説明

ノック式ボールペン

【課題】 ノック操作時において、段部であるインキ収容管の先端縁がレフィールスプリング先端に形成された座巻部の最小径部や、更には先口の内部に形成されたレフィールスプリングの先端が係止する段部に引っかかることがなく、ノック操作のフィーリングが良好なノック式ボールペンを提供する。
【解決手段】 レフィール30がレフィールスプリング40にて尾端側に弾発された状態で軸筒10内に収容され、ノック操作によりチップ33の先端が先口20の先端開口21から突出して筆記可能になるノック式ボールペンにおいて、レフィールスプリングの前端に先方が広がったテーパー状の座巻部41を形成してこの座巻部の先端を先口内の段部22に係止させ、チップが先口内に没入した待機状態にあるときは、インキ収容管31の先端縁31aが座巻部の最小径部41aり前方に位置するようにする。また、インキ収容管の先端縁が先口内の段部より前方に位置するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノック操作により軸筒内に収容されたレフィールが前進し、レフィール先端のチップが先口の先端開口から突出して筆記可能になるノック式のボールペンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノック式ボールペン、ことに油性インキを使用するノック式ボールペンは、先端部にボールを回転自由に抱持したチップがインキ収容管に圧入されたレフィールがレフィールスプリングで尾端側に弾発された状態で軸筒内に前後動可能に収容されており、ノック操作によりチップの先端部が先口の先端開口から突出して筆記可能になるが、待機時においてチップが先口内に没入しているのでキャップが不要であって使いやすいこともあって、数多く実用化されている。
【特許文献1】特開2003−154787公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図2はノック式ボールペンの従来例を示すが、レフィール30の先端部分はコイルスプリングであるレフィールスプリング40の内部に挿入されており、このレフィールスプリング40によりレフィー30は尾端側に弾発されている。レフィールスプリング40の先端は先口20の内部に形成された段部22に係止しているが、レフィールスプリング40の先端部は先方が広がったテーパー状の座巻部41になっている。したがって、レフィール30が前進するとき、座巻部41の最小径部41aとインキ収容管31との隙間は極く僅かになる。一方、チップ33はインキ収容管31の先端開口部に圧入されているので、インキ収容管31の先端縁31aは段部となる。このため、ノック操作によりレフィール30が前進するとき、少し横振れしながら前進すると段部であるインキ収容31の先端縁31aがレフィールスプリング40先端の座巻部41の最小径部41aに接触したり引っかかることがある。したがって、ノック操作をスムーズに行うことができず、ノック操作のフィーリングが著しく阻害される。
また、座巻部41の最小径部41aをインキ収容管31の先端縁31aを通過しても、それ以降の前進時において横振れが大きいときはインキ収容管31の先端縁31aが先口20内部の段部22に引っかかることがあり、この場合も、ノック操作のフィーリングが著しく阻害される。
【0004】
そこで本発明は、ノック操作時において、段部であるインキ収容管の先端縁がレフィールスプリング先端に形成された座巻部の最小径部や、更には先口の内部に形成されたレフィールスプリングの先端が係止する段部に引っかかることがなく、ノック操作のフィーリングが良好なノック式ボールペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、請求項1の発明は、ボールを回転自由に抱持したチップがインキ収容管の先端開口に圧入されたレフィールが、軸筒の先端に配置された先口の内部に形成された段部とレフィールの係止突部の間に介装されたレフィールスプリングにて尾端側に弾発された状態で軸筒内に収容され、ノック操作によりチップの先端が先口の先端開口から突出して筆記可能になるノック式ボールペンにおいて、レフィールスプリングの前端に先方が広がったテーパー状の座巻部を形成してこの座巻部の先端を先口内の段部に係止させ、チップが先口内に没入した待機状態にあるときは、チップが圧入されたインキ収容管の先端縁が座巻部の最小径部より前方に位置するようにする。
【0006】
また、請求項2の発明は、前記のノック式ボールペンにおいて、チップが先口内に没入した待機状態にあるときは、チップが圧入されたインキ収容管の先端縁が先口内の段部より前方に位置するようにする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明においては、チップが先口内に没入した待機状態にあるときにおいても、チップが圧入されたインキ収容管の先端縁が座巻部の最小径部より前方に位置するので、ノック操作によりレフィールが前進するとき、段部であるインキ収容管の先端縁が座巻部の最小径部に接触したり引っかかることがなく、ノック操作時において良好なフィーリングを得ることができる。
【0008】
また、請求項2の発明は、チップが先口内に没入した待機状態にあるときに、インキ収容管の先端縁がレフィールスプリングの前端が係止する先口内の段部より前方に位置するので、ノック操作によりレフィールが前進するとき、インキ収容管の先端縁は座巻部の最小径部のみでなく、先口内の段部にも引っかかることがなく、ノック操作時において更に良好なフィーリングを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1において、合成樹脂で成形された軸筒10の先端部に先端開口21を有する円錐状の先口20が螺着されており、軸筒10の尾端部にはクリップ51が一体に成形された尾端部材50が接続されている。先口20の内部には、レフィールスプリング40の前端が係止する段部22が形成されている。軸筒10の先端側の外周には、シリコンゴムなどの軟弾性樹脂からなるグリッパー11が嵌め込まれている。
【0010】
軸筒10内にボールペンのレフィール30が収容されており、レフィール30尾端部は回転子60に入り込むようにして当接している。尾端部材50の尾端開口からノック部材70が突出しており、このノック部材70と回転子60、および内面にカム溝が形成された尾端部材50でレフィール出没メカを構成している。このレフィール出没メカは周知のダブルノック式出没機構であり、ノック操作によりノック部材70を押圧すると回転子60に回転力を付与しながら前進させ、回転子60が尾端部材50のカム溝のカム面に係止すると、先口20の先端開口21から突出したチップ33の先端で筆記可能になる。この状態から再びノック操作を行うと、回転子60と尾端部材50のカム溝のカム面との係止が解除され、チップ33は先口20内に没入するが、出没機構は回転子によるダブルノック式に限られるものではない。
【0011】
レフィール30のインキ収容管31は合成樹脂のパイプからなり、油性インキが充填されている。また、インキ収容管31の中腹部には、パイプを少し圧壊することにより係止突部32が形成されている。チップ33はステンレスにより砲弾型に成形されており先端のボールハウス内に例えば超硬合金からなる外径が0.5mmのボール34が回転自由に抱持されている。このチップ33の後端部がインキ収容管31の先端開口に圧入されている。したがって、インキ収容管31の先端縁31aは高さがパイプの肉厚に等しい円環状の段部になっている。
【0012】
レフィールスプリング40はコイルスプリングであり、インキ収容管31の係止突部32と先口20内の段部22の間に介装されており、インキ収容管31の前端部がレフィールスプリング40内に挿入されたてレフィール30を尾端側に弾発している。段部22に係止するレフィールスプリング40の先端部は先方が広がったテーパー状の座巻部41になっている。したがって、レフィール30が前進するとき、座巻部41の最小径部41aとインキ収容管31との隙間は極く僅かになる。ここで、チップ33が先口20内に没入している待機状態において、インキ収容管31の先端縁31aは、レフィールスプリング40の座巻部41の最小径部41aよりも前方に位置しており、更に好ましくは、先口20内の段部22よりも前方に位置している。このとき、インキ収容管31の先端縁31aと先口20内の段部22との距離Xは0.5mm程度である。
【0013】
しかして、チップ33が先口20内に没入している待機状態からノック操作を行うと、レフィール30が前進してチップ33の先端が先口20の先端開口21から突出して筆記可能になるが、チップ33の尾端部が圧入されたインキ収容管31の先端縁31aが座巻部41の最小径部41aより前方に位置するので、ノック操作によりレフィール30が前進するとき、レフィール30が横に振れても段部であるインキ収容管31の先端縁31aが座巻部41の最小径部41aに接触したり引っかかることがなく、ノック操作時において良好なフィーリングを得ることができる。
また、チップ33が先口20内に没入した待機状態にあるときに、インキ収容管31の先端縁31aがレフィールスプリング40の前端が係止する先口20内の段部22より前方に位置するするようにすれば、ノック操作によりレフィール30が前進するとき、インキ収容管31の先端縁31aは座巻部41の最小径部41aのみでなく、先口20内の段部22にも引っかかることがなく、ノック操作時において更に良好なフィーリングを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明実施例の断面図である。
【図2】従来例の断面図である。
【符号の説明】
【0015】
10 軸筒
11 グリッパー
20 先口
21 先端開口
22 段部
30 レフィール
31 インキ収容管
31a インキ収容管の先端縁
32 係止突部
33 チップ
34 ボール
40 レフィールスプリング
41 座巻部
41a 座巻部の最小径部
50 尾端部材
51 クリップ
60 ノック部材
70 回転子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にボールを回転自由に抱持したチップがインキ収容管の先端開口に圧入されたレフィールが、軸筒の先端に配置された先口の内部に形成された段部とレフィールの係止突部の間に介装されたレフィールスプリングにて尾端側に弾発された状態で軸筒内に収容され、ノック操作により該チップの先端が先口の先端開口から突出して筆記可能になるノック式ボールペンにおいて、
前記レフィールスプリングの前端に先方が広がったテーパー状の座巻部が形成されて該座巻部の先端が先口内の段部に係止し、チップが先口内に没入した待機状態にあるときは、チップが圧入されたインキ収容管の先端縁が該座巻部の最小径部より前方に位置することを特徴とするノック式ボールペン。
【請求項2】
先端部にボールを回転自由に抱持したチップがインキ収容管の先端開口に圧入されたレフィールが、軸筒の先端に配置された先口の内部に形成された段部とレフィールの係止突部の間に介装されたレフィールスプリングにて尾端側に弾発された状態で軸筒内に収容され、ノック操作により該チップの先端が先口の先端開口から突出して筆記可能になるノック式ボールペンにおいて、
前記チップが先口内に没入した待機状態にあるときは、チップが圧入されたインキ収容管の先端縁が該先口内の段部より前方に位置することを特徴とするノック式ボールペン。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−264095(P2006−264095A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85127(P2005−85127)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)
【Fターム(参考)】