説明

ノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法

【課題】 含フッ素界面活性剤等の含有量を低減し、再利用可能なノニオン性界面活性剤水性組成物を低コストで製造する方法の提供。
【解決手段】 有機酸化合物,ノニオン性界面活性剤、水性媒体、含フッ素ポリマーの含有量が5質量%以下からなる被処理水を用いて(1)上記被処理水に特定化合物を添加する工程(2)工程(1)により得られる一次処理水性組成物に対し活性炭との接触及び/又は陽イオン交換樹脂との接触からなる接触処理を行う工程を含む方法であり、上記特定化合物は、上記有機酸化合物と水不溶性塩を形成する陽イオンからなる無機イオン化合物、又は、上記有機酸化合物と水不溶性塩若しくは水不溶性配位物を形成する塩基性有機化合物で表されることを特徴とするノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素ポリマー水性分散液は、一般に、パーフルオロオクタン酸〔PFOA〕、パーフルオロオクチルスルホン酸〔PFOS〕等の含フッ素有機酸化合物の存在下に水性媒体中にて重合することにより得られる。重合により得られる水性分散液は、通常、含フッ素ポリマー濃度が低いので、濃縮して使用される。
【0003】
含フッ素ポリマーの水性分散液の濃縮方法として、例えば、相分離濃縮法(例えば、特許文献1参照。)、限外濾過法(例えば、特許文献2参照。)、電気濃縮法(例えば、特許文献3参照。)等が知られている。これらの濃縮は、一般に、分散安定化のためノニオン性界面活性剤を添加して行われる。含フッ素ポリマー濃縮水性分散液を回収した残余は、微量の含フッ素ポリマーが混入している場合もあるが、水性媒体からなる水性組成物であり、含フッ素有機酸化合物及びノニオン性界面活性剤を含有するにもかかわらず、従来廃液として廃棄されていた。
【0004】
ノニオン性界面活性剤は、一般に価格が高いので、含フッ素ポリマーの水性分散液の濃縮は、コスト高となる問題があった。この問題を解消するため、従来廃棄されていた廃液からノニオン性界面活性剤を回収し再利用することが望ましい。しかしながら、ノニオン性界面活性剤の再利用に際し、含フッ素有機酸化合物を廃液から除去する必要がある。
【0005】
含フッ素有機酸化合物として弗素含有乳化剤を廃液から除去回収する方法としては、含フッ素ポリマーの水性分散液を限外濾過半透膜に通して含フッ素ポリマー濃縮水性分散液から分離された水性透過液(廃液)を塩基性陰イオン交換樹脂に通すことにより弗素含有乳化剤を捕えて回収する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、陰イオン交換樹脂の使用は、煩雑な操作を必要とし、却ってコスト高となる問題があった。
【特許文献1】米国特許第3037953号明細書
【特許文献2】特開昭55−120630号公報(請求項4)
【特許文献3】英国特許第642025号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、含フッ素界面活性剤等の有機酸化合物の含有量を低減し、再利用可能なノニオン性界面活性剤水性組成物を低コストで製造することができる方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有機酸化合物とノニオン性界面活性剤と水性媒体とからなり含フッ素ポリマーの含有量が5質量%以下である被処理水性組成物を用いてノニオン性界面活性剤水性組成物を製造するノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法であって、上記ノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法は、
(1)上記被処理水性組成物に特定化合物を添加する工程、並びに、
(2)上記工程(1)により得られる一次処理水性組成物に対し活性炭との接触及び/又は陽イオン交換樹脂との接触からなる接触処理を行う工程
を含む方法であり、上記特定化合物は、上記有機酸化合物と水不溶性塩を形成する陽イオンからなる無機イオン化合物、又は、上記有機酸化合物と水不溶性塩若しくは水不溶性配位物を形成する塩基性有機化合物であり、上記有機酸化合物は、下記一般式(I)
−Z (I)
(式中、Rは、直鎖若しくは分岐でヘテロ原子を有していてもよくHがFに置換されていてもよい炭化水素基、F又はHを表し、Zは、−COOM、−SO又はリン酸由来基を表し、Mは、H、NH、Na又はKを表す。)で表されることを特徴とするノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法である。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法は、有機酸化合物とノニオン性界面活性剤と水性媒体とからなり含フッ素ポリマーの含有量が5質量%以下である被処理水性組成物を用いてノニオン性界面活性剤水性組成物を製造するものである。
【0009】
上記被処理水性組成物は、有機酸化合物とノニオン性界面活性剤と水性媒体とからなるものである。
上記有機酸化合物は、一般に、下記一般式(I)
−Z (I)
(式中、Rは、直鎖若しくは分岐でヘテロ原子を有していてもよくHがFに置換されていてもよい炭化水素基、F又はHを表し、Zは、−COOM、−SO又はリン酸由来基を表し、Mは、H、NH、Na又はKを表す。)で表される。
【0010】
上記一般式(I)において、上記Rは、炭化水素基である場合、該炭化水素基としては、例えば、H(CF−、又は、F(CF−(nは、1〜12の整数を表す。)であってもよい。
上記nは、好ましい下限が4であり、好ましい上限が8である。
本明細書において、「ヘテロ原子」は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びリン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。上記Rとしての炭化水素基がヘテロ原子を有するものである場合、該ヘテロ原子としては、酸素原子及び/又は窒素原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。上記Rとしての炭化水素基が有し得る酸素原子は、エーテル結合及び/又はエステル結合を構成する酸素原子であることが好ましい。上記Rとしての炭化水素基が有し得る窒素原子としては、アミノ基又は置換アミノ基を構成する窒素原子であることが好ましい。
上記一般式(I)におけるRとしての炭化水素基は、ヘテロ原子を有しないものであることが好ましく、水素原子がフッ素置換されているものが好ましい。
上記Rとしての炭化水素基は、炭素数が4〜20であることが好ましく、5〜12であることがより好ましい。
上記Rは、HがFに置換されたアルキル基であることが好ましく、パーフルオロアルキル基であることがより好ましい。
【0011】
上記一般式(I)において、Zは、−COOM、−SO又はリン酸由来基を表す。
本明細書において、「リン酸由来基」は、リン酸〔HPO〕に由来するリン酸残基ともいい得る基であり、−PO、−POHM、−PO、−OPO(OM、−O(PO1/2及び−O(PO)1/3よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
上記Mは、H、NH、Na又はKを表し、上記Mは、NH、Na又はKを表す。
上記リン酸由来基においてM又はMがそれぞれ1分子中に2つ以上ある場合、該2つ以上のM又は該2つ以上のMは、相互に異なるものであってもよいが、通常、同一のものである。
上記一般式(I)は、Zがリン酸由来基である場合、下記式
[R−(O)−]PO(OM3−x
(pは、0又は1の整数を表し、xは、1〜3の整数を表す。R及びMは、上記定義のとおり。(3−x)個のMは、相互に同一のものであってもよいし異なるものであってもよい。)で表すことができる。
上記Zとしては、−COOM(Mは、上記と同じ。)であることが好ましく、−COONaであることがより好ましい。
【0012】
上記一般式(I)で表される有機酸化合物としては、平均分子量が1000以下であるものが好ましく、除去容易である点で、平均分子量が500以下であるものがより好ましい。
上記有機酸化合物は、炭素数が4〜12であるものが好ましい。
上記有機酸化合物は、上記一般式(I)で表されるものであれば、水性液体中に1種のみ含まれるものであってもよいし、2種以上含まれるものであってもよい。
上記有機酸化合物は、含フッ素界面活性剤であることが好ましく、パーフルオロオクタン酸又はその塩がより好ましい。本明細書において、「パーフルオロオクタン酸又はその塩」を包括的に「PFOA」と略記することがある。
【0013】
上記被処理水性組成物において、上記有機酸化合物は、除去処理を行う際、合計で、水性媒体の0.001〜2質量%であることが好ましい。
上記有機酸化合物は、除去効率の点で、水性媒体の0.05質量%以上であることがより好ましく、また、0.1質量%以下であることがより好ましい。
本明細書において、上記有機酸化合物の量は、19F−NMR(測定機器AC300P、Bruker Biospin製)から求めた値である。
【0014】
上記ノニオン性界面活性剤としては、公知のノニオン界面活性剤を使用でき、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル等のエーテル型ノニオン界面活性剤、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体等のポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のエステル型ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等のアミン系ノニオン乳化剤が挙げられる。
また、アルキルフェノールを構造中に有しないノニオン界面活性剤を好ましく使用することができる。
【0015】
上記ノニオン性界面活性剤は、本発明における被処理水性組成物の0.1〜30質量%であることが好ましく、より好ましい下限が0.5質量%、より好ましい上限が25質量%である。
本明細書において、ノニオン性界面活性剤の含有量(N)は、試料約1g(Xg)を直径5cmのアルミカップにとり、100℃にて1時間で加熱した加熱残分(Yg)、更に、得られた加熱残分(Yg)を300℃にて1時間加熱した加熱残分(Zg)より、式:N=[(Y−Z)/X]×100(%)から算出したものである。
【0016】
本発明における水性媒体としては、水を含む液体であれば特に限定されず、水に加え、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、パラフィンワックス等のフッ素非含有有機溶媒及び/又はフッ素含有有機溶媒をも含むものであってもよい。
【0017】
本発明において、上記被処理水性組成物は、上述の有機酸化合物と、ノニオン性界面活性剤と水性媒体とに加え、含フッ素ポリマーの含有量が5質量%以下であるものであり、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。
上記被処理水性組成物としては、重合により得られる含フッ素ポリマー水性分散液から含フッ素ポリマー濃縮水性分散液を分離した残余の廃液である場合、含フッ素ポリマーを全く含有しないものが好ましいが、上記範囲内であれば、被処理水性組成物の例えば0.01質量%以上であってもよい。
本明細書において、含フッ素ポリマー濃度(P)は、試料約1g(Xg)を直径5cmのアルミカップにとり、100℃にて1時間で加熱し、更に、300℃にて1時間加熱した加熱残分(Zg)より、式:P=(Z/X)×100(%)から算出したものである。
【0018】
上記含フッ素ポリマーとしては、特に限定されず、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体〔FEP〕、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕共重合体〔PFA〕、エチレン/TFE共重合体〔ETFE〕、ポリビリニデンフルオライド〔PVDF〕、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕等が挙げられる。
上記PTFEとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕ホモポリマーであってもよいし、変性ポリテトラフルオロエチレン〔変性PTFE〕であってもよい。本明細書において、変性PTFEとは、TFEと微量単量体とを重合して得られる非溶融加工性の含フッ素ポリマーを意味する。上記微量単量体としては、例えば、HFP、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のフルオロオレフィン、炭素原子1〜5個、特に炭素原子1〜3個を有するアルキル基を持つフルオロ(アルキルビニルエーテル);フルオロジオキソール;パーフルオロアルキルエチレン;ω−ヒドロパーフルオロオレフィン等が挙げられる。
上記被処理水性組成物における含フッ素ポリマーとしては、パーフルオロポリマーが好ましく、なかでも、TFEホモポリマー、変性PTFEがより好ましい。
【0019】
上記被処理水性組成物は、上述の有機酸化合物、ノニオン性界面活性剤及び水性媒体、並びに、場合により含フッ素ポリマーを含むものであれば、何れの方法により得られるものであってもよい。
上記被処理水性組成物は、例えば、重合により得られる含フッ素ポリマー水性分散液を濃縮した際に生じる廃液として得ることができる。
上記被処理水性組成物は、例えば、重合により得られる含フッ素ポリマー水性分散液について相分離濃縮法、限外濾過法及び/又は電気濃縮法により濃縮してなる含フッ素ポリマー濃縮水性分散液を除去することにより得ることができる。上記被処理水性組成物は、該除去により、重合で得られる含フッ素ポリマー水性分散液から上記含フッ素ポリマー濃縮水性分散液を分離し除去した残余の水性組成物に相当する。
【0020】
本発明において、上記重合は、一般に、水性媒体中、乳化剤の存在下に行うことができ、上述の有機酸化合物の存在下に行うことが好ましい。
上記重合において用いる含フッ素モノマーとしては、特に限定されず、例えば、TFE、HFP、PAVE、ビリニデンフルオライド〔VDF〕、CTFE等が挙げられる。上記重合は、含フッ素モノマーに加え、エチレン等のフッ素非含有モノマーをも用いるものであってよい。
本発明において、上記重合は、目的とする含フッ素ポリマーの種類、量等に応じて、温度、圧力、乳化剤濃度等の反応条件を適宜設定することができる。
上記重合により得られる含フッ素ポリマー水性分散液は、一般に含フッ素ポリマーが5〜40質量%であり、15〜35質量%であることがより好ましい。
【0021】
上記相分離濃縮法、限外濾過法及び電気濃縮法としては、それぞれ特に限定されず、従来公知の方法を使用することができる。
上記相分離方法としては、例えば、米国特許第3037953号明細書に記載の方法等を、上記限外濾過法としては、例えば、特公平2−34971号公報に記載の方法を、電気濃縮法としては例えば英国特許第642025号明細書に記載の方法等を挙げることができる。
【0022】
本発明において、「相分離濃縮法、限外濾過法及び/又は電気濃縮法により濃縮してなる」とは、相分離濃縮法、限外濾過法及び電気濃縮法のうち、少なくとも何れか1種の方法を行うことを意味し、各濃縮方法は1回のみ行うものであってもよいし、2回以上繰り返し行うものであってもよい。2種以上の方法を組合せて行う場合、各方法を1回又は2回以上ずつ交互に繰り返し行うものであってもよいし、何れかの1種の方法を1回又は2回以上行った後、他の方法を1回又は2回以上行うものであってもよい。
上記被処理水性組成物としては、また、重合により得られる含フッ素ポリマー水性分散液をノニオン性界面活性剤濃度を高めるなどして濃縮した物を用いてもよい。
【0023】
上記含フッ素ポリマー濃縮水性分散液は、一般に、含フッ素ポリマーが20〜75質量%であるものである。
【0024】
本発明のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法は、
(1)上記被処理水性組成物に特定化合物を添加する工程、並びに、
(2)上記工程(1)により得られる一次処理水性組成物に対し活性炭との接触及び/又は陽イオン交換樹脂との接触からなる接触処理を行う工程
を含む方法である。
【0025】
上記工程(1)における特定化合物は、上記有機酸化合物と水不溶性塩を形成する陽イオンからなる無機イオン化合物、又は、上記有機酸化合物と水不溶性塩若しくは水不溶性配位物を形成する塩基性有機化合物である。
上記工程(1)は、上記特定化合物のうち何れか1種を添加するものであってもよいし、2種以上を添加するものであってもよい。
【0026】
上記無機イオン化合物は、上述の有機酸化合物と水不溶性塩を形成する陽イオンからなるものであれば特に限定されず、例えば、多価金属塩等が挙げられる。
上記多価金属塩を形成する多価金属としては、Al、Ca、Mg等が挙げられる。
上記無機イオン化合物としては、なかでも、Al(OH)、Al(SO、CaCl等が好ましい。
【0027】
上記塩基性有機化合物は、上述の有機酸化合物と水不溶性塩若しくは水不溶性配位物を形成するものであれば特に限定されない。
本発明における塩基性有機化合物としては、例えば、分子構造中に−C(−NHR)=NHを有する有機化合物等が挙げられる。−C(−NHR)=NHで表される基本骨格を有する化合物は、酸塩であってよいが、存在する環境の液性により、上記基本骨格における二重結合の位置が移動し得るものであってよい。上記式中、Rは、下記定義のとおりであり、即ち、Hが置換されていてもよい炭化水素基又はHを表す。
【0028】
本発明における塩基性有機化合物としては、例えば、下記一般式(i)
Q−C(−NHR)=NH (i)
(式中、Qは、RS−、R12O−、R1314N−又はR−を表し、R及びR12は、H又はRを表し、R13及びR14は、同一若しくは異なって、H又はRを表し、Rは、Hが置換されていてもよい炭化水素基を表す。)で表される化合物又はその酸塩が挙げられる。
上記一般式(i)で表される化合物は、上記一般式(i)におけるQがRS−である場合、イソチオウレア化合物、QがR12O−である場合、イソウレア化合物、QがR1314N−である場合、グアニジン化合物、QがR−である場合、アミジン化合物ということがある。
【0029】
上記一般式(i)で表される化合物の酸塩を形成する酸としては、例えば、HX(Xは、Cl又はBrを表す。)、HSO等が挙げられる。
上記アミジン化合物の酸塩は、通常、
Q−C(−NHR)=NH・HX 又は
[Q−C(−NHR)=NH]・HSO
と表すことができる(Q、R及びXは、上記定義のとおり。)。
【0030】
上記一般式(i)において、上記QがR12O−又はRS−である場合、例えば、下記一般式(II)
−Y−C(−NH)=NH・HX (II)
(式中、Rは、Hが置換されていてもよい炭化水素基を表し、Yは、O又はSを表し、Xは、Cl又はBrを表す。)で表されるイソ(チオ)ウレア化合物であってもよい。
本明細書において、「イソ(チオ)ウレア化合物」は、「イソウレア化合物又はイソチオウレア化合物」を総括する概念を表すが、このことは、上記一般式(II)においてYがO又はSを表すと定義していることから明らかである。
本明細書において、上記一般式(II)で表したイソ(チオ)ウレア化合物としては、例えば、
【0031】
【化1】

【0032】
等が挙げられる。上記式におけるR及びXは、上記定義のとおりである。
【0033】
上記Rとしての炭化水素基は、炭素数が1〜25であることが好ましい。
上記Rとしての炭化水素基は、アリール基を含む炭化水素基又は炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、アリールアルキル基又はエチル基であることが好ましい。
上記Rに含まれ得るアリール基としては、少なくとも1個、通常1〜2個のHが置換基に置換されているものであってもよく、該置換基としては、例えばニトロ基等が挙げられる。
上記Rは、−CH−Ar(式中、Arは、置換基を1〜2個有していてもよいフェニル基を表す。)又はエチル基であることが好ましい。該フェニル基が有し得る置換基としては、ニトロ基が好ましい。上記Rは、−CH−Ph(Phは、フェニル基を表す。)であることがより好ましい。
【0034】
上記一般式(II)におけるYは、O又はSを表すが、Sであることが好ましい。
【0035】
上記一般式(II)で表されるイソ(チオ)ウレア化合物としては、ベンジルイソチオウレア塩酸塩〔CCHSC(NH)NH・HCl〕、
【0036】
【化2】

【0037】
で表されるS−(p−ニトロベンジル)イソチオウレア塩酸塩、
【0038】
【化3】

【0039】
で表されるS−(2,4−ジニトロベンジル)イソチオウレア塩酸塩等が好ましく、中でも、ベンジルイソチオウレア塩酸塩がより好ましい。
【0040】
上述の一般式(i)におけるRとしての炭化水素基は、上記一般式(II)におけるRと同じく、炭素数が1〜25であるものが好ましく、アリール基を含む炭化水素基又は炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましい。該「アリール基を含む炭化水素基」としては、アリール基のみであってもよいし、アリールアルキル基(アラルキル基)であってもよい。
上記一般式(i)において、上記Rとしての炭化水素基における置換基としては、該炭化水素基がアルキル基である場合、例えば、F等のハロゲン、酸素等のヘテロ原子等が挙げられ、炭化水素基が上記「アリール基を含む炭化水素基」である場合、例えばニトロ基等が挙げられる。
【0041】
一般式(i)において、QがR12O−であり、該R12が上記Rである場合、上記一般式(II)(但し、YがOである場合。R及びXは、上記定義のとおり。)で表されるイソウレア化合物等が挙げられる。該一般式(i)におけるR12としてのRは、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、メチル基がより好ましい。
上述の一般式(i)において、QがR1314N−である場合、R13及びR14におけるRとしては、アリール基又は炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、フェニル基、メチル基がより好ましい。
上記一般式(i)において、QがR−である場合、該Rとしては、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、メチル基がより好ましい。
上記一般式(i)において、上記Qは、R12O−、R1314N−、R−であることが好ましく、R12O−、R1314N−であることがより好ましい。
【0042】
本発明に用いる特定化合物としては、上述のイソチオウレア化合物の他に、1,1−ジメチルグアニジン硫酸塩[(CHNC(−NH)=NH]・HSO、グアニジン塩酸塩(NH=C(NH・HCl)、1,3−ジフェニルグアニジン(CNHC(−NHC)=NH)等のグアニジン化合物(R1314NC(−NHR)=NH);アセトアミジン塩酸塩(CHC(−NH)=NH・HCl)等のアセトアミジン系化合物(RC(−NH)=NH);O−メチルイソウレア硫酸塩(CHOC(−NH)=NH・1/2 HSO)等のイソウレア化合物(R12OC(−NH)=NH)等が好ましい。
【0043】
上記工程(1)において、上記特定化合物は、除去すべき有機酸化合物の量に応じて適宜決定することができるが、除去効率の点で有機酸化合物に対し過剰量を添加することが好ましく、特定化合物の添加量としては、被処理水性組成物中の有機酸化合物1モル当り1〜20モルの割合であることが好ましく、1〜10モルの割合であることがより好ましい。
上記特定化合物が無機イオン化合物である場合、その添加量は、被処理水性組成物中の有機酸化合物1モル当り1〜20モルの割合であることが好ましい。上記特定化合物が塩基性有機化合物である場合、その添加量は、被処理水性組成物中の有機酸化合物1モル当り1〜20モルの割合であることが好ましい。
上記工程(1)は、有機酸化合物の除去効率向上の点で、上記特定化合物を添加したのち、適宜攪拌する操作を含むことが好ましい。
【0044】
上記工程(1)において、上述の性質を有する特定化合物を添加することにより、一般に、特定化合物と有機酸化合物とに由来する水不溶性塩又は水不溶性配位物を形成することができる。従って、工程(1)は、被処理水性組成物中の有機酸化合物の含有量を簡便且つ安価に低減することを可能にしたものである。
上記工程(1)は、一般に、濾過、デカンテーション等の手法により、上記特定化合物の添加により形成された水不溶性塩又は水不溶性配位物を水性組成物から取り除く操作をも含むものであってよい。
【0045】
工程(1)により得られる一次処理水性組成物は、好ましくは上述のとおり有機酸化合物に対し過剰量の特定化合物を添加して得られるものであり、該特定化合物に由来し有機酸化合物と水不溶物を形成していない余剰物を含有する。該余剰物としては、例えば、無機イオン化合物に由来する陽イオン、有機酸化合物と水不溶性塩又は水不溶性配位物を形成していない塩基性有機化合物等が挙げられる。該余剰物は、被処理水性組成物中の有機酸化合物含有量、特定化合物の添加量等によるが、通常、一次処理水性組成物の質量の0.1〜1.5質量%である。
本明細書において、特定化合物に由来する上記余剰物の濃度は、無機化合物の場合、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−MS)により測定した値であり、塩基性有機化合物の場合、HPLC測定により求めた値である。
【0046】
本発明の製造方法は、上記工程(1)により得られる一次処理水性組成物に対し活性炭との接触及び/又は陽イオン交換樹脂との接触からなる接触処理を行う工程(2)を含むものである。
工程(2)により、有機酸化合物と水不溶物を形成していない余剰物である陽イオン及び塩基性有機化合物を一次処理水性組成物から除去することができるので、該陽イオン及び塩基性有機化合物の含有量を低減したノニオン性界面活性剤水性組成物を得ることができる。
【0047】
上記工程(2)における活性炭との接触は、限外濾過膜等の接触の際に生じ得る目詰まり等の閉塞を生じず、繰り返し使用可能で効率的、経済的であり、処理速度を速くすることもできる。
上記工程(2)において使用する活性炭は、有効量を用いればよく、用いる活性炭の性状、接触条件等によるが、一般に、被処理水性組成物100質量部に対し、0.1〜100質量部であることが好ましい。上記被処理水性組成物100質量部に対する活性炭の有効量のより好ましい下限は、1質量部、更に好ましい下限は2質量部であり、より好ましい上限は、50質量部である。
【0048】
上記活性炭は、被処理水性組成物を接触させる前に微細粒子を除去したものであることが好ましい。上記微細粒子を除去する方法としては特に限定されず、通常、水洗することにより簡便かつ充分に除去することができる。
本発明において、活性炭は、100〜400℃において1〜24時間程度加熱処理して再賦活し、更に該加熱処理の後、イオン交換水等の水に数時間以上浸漬し、細孔中の気泡を除去する等の通常の前処理を行うことが好ましい。
【0049】
本発明において、活性炭との接触は、処理後の水性組成物の回収が容易である点で、カラムに充填した活性炭に被処理水性組成物を流通させることを基本とする方法が好ましい。活性炭との接触をカラムを用いて行う場合、カラムへの被処理水性組成物の流通速度は、含フッ素ポリマーの種類、固形分含有量等に応じ、カラム使用の常法により適宜調整することができる。
【0050】
上記工程(2)において使用する陽イオン交換樹脂としては、例えば、官能基として−SO基を有する強酸性陽イオン交換樹脂、官能基として−COO基を有する弱酸性陽イオン交換樹脂等、公知のものが挙げられるが、なかでも、後述するアミン系化合物との吸着性がよい点で、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましく、H型の強酸性陽イオン交換樹脂がより好ましい。
上記陽イオン交換樹脂は、Na型樹脂を1M HCl水溶液でH型に処理し、純水で充分に洗浄したものを用いることが好ましい。
上記陽イオン交換樹脂との接触について、用いる陽イオン交換樹脂の種類、使用量等に応じて適宜条件を設定することができるが、空間速度〔SV〕が0.5〜10となるよう行うことが好ましい。
【0051】
本発明の方法から得られるノニオン性界面活性剤水性組成物は、上述のノニオン性界面活性剤と水性媒体とからなるものであって、一般に、ノニオン性界面活性剤の量が0.1〜30質量%であるものである。
上記ノニオン性界面活性剤水性組成物において、上記ノニオン性界面活性剤の量は、好ましい下限が0.5質量%であり、また、上記範囲内であれば、25質量%以下であってもよい。
本発明におけるノニオン性界面活性剤水性組成物のノニオン性界面活性剤濃度は、上記のとおり0.1〜30質量%であることが好ましいが、蒸発あるいは膜濃縮、曇点を利用した相分離等の公知の方法を用いる濃縮操作により高めることもできる。該濃縮を行った場合、ノニオン性界面活性剤濃度は、ノニオン性界面活性剤水性組成物の10〜100質量%とすることができ、例えば30〜100質量%が好ましい。適度の濃度に調整したノニオン性界面活性剤水性組成物もまた、分散剤として、濃縮、安定化等の公知の目的に用いることができ、例えば含フッ素ポリマー水性分散液に添加することにより再利用に供することができる。
【0052】
本発明の方法から得られるノニオン性界面活性剤水性組成物は、有機酸化合物の含有量が上記ノニオン性界面活性剤水性組成物の100ppm以下であることが好ましく、より好ましくは50ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。
【0053】
本発明の方法により得られるノニオン性界面活性剤水性組成物は、工程(1)により生じた余剰の陽イオン及び塩基性有機化合物を工程(2)により除去することにより得られるものである。
上記余剰の陽イオン、塩基性有機化合物の濃度は、合計で、上記ノニオン性界面活性剤水性組成物の質量の100ppm以下にまで低減することができ、好ましい上限は50ppmであり、上記範囲内であれば、除去効率の点で、下限は10ppmであってもよい。
上記余剰の陽イオン、塩基性有機化合物の濃度がノニオン性界面活性剤水性組成物の質量の100ppmを超えると、安定剤としてノニオン性界面活性剤を再利用に供した際、添加した含フッ素ポリマー水性分散液の凝集を招く場合や、含フッ素ポリマー水性分散液をコーティング、含浸等に用いて得られる被覆物の物性劣化を招く場合がある。
【0054】
本発明のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法は、上述のように、有機酸化合物濃度を低く、また該有機酸化合物と水不溶物を形成していない余剰の陽イオン、塩基性有機化合物の濃度をも低く抑えながらノニオン性界面活性剤含有量が充分に高いノニオン性界面活性剤水性組成物を調製することができるので、例えば、含フッ素ポリマー水性分散液の濃縮、精製等により生じる廃液中のノニオン性界面活性剤を再利用する方法として利用することができる。本発明の上記製造方法は、従来の陰イオン交換樹脂を用いる精製方法よりも低コストで簡便な操作により上記有機酸化合物を除去し、しかも該除去の為に添加した特定化合物の不要な残存物をも除去する方法でもある。
【発明の効果】
【0055】
本発明のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法は、上記構成よりなるものであるので、ノニオン性界面活性剤含有量が高く且つ余剰の陽イオン及び塩基性有機化合物が低濃度であるノニオン性界面活性剤水性組成物を低コストで簡便に調製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
本実施例において、特に説明しない限り、「部」は「質量部」を表す。
・各実施例で行った測定は、以下の方法により行った。
1.ノニオン性界面活性剤の含有量(N)
試料約1g(X)を直径5cmのアルミカップにとり、100℃、1時間で乾燥し、更に300℃、1時間乾燥した加熱残分(Z)に基づき、式:N=(1−Z/X)×100(%)にて決定した。
2.Alイオン、グアニジン化合物の含有量
Alイオンは誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−MS)(測定機器SPQ9000 セイコー社製)により下記条件により測定し、グアニジン化合物は展開液としてアセトニトリル/0.6質量%過塩素酸水溶液=1/1(vol/vol%)を用い、ODS−120T(4.6φ×250mm、トーソー社製)にて行うHPLC測定により求めた。
ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析法)
装置:SPQ9000
導入部:マイクロフローネブライザーPFA−ICP1000
イオン導入条件
高周波出力0.9kw
キャリアーガス(アルゴン):0.96L/min
プラズマガス(アルゴン):16.0L/min
補助ガス(アルゴン):1.0L/min
測定条件
分割数 8
質量範囲 27
繰返し回数3回
3.含フッ素界面活性剤濃度
19F−NMR(測定機器AC300P、Bruker Biospin製)により求めた値である。
【0058】
実施例1
ノイゲンTDS−80(第一薬品工業社製のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤)を1%、パーフルオロオクタン酸アンモニウム〔PFOA〕1500ppmを含むpH7の被処理水性組成物40gに、硫酸アルミニウム27%水溶液0.9gを加えよく攪拌した。攪拌後、110nm濾紙を用いて濾過した。得られた一次処理水性組成物は、PFOA670ppm、Alイオン910ppmを含有していた。
上記一次処理水性組成物を、陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーライトIRA120B、ローム・アンド・ハース社製)25mlを充填したカラム(直径20mm)に、温度40℃、SV4の条件にて通すことにより、ノニオン性界面活性剤水性組成物を得た。得られたノニオン性界面活性剤水性組成物は、ノイゲンTDS−80が1%であり、PFOAが670ppmであり、Alイオンが15ppmであった。
【0059】
実施例2
ノイゲンTDS−80(第一薬品工業社製のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤)を1%、PFOA1500ppmを含み、NH水溶液でpHを10に調整した被処理水性組成物40gに、硫酸アルミニウム27%水溶液0.9gを加えよく攪拌した。攪拌後、110nm濾紙を用いて濾過した。得られた一次処理水性組成物は、PFOA500ppm、Alイオン900ppmを含有していた。
上記一次処理水性組成物を陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーライトIRA120B、ローム・アンド・ハース社製)25mlを充填したカラム(直径20mm)に、温度40℃、SV4の条件で通すことにより、ノニオン性界面活性剤水性組成物を得た。得られたノニオン性界面活性剤水性組成物は、ノイゲンTDS−80が1%であり、PFOAが500ppmであり、Alイオンが10ppmであった。
【0060】
実施例3
ノイゲンTDS−80(第一薬品工業社製のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤)を1%、PFOA1500ppmを含み、HCl水溶液でpHを3に調整した被処理水性組成物40gに、硫酸アルミニウム27%水溶液0.9gを加えよく攪拌した。攪拌後、110nm濾紙を用いて濾過した。得られた一次処理水性組成物は、PFOA560ppm、Alイオン900ppmを含有していた。
上記一次処理水性組成物を、陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーライトIRA120B、ローム・アンド・ハース社製)25mlを充填したカラム(直径20mm)に、温度40℃、SV4の条件で通すことにより、ノニオン性界面活性剤水性組成物を得た。得られたノニオン性界面活性剤水性組成物は、ノイゲンTDS−80が1%であり、PFOAが560ppmであり、Alイオンが10ppmであった。
【0061】
実施例4
ノイゲンTDS−80(第一薬品工業社製のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤)を5%、パーフルオロオクタン酸アンモニウム〔PFOA〕1500ppmを含むpH7の被処理水性組成物40gに、1,1−ジメチルグアニジン硫酸塩1%水溶液1gを加えよく攪拌した。攪拌後、110nm濾紙を用いて濾過した。得られた一次処理水性組成物は、PFOAは検出限界以下、1,1−ジメチルグアニジン硫酸塩5700ppmを含有していた。
上記一次処理水性組成物を、陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーライトIRA120B、ローム・アンド・ハース社製)25mlを充填したカラム(直径20mm)に、温度40℃、SV4の条件にて通すことにより、ノニオン性界面活性剤水性組成物を得た。得られたノニオン性界面活性剤水性組成物は、ノイゲンTDS−80が1%であり、PFOAは検出限界以下、1,1−ジメチルグアニジン硫酸塩が50ppmであった。
【0062】
実施例5
ノイゲンTDS−80(第一薬品工業社製のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤)を5%、パーフルオロオクタン酸アンモニウム〔PFOA〕1500ppmを含むpH3の被処理水性組成物40gに、1,1−ジメチルグアニジン硫酸塩1%水溶液1gを加えよく攪拌した。攪拌後、110nm濾紙を用いて濾過した。得られた一次処理水性組成物は、PFOAは検出限界以下、1,1−ジメチルグアニジン硫酸塩5700ppmを含有していた。
上記一次処理水性組成物を、陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーライトIRA120B、ローム・アンド・ハース社製)25mlを充填したカラム(直径20mm)に、温度40℃、SV4の条件にて通すことにより、ノニオン性界面活性剤水性組成物を得た。得られたノニオン性界面活性剤水性組成物は、ノイゲンTDS−80が1%であり、PFOAは検出限界以下、1,1−ジメチルグアニジン硫酸塩が50ppmであった。
【0063】
実施例6
ノイゲンTDS−80(第一薬品工業社製のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤)を5%、パーフルオロオクタン酸アンモニウム〔PFOA〕1500ppmを含むpH10の被処理水性組成物40gに、1,1−ジメチルグアニジン硫酸塩1%水溶液1gを加えよく攪拌した。攪拌後、110nm濾紙を用いて濾過した。得られた一次処理水性組成物は、PFOAは検出限界以下、1,1−ジメチルグアニジン硫酸塩5700ppmを含有していた。
上記一次処理水性組成物を、陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーライトIRA120B、ローム・アンド・ハース社製)25mlを充填したカラム(直径20mm)に、温度40℃、SV4の条件にて通すことにより、ノニオン性界面活性剤水性組成物を得た。得られたノニオン性界面活性剤水性組成物は、ノイゲンTDS−80が1%であり、PFOAは検出限界以下、1,1−ジメチルグアニジン硫酸塩が50ppmであった。
【0064】
本実施例より、本発明の製造方法は、Alイオン又はグアニジン化合物が低濃度であるノニオン性界面活性剤水性組成物が得られるものであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法は、上記構成よりなることから、ノニオン性界面活性剤含有量が高く且つ余剰の陽イオン及び塩基性有機化合物が低濃度であるノニオン性界面活性剤水性組成物を低コストで簡便に調製することができるので、例えば、含フッ素ポリマー水性分散液の濃縮、精製等により生じる廃液中のノニオン性界面活性剤を再利用する方法として利用することができる。また、上記ノニオン性界面活性剤水性組成物は、余剰の陽イオン及び塩基性有機化合物が低濃度であるので、分散剤として再利用に供した際、分散質と相互作用を起す問題、添加した含フッ素ポリマー水性分散液をコーティング、含浸等に用いて得られる被覆物の物性劣化を招く問題を生じない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸化合物とノニオン性界面活性剤と水性媒体とからなり含フッ素ポリマーの含有量が5質量%以下である被処理水性組成物を用いてノニオン性界面活性剤水性組成物を製造するノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法であって、
前記ノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法は、
(1)前記被処理水性組成物に特定化合物を添加する工程、並びに、
(2)前記工程(1)により得られる一次処理水性組成物に対し活性炭との接触及び/又は陽イオン交換樹脂との接触からなる接触処理を行う工程
を含む方法であり、
前記特定化合物は、前記有機酸化合物と水不溶性塩を形成する陽イオンからなる無機イオン化合物、又は、前記有機酸化合物と水不溶性塩若しくは水不溶性配位物を形成する塩基性有機化合物であり、
前記有機酸化合物は、下記一般式(I)
−Z (I)
(式中、Rは、直鎖若しくは分岐でヘテロ原子を有していてもよくHがFに置換されていてもよい炭化水素基、F又はHを表し、Zは、−COOM、−SO又はリン酸由来基を表し、Mは、H、NH、Na又はKを表す。)で表される
ことを特徴とするノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。
【請求項2】
塩基性有機化合物は、下記一般式(i)
Q−C(−NHR)=NH (i)
(式中、Qは、RS−、R12O−、R1314N−又はR−を表し、R及びR12は、H又はRを表し、R13及びR14は、同一若しくは異なって、H又はRを表し、Rは、Hが置換されていてもよい炭化水素基を表す。)で表される化合物又はその酸塩である請求項1記載のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。
【請求項3】
塩基性有機化合物は、一般式(i)におけるQがR12O−、R1314N−又はR−(R12、R13、R14及びRは、前記定義のとおり。)である化合物又はその酸塩であり、
前記酸塩を形成する酸は、HX(Xは、Cl又はBrを表す。)又はHSOである請求項2記載のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。
【請求項4】
無機イオン化合物は、多価金属塩である請求項1記載のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。
【請求項5】
多価金属塩を形成する多価金属は、Al、Ca又はMgである請求項4記載のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。
【請求項6】
工程(1)において特定化合物は、被処理水性組成物中の有機酸化合物1モル当り1〜20モルの割合で添加する請求項1、2、3、4又は5記載のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。
【請求項7】
有機酸化合物は、平均分子量が1000以下である請求項1、2、3、4、5又は6記載のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。
【請求項8】
有機酸化合物は、炭素数が4〜12である請求項1、2、3、4、5又は6記載のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。
【請求項9】
有機酸化合物は、含フッ素界面活性剤である請求項1、2、3、4、5又は6記載のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。
【請求項10】
ノニオン性界面活性剤水性組成物は、含フッ素界面活性剤の含有量が前記ノニオン性界面活性剤水性組成物の100ppm以下である請求項9記載のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。
【請求項11】
被処理水性組成物は、重合により得られる含フッ素ポリマー水性分散液を相分離濃縮法、限外濾過法及び/又は電気濃縮法により濃縮してなる含フッ素ポリマー濃縮水性分散液を除去することにより得られるものである請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。
【請求項12】
重合は、含フッ素界面活性剤の存在下に行うものである請求項11記載のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。
【請求項13】
含フッ素界面活性剤は、パーフルオロカルボン酸又はその塩である請求項9、10又は12記載のノニオン性界面活性剤水性組成物製造方法。


【公開番号】特開2007−2072(P2007−2072A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182664(P2005−182664)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】