説明

ハイブリッド電気自動車の蓄電池の温度を制御する装置及び方法

本発明は、ハイブリッド車の牽引用蓄電池の温度を制御する方法に関し、該ハイブリッド車は、牽引力のための内燃機関及び電気モータを含み、該方法は、前記内燃機関の第1温度調節回路を設けるステップ、前記牽引用蓄電池の第2温度調節回路を設けるステップ、ポンプ、ラジエータ及び前記牽引用蓄電池と直列で前記第2温度調節回路内に設けられる電気ヒータによって前記牽引用蓄電池を加熱するステップ、前記蓄電池が所定の温度範囲に満たない間、前記内燃機関によって駆動される前記電気モータから前記第2温度調節回路内のDC/DCコンバータを介して前記ヒータに電力を伝送するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前文に記載されるハイブリッド車の蓄電池温度制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車は、内燃機関と電気機械を含む。電気機械には、蓄電池から少なくとも部分的に牽引力が供給される。
【0003】
温度が蓄電池の性能に影響をもたらすことは知られている。蓄電池が充電されている間、蓄電池の温度は、蓄電池電解液の化学反応によって上昇する可能性がある。充電中の温度上昇は、陽極の腐食及び劣化を加速させる恐れがある。従って、蓄電池の温度が高くなりすぎると、その性能を低下させると共に、寿命も縮める恐れがある。同様に、蓄電池の温度が低すぎても、その性能及び寿命を低下させる可能性がある。鉛蓄電池の望ましい動作温度は25℃〜40℃であるのに対し、リチウムイオン電池の望ましい動作温度範囲は0℃〜40℃である。
【0004】
以上のことを考慮すると、蓄電池の寿命を延ばすために、ハイブリッド車の蓄電池の温度を制御することが望ましい。
【0005】
特許文献1には、蓄電池温度調節装置を備えたハイブリッド電気自動車が開示されている。この装置は、内燃機関冷却材回路と蓄電池冷却材回路とを含む。熱は、熱交換器を介してこれらの回路の間を伝達する。
【0006】
特許文献1に提案された解決策に伴う問題は、熱交換器が高価であることと、エンジンの冷却材回路を再設計しなければならないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,147,071号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述した問題を解決する、ハイブリッド車の牽引用蓄電池の温度を制御する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、独立の請求項に記載される特徴によって達成される。その他の請求項及び説明は、本発明の有利な実施形態を開示するものである。
【0010】
本発明の第1の例示的実施形態では、ハイブリッド車の牽引用蓄電池の温度を制御する方法であって、ハイブリッド車は、牽引力のための内燃機関及び電気モータを含み、内燃機関の第1温度調節回路を設けるステップ、牽引用蓄電池の第2温度調節回路を設けるステップ、ポンプ、ラジエータ及び牽引用蓄電池と直列に第2温度調節回路内に設けられた電気ヒータによって牽引用蓄電池を加熱するステップ、並びに、蓄電池が所定の温度範囲に満たない間、内燃機関によって駆動される電気モータから第2温度調節回路内のDC/DCコンバータを介してヒータに電力を伝送するステップを含む方法が提供される。
【0011】
本例示的実施形態の利点は、蓄電池を加熱するための電力が、DC/DCコンバータ及び電気モータを介して内燃機関から供給されることである。
【0012】
本発明の別の例示的実施形態では、本方法は、蓄電池が、所定の温度範囲内の温度を有するときのみ、牽引力のために蓄電池を使用するステップをさらに含む。
【0013】
本例示的実施形態の利点は、蓄電池の寿命を延ばすことができる点である。
【0014】
本発明の別の例示的実施形態では、本方法は、第2温度調節回路におけるラジエータのバイパス回路を設けるステップと、ラジエータへの冷却液の流れ又はバイパス回路への冷却液の流れを弁によって調節するステップとをさらに含む。
【0015】
本例示的実施形態の利点は、蓄電池の動作温度に達する時間を短縮できる点である。
【0016】
本発明の別の例示的実施形態では、本方法は、蓄電池が所定の温度範囲に満たないとき、ヒータに動力を供給するために、電圧目標値によって電気モータを制御するステップをさらに含む。
【0017】
本例示的実施形態の利点は、電気部品の寿命を延ばすことができ、しかもその性能を保証できる点である。
【0018】
本発明の別の例示的実施形態では、本方法は、第2温度調節回路を第1温度調節回路から遮断するステップをさらに含む。
【0019】
本例示的実施形態の利点は、第1温度調節回路及び第2温度調節回路を互いに独立して制御できる点である。
【0020】
本発明はまた、ハイブリッド車の牽引用蓄電池の温度を制御するシステムであって、ハイブリッド車は、牽引力のための内燃機関及び電気モータを含み、システムは、内燃機関の第1温度調節回路と、牽引用蓄電池の第2温度調節回路と、ヒータと、ポンプと、第2温度調節回路内に設けられるラジエータとを含み、ヒータは、内燃機関によって駆動される電気モータからDC/DCコンバータを介して電力を供給されるシステムに関する。
【0021】
本例示的実施形態の利点は、蓄電池を加熱するための電力が、内燃機関からDC/DCコンバータ及び電気モータを介して供給されることである。
【0022】
本発明の別の例示的実施形態では、システムは、第2温度調節回路におけるラジエータのバイパス回路、ラジエータへの冷却液の流れ又はバイパス回路への冷却液の流れを調節する弁をさらに含む。
【0023】
本例示的実施形態の利点は、蓄電池の動作温度に達する時間を短縮できる点である。
【0024】
本発明のさらに別の例示的実施形態では、システムは、蓄電池が所定の温度範囲に満たないときヒータに電力を供給するために、電圧目標値によって電気モータを制御する制御装置をさらに含む。
【0025】
本例示的実施形態の利点は、電気部品の寿命を延ばすことができ、しかもその性能を保証できる点である。
【0026】
本発明のさらにまた別の例示的実施形態では、第1温度調節回路と第2温度調節回路は互いに遮断されている。
【0027】
本例示的実施形態の利点は、第1温度調節回路及び第2温度調節回路を互いに独立して制御できる点である。
【0028】
本発明は、前述の目的及びその他の目的並びに利点と共に、概略的に示す以下の実施形態の詳細な説明から最もよく理解されよう。しかし、本発明はこれらの実施形態に限定されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明によるハイブリッド車の牽引用蓄電池の温度を調節する温度調節回路の例示的実施形態を概略的に示す図である。
【図2】本発明の例示的実施形態によるパラレルハイブリッド車を概略的に示す図である。
【0030】
これらの図面において、同じ又は類似の要素は、同じ参照番号で示すものとする。図面は、単に概略的に表示するものに過ぎず、本発明の具体的パラメーターを示すことを意図するものではない。さらに、図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示すことを意図するものである。従って、本発明の範囲を制限するものとして考慮すべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明によるハイブリッド車の牽引用蓄電池の温度を制御する温度調節回路100の例示的実施形態を示す図である。温度調節回路100は、ヒータ102、任意の弁104、任意のバイパス冷却液回路106、ラジエータ108、牽引用蓄電池110、ポンプ112及び主冷却液回路116を含む。
【0032】
主温度調節回路116(図1の実線)において、冷却液は、ポンプ112によって輸送可能である。冷却液は、エチレングリコール、アンモニア、ジクロロジフルオロエタンをブレンドした水でもよいし、あるいは、その他の任意の好適な冷却液でよい。ポンプ112は、電気によって駆動されるものでもよいし、且つ/又はベルトによって駆動されるものでも、あるいは、内燃機関から油圧により駆動されるものでもよい。冷却液は、ポンプ112によりヒータ102に送られる。このヒータは、車両内の他の電気装置と同じ線間電圧を使用する電気ヒータであり、線間電圧は、一般に、トラック、バス及び建設機械の場合は24Vであり、また乗用車の場合は12Vである。
【0033】
冷却液は、ヒータ102からラジエータ又は熱交換器108に送られる。熱交換器108は、熱交換器108からの熱を逃がすためのファンを備えてもよい。あるいは、ファンを使用せず、熱交換器108を冷却するのに、風速又は環境温度差のみを用いる。
【0034】
冷却液は、熱交換器108から牽引用蓄電池110に送られた後、再びポンプ112に戻る。牽引用蓄電池110は、線間電圧400V、600V、又はその他任意の好適な線間電圧を有する。牽引用蓄電池は、鉛蓄電池タイプ、リチウムイオンタイプ、ニッケル水素電池タイプ、あるいはその他任意の好適な電池タイプのものでよい。
【0035】
また図1には、弁104と一緒に任意のバイパス冷却液回路106(破線)も示している。この弁を用いて、ラジエータ108を迂回できる。牽引用蓄電池110を好適な温度に加熱する場合に、ラジエータ108を迂回でき、これによって、冷却液がラジエータ108を強制的に通過しなければならない場合と比較して、蓄電池が好適な温度に達するのに必要な時間が短縮されることになる。
【0036】
図2には、本発明の例示的実施形態によるパラレルハイブリッド車200を概略的に表した図を示す。このパラレルハイブリッド車は、内燃機関228、トランスミッション227、電気機械226、DC/DCコンバータ229、牽引用蓄電池210、スイッチ224及びヒータ202を含む。
【0037】
内燃機関228は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン又は多種燃料エンジンのいずれであってもよい。トランスミッション227は、内燃機関228と電気機械226との間の機械的接続を含む。トランスミッションは、中でも、クラッチ、ギヤボックス、ドライブシャフトなどを含んでもよい。電気機械226は、2つの機能、すなわち、車両を推進するためにトランスミッションにトルク又は動力を供給するモータとしての機能と、回生中(例えば、車両が制動している間)反対方向に、車輪からの機械的エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機としての機能とを有する。また、回生を内燃機関と一緒に実施することにより、充電電流を蓄電池に送ることもできる。
【0038】
電気機械は、任意の公知の構成の交流タイプ又は直流タイプのいずれでもよく、これらは当分野では公知であるため、本文ではこれ以上の説明は必要ないであろう。
【0039】
DC/DCコンバータを用いて、蓄電池及び/又は電気機械から発生する電圧(一般に、数百ボルトの範囲)を車両内の全電気装置に好適な線間電圧(一般に6〜50ボルトの範囲)に変換する。DC/DCコンバータは、車両内の電気機械/牽引用蓄電池と電気系統との間に配置するが、電気系統は、例えば、ヒータ202、ラジオ、内燃機関管理システム、電球、電子機器などを含む。
【0040】
牽引用蓄電池は、スイッチ224を介してハイブリッド車200内に配置される。このスイッチは様々な目的で用いられる。スイッチは、第一に、蓄電池からハイブリッド車に供給される高電圧を切断するための安全スイッチとなり、第二には、蓄電池の充電管理戦略において用いられる。
【0041】
第1温度調節回路は、内燃機関に用いられる。また、第2温度調節回路100は、牽引用蓄電池に用いられる。牽引用蓄電池は、ポンプ112、ラジエータ108及び牽引用蓄電池110と直列で第2温度調節回路100内に設けられる電気ヒータ102によって加熱される。電力は、電気モータ226から、第2温度調節回路100内のDC/DCコンバータ229を介してヒータに伝送され、蓄電池210が所定の温度範囲に満たない間に、電気モータ226を内燃機関228によって駆動する。
【0042】
蓄電池210の加熱中に、スイッチ224を開放することにより、蓄電池210を切断する。電気モータ226は、300〜800Vの範囲の高電圧を生成する。DC/DCコンバータは、この高電圧を6〜50Vの範囲の電圧に変換する。蓄電池が低温であるとき、冷却液がラジエータ108を迂回するように、弁104を設定する。
【0043】
これによって、効率を高め、蓄電池110、210のウォームアップ時間を短縮する。蓄電池が十分温かくなったら、すなわち使用する電池のタイプに固有の温度範囲に達したら、スイッチ224を閉じて蓄電池を接続することにより、蓄電池が車両に牽引力を供給する。蓄電池を確実に上記温度範囲内の温度にすることによって、蓄電池の寿命を損なうことなく、蓄電池を用いることができる。スイッチを閉じて、蓄電池を牽引力のために用いる場合、その温度は、可能な限り蓄電池の寿命を長くするように、温度調節回路により依然として調節できる。すなわち、蓄電池が電気モータに牽引力を供給している間も、ヒータ102、202は作動状態である。蓄電池が加熱されている(かつ切断されている)間、電気モータは、電圧が制御されている。すなわち、蓄電池が切断されている間は、十分且つ過剰ではない電圧が電気部品に確実に送られるように、電圧範囲が予め定められている。電気モータは、所定の電圧範囲内に系統電圧を維持するための調節装置として作動し、制動又は制動解除を行う。蓄電池が接続されると、上記に代わって、当分野では公知の方法で蓄電池内及び蓄電池からの電流を調節する。
【0044】
蓄電池の温度が、用いる蓄電池のタイプに固有の所与の温度範囲内であるときに限り、蓄電池が用いられ、蓄電池は、電気モータを介して車両に牽引力を供給する。蓄電池の温度範囲は、用いる蓄電池のタイプの技術資料にみいだすことができる。
【0045】
上に開示した本発明は、パラレルハイブリッド車について説明している。設定条件に適切な変更を加えれば、本発明はシリアルハイブリッド車にも同様に適用可能である。
【0046】
本発明が、上述し、図面に表示した実施形態に限定されるわけではないことは理解されよう。むしろ、当業者は、多くの変更及び改変が特許請求の範囲内でなされることを認識されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車の牽引用蓄電池の温度を制御する方法であって、該ハイブリッド車は、牽引力のための内燃機関及び電気モータを含み、該方法は、
a. 前記内燃機関の第1温度調節回路を設けるステップ、
b. 前記牽引用蓄電池の第2温度調節回路を設けるステップ、並びに
c. ポンプ、ラジエータ及び前記牽引用蓄電池と直列で前記第2温度調節回路内に設けられる電気ヒータによって前記牽引用蓄電池を加熱するステップを含み、
該方法が、
d. 前記蓄電池が所定の温度範囲に満たない間、前記内燃機関によって駆動される前記電気モータから前記第2温度調節回路内のDC/DCコンバータを介して前記ヒータに電力を伝送するステップをさらに含む、方法。
【請求項2】
e. 前記蓄電池が、前記所定の温度範囲内の温度を有するときのみ、牽引力のために前記蓄電池を使用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
f. 前記第2温度調節回路に前記ラジエータのバイパス回路を設けるステップと、
g. 前記ラジエータへの冷却液の流れまたは前記バイパス回路への冷却液の流れを弁によって調節するステップとをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
h. 前記蓄電池が前記所定の温度範囲に満たないとき、前記ヒータに電力を供給するために、電圧目標値によって前記電気モータを制御するステップをさらに含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
i. 前記第2温度調節回路を前記第1温度調節回路から遮断するステップをさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ハイブリッド車の牽引用蓄電池の温度を制御するシステムであって、該ハイブリッド車は、牽引力のための内燃機関及び電気モータを含み、該システムは、
前記内燃機関の第1温度調節回路と、
前記牽引用蓄電池の第2温度調節回路と、
前記第2温度調節回路内に設けられるヒータ、ポンプ及びラジエータを含み、該ヒータは、前記内燃機関によって駆動される前記電気モータからDC/DCコンバータを介して電力を供給される、システム。
【請求項7】
前記第2温度調節回路における前記ラジエータのバイパス回路と、
前記ラジエータへの冷却液の流れ又は前記バイパス回路への冷却液の流れを調節する弁とをさらに含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記蓄電池が所定の温度範囲に満たないとき、前記ヒータに動力を供給するために、電圧目標値によって前記電気モータを制御する制御装置をさらに含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1温度調節回路と第2温度調節回路が互いに遮断されている、請求項6に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−507290(P2013−507290A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533109(P2012−533109)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/SE2009/000442
【国際公開番号】WO2011/043703
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(500277711)ボルボ ラストバグナー アーベー (163)
【Fターム(参考)】