説明

ネブライザ用吸入補助具

【課題】射出成形による製造が容易で、呼気弁を設けずともスムーズに呼吸が可能でかつエアロゾルの漏出が防止されたネブライザ用吸入補助具を提供する。
【解決手段】中継管150Aは、ネブライザ本体100に接続される接続口を一端に有し、この接続口から第1の方向に向かって延びる第1流路部151と、エアロゾルを噴霧するエアロゾル噴霧口156を一端に有し、第1流路部151の他端からエアロゾル噴霧口156に至るように上記第1の方向と直交する第2の方向に向かって延びる第2流路部152と、外部に連通する開放口157を一端に有し、第1流路部151の途中位置から開放口157に至るように上記第2の方向とは逆向きの第3の方向に向かって延びる第3流路部153とを含む。第1流路部151と第2流路部152とを結ぶコーナー部154には、上記接続口およびエアロゾル噴霧口156に面する傾斜状の流路形成面154Aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネブライザにて生成されたエアロゾルを使用者が吸入するためにネブライザ本体に取付けられて使用されるネブライザ用吸入補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
ネブライザは、気管支等の疾患を治療する薬液や水、食塩水などの液体を霧化してエアロゾルを生成するための装置である。このネブライザによって生成されたエアロゾルは、使用者によって口や鼻から吸引されて体内に取り込まれる。近年、このネブライザの新たな利用方法として、麻疹の予防のためのワクチン等をネブライザを用いてエアロゾル化し、これを使用者の口および鼻を介して体内に投与する試みもなされている。
【0003】
通常、ネブライザには、エアロゾルの吸入を容易とするための吸入補助具が付属される。この吸入補助具の内部には、エアロゾルを搬送するための流路が設けられる。使用に際しては、この吸入補助具がネブライザに取付けられ、この吸入補助具を介して使用者がエアロゾルを吸入することになる。
【0004】
吸入補助具としては、種々の形態のものが存在する。これを大別すると、マウスピース、ノーズピース、マスクおよび中継管に分類される。マウスピースは、使用者がこれを咥えてエアロゾルを口から吸入するためのものであり、ノーズピースは、使用者がこれを鼻孔に差し込んで鼻からエアロゾルを吸入するためのものである。また、マスクは、使用者が口および鼻を覆うようにこれを装着して口および鼻からエアロゾルを吸入するためのものであり、中継管は、必要に応じて上述のマウスピースやノーズピース、マスク等とネブライザのエアロゾル導出部とを中継するものである。これら吸入補助具は、吸入する液体の種類や吸入する使用者の別によって適宜最適なものが選択されて使用される。
【0005】
一般に、吸入補助具には、使用者が吐き出した呼気を外部に排出するための呼気排出口が設けられる。この呼気排出口は、使用者が息が詰まることなくスムーズに呼吸を行ないながらエアロゾルを吸入するためには必須の構成である。しかしながら、吸入補助具に呼気排出口を設けた場合には、この呼気排出口からエアロゾルが漏出する問題が生じ得るため、効率的なエアロゾルの吸入が行なえなくなるおそれがある。そこで、従来の吸入補助具にあっては、上記問題が生じないようにするために、以下に示す従来例1または2に示す如くの構造のいずれかを採用する措置がとられていた。
【0006】
従来例1に係る吸入補助具においては、呼気排出口に呼気弁と呼ばれる逆止弁が設けられている。このような呼気弁が設けられた吸入補助具の具体例としては、たとえば国際公開第93/15783号パンフレット(特許文献1)に開示の吸入補助具がある。この特許文献1に開示される吸入補助具においては、T字型の中継管の一端をネブライザの上面に設けられたエアロゾル導出部に接続する接続口とするとともに、T字管の対面する2つの開口のうちの一方を使用者側に向けてエアロゾルを噴霧するエアロゾル噴霧口とし、他方を呼気が排出される呼気排出口とし、この呼気排出口が設けられた部分に逆止弁である呼気弁を設けた構成としている。このように構成することにより、使用者の呼吸動作に応じて呼気弁が開閉動作することによってスムーズな呼吸が可能になるとともに、呼気排出口からのエアロゾルの漏出が防止されている。
【0007】
一方、従来例2に係る吸入補助具においては、呼気排出口に呼気弁を設けずに呼気排出口を開放口とするとともに、その流路の形状や呼気排出口の設置位置等を工夫することにより、スムーズな呼吸動作の実現とエアロゾルの漏出の防止の両立を図っている。図9は、このように構成された吸入補助具の具体例の一つを示す模式断面図である。図9に示す吸入補助具としてのマウスピース150Eにあっては、ネブライザに接続される接続口155がその一端に設けられた第1流路部151の他端から、斜め上方に向かって第2流路部152が延びるように流路を構成するとともに、第2流路部152の第1流路部151側の端部に呼気排出口である開放口157を設け、第2流路部152の他端にエアロゾル噴霧口156を設けた構成としている。そして、このエアロゾル噴霧口156が設けられた部分の流路壁部分をマウスピース部152bとし、使用者はこのマウスピース部152bを咥えてエアロゾルの吸入を行なう。このように構成することにより、使用者の呼吸動作に伴う流路内の各部における圧力変動と流路の形状との関係からスムーズな呼吸が可能になるとともに、呼気排出口からのエアロゾルの漏出が防止されている。この図9に示す吸入補助具とは具体的な構成において相違するが、同様の観点から設計された吸入補助具が開示された文献として、たとえば実開平4−95046号公報(特許文献2)や特開平5−337183号公報(特許文献3)等がある。
【0008】
なお、ネブライザにおいて霧化する液体として、水または食塩水等の液体以外の特殊な液体を利用する場合には、呼気排出口からこれら特殊な液体のエアロゾルが外部に漏出することを防止するために、フィルタが内蔵されたフィルタ保持具が呼気排出口に取付けられる。これは、エアロゾルの吸入を予定していない介助者等の第三者が、当該エアロゾルを間接的に吸入してしまうことを防止するために設けられる器具であり、気管支等の疾患を治療する薬液や麻疹の予防のためのワクチン等を投与する際には特にその使用が必要となる器具である。
【特許文献1】国際公開第93/15783号パンフレット
【特許文献2】実開平4−95046号公報
【特許文献3】特開平5−337183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ネブライザの使用に際しては、衛生面の観点から、使用の度ごとにネブライザを分解して洗浄することが必要になる。この分解・洗浄作業は、吸入補助具においても同様に必要であり、そのため、吸入補助具の構成は、分解・洗浄作業が容易となるように可能な限り簡素化されていることが好ましい。また、吸入補助具は、樹脂材料を用いた射出成形によって形成されることが一般的であり、その観点からも可能な限りその構成が簡素化されていることが必要である。
【0010】
このような観点から見た場合、上記特許文献1に開示の構成の吸入補助具にあっては、呼気排出口に逆止弁が設けられているため、装置構成が複雑となり、分解・洗浄作業が煩雑になるという問題が生じる。より具体的には、上記特許文献1に開示の構成を採用した場合には、分解・洗浄作業時において呼気弁を吸入補助具から取り外すことが必要になり、作業が非常に煩雑になる。また、繰り返しの分解・洗浄作業により、呼気弁が破損したり紛失したりする問題も生じ得る。
【0011】
一方、従来例2の如くの吸入補助具とした場合には、このような分解・洗浄作業の煩雑さは生じないものの、射出成形を行なう場合に射出成形機の金型のスライド構造が特殊なものとなり、製造コストが増大するという問題が生じる。図10は、図9に示す吸入補助具を射出成形にて形成する場合の金型の構成を示す模式断面図である。図10に示すように、図9に示す吸入補助具を射出成形にて形成するためには、流路部分を形成するための金型ピン251,252の抜き方向がそれぞれ図中矢印D方向およびE方向となり、これら抜き方向の成す角が非直角となる。これに対し、通常の射出成形機においては、金型のスライド方向が相互に90°の角度をもって交差するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の3軸方向に限定されており、このような3軸方向から逸脱する角度の金型のスライド方向を必要とする上記従来例2の如くの吸入補助具の形状を採用した場合には、製造コストが大幅に増大してしまう問題が生じる。
【0012】
なお、上記特許文献2に開示の吸入補助具においては、ネブライザのエアロゾル導出部に接続される接続口が一端に設けられた第1流路部と、使用者に向けてエアロゾルを噴霧するエアロゾル噴霧口が一端に設けられた第2流路部と、使用者の呼気を外部に排出するための開放口が設けられた第3流路部とが、同一方向に延在するように設けられているため、上述の射出成形の際の製造コストの増大の問題は生じないことになる。しかしながら、当該吸入補助具を用いるためには、ネブライザに設けられるエアロゾル導出部がネブライザの側面に設けられている必要がある。また、当該吸入補助具においては、呼気排出口に上述のフィルタ保持具を取付けることができないという問題も存在する。これら問題を解決するためには、吸入補助具の構成自体を大幅に変更する必要があり、結果として射出成形を容易に行なえる程度の簡素な構成を実現できなくなってしまうことになる。
【0013】
したがって、本発明は、上述の問題点を解決すべくなされたものであり、射出成形による製造が容易で製造コストが抑えられ、呼気弁を設けずとも使用者が息が詰まることなくスムーズに呼吸が可能でかつエアロゾルの漏出が防止されたネブライザ用吸入補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に基づくネブライザ用吸入補助具は、ネブライザ本体の内部にて生成されたエアロゾルを使用者が吸入するためにネブライザ本体に着脱自在に取付けられるものであって、その内部に流路が設けられてなるものである。上記流路は、第1流路部、第2流路部および第3流路部を含んでいる。第1流路部は、ネブライザ本体のエアロゾル導出部に接続される接続口を一端に有し、上記接続口から第1の方向に向けて延設されている。第2流路部は、使用者に向けてエアロゾルを噴霧するエアロゾル噴霧口を一端に有し、上記第1流路部の他端から上記エアロゾル噴霧口に至るように上記第1の方向と直交する第2の方向に向けて延設されている。第3流路部は、外部に連通する開放口を一端に有し、上記第1流路部の途中位置から上記開放口に至るように上記第2の方向とは逆向きの第3の方向に向けて延設されている。そして、本発明に基づくネブライザ用吸入補助具にあっては、上記第1流路部と上記第2流路部とを結ぶコーナー部が、上記接続口および上記エアロゾル噴霧口の両方に面する傾斜状または湾曲状の流路形成面を有している。
【0015】
上述のように、第1流路部と第2流路部とを直交配置し、かつ第1流路部の途中位置から第2流路部とは反対側に向けて第3流路部を第2流路部と平行に配置することにより、特殊なスライド機構を有する射出成形機を用いることなくネブライザ用吸入補助具を容易に射出成形にて製造することが可能になる。また、第1流路部と第2流路部とを結ぶコーナー部に、内部を流動する流体(エアロゾルおよび呼気)の流れを整流する傾斜状または湾曲状の流路形成面を設けることにより、呼気弁を設けずともスムーズな呼吸の実現とエアロゾルの漏出の防止との両立を図ることが可能になる。また、第1流路部と第2流路部および第3流路部とが異なる方向に延びているため、ネブライザの側面にエアロゾル導出部を設ける必要がなく、通常どおりエアロゾル導出部をネブライザの上面に設けることが可能となり、さらには、フィルタ保持具等の補助器具を呼気排出口となる上記開放口に取付けることも可能になる。
【発明の効果】
【0016】
したがって、本発明によれば、射出成形による製造が容易で製造コストが抑えられ、呼気弁を設けずとも使用者が息が詰まることなくスムーズに呼吸が可能でかつエアロゾルの漏出が防止されたネブライザ用吸入補助具とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。ネブライザ用吸入補助具としては、上述のように種々の形態のものが存在するが、以下に示す実施の形態においては、ネブライザ用吸入補助具としてネブライザ本体とマスクとを中継する中継管を例示して説明を行なう。また、本実施の異形態における中継管が取付けられるネブライザとしては、コンプレッサ式のネブライザを例示して説明を行なう。
【0018】
まず、図1および図2を参照して、本発明の実施の形態における中継管について詳説する。図1は、本発明の実施の形態における中継管の形状を示す断面図である。また、図2は、図1に示す中継管を射出成形にて形成する場合の金型の構成を示す模式断面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態における中継管150Aは、内部に流路が形成された断面略T字状の管状部材からなる。中継管150Aの内部に形成された流路は、第1流路部151と第2流路部152と第3流路部153とを含んでいる。これら第1流路部151、第2流路部152および第3流路部153を規定する中継管150Aの3つの管状部分は、それぞれ特定の方向に向かって直線状に延びる直行管にて構成されている。
【0020】
第1流路部151は、後述するネブライザ1のネブライザ本体100の上面に設けられたエアロゾル導出部132(図3または図4参照)に接続される接続部151aをその一端に有し、第1の方向(図1中矢印A方向)に向かって延びるように形成されている。この第1の方向は、ネブライザ1の使用時において使用者から見た場合、ネブライザ1の下部側から上部側に向けての方向に合致する。第1流路部151の接続部151aが設けられた側の端部には、非使用状態において第1流路部151と外部とを連通する開口が設けられており、この開口が使用状態においてネブライザ本体100に設けられたエアロゾル導出部132に接続される接続口155となる。
【0021】
第2流路部152は、後述するマスク160の中継管側開口162(図3または図4等参照)に接続される接続部152aをその一端に有し、第1流路部151の他端から上記接続部152aに至るように、上記第1の方向(図1中矢印A方向)と直交する第2の方向(図1中矢印B方向)に向かって延びるように形成されている。この第2の方向は、ネブライザ1の使用時において使用者から見た場合、ネブライザ1の奥側から手前側に向けての方向に合致する。第2流路部152の接続部152aが設けられた側の端部には、非使用状態において第2流路部152と外部とを連通する開口が設けられており、この開口が使用状態において使用者に向けてエアロゾルを噴霧するエアロゾル噴霧口156となる。
【0022】
第3流路部153は、後述するフィルタ保持具170の接続部171a(図3または図4等参照)に接続される接続部153aをその一端に有し、第1流路部151の途中位置から上記接続部153aに至るように、上記第1の方向(図1中矢印A方向)と直交し、上記第2の方向(図1中矢印B方向)とは逆向きの第3の方向(図1中矢印C方向)に向かって延びるように形成されている。この第3の方向は、ネブライザ1の使用時において使用者から見た場合、ネブライザ1の手前側から奥側に向けての方向に合致する。第3流路部153の接続部153aが設けられた側の端部には、非使用状態において第3流路部153と外部とを連通する開口が設けられており、この開口が使用状態においてフィルタ保持具170の内部に設けられた流路を介して外部に連通する呼気排出口としての開放口157となる。
【0023】
また、第1流路部151と第2流路部152とを結ぶコーナー部154を形成する中継管150Aの流路壁のうち、第1流路部151の一端に設けられた接続口155および第2流路部152の一端に設けられたエアロゾル噴霧口156に面する部分の流路壁には、傾斜状の流路形成面154Aが形成されている。この傾斜状の流路形成面154Aは、ネブライザ1の使用状態において中継管150内を流動する流体を整流するための部位であり、より具体的には、第1流路部151からコーナー部154に達したエアロゾルを第2流路部152に向けて整流して導くとともに、第2流路部152からコーナー部154に達した呼気を第3流路部153に向けて整流して導く部位である。
【0024】
なお、本実施の形態における中継管150Aには、呼気弁等の逆止弁は一切設けられていない。すなわち、第1流路部151の先端に設けられた接続口155、第2流路部152の先端に設けられたエアロゾル噴霧口156および第3流路部153の先端に設けられた開放口157のそれぞれは、第1流路部151、第2流路部152および第3流路部153を介して使用状態および非使用状態の如何を問わず常時連通している。
【0025】
上記構成の中継管150Aは、樹脂材料を用いた射出成形によって簡便に形成される。上述のように、第1流路部151、第2流路部152および第3流路部153を規定する中継管150Aの管状部分はいずれも直行管にて構成されており、第1流路部151の延びる方である第1の方向と第2流路部152の延びる方向である第2の方向とは直交しており、第2流路部152の延びる方向である第2の方向と第3流路部153の延びる方向である第3の方向とは逆向きとなっている。したがって、これら第1流路部151、第2流路部152および第3流路部153の延びる方向である上記第1の方向、第2の方向および第3の方向は、相互に90°の角度をもって交差するX軸方向およびY軸方向の2軸方向上に位置していることになる。そのため、図2に示すように、中継管150Aの流路部分を形成するための金型ピン251,252,253の抜き方向は、図2中に示すA′方向、B′方向およびC′方向となり、これら3つの抜き方向も相互に90°の角度をもって交差するX軸方向およびY軸方向の2軸方向上に位置することになる。したがって、これら金型ピン251,252,253の抜き方向が通常の射出成形機における金型のスライド方向である相互に90°の角度をもって交差する方向に合致することになり、特殊な射出成形機を用いることなく安価に中継管150Aを製作することが可能になる。
【0026】
次に、図3ないし図5を参照して、上述の中継管150Aが利用されるネブライザについて詳説する。図3は、本発明の実施の形態における中継管をネブライザ本体に取付けた状態を示す斜視図であり、図4は、図3に示すネブライザの縦断面図である。また、図5は、図3に示すネブライザの使用状態を示す斜視図である。
【0027】
図3および図4に示すように、ネブライザ1は、ケース体110、霧化部形成体120、流路形成体130およびキャップ体140からなるネブライザ本体100と、このネブライザ本体100に接続された中継管150Aと、中継管150Aに接続されたマスク160およびフィルタ保持具170と、ネブライザ本体100に一端が接続されたチューブ180と、チューブ180の他端に接続されたコンプレッサ(不図示)とを主に備えている。
【0028】
ネブライザ本体100は、その内部においてエアロゾルを生成するためのものである。コンプレッサは、圧縮空気を生成する装置であり、可撓性を有するチューブ180を介して圧縮空気をネブライザ本体100に送出する。中継管150Aは、上述した図1に示す構造のものであり、ネブライザ本体100の内部にて生成されたエアロゾルをマスク160に向けて搬送する役割を果たすとともに、呼気がネブライザ本体100の内部に流入することなく排出されるようにする役割を果たす。マスク160は、使用者が口および鼻を覆うようにこれを装着して口および鼻からエアロゾルを吸入するためのものであり、フィルタ保持具170は、中継管150Aから排出される呼気に含まれるエアロゾルを捕集するものである。
【0029】
ケース体110は有底筒状の形状を有しており、このケース体110の内部に霧化部形成体120が収容・配置される。流路形成体130は、ケース体110の上面開口を塞ぐようにケース体110の上部に取付けられる。キャップ体140は、流路形成体130の上面に設けられた開口を覆うように流路形成体130に取付けられる。中継管150Aは、その第1流路部151の先端に設けられた接続部151aが流路形成体130の上部に設けられたエアロゾル導出部132に接続されることにより、ネブライザ本体100に取付けられる。マスク160は、その所定位置に中継管側開口162を有しており、この中継管側開口162に中継管150Aの第2流路部152の先端に設けられた接続部152aが差し込まれることにより、中継管150Aに取付けられる。フィルタ保持具170は、その一端に設けられた接続部171aが中継管150Aの第3流路部153の先端に設けられた接続部153aに接続されることにより、中継管150Aに対して取付けられる。
【0030】
これらケース体110、霧化部形成体120、流路形成体130、キャップ体140、中継管150A、マスク160、フィルタ保持具170およびチューブ180は、互いに分解および組立てが可能であり、ネブライザ1の使用後において洗浄および消毒等が容易に実施できるように構成されている。また、マスク160は、衛生面の観点から使用後において廃棄される、いわゆるディスポーザブルタイプのマスクとしてもよい。
【0031】
図4に示すように、ケース体110の底面には、コンプレッサから送出される圧縮空気をケース体110の内部に導入するための圧縮空気導入管部114が上下方向に延びるように設けられ、この圧縮空気導入管部114の下部先端部に上述のチューブ180が取付けられている。圧縮空気導入管部114の上部先端部は先細形状に形成されており、霧化部形成体120のバッフル122に対面している。また、ケース体110の圧縮空気導入管部114が形成された部分の周囲には、貯留部116が設けられている。この貯留部116は、水や食塩水、気管支等の疾患を治癒させるための薬液、ワクチンといった液体300を一時的に貯留する。
【0032】
圧縮空気導入管部114の上部先端部には、上方から霧化部形成体120の吸液管形成部124が対面配置されている。この吸液管形成部124と圧縮空気導入管部114との間の隙間によって吸液管が構成され、後述する圧縮空気の吹き付けによる負圧の作用によって貯留部116に貯留された液体300が後述する霧化部近傍にまで達することになる。
【0033】
霧化部は、上述した圧縮空気導入管部114の上部先端部とバッフル122との間に形成される。この霧化部においては、コンプレッサによって圧縮空気導入管部114に導入された圧縮空気が圧縮空気導入管部114の上部先端部からバッフル122に向けて噴き付けられる。その際、霧化部にて生じる負圧の作用によって霧化部近傍にまで吸い上げられた液体300が、上述の負圧の作用によって霧化部へと噴き上げられ、圧縮空気とともにバッフル122に向けて噴き付けられる。この作用により、液体300はバッフル122に衝突して微細な液滴となって霧状粒子となり、この霧状粒子がケース体110の内部に導入された外気(上述のコンプレッサによって導入された外気と、使用者の吸気動作に基づいて後述する圧力調整口101から導入された外気とを含む)に付与されることによってエアロゾルが生成される。
【0034】
霧化部形成体120の上方には、流路形成体130およびキャップ体140が位置決めして配置されている。この流路形成体130により、ケース体110の内部の空間が仕切られ、気流が流動する流路が形成されている。より具体的には、流路形成体130の下部に設けられた吸気管部134によってケース体110の内部の空間が中央部分と周縁部分とに区切られ、このうちの中央部分によって導入路102が、周縁部分によってエアロゾル搬送路103がそれぞれ構成されている。キャップ体140は、流路形成体130の上面に設けられた開口133に嵌め込まれ、これら流路形成体130とキャップ体140との間に設けた隙間により、ネブライザ本体100の内部の空間と外部とを連通する圧力調整口101が形成されている。上述の導入路102は、この圧力調整口101から流入した外気を霧化部に導くための流路であり、上述のエアロゾル搬送路103は、霧化部にて生成されたエアロゾルを中継管150Aに導くための流路である。
【0035】
上述のように、流路形成体130の上面に設けられたエアロゾル導出部132には、中継管150Aの第1流路部151の先端に設けられた接続部151aが接続されている。また、中継管150Aの第2流路部152の先端に設けられた接続部152aには、マスク160が取付けられており、中継管150Aの第3流路部153の先端に設けられた接続部153aには、フィルタ保持具170が取付けられている。これにより、ケース体110の内部に設けられたエアロゾル搬送路103とマスク160の内部の空間168とが、中継管150Aの内部に設けられた第1流路部151および第2流路部152を介して常時連通した状態となるとともに、マスク160の内部の空間168とがフィルタ保持具170の内部に設けられた流路175とが、中継管150Aの内部に設けられた第2流路部152、第1流路部151の上端部および第3流路部153を介して常時連通した状態となっている。
【0036】
マスク160は、シート成形や射出成形によって形成され、その一端に中継管150Aに接続される中継管側開口162を有しており、この中継管側開口162が設けられた端部とは反対側の端部に、使用に際して使用者の顔面に押し当てられることとなる使用者側開口163を有している。このマスク160の内部の空間168には、中継管150Aのエアロゾル噴霧口156が配置され、使用に際してはマスク160の内部の空間168に向かって中継管150Aのエアロゾル噴霧口156からエアロゾルが噴霧される。
【0037】
フィルタ保持具170は、射出成形によって形成されたフィルタケース171,172によって主として構成され、これらフィルタケース171,172とが嵌め合わされる際にこれらの間にフィルタ174を介装されることにより、内部に形成された流路175中にフィルタ174が配置されている。そして、中継管150A側の端部に接続部171aが設けられ、他端に排気口173が設けられている。
【0038】
上述の構成のネブライザ1においてエアロゾルの吸入を行なうに際しては、図5に示すように、まずマスク160を使用者の顔面に押し当て、マスク160の使用者側開口163によって使用者の口401および鼻402が囲われるようにし、マスク160の内部の空間168に口401および鼻402が面するようにする。
【0039】
つづいて、当該状態においてネブライザ1を動作させることにより、エアロゾルの吸入が中継管150Aおよびマスク160を介して行なわれる。具体的には、ネブライザ1を動作させると、図4に示すように、チューブ180を介してコンプレッサによって外気がケース体110の内部に導入される。このとき、使用者がエアロゾルを吸い込むために吸気動作を行なうことにより、マスク160および中継管150Aを介してケース体110の内部空間が負圧になる。これにより、圧力調整口101からケース体110の内部に外気が取り込まれる。
【0040】
取り込まれた外気は吸気管部134の内部に形成された導入路102を経由して霧化部へと至る。そして、上述のコンプレッサによって導入された外気と、使用者の呼気動作に基づいて圧力調整口101から導入された外気とを含む外気に霧化部において霧状粒子が付与され、エアロゾルが生成される。生成されたエアロゾルはエアロゾル搬送路103を経由してエアロゾル導出部132に達する。エアロゾル導出部132に達したエアロゾルは、中継管150Aの内部に設けられた第1流路部151および第2流路部152を経由してマスク160の内部の空間168に流入する。マスク160の内部の空間168に流入したエアロゾルは、使用者の吸気動作に基づいて使用者の口401および鼻402から使用者の体内へと吸入される。
【0041】
ここで、本実施の形態における中継管150Aにおいては、中継管150Aの第1流路部151と第2流路部152とを結ぶコーナー部154に傾斜状の流路形成面154Aが設けられているため、第1流路部151からコーナー部154に達したエアロゾルは、使用者の吸気動作に基づいてこの流路形成面154Aに沿うように整流されて第2流路部152に向けてスムーズに流動することになる。そのため、エアロゾルが第3流路部153に流入することは殆どなく、ほぼすべてのエアロゾルがエアロゾル噴霧口156からマスク160の内部の空間へと噴霧される。したがって、吸入時においてエアロゾルが中継管150Aの第3流路部153に流入して開放口157からフィルタ保持具170を経由して外部に漏れ出すことが効果的に防止される。
【0042】
一方、呼気排出時においては、使用者がマスク160の内部の空間168に向けて吐き出した呼気が、エアロゾル噴霧口156を介して中継管150Aの第2流路部152に流入することになる。ここで、本実施の形態における中継管150Aにおいては、中継管150Aの第2流路部152と第3流路部153とがその軸線が大きくずれることなく僅かにずれた状態で平行にずらして配置されるとともに、中継管150Aの第1流路部151と第2流路部152とを結ぶコーナー部154に傾斜状の流路形成面154Aが設けられているため、中継管150Aの第2流路部152に流入し、コーナー部154に達した呼気は、使用者の呼気排出動作に基づいて上述の流路形成面154Aに沿うように整流されて第3流路部153に向けてスムーズに流動することになる。そのため、呼気が第1流路部151を下降して接続口155にまで達することは殆どなく、ほぼすべての呼気が開放口157からフィルタ保持具170の内部の流路175へと流入し、フィルタ174を経由して排気口173から装置外部へと排出される。したがって、呼気排出時において呼気がネブライザ本体100の内部に侵入したり、ネブライザ本体100から第1流路部151に流入したエアロゾルが中継管150Aの第3流路部153に流入して開放口157からフィルタ保持具170を経由して外部に漏れ出したりすることが効果的に防止される。
【0043】
このように、本実施の形態の如くの中継管150Aとすることにより、射出成形による製造が容易で、呼気弁を設けずとも使用者が息が詰まることなくスムーズに呼吸が可能でかつエアロゾルの漏出が防止された中継管とすることができる。具体的には、第1流路部151と第2流路部152とを直交配置し、かつ第1流路部151の途中位置から第2流路部152とは反対側に向けて第3流路部153を第2流路部152と平行に配置することにより、特殊なスライド機構を有する射出成形機を用いることなく中継管を容易に射出成形にて製造することが可能になり、また、第1流路部151と第2流路部152とを結ぶコーナー部154に、内部を流動するエアロゾルおよび呼気の流れを整流する傾斜状の流路形成面154Aを設けることにより、呼気弁を設けずともスムーズな呼吸の実現とエアロゾルの漏出の防止との両立を図ることが可能になる。また、第1流路部151と第2流路部152および第3流路部153とが異なる方向に延びているため、ネブライザ1の側面にエアロゾル導出部132を設ける必要がなく、通常どおりネブライザ1の上面にエアロゾル導出部132を設けることが可能となり、さらには、フィルタ保持具170を呼気排出口となる開放口157に取付けることも可能になる。
【0044】
図6および図7は、第1および第2変形例に係る中継管の形状を示す断面図である。また、図8は、第3変形例に係るマウスピースの形状を示す断面図である。以下においては、これら図6ないし図8を参照して、本十進形態における第1ないし第3変形例について詳説する。なお、上述の図1に示した中継管150Aと同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0045】
図6に示す第1変形例に係る中継管150Bは、上述の図1に示す中継管150Aに比べ、第2流路部152の軸線と第3流路部153の軸線とのオフセット量を減じた構成である。上述の図1に示す中継管150Aにおいては、第2流路部152の先端に設けられたエアロゾル噴霧口156と第3流路部153の先端に設けられた開放口157とが面しないこととなるように、第2流路部152の軸線と第3流路部153の軸線とをずらして配置した構成としたが、本変形例においては、第2流路部152の軸線と第3流路部153の軸線とをずらして配置しつつも、これらエアロゾル噴霧口156と開放口157とが一部分において面することとなるように構成している。このように構成した場合にも、第1流路部151と第2流路部152とを結ぶコーナー部154に設けられる傾斜状の流路形成面154Aの大きさが減少することにより上述した整流効果は減少するものの、上述した本発明の目的が効果的に達成されることになる。
【0046】
図7に示す第2変形例に係る中継管150Cは、上述の図1に示す中継管150Aに比べ、コーナー部154における流路形成面の形状を変更したものである。具体的には、第1流路部151と第2流路部152とを結ぶコーナー部154を形成する中継管150Cの流路壁のうち、第1流路部151の一端に設けられた接続口155および第2流路部152の一端に設けられたエアロゾル噴霧口156に面する部分の流路壁に、湾曲状の流路形成面154Bを形成したものである。このように構成した場合にも、上述した本発明の目的が効果的に達成されることになる。
【0047】
図8に示す第3変形例に係るマウスピース150Dは、上述の図1に示す中継管150Aに比べ、エアロゾル噴霧口156の近傍における流路壁部分の形状を変更し、当該部分をマウスピース部152bとしたものである。すなわち、使用に際しては、使用者がこのマウスピース部152bを直接咥えることにより、エアロゾルの吸入が行なわれる。このように構成した場合にも、上述した本発明の目的が効果的に達成されることになる。
【0048】
以上において説明した本実施の形態における中継管においては、呼気排出口である開放口にフィルタ保持具が取付けられて使用されることを前提に説明を行なった。しかしながら、フィルタ保持具は、上述のように特殊な液体をネブライザにて霧化する場合に利用される器具であり、ネブライザの使用状態において必ずしも中継管に接続されるものではない。したがって、特殊な液体を使用しない場合には、このフィルタ保持具は中継管に接続する必要はなく、その場合には、中継管の開放口自体がそのまま呼気排出口として機能することになる。
【0049】
また、上述の実施の形態においては、ネブライザ用吸入補助具としてネブライザ本体とマスクとを中継する中継管およびマウスピースを例示して説明を行なった。しかしながら、上述したように、ネブライザ用吸入補助具としては種々の構成のものが存在しており、当該ネブライザ用吸入補助具に呼気排出のための開放口が設けらているものであればどのようなものにも本発明を適用することが可能である。すなわち、本発明は、上述の実施の形態において示したネブライザ本体とマスクとを中継する中継管やマウスピースに限らず、ネブライザ本体とマウスピースとを中継する中継管や、ネブライザ本体とノーズピースとを中継する中継管、ノーズピース、マスク等にも当然に適用可能である。また、中継管が複数の管状部材に分割されている場合等にも本発明は当然に適用可能である。
【0050】
また、上述の実施の形態においては、ネブライザとして、コンプレッサ式のネブライザを例示して説明を行なったが、超音波式のネブライザや超音波振動式のネブライザ等においても本発明に基づいたネブライザ用吸入補助具が利用可能であることは言うまでもない。
【0051】
このように、今回開示した上記一実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態における中継管の形状を示す断面図である。
【図2】図1に示す中継管を射出成形にて形成する場合の金型の構成を示す模式断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における中継管をネブライザ本体に取付けた状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示すネブライザの縦断面図である。
【図5】図3に示すネブライザの使用状態を示す概略斜視図である。
【図6】第1変形例に係る中継管の形状を示す断面図である。
【図7】第2変形例に係る中継管の形状を示す断面図である。
【図8】第3変形例に係る中継管の形状を示す断面図である。
【図9】従来例2に係る吸入補助具の具体例の一つを示す模式断面図である。
【図10】図9に示す吸入補助具を射出成形にて形成する場合の金型の構成を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ネブライザ、100 ネブライザ本体、101 圧力調整口、102 導入路、103 エアロゾル搬送路、110 ケース体、114 圧縮空気導入管部、116 貯留部、120 霧化部形成体、122 バッフル、124 吸液管形成部、130 流路形成体、132 エアロゾル導出部、133 開口、134 吸気管部、140 キャップ体、150A〜150C 中継管、150D,150E マウスピース、151 第1流路部、151a 接続部、152 第2流路部、152a 接続部、152b マウスピース部、153 第3流路部、153a 接続部、154 コーナー部、154A 傾斜状の流路形成面、154B 湾曲状の流路形成面、155 接続口、156 エアロゾル噴霧口、157 開放口、160 マスク、162 中継管側開口、163 使用者側開口、168 空間、170 フィルタ保持具、171 フィルタケース、171a 接続部、172 フィルタケース、173 排気口、174 フィルタ、175 流路、180 チューブ、251〜253 金型ピン、300 液体、401 口、402 鼻。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネブライザ本体に着脱自在に取付けられ、ネブライザ本体の内部にて生成されたエアロゾルを使用者が吸入するために内部に流路が設けられてなるネブライザ用吸入補助具であって、
前記流路は、
ネブライザ本体のエアロゾル導出部に接続される接続口を一端に有し、前記接続口から第1の方向に向けて延びる第1流路部と、
使用者に向けてエアロゾルを噴霧するエアロゾル噴霧口を一端に有し、前記第1流路部の他端から前記エアロゾル噴霧口に至るように前記第1の方向と直交する第2の方向に向けて延びる第2流路部と、
外部に連通する開放口を一端に有し、前記第1流路部の途中位置から前記開放口に至るように前記第2の方向とは逆向きの第3の方向に向けて延びる第3流路部と、を含み、
前記第1流路部と前記第2流路部とを結ぶコーナー部が、前記接続口および前記エアロゾル噴霧口の両方に面する傾斜状または湾曲状の流路形成面を有している、ネブライザ用吸入補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−161528(P2008−161528A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355853(P2006−355853)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)