説明

ネットワーク構成装置、処理方法およびプログラム

【課題】通信ネットワークに適したグラフを構成するネットワーク構成装置、処理方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】ネットワーク構成装置は、通信ネットワークがV個のノードとE本のリンクとで構成されるグラフGにおいて、平方剰余(p|q)=1を満たす互いに異なる素数pおよび素数qについて、ノード数がq+1であり、ノード次数がp+1であるラマヌジャングラフを構成し、そのラマヌジャングラフから、単数または複数のノードを除去した場合にラマヌジャングラフが非連結にはならず、ノードが故障した前後で、ノード次数が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、グラフGの第2最小ラプラシアン固有値が、所定の関係式を満たす範囲内で可能な限り大きいグラフGを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク構成装置、処理方法およびプログラムに関し、特には、グラフ理論を用いて通信ネットワークおよびシステムを構成するネットワーク構成装置、処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークを含むシステムおよびネットワーク(以下、「NW」と記す。)のグラフ構造(以下、単に、「グラフ」とも言う)を構成するノードの通信端末は故障することがある。この場合、ノードの故障後に構成されるNWのグラフ構造では、元のNWのグラフ構造が有していた「通信NWに適した3つの特性」が維持されることが、通信NWの堅牢性を保つ上で重要である。
【0003】
通信NWに適した3つの特性とは、1)任意の2ノード間の通信時間が短いこと、2)任意の2ノード間に複数の経路があること、3)スケーラビリティーが高いこと、を意味する。これら3つの条件は、「通信NWに適した特性」の十分条件ではないが、必要条件のうち特に重要な条件である。
【0004】
上記の3つの条件について、それぞれに対応するグラフ上の条件(以下、「グラフ条件」と称する)が存在する(例えば、非特許文献1〜3参照)。
【0005】
1)のグラフ条件は、非特許文献1に示されているとおり、グラフ上でのランダムウォークにおけるfirst passage timeが短いグラフであること、および、非特許文献2に示されているとおり、グラフ直径が小さいこと、である。なお、first passage timeは、グラフの第2最小ラプラシアン固有値が大きいほど、短くなることが知られている(非特許文献1および3参照)。
【0006】
2)のグラフ条件は、グラフが連結であり、かつ、非特許文献2に示されているとおり、拡大定数が大きいこと、である。
【0007】
3)のグラフ条件は、グラフ構造を構成するリンクの数が、ノード数(NWサイズ)の増加に伴い、線形に増加する、または、線形に増加する数以下で増加すること、である。なお、完全グラフは、1)および2)のグラフ条件を満たしているが、ノード数の増加に伴いリンク数が概ねノード数の2乗に比例して増加するため、3)のグラフ条件を満たしていない。
【0008】
非特許文献2では、「通信NWに適した3つの特性」を満たすグラフが、ラマヌジャングラフであることも記載されている。しかしながら、非特許文献2には、ノードが故障したときに再帰的にラマヌジャングラフを構成可能であるラマヌジャングラフの構造および条件については記載されていない。
【0009】
また、非特許文献1および非特許文献4〜6には、Entangled NWが、記載されている。これは、第2最小ラプラシアン固有値λ2と、最大ラプラシアン固有値λNとの比(λN/λ2)を最小化するようなグラフである。このグラフは、1)のグラフ条件しか満たしていない。
【0010】
なお、非特許文献7〜9では、Bimodal NWが、記載されており、このグラフでは、ノードまたはリンクを、ランダムまたは選択的に除去した場合でも、元のグラフの連結性が維持されることが定量的に示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Luca Donetti, Franco Neri and Miguel A Munoz.“Optimal network topologies:expanders, cages, Ramanujan graphs, entangled networks and all that,” Journal of Statistical Mechanics: Theory and Experiment,Volume 2006, August 2006.
【非特許文献2】平松豊一・知念宏司 共著.“有限数学入門 有限上半平面とラマヌジャングラフ”牧野出版(2003年8月初版),ISBN4−434−03407−3 C3041.
【非特許文献3】P Zumstein. “Comparison of Spectral Methods Through the Adjacency Matrix and the Laplacian of a Graph,” submitted 28. February 2005 at ETH Zurich, 2005.
【非特許文献4】L. Donetti, P.I. Hurtado, and M.A. Munoz. “Entangled Networks, Synchronization, and Optimal Network Topology,” Phys. Rev. Lett. 95, 188701, 2005.
【非特許文献5】L. Donetti, P.I. Hurtado, and M.A. Munoz. “Entangled networks, super−homogeneity and optimal network topology,” Arxiv preprint cond−mat/0502230, 2005.
【非特許文献6】L. Donetti, P.I. Hurtado, and M.A. Munoz. “Network synchronization: optimal and pessimal scale−free topologies,” Journal of Physics A: Mathematical and Theoretical, Vol. 41, No. 22, 2008.
【非特許文献7】G. Paul, T. Tanizawa, S. Havlin, and H. E. Stanley. “Optimization of Robustness of Complex Networks,” [Proc. 2003 International Conference on Growing Networks and Graphs], Euro. Phys. J. B 38 ,pp―187−191, 2004.
【非特許文献8】T Tanizawa, G Paul and R Cohen et al. “Optimization of network robustness to waves of targeted and random attacks,” Phys. Rev. E. Vol.71,No. 4,2005.
【非特許文献9】T. Tanizawa,G.Paul,S.Havlin,and H. E.Stanley. “Optimization of the robustness of multimodal networks,”Phys.Rev.E,Vol.74,No.1,2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ノードの故障後に構成される通信NWのグラフでは、元のグラフが有していた「通信NWに適した3つの特性」を維持することが、通信NWの堅牢性を保つ上で重要である。
【0013】
しかしながら、非特許文献1〜9では、上記のグラフの構成を実現するための具体的な記載がなく、通信NWに適した3つの特性をノードの故障後にも維持できるグラフの構成手法が明らかにされていなかった。
【0014】
本発明の目的は、上記した課題を解決するネットワーク構成装置、処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のネットワーク構成装置は、通信ネットワークをV個のノードとE本のリンクとで構成するグラフGを作成するネットワーク構成装置であって、前記グラフGでは、平方剰余(p|q)=1を満たす互いに異なる素数pおよび素数qについて、ノード数がq+1であり、ノード次数がp+1である連結なラマヌジャングラフから、単数または複数の前記ノードを除去した場合に前記ラマヌジャングラフが非連結にはならず、前記ノードが故障した前後で、前記ノード次数が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、前記グラフGの第2最小ラプラシアン固有値が、以下の関係式を満たす範囲内で可能な限り大きい。
【0016】
【数1】

【0017】
ここで、kは、前記ノード次数であり、λN(L(G))は、上記を満たす前記グラフGの最大ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G))は、上記を満たす前記グラフGの第2最小ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G(V−1,E−k/2)))は、上記を満たす前記グラフGから、1個の前記ノードと、該ノードに接続されていた前記リンクのうちの(k/2)本のリンクとが除去されたグラフの第2最小ラプラシアン固有値である。
【0018】
また、本発明の処理方法は、ネットワーク構成装置が行う処理方法であって、通信ネットワークがV個のノードとE本のリンクとで構成されるグラフGにおいて、平方剰余(p|q)=1を満たす互いに異なる素数pおよび素数qについて、ノード数がq+1であり、ノード次数がp+1である連結なラマヌジャングラフを構成する第1構成ステップと、前記ラマヌジャングラフから、単数または複数の前記ノードを除去した場合に前記ラマヌジャングラフが非連結にはならず、前記ノードが故障した前後で、前記ノード次数が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、前記グラフGの第2最小ラプラシアン固有値が以下の関係式を満たす範囲内で可能な限り大きい前記グラフGを構成する第2構成ステップと、を含む処理方法。
【0019】
【数2】

【0020】
ここで、kは、前記ノード次数であり、λN(L(G))は、上記を満たす前記グラフGの最大ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G))は、上記を満たす前記グラフGの第2最小ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G(V−1,E−k/2)))は、上記を満たす前記グラフGから、1個の前記ノードと、該ノードに接続されていた前記リンクのうちの(k/2)本のリンクとが除去されたグラフの第2最小ラプラシアン固有値である。
【0021】
また、本発明のプログラムは、コンピュータに、通信ネットワークがV個のノードとE本のリンクとで構成されるグラフGにおいて、平方剰余(p|q)=1を満たす互いに異なる素数pおよび素数qについて、ノード数がq+1であり、ノード次数がp+1である連結なラマヌジャングラフを構成する第1構成手順と、前記ラマヌジャングラフから、単数または複数の前記ノードを除去した場合に前記ラマヌジャングラフが非連結にはならず、前記ノードが故障した前後で、前記ノード次数が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、前記グラフGの第2最小ラプラシアン固有値が以下の関係式を満たす範囲内で可能な限り大きい前記グラフGを構成する第2構成手順と、を実行させる。
【0022】
【数3】

【0023】
ここで、kは、前記ノード次数であり、λN(L(G))は、上記を満たす前記グラフGの最大ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G))は、上記を満たす前記グラフGの第2最小ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G(V−1,E−k/2)))は、上記を満たす前記グラフGから、1個の前記ノードと、該ノードに接続されていた前記リンクのうちの(k/2)本のリンクとが除去されたグラフの第2最小ラプラシアン固有値である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、通信ネットワークに適したグラフを構成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態におけるネットワーク構成装置を示すブロック図である。
【図2】ネットワーク構成装置が構成したネットワークを示す図である。
【図3】ネットワーク構成装置の処理方法を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態のネットワーク構成装置が構成したネットワークを示す図である。
【図5】ネットワーク構成装置の処理方法を示すフローチャートである。
【図6】ネットワーク内のノードに故障したときのネットワークを示す図である。
【図7】ノードが故障したときに行われる通信経路の再構築の一例を示す図である。
【図8】ネットワークの再構築方法を示すフローチャートである。
【図9】高速通信が可能なプロトコルを用いて通信を行うノードの動作を説明するための図である。
【図10】第3実施形態の通信ネットワークを示す図である。
【図11a】固有値計算用のサーバの動作を説明するためのフローチャートである。
【図11b】図11aに示したステップAの処理を示すフローチャートである。
【図11c】図11bに示したステップBの処理を示すフローチャートである。
【図12】固有値計算用のサーバの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1実施形態におけるネットワーク構成装置を示すブロック図である。
【0028】
ネットワーク構成装置10は、通信ネットワークを含む通信システム、または、通信ネットワークを、V個のノードとE本のリンクとで構築されるグラフGを用いて構成する。ネットワーク構成装置10は、通信ネットワークに適した3つの特性に関するグラフ条件を満たすグラフGを構成する。
【0029】
ここで、ネットワーク構成装置10で構成されるグラフGについて説明する。
【0030】
一般のグラフの最小ラプラシアン固有値には、明確な下限の値が存在しない。一方、k−正則グラフの1つであるラマヌジャングラフの第2最小ラプラシアン固有値には下限がある(非特許文献1参照)。したがって、ノードの次数がkであるk−正則グラフには、明確な下限を持つ固有値が存在するため、その下限の値以上の固有値が存在することが保証されている。
【0031】
また、k−正則グラフでは、グラフ内の任意の2ノード間のマルコフ連鎖に従うランダムウォークのfirst passage time(非特許文献1参照)が最小となるグラフを構成することが可能である。
【0032】
非特許文献1に記載されたfirst passage timeを示す式は、非特許文献3に記載されている、規格化ラプラシアン固有値とラプラシアン固有値との関係を示した定理2.20を用いて、下式のとおり、書き直される。
【0033】
【数1】

【0034】
ここで、Mは、ネットワーク内のリンクの総数であり、0<λv(L)≦2は、ネットワークのラプラシアン行列の小さい方からv番目(vは2以上の自然数)の固有値であり、u_(l,s)は、ネットワークの規格化ラプラシアン行列の小さい方からl番目の固有値(lは2以上の自然数)に対する大きさが1の固有ベクトルの上からt行目の値である。
【0035】
また、k−正則グラフの1つであるラマヌジャングラフは、拡大定数を最大化するためにグラフの自明でない固有値の絶対値を最大化し、グラフ直径を最大化する。
【0036】
また、k−正則グラフのうち、完全グラフを除いたグラフは、一般に、ノード数が増加するにつれてリンク数が線形に増加する。
【0037】
したがって、本実施形態では、「通信NWに適した3つの特性」のグラフ条件を満たすグラフGとして、「ラマヌジャングラフ」が用いられる。
【0038】
このため、ネットワーク構成装置10は、平方剰余(p|q)=1を満たす互いに異なる素数pおよび素数qについて、ノード数がq+1であり、ノード次数がp+1である連結なラマヌジャングラフG1を構成する。このラマヌジャングラフG1のノード次数は、4以上の偶数であり、かつ、ノードの除去前後で不変である。
【0039】
ネットワーク構成装置10は、そのラマヌジャングラフG1の第2最小ラプラシアン固有値が、式(2)の不等式および等式を満たす範囲内で可能な限り大きいグラフGを構成する。
【0040】
【数2】

【0041】
ここで、kは、ノード次数であり、λN(L(G))は、上記を満たすグラフGの最大ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G))は、上記を満たすグラフGの第2最小ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G(V−1,E−k/2)))は、上記を満たすグラフGから、1個のノードと、そのノードに接続されていた前記リンクのうちの(k/2)本のリンクと、が除去されたグラフの第2最小ラプラシアン固有値である。1個のノードと共に、そのノードに接続されていたリンクのうちのk/2本のリンクを除去するのは、グラフGのノード次数が、ノードの除去後でも変わらないようにするためである。
【0042】
図2は、ネットワーク構成装置10が構成するネットワークの一例を示す図である。
【0043】
ネットワークNW1には、通信ネットワークを含むシステム、または、通信ネットワークが、複数のノードNと複数のリンクLとで構成されたグラフGの構造が示されている。ネットワークNW1は、ネットワークNW1−aと、ネットワークNW1−bと、ネットワークNW1−cと、ネットワークNW1−dとで構成されている。
【0044】
本実施形態では、ネットワーク構成装置10は、ネットワークNW1の設計段階に用いられる。ネットワーク構成装置10は、通信部11と、グラフ構成部12と、グラフ決定部13と、を備える。
【0045】
通信部11は、ネットワークNW1内で許容可能なノードの最大ノード数N1と、許容可能なリンクの最大リンク数E1とを受け付ける。例えば、通信部11は、ネットワーク管理者により入力された、最大ノード数N1と最大リンク数E1とを設計情報として、外部の通信装置から受信する。通信部11は、その最大ノード数N1と最大リンク数E1とをグラフ構成部12に供給する。
【0046】
グラフ構成部12は、最大ノード数N1と最大リンク数E1とを受け付けると、最大ノード数N1および最大リンク数E1を満たし、かつ、「通信ネットワークに適した3つの特性」に関するグラフ条件を実現可能な、ネットワークNW1−aの仮のグラフG1を作成(構築)する。例えば、グラフ構成部12は、ネットワークNW1−aの仮のグラフG1を複数作成する。
【0047】
グラフ構成部12は、ネットワークNW1−aのグラフが、ラマヌジャングラフG1となるように、素数p1および素数q1を用いて、式(3)を満たすノード数|V1|と、式(4)を満たすノード次数k1とを設定する。素数p1および素数q1は、平方剰余(p1|q1)=1を満たす互いに異なる素数である。
【0048】
|V1|= q1 + 1 ≦ N1 ・・・式(3)
1 = p1 + 1 ≦ E1 ・・・式(4)
すなわち、グラフ構成部12は、最大ノード数N1と最大リンク数E1とを受け付けると、式(3)を満たすノード数|V1|と、式(4)を満たすノード次数k1とで構成される、ラマヌジャングラフG1(V1,E1)を、物理的ネットワークまたは論理ネットワークとして構成する。ここで、V1は、ラマヌジャングラフG1内の全てのノードを表すノード集合であり、E1は、ラマヌジャングラフG1内の全てのリンクを表すリンク集合である。
【0049】
グラフ決定部13は、グラフ構成部12で構成されたラマヌジャングラフG1と、そのラマヌジャングラフG1から、1個のノード、および、そのノードに接続されていたリンクのうちの(k1/2)本のリンクを除去したラマヌジャングラフG1−v1と、のそれぞれの第2最小ラプラシアン固有値が不変であるラマヌジャングラフGを取る。このラマヌジャングラフGは、ノードの除去の前後で、ノード次数k1が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、式(2)が成り立つことになる。
【0050】
グラフ決定部13は、行列計算部131と、固有値計算部132と、判定部133と、固有値選択部134と、を備える。
【0051】
行列計算部131は、グラフ構成部12にて構成されたラマヌジャングラフG1のラプラシアン行列を計算する。行列計算部131は、ラマヌジャングラフG1のラプラシアン行列を固有値計算部132に供給する。
【0052】
固有値計算部132は、行列計算部131から、ラプラシアン行列を受け付けると、そのラプラシアン行列を用いて第2最小ラプラシアン固有値を計算する。固有値計算部14は、その第2最小ラプラシアン固有値を判定部133に供給する。
【0053】
判定部133は、固有値計算部132から、第2最小ラプラシアン固有値を受け付けると、グラフ構成部12を制御して、ラマヌジャングラフG1から、ノード1個、および、そのノードに接続されているリンクのうちの(k1/2)本のリンクを除去する。具体的には判定部133は、グラフ構成部12で作成されたラマヌジャングラフG1から、1個のノードと、そのノードに接続されているリンクのうち(k1/2)本のリンクを除去する旨を指示する除去指示信号をグラフ構成部12に供給する。行列計算部131は、グラフ構成部12でノードおよびリンクが除去されると、その除去された後のラマヌジャングラフG1−v1のラプラシアン行列を計算する。そして固有値計算部132は、ラマヌジャングラフG1−v1のラプラシアン行列の最小ラプラシアン固有値を計算して判定部133に供給する。
【0054】
判定部133は、除去後のラマヌジャングラフG1−v1と、元のラマヌジャングラフG1と、が式(2)を満たすか否かを判定する。すなわち、判定部133は、除去後のラマヌジャングラフG1−v1の第2最小ラプラシアン固有値が、元のラマヌジャングラフG1の第2最小ラプラシアン固有値と同一であるか否かを判定する。
【0055】
判定部133は、除去後のラマヌジャングラフG1−v1と、元のラマヌジャングラフG1と、が式(2)を満たす場合、すなわち、ノードの除去の前後のそれぞれの第2最小ラプラシアン固有値が同一である場合には、その第2最小ラプラシアン固有値を、固有値選択部134に供給する。
【0056】
例えば、判定部133は、ラマヌジャングラフG1内のノードを1個から所定の個数まで1個ずつ除去する。そして判定部133は、ラマヌジャングラフG1内のノードを1個ずつ除去するたびに、その除去後のラマヌジャングラフG1−v1と、元のラマヌジャンクグラフG1と、が式(2)を満たすか否かを判定する。判定部133は、ラマヌジャングラフG1内のノードを1個から所定の個数まで1個ずつ除去した後、全ての判定で式(2)を満たした場合には、第2最小ラプラシアン固有値を固有値選択部134に供給する。
【0057】
固有値選択部134は、判定部133から、式(2)を満たす範囲内での第2最小ラプラシアン固有値を受け付けると、第2最小ラプラシアン固有値の中から、最大の第2最小ラプラシアン固有値を選択する。または、固有値選択部16は、第2最小ラプラシアン固有値の中から、可能な限り大きな値の第2最小ラプラシアン固有値を選択する。
【0058】
また、固有値選択部134は、例えば、判定部133から第2最小ラプラシアン固有値を受け付け、その第2最小ラプラシアン固有値が、所定の固有値閾値よりも小さい場合には、グラフ構成部12に新たなグラフの構築を指示してもよい。
【0059】
固有値選択部134は、その選択した第2最小ラプラシアン固有値を用いて、ネットワークNW1-aのグラフG内のノード数と、リンク数と、ノードとリンクとの接続関係と、を含むグラフ構成情報を、通信部11に供給する。通信部11は、固有値選択部134からグラフ構成情報を受け付けると、そのグラフ構成情報を外部の装置に送信する。
【0060】
図3は、ネットワーク構成装置10の処理方法を示すフローチャートである。
【0061】
まず、通信部11は、例えばネットワーク管理者により入力された設計情報として、最大ノード数N1と最大リンク数E1とを受け付ける(ステップS1−1)。通信部11は、その最大ノード数N1と最大リンク数E1とをグラフ構成部12に供給する。
【0062】
グラフ構成部12は、最大ノード数N1と最大リンク数E1とを受け付けると、最大ノード数N1および最大リンク数E1を満たし、かつ、通信ネットワークに適した3つの特性に関するグラフ条件を実現可能な、ネットワークNW1−aのグラフを構築する(ステップS1−2)。
【0063】
グラフ構成部12は、ネットワークNW1−aのグラフが、式3を満たすノード数|V1|であり、かつ、式4を満たすノード次数k1であるラマヌジャングラフG1(V1,E1)を構成する(ステップS1−3)。
【0064】
グラフ決定部13は、グラフ構成部12で構成されたラマヌジャングラフG1と、そのラマヌジャングラフG1から、1個のノード、および、そのノードに接続されていたリンクのうちの(k1/2)本のリンクを除去する(ステップS1−4)。
【0065】
グラフ決定部13は、その1個のノードおよび(k1/2)本のリンクが除去されたラマヌジャングラフG1−v1と元のラマヌジャングラフG1で、ノード次数k1が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、式(2)が成り立つことを確認する(ステップS1−5)。そしてノード次数k1が4以上の偶数ではない場合、または、式(2)が成り立たない場合にはグラフ決定部13は、ステップS1−2に戻る。
【0066】
一方、グラフ決定部13は、ノード次数k1が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、式(2)が成り立つ場合にはラマヌジャングラフG1から除去されたノードの数が所定数未満であるか否かを判断する(ステップS1−6)。そしてグラフ決定部13は、除去されたノードの数が所定数未満である場合には、ステップS1−4に戻り、除去されたノードの数が所定数となるまで繰り返しステップS1−4および1−5の処理を行う。
【0067】
グラフ決定部13は、ラマヌジャングラフG1の式(2)を満たす範囲内で可能な限り大きな値の第2最小ラプラシア固有値を選択して(ステップS1−7)、ネットワーク構成装置10の処理方法を終了する。
【0068】
なお、ネットワークNW1−aだけでは、最大ノード数N1および最大リンク数E1の条件を満たさない場合には、ネットワーク構成装置10は、図3で示した処理方法でネットワークNW1−b乃至NW1−cを構成し、これらを連結してもよい。
【0069】
本実施形態によれば、ネットワーク構成装置10は、通信ネットワークをV個のノードとE本のリンクとで構築されるグラフGを構成する。ネットワーク構成装置10は、平方剰余(p|q)=1を満たす互いに異なる素数pおよび素数qについて、ノード数がq+1であり、かつ、ノード次数がp+1である連結なラマヌジャングラフG1を構成し、ラマヌジャングラフG1から、単数または複数のノードを除去した場合にラマヌジャングラフG1−v1が非連結にはならず、ノードが故障した前後で、ノード次数が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、グラフGの第2最小ラプラシアン固有値が、式(2)の関係式を満たす範囲内で可能な限り大きいグラフGを構成する。
【0070】
このため、ネットワーク構成装置10は、通信ネットワークに適した3つの特性に関する1)から3)のグラフ条件を満たすグラフGを作成することが可能となる。グラフGは、連結なラマヌジャングラフに含まれてもよく、連結な2部グラフでないラマヌジャングラフに含まれてもよい。
【0071】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、既存のネットワークが存在する状況で、そのネットワーク上にネットワーク構成装置がグラフGを構成する。なお、第2実施形態のネットワーク構成装置は、図1に示した構成と同様のものである。
【0072】
図4は、第2実施形態のネットワーク構成装置10が構成したネットワークを示す図である。
【0073】
既存のネットワークNW2には、図2と同様、通信ネットワークを含むシステム、または、通信ネットワークが、複数のノードNと複数のリンクLとで構成されたグラフGの構造が示されている。ネットワークNW2は、ネットワークNW2−aと、ネットワークNW2−bと、ネットワークNW2−cと、ネットワークNW2−dと、で構成される。
【0074】
図5は、第2実施形態の処理方法を示すフローチャートである。
【0075】
まず、通信部11は、設計情報として、ネットワークNW2を指定する旨の指定情報と、NW2−a内の最大ノード数N2と、最大リンク数E2と、を受け付ける(ステップS2−1)。通信部11は、その最大ノード数N1と最大リンク数E1とをグラフ構成部12に供給する。
【0076】
グラフ構成部12は、最大ノード数N1と最大リンク数E1とを受け付けると、最大ノード数N1および最大リンク数E1を満たし、かつ、通信ネットワークに適した3つの特性に関するグラフ条件を実現可能な、ネットワークNW2−aのグラフを構築する(ステップS2−2)。
【0077】
グラフ構成部12は、ネットワークNW2−aのグラフが、式(5)を満たすノード数|V2|であり、式(6)を満たすノード次数k2である連結なラマヌジャングラフG1(V2,E2)を構成する(ステップS2−3)。
【0078】
|V2|= q2 + 1 ≦ N2 ・・・式(5)
2 = p2 + 1 ≦ E2 ・・・式(6)
なお、q2およびp2は、平方剰余(p2|q2)=1を満たす互いに異なる素数である。
【0079】
グラフ決定部13は、グラフ構成部12で構成されたラマヌジャングラフG2と、そのラマヌジャングラフG1から、1個のノード、および、そのノードに接続されていたリンクのうちの(k2/2)本のリンクを除去する(ステップS2−4)。
【0080】
グラフ決定部13は、1個のノードおよび(k2/2)本のリンクが除去されたラマヌジャングラフG2−v2と元のラマヌジャングラフG2とで、ノード次数k2が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、式(2)が成り立つことを確認する(ステップS2−5)。そしてノード次数k2が4以上の偶数ではない場合、または、式(2)が成り立たない場合にはグラフ決定部13は、ステップS2−2に戻る。
【0081】
一方、グラフ決定部13は、ノード次数k2が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、式(2)が成り立つ場合にはラマヌジャングラフG2から除去されたノードの数が所定数未満であるか否かを確認する(ステップS2−6)。そしてグラフ決定部13は、除去されたノードの数が所定数未満である場合には、ステップS2−4に戻り、除去されたノードの数が所定数となるまで繰り返しステップS2−4およびS2−5の処理を行う。
【0082】
グラフ決定部13は、ラマヌジャングラフG2の式(2)を満たす範囲内で可能な限り大きな値の第2最小ラプラシア固有値を選択して(ステップS2−7)、ネットワーク構成装置10の処理方法を終了する。
【0083】
なお、ネットワークNW2−aのみでは、最大ノード数N2および最大リンク数E2の条件を満足しない場合には、ネットワーク構成装置10は、新たにネットワークNW2−b乃至NW2−dを構成し、これらを連結してもよい。
【0084】
次にネットワークNW1またはNW2が構成されている状態で、ネットワークNW1またはNW2内のノードが故障した場合に、その故障したノード以外のノードを経由する通信経路のうち、最短の通信経路を再構築するための手法について説明する。
【0085】
図6は、ネットワーク構成装置10が構成したネットワークNW3を示す図である。
【0086】
ネットワークNW3は、ネットワークNW3−aと、ネットワークNW3−bと、ネットワークNW3−cと、ネットワークNW3−dと、で構成されている。ここでは、ネットワークNW3−aでノードaが故障した場合を想定している。
【0087】
図7は、ネットワークNW3−aで、ノードaが故障した場合に行われる通信経路の再構築の一例を示す図である。図7には、ネットワークNW3−a(V3,E3)と、ノードaが故障してノードaが除去されたネットワークNW3−a−a(V3−a,E3−k3/2)とが示されている。
【0088】
ネットワークNW3−aは、ノードaと直接接続されていない部分グラフSと、ノードaと直接接続されている部分グラフUとで構成されている。ネットワークNW3−a−a内の部分グラフU’は、ノードaに接続されていたk3本のリンクのうちのk3/2本のリンクの接続先が、ノードaから別のノードに切り替えられた後の部分グラフである。
【0089】
図8は、図7に示したネットワークNW3−aの再構築方法を示すフローチャートである。
【0090】
まず、ネットワークNW−3aでノードaに故障が発生した場合(ステップS3−0)に、ノードaに隣接している全てのノードは、ノードaの故障情報をノードa以外のノードに送信して故障情報をNW3−a内の全てのノードに伝達する(ステップS3−1)。ネットワークNW−3aは、通信ネットワークに適した3つの特性を有しているため、任意の2ノード間の通信時間が短く、任意の2ノード間に複数の経路がある。このため、本実施形態のネットワークNW3−aでは、故障情報が、全てのノードに短い時間で到達されることになる。
【0091】
なお、故障情報には、ノードaの識別情報と、ノードaに故障が発生した時刻と、ノードaの識別情報とが含まれる。故障情報は、一般的な経路制御プロトコルよりも高速通信が可能な通信プロトコルP2を用いてNW3−a内の各経路に分散される。通信プロトコルとしては、例えば、フラッディングアルゴリズムに基づいて経路制御を行うプロトコルが用いられる。
【0092】
NW3−a内の全てのノードに故障情報が伝達されると、ノードaが除去されてリンクの張り替えが行われる。このとき、NW3−aの第2最小ラプラシアン固有値が、元のNW3−a(V3,E3)と同じ値のNW3−a−a(V3−a,E3−k3/2)を再構築することが可能である。短時間で通信経路を変更する場合には、通信経路上のノードのうち、ノードaに接続されていた2ノード間を接続すればよい。
【0093】
図9は、通信プロトコルP2を用いて通信を行う各ノードの動作を説明するためのフローチャートである。
【0094】
まず、通信プロトコルを用いてリンクの張り替えが行われるネットワークNWa−3では、全てのノードを根とする最短スパニング木が構成される(ステップS3−3)。
【0095】
ネットワークNW3−a内の各ノードは、ノードaの故障を検出した場合に、フラッディングアルゴリズムに従って、自身のノードを根とする最短スパニング木上の隣接ノードに、故障情報を伝達する(ステップS3−4)。
【0096】
ネットワークNW3−a内の各ノードは、故障情報を受信する(ステップS3−4−2)と、故障情報が1つの場合には、自身のノードを根とする最短スパニング木上の全ての隣接ノードに伝達する(ステップS3−4−3)。ネットワークNW3−aでは、全てのノードに伝達されるまで故障情報の送信が行われる。
【0097】
ネットワークNW3−a内の各ノードは、複数の故障情報を受信したとき(ステップS3−5)に、複数の故障情報に含まれている識別情報または発生時刻が互いに異なる場合(ステップS3−6)には、複数の故障情報のそれぞれを、自身のノードを根とする最短スパニング木上の隣接ノードに伝達する(ステップS3−6−1)。
【0098】
一方、ネットワークNW3−a内の各ノードは、複数の故障情報を受信したとき(ステップS3−5)に、複数の故障情報が同じ場合(ステップS3−6)には、複数の故障情報の中からいずれか1つを選択し、その故障情報を、自身のノードを根とする最短スパニング木上の隣接ノードに伝達する(ステップS3−6−2)。
【0099】
次に本発明の第3実施形態として、既存の通信ネットワーク内の各ノードが自律的に通信経路を切り替えることで、通信NWに適したネットワークNW1またはNW2を構成する手法について説明する。
【0100】
図10は、第3実施形態のネットワークNW4を示す図である。ネットワークNW4は、
既存の通信ネットワーク内の各ノードが自律的に通信経路を制御する自律機能を有する。
【0101】
ネットワークNW4は、多数のノードNおよび多数のリンクLに加えて、通信ノードCN、および、固有値計算用のサーバCSを備える。ネットワークNW4は、ネットワークNW4−aと、ネットワークNW4−bと、ネットワークNW4−cと、ネットワークNW4−dと、で構成される。
【0102】
図11aは、固有値計算用のサーバCSの動作を説明するためのフローチャートである。
【0103】
ネットワークNW4−aは、ノードに故障が発生した場合に、図8で述べた通信プロトコルP2を用いて故障情報を、ネットワークNW4−a内の各ノードに伝達する機能を有する。ネットワークNW4内のノードに接続されるサーバCSは、自律分散的な手法を用いてノードの接続先が決定される。自律分散的な手法としては、例えば、RFC 2328 − OSPF Version 2に記載のDesignated Router選別方法が挙げられる。
【0104】
サーバCSは、ネットワーク管理者により入力された設定情報として、ノードが故障した時点から、ネットワークNW4の制御を開始するまでの最大期間Tmaxを受け付ける。最大期間Tmaxは、故障情報を伝播させる時間の最大値である。
【0105】
サーバCSは、最大期間Tmaxを受け付けると、その最大期間Tmaxを、2ノード間で通信プロトコルP2を用いて通信するのに必要な所要時間TP2で除算し、最大期間Tmaxを所要時間TP2で除算した値を超えない最大の自然数Nmaxを算出する(ステップS4−2−3)。Nmaxは、通信プロトコルP2を使用して、ノード間の物理リンクを通じて故障情報を伝達できるノードの最大数を示す。
【0106】
サーバCSは、ネットワークNW4内のノードの中から適当な通信ノードN0を選択し、その通信ノードN0から、物理リンクを辿って到達可能なNmax番目のノードまでの全てのノードを集める(ステップS4−2−4)。ここでは、通信ノードN0からNmax番目までの全てのノードの数をn個とする。
【0107】
サーバCSは、その特定されたn個のノードで構成される部分ネットワークを、故障情報を伝播させる仮のネットワーク範囲(以下「NW4−a」と称する。)に決定する(ステップS4−2−5)。
【0108】
サーバCSは、NW4−aの隣接行列A(NW4−a)とラプラシアン行列L(NW4−a)とを生成する(ステップS4−3)。隣接行列Aおよびラプラシアン行列Lは、NW4−aのノードの総数がnであるため、n行n列の行列となる。
【0109】
サーバCSは、隣接行列A(NW4−a)の最大固有値λNと、ラプラシアン行列L(NW4−a)の第2最小ラプラシアン固有値λ2とを求める(ステップS4−4−1)。また、サーバCSは、v=2としたときの式(1)の算出結果である初到達時刻π(NW4−a)と、Nmaxとを比較し、式(7)を満たしている場合にはステップAの処理に進む。式(7)満たしていない場合にはノード数を増加させる(ステップS4−4−4)。
【0110】
π(NW4−a) < Nmax ・・・式(7)
図11bは、図11aで示したステップAの処理を示すフローチャートである。
【0111】
ステップAの処理では、サーバCSは、式(8)を満たすノード数|V4|であり、式(9)を満たすノード次数k4であるような連結なラマヌジャングラフG4を、物理的NWまたは論理的NWとして構成する(ステップS4−5−1)。ここで、V4は、ラマヌジャングラフG4のノード集合であり、E4は、ラマヌジャングラフG4のリンク集合である。
【0112】
|V4|= q4 + 1 ≦ N4 ・・・式(8)
4 = p4 + 1 ≦ E4 ・・・式(9)
なお、素数p4および素数q4は、平方剰余(p4|q4)=1を満たす互いに異なる素数である。
【0113】
サーバCSは、ラマヌジャングラフG4と、そのラマヌジャングラフG4から、1個のノード、および、そのノードに接続されていたリンクのうちの(k4/2)本のリンクを除去する(ステップS4−5−2)。
【0114】
サーバCSは、その1個のノードおよび(k4/2)本のリンクが除去されたラマヌジャングラフG4−v4と元のラマヌジャングラフG4とで、ノード次数k4が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、式(2)が成り立つことを確認する(ステップS4−5−3)。そしてノード次数k2が4以上の偶数ではない場合、または、式(2)が成り立たない場合にはグラフ決定部13は、ステップS4−5−1に戻る。
【0115】
サーバCSは、ノード次数k2が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、式(2)が成り立つ場合には、ラマヌジャングラフG2から除去されたノードの数が所定数未満であるか否かを確認する(ステップS4−6)。そしてサーバCSは、除去されたノードの数が所定数未満である場合には、ステップS4−5−2に戻り、除去されたノードの数が所定数となるまで繰り返しステップS4−5−2およびS4−5−3の処理を行う。
【0116】
サーバCSは、ラマヌジャングラフG4の式(2)を満たす範囲内で可能な限り大きな値の第2最小ラプラシア固有値を選択して(ステップS4−7)、ステップBの処理に進む。
【0117】
図11cは、図11bで示したステップBの処理を示すフローチャートである。
【0118】
ステップBの処理では、サーバCSは、焼きなまし法(Simulated annealing)という最適化アルゴリズムを用いて、ステップS4−5−1、S4−5−2、4−5−3、S4−6およびS4−7の一連の処理を繰り返し実行して、NW4−aのグラフGを構成する(ステップS4−8)。
【0119】
そしてサーバCSは、ステップS4−2−5で決定されたNW4−aに属する全てのノードに対し、通信ノードCNを介して、通信プロトコルP2を用いてNW4−aの構成情報を伝達する(ステップS4−9)。
【0120】
また、ネットワークNW4からNW4−aを除いたネットワークについても、ステップS4−2−3からS4−9までの一連の処理手順を実行してNW4−b乃至4−dを構成し、サーバCSの処理方法が終了する。このため、ネットワークNW4は、NW4−a乃至4−dによって分割された構成となる。
【0121】
図12は、通信ノードCNおよびサーバCSの構成の一例を示すブロック図である。
【0122】
通信ノードCNは、NW4内のノードおよびリンクに関する構成情報を受信し、そのNW4の構成情報のうち、NW4−*(例えば、NW4−a)に関する構成情報をサーバCSに送信する。
【0123】
サーバCSは、通信部21と、ラプラシアン行列計算部22と、固有値λ2計算部23と、隣接行列計算部24と、固有値λN計算部25と、初到達時刻π算出部26と、比較部27と、NW構成部28と、を備える。なお、サーバCSは、一般的にネットワーク構成装置と呼ぶことができる。
【0124】
通信部21は、通信ノードCNから、例えば、NW4−aの構成情報を受信する。通信部21は、そのNW4−aの構成情報を、ラプラシアン行列計算部22と隣接行列計算部24とに供給する。
【0125】
ラプラシアン行列計算部22は、NW4−aの構成情報を用いてラプラシアン行列Lを計算し、そのラプラシアン行列Lを、固有値λ2計算部23に供給する。
【0126】
固有値λ2計算部23は、NW4−aのラプラシアン行列Lを受け付けると、そのラプラシアン行列の第2最小ラプラシアン固有値λ2を算出する。
【0127】
隣接行列計算部24は、通信部21から、NW4−aの構成情報を受け付けると、そのNW4−aの隣接行列を計算し、その隣接行列を固有値λN計算部25に供給する。
【0128】
固有値λN計算部25は、NW4−aの隣接行列を受け付けると、その隣接行列の最大ラプラシアン固有値λNを計算し、その最大ラプラシアン固有値λNを初到達時刻π算出部26に供給する。
【0129】
初到達時刻π算出部26は、NW4−aの最大ラプラシアン固有値λNを受け付けると、式(1)においてv=2としたときの初到達時刻πを算出し、その初到達時刻πを比較部27に供給する。
【0130】
比較部27は、初到達時刻πを受け付けると、初到達時刻πが式(7)を満たしていることを確認する。比較部27は、初到達時刻πが式(7)を満たしている場合には、NW4−aの構成情報をNW構成部28に供給する。
【0131】
NW構成部28は、NW4−aの構成情報にて特定されるグラフを、ラマヌジャングラフG4となるように構成する。具体的にはNW構成部28は、式(8)を満たすノード数|V4|であり、式(4)を満たすノード次数k4あるラマヌジャングラフG4(V4,E4)を、物理的ネットワークまたは論理ネットワークとして構成する。
【0132】
NW構成部28は、ラマヌジャングラフG4と、そのラマヌジャングラフG4から、1個のノード、および、そのノードに接続されていたリンクのうちの(k1/2)本のリンクを除去したラマヌジャングラフG4−v4とで、第2最小ラプラシアン固有値が不変であるラマヌジャングラフGを取る。このラマヌジャングラフGは、ノードの故障の前後で、ノード次数k4が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、式(2)が成り立つことになる。NW構成部28は、NW4−aのラマヌジャングラフGを示すNW構成情報を生成し、そのNW4−aのNW構成情報を通信部21に供給する。
【0133】
通信部21は、NW構成部28からNW4−aのNW構成情報を受け付けると、通信ノードCNを介して、NW4−aのノードに対し、通信プロトコルP2を用いてNW4−aのNW構成情報を伝達する。このため、NW4−aのノードは、NW4−a内の通信経路を自律的に切り替えることが可能となる。
【0134】
第3実施形態によれば、NW4−aのラマヌジャングラフG4は、通信ネットワークの通信経路を自律的に制御する単数または複数のノードで構成される。このため、通信ノードCNおよびサーバCSは、1)から3)のグラフ条件を満足する通信ネットワークNW4−aを構成することが可能となる。
【0135】
以上説明した各実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0136】
10 ネットワーク構成装置
11 通信部
12 グラフ構成部
13 グラフ決定部
131 行列計算部
132 固有値計算部
133 判定部
134 固有値選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークをV個のノードとE本のリンクとで構成するグラフGを作成するネットワーク構成装置であって、
前記グラフGでは、平方剰余(p|q)=1を満たす互いに異なる素数pおよび素数qについて、ノード数がq+1であり、ノード次数がp+1である連結なラマヌジャングラフから、単数または複数の前記ノードを除去した場合に前記ラマヌジャングラフが非連結にはならず、前記ノードが故障した前後で、前記ノード次数が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、前記グラフGの第2最小ラプラシアン固有値が、以下の関係式を満たす範囲内で可能な限り大きい、ネットワーク構成装置。
【数1】

ここで、kは、前記ノード次数であり、λN(L(G))は、上記を満たす前記グラフGの最大ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G))は、上記を満たす前記グラフGの第2最小ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G(V−1,E−k/2)))は、上記を満たす前記グラフGから、1個の前記ノードと、該ノードに接続されていた前記リンクのうちの(k/2)本のリンクとが除去されたグラフの第2最小ラプラシアン固有値である。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワーク構成装置において、
前記グラフGは、連結なラマヌジャングラフに含まれる、ネットワーク構成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のネットワーク構成装置において、
前記グラフGは、連結な2部グラフでないラマヌジャングラフに含まれる、ネットワーク構成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のネットワーク構成装置において、
前記グラフGは、前記通信ネットワークの通信経路を自律的に制御する単数または複数のノードで構成される、ネットワーク構成装置。
【請求項5】
ネットワーク構成装置が行う処理方法であって、
通信ネットワークがV個のノードとE本のリンクとで構成されるグラフGにおいて、平方剰余(p|q)=1を満たす互いに異なる素数pおよび素数qについて、ノード数がq+1であり、ノード次数がp+1である連結なラマヌジャングラフを構成する第1構成ステップと、
前記ラマヌジャングラフから、単数または複数の前記ノードを除去した場合に前記ラマヌジャングラフが非連結にはならず、前記ノードが故障した前後で、前記ノード次数が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、前記グラフGの第2最小ラプラシアン固有値が以下の関係式を満たす範囲内で可能な限り大きい前記グラフGを構成する第2構成ステップと、を含む処理方法。
【数2】

ここで、kは、前記ノード次数であり、λN(L(G))は、上記を満たす前記グラフGの最大ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G))は、上記を満たす前記グラフGの第2最小ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G(V−1,E−k/2)))は、上記を満たす前記グラフGから、1個の前記ノードと、該ノードに接続されていた前記リンクのうちの(k/2)本のリンクとが除去されたグラフの第2最小ラプラシアン固有値である。
【請求項6】
コンピュータに、
通信ネットワークがV個のノードとE本のリンクとで構成されるグラフGにおいて、平方剰余(p|q)=1を満たす互いに異なる素数pおよび素数qについて、ノード数がq+1であり、ノード次数がp+1である連結なラマヌジャングラフを構成する第1構成手順と、
前記ラマヌジャングラフから、単数または複数の前記ノードを除去した場合に前記ラマヌジャングラフが非連結にはならず、前記ノードが故障した前後で、前記ノード次数が4以上の偶数のまま不変であり、かつ、前記グラフGの第2最小ラプラシアン固有値が以下の関係式を満たす範囲内で可能な限り大きい前記グラフGを構成する第2構成手順と、を実行させるためのプログラム。
【数3】

ここで、kは、前記ノード次数であり、λN(L(G))は、上記を満たす前記グラフGの最大ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G))は、上記を満たす前記グラフGの第2最小ラプラシアン固有値であり、λ2(L(G(V−1,E−k/2)))は、上記を満たす前記グラフGから、1個の前記ノードと、該ノードに接続されていた前記リンクのうちの(k/2)本のリンクとが除去されたグラフの第2最小ラプラシアン固有値である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−70300(P2013−70300A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208469(P2011−208469)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】