説明

ネブライザ

【課題】エアゾール化した薬剤の投与の効率の向上を図るネブライザを提供すること。
【解決手段】液体収容部と、メッシュ部を有し当該メッシュ部が一方の面に上記液体収容部から出力された上記液体の薬剤をエアゾール化し他方の面から上記エアゾール化した薬剤を噴出するエアゾール発生手段と、エアゾール化された薬剤が噴出される噴出空間を形成して上記エアゾール発生手段の装着位置よりも上方に位置し、水平方向よりも上方に向かって開口して、上記エアゾール化された薬剤を外部に噴出する噴出口が形成された噴出空間形成部と、載置可能なハウジングと、を備え、上記ハウジングが載置されている状態において、上記薄板状のメッシュ部の上記他方の面である上記エアゾール化した薬剤を噴出する噴出面が、水平方向に対して斜め上方であり、上記噴出空間形成部に形成された上記噴出口方向に向くよう、上記エアゾール発生手段を配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネブライザにかかり、特に、液体の薬剤をエアゾール化して患者の呼吸器系に投与するネブライザに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の呼吸器系に薬剤を投与する機器として、気体の中に液体薬剤の微粒子を分散させ浮遊させることによって霧状化、つまり、エアゾール化するネブライザがある。そして、液体薬剤をエアゾール化する方法の1つに、微小な穴が形成されたメッシュを振動させて、当該メッシュに液体薬剤を通過させることによってエアゾール化するメッシュ式のものがある。このようなネブライザの一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示のネブライザは、上方に液体薬剤を保持するリザーバを備えると共に、このリザーバの下方に当該リザーバから供給される液体薬剤をエアゾール化するエアゾール発生器を設けている。そして、このエアゾール発生器は、液体薬剤をエアゾール化するメッシュ面を、ネブライザが所定の土台に載置された状態で下方に向けて配置されており、鉛直下方に向かってエアゾールを発生する構造となっている。そして、さらに、エアゾール化された薬剤を斜め上方に導く通路が形成されており、その先端がエアゾール化された薬剤を噴出する噴出口となっている。これにより、患者は、噴出口からエアゾール化された薬剤を吸入することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−528025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示のネブライザは、一旦、鉛直下方に向かってエアゾール化した薬剤を噴出し、再度、斜め上方に出力するよう、薬剤の通路が形成されている。つまり、通路が曲折しているため、エアゾール化された薬剤の噴出力が噴出口付近では弱まり、場合によっては薬剤を噴出口まで到達させることが困難である。従って、利用者は、噴出口に装着されたマウスピースを口にくわえるか、噴出口に装着されたマスクに顔面を密着させて吸入する必要がある。その結果、利用者の使用時の姿勢が制限され、使用時における身体の自由度が低下し、利便性が低い、という問題が生じる。また、上述したように利用者がマウスピースを口にくわえるなどして吸引した場合であっても、エアゾール化された薬剤が通路を形成する壁面に衝突して付着するなどにより、当該薬剤の一部が利用者まで届かない場合が生じ、投与の効率が悪い、という問題が生じる。
【0006】
このため、本発明の目的は、上述した課題である、エアゾール化した薬剤の投与の効率の向上を図ると共に、使用時における利用者の利便性の向上を図ることができるネブライザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため本発明の一形態であるネブライザは、
液体の薬剤を収容し、当該液体の薬剤を出力する液体出力口を有する液体収容部と、
上記液体収容部に形成された上記液体出力口に装着され、複数の穴が形成された薄板状のメッシュ部を有し、当該メッシュ部が、一方の面に上記液体収容部から出力された上記液体の薬剤を他方の面側に通過させることによって当該薬剤をエアゾール化し、上記他方の面から上記エアゾール化した薬剤を噴出するエアゾール発生手段と、
上記液体収容部に係合して上記エアゾール発生手段の周囲を覆い、上記エアゾール化された薬剤が噴出される噴出空間を形成すると共に、上記エアゾール発生手段の装着位置よりも上方に位置し、水平方向よりも上方に向かって開口して、上記エアゾール化された薬剤を上記噴出空間から外部に噴出する噴出口が形成された噴出空間形成部と、
上記エアゾール発生手段が装着された上記液体収容部と、当該液体収容部に係合された上記噴出空間形成部と、を下方から支持し、所定の載置台に載置可能なハウジングと、
を備え、
上記ハウジングが水平な所定の載置台に載置されている状態において、上記薄板状のメッシュ部の上記他方の面である上記エアゾール化した薬剤を噴出する噴出面が、水平方向に対して斜め上方であり、上記噴出空間形成部に形成された上記噴出口方向に向くよう、上記エアゾール発生手段を配置している。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上のように構成されることにより、ネブライザによるエアゾール化した薬剤の投与の効率の向上を図ると共に、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一形態であるネブライザは、
液体の薬剤を収容し、当該液体の薬剤を出力する液体出力口を有する液体収容部と、
上記液体収容部に形成された上記液体出力口に装着され、複数の穴が形成された薄板状のメッシュ部を有し、当該メッシュ部が、一方の面に上記液体収容部から出力された上記液体の薬剤を他方の面側に通過させることによって当該薬剤をエアゾール化し、上記他方の面から上記エアゾール化した薬剤を噴出するエアゾール発生手段と、
上記液体収容部に係合して上記エアゾール発生手段の周囲を覆い、上記エアゾール化された薬剤が噴出される噴出空間を形成すると共に、上記エアゾール発生手段の装着位置よりも上方に位置し、水平方向よりも上方に向かって開口して、上記エアゾール化された薬剤を上記噴出空間から外部に噴出する噴出口が形成された噴出空間形成部と、
上記エアゾール発生手段が装着された上記液体収容部と、当該液体収容部に係合された上記噴出空間形成部と、を下方から支持し、所定の載置台に載置可能なハウジングと、
を備え、
上記ハウジングが水平な所定の載置台に載置されている状態において、上記薄板状のメッシュ部の上記他方の面である上記エアゾール化した薬剤を噴出する噴出面が、水平方向に対して斜め上方であり、上記噴出空間形成部に形成された上記噴出口方向に向くよう、上記エアゾール発生手段を配置している。
【0010】
上記発明によると、まず、液体収容部に収容された液状の薬剤がエアゾール発生手段のメッシュ部に一方の面から供給され、当該メッシュ部の他方の面からエアゾール化されて噴出される。このとき、エアゾール発生手段の噴出面が、これよりも上方に位置して噴出空間形成部に形成された噴出口方向を向くよう、水平方向に対して斜め上方を向いて配置されているため、エアゾール発生手段よりも上方に位置する噴出口に向かってエアゾール化された薬剤を噴出する。従って、エアゾール化された薬剤が、直接、噴出口に向かって噴出されるため、噴出効率の向上を図ることができ、薬剤投与の効率化を図ることができる。そして、ハウジングを載置して使用する場合に、噴出口が水平方向よりも上方であり、かつ、水平方向よりも斜め上方に向かって開口しているため、利用者がネブライザ自体を把持することなく利用することができる。その結果、利用者は、噴出口に装着されたマウスピースを口にくわえるなどの姿勢を取る必要がなく、使用時における身体の自由度が増し、利便性の向上を図ることができる。
【0011】
また、上記ネブライザでは、
上記噴出空間形成部に、上記噴出空間に流入する空気量を調整する流入空気量調整手段を備えている。
【0012】
そして、上記流入空気量調整手段は、上記噴出空間に空気を流入させる通気口と、この通気口を覆う通気口カバー部材と、を備えると共に、
上記通気口カバー部材にて上記通気口を覆う面積が可変可能なよう当該通気口カバー部材を可動可能に上記噴出空間形成部に設けている。
【0013】
これにより、通気口カバー部材をスライドさせることにより、通気口を覆う面積を可変することができ、噴出空間に流入する空気量を調整することができる。従って、簡易な構成でエアゾール化された薬剤の噴出力を調整することができる。
【0014】
また、本発明の他の形態である吸引装置は、
一端に吸引口が形成された吸引管路と、この吸引管路に吸引力を付勢する吸引ポンプと、上記吸引管路上に設けられ上記吸引口から吸引した吸引物を蓄積する容器と、少なくとも上記吸引ポンプを収容する筐体と、を備えた吸引装置の上記筐体に、
液体の薬剤を収容し、当該液体の薬剤を出力する液体出力口を有する液体収容部と、上記液体収容部に形成された上記液体出力口に装着され、複数の穴が形成された薄板状のメッシュ部を有し、当該メッシュ部が、一方の面に上記液体収容部から出力された上記液体の薬剤を他方の面側に通過させることによって当該薬剤をエアゾール化し、上記他方の面から上記エアゾール化した薬剤を噴出するエアゾール発生手段と、上記液体収容部に係合して上記エアゾール発生手段の周囲を覆い、上記エアゾール化された薬剤が噴出される噴出空間を形成すると共に、上記エアゾール化された薬剤を上記噴出空間から外部に噴出する噴出口が形成された噴出空間形成部と、を備えたネブライザを装備している。
【0015】
以上が、本発明であるネブライザ、及び、ネブライザ付き吸引装置の構成の概略である。続いて、ネブライザ、及び、ネブライザ付き吸引装置について、各実施例を参照して詳述する。
【0016】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、図1乃至図7を参照して説明する。図1は、ネブライザの外観を示す斜視図である。図2は、ネブライザの正面図である。図3は、ネブライザを正面から見た部分断面図である。図4は、ネブライザの一部の断面図である。図5は、噴出空間形成部が係合している液体収容部の構成を示す図である。図6は、液体収容部とエアゾール発生手段と噴出空間形成部との組み立て図であり、図7は、エアゾール発生手段の組み立て図である。
【0017】
[構成]
まず、図1に示すように、本実施形態におけるネブライザ1は、ハウジング10と、その上部にエアゾール化した薬剤を噴出するための種々の構成と、を備えている。具体的には、ハウジング10の上部に、液体の薬剤を収容する液体収容部20と、液体の薬剤をエアゾール化するエアゾール発生部30(図1には図示せず)と、エアゾール化された薬剤の噴出空間を形成する噴出空間形成部40と、患者が薬剤を吸引する箇所となるマスク部50と、を備えている。以下、各構成について詳述する。
【0018】
まず、ハウジング10は、略直方体形状のケースであり、長手方向の一端を下端として、当該下端に平面部が形成されている。そして、この下端の平面部は、テーブルなどの載置台に形成されている水平面上に、載置することが可能である。これにより、長手方向の他端側が高さ方向の上端側となり、当該上端側に、ネブライザ1の主要構成である液体収容部20と噴出空間形成部30といった各構成を装備して、下方から支持している。なお、ハウジング10は、内部に後述するエアゾール発生部30を駆動させる電池を収容していたり、また、外表面には、ネブライザ1自体の動作を制御する操作部を備えている。
【0019】
次に、液体収容部20について説明する。図2乃至図4、及び、図6に示すように、液体収容部20は、液体の薬剤を収容する収容空間を内部に形成する略円筒形状の円筒形状部21を備えている。この円筒形状部21は、一端側が開口しており、薬剤を内部に注入可能な注入口21aを形成している。そして、この注入口21aには、当該注入口21aを塞ぐ略円形のキャップ22が設けられる。
【0020】
また、円筒形状部21の他端側は、図4及び図6に示すように、当該円筒形状部21の中心軸方向に対して斜め(例えば、45度)に傾斜した板状の部材である傾斜板部23が一体的に設けられており、上記注入口21aとは反対側となる円筒形状部21の他端側を塞いでいる。これにより、略円筒形状部21の側壁と、一端側のキャップ22と、他端側の傾斜板部23と、により囲まれた内部空間(収容空間)に、液体の薬剤を収容することができる。なお、上記傾斜板部23は、図4及び図6に示すように、円筒形状部21の注入口21aから最も遠く離れた箇所側で、当該円筒形状部21から突出して、延設されて形成されている。
【0021】
また、傾斜板部23には、上述した液体収容部20の収容空間に収容されている液体の薬剤を出力する液体出力口21bが形成されている。具体的に、液体出力口21bは、ハウジング10が水平面に載置されている図3に示すような状態において、円筒形状部21と傾斜板部23にて形成される収容空間の最下端の側方に位置する箇所に形成されている。換言すると、液体出力口21bは、傾斜板部23にて収容空間を形成する箇所うち、キャップ21が装備される円筒形状部21の注入口21aから最も距離の離れた箇所に形成されている。そして、このとき、液体出力口21bの開口端面は、傾斜板部23と平行に形成されている。
【0022】
なお、上記傾斜板23及びこれに平行な液体出力口21bの開口端面は、上述したハウジング10が水平台上に載置されている状態である図4に示す状態のときには、水平方向よりも斜め上方に向くよう形成されている。つまり、液体出力口21bの開口端面は、水平方向を0度とした場合に、例えば、上方向に30度の方向を向くよう形成されている。
【0023】
また、上記液体出力口21bに隣接する傾斜板部23の板厚部分は、円筒形状部21から液体出力口21bに向かって液体の薬剤が通過する液体通路21cを形成している。この液体通路21cは、図4の符号21dに示す当該液体通路21cの上方側の壁面の傾斜が、下方側の壁面よりも、液体収容部20の注入口21a側にて、上方に向かって急勾配に形成されている。換言すると、円筒形状部21の側壁側に形成されている液体通路21cの下方側の内壁は、当該円筒形状部21の側壁とほぼ平行に形成されているが、当該円筒形状部21の内部側に位置する上方側の内壁は、それよりも上方に向かって急勾配に傾斜して形成されている。
【0024】
そして、上記液体出力口21bには、円筒形状部21とは反対側に、エアゾール発生部30が装着されている。このエアゾール発生部30の構成を図6に示し、また、エアゾール発生部30の分解図を図7に示す。図7に示すように、エアゾール発生部30は、上述した液体出力部21bに配置される複数の微小な穴が形成された薄板状のメッシュ部31を備えている。
【0025】
そして、上記メッシュ部31の周囲には、当該メッシュ部31を振動させる圧電素子から成る振動子32を備えている。この振動子32には、電極ピン33を介してハウジング10内の電池から電力が供給されることによって振動し、メッシュ部31を振動させる。そして、エアゾール発生部30は、上記メッシュ部31等を表裏側から挟んで収容するケース34a,34bと、振動子パッキン35と、を備えている。さらに、エアゾール発生部30は、上記構成を液体収容部20側、つまり、上記液体出力口21bに装着するための装着用ケース36と、電極ピン33による電極部に液体が侵入することを防ぐOリング37と、を備えている。
【0026】
そして、上記エアゾール発生部30は、薄板形状であるメッシュ部31の一方の面が上記液体出力口21bの開口端面に位置して装着される。そして、上記振動子32によってメッシュ部31が振動されると、液体出力口21bから出力された液体の薬剤は、メッシュ部31の一方の面から当該メッシュ部31に形成された微小な穴を介して他方の面側に通過してエアゾール化され、当該他方の面からエアゾール化した薬剤が噴出されることとなる。
【0027】
また、上記エアゾール発生部30のメッシュ部31は、上述したように、一方の面が上記液体出力口21bの開口端面に位置して装着されているため、当該メッシュ部31の他方の面も、必然的に、液体出力口21bの開口端面と平行となる。従って、液体出力口21bの開口端面と同様に、メッシュ部31の噴出面(他方の面)は、上述したように、ハウジング10が水平台上に載置されている状態である図4に示す状態のときには、水平方向よりも斜め上方に向くよう配置されている。例えば、水平方向を0度とした場合に、上方向に45度の方向を向くよう配置されている。また、同時に、上記メッシュ部31の噴出面は、後述する噴出空間形成部40に形成された噴出口41方向に向くよう配置されていることとなる。
【0028】
次に、上記噴出空間形成部40の構成について説明する。噴出空間形成部40は、図4及び図6に示すように、上述した液体収容部20の傾斜板部23側に係合し、エアゾール発生部30の周囲を覆うケース部材である。そして、噴出空間形成部40と傾斜板部23とによって囲まれた内部空間は、上述したようにエアゾール発生部30からエアゾール化された薬剤が噴出される噴出空間を形成している。
【0029】
具体的に、噴出空間形成部40は、図4及び図6に示すように、略長方形形状を底面42とみて形成される略直方体を斜めに切断した形状を有しており、この切断部分が上記傾斜板部23と係合するよう構成されている。そして、噴出空間形成部40の底面42は、水平面部分を有する。すると、噴出空間形成部40が上記液体収容部20と係合させた状態で、図5に示すように、上記底面42の水平面部分を所定の水平台(載置台)に載置した場合には、略L字状の構造物となる。
【0030】
このとき、特に、噴出空間形成部40の底面42と、上記液体収容部20の円筒形状部21の軸Cは、垂直となる。つまり、噴出空間形成部40と液体収容部20と係合させた状態で、図5に示すように、上記底面42を所定の水平台(載置台)に載置した場合には、液体収容部20の液体を注入する筒状形状部20の軸方向に沿った高さ方向が鉛直方向に位置することとなり、キャップ22を開けたときに露出し、液体の薬剤を注入する注入口21aが鉛直方向の上端に位置することとなる。
【0031】
また、上述したように略L状を形成する噴出空間形成部40には、その角部に、エアゾール化された薬剤を外部に噴出する噴出口41が形成されている。この噴出口41は、具体的には、上述したエアゾール発生部30が装着された液体収容部20と係合したときであって、これらを支持するハウジング10が水平台に載置された状態で、上記エアゾール発生部30よりも上方に位置し、水平方向よりも斜め上方に向かって開口している。例えば、水平方向を0度とした場合に、上方向に45度の方向を向くよう配置されている。そして、この噴出口41に対しては、上述したように、エアゾール発生部30が有する上記メッシュ部31の噴出面が向いている。具体的には、メッシュ部31の噴出面に対する垂直方向上に、上記噴出口41が位置している。
【0032】
また、噴出空間形成部40には、当該噴出空間形成部40にて覆うことにより形成されている噴出空間に流入する空気量を調整する空気量調整手段を備えている。この空気量調整手段は、具体的には、図2に示すように、上記噴出空間形成部40の図2における上部側には、内部である噴出空間に通ずる複数のスリット状の通気口43と、当該噴出空間形成部40の外表面を覆う通気口カバー部材44と、により構成されている。
【0033】
そして、上記通気口43は、噴出空間に空気を流入させるよう機能する。また、通気口カバー部材44は、外表面に沿って図2の矢印Dに示すようスライド可能であり、当該通気口カバー部材44の位置に応じて、上記通気口43のいくつかを覆う。つまり、この通気口カバー部材44をスライド可動させることで、通気口43を覆う面積が可変する。そして、通気口43が覆われている面積が小さい場合には、噴出空間に多くの空気が流入し、噴出口41から噴出するエアゾール化された薬剤の噴出力が増加する。一方、通気口43が覆われている面積が大きい場合には、噴出空間に流入する空気が少なくなり、噴出口41から噴出するエアゾール化された薬剤の噴出力が低下する。
【0034】
[動作]
次に、上記構成のネブライザ1の使用時の動作を説明する。まず、使用者は、液体の薬剤を液体収容部20に注入する。このとき、噴出空間形成部40が係合された液体収容部20をハウジング10から取り外して、図5に示すように、噴出空間形成部40に形成されている水平面部分(底面)42を下方に向けて、水平台Gに載置する。すると、液体収容部20の円筒形状部21の高さ方向つまり中心軸方向が鉛直方向に位置することとなり、上端に注入口21aが位置する。このような状態で、使用者はキャップ22を取り外して、注入口21aから液体の薬剤を円筒形状部21の内部に注入する。これにより、使用者は、容易に薬剤を注入することができる。また、例えば、円筒形状部21の外表面に、注入された液体の薬剤の液面に対応する注入量を表示する目盛を付しておくことで、薬剤の注入量の調整も容易となる。
【0035】
続いて、操作者は、液体の薬剤を注入した円筒形状部21の注入口21aにキャップ22をして、液体収容部20をハウジング10の上部に装着する。そして、図3に示すように、ハウジング10の下端を水平台G上に載置することで、液体収容部20は、図4に示す向きとなり、傾斜板部23に形成された液体出力口21b付近が、液体の薬剤が収容されている収容空間の最下端に位置する。従って、内部の液体の薬剤は、液体出力口21bに流れ込むこととなる。
【0036】
その後、操作者は、ハウジング10に装備された操作部を操作して、薬剤の投与を開始する。すると、エアゾール発生部30のメッシュ部31が振動する。そして、この振動により、メッシュ部31の一方の面に供給された液体の薬剤が、当該メッシュ部31の微小の穴を通過してエアゾール化され、他方の面から噴出される。このとき、メッシュ部31の他方の面である噴出面が、これよりも上方に位置して噴出空間形成部40に形成された噴出口41方向を向くよう水平方向に対して斜め上方を向いて配置されているため、噴出口41に向かってエアゾール化された薬剤を噴出する。つまり、エアゾール化された薬剤は、図3の矢印Aに示すように、直接、噴出口41に向かって噴出され、結果として、図3の符号Rに示す範囲に広がって噴出される。
【0037】
そして、上述したように、ネブライザ1を載置した状態において、エアゾール化された薬剤が斜め上方を向いた噴出口41及びマスク部50から噴出されるため、利用者はネブライザ自体を把持することなく吸引することができ、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【0038】
また、操作者は、エアゾール化された薬剤の噴出力を調整する場合には、噴出空間形成部40に装備されている通気口カバー部材44を図2の矢印Dに示すようスライドさせて、通気口43を覆う面積を調整するとよい。つまり、上述したように、エアゾール発生部30から噴出されたエアゾール化された薬剤は、噴出口41及びマスク部50から噴出される前に、噴出空間形成部40に囲まれた噴出空間を通過することとなるため、通気口43から噴出空間内に流入する空気量を調整する。例えば、通気口43を覆う面積を小さくした場合には、噴出空間に多くの空気が流入し、噴出口41から噴出するエアゾール化された薬剤の噴出力が増加する。一方、通気口43を覆う面積が大きくした場合には、噴出空間に流入する空気が少なくなり、噴出口41から噴出するエアゾール化された薬剤の噴出力が低下する。
【0039】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態では、上述したネブライザ1を吸引装置の筐体に装備しており、ネブライザ付き吸引装置を構成している。
【0040】
このとき、例えば、吸引装置は、一端に吸引口が形成された吸引管路と、この吸引管路に吸引力を付勢する吸引ポンプと、吸引管路上に設けられ吸引口から吸引した吸引物を蓄積する容器と、少なくとも吸引ポンプを収容する筐体と、を備えている。そして、例えば、筐体の上部に、上述したネブライザ1を構成する、液体収容部20と、エアゾール発生部30と、噴出空間形成部40と、マスク部50と、を備えている。また、吸引装置内に、上記エアゾール発生部30を駆動するための電源装置などを備えている。
【0041】
このようにすることにより、簡易な構成で、ネブライザ付き吸引装置を構成することができる。なお、上述したハウジング10付きのネブライザ1を、そのまま吸引装置の筐体に装備してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、患者の呼吸器系に薬剤をエアゾール化して投与するネブライザに利用することができ、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ネブライザの外観を示す斜視図である。
【図2】ネブライザの正面図である。
【図3】ネブライザを正面から見た部分断面図である。
【図4】ネブライザの一部の断面図である。
【図5】噴出空間形成部が係合している液体収容部の構成を示す図である。
【図6】液体収容部とエアゾール発生部と噴出空間形成部との組み立て図である。
【図7】エアゾール発生部の組み立て図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ネブライザ
10 ハウジング
20 液体収容部
21 円筒形状部
21a 注入口
21b 液体出力口
22 キャップ
23 傾斜板部
30 エアゾール発生部
31 メッシュ部
32 振動子
40 噴出空間形成部
41 噴出口
42 底面
43 通気口
44 通気口カバー部材
50 マスク部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の薬剤を収容し、当該液体の薬剤を出力する液体出力口を有する液体収容部と、
前記液体収容部に形成された前記液体出力口に装着され、複数の穴が形成された薄板状のメッシュ部を有し、当該メッシュ部が、一方の面に前記液体収容部から出力された前記液体の薬剤を他方の面側に通過させることによって当該薬剤をエアゾール化し、前記他方の面から前記エアゾール化した薬剤を噴出するエアゾール発生手段と、
前記液体収容部に係合して前記エアゾール発生手段の周囲を覆い、前記エアゾール化された薬剤が噴出される噴出空間を形成すると共に、前記エアゾール発生手段の装着位置よりも上方に位置し、水平方向よりも上方に向かって開口して、前記エアゾール化された薬剤を前記噴出空間から外部に噴出する噴出口が形成された噴出空間形成部と、
前記エアゾール発生手段が装着された前記液体収容部と、当該液体収容部に係合された前記噴出空間形成部と、を下方から支持し、所定の載置台に載置可能なハウジングと、
を備え、
前記ハウジングが水平な所定の載置台に載置されている状態において、前記薄板状のメッシュ部の前記他方の面である前記エアゾール化した薬剤を噴出する噴出面が、水平方向に対して斜め上方であり、前記噴出空間形成部に形成された前記噴出口方向に向くよう、前記エアゾール発生手段を配置した、
ネブライザ。
【請求項2】
前記噴出空間形成部に、前記噴出空間に流入する空気量を調整する流入空気量調整手段を備えた、
請求項1記載のネブライザ。
【請求項3】
前記流入空気量調整手段は、前記噴出空間に空気を流入させる通気口と、この通気口を覆う通気口カバー部材と、を備えると共に、
前記通気口カバー部材にて前記通気口を覆う面積が可変可能なよう当該通気口カバー部材を可動可能に前記噴出空間形成部に設けた、
請求項2記載のネブライザ。
【請求項4】
一端に吸引口が形成された吸引管路と、この吸引管路に吸引力を付勢する吸引ポンプと、前記吸引管路上に設けられ前記吸引口から吸引した吸引物を蓄積する容器と、少なくとも前記吸引ポンプを収容する筐体と、を備えた吸引装置の前記筐体に、
液体の薬剤を収容し、当該液体の薬剤を出力する液体出力口を有する液体収容部と、前記液体収容部に形成された前記液体出力口に装着され、複数の穴が形成された薄板状のメッシュ部を有し、当該メッシュ部が、一方の面に前記液体収容部から出力された前記液体の薬剤を他方の面側に通過させることによって当該薬剤をエアゾール化し、前記他方の面から前記エアゾール化した薬剤を噴出するエアゾール発生手段と、前記液体収容部に係合して前記エアゾール発生手段の周囲を覆い、前記エアゾール化された薬剤が噴出される噴出空間を形成すると共に、前記エアゾール化された薬剤を前記噴出空間から外部に噴出する噴出口が形成された噴出空間形成部と、を備えたネブライザを装備した、
ネブライザ付き吸引装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−99169(P2010−99169A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271807(P2008−271807)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(596170103)株式会社興伸工業 (3)