説明

ハイブリッド型ICタグ

【課題】アンテナ機能を備えた誘電コイルでの起電力とは別の起電手段を具備するハイブリッド型ICタグを提供する。
【解決手段】ICチップ20と、該ICチップ20に電気的に接続される非接触通信用アンテナコイル30とを具備し、所定の識別情報を前記非接触通信用アンテナコイル30を介して出力するRFIDタグであって、外部に露出する一対の異種金属からなる起電端子40を具備し、該起電端子40は、前記ICチップ20に電気的に接続され、電解液に接して起電した際には電源として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部アンテナとの間で非接触方式により情報を送受信するハイブリッド型ICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物体(例えば、商品、人)などの識別に利用される微小な無線ICタグが、各産業界において採用されている。このようなICタグには、自身を識別するための識別番号などの情報が予め記録されており、電波を介してかかる情報を送受信することで物体を管理するためのシステムとして適用されている。例えば、RFID(Radio Frequency Identification)というICタグを媒体として電波を介する情報発信で物体を正確に認識することができるシステムがある。このRFIDは、例えば、生産・物流・在庫を管理するシステム、商品の盗難を防止するシステム、及び施設への入退室を管理するシステムなど、社会一般の様々な用途として採用されている。
【0003】
このようなRFIDとしては、受動型タグと能動型タグとが知られている。受動型タグは、基本的には、電池を内蔵せず、アンテナ機能を備えた誘電コイルが起電した際に出力するものである。一方、能動型タグは、電池を内蔵し、誘電コイルの起電とは無関係に動作するものである。
【0004】
電池を内蔵しないため、電池寿命を気にする必要がなく、比較的低コストである点において、受動型ICタグが優れるが、情報を得るためには、必ず、アンテナ機能を備えた誘電コイルを起電する必要がある点が問題となる。また、受動型タグは、基本的には誘電コイルの起電力を電源として動作するICチップを具備し、識別情報を出力するように動作するが、ICチップにセンサを接続する増幅器やアナログ−デジタルコンバーター、フィルター回路などを付加すると、消費電力が大きくなるため、電力が不足し、場合によっては電池を内蔵する必要もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://ja.wikipedia.org/wiki/RFID
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、アンテナ機能を備えた誘電コイルでの起電力とは別の起電手段を具備するハイブリッド型ICタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成する本発明の第1の態様は、ICチップと、該ICチップに電気的に接続される非接触通信用アンテナコイルとを具備し、所定の識別情報を前記非接触通信用アンテナコイルを介して出力するRFIDタグであって、外部に露出する一対の異種金属からなる起電端子を具備し、該起電端子は、前記ICチップに電気的に接続され、電解液に接して起電した際には電源として機能することを特徴とするハイブリッド型ICタグにある。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のハイブリッド型ICタグにおいて、前記起電端子には、前記ICチップの中の増幅回路およびアナログ−デジタル変換回路が接続されており、前記所定の識別情報を出力する際に前記アナログ−デジタル変換回路の出力も出力するようになっていることを特徴とするハイブリッド型ICタグにある。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載のハイブリッド型ICタグにおいて、さらに、センサ接続端子を具備し、該センサ接続端子は、前記ICチップの中のセンサ用増幅回路およびセンサ用アナログ−デジタル変換回路を具備し、前記所定の識別情報を出力する際に前記センサ用アナログ−デジタル変換回路の出力も出力するようになっていることを特徴とするハイブリッド型ICタグにある。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様に記載のハイブリッド型ICタグにおいて、外部アンテナから発信される電波を介しての前記非接触通信用アンテナコイルで起電をトリガーとして前記所定の識別情報を出力するパッシブ型として機能することを特徴とするハイブリッド型ICタグにある。
【0011】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様に記載のハイブリッド型ICタグにおいて、前記起電端子が電解液に接して起電した際にはアクティブ型として機能し、前記非接触通信用アンテナコイルから電波を出し続けることを特徴とするハイブリッド型ICタグにある。
【0012】
本発明の第6の態様は、第1〜4の何れかの態様に記載のハイブリッド型ICタグにおいて、前記起電端子が電解液に接して起電した際にはアクティブ型として機能し、前記非接触通信用アンテナコイルからトリガー信号を受信して出力を開始することを特徴とするハイブリッド型ICタグにある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係るハイブリッド型ICタグの構成の概略を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態2に係るハイブリッド型ICタグの構成の概略を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態3に係るハイブリッド型ICタグの構成の概略を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態4に係るハイブリッド型ICタグの構成の概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明の構成は以下の説明に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態1に係るハイブリッド型ICタグの構成の概略を示すブロック図である。
【0016】
図示するように、このハイブリッド型ICタグ10は、一般的にRFID(Radio Frequency Identification)として機能するICチップ20と、非接触通信用アンテナコイル30(以下、単にアンテナコイル30という)とを具備し、ICチップ20には、起電端子40が接続されている。
【0017】
ここで、ICチップ20は、アンテナコイル30や起電端子40からの過大な入力から内部回路を保護する電圧リミット回路21と、アンテナコイル30に入力した交流を直流に変換して内部回路に電源を供給する整流回路22と、アンテナコイル30を介して外部とのデータの送受信や内部メモリとのデータのやりとりなどRFIDとしての動作を制御するための回路である制御回路23と、固有IDなどを格納するためのメモリ回路24とを少なくとも具備する、一般的なRFID回路を備える。制御回路23は、CPUなどのでもよいが、論理回路から構成されてもよい。
【0018】
アンテナコイル30は、リーダ・ライタから伝送される電力、コマンド、データなどを送受信するためのものであり、一般的には、エッチングや印刷などにより形成された誘電コイルである。
【0019】
起電端子40は、少なくとも一対、好ましくは複数対の異種金属対からなり、異種金属対の少なくとも端部の異種金属が露出したものである。ここで、異種金属とは、標準電極電位が異なる金属のことをいう。標準電極電位差がある異種金属の対を電解液に浸漬すると、異種金属間の電位差による局部電池が形成されるが、起電端子40はこの局部電池を利用して起電するものである。起電力は異種金属対の電位差が大きいほど大きいので、標準電極電位差の大きな異種金属対を選定するのが好ましい。よって、例えば、異種金属対の一方は金、白金、銀、銅など、標準電極電位がプラスの金属とし、他方は鉛、錫、ニッケル、鉄、亜鉛、マグネシウムなどの標準電極電位がマイナスの金属とすればよい。また、金属ではないが、一方にカーボンを用いることもでき、例えば、上述した標準電極電位がプラスの金属として用いることができ、本発明では、かかる態様も異種金属対という。
【0020】
このような異種金属対により形成される起電端子40は、具体的には、絶縁を施した異種金属対の金属線を撚って形成したツイステッドペアの一端を用いればよく、他端は電源回路に接続する。また、ツイステッドペアの代わりに、平行線を用いてもよく、又は、絶縁性フィルムの表面に印刷などにより異種金属の配線を形成したものとしてもよい。
【0021】
このような起電端子40は、電解質に接触して異種金属対が電気的に接続されると、両者間の電位差により起電力が生じ、電流が電流回路に流れ、電源として機能する。例えば、カーボンファイバとアルミニウム線とからなる異種金属対を用いた起電端子40とした場合、0.5〜0.6V程度の起電力が得られる。
【0022】
かかる本実施形態のハイブリッド型ICタグ10は、基本的にはパッシブ型のRFIDタグとして機能し、リーダ・ライタなどの外部アンテナからの電波をアンテナコイル30が受信して起電した際に、ICチップ20のメモリ回路24に予め格納された自身を識別するための識別番号であるIDを送信するようになっている。
【0023】
一方、起電端子40が電解液に浸漬などされて起電端子40を介して起電した際には、この起電をトリガーとしてICチップ20に電力が供給される。このときどのように動作するかは、所望に応じて設定できるが、例えば、起電端子40が起電した際に、ICチップ20のメモリ回路24に予め格納された自身を識別するための識別番号であるIDを送信するアクティブ型として機能するようにしてもよい。また、能動的にIDの送信はせずに、ICチップ20の各種回路を動作させて、後述するようなセンサなどを動作させたり、電力をコンデンサなどに蓄えておき、アンテナコイル30が起電したことをトリガーとしてIDを送信すると共に、センサなどで検出した情報をアンテナコイル30を介して送信するようにしてもよい。
【0024】
何れにしても、本実施形態のハイブリッド型ICタグ10は、アンテナコイル30を介しての起電による電力に加えて、起電端子40による起電による電力を使用することができるので、オペアンプ、アナログ−デジタル変換回路、フィルタ回路など複雑な種々の回路を付加しても、安定して動作させることができるという利点がある。
【0025】
また、起電端子40での起電をトリガーとして能動的にIDを送信するようにした場合、起電端子40が電解液に浸漬したという濡れを検出できるセンサとして用いることができ、おしめの濡れセンサなど種々の用途での使用が考えられる。
【0026】
図2には、実施形態2に係るハイブリッド型ICタグの構成の概略を示すブロック図を示す。
【0027】
本実施形態のハイブリッド型ICタグ10Aは、起電端子40Aを起電するための端子として使用すると同時に、センサとして機能させるように構成したものである。
【0028】
ICチップ20Aは、上述した実施形態1と同様な、電圧リミット回路21と、整流回路22と、制御回路23と、メモリ回路24とを具備するRFID回路25の他、起電端子40Aからの起電を入力する増幅回路26と、増幅回路26の出力をアナログ−デジタル変換するアナログ−デジタル変換回路27とを具備する。
【0029】
このようなハイブリッド型ICタグ10Aは、実施形態1のハイブリッド型ICタグ10と同様に機能すると同時に、起電端子40Aの起電力をアナログ−デジタル変換したデータをアンテナコイル30を介して出力することができ、起電端子40Aの起電状態をセンシングすることで、例えば、濡れ状態を検出することができる。
【0030】
図3には、実施形態3に係るハイブリッド型ICタグの構成の概略を示すブロック図を示す。
【0031】
本実施形態のハイブリッド型ICタグ10Bは、起電端子40とは別に、センサとして機能させるセンサ端子50を具備するものである。
【0032】
ここで、センサ端子50は、起電端子40、40Aと同様な異種金属対からなる。
【0033】
ICチップ20Bは、上述した実施形態2と同様な、RFID回路25の他、センサ端子50からの出力を入力する増幅回路26と、増幅回路26の出力をアナログ−デジタル変換するアナログ−デジタル変換回路27とを具備する。
【0034】
このハイブリッド型ICタグ10Bは、実施形態1のハイブリッド型ICタグ10と同様に機能すると同時に、センサ端子50の出力をアナログ−デジタル変換したデータをアンテナコイル30を介して出力することができ、センサ端子50の起電状態をセンシングすることで、例えば、濡れ状態を検出することができる。
【0035】
本実施形態のセンサ端子50を起電端子40とは別に設けることにより、起電端子40とは別の種類の異種金属対を用いることもできるし、起電端子40Aの設置場所とは別の位置にセンサ端子50を設置することもできる。
【0036】
図4には、実施形態4に係るハイブリッド型ICタグの構成の概略を示すブロック図を示す。
【0037】
本実施形態のハイブリッド型ICタグ10Cは、起電端子40とは別に、センサとして機能させるセンサ51を具備するものである。
【0038】
ここで、センサ51は、温度や圧力など所望の状態を検出するためのセンサである。
【0039】
ICチップ20Cは、上述した実施形態2と同様な、RFID回路25の他、センサ51からの出力を入力する増幅回路26と、増幅回路26の出力をアナログ−デジタル変換するアナログ−デジタル変換回路27とを具備する。
【0040】
このハイブリッド型ICタグ10Cは、実施形態1のハイブリッド型ICタグ10と同様に機能すると同時に、センサ51の出力をアナログ−デジタル変換したデータをアンテナコイル30を介して出力することができ、センサ51の状態をセンシングすることで、例えば、温度や圧力などの状態を検出することができる。
【符号の説明】
【0041】
10〜10C ハイブリッド型ICタグ
20〜20C ICチップ
21 電圧リミット回路
22 整流回路
23 制御回路
24 メモリ回路
25 RFID回路
26 増幅回路
27 アナログ−デジタル変換回路
30 アンテナコイル
40,40A 起電端子
50 センサ端子
51 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップと、該ICチップに電気的に接続される非接触通信用アンテナコイルとを具備し、所定の識別情報を前記非接触通信用アンテナコイルを介して出力するRFIDタグであって、
外部に露出する一対の異種金属からなる起電端子を具備し、該起電端子は、前記ICチップに電気的に接続され、電解液に接して起電した際には電源として機能することを特徴とするハイブリッド型ICタグ。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド型ICタグにおいて、前記起電端子には、前記ICチップの中の増幅回路およびアナログ−デジタル変換回路が接続されており、前記所定の識別情報を出力する際に前記アナログ−デジタル変換回路の出力も出力するようになっていることを特徴とするハイブリッド型ICタグ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイブリッド型ICタグにおいて、さらに、センサ接続端子を具備し、該センサ接続端子は、前記ICチップの中のセンサ用増幅回路およびセンサ用アナログ−デジタル変換回路を具備し、前記所定の識別情報を出力する際に前記センサ用アナログ−デジタル変換回路の出力も出力するようになっていることを特徴とするハイブリッド型ICタグ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のハイブリッド型ICタグにおいて、外部アンテナから発信される電波を介しての前記非接触通信用アンテナコイルで起電をトリガとして前記所定の識別情報を出力するパッシブ型として機能することを特徴とするハイブリッド型ICタグ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のハイブリッド型ICタグにおいて、前記起電端子が電解液に接して起電した際にはアクティブ型として機能し、前記非接触通信用アンテナコイルから電波を出し続けることを特徴とするハイブリッド型ICタグ。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載のハイブリッド型ICタグにおいて、前記起電端子が電解液に接して起電した際にはアクティブ型として機能し、前記非接触通信用アンテナコイルからトリガー信号を受信して出力を開始することを特徴とするハイブリッド型ICタグ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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