説明

ネットワーク故障評価システム、ネットワーク故障評価方法、及びプログラム

【課題】故障時間を削減した場合に、ユーザ申告件数の削減効果が大きく表れる故障時間を持つ故障事例を抽出するための技術を提供する。
【解決手段】ネットワーク故障評価システムにおいて、評価対象とする装置機種に関するネットワーク故障情報を格納する故障情報格納手段と、前記ネットワーク故障情報の各故障事例における、故障発生からの経過時間毎のユーザ申告件数の累積値を格納するユーザ申告情報格納手段と、前記ネットワーク故障情報と前記ユーザ申告件数の累積値をもとに、故障発生後の経過時間に対するユーザ申告件数の正規化累積率を算出する手段と、前記正規化累積率に基づき、ユーザ申告件数の増加率が所定の閾値を超えている時間の範囲を抽出する手段と、故障時間が前記時間の範囲に含まれる故障事例を前記ネットワーク故障情報から抽出し、抽出した故障事例の情報を表示手段に表示する手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPネットワーク等のネットワークの故障によるユーザへの影響度合を評価するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IPネットワーク技術が進展するにつれて、市販技術や汎用製品を積極的に導入してネットワークを構築するようになったため、関連装置の開発期間やネットワークの構築期間、動作の検証期間は短縮化される傾向にある。また、新規に開発され運用実績の少ない複数種のネットワーク装置が導入されるようになり、ネットワーク上において複数種のネットワーク装置が混在化するようになった。以上により、ネットワーク装置の故障によるユーザへの影響度合も様々なものとなっている。
【0003】
ネットワークの信頼性評価に関連する従来技術として、非特許文献1には、故障による影響ユーザ数の変化に応じてユーザ申告件数も変化するとの考えに基づき、故障による影響ユーザ数とユーザ申告件数の関係をもとに、ネットワークの故障および信頼性を評価する技術が記載されている。
【0004】
また、非特許文献2には、故障件数とユーザ申告件数の関係をもとに、ネットワークの信頼性を評価する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】淺谷耕一, "通信ネットワークの品質設計," 電信情報通信学会, 1993, p206-p207
【非特許文献2】Industry Analysis and Technology Division Wireline Competition Bureau Federal Communications Commission, "QUALITY OF SERVICE OF INCUMBENT LOCAL EXCHANGE CARRIERS,", 2009.12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1、2に記載された従来技術では、故障時間の長さとユーザへの影響が十分に考慮されていない。例えば、故障時間が短い場合、ユーザが故障に気づく可能性が低いため、ユーザに与える影響は小さい。その結果として、ユーザからの申告件数は少ない。一方、故障が長い場合は、ユーザが故障に気づく可能性が高いため、ユーザに与える影響は大きい。その結果としてユーザからの申告件数は多くなる。さらに、故障時間が長引くと、ユーザ申告件数は一定数に達し、それ以上増加しなくなる。したがって、ユーザが故障に対する申告をする確率は、故障発生から徐々に増加していき、ある時点をピークに減少していく傾向にある。
【0007】
しかしながら、上述の通り、従来の技術では、故障時間の変化に対するユーザへの影響の変化が考慮されていない。すなわち、故障時間に応じてユーザ申告件数は大きくなるが、ある一定以上の故障時間に達すると、ユーザ申告件数も一定数に達し、増加しなくなる傾向を考慮していない。したがって、単純に故障時間の長い事例がユーザに最も影響が大きいと評価される。その結果として、各種故障事例に対してユーザへの影響の軽減に最も効果の高い施策を選定することができなかった。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ネットワークにおける故障情報および故障に対するユーザ申告件数に関する情報を用いて、故障時間を削減した場合に、ユーザ申告件数の削減効果が大きく表れる故障時間を持つ故障事例を抽出するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、評価対象とする装置機種に関するネットワーク故障情報を格納する故障情報格納手段と、前記ネットワーク故障情報の各故障事例における、故障発生からの経過時間毎のユーザ申告件数の累積値を格納するユーザ申告情報格納手段と、前記ネットワーク故障情報と前記経過時間毎のユーザ申告件数の累積値をもとに、故障発生後の経過時間に対するユーザ申告件数の正規化累積率を算出するユーザ申告件数累積率算出手段と、前記ユーザ申告件数の正規化累積率に基づき、ユーザ申告件数の増加率が所定の閾値を超えている時間の範囲を抽出する抽出範囲算出手段と、故障時間が前記時間の範囲に含まれる故障事例を前記ネットワーク故障情報から抽出し、抽出した故障事例の情報を表示手段に表示する故障事例抽出手段とを備えることを特徴とするネットワーク故障評価システムとして構成される。
【0010】
前記ユーザ申告件数累積率算出手段は、前記ユーザ申告件数の累積値を前記ネットワーク故障情報におけるユーザ申告件数の統計値を用いて正規化することにより、前記ユーザ申告件数の累積率を算出し、故障事例毎に算出された前記ユーザ申告件数の累積率の代表値を前記ユーザ申告件数の正規化累積率として算出するように構成することができる。
【0011】
また、前記抽出範囲算出手段は、所定の単位時間間隔で、当該単位時間での前記ユーザ申告件数の正規化累積率の増加量を当該単位時間で割ることにより前記ユーザ申告件数の増加率を算出することができる。
【0012】
また、本発明は、コンピュータを、上記ネットワーク故障評価システムにおける各手段として機能させるためのプログラムとして構成したり、上記ネットワーク故障評価システムによる実施に適したネットワーク故障評価方法として構成することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ネットワークにおける故障情報および故障に対するユーザ申告件数に関する情報を用いて、故障時間を削減した場合に、ユーザ申告件数の削減効果が大きく表れる故障時間を持つ故障事例を抽出することが可能となり、抽出された故障事例に基づいて、ユーザへの影響の軽減に最も効果の高い施策を選定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態におけるネットワーク故障評価システム100の構成例を示す図である。
【図2】ネットワーク故障評価システム100の動作を示すフローチャートである。
【図3】ネットワーク故障情報の一例を示す図である。
【図4】ユーザ申告情報の一例を示す図である。
【図5】故障事例毎の経過時間とユーザ申告件数の累積率との関係を示すグラフである。
【図6】経過時間とユーザ申告件数の正規化累積率Iの関係を示すグラフである。
【図7】経過時間tとユーザ申告件数の正規化累積率Iの増減率との関係を示すグラフである。
【図8】ユーザ申告件数の正規化累積率Iの増減率と閾値との比較を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
(システム構成、機能概要)
本発明の実施の形態におけるネットワーク故障評価システムは、入力されたネットワーク故障情報およびユーザ申告情報に基づき、故障発生後の経過時間とユーザ申告件数との関係を算出し、ユーザ申告件数の増加傾向を把握することによって、ユーザ申告件数の増加傾向が大きくなる経過時間に対応する故障時間を持つ故障事例を抽出し、表示する。これにより、ネットワーク運用管理者等は、ネットワークの故障事例がユーザに与える影響を比較評価することができ、ユーザへの影響の軽減に最も効果の高い施策を選定することが可能となる。
【0017】
本実施の形態におけるネットワーク故障評価システム100の構成例を図1に示す。図1に示すように、本実施の形態におけるネットワーク故障評価システム100は、受信部101、ネットワーク故障情報DB(データベース)102、ユーザ申告情報DB103、入力部104、入力情報記憶部105、処理対象情報記憶部106、ユーザ申告件数累積率算出部107、ユーザ申告件数累積率記憶部108、抽出範囲算出部109、抽出範囲記憶部110、故障事例抽出部111、及び表示部112を有する。以下、各機能部の基本的な機能を説明する。
【0018】
受信部101は、ネットワーク故障情報、及びユーザ申告情報を受信する機能部であり、ネットワーク故障情報DB102、及びユーザ申告情報DB103が、これら受信した情報を格納する。ネットワーク故障情報は、故障した装置機種や機能に関する情報、故障発生から復旧までの故障時間、各故障におけるユーザ申告件数を少なくとも含む。また、ユーザ申告情報は、各故障における故障発生からユーザ申告が発生するまでの時間(経過時間)毎のユーザ申告の累積件数の情報である。
【0019】
入力部104は、例えばネットワーク運用管理者等の操作に基づき、評価対象とする装置機種に関する情報、及び故障事例の評価に必要となる閾値を入力するための機能部である。
【0020】
ユーザ申告件数は故障による影響ユーザ数に大きく依存している。よって、装置機種毎にユーザ申告件数を評価することによって、当該装置機種における故障によるユーザへの影響を評価することができる。そこで、本実施の形態では、評価対象とする装置機種の情報をネットワーク運用管理者が任意で選定し、ネットワーク故障評価システム100に入力している。評価対象とする装置機種に対応するネットワーク故障情報とユーザ申告情報は、処理対象情報記憶部106に格納される。
【0021】
ユーザ申告件数累積率算出部107は、ネットワーク運用管理者により入力された装置機種の故障に関する、故障発生後の経過時間に対するユーザ申告件数の累積率を算出する機能部である。
【0022】
ここで、ユーザ申告件数の累積率は、ユーザ申告件数の統計値を用いて正規化したものである。ユーザ申告件数の増加傾向は故障発生からの経過時間に大きく依存しており、故障時間が短い場合は申告が発生する前に故障修理が完了する可能性が高く、故障時間が長い場合は申告件数が増加した後、増加率が小さくなる可能性が高い。すなわち、各故障事例の故障時間の長さに応じて、ユーザ申告件数の増加傾向は変化する。したがって、ユーザ申告件数の累積率は、故障時間の違いを考慮し、ユーザ申告件数の統計値(例えば最大値)を用いて正規化することとしている。
【0023】
また、ユーザ申告件数の累積率は、各故障事例について算出される。したがって、各故障事例において経過時間毎にユーザ申告件数の累積率は異なるため、統計処理を実施することによって代表値となる値を算出し、これを故障発生後の経過時間に対するユーザ申告件数の正規化累積率としている。ユーザ申告件数累積率記憶部108が、ユーザ申告件数累積率算出部107による算出結果を格納する。
【0024】
抽出範囲算出部109は、ユーザ申告件数累積率算出部107で算出されたユーザ申告件数の正規化累積率を用いて、故障時間の増分に対するユーザ申告件数の累積率の増分をユーザ申告件数の増加率として算出し、ユーザ申告件数の増加率が一定の値を超えている時間の範囲を算出する機能部である。
【0025】
この増加率が大きいほど、ユーザ申告件数が大きく増加傾向にあることを示している。ユーザ申告件数の増加率は、故障発生から徐々に増加していき、ある時点をピークに減少していく傾向にある。よって、局所的に増加率が高くなる故障時間が存在する。したがって、ネットワーク運用管理者の入力した増加率に対する閾値をもとに、ユーザ申告件数の増加率が一定の値を超えている時間の範囲を算出している。抽出範囲算出部109により算出された時間の範囲は、抽出範囲記憶部110に格納される。
【0026】
故障事例抽出部111は、抽出範囲算出部109で算出した時間の範囲をもとにネットワーク故障情報の各故障事例の故障時間を評価し、算出した時間の範囲内にある故障時間の故障事例を抽出する機能部である。
【0027】
表示部112は、故障事例抽出部111により抽出された故障事例の故障した装置機種や機能に関する情報、故障発生から復旧までの故障時間、各故障におけるユーザ申告件数等を含むネットワーク故障情報を表示する。
【0028】
なお、図1に示したネットワーク故障評価システム100は、コンピュータに、本実施の形態で説明する処理内容を記述したプログラムを実行させることにより実現可能である。すなわち、ネットワーク故障評価システム100の各部で行われる処理や機能は、ネットワーク故障評価システム100を構成するコンピュータに内蔵されるCPUやメモリなどのハードウェア資源を用いて、各部で実施される処理に対応するプログラムを実行することによって実現することが可能である。また、該プログラムは、当該プログラムを記録したFD、CD−ROM、DVDなどの記録媒体や、インターネットなどのネットワークを介して市場に流通させることができる。
【0029】
また、例えば、ネットワーク故障情報DB102、及びユーザ申告情報DB103は、ネットワーク故障評価システム100の内部にある必要はなく、ネットワーク故障情報DB102、及びユーザ申告情報DB103を含むデータベース装置をネットワーク故障評価システム100の外部に備え、必要な情報をネットワーク故障情報DB102、及びユーザ申告情報103から通信ネットワークを介して取得するようにしてもよい。
【0030】
(システムの動作詳細)
以下、本実施の形態に係るネットワーク故障評価システム100の動作を図2のフローチャートの流れに沿ってより具体的に説明する。
【0031】
(ステップ0)<ネットワーク故障情報等の入力>
まず、図2に記載された処理を行うための事前準備として、ネットワーク故障情報と、ユーザ申告情報をネットワーク故障評価システム100に入力する。
【0032】
例えば、ネットワーク故障評価システム100に通信ネットワークを介して接続されたネットワーク運用管理者端末から、ネットワーク故障情報とユーザ申告情報がネットワーク故障評価システム100に送られ、ネットワーク故障評価システム100の受信部101がこれらの情報を受信する。そして、ネットワーク故障情報は、ネットワーク故障情報DB102に格納され、ユーザ申告情報はユーザ申告情報DB103に格納される。
【0033】
上記のネットワーク故障情報は、故障した装置機種や機能に関する情報、故障発生から復旧までの故障時間、各故障におけるユーザ申告件数を含む情報である。また、ネットワーク故障情報は、該当する装置機種や機能における故障原因や故障箇所も含む。
【0034】
ユーザ申告情報は、各故障における故障発生からユーザ申告が発生するまでの時間(経過時間)毎のユーザ申告の累積件数を示す情報である。
【0035】
図3に、ネットワーク故障情報の一例を示す。図3に示す例では、ネットワーク故障情報は、故障装置機種、故障発生日時、復旧日時、故障時間、該当する故障で影響を受ける影響ユーザ数、該当する故障におけるユーザ申告件数を含む情報である。
【0036】
図4に、ユーザ申告情報の一例を示す。図4に示す例では、ユーザ申告情報は、故障毎に、経過時間毎のユーザ申告件数を含む情報である。
【0037】
なお、図3、図4に示す例は、後述するステップ1において指定される特定の装置機種に関する情報を抽出した後の情報であるが、情報の内容を説明するために、便宜上、ここで説明した。
【0038】
(ステップ1)<装置機種の入力>
まず、評価対象とする装置機種が入力部104から入力される。どの装置機種を評価対象とするかはネットワーク運用管理者により決定される。
【0039】
入力された装置機種は、入力情報記憶部105に記憶される。そして、ネットワーク故障評価システム100は、入力情報記憶部105に記憶された装置機種を読み出して、当該装置機種に対応するネットワーク故障情報及びユーザ申告情報をネットワーク故障情報DB102及びユーザ申告情報DB103から抽出し、抽出した情報を処理対象情報記憶部106に格納する。本実施の形態で、処理対象情報記憶部106に格納される情報の例は、図3、図4に示したとおりである。
【0040】
(ステップ2)<閾値の入力>
次に、ユーザ申告件数の正規化累積率の増加率の閾値Lが入力部104から入力される。なお、ステップ1とステップ2を行う順番は任意であり、どちらが先でもよい。
【0041】
ここで、ユーザ申告件数の正規化累積率の最大値は1となるため、経過時間に対するユーザ申告件数の増加率の最大値は1となる。したがって、ステップ2で入力する閾値は、0≦L≦1の範囲の値であり、ネットワーク運用管理者により決定される値である。入力された閾値は、入力情報記憶部105に格納される。
【0042】
(ステップ3)<ユーザ申告件数の正規化累積率の算出>
次に、ユーザ申告件数累積率算出部107が、ユーザ申告件数の正規化累積率の算出を行う。ここではまずユーザ申告件数累積率算出部107が、図3に示すような、指定された装置機種(本例では装置A)に関するネットワーク故障情報を処理対象情報記憶部106から読み出し、当該ネットワーク故障情報から、故障時間の最大値Tmaxを抽出し、Tmaxを経過時間(故障発生時点からの経過時間)tの最大値とする。例えば、図3で示す例での故障時間の最大値Tmaxは120分である。
【0043】
そして、ユーザ申告件数累積率算出部107は、該当装置機種(本例では装置A)の故障に関する経過時間毎のユーザ申告の累積件数に関するユーザ申告情報(図4に示すもの)を処理対象情報記憶部106から読み出し、該当装置機種の故障に関する故障発生からユーザ申告が発生するまでの時間(経過時間t)と経過時間tにおけるユーザ申告の累積件数Qをもとに、故障が発生してから経過時間Tmaxまでの、経過時間毎のユーザ申告件数の累積率を算出する。この処理は故障事例毎に行われる。経過時間tは、0からTmaxにおいて、累積率を算出する際の時間間隔を示している。ネットワーク故障情報における故障時間は分を最小単位とする場合が多く、ここでは、時間間隔は1分とする。したがって、経過時間tは、"0、1、2、3、・・・、Tmax"となる。
【0044】
以下の式(1)に示すように、ユーザ申告件数の累積率を、ネットワーク故障情報におけるユーザ申告件数の最大値Qmaxで正規化した値として定義する。Qmaxは、図3に示すような、該当するネットワーク故障情報におけるユーザ申告件数の最大値とする。例えば、図3の例において、ユーザ申告件数の最大値は、422である。
【0045】
(ユーザ申告件数の累積率)=Q/Qmax (1)
ユーザ申告件数累積率算出部107は、上記の経過時間に対するユーザ申告件数の累積率を故障事例毎に算出する。故障事例毎の経過時間とユーザ申告件数の累積率との関係(t,Q/Qmax)をグラフ上にプロットしたものを図5に示す。
【0046】
さらに、ユーザ申告件数累積率算出部107は、故障事例毎に算出したユーザ申告件数の累積率の平均値(経過時間毎の故障事例に対する平均値)をユーザ申告件数の正規化累積率Iとして算出し、算出結果をユーザ申告件数累積率記憶部108に格納する。経過時間とユーザ申告件数の正規化累積率Iの関係を図6に示す。
【0047】
(ステップ4)<抽出範囲算出>
次に、抽出範囲算出部109は抽出範囲算出を行う。まず、抽出範囲算出部109は、ユーザ申告件数の正規化累積率Iをユーザ申告件数累積率記憶部108から読み出し、ユーザ申告件数の正規化累積率Iの増減率Eをt毎に算出する。ここでは、これをE=(It+Δt−I)/Δtにより算出する。Δtは時間間隔を示している。ステップ3で示した通り、時間間隔Δtを1分とする。経過時間tとユーザ申告件数の正規化累積率Iの増減率との関係をグラフに示したものを図7に示す。
【0048】
また、抽出範囲算出部109は、経過時間t=0からΔt間隔で順次閾値Lと増減率Eとの差(L−E)を求め、増減率Eが閾値Lの下側にあるか、上側にあるか調べる。図8に示すように、経過時間が小さいうちは増減率Eは閾値Lより小さく、閾値Lと増減率Eの差は正となる。経過時間tを順次増加していくと、増減率Etが閾値Lを上回り、閾値Lと増減率Eの差が負となる経過時間Tが存在する。さらに経過時間tを増加すると増減率Eが再びLを下回る経過時間Tが現れる。したがって、経過時間TからTの間が、増減率Eの閾値Lを上回る時間の範囲となる。このように、経過時間tをTmaxまで順次増加させ、増減率Eが閾値Lを上回る時間の範囲を算出する。算出結果は、抽出範囲記憶部110に格納される。
【0049】
なお、ステップ4において増減率Eが閾値Lを上回る時間の範囲が存在しなかった場合、ステップ2において、より小さい閾値を入力し、ステップ4の抽出範囲算出を再度行う。
【0050】
(ステップ5)<故障事例の抽出と出力>
続いて、故障事例抽出部111が、抽出範囲記憶部110に格納された抽出範囲を読み出して、抽出範囲に含まれる故障時間に対応する故障事例を抽出し、抽出した故障事例の故障した装置機種や機能に関する情報、故障発生から復旧までの故障時間、各故障におけるユーザ申告件数に関するネットワーク故障情報を表示する。具体的には、例えば、抽出範囲が40分〜90分となった場合において、図3に示す装置Aに関しては、故障時間が120分、93分、13分以外の故障事例の情報が表示される。
【0051】
(実施の形態の効果)
本実施の形態におけるネットワーク故障評価システム100により抽出され、表示された故障事例は、ユーザ申告件数の増加が著しい可能性が高い。従って、例えば、表示された故障事例と同じ装置機種に関して、当該故障事例と同じ故障原因や故障箇所、発生日時等に対応する故障については、故障時間を軽減することにより、ユーザ申告件数の軽減効果が大きく現われると考えられる。
【0052】
すなわち、本実施の形態の技術により、ユーザ申告件数の軽減効果が大きく現われる故障事例を抽出することができ、各種故障事例に対してユーザへの影響の軽減に最も効果の高い施策を選定することができる。
【0053】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0054】
100 ネットワーク故障評価システム
101 受信部
102 ネットワーク故障情報DB
103 ユーザ申告情報DB
104 入力部
105 入力情報記憶部
106 処理対象情報記憶部
107 ユーザ申告件数累積率算出部
108 ユーザ申告件数累積率記憶部
109 抽出範囲算出部
110 抽出範囲記憶部
111 故障事例抽出部
112 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象とする装置機種に関するネットワーク故障情報を格納する故障情報格納手段と、
前記ネットワーク故障情報の各故障事例における、故障発生からの経過時間毎のユーザ申告件数の累積値を格納するユーザ申告情報格納手段と、
前記ネットワーク故障情報と前記経過時間毎のユーザ申告件数の累積値をもとに、故障発生後の経過時間に対するユーザ申告件数の正規化累積率を算出するユーザ申告件数累積率算出手段と、
前記ユーザ申告件数の正規化累積率に基づき、ユーザ申告件数の増加率が所定の閾値を超えている時間の範囲を抽出する抽出範囲算出手段と、
故障時間が前記時間の範囲に含まれる故障事例を前記ネットワーク故障情報から抽出し、抽出した故障事例の情報を表示手段に表示する故障事例抽出手段と、
を備えることを特徴とするネットワーク故障評価システム。
【請求項2】
前記ユーザ申告件数累積率算出手段は、
前記ユーザ申告件数の累積値を前記ネットワーク故障情報におけるユーザ申告件数の統計値を用いて正規化することにより、前記ユーザ申告件数の累積率を算出し、
故障事例毎に算出された前記ユーザ申告件数の累積率の代表値を前記ユーザ申告件数の正規化累積率として算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のネットワーク故障評価システム。
【請求項3】
前記抽出範囲算出手段は、所定の単位時間間隔で、当該単位時間での前記ユーザ申告件数の正規化累積率の増加量を当該単位時間で割ることにより前記ユーザ申告件数の増加率を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のネットワーク故障評価システム。
【請求項4】
評価対象とする装置機種に関するネットワーク故障情報を格納する故障情報格納手段と、前記ネットワーク故障情報の各故障事例における、故障発生からの経過時間毎のユーザ申告件数の累積値を格納するユーザ申告情報格納手段とを備えるネットワーク故障評価システムが実行するネットワーク故障評価方法であって、
前記ネットワーク故障情報と前記経過時間毎のユーザ申告件数の累積値をもとに、故障発生後の経過時間に対するユーザ申告件数の正規化累積率を算出するユーザ申告件数累積率算出ステップと、
前記ユーザ申告件数の正規化累積率に基づき、ユーザ申告件数の増加率が所定の閾値を超えている時間の範囲を抽出する抽出範囲算出ステップと、
故障時間が前記時間の範囲に含まれる故障事例を前記ネットワーク故障情報から抽出し、抽出した故障事例の情報を表示手段に表示する故障事例抽出ステップと、
を備えることを特徴とするネットワーク故障評価方法。
【請求項5】
前記ユーザ申告件数累積率算出ステップにおいて、前記ネットワーク故障評価システムは、
前記ユーザ申告件数の累積値を、前記ネットワーク故障情報におけるユーザ申告件数の統計値を用いて正規化することにより、前記ユーザ申告件数の累積率を算出し、
故障事例毎に算出された前記ユーザ申告件数の累積率の代表値を前記ユーザ申告件数の正規化累積率として算出する
ことを特徴とする請求項4に記載のネットワーク故障評価方法。
【請求項6】
前記抽出範囲算出ステップにおいて、前記ネットワーク故障評価システムは、
所定の単位時間間隔で、当該単位時間での前記ユーザ申告件数の正規化累積率の増加量を当該単位時間で割ることにより前記ユーザ申告件数の増加率を算出することを特徴とする請求項4又は5に記載のネットワーク故障評価方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載のネットワーク故障評価システムにおける各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−44373(P2012−44373A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182624(P2010−182624)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】