説明

ネットワーク・ケーブル,コネクタ付ネットワーク・ケーブルおよびその作製方法

【課題】ループ接続を未然に防止する。
【解決手段】長さ方向に一定間隔おきに,その表面に目視識別帯が設けられているネットワーク・ケーブルを用意し,上記目視識別帯の箇所で目視識別帯を残して上記ケーブルを切断して一端を形成し,かつ目視識別帯が設けられていない箇所で上記ケーブルを切断して他端を形成することにより,所望の長さの切断ネットワーク・ケーブルを得,得られた切断ネットワーク・ケーブルの両端(上記一端および他端)にコネクタをそれぞれ接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,ネットワーク・ケーブル,コネクタ付ネットワーク・ケーブルおよびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は多数本のLANケーブル6が1台のハブ7に接続されている様子を示している。図5において,ハブ7が備える複数個のコネクタ挿入口のそれぞれに,LANケーブル6が接続されている。
【0003】
ハブ7が備えるコネクタ挿入口の一つにLANケーブル6の一端が差込まれ,他端がパーソナル・コンピュータ8などのネットワーク機器に接続される。他のコネクタ挿入口にも,別のLANケーブル6の一端が差込まれ,他端が他のパーソナル・コンピュータ8等に接続される。ハブ2を中心にして複数台のネットワーク機器のスター型LANが構築される。
【0004】
LANケーブル6は,その一端から他端までの全長にわたって同じ色を持つ。このため,同色の多数本のLANケーブル6が用いられていると,一つのハブ7が備える複数のコネクタ挿入口のうちの2つのコネクタ挿入口に,1本のLANケーブル6の両端が差込まれていても,外観上全く分からない。1本のLANケーブル6の両端が一つのハブ7に差込まれると(いわゆる,ループ接続),そのハブ7に接続されているネットワーク機器同士の正常な通信ができなくなってしまう。
【0005】
特許文献1には,LANケーブルに着脱されるLANケーブル識別表示装置が記載されている。LANケーブル識別表示装置は3桁表示可能なLEDを備え,ここにIPアドレスが表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−26474号公報
【0007】
特許文献1では,IPアドレスを示す表示装置をLANケーブルに取付けることによって,LANケーブルの接続先のスイッチングハブのIPアドレス(どのようなIPアドレスのサブネットマスクを用いたセグメントのスイッチングハブに接続されているLANケーブルであるか)が分かるようにしている。しかしながら,ループ接続が発生しているかどうかを見つけることは一切考えられていない。
【発明の開示】
【0008】
この発明は,ループ接続の発生を未然に防ぐことを目的とする。
【0009】
この発明はまた,ループ接続が発生してもそれを即座に見つけることができるようにすることを目的とする。
【0010】
この発明によるコネクタ(プラグ)付ネットワーク・ケーブルは,両端にコネクタが接続されるネットワーク・ケーブルであって,上記ケーブルの両端部のうち,一方のコネクタに接続される一端部にのみ,その表面に目視識別帯が設けられていることを特徴とする。
【0011】
コネクタ付ネットワーク・ケーブルは,ネットワーク・ケーブルの両端部に,それぞれコネクタが接続されているものである。ネットワーク機器,たとえばパーソナル・コンピュータ,プリンタ,スキャナ,ハブ,ルータ等に設けられているコネクタ挿入口(ポート,コネクタ・ジャック)に,コネクタ付ネットワーク・ケーブルの端部のコネクタが挿入される。ネットワーク・ケーブルとコネクタとの間の接続(コネクタを介したネットワーク機器とネットワーク・ケーブルとの間の接続)は,電気的接続のみならず光学的結合等を含む。両端部にそれぞれ接続されている2つのコネクタは同一形状,同一機能を持ち,一般には表面が同一の光学的性質(色)(透明を含む)を持つ。もっとも,両端部のコネクタの表面の光学的性質(色)は同じである必要は必ずしもない。
【0012】
ネットワーク・ケーブルの両端部のうち,一方のコネクタに接続されている一端部にのみ,その表面に目視識別帯が設けられている。ネットワーク・ケーブルの中間部(両端部とは離れた箇所)にもさらに,目視識別帯が設けられていてもよい。いずれにしても,ネットワーク・ケーブルの両端部のうちの一方(一端部)の表面にのみ目視識別帯が設けられている。当然,他方(他端部)に目視識別帯は設けられていない。
【0013】
目視識別帯は,ネットワーク・ケーブルの一端部と,他端部その他の箇所とを視覚的に区別(識別)する帯状のものであり,ある程度の幅を持ち,かつネットワーク・ケーブルの一端部に,他端部その他の箇所と異なる光学的性質を持たせるものである。
【0014】
一実施態様では,目視識別帯は,所定の幅にわたって,ネットワーク・ケーブルの表面を,他の箇所の表面の色と異なる色に着色(透明を含む)させたものである。ネットワーク・ケーブルの一端部に,他端部その他の箇所の色と異なる色の物質(樹脂,顔料,フィルム,テープ等)を被覆,塗布,貼付等することによって,ネットワーク・ケーブルの一端部のみに目視識別帯が設けられる。いずれにしても,目視識別帯は,他端部その他の箇所とは光の反射,散乱の状態が異なるように設けられる。
【0015】
目視識別帯の幅は,コネクタによって目視識別帯が隠れてしまうことがないようにするため,および数回のコネクタの交換に対応するために,好ましくは,上記コネクタの長さよりも長くされる。
【0016】
この発明によると,ネットワーク・ケーブルの一端部と他端部とを一見して(視覚的に)区別(識別)することができる。一のネットワーク機器,特に多数のコネクタ挿入口を持つネットワーク機器に,ネットワーク・ケーブルの両端部の2つのコネクタを挿入してしまう状況(いわゆるループ接続)を,未然に回避することができる。ネットワーク障害(ブロードキャストストーム)の発生が防止される。
【0017】
ループ接続は,多数のコネクタ挿入口を持ち,接続されるネットワーク機器を取換えやすい集線装置(ハブ)を用いる場合に生じやすい。上記目視識別帯が設けられている一端部(一端部に接続されているコネクタ)を常に集線装置(ハブ)に接続する(逆に言えば,目視識別帯が設けられていない他端部を集線装置に接続しない)と,一つのネットワーク・ケーブルの両端部のいずれもを同じ集線装置に接続してしまうおそれが無くなる。たとえ一つのネットワーク・ケーブルの両端部のいずれもが同じ集線装置に接続されているとしても,それを即座に見つけることができる。
【0018】
一実施態様では,上記目視識別帯は,上記ケーブルの長さ方向に一定間隔おきに設けられている。たとえば,ケーブルの長さを短く加工する,または目視識別帯が設けられている一端部に接続されているコネクタが破損してこれを新しいコネクタに取換える(修理する)ときに,一つ隣に設けられている目視識別帯が新たな一端部となるようにケーブルを切断し,そこに新しいコネクタを接続すると,そのコネクタ付ネットワーク・ケーブルも,一端部のみに目視識別帯が設けられているものになる。
【0019】
この発明は,両端部にコネクタが接続されていないネットワーク・ケーブルも提供している。この発明によるネットワーク・ケーブルは,長さ方向に一定間隔おきに,その表面に上記目視識別帯が設けられているものである。
【0020】
この発明は,上述のネットワーク・ケーブルを用いて,コネクタ付ネットワーク・ケーブルを作製する方法も提供する。この方法は,長さ方向に一定間隔おきに,その表面に上記目視識別帯が設けられているネットワーク・ケーブルを用意し,上記目視識別帯の箇所で目視識別帯を残して上記ケーブルを切断して一端を形成し,かつ目視識別帯が設けられていない箇所で上記ケーブルを切断して他端を形成することにより,所望の長さの切断ネットワーク・ケーブルを得,得られた切断ネットワーク・ケーブルの両端(上記一端および他端)にコネクタをそれぞれ接続するものである。一端部のみに目視識別帯が設けられたコネクタ付ネットワーク・ケーブルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】多数本のLANケーブルがハブに接続されている様子を示す。
【図2】長尺のLANケーブルを示す。
【図3】(A),(B)は,LANケーブルを示す。
【図4】つめ折れ防止カバーが設けられているLANケーブルを示す。
【図5】従来例を示すもので,多数本のLANケーブルがハブに接続されている様子を示す。
【実施例】
【0022】
図1は,多数本のLANケーブル1がハブ2に接続されている様子を示している。図1において,ハブ2が備える複数個のコネクタ挿入口のそれぞれに,複数本のLANケーブル1の一端が差込まれている。
【0023】
LANケーブル1は,複数台のネットワーク機器,たとえば,パーソナル・コンピュータ,プリンタ,スキャナ,ルータ等の間のデータ伝送路として用いられる。複数台のネットワーク機器は,LANケーブル1およびハブ2を介して相互にデータ通信する。1本のLANケーブル1の一端がパーソナル・コンピュータ3に接続され,他端がハブ2に接続される。別の1本のLANケーブル1の一端が別のパーソナル・コンピュータ3に接続され,その他端がハブ2に接続される。このようにして,ハブ2を中心にして複数台のネットワーク機器のスター型LANが構築される。複数台のハブ2同士を接続して,データ通信可能に接続されるネットワーク機器の台数をさらに増やすこともできる。
【0024】
LANケーブル1には,たとえば4ペア8芯タイプのツイストペアケーブルが用いられる。4ペア8芯タイプのツイストペアケーブルでは,樹脂被覆された銅線が2本ずつ撚られてペアとされ,このペアが4つ束ねられてさらに樹脂被覆されている。もちろん,LANケーブル1は,ツイストペアケーブルのみならず,同軸ケーブル,光ファイバ・ケーブルであってもよく,また,ストレート・ケーブルおよびクロス・ケーブルのいずれであってもよい。
【0025】
一般に,LANケーブル1の両端には同一形状,同一機能を持つモジュラ・コネクタ1aが接続されている。他方,ネットワーク機器(ハブ2を含む)にはモジュラ・コネクタ1aが差込まれるコネクタ挿入口(モジュラ・ジャック)が設けられている。モジュラ・コネクタ1aがコネクタ挿入口に差込まれることによって,LANケーブル1とネットワーク機器とがデータ通信可能に接続される。一般に,LANケーブル1の両端に接続されるモジュラ・コネクタ1aおよびネットワーク機器に設けられるコネクタ挿入口は同一規格のもの(たとえば,RJ45タイプ)が用いられる。
【0026】
LANケーブル1の一方の端部には,その表面に着色識別帯1bが設けられている。着色識別帯1bは,LANケーブル1の最外周の被覆樹脂の色(地色)(たとえば,青色)と異なる色(地色が青色であれば,たとえば赤色など)に着色されている。他方,LANケーブル1の他方の端部に着色識別帯1bは設けられていず,被覆樹脂の色(地色)が見える。LANケーブル1の一方の端部のみに設けられる着色識別帯1bによって,LANケーブル1の両端が明確に(視覚的に)区別される。
【0027】
ハブ2が備える複数個のコネクタ挿入口には,着色識別帯1bを備えているLANケーブル1の一端部(一端部に接続されているコネクタ1a)が挿入されるものとする。着色識別帯1bはLANケーブルの一端部のみに設けられているので,すべてのコネクタ挿入口に着色識別帯1bを持つLANケーブル1の一端部が接続されていることが確認できれば,それは1本のLANケーブル1の両端部がハブ2の挿入口に差込まれていない(ループ接続が無い)ことを意味する。ループ接続が存在しないことが視覚的に把握される。
【0028】
他方,1本のLANケーブル1の両端がハブ2の複数のコネクタ挿入口のうちの2つに挿入されると,ハブ2のコネクタ挿入口には,必ず着色識別帯1bを持たないLANケーブル1の他端部(LANケーブル1の地色)が見えることになる。図1を参照して,複数本のLANケーブル1のうち1本のLANケーブル1Aは,その両端部のいずれもがハブ2のコネクタ挿入口に挿入されており,このためハブ2のコネクタ挿入口付近に,着色識別帯1bを持たないLANケーブル1の他端部(LANケーブル1の地色)が見えている。たとえ,LANケーブル1が乱雑になっており,1本のLANケーブル1の両端がハブ2の複数のコネクタ挿入口のうちの2つに挿入されている状態(ループ接続)が発生しても,それを即座に認識(発見)することができる。
【0029】
図2はモジュラ・コネクタ1a(図1参照)が接続されていない,長尺のLANケーブル1Bを示している。長尺のLANケーブル1Bから必要な長さ分のLANケーブル1が切取られて,その後,切取られたLANケーブル1の両端に,モジュラ・コネクタ1aが接続される。
【0030】
LANケーブル1Bの表面には,その長さ方向に一定間隔L1おきに,L2の幅(長さ)を持つ着色識別帯1bが設けられている。LANケーブルの最外周の被覆樹脂の被覆時に,一定間隔で被覆樹脂の色を変えることによって,一定間隔L1おきに着色識別帯1bが設けられたLANケーブル1Bが得られる。
【0031】
長尺のLANケーブル1Bから使用すべきLANケーブル1を切取る場合,一端部においては着色識別帯1bの箇所において,他端部においては着色識別帯1bが存在しない箇所において,長尺のLANケーブル1Bは切断される。その後,両端にモジュラ・コネクタ1aが接続されて固定される。これにより,一端部のみに着色識別帯1bが設けられているLANケーブル1となる。
【0032】
図3(A)は,3つの着色識別帯1bを含むLANケーブル1を示している。3つの着色識別帯1bのうちの一つはLANケーブル1の一端部に位置する。他方,LANケーブル1の他端部に着色識別帯1bは存在せず,LANケーブル1の地色が見える。図3(B)は1つの着色識別帯1bのみを含むLANケーブル1を示している。
【0033】
着色識別帯1bの幅(長さ)L2は,コネクタ1aの長さよりも長くされている。これは,着色識別帯1bがコネクタ1aによって隠れてしまい,着色識別帯1bが見えなくなるまたは見えづらくなるのを防ぐため,およびLANケーブル1の端部に接続されるコネクタ1aを交換する場合にLANケーブル1の端部の被覆樹脂を数cm切取って新しいコネクタ1aを取付けることがあり,数回程度のコネクタ交換に対応するためである。
【0034】
着色識別帯1b同士の間隔L1は任意の間隔とすることができる。たとえば,着色識別帯1b同士の間隔L1は100cm程度の間隔とされる。もちろん,比較的長いLANケーブル1(たとえば,10m)であれば,着色識別帯1b同士の間隔L1を300cm程度とるようにしてもよい。
【0035】
着色識別帯1bの幅(長さ)L2も任意の幅とすることができる。上述のように,LANケーブル1の端部に接続されるコネクタ1aを交換する場合に,LANケーブル1の端部の被覆樹脂を数cm切取って新しいコネクタ1aを取付けることがあるので,数回程度のコネクタ交換に対応するためには,15cm〜20cm程度の幅L2を持たせておくとよい。着色識別帯1b同士の間隔L1と,着色識別帯1bの幅L2との比は,L1:L2=2〜15:1程度とされる。
【0036】
着色識別帯1bは,LANケーブル1をハブ2のコネクタ挿入口に差込むときに設けるようにしてもよい。この場合,一端から他端に至るまでの全長にわたって同色のLANケーブル1が用意され,LANケーブル1の地色と異なる色のテープ等がLANケーブル1の一端部に貼られた上で,ハブ2のコネクタ挿入口に差込まれる。LANケーブル1に貼られたテープ等が着色識別帯1bとなる。
【0037】
図4は,つめ(ラッチ)折れ防止カバー4が設けられているLANケーブル1の一端部を拡大して示している。LANケーブル1の一端部の表面のみならず,一端部に接続されるコネクタ1aのつめ(ラッチ)を覆うように設けられるつめ折れ防止カバー4も,着色識別帯1bと同色の色とする(同色のつめ折れ防止カバー4を用いる)ようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1,1A LANケーブル
1a モジュラ・コネクタ
1b 着色識別帯
2 ハブ
3 パーソナル・コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端にコネクタが接続されるネットワーク・ケーブルであり,
上記ケーブルの両端部のうち,一方のコネクタに接続される一端部にのみ,その表面に目視識別帯が設けられている,コネクタ付ネットワーク・ケーブル。
【請求項2】
上記目視識別帯が,上記ケーブルの長さ方向に一定間隔おきに設けられている,請求項1に記載のコネクタ付ネットワーク・ケーブル。
【請求項3】
上記目視識別帯は,所定の幅にわたって,上記ケーブルの他の部分の表面の色と異なる色に着色されたものである,
請求項1または2に記載のコネクタ付ネットワーク・ケーブル。
【請求項4】
長さ方向に一定間隔おきに,その表面に目視識別帯が設けられている,ネットワーク・ケーブル。
【請求項5】
長さ方向に一定間隔おきに,その表面に目視識別帯が設けられているネットワーク・ケーブルを用意し,
上記目視識別帯の箇所で目視識別帯を残して上記ケーブルを切断して一端を形成し,かつ目視識別帯が設けられていない箇所で上記ケーブルを切断して他端を形成することにより,所望の長さの切断ネットワーク・テーブルを得,
得られた切断ネットワーク・ケーブルの両端にコネクタをそれぞれ接続する,
コネクタ付ネットワーク・ケーブルを作製する方法。
【請求項6】
ネットワーク・ケーブルの両端にコネクタが接続されており,上記ケーブルの両端部のうち,一方のコネクタに接続される一端部にのみ,その表面に目視識別帯が設けられているコネクタ付ネットワーク・ケーブルについて,上記目視識別帯が設けられている一端部に接続されているコネクタを,集線装置に接続する,
コネクタ付ネットワーク・ケーブルの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−286894(P2010−286894A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138299(P2009−138299)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(507228172)株式会社JSOL (23)