説明

ネットワーク上で収集されるセンサデータの信頼性を高める装置と方法

【課題】ネットワーク上で収集されるセンサデータの信頼性の向上に適した装置と方法を提供する。
【解決手段】1つ以上の一時的なエラーが、補正されたデータの相関関係を用いて、予測され補正される。例えば、センサデータはネットワーク中の1つ以上のセンサノードから収集されてもよい。センサノード以外のデバイスは、このデータを用いて、センサデータに内在する一時的冗長性に基づいて予測モデルを構築し、その後受信する1つ以上の信頼性が欠如するとされる値を補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、センサネットワークである。
【背景技術】
【0002】
センシング、通信、および処理用技術の収束の結果、ワイヤレスセンサネットワークが登場した。最近では、低コストで低エネルギーのワイヤレスセンサノードを用いることにより、大規模センシングが実現可能となった。例えば、製造、検査、モニタリングにおいては、多くのシステムが多数のワイヤレスセンサからデータを収集する。これらのセンサネットワークが利用可能となることによって、物理的世界(physical world)のセンシングとモニタリングが可能となった。
【0003】
センサネットワークにおいては、機械同士のデータ収集フレームワークにおける判断を行うためにデータが収集・処理されて用いられるため、ワイヤレスデータ転送を用いるそのほかの用途においてよりもずっと、信頼性のあるデータ収集を行うことが最優先事項である。しかしながら、ワイヤレスデータ転送には、データの信頼性と補正に関して、周知の問題がある。
【0004】
例えば、センサノードのワイヤレスネットワークは、信頼性のない通信チャネル、ノード障害、悪意によるノードの改ざん、盗聴など、各種の信頼性が欠如したソースに本質的にさらされている。信頼性が欠如したソースは、通常、2つのカテゴリーに分類される。1つは動作を永久的に変更する故障であり、もう1つは、ここでは「ソフト障害」と呼ぶ、正常な動作からの一時的な逸脱を引き起こす障害である。
【0005】
ソフト障害は、一時的なエラーとしてワイヤレスチャネルに生じ、受信部のノイズ、チャネル干渉、および/またはマルチパスフェージング効果によって引き起こされる。加えて、各ノードのコスト削減のためにディープサブミクロン(deep−sub−micron:DSM)およびウルトラディープサブミクロン(ultra−deep−sub−micron:UDSM)などの積極的設計技術を使用することにより、ノードはさらに演算処理およびセンシングにおいて様々な種類の一時的なエラーにさらされることになる。
【0006】
センサノードの信頼性を測定する技術のほとんどは、高い間接費を収集に当てている。通常、既存の信頼性の手法では、回路または通信チャネルそれぞれにおいて破損したデータを補正するために、冗長ハードウェアを追加したり、ソースから余分のデータを送信したりすることができる。これによって、通常の手法は、厳しい制約を受けるセンサノードに用いるにはあまりにも費用がかかりすぎるものとなる。回路および通信チャネルにおける障害に対処するためには、かかる方法では、エネルギー量ならびにセンサノードの設計および製造コストにおいて高い間接費が生じるのである。
【0007】
データ補正の他の従来の方法として、ハードウェアのソフト障害を補正する方法や、ワイヤレス通信チャネルのビット検出エラーを補正する方法がある。ハードウェアのソフトエラーを補正する技術には、例えばハードウェアの三重モジュール式冗長や誤り訂正コーディングなどの、回路レベルとモジュールレベルの2つのアプローチがある。ワイヤレス通信チャネルのビット検出エラーを補正する技術には、チャネルコーディングのようなパリティに基づく前進型誤信号訂正(Forward Error Correction:FEC)コーディング技術や、ARQのような再送信に基づく技術がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の好ましい実施形態は、とりわけ、ネットワーク上で収集されるセンサデータの信頼性の向上に適した装置と方法を提供する。補正されたデータの相関関係を用いて、1つ以上の一時的なエラーを予測し補正する。例えば、センサデータをネットワーク中の1つ以上のセンサノードから収集してもよい。センサノード以外のデバイスは、データに内在する冗長性に基づいて予測モデルを算出し、その後受信する信頼性が欠如するとされる1つ以上の値を補正するために、データを用いることができる。
さらなる特徴および効果は、以下の本発明にかかる例示的実施形態のより具体的な説明と添付の図面により、明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の好ましい実施形態にかかる、データ集約および補正方法を行うために用いられるデバイスを含むネットワークを示す図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態にかかる、集積ノードにより実施されるデータソースからのデータを集約し補正するアルゴリズムを模式的に示す図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態にかかる、データ補正を行う動作例を示す図である。
【図4】本発明の例示的実施形態にかかる、3つのサンプルの遅延についての予測履歴ツリー(PHT)の例を示す図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態にかかる、データ集約および補正方法を実施する擬似コードの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい実施形態は、最小限のエラー保護のコスト、すなわちセンサノードのコストおよび通信の間接費用で、信頼性を高めるものである。好ましい実施形態においては、センサノードに対する設計または動作上の間接費なしに、センサノードの回路または通信チャネルにおいて発生した一時的なエラーのランタイム補正が行われる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、センサデータ自体の特性に関する知見がデータの確認と補正の実現に用いられる。本発明の実施形態では、センサデータとセンサアプリケーションの目的とその各種エラーに対する脆弱性との相関関係に関する情報が用いられる。
【0012】
例えば、センサデータは、一般的に、ノード当たりまたはノードのクラスタにわたって一時的な期間冗長性を示す。かかるセンサデータの内在的な冗長性は、センサノードの間接費の負担をかけることなく、コスト/エネルギーの制約がずっと少ないデータ集積ノードのバッファ要求をほんのわずかに抑えることで、データ収集における高い信頼性を可能とするために利用することができる。本発明の好ましい実施形態にかかる、ソフト障害を補正する低コストのエラー補正装置、システム、および方法は、データ予測モデルに取り込んだデータの特性を用いて提供される。
【0013】
一方、従来の信頼性技術では、回路または通信チャネルそれぞれにおいて破損したデータを補正するために、冗長ハードウェアを追加したり、ソースにおいて余分のデータを送信したりする。かかる技術は、厳しい制約を受けるセンサノードに用いるにはあまりにも費用がかかりすぎるものとなり、また、アプリケーションデータの特性を用いることもない。したがって、回路および通信チャネルにおける障害に対処するためには、かかる方法では、エネルギー量ならびにセンサノードの設計および製造コストにおいて法外に高い間接費が生じるのである。
【0014】
本発明の実施形態は、例えばソフトウェアとして実施または適切なデバイスに暗号化された、集積ノードにおけるセンサデータの一時的なエラーを補正する、アプリケーションレベルのデータを意識した方法を含み、このセンサデータの集約とフィルタリングはセンサデータネットワークで行われる。好ましい方法では、好ましくはセンサノードに設計あるいは材料費または動作上の間接費の負担をかけることなく、センサノードなどのデータソースからワイヤレス通信チャネルを介して受信したデータのランタイム補正が実現される。発生した間接費は、集約するためにデータをバッファリングする集積ノード(1つまたは複数)などのデータ受信部におけるストレージおよび演算処理コストにのみ関するものであることが好ましい。好ましくは、この方法では、アプリケーションの性能要求および集積部におけるリソースの制約に調整することができる。
【0015】
一般に、好ましい方法では、センサデータ内の冗長性を識別し、これを用いて存在する一時的なエラーを補正する。例示的実施形態においては、センサデータ内の冗長性の詳細な分析は、予測モデルにおける相関関係特性を取り込む。この予測モデルは、その後、データのオンライン予測補正のためのデータ取得の間に用いられる。この好ましい方法では、センサデータのソフト障害をフィルターする。
【0016】
より具体的には、例示的実施形態において、集積ノードなどのデバイスは、ネットワークのセンサノードからのセンサデータの分析に基づいて予測モデルを構築する。この集積ノードは、その後、ランタイムで上記予測モデルを用いて信頼性チェックを行ってセンサノードからの受信データの信頼性を確認し、エラー補正判断を行う。本発明の好ましい方法には、オフラインでの内在的なセンサデータ予測モデル用のデータ収集と、オンラインでのランタイムにおけるこの予測モデルの適用が含まれる。
【0017】
データ予測は、通常、観察値のエラーの大部分をフィルターするが、この予測が必ずデータ処理を正しく追跡することができるとは限らない。例えば、アプリケーションが収集されたデータに対して行う集約動作は、異なるレベルの誤ったデータに対する脆弱性を有している。そのため、本発明の好ましい方法ではアプリケーションの遅延制約内でデータのレポートを遅延する。遅延したレポートにより、予測値と観察値との間で補正後の値を選択するガイドをするために、好ましくは後のサンプルの小さな組において、観察値を用いることができるようになる。過去のデータサンプルを補正後の値の選択を支援するために用いることもできる。この好ましい方法は、遅延を調整することにより、データ受信部で利用可能な演算処理リソースおよびアプリケーションの遅延要求に調整することができる。
【0018】
本発明の実施形態のネットワークは、1つ以上の集積ノードとの間でワイヤレスにデータを通信する1つ以上のセンサノードを含む。センサデータの内在的な冗長性は、例えば集積ノードであってもよいデータ処理の現場でエラー補正を行うのに用いられる。集積ノードは通常センサノードより大きな演算処理用ストレージとエネルギーリソースを有するため、これは有利である。本発明の別の実施形態は、ワイヤレスネットワークで用いられるよう構成された集積ノードを含む。
【0019】
次に図面を参照すると、図1に、本発明にかかる例示的な方法を行うよう構成されたデバイスを含むセンサネットワーク10を示す。前記デバイスは集積ノード12であることが好ましく、この集積ノード12はワイヤレスチャネル14を介してデータソースからデータを受信する。前記データソースは、例えば、1つ以上のセンサノード16、および好ましくはチャネル14を介してワイヤレスにデータを送信する複数のセンサを含む。ネットワーク10は、好ましくは複数の集積ノード12を含むが、わかりやすくするために図1では1つしか示していない。
【0020】
集積ノード12は、例えば、センサデータを受信し集約する1つ以上のモジュールを備えてもよい。これらのモジュールが行う集約機能は、特定のセンサからのデータを集約するノードレベルあるいは一時集約部18、および/または異なるセンサノードからのデータを集約する空間的あるいはクラスタレベルの集約部20を含んでもよい。集積ノード12から集約され補正されたデータは、次に、処理または格納のためにサーバ22または他のデバイスに送信(レポート)されてもよい。
【0021】
図2に、本発明の好ましい実施形態にかかる、データ補正方法を行うアプリケーションレベルのアルゴリズムの一般的な概略図を示す。このアルゴリズムは、例えば任意の適切な方法により、集積ノード18などのデバイスにおいて実施することができる。
【0022】
センサデータ補正方法の例では、データ生成処理の予測モデルが、センサノード16から最初に収集されたデータ(代表サンプル)の前処理によって、好ましくはオフラインで構築される。例えば、データモデルブロック24として図2に示す適切な前処理ロジックは、集積ノード12において実施されてもよい。この予測モデルは、センサデータの相関関係を用いる。この相関関係は一時的なものであることが好ましく、その場合、予測モデルはセンサデータの内在的かつ一時的な(ノード単位の)冗長性に基づいて算出されることが好ましい。しかしながら、その他の種類の相関関係も合わせて、または代わりに用いることができると考えられる。
【0023】
選択されるモデルは、予測がデータ生成プロセスにほぼ一致するように十分豊かでなければならない。また、このモデルにより、リソースの消費と複雑さの点で効率的な予測プロセスが集積ノード12または他のデバイスの性能要求をすべて満たされることになる。以上のような要求を前提として、データモデルブロック24により生成されたモデルの選択は、主にデータの一時的な相関関係のレベルと性質に依存することが好ましい。データの相関関係の特性を表わすには各種のモデリング技術を用いることができるが、補正方法の性能は、モデリングの精度と予測の効率に大きく依存する。本発明の実施形態を検証する実験において用いられた例示的モデルは、自己回帰移動平均(auto−regressive moving average:ARMA)モデルである。これは、図2にデータ履歴ブロック26として示す以前の観測の履歴と、エラー履歴ブロック28として示す予測性能の履歴を用いる直線状の予測モデルである。ARMAモデルの順序識別(すなわち、新たな予測値の算出に用いる過去の値とエラー履歴の数字)は、例えば、最小最終予測エラー基準を用いて行ってもよい。
【0024】
また、図2および図3に示すように、この予測モデルは次の読み込みのあり得る値を算出するためにランタイムで用いられ、データ補正方法は、観察されたデータと予測エラーとの履歴に基づいて、センサまたは予測モデルより得られた値が将来利用するために記録またはレポートされるか否かを判断する。別の言い方をすると、このデータ補正により、前記あり得る値から見て、センサにより得られた値に信頼性があるかどうかを判断することができ、もし信頼性がなければ、予測値を用いて前記値の補正またはフィルタリングを行う。
【0025】
これは、例えば、図2にデータ補正ブロック30として示したアプリケーションレベルの予測補正ロジックを介して実施することができる。好ましいアプローチには、観察されたデータ履歴の保持(データ履歴ブロック26)と、算出された予測モデルを用いた履歴からの予測将来値32の生成とが含まれる。次の観察データ値34がセンサノード16から受信された後で、これらの候補値のうちいずれを記録するかが決定される。好ましくは、データ補正ブロック30は、予測に用いられるデータモデルからは独立して動作する。しかしながら、予測補正用のロジック30は、予測モデルの形成に用いられるロジック24と部分的または完全に重複してもよいと考えられる。
【0026】
一般的なデータ補正方法において、図3に示すように、集積ノード12のデータモデルブロック24は初期データをワイヤレスにセンサノード16から収集し(ステップ40)、前記初期データを処理し(ステップ42)、処理された初期データに基づいて予測モデルを構築する(ステップ44)。ランタイム動作の間、集積ノード12は、観察されたセンサデータをワイヤレスに受信および/または収集し(ステップ46)、構築したモデルを用いてセンサノード16から次の読み取りのあり得る値を予測する(ステップ48)。その後、データ補正ブロック30は、受信した値の信頼性を判断することにより、受信した値を用いるか否かを判断する(ステップ50)。受信した値が信頼できるものであれば、この値が補正されたデータとしてレポートされる(ステップ52)。そうではない場合、集積ノード12により一時的なエラーが予測される。この場合、一時的なエラーを補正するために、予測値が補正されたデータとしてレポートされる(ステップ54)。
【0027】
予測に基づく補正を行う際の特筆すべき点は、受信部(集積ノード12)における予測値と観察値の不一致の扱い方の選択である。このような不一致は、純粋なエラーによって起こることもあれば、データソースの動作がモデルから逸脱することにより起こることもある。かかるエラーは、これら2つのケースについて別々に対処されなければならない。本発明の好ましい実施形態において、この決定は、過去のサンプルとその後観察された多数のサンプルに基づいて行われる。これは、図2で決定遅延パラメータ(K)58により表わされる遅延を用いて行われる。
【0028】
再び図2を参照すると、Yはセンサデータの観察値34の序列を表わし、Y’は予測ブロックの結果(予測データ32)を表わし、Yはデータ補正ブロック30からの補正後の値60を表わす。データ補正ブロック30は、異なる予測の履歴のあり得る各種のバージョンを生成し記録することによるエラー補正のプロセスにおいて、データモデルブロック24により構築された予測モデルを用いる。時間nのいずれの時点においても、観察されたデータY(n)34として、データ補正ブロック30は補正後の値Y(n−K)60を算出する。ここで、Kは事後補正のために保持される予測履歴の深度を表わす。
【0029】
例えば、図4を参照すると、時間nについて、Y(n)までの観察値とこれに対応するY’(n)までの予測を用いて、K個のサンプルの遅延の後、補正後の値Y(n−K)60をレポートする。センサノード16のサンプルが観察されるたびに、データ補正ブロック30はこれを予測モデルおよび過去の履歴から予測された値と比較し、実際に期待される観測に近い方の値をレポートしようと試みる。この決定の遅延により、これに続くK個のサンプルの予測精度に対する選択の効果を考慮するステップを備えることができる。
【0030】
好ましい実施形態において、この遅延した決定は、予測履歴ツリー(prediction history tree:PHT)70を用いて実施される。PHTは、過去のK個のサンプルについてのあり得る予測値とこれに対応する予測エラーを含む。PHTの各ノードの値に対応する予測エラーは、パラレルエラー履歴ツリー(図示せず)に格納される。このパラレルエラー履歴ツリーはPHT70に同期して保持されるが、この同期は2つのツリーに同じ更新操作を行うことにより行われる。
【0031】
例示的PHT70はK+1の深度を有し、最後からK個のサンプルについて各種の見込み値、すなわちY(i)(ここでi=n−K:n−1)を表わす。図4に、K=3であるときのPHT70の例を示す。PHT70の任意のレベルjにおける各ノード72は、あり得る値Y(n−K+j−1)を表わし、ルートノード(レベル0)74は、Y(n−K−1)についてすでに選択された値を表わす。
【0032】
どのノードも2つの送出パス76、78を有しており、これらは図4でそれぞれ0および1と表示されている。これらは、これに続くサンプルについてのY(観察値)とY’(予測値)の選択肢をそれぞれ表わす。したがって、ルートからレベルK+1におけるリーフ80までのどのパスも、値Y(n−K:n−1)の序列につながる2個を上限とする一連の選択肢を表わす。図4のPHTのノード72には、これに含まれるあり得る値が注記されている。例えば、Y’(n−1|01)と注記されたリーフノード82は、予測値Y’(n−1)を表わし、これは、ルートノードからの011の選択肢に対応する、ルートノード74からノード84およびノード86までのパスに続いて得られる。
【0033】
好ましい方法では、サーバ22に送信する値の選択にPHTを用いる。PHTを用いた受信部でのエラーの補正に用いられる方法の擬似コードの例を、図5に示す。時間nにおいて(ステップ90)、観察値Y(n)が受信され(ステップ92)、このサンプルについての2個までのあり得る予測値が、ルートから各リーフノードまでのパスiそれぞれについて1つずつ算出される(ステップ94)。各予測値Y’(n,i)が、このパス上のノードに基づいて、異なるデータとエラー履歴のセットを用いて算出される(ステップ96)。また、各パスについて、予測エラーが算出され(ステップ98)、サンプルごとの平均予測エラーが予測エラーを用いて算出される(PathErr)(ステップ100)。パスエラーの最小値に基づいて、PHTのルートの子ノードの1つが、新たなルートとして選択され(ステップ102)、選択された子ノードの内容が補正後の値Y(n−K)を決定する(ステップ104、106)。その後、この子ノードにルートを置くツリーを用いてPHT構造を置き換える。
【0034】
例えば、次のレベルのPHTが生成される(ステップ104)。PHTを生成する好ましい方法においては、パスiを含むレベル1ノード(例えば図4のノード84)が選択される(ステップ106)。このノードがノードsとなる。ノードのsの観測値とエラー値は、アプリケーションにレポートされる補正後の値Yおよび予測エラーに用いられ、データおよびエラー履歴に入力される(ステップ108)。ルートからの別のブランチにルートを置くサブツリーは廃棄され(ステップ110)、ツリーの残りが、各リーフノードに1つまたは2つの子(当該パスにおける観測されたY(n)および予測Y’(n))を追加することにより、次のレベルに延びる(ステップ112)。
【0035】
効率を向上させるために、予測することになる値からのごく小さい変動は、一時的なエラーよりも検出された物理的プロセス中のランダムさによるものであると想定することにより、予測履歴(すなわちPHT)のサイズをいくぶん小さくすることができる。実施例として、好ましい方法においては、エラー閾値ETH114を制御パラメータとして用い、E(n)がETH以下の場合は新たなY’(n)値を加算しないようにしてもよい(ステップ116)。これは、特定のリーフノードがN個のステップの後にルートとなった場合、観察値YをYとして用いることになることを意味する。したがって、ツリー構造は十分に増えないことが多い。
【0036】
遅延値Kの選択により、補正後の値のレポートにおける遅延は別にして、特定の任意のデータおよびエラー特性に基づいて好ましいデータ補正方法によって実現される補正のレベルが決定される。この方法の格納と演算処理の複雑性は、また、パラメータKに直接的に依存する。というのも、これが各サンプルの補正に用いられる履歴情報の量を決定するためである。好ましい方法によりセンサノード16および/またはワイヤレスチャネル14に発生するモデリングエラーと全くランダムなエラーを区別するため、Kの最適選択は、エラーの特性と用いられるモデリング技術の性能に依存する。可能性として、補正精度と性能およびリソースを、Kを変更することによりトレードオフして、集積ノード12のアプリケーション要求と制約に一致させることができる。
【0037】
好ましい補正方法の性能は、部分的には、予測アルゴリズムの性能に依存する。予測アルゴリズムは、その序列における次の値を予測するために各サンプルの各パスで呼び出されることが好ましい。補正ブロックにより消費される一次リソースは、ストレージであり、このPHT70に対する空間複雑性はO(2)である。
【0038】
例えば、これらの方法では、遅延は、Kの選択および選択されたKに基づくPHT70の形成により、集積ノード12あるいはワイヤレスセンサネットワーク10などの特定のデバイスに調整されてもよい。アプリケーションの遅延感度、相対エラーレベル、および受信側ノードのリソース制約に応じて、予測履歴の異なる深度を用いてもよい。
【0039】
以上、データ集約および補正にかかる、多くの特徴と効果を有する多数の方法、デバイス、およびシステムを明らかにして説明してきた。好ましいデータ補正方法をアプリケーションレベルで行うことにより、この方法を実施するデバイスまたはシステムの設計をより容易にすることができる。集積ノード12を用いてデータ補正のステップを行うことにより、センサノード16の間接費の増加が抑えられ、通常はもっと多くの間接費が必要となるデバイスを用いて行われるような演算処理を行うことができる。遅延の利用により、好ましい方法の効果を向上させることができ、この方法を各種のデバイスやシステムに調整するために、遅延を選択してもよい。エラー閾値は集積ノード12の不必要な間接費を削減することが好ましい。
【0040】
本発明の実施形態より、センサネットワークはさまざまな構成が可能であるが、好ましいデータ集約および補正方法は、エネルギー量およびリソース量が比較的大きな集積ノードによって管理される多数の安価で軽量のセンサノードを含むネットワーク構造において、特に有用である。
【0041】
以上、本発明の具体的な実施形態を明らかにして説明してきたが、その他の変更、置き換え、代替が当業者にとって明らかであることは言うまでもない。かかる変更、置き換え、代替は、添付の特許請求の範囲により定められる本発明の趣旨と範囲を逸脱することなくなされることができる。
【0042】
本発明の様々な特徴は、以下に付記する実施態様及び添付の特許請求の範囲によって定義される。
(付記1)
収集されたデータ中の一時的なエラーをフィルタリングする方法であって、
前記データの相関関係を用いて前記一時的なエラーを予測すること、および
前記相関関係に少なくとも部分的に基づいて前記一時的なエラーを補正することを含む方法。
(付記2)
前記補正は前記データの遅延を含む、付記1に記載の方法。
(付記3)
前記データの遅延は遅延量を特定のワイヤレスセンサネットワークに調整することを含む、付記2に記載の方法。
(付記4)
前記遅延の調整は予測履歴ツリーの形成を含む、付記3に記載の方法。
(付記5)
前記データの遅延は予測履歴ツリーの形成を含む、付記2に記載の方法。
(付記6)
前記相関関係は自己回帰移動平均相関関係を含む、付記1に記載の方法。
(付記7)
前記予測および補正はワイヤレスデバイスによって行われる、付記1に記載の方法。
(付記8)
ネットワーク(10)であって、
前記ネットワークの少なくとも1つのセンサ(16)を介して受信されるセンサデータのノード単位の冗長性に少なくとも部分的に基づいて、オフラインで予測モデルを生成するよう構成されたデバイス(12、18)を備え、前記デバイスは、さらに、部分的に前記予測モデルに基づいて、前記少なくとも1つのセンサを介して受信した観測されたデータを補正するか否か判断するよう構成された、ネットワーク(10)。
(付記9)
前記少なくとも1つのセンサは1つのデバイスである、付記8に記載のネットワーク。
(付記10)
前記予測モデルは直線状モデルである、付記8に記載のネットワーク。
(付記11)
少なくとも1つのセンサ(16)からのセンサデータのノード単位の冗長性に少なくとも部分的に基づいてオフラインで予測モデルを生成するよう構成された第1のロジック(24)と、
部分的に前記予測モデルに基づいて、前記少なくとも1つのセンサ(16)からの観測されたデータを補正するか否か判断するよう構成された第2のロジック(30)とを備えるデバイス(12、18)。
(付記12)
前記第1のロジックは、前記第2のロジックの少なくとも一部を含む、付記11に記載のデバイス。
(付記13)
前記第2のロジックは、前記第1のロジックの少なくとも一部を含む、付記11に記載のデバイス。
(付記14)
前記第1のロジックと前記第2のロジックは重複しない、付記11に記載のデバイス。
(付記15)
ネットワーク上で収集されるセンサデータの信頼性を高める方法であって、
センサノード以外のデバイスにより、
前記ネットワークの1つ以上のセンサノードから初期センサデータを収集するステップ、
初期センサデータを前処理して前記データに内在する一時的冗長性のレベルを決定するステップ、
前記初期センサデータに内在する一時的冗長性に基づいて予測モデルを構築するステップ、
センサノード以外のデバイスにより、
前記予測モデルに基づいて前記ネットワークのセンサノードからの次のセンサ読み取りのあり得る値を算出するステップ、
前記センサノードから受信した値が前記あり得る値に対して信頼性があるか否かを判断し、信頼性がない場合には、前記センサノードから受信した値を補正するするステップを含む方法。
(付記16)
前記初期センサデータの収集、前記初期センサデータの前処理、および前記予測モデルの構築は、オフラインで行われる、付記15に記載の方法。
(付記17)
さらに、前記次のセンサ読み取りのあり得る値の算出の後、前記次のセンサ読み取りを受信する、付記15に記載の方法。
(付記18)
前記予測モデルは自己回帰移動平均(ARMA)モデルを含む、付記15に記載の方法。
(付記19)
前記次のセンサ読み取りのあり得る値の算出は、さらに、以前に受信されたセンサデータの履歴およびエラーの履歴に基づく、付記15に記載の方法。
(付記20)
前記補正は、多数のサンプルのうちサンプルnについて補正後の値Y(n−K)を決定し、ここでKは決定遅延である、付記15に記載の方法。
(付記21)
前記補正後の値の決定は、さらに、前記センサから受信した値と予測値との間の選択を示すパスを含む予測履歴ツリーを形成する、付記20に記載の方法。
(付記22)
ネットワーク上で収集されるセンサデータの信頼性を高める方法であって、
センサノード以外のデバイスにより、
センサデータに内在する一時的冗長性に基づく前記予測モデルに基づいて前記ネットワークのセンサノードからの次のセンサ読み取りのあり得る値を算出するステップ、
前記センサノードから受信した値が前記あり得る値に対して信頼性があるか否かを判断し、信頼性がない場合には、前記センサノードから受信した値を補正するステップを含む方法。
(付記23)
前記次のセンサ読み取りのあり得る値の算出は、さらに、以前に受信されたセンサデータの履歴およびエラーの履歴に基づく、付記22に記載の方法。
(付記24)
前記補正は、多数のサンプルのうちサンプルnについて補正後の値Y(n−K)を決定し、ここでKは決定遅延である、付記22に記載の方法。
(付記25)
前記補正後の値の決定は、さらに、前記センサから受信した値と予測値との間の選択を示すパスを含む予測履歴ツリーを形成する、付記24に記載の方法。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集されたデータ中の一時的なエラーをフィルタリングする方法であって、
前記データの相関関係を用いて前記一時的なエラーを予測すること、および
前記相関関係に少なくとも部分的に基づいて前記一時的なエラーを補正することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−161085(P2012−161085A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−81536(P2012−81536)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2007−505141(P2007−505141)の分割
【原出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(505088684)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (18)
【Fターム(参考)】