に送信する(ステップS1506)。WebサービスYの利用者の情報端末が前記HTMLを受信すると、HTML解析手段923がこれを解析し、表示手段を使って表示する。表示手段924に表示される利用者AのWebサービスYの画面については、実施形態1において図11を用いて説明したとおりである。
【0055】
図9および図11を参照して、次に利用者Aが画面1100上の利用者Bの付加情報1110を、入出力手段922を通じて選択すると、サービスXを表すサービス認識票とS0を含むURIが送受信手段921を通じてWebサービスYのサーバ490に送られ、これを送受信手段911が受信する(ステップS1507)。WebサービスYのサーバでは、リダイレクト手段914が、WebサービスYの利用者の情報端末920からのアクセスをサービスZのサーバ1320にリダイレクトする(ステップS1508)。もし、利用者BもWebサービスYの利用者であり、WebサービスYのサーバ490が利用者Bの情報端末からWebサービスXにおける知人の一覧を表示するという要求を受信した場合にも、前記ステップS1503からステップS1508と同様の処理がおこなわれる。
【0056】
次にWebサービスYのサーバからリダイレクトされたURLあるいはURIを、サービスZのサーバ1320が処理するステップを、図16を使って説明する。まず前記ステップS1508でWebサービスYのサーバ490からのリダイレクトを送受信手段1321が受信する(ステップS1601)。次にAPI提供手段1326がサービス認識票とスクランブル認識票S0を抽出した上、抽出したサービス認識票と紐付いた変換テーブルにおいてSOを検索キーとして検索し、検索結果として利用者Bの認識票IDxbを得る(ステップS1602)。次に送受信手段1321がIDxbをWebサービスXのサーバ1310に送る(ステップS1603)。これを受信したWebサービスXのサーバの検索手段1313は、IDxbを検索キーとして、コンテンツデータベース1314を検索する。次に、HTML生成手段1316が、検索結果として得られた利用者Bのコンテンツ情報をHTMLコードに変換する(ステップS1604)。次にWebサービスXのサーバ1310が、生成されたHTMLコードをWebサービスYの利用者である利用者Aの情報端末920に送信する(ステップS1605)。
【0057】
次にWebサービスYの利用者の情報端末920は、前記ステップS1605で送信されたHTMLコードを受信し、HTML解析手段923がこれを解析した上、表示手段924が解析結果としてのWebサービスXのコンテンツ情報を表示する。たとえば利用者Aが、図11に示すWebサービスYの画面に表示されたWebサービスX上の知人である利用者Bのプロフィール1110を、入力手段を使って選択すると、表示画面はWebサービスX上のコンテンツである利用者Bの写真や日記に遷移する、というような使い方が可能である。
【0058】
以下では、本実施形態に係る本願発明の効果について説明する。本実施形態は、実施形態1と同様WebサービスXとWebサービスYの2つのWebサービスの間での、ソーシャルグラフの融通を例として本願発明を説明した。しかし現実には、3つ以上の数多くのWebサービスの間でソーシャルグラフを融通したいという要求がある。このような場合には、実施形態1に示す1対1でのスクランブル認識票の授受に比べて、本実施形態で説明したソーシャルグラフ交換サービスZが介在する方が、対応するWebサービス数の増加を実現しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】従来の方法によるソーシャルグラフを外部に提供するAPIを持つサーバの構成図の一例である。
【図2】Webサービスの保持するソーシャルグラフの一例を表す図である。
【図3】ソーシャルグラフ提供APIに対する入出力の一例である。
【図4】本願発明の方法によるソーシャルグラフを外部に提供するAPIを持つWebサービスXのサーバの構成図の一例である。
【図5】スクランブル認識票を生成しこれをWebサービスYのサーバに送信する処理の一例を説明するフロー図である。
【図6】変換テーブルの一例を表す図である。
【図7】従来の方法と本願発明の方法によるAPI提供要求に対する入出力を比較した図である。
【図8】従来の方法と本願発明の方法による外部のWebサービスにおけるソーシャルグラフ再合成を比較した一例を表す図である。
【図9】本願発明の方法によるソーシャルグラフを提供されたWebサービスYのサーバの構成図の一例である。
【図10】ソーシャルグラフを提供されたWebサービスYでの処理の一例を説明するフロー図である。
【図11】WebサービスXとWebサービスYの共通の利用者がWebサービスY上でWebサービスXの知人一覧を表示させた一例を説明する図である。
【図12】WebサービスYのサービスを利用中に、WebサービスXでの知人のWebサービスXのコンテンツ情報が呼び出された時の処理の一例を説明するフロー図である。
【図13】本願発明の方法によるソーシャルグラフ交換サービスZの概略構成図である。
【図14】ソーシャルグラフを外部に提供するAPIを持つWebサービスXのサーバにおける処理の一例を説明したフロー図である。
【図15】ソーシャルグラフ交換サービスZのサーバにおける処理の一例を説明するフロー図である。
【図16】本願発明の方法によるソーシャルグラフを外部に提供するWebサービスXのサーバにおける処理の一例を説明するフロー図である。
【符号の説明】
【0060】
400 WebサービスXのサーバ
410 記憶手段
411 ソーシャルグラフテーブル
412 変換テーブル
413 コンテンツ記憶領域
414 種値
420 検索手段
430 認識票変換手段
440 提供手段
450 演算手段
470 送受信手段
471 要求受信手段
472 結果送信手段
490 WebサービスYのサーバ
920 WebサービスX及びWebサービスYの利用者の情報端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークサービスを提供するためのサーバであって、
前記ネットワークサービスの第一の利用者を前記ネットワークサービスの利用者の中で一意に特定するための情報である認識票を受信する受信手段と、
前記認識票と関連付けられている認識票であって、前記ネットワークサービスの第二の利用者および第三の利用者を、各々前記ネットワークサービス利用者の中で一意に特定する第一の検索結果認識票および第二の検索結果認識票をそれぞれ検索する検索手段と、
第一のスクランブル認識票および第二のスクランブル認識票を生成する変換手段と、
前記第一の検索結果認識票と前記第一のスクランブル認識票とを関連付け、かつ前記第二の検索結果認識票と前記第二のスクランブル認識票とを関連付けて記憶する記憶手段と、
前記第一のスクランブル認識票および前記第二のスクランブル認識票を送信する送信手段と、
を有することを特徴とするサーバ。
【請求項2】
前記第一のスクランブル認識票および前記第二のスクランブル認識票は、前記変換手段が無作為に生成した数値であることを特徴とする請求項1記載のサーバ。
【請求項3】
前記第一のスクランブル認識票および前記第二のスクランブル認識票は、前記変換手段が無作為に生成した文字列であることを特徴とする請求項1記載のサーバ。
【請求項4】
前記第一のスクランブル認識票は、前記認識票と前記第一の検索結果認識票との演算の結果であり、前記第二のスクランブル認識票は、前記認識票と前記第二の検索結果演算票との演算の結果であることを特徴とする請求項1記載のサーバ。
【請求項5】
前記演算は、前記ネットワークサービスで一意に決まる種値を変数として持つことを特徴とする請求項4記載のサーバ。
【請求項6】
前記第一のスクランブル認識票と前記第二のスクランブル認識票が等しくないことを特徴とする請求項1から5のいずれか一に記載のサーバ。
【請求項7】
前記送信手段は、前記記憶手段に前記第一の検索結果認識票と関連づけられて記憶された第一の付加情報と前記第二のスクランブル認識票とを関連づけ、かつ前記サーバの前記記憶手段に前記第二の検索結果認識票と関連づけられて記憶された第二の付加情報と前記第二のスクランブル認識票とを関連づけた状態で送信することを特徴とする請求項1から6のいずれか一に記載のサーバ。
【請求項8】
前記関連は、前記第一の利用者と前記第二の利用者が知人同士であり、かつ前記第一の利用者と前記第三の利用者が知人同士であることを意味することを特徴とする請求項1から7のいずれか一に記載のサーバ。
【請求項9】
第一のサーバによって提供される第一のネットワークサービスの第一の利用者を一意に特定するための情報である認識票を受信する受信手段と、
前記認識票と前記第一のサーバに関連付けて記憶された、前記第一のネットワークサービスの第二の利用者および第三の利用者を、各々一意に特定するための情報である第一の検索結果認識票および第二の検索結果認識票をそれぞれ検索する検索手段と、
第一のスクランブル認識票および第二のスクランブル認識票を生成する変換手段と、
前記第一の検索結果認識票と前記第一のスクランブル認識票とを関連付け、かつ前記第二の検索結果認識票と前記第二のスクランブル認識票とを関連付けて記憶する記憶手段と、
前記第一のスクランブル認識票および前記第二のスクランブル認識票を送信する送信手段と、
を有する前記第一のサーバから前記第一のスクランブル認識票および前記第二のスクランブル認識票を受信する第二受信手段を有することを特徴とする第二のサーバ。
【請求項10】
前記第一のスクランブル認識票および前記第二のスクランブル認識票が等しくないことを特徴とする請求項9記載の第二のサーバ。
【請求項11】
前記第一のスクランブル認識票を含むHTMLを生成する手段を有することを特徴とする請求項9および10記載の第二のサーバ。
【請求項12】
第一のサーバによって提供される第一のネットワークサービスの第一の利用者を前記第一のネットワークサービスの利用者の中で一意に特定するための情報である認識票を前記第一のサーバに送信する送信手段と、
前記第一のサーバの記憶手段において前記認識票と関連付けて記憶された第一の検索結果認識票および第二の検索結果認識票を前記第一のサーバより受信する受信手段と、
第一のスクランブル認識票および第二のスクランブル認識票を生成する変換手段と、
前記第一の検索結果認識票と前記第一のスクランブル認識票とを関連付け、かつ前記第二の検索結果認識票と前記第二のスクランブル認識票とを関連付けて記憶する記憶手段と、
を有することを特徴とする第二のサーバ。
【請求項13】
前記第一のスクランブル認識票および前記第二のスクランブル認識票は、前記変換手段が無作為に生成した数値であることを特徴とする請求項12記載の第二のサーバ。
【請求項14】
前記第一のスクランブル認識票および前記第二のスクランブル認識票は、前記変換手段が無作為に生成した文字列であることを特徴とする請求項12記載の第二のサーバ。
【請求項15】
前記第一のスクランブル認識票は、前記認識票と前記第一の検索結果認識票との演算の結果であり、前記第二のスクランブル認識票は、前記認識票と前記第二の検索結果認識票との演算の結果であることを特徴とする請求項12記載の第二のサーバ。
【請求項16】
前記第一のスクランブル認識票と前記第二のスクランブル認識票とが等しくないことを特徴とする前記請求項12から15のいずれか一に記載の第二のサーバ。
【請求項17】
前記第一のスクランブル認識票を含むHTMLコードを生成するHTMLコード生成手段と、
前記HTMLコードを送信する送信手段と、
を有することを特徴とする請求項12から16のいずれか一に記載の第二のサーバ。
【請求項18】
前記第一のスクランブル認識票および前記第二のスクランブル認識票を送信する送信手段を有することを特徴とする請求項12から16のいずれか一に記載の第二のサーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図13】
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