説明

ノズル装置とそれを使用した衛生洗浄装置

【課題】小型でシンプルな構成により、振動流を噴出できるノズル装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ノズル本体300と、ノズル本体300の内部に配設した流路310と、洗浄水を噴出する噴出口320と、洗浄水を供給する主水路312と、流路310と主水路312を略直角に連接する屈曲部311とを備え、噴出口320は小孔部321と大孔部322を連接した二段形状とし、屈曲部311の一部に流路310と主水路312とを湾曲面で連接する湾曲部313を備えたことにより、流路から主水路に流入する洗浄水は、屈曲部において旋回流となり、旋回流となった洗浄水が二段形状の噴出口に流入することにより、小孔部において洗浄水の一部は壁面から剥離し、一部は壁面に付着する流れとなり、剥離箇所と付着箇所が順次移動することにより振動流が発生し、振動流として噴出させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人体の局部を洗浄する洗浄水を噴出するノズル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のノズル装置は、噴出口の下方に一対の渦流室を設け、水流による圧力差を利用して洗浄水を自動発振する流体発振素子を応用して洗浄水の噴出方向を周期的に変化させることにより、洗浄範囲を拡大するとともに噴出強度を変化させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は、特許文献1に記載された従来のノズル装置の噴出口近傍の構成を示すものである。図10に示すように、給水路1に対し略垂直に流路径を絞ったオリフィス2を設け、オリフィス2は流路径の大きい主水路3に連通している。主水路3の両側には旋回水路4が設けてあり、主水路3の下流側は噴出口5に連通しており、噴出口5は入り口側から出口側に向かって開口徐々に拡大するように形成されている。また、主水路3の上流側には外気を導入する空気導入口6が設けられている。
【0004】
給水路1から流入した線浄水は、オリフィス2を通過して主水路3に流入し、噴出口5より噴出するが、主水路3に流入した洗浄水は一部が旋回水路4に流入し旋回流を発生すすることにより、主水路3の洗浄水の流れが一方の旋回水路4側に引き寄せられ、噴出口5から噴出する洗浄水も同様に引き寄せられて噴出する。この状態において他方の旋回水路4の圧力が高まり、旋回水路4内の圧力差が生じ、主水路の洗浄水は反対側に引き寄せられ、噴出口5から噴出する洗浄水も同様に反対方向に引き寄せられて噴出する。上記動作を繰り返すことにより洗浄水は自動的に発振し、振動流噴出することができるものである。また、主水路3に設けた空気導入口6より外気を導入することにより、洗浄水のボリュームが増すことにより、噴出口5をふさぐ作用が増すことにより、旋回流路間の圧力差が高まり、発振がより安定させることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−279525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、噴出口の下方には洗浄水を発振させる2個の旋回流路を設けることが必須の構成要素であるため、ノズルの先端部分が大型化するものであり、特に1個のノズルにお尻洗浄とビデ洗浄等の複数の噴出口を設けた複合機能のノズル装置においては大型化に加え構造の複雑化により、実施する上で非常に難易度の高いものである。また、噴出口の直下に曲線で構成する旋回流路を設けるため、噴出口から進入する汚物により旋回流路が閉塞され、発信機能が発揮できなくなることが懸念され、これらの点で改良の余地を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、小型でシンプルな構成により、複合ノズルにおいても実施が容易で、かつ汚染等による機能低下が発生することがない振動流を噴出できるノズル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明のノズル装置は、ノズル本体と、ノズル本体
の内部に配設した流路と、ノズル本体の先端部に設置され、洗浄水を噴出する噴出口と、噴出口に連通し、洗浄水を供給する略円筒形状の主水路と、流路と主水路を略直角に連接する屈曲部とを含み、噴出口は元の部分の開口面積の小さい小孔部と先端部分の開口面積の大きい大孔部を連接した二段形状の構成とし、屈曲部の一部に流路と主水路とを湾曲面で連接する湾曲部を備えたノズル装置である。
【0009】
これにより、流路から主水路に流入する洗浄水は、屈曲部において流速のバランスが崩れるため旋回成分が付与され、旋回成分をともなった洗浄水が二段形状の噴出口に流入することとなる。噴出口の入口となる小孔部において、洗浄水の一部は壁面から剥離し、一部は壁面に付着する流れとなるが、洗浄水が旋回流であるため、剥離箇所と付着箇所が順次移動することにより振動流が発生する、小孔部から大孔部に流入した洗浄水は、段差部分で渦が生成されることにより、圧力変動が増幅され強い脈動感をともなった振動流として噴出させることができる。
【0010】
しかも、上記振動流を主水路と屈曲部に設けた湾曲部と二段形状の噴出口のみの小型でシンプルな構成で実施することができるので、洗浄力および洗浄感の高いノズル装置を小型かつシンプルな構成で実施することが可能となる。
【0011】
また、本発明の衛生洗浄装置は、上記本発明のノズル装置と、ノズル装置に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、ノズル装置と洗浄水供給手段を制御する制御手段と、便器の上面に載置する便座を備えたものである。
【0012】
これにより、局部に向けて噴出する洗浄水は振動流をともなう噴流となるため洗浄力を高めるとともに、人体に強い洗浄であるという感覚が生じるため、衛生的で使い勝手のよい衛生洗浄装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のノズル装置は、洗浄力および洗浄感の高い振動流を小型かつシンプルな構成で発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置に便器に設置した状態の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1におけるノズル装置の外観を示す斜視図
【図3】(a)は本発明の実施の形態1におけるノズル装置のビデ洗浄位置における断面図、(b)は同先端部の詳細断面図
【図4】(a)は本発明の実施の形態1におけるノズル装置のお尻洗浄位置における断面図、(b)は同先端部の詳細断面図
【図5】(a)は本発明の実施の形態1におけるノズルユニットの上面図、(b)は同断面図
【図6】本発明の実施の形態1におけるノズル本体の先端部の断面図
【図7】本発明の実施の形態1におけるノズル本体の屈曲部の詳細を示す断面斜視図
【図8】(a)は本発明の実施の形態1におけるお尻噴出口の振動作用を説明する模式図、(b)は圧力連通路の連通作用を説明する模式図
【図9】従来のノズル装置の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、ノズル本体と、前記ノズル本体の内部に配設した流路と、前記ノズル本体の先端部に設置され、洗浄水を噴出する噴出口と、前記噴出口に連通し、洗浄水を供給する略円筒形状の主水路と、前記流路と前記主水路を略直角に連接する屈曲部とを含み、前記噴出口は、元の部分の開口面積の小さい小孔部と、先端部分の開口面積の大きい大孔
部を連接した二段形状の構成とし、前記屈曲部の一部に前記流路と前記主水路とを湾曲面で連接する湾曲部を備えたノズル装置である。
【0016】
これにより、流路から主水路に流入する洗浄水は、屈曲部において流速のバランスが崩れるため旋回成分が付与され、旋回成分をともなった洗浄水が二段形状の噴出口に流入することとなる。噴出口の入口となる小孔部において、洗浄水の一部は壁面から剥離し、一部は壁面に付着する流れとなるが、洗浄水が旋回流であるため、剥離箇所と付着箇所が順次移動することにより振動流が発生する、小孔部から大孔部に流入した洗浄水は、段差部分で渦が生成されることにより、圧力変動が増幅され強い脈動感をともなった振動流として噴出させることができる。
【0017】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記主水路と前記噴出口は、相互の軸心が所定の角度で交差するように連接されたものである。
【0018】
これにより、主水路から小孔部に流入した洗浄水は、剥離と付着が発生しやすくなり、振動流発生を促進することができる。
【0019】
第3の発明は、特に第2の発明において、前記主水路と前記噴出口とは、相互の軸心が5度〜10度の範囲で交差するように連接された構成である。
【0020】
これにより、小孔部内での洗浄水は適度な剥離と付着を発生させることが可能となるとともに、過度の流路抵抗が生じることがなく、安定して振動流を発生させることができる。
【0021】
第4の発明は、特に第1〜第3のいずれか1つの発明において、ノズル本体に複数の噴出口と、前記噴出口洗浄水を供給する複数の流路を備え、少なくとも1個の噴出口を小孔部と大孔部を連接した二段形状としたものである。
【0022】
これにより、1個のノズル本体に複数の洗浄機能を備えることが可能となり、コンパクトなノズル装置を提供することが可能となる。
【0023】
第5の発明は、特に第1〜第4のいずれか1つの発明において、ノズル本体の少なくとも一部を覆う筒状のノズルカバーを備え、前記ノズル本体とノズルカバーは相互に摺動可能な構成とし、前記ノズルカバーには前記ノズル本体の少なくとも1個の噴出口に対応する噴出開口を有し、前記噴出口から噴出する洗浄水は前記噴出開口を介して噴出する構成としたものである。
【0024】
これにより、洗浄水噴出時にはノズル本体特に噴出口の近傍はノズルカバーで覆われており、洗浄により汚れた洗浄水でノズル本体が汚染されることが少なく衛生的である。
【0025】
第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明のノズル装置と、ノズル装置に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、ノズル装置と洗浄水供給手段を制御する制御手段と、便器の上面に載置する便座を備えた、衛生洗浄装置である。
【0026】
これにより、局部に向けて噴出する洗浄水は振動流をともなう噴流となるため洗浄力を高めるとともに、人体に強い洗浄であるという感覚が生じるため、衛生的で使い勝手のよい衛生洗浄装置を提供することができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるノズル装置を使用した衛生洗浄装置の斜視図を示すものである。
【0029】
<1>衛生洗浄装置の構成
図1に示すように、本願発明の衛生洗浄装置10は便器70の上面に設置して使用するものであり、便器70の後部に設置した本体20の前面には便座40と便蓋30が回動自在に枢支してあり、図1に示すように便蓋30を開放した状態においては、便蓋30は便座装置10の最後部に位置するように起立する。また、便蓋30を閉成すると便座40の全面を隠蔽する。
【0030】
本体20の前部中央にはノズル装置100が設置してあり、ノズル装置100のノズルユニット200が便器70の中央に向けて進出し、ノズルユニット100の先端に設けた噴出口から使用者の局部に向けて洗浄水を噴出し、使用者の局部を洗浄する。ノズルユニット100はお尻を洗浄するお尻洗浄ノズル部と女性の局部を洗浄するビデノズル部を備えている。
【0031】
本体20前面コーナー部には便座40に着座した人体を検知する着座検知センサ21が設置されており、着座検知センサ21が人体を検知していない時には、ノズル装置100から洗浄水を噴出することを停止することにより、洗浄水が便器70の外に噴出してトイレルーム内に飛散することを防止する。
【0032】
本体20の内部にはノズル装置100に洗浄水を供給するポンプ等の送水手段と洗浄水を加熱する熱交換器を備えた洗浄水供給手段(図示せず)、洗浄水により濡れた局部に向けて温風を噴出して局部を乾燥する乾燥装置(図示せず)、ノズル装置100と洗浄水供給手段、乾燥装置等を制御する制御手段(図示せず)等が配設してある。
【0033】
また、トイレルーム内には、使用者の入室を検知する人体検知センサ50や衛生洗浄装置を操作するリモートコントローラ60が設置されている。
【0034】
人体検知センサ50はトイレルームの壁面等に取り付けられる。人体検知センサ50は、反射型の赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0035】
リモートコントローラ60には、複数の操作スイッチが設けられている。リモートコントローラ60は便座40上に着座した使用者が操作可能なトイレルームの壁面等の場所に取り付けられ、便座装置の各機能の操作を行う。
【0036】
本体200の制御部は、人体検知センサ50、リモートコントローラ60、および着座センサ21から送信される信号に基づいて、便座装置10の各部の動作を制御する。
【0037】
<2>ノズル装置の構成
図2はノズルが収納位置にあるノズル装置全体の外観の斜視図を示すものであり、図3(a)はノズル装置のビデ洗浄位置における断面図を示し、(b)ノズル装置の先端部の詳細断面図を示すものである。図4(a)はノズル装置のお尻洗浄位置における断面図を示し、(b)ノズル装置の先端部の詳細断面図を示すものである。図5(a)はノズルユニットの上面図を示し、(b)は断面図を示すものである。
【0038】
図2に示すように、ノズル装置100は、樹脂材料で成型したケーシング110は上下
に分離可能な上ケース120と下ケース130を組み合わせた構成であり、ケーシング110の中央部には略円筒形のノズルガイド111が形成してあり、ノズルガイド111の一端には先端開口112が設けてある。
【0039】
ノズルガイド111の先端開口112の上部には、上下に回動自在なノズルシャタ140が枢支されており、ノズルユニット200をノズルガイド111に収納した状態で先端開口112を閉塞する。ノズルシャタ140はノズルユニット200が洗浄位置に進出するときには、ノズルユニット200の先端が押進することにより上方に開放され、ノズルユニット200を収納位置に収納したときはノズルシャタ140の自重で下方に回動して閉塞する構成である。
【0040】
ノズルガイド111内には円筒形のノズルユニット200が摺動自在に設置してあり、図2に示すように、ノズルユニット200をノズルガイド111内に収容した収納位置と、図3(a)および図4(a)に示すように、ノズルユニット200が先端開口112より突出したビデ洗浄位置およびお尻洗浄位置の2カ所の洗浄位置間を進退可能となっている。
【0041】
図5(a)および(b)に示すように、ノズルユニット200は略円筒形のノズル本体300と、ノズル本体300を収容する略円筒形状のノズルカバー400と、ノズルカバー400でノズル本体200を牽引する連結手段500で構成している。ノズルカバー400はノズルカバー本体410とノズルラックブロック420とが一体となって構成されている。ノズルカバー本体410はステンレスの薄板を円筒状に形成したものであり、先端面は閉塞面をなし、後端面は開放面となっており、後端面よりノズル本体300が挿入可能な形状をなしている。
【0042】
ノズル本体300とノズルカバー400とは相互に摺動可能な構成をなしており、ビデ洗浄位置とお尻洗浄位置において、ノズル本体300とノズルカバー400とは、連結手段500によって所定の相対位置に停止する構成となっている。図3(b)に示すように、ノズルカバー本体410の上面には1個の噴出開口411が設けてあり、ビデ洗浄位置においてはノズル本体300のビデ洗浄噴出口340と重合して配置される。また、図4(b)に示すように、お尻洗浄位置においてはお尻洗浄噴出口320に重合するようになっている。噴出開口411はビデ洗浄噴出口340およびお尻洗浄噴出口320より開口が大きく、洗浄水が噴出開口411に当たって噴出に支障が生ずることがない構成となっている。
【0043】
図5(b)に示すように、ノズルカバー本体410の下面後方には、ノズルラックブロック420と嵌合するスリット状のラック開口が設けてあり、下面前方にはノズルカバー本体410内の洗浄水を排出する排水口412が設けてある。また、ノズルラックブロック420の下面には略全長に亘って歯型状のラック421が形成されている。
【0044】
ノズル本体300はノズルカバー400の内径より僅かに小さい外径であり、ノズル本体300とノズルカバー400が互いにスムーズに摺動可能な寸法関係となっている。
【0045】
また、図3(a)および図4(a)に示すように、ケーシング110の下部にはノズル駆動手段113が設置してある。ノズル駆動手段113は駆動モータ114と複数の変速ギア(図示せず)とピニオンギア115を備え、ピニオンギア115はノズルカバー400を構成するノズルラックブロック420の下面に設置したラック421と噛合する位置に設置してある。駆動モータ114の回転は変速ギアを介して回転数を落としてピニオンギア115に伝達され、ピニオンギア115が回転することにより、ラック421を有するノズルカバー400が摺動可能な構成となっている。駆動モータ114は制御手段(図
示せず)に接続してあり、制御手段により運転が制御される。また、駆動モータ114の後部には駆動モータ114の回転数を検知する回転検知センサ(図示せず)が設置してある。
【0046】
<3>ノズル本体の構成
図6はノズル本体の先端部の詳細な断面図を示し、図7はノズル本体の先端部の断面斜視図を示すものである。
【0047】
図5(b)および図6に示すように、樹脂材料で成型したノズル本体300の内部には、ノズル本体300の軸心と略平行にお尻洗浄流路310と、ビデ洗浄流路330の2本の流路が形成されており。お尻洗浄流路310はノズル本体300の下部に、ビデ洗浄流路330はノズル本体300の上部に配置されている。お尻洗浄流路310とビデ洗浄流路330の後端部には、洗浄水供給手段より供給される洗浄水が流入するお尻洗浄水供給口319とビデ洗浄供給口339が設けられている。
【0048】
また、ノズル本体300の先端部の上面にはお尻洗浄噴出口320が設けてあり、お尻洗浄噴出口320より後端側にビデ洗浄噴出口340は設けてある。以降、ノズル本体の先端部の方向を先端側、後端部の方向を後端側として説明を行う。
【0049】
お尻洗浄流路310は約φ3.0〜3.5mmの流路がノズル本体300の後端部から先端部近傍までノズル本体300の軸心と略平行に配置してあり、図6に示すように、その先端は上方に略直角に屈曲する屈曲部311を介してお尻洗浄噴出口320の直下に配設した略円筒形の主水路312に連接し、主水路312はノズル本体300の上面に設けたお尻洗浄噴出口320に連接している。
【0050】
図7に示すように屈曲部311の流路の約半分は、流路の外側を緩やかな湾曲面で形成し、お尻洗浄流路310と主水路312を滑らかに連接する湾曲部313で形成されており、残りの半分は角立てて流路の方向を略直角に変更している。屈曲部311をこのような形状に形成することにより、流路の場所に流速が異なるため、洗浄水に旋回成分を付与することができる。
【0051】
主水路312はお尻洗浄流路310と断面積が略等しい円筒形であり、その上端はお尻洗浄噴出口320に連接している。
【0052】
お尻噴出口320は、図7に示すように元の部分は開口面積の小さい直径約1.5〜1.7mmの小孔部321と先端部分は開口面積の大きい直径約1.9〜2.1mmの大孔部322からなる二段形状で形成されている。
【0053】
開口面積の大きい主水路312と、開口面積の小さいお尻洗浄噴出口320の小孔部321との連接部には段差部314が形成されており、段差部314の外周部には主水路312の外周壁に沿って間隙315が設けられている。間隙315の奥端は主水路312の上方に設けた圧力連通室316に連通している。圧力連通室316は小孔部321を周回するように円環状に形成されており、全周に亘り間隙314と連通している。間隙315と圧力全通室316とで圧力連通路317を形成したことにより、主水路312から段差部314の特定の箇所に加えられた高い圧力は、圧力連通路317を介して段差部314の対向する箇所に伝えられ、その部分の圧力を高める機能を備えている。
【0054】
また、お尻洗浄噴出口320は、その軸心の上方が主水路312の軸心に対し約7度ノズル本体300の後端側に傾斜するように形成されている。このように形成することにより、洗浄水は小孔部321の後端側の壁面で剥離しやすくなるとともに先端側で付着しや
すくなり、水流のバランスを崩すことができるため、振動流を発生しやすくすることができる。
【0055】
小孔部321と大孔部322が切り替わる角の部分は略直角に切り立ったエッジ形状で形成されている。エッジ形状で形成することにより、流れの剥離が起こりやすく、小孔部321から噴出した洗浄水の一部が大孔部322の側壁に付着することにより、大孔部322から噴出する振動流の脈動を増幅して噴出する。振動流となった洗浄水が局部に当たることで、洗浄力が高まるとともに人体に強い洗浄であるという感覚が生じるため、実際に局部にかかる荷重よりも強く感じ、高い満足感を与える効果が生まれる。
【0056】
ビデ洗浄流路330はノズル本体300の後端部から先端部近傍まで約3.0〜3.5mmの流路径でノズル本体300の軸心と略平行に配置してあり、途中で流路径をφ1.0〜1.5mm程度まで絞ったオリフィス331を経由して先端部はビデ洗浄噴出口340の下方に配置された水室332を介して上方に略直角に屈曲し、ビデ洗浄噴出口340に連接している。
【0057】
水室332はビデ洗浄流路330より広い断面積を有し、その先端側は上方に湾曲する湾曲面で形成されており、ビデ洗浄流330から流入した洗浄水は、水室332内で流速を落として洗浄水の脈動成分を低減させた状態で、湾曲面に沿ってビデ洗浄噴出口340に流入する。
【0058】
ビデ洗浄噴出口340は、入り口側は直径約1.8mmの円筒形であり、約半分より出口側は徐々に拡開している。ビデ洗浄噴出口340の入り口部分には全周に亘り小さな局面で形成されており、水室331から流入する洗浄水を滑らかに安定して流入させるとともに、脈動成分の少ない洗浄水を噴出することができる。
【0059】
上記構成のノズル本体300を形成するために、本実施の形態においてはノズル本体300を3個の部品で形成している。図6に示すようにお尻洗浄流路310とビデ洗浄流路340を一体で成型したノズル本体基材301に、お尻洗浄噴出口320とビデ洗浄噴出口340を備えたノズル蓋部材302と、お尻洗浄流路310の屈曲部311形成するノズル底部材303とを溶着により接合した構成となっている。
【0060】
特に、主水路312とお尻洗浄噴出口320との連接部に形成される間隙314と圧力連通路314は、ノズル本体基材301とノズル蓋部材302との接合部に間隙を設けることにより形成されており、各この部分の各部品の寸法精度と組み立て精度は重要である。
【0061】
<4>ノズル装置の動作および作用
以上のように構成されたノズル装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0062】
まず、図2にて示すノズルを使用しない収納状態においては、ノズルカバー400はノズルガイド111の最も後部に位置し、ノズル本体300も摺動範囲の最も後部に位置しており、ノズル本体300、ノズルカバー400ともに最も後退した位置に配置されおり、この位置を収納位置と称し、この状態を収納状態と称する。この時、ノズルカバー400の噴出開口411はノズル本体300のビデ洗浄噴出口340と重合した状態になっている。
【0063】
収納状態から洗浄を開始する際には、まず、使用者がリモートコントローラ60を操作することにより、制御手段が制御を開始し、駆動モータ114の回転が複数の変速ギアを介してピニオンギア115に伝えられることによりピニオンギア115と噛み合ったラッ
ク421を有するノズルカバー400を後方に移動させようとするが、ノズルカバー400はこれ以上後方に移動できないため、その前後方向の位置は変化しない。この位置を原点としてこれ以降のノズルカバー400の位置は駆動モータ114の回転数を回転数検知センサで検知することで、ノズルカバー400の移動量を推定しながら位置制御することが可能となる。
【0064】
次に駆動モータ114を逆回転させてノズルカバー400を前方に移動させる。このときノズル本体300は連結手段500によってノズルカバー400に牽引され一体化した状態で前方に移動する。
【0065】
使用者の操作がビデ洗浄の操作であった場合は図3(a)に示すように、前方に移動したノズルカバー400およびはノズル本体300、あらかじめ設定しておいた制御シーケンスに従い、原点状態からの駆動モータ114の回転数が設定値に達すると停止する。この状態においてビデ洗浄噴出口340は噴出開口411の略中央に配置されており、噴出開口411の縁部でビデ洗浄噴出口340を隠蔽することはない。
【0066】
この状態で、制御手段は洗浄水供給手段を制御し、ビデ洗浄流路340に通水することでビデ洗浄が開始される。ビデ洗浄噴出口340から噴出した洗浄水は噴出開口411を通過して噴射される。洗浄流路の切り替えおよび流量の調節は洗浄水供給手段によって行われる。
【0067】
洗浄水供給手段より供給された脈動を伴う洗浄水は、洗浄水供給口339を介してビデ洗浄流路330に流入し、ビデ洗浄流路330からオリフィス331を通過して水室331に流入する。この間オリフィスを通過した直後と水室に流入した直後に洗浄水は流速が遅くなるとともに、洗浄水に渦流が発生し撹拌されることで洗浄水供給手段の脈動感を低減させることができる。
【0068】
水室331よりビデ洗浄噴出口340に流入する洗浄水は入り口部分の全周に亘り設けられた局面により安定して流入させることができるとともに、外側に向かって拡大しているビデ洗浄噴出口340から噴出される洗浄水は脈動成分の少ない洗浄水を噴出することができ、柔らかな洗浄感を提供できる。
【0069】
この時、お尻洗浄噴出口320はノズルカバー本体410によって覆われている状態であり、ビデ洗浄によって生じた汚水が直接かからないため、清潔に保たれる。
【0070】
ビデ洗浄の停止を操作すると、駆動モータ114は逆回転し、ノズルカバー400およびノズル本体300は後方へ移動し、元の収納位置に戻る。
【0071】
次に、使用者がお尻洗浄を選択した場合、ビデ洗浄と同様にノズルカバー400の原点位置を確認した後、前方へ移動するように駆動モータ114が回転し、ノズルカバー400ノとズル本体300を前方に移動させるのはビデ洗浄の場合と同じであるが、お尻洗浄の場合はビデ洗浄位置を越えてさらにノズルカバー400を前方に移動させてゆく。
【0072】
このとき、ノズル本体300はノズルガイド111に設けた前ストッパに当接し、ノズル本体300はこれ以上前に移動することを規制する。さらにノズルカバー400を前方に移動させると連結手段500の連結が、ノズル本体300とノズルカバー400は分離された状態となり、ノズルカバー400だけが前方に移動し、図4(b)に示すように噴出開口411がお尻洗浄噴出口340と重合し、お尻洗浄噴出口340は噴出開口411の略中央に配置された状態となる。この時点でノズルカバー400の前方移動が終了し、駆動モータ114を停止させる。この状態がお尻洗浄位置となる。
【0073】
上記お尻洗浄位置にノズルカバー400が到達した時点で、制御手段は洗浄水供給手段を制御し、お尻洗浄水供給口319を介してお尻洗浄流路310に通水を開始することでお尻洗浄が開始される。お尻洗浄噴出口320から噴出した洗浄水は噴出開口411に直接接触することなく通過して噴射される。洗浄流路の切り替えおよび流量の調節は洗浄水供給手段によって行われる。
【0074】
お尻洗浄流路310に流入した洗浄水は、屈曲部311を介して主水路312へ流入するが、屈曲部311の一部に形成された湾曲部313により、洗浄水に旋回成分が付与される。
【0075】
図8(a)および(b)は、洗浄水が主水路312からお尻洗浄噴出口320に流入して噴出するまでの作用を説明するための模式図であり、図8(a)はお尻噴出口の振動作用を説明する模式図、図8(b)は圧力連通路の連通作用を説明する模式図である。
【0076】
図8(a)に示すように、主水路312に供給された洗浄水は、矢印Aに示すようにお尻洗浄噴出口320へ流入するが、主水路312より小孔部321の開口面積が小さいため、段差部314の全周に亘り渦が発生するが、発生する渦は一様ではなく、本実施の形態の場合、特にお尻洗浄噴出口320を後端側に傾斜させているため、後端側の渦Bが先端側の渦B’より強くなり、後端側の水圧が高くなる。また、小孔部321に流入した洗浄水は後端側は矢印Cに示すように壁面より剥離した流れとなり、先端側は矢印Dに示すように壁面に付着した流れとなる。
【0077】
一方、段差部314で後端側と先端側で圧力差が発生したことにより、後端側の高い圧力は間隙315を介して圧力連通回室315伝わり、圧力連通回室315内の高い圧力は矢印Eで示す方向の2次流により伝搬される。先端側まで伝搬された高い圧力は、間隙314を介して渦B’に伝わり、渦B’の圧力が高くなる。そして、先端側の渦B’の圧力が高くなり、後端側の渦Bの圧力が低くなることにより、先端側の流れが壁面から剥離し、後端側の流れが壁面に付着する流れとなる。
【0078】
流れの剥離と付着が入れ替わることにより、段差部314の渦の発生および圧力も変化し、今度は先端側の高い圧力が間隙315と圧力連通室316からなる圧力連通路317を介して矢印Fで示す方向の2次流により後端側に伝搬される。
【0079】
このように前端側と後端側で、付着と剥離を交互に発生し、この動作が繰り返されることにより、洗浄水は振動流となり、洗浄範囲が広くなるとともに、高速にスイッチングされることにより分断されて脈動状態となる。
【0080】
小孔部321から大孔部322に流入した洗浄水は、小孔部321と大孔部322が切り替わる角の部分にエッジ形状を形成したことにより、この段差部で渦を発生し、小孔部321の圧力変動をさらに大きく増幅することにより、大孔部322から噴出する噴流は強い脈動を備えることにより、洗浄力が高まるとともに人体に強い洗浄であるという感覚が生じるため、実際に局部にかかる荷重よりも強く感じ、高い満足感を与える効果が生まれる。
【0081】
この時、ビデ洗浄噴出口340の上部はノズルカバー本体410によって覆われている状態であり、お尻洗浄によって生じた汚水がビデ洗浄噴出口340に直接かからないため、ビデ洗浄噴出口340は清潔に保たれる。
【0082】
お尻洗浄の停止を操作すると、駆動モータ114は逆回転し、ノズルカバー400およ
びはノズル本体300を後方へ移動を開始する。収納のために後方へ移動する途中過程において、ノズル本体300の後端はノズルガイド111の後部に設けた後ストッパに当接し、ノズル本体300はこれ以上後に移動することが規制される。さらにノズルカバー400を後方に移動させると連結手段500の連結が外れ、ノズル本体300とノズルカバー400は分離された状態となり、後ストッパによって移動を規制されたノズル本体300に対して、ノズルカバー400だけが後方に移動し、噴出開口411がビデ洗浄噴出口340と重合する状態となる。この時点でノズルカバー400はこれ以上後方へ移動できなくなり、駆動モータ114は停止する。
【0083】
以上のように、本実施の形態においては、洗浄水を噴出するお尻洗浄噴出口320とビデ洗浄噴出口340とそれぞれの噴出口に洗浄水を供給する流路を備えたノズル本体300と、ノズル本体300を覆い1個の出開口411を有する筒状のノズルカバー400と、ノズル本体300とノズルカバー400を連結する連結手段500と、ノズル本体300とノズルカバー400からなるノズルユニット200とを収納するノズルガイド111と、ノズルカバー400の進退を駆動するノズル駆動手段113とを備え、ノズル本体300とノズルカバー400は相互に摺動可能な構成とし、使用する噴出口に噴出開口411を重合させるようにノズルカバー400を摺動させ、噴出開口411を介して噴出する構成とすることにより、複数の噴出口を有するノズル本体300であっても噴出開口411は1個で済み、汚れの付着しやすい箇所が最小限となるので、清潔性が向上する。また、未使用側の噴出口はノズルカバー400により覆われているため、洗浄により汚れた洗浄水でノズル本体300が汚染されることがなく衛生的である。
【0084】
しかも、噴出開口411が必要最小限のため、見栄えもすっきりとし、ノズルカバー400も簡単な構成となるため低コスト化を図ることができる。
【0085】
また、ノズル本体300とノズルカバー400は連結手段500を介して連動し、相対位置を切り替えることができる構成となっているため、1個のノズル駆動手段113で2個の駆動対象をそれぞれの最適位置まで駆動でき、装置の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0086】
また、お尻洗浄流路310の屈曲部311に湾曲部313を形成し、主水路312とお尻洗浄噴出320との段差部314に間隙315と圧力連通室からなる圧力連通路317を設け、主水路312とお尻洗浄噴出口320との軸心を傾けて接合し、お尻洗浄噴出口320を二段形状に形成した構成は、いずれも小型でシンプルな構成であり、これらの構成を採用することにより、お尻洗浄噴出口320から洗浄水を振動流として噴出させることができる。そして、振動流となった洗浄水が局部に当たることで、洗浄力が高まるとともに人体に強い洗浄であるという感覚が生じるため、実際に局部にかかる荷重よりも強く感じ、高い満足感を与える効果が生まれる。
【0087】
なお、湾曲部、圧力連通路、傾斜した接合、二段形状等の構成要素は振動流を発生させるために寄与する機能を個々に備えたものであり、これらの全ての構成要素が揃っていなくても少なくとも2個以上の構成要素の組み合わせで振動流を発生させることは可能である。
【0088】
また、ビデ洗浄流路330の断面積より広い水室331を備え、ビデ洗浄噴出口340の入口部分を全周に亘り局面で形成したことにより、ビデ洗浄噴出口から噴出する洗浄水を脈動成分の少ない洗浄水として噴出することができ、快適なビデ洗浄を提供することができる。
【0089】
なお、本実施の形態においては、本実施の形態においては、間隙は主水路の全周に亘っ
て設けたが、これに限るものではなく、少なくとも小孔部に対して対向する2カ所に設ければよい。
【0090】
また、本実施の形態においては、ノズルユニットはノズル本体とノズルカバーの2個の構成部品で構成したが、これに限るものではなく、ノズル本体のみで構成してもよい。
【0091】
また、本実施の形態においては、ノズル本体には、お尻洗浄の機能とビデ洗浄の機能の2つの機能を備えた構成としたが、これに限るものではなく、お尻洗浄またはビデ洗浄の単独の機能のみを備えた構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明にかかるノズル装置は、洗浄力と洗浄感の高い洗浄水を噴出できるノズル装置を小型で簡単な構成とすることが可能となるため、局部洗浄以外のあらゆる洗浄装置などの用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0093】
10 衛生洗浄装置
40 便座
70 便器
300 ノズル本体
310 お尻洗浄流路(流路)
311 屈曲部
312 主水路
313 湾曲部
320 お尻洗浄噴出口(噴出口)
321 小孔部
322 大孔部
330 ビデ洗浄流路(流路)
340 ビデ洗浄噴出口(噴出口)
400 ノズルカバー
411 噴出開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体と、
前記ノズル本体の内部に配設した流路と、
前記ノズル本体の先端部に設置され、洗浄水を噴出する噴出口と、
前記噴出口に連通し、洗浄水を供給する略円筒形状の主水路と、
前記流路と前記主水路を略直角に連接する屈曲部とを含み、
前記噴出口は、元の部分の開口面積の小さい小孔部と、先端部分の開口面積の大きい大孔部を連接した二段形状の構成とし、
前記屈曲部の一部に前記流路と前記主水路とを湾曲面で連接する湾曲部を備えた、ノズル装置。
【請求項2】
前記主水路と前記噴出口は、相互の軸心が所定の角度で交差するように連接された、請求項1に記載のノズル装置。
【請求項3】
前記主水路と前記噴出口とは、相互の軸心が5度〜10度の範囲で交差するように連接された、請求項2に記載のノズル装置。
【請求項4】
ノズル本体の少なくとも一部を覆う筒状のノズルカバーを備え、
前記ノズル本体とノズルカバーは相互に摺動可能な構成とし、
前記ノズルカバーには前記ノズル本体の少なくとも1個の噴出口に対応する噴出開口を有し、
前記噴出口から噴出する洗浄水は前記噴出開口を介して噴出する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のノズル装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のノズル装置と、
ノズル装置に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、
ノズル装置と洗浄水供給手段を制御する制御手段と、
便器の上面に載置する便座を備えた、衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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