説明

ノック式筆記具

【課題】 レフィールを軸筒から抜き去った状態で軸筒の先端を下向きにするとき、レフィール出没メカに不用意に先端方向の力が働きにくくて、レフィール出没メカは軸筒内に落ちむことがなく、レフィールの交換が容易なノック式の筆記具を提供する。
【解決手段】 回転子6とノック部材7とからなるレフィール出没メカが軸筒10内に配置されたノック式筆記具において、レフィール交換時において、レフィール4が抜き取られた軸筒の先端を下向きにしたときに、レフィール出没メカが軸筒内に深く落下するのを防止する微小な突起であるストッパー段部32を軸筒内に形成し、かつレフィール出没メカがストッパー段部に係合したとき、ノック部材の尾端面7aが軸筒の尾端面3aより少し内側に位置するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子とノック部材からなるダブルノック式のレフィール出没メカを有するノック式筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノック式筆記具、例えばノック式ボールペンは回転子とノック部材からなるダブルノック式レフィール出没メカが多用されている。この出没メカは、レフィール先端の軸筒先端開口からのペン体部の突出操作および没入操作とも、軸筒の尾端から突出するノック部材を押圧する同じノック操作により行うことができる利点を有する。
【0003】
かかるレフィール出没メカは、周知のとおり、スプリングにより尾端側に弾発されたレフィールの後端が回転子に当接しており、尾端部が軸筒の尾端開口から突出したノック部材を押圧するノック操作を行うと、ノック部材の前端カム歯が回転子に縦突起状に形成されたカム歯に歯合して回転子に回転力を付与するとともに、回転子を軸筒内に形成された突部と突部の間の縦溝に沿って前進させる。回転子のカム歯が縦溝を抜け出すと、レフィール先端のペン体部が軸筒の先端開口から突出し、回転子はフリー状態になるので回転方向に僅かに回転する。このとき、縦溝を構成する突部の先端が回転子のカム歯の傾斜面に沿って相対的に摺動し、回転子は僅かに後退するが、縦溝を構成する突部の先端が回転子のカム歯に係止すると筆記可能になる。そして、筆記終了後、再びノック操作を行うと、前述と逆の作動でペン体部が軸筒内に没入する。
【特許文献1】特開2003−154787公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで最近は、筆記可能距離を長くするために、レフィールのインキ収容管をできるだけ長くして内蔵インキ量を多くする設計が行われることが多いが、筆記具の全長はほぼ一定であるので、その分、レフィールの尾端側に配置されるレフィール出没メカは短くなる傾向にある。
【0005】
スプリングで尾端側に弾発されたレフィールが当接するために尾端側に弾発されたレフィール出没メカは、軸筒の尾端開口から抜け落ちないように設計されているが、レフィール交換時に、レフィールを軸筒から抜き去った状態で軸筒の先端を下向きにすると、レフィールによる押圧力が解除されたレフィール出没メカは軸筒内に落ち込んでしまう。ことに短いレフィール出没メカの場合は、軸筒内に奥深く落ち込んでレフィールの交換が極めて困難になることがある。
【0006】
このため、軸筒内に内向き段部であるストッパー段部を形成し、軸筒の先端を下向きにしたときに、レフィール出没メカがこのストッパー段部に引っかかってそれ以上落ち込まないようにすればよい。しかし、軸筒内に内向き段部を形成すると、組立時にレフィール出没メカを軸筒内に挿入するとき、内向き段部が干渉して組立が困難になり、金型による成形時に中子型の型抜きが困難になるので、このストッパー段部は微小な内向き段部にする必要がある。したがって、レフィール出没メカがこのストッパー段部に引っかかっても、その引っかかり力は弱く、レフィール出没メカに不用意に先端方向の力が働くと、レフィール出没メカはストッパー段部を乗り越えて軸筒内に奥深く落ち込んでしまう不具合がある。
【0007】
そこで本発明は、レフィールを軸筒から抜き去った状態で軸筒の先端を下向きにするとき、レフィール出没メカに不用意に先端方向の力が働きにくくて、レフィール出没メカは軸筒内に落ちむことがなく、レフィールの交換が容易なノック式の筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、尾端側に弾発されたレフィールの後端に当接する回転子、およびノック操作により回転力を付与しながら回転子を前進させてレフィール先端のペン体を軸筒の先端開口から突出させるノック部材とからなるレフィール出没メカが軸筒内に配置されたノック式筆記具において、レフィール交換時において、レフィールが抜き取られた軸筒の先端を下向きにしたときに、レフィール出没メカが軸筒内に深く落下するのを防止する微小な突起であるストッパー段部を軸筒内に形成し、かつレフィール出没メカがストッパー段部に係合したとき、ノック部材の尾端面が軸筒の尾端面より少し内側に位置するようにする。
【発明の効果】
【0009】
軸筒内に微小な突起であるストッパー段部を軸筒内に形成したので、レフィール交換時において、レフィールが抜き取られた軸筒の先端を下向きにしたときに、回転子およびノック部材からなるレフィール出没メカはこのストッパー段部に引っかかり、軸筒内に深く落下しない。また、このとき、ノック部材の尾端面が軸筒の尾端面より少し内側に位置するので、指先などでノック部材の尾端面を先端側に不用意に押すことがなく、ストッパー段部が微小な突起であってもレフィール出没メカがストッパー段部を乗り越えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図面はボールペンに本発明を適用した例を示すが、図1において、合成樹脂で筒状に成形された軸本体1の先端側の開口に先端開口21を有する円錐状の先端部材2が着脱可能に螺着されおり、軸本体1の尾端側の開口には尾端部材3が嵌合されている。そして、軸本体1、先端部材2および尾端部材3で軸筒10を構成している。尾端部材3にはクリップ5が一体に成形されている。そして、尾端部材3の尾端側の内周面には複数本の縦溝31が形成されており、尾端部材3の先端側の内周面には、円環状の突起であるストッパー段部32が形成されている。ストッパー段部32の高さは、例えば0.1〜0.3mm程度の微小なものである。また、軸本体1先端側の外周面に、シリコンゴムなどの軟弾性樹脂からなるグリッパー11が嵌め込まれている。
【0011】
軸筒10内にはボールペンレフィール4がスプリング42で尾端側に弾発された状態で収容されている。筆記可能距離を大きくするために、ボールペンレフィール4は長尺であり、その尾端部は回転子6に入り込むようにして当接している。この回転子6と次に説明するノック部材7がレフィール出没メカであるが、回転子6の外周面には縦突起である3本のカム歯61が形成されている。ノック部材7の先端縁には鋸歯を円環状にしたような前端カム歯71が形成されており、外周面には尾端部材3から抜け落ちるのを防止するストッパー72が形成されている。そして、回転子6はノック部材7内に嵌め込まれるように配置され、カム歯61が前端カム歯71に当接している。回転子6のカム歯61の尾端面、つまり前端カム歯71と当接する面は傾斜しており、ノック部材7が前進すると、回転子6は回転力を付与されて前進する。ノック部材7の尾端部は尾端部材3から突出しており、ボールペンレフィール4先端のペン体41が先端部材2内に没入しているときは、縦突起であるカム歯61は縦溝31に嵌まり込んでいる。
そして、図1に示す状態から、ノック部材7の尾端面7aを指先で押圧してノックするとボールペンレフィール4先端のペン体41が先端部材2の先端開口21から突出して筆記可能となり、再びノックするとペン体41が先端部材2内に没入することは、前に説明したとおりである。
【0012】
かかるノック式のボールペンを組み立てるときは、図2に示すように、先端部材2を軸本体1に螺着した後、軸本体1内にスプリング42、ボールペンレフィール4、回転子6、ノック部材7をこの順序で挿入し、軸本体1の尾端に尾端部材3を嵌合すればよい。軸本体1の尾端に尾端部材3を嵌合するとき、回転子6とノック部材7は尾端部材3内に入り込むが、ストッパー段部32はその高さが0.1〜0.3mm程度と微小であるために回転子6やノック部材7と干渉することはなく容易に組み立てることができる。また、尾端部材3の内周面に突出するストッパー段部3が微小であるために、尾端部材3を合成樹脂で成形するとき、中子型を割型にする必要がなく、一体の中子型であっても容易に型抜きすることができる。
【0013】
次に、ボールペンレフィール4を交換するときは、先端部材2を軸本体1から取り外し、使い切ったボールペンレフィール4を軸筒10から抜くが、軸本体1の先端側を下向きにすると、図3に示すように、ボールペンレフィール4による押圧が解除された回転子6とノック部材7からなるレフィール出没メカが落下し、縦突起状のカム歯61がストッパー段部32に係合し、それ以上落下しない。
【0014】
ここで、カム歯61がストッパー段部32に係合したとき、ノック部材7の尾端面7aは尾端部材3の尾端面3aよりも少し内側の位置にある。つまり、ノック部材7の尾端面7aは少なくとも5mmかそれ以上尾端部材3の尾端面3aからもぐり込んでいる。したがって、指先などで不用意にノック部材7の尾端面7aを先端側に押圧することがなく、カム歯61が微小なストッパー段部32に係合しているにもかかわらず、レフィール出没メカがストッパー段部32を乗り越えて更に落下することがない。このため、ボールペンレフィール4を容易に交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明実施例の断面図である。
【図2】本発明実施例の分解斜視図である。
【図3】レフィール交換時の説明図である。
【符号の説明】
【0016】
1 軸本体
10 軸筒
11 グリッパー
2 先端部材
21 先端開口
3 尾端部材
31 縦溝
32 ストッパー段部
3a 尾端部材の尾端面
4 ボールペンレフィール
41 ペン体
42 スプリング
5 クリップ
6 回転子
61 カム歯
7 ノック部材
71 前端カム歯
72 ストッパー
7a ノック部材の尾端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尾端側に弾発されたレフィールの後端に当接する回転子、およびノック操作により回転力を付与しながら回転子を前進させてレフィール先端のペン体を軸筒の先端開口から突出させるノック部材とからなるレフィール出没メカが軸筒内に配置されたノック式筆記具において、
レフィール交換時において、レフィールが抜き取られた軸筒の先端を下向きにしたときに、該レフィール出没メカが軸筒内に深く落下するのを防止する微小な突起であるストッパー段部を軸筒内に形成し、レフィール出没メカが該ストッパー段部に係合したとき、ノック部材の尾端面が軸筒の尾端面より少し内側に位置することを特徴とするノック式筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−205476(P2006−205476A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19028(P2005−19028)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)
【Fターム(参考)】