説明

ハイブリッド電源装置

【課題】複雑な制御システムを必要とする複数種の電池からなるハイブリッド電源を用いることなく、同一種の電池で長時間の連続放電が可能な高容量特性と大電流でのパルス放電が可能な高出力特性を同時に満足する電源装置を提供する。
【解決手段】放電特性の異なる高容量型非水電解質電池群と高出力型非水電解質電池群とが並列に接続されたハイブリッド電源装置であって、単電池当たりの0.2Cの放電容量は高容量型非水電解質電池群が高出力型非水電解質電池群より大きく、単電池当たりの0.2Cの放電容量に対する5Cの放電容量(5C放電容量/0.2C放電容量)は高出力型非水電解質電池群が高容量型非水電解質電池群より大きいハイブリッド電源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、パソコン等のモバイル分野、電動工具、掃除機等のパワーツール分野、電動自動車、電動産業用車両、電動バイク、電動アシスト自転車、電動車椅子、電動ロボット等の動力分野、ロードレベリング、ピークシフト、バックアップ等のシステム電源分野等に使用される電源装置に関し、より詳しくはその高性能化に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パソコン等のモバイル分野に比べて、電動工具等のパワーツール分野、電動バイク等の動力分野では電源に対する負荷変動が大きく、また長時間連続使用されるため、高出力で、高容量の電源が求められている。
【0003】
一般に、電池において高容量と高出力は相反する性能であり、両立させることが難しい。例えば、高容量型二次電池の代表であるリチウムイオン二次電池等の非水電解質電池は0.2C程度の低負荷で長時間の連続放電が可能であるためモバイル分野等の電源装置として主に利用されているが、前記のような低負荷時の電極面積当たりの電流密度は0.01A/cm程度に過ぎない。このため、上記のような高容量型の非水電解質電池は電流密度が0.1A/cm以上の大電流での放電が必要とされる電動バイク、電動アシスト自転車等の動力分野等で使用される高負荷用の電源としては不適である。また、上記のような動力分野では頻繁な電源のオン、オフが行われるため大電流のパルス放電特性が重要となるが、モバイル分野等で利用されている高容量型の非水電解質電池では十分なパルス放電容量が得られない。一方、高出力型の電源であるキャパシタ等では大電流放電は可能であるが、容量が極めて小さく長時間の連続放電が難しい。
【0004】
このため、単一の電池では両特性を満足する電源を得ることが困難であり、長時間小出力型のエネルギー電源と短時間大出力型のパワー電源とを組み合わせて使用するハイブリッド電源装置が提案され、実用化に向けた試みが行われている。例えば、長時間小出力型のエネルギー電源として、鉛電池、ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池や燃料電池を用い、短時間大出力型のパワー電源として、キャパシタ(コンデンサ)を用いたハイブリッド電源装置が提案されている(特許文献1〜4)。
【0005】
特許文献1では、電池と大容量コンデンサと電流制御回路を具備するハイブリッド電源装置が開示されており、負荷電流が大きいときに負荷に流す電池の放電電流が、負荷電流が小さいときに負荷に流す電池の放電電流及びコンデンサへの電池の充電電流との和にできるだけ近くなるように電流制御回路で制御することによって電池の利用効率を高めている。また、特許文献2では、主電池部に並列に補助電源が接続され、その補助電源に電圧昇圧手段が直列に接続されることによって効率よく二次電池を充電する電源が提案されている。また、特許文献3では、燃料電池と、単位二次電池が直列に接続された二次電池とを備え、単位二次電池の残容量検出手段と充電制御手段を組み込んだハイブリッド電源装置が提案されている。さらに、特許文献4では、一対のキャパシタ端子を有する電気二重層キャパシタ、エネルギー貯蔵装置、及び第1と第2の双方向DC/DCコンバータとを有するハイブリッド電源装置が提案されている。
【特許文献1】特開平8−308103号公報
【特許文献2】特開2004−48913号公報
【特許文献3】WO2002/025761パンフレット
【特許文献4】特開2004−56995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜4で提案されているような従来のハイブリッド電源装置は異種電源や異種部品を組み合わせて用いるため、これら異種電源や異種部品を最適に駆動するための電流制御回路、電圧昇圧手段、残容量検出手段、充電制御手段、双方向DC/DCコンバータ等の複雑な制御システムが必要であった。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、複雑な制御システムを必要とする複数種の電源からなるハイブリッド電源を用いることなく、同一種の電池で、長時間の連続放電が可能な高容量特性と大電流でのパルス放電が可能な高出力特性を同時に満足する電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明とは、放電特性の異なる高容量型非水電解質電池群と高出力型非水電解質電池群とが並列に接続されたハイブリッド電源装置であって、単電池当たりの0.2Cの放電容量は前記高容量型非水電解質電池群が前記高出力型非水電解質電池群より大きく、かつ、単電池当たりの0.2Cの放電容量に対する5Cの放電容量(5C放電容量/0.2C放電容量)は前記高出力型非水電解質電池群が前記高容量型非水電解質電池群より大きいことを特徴とするハイブリッド電源装置である。
【0009】
上記構成によれば、同種の高容量型非水電解質電池群と高出力型非水電解質電池群とが並列に接続された電源装置であるため、複雑な制御システムの組み込みが不要となる。また、大電流放電時には高出力型非水電解質電池群がその大電流の大部分を担い、小電流放電時には両電池群から放電されるとともに、両電池群が並列に接続されているため、高容量型非水電解質電池群から高出力型非水電解質電池群へ電位平衡が達成される電気量分の充電が行われる。これによって、電池内のリチウムイオンの分布が積極的に均一化され、パルス放電での電圧低下を低減することができる。
【0010】
また、本発明は上記構成を有するハイブリッド電源装置において、前記高容量型非水電解質電池群及び高出力型非水電解質電池群の少なくとも一方の電池群が複数の単電池で構成されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、電池容量や出力電圧の異なる電池群を有するハイブリッド電源装置とすることができるため、種々の用途に対して最適な電源装置を容易に作製することができる。
【0012】
また、本発明は前記複数の単電池が直列に接続されていることを特徴とするハイブリッド電源装置である。
【0013】
上記構成によれば、各電池群で異なる出力電圧が得られるため、用途に応じて最適な電源装置を容易に作製することができる。
【0014】
さらに、本発明は前記複数の単電池が並列に接続されていることを特徴とするハイブリッド電源装置である。
【0015】
上記構成によれば、各電池群で異なる負荷特性が得られるため、用途に応じて最適な電源装置を容易に作製することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、同種の非水電解質電池を組み合わせて、複雑な制御システムを使用することなく、長時間の連続放電が可能な高容量特性と大電流でのパルス放電が可能な高出力特性を同時に満足する電源装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明のハイブリッド電源装置3の一例を示す模式図である。この図1のハイブリッド電源装置3では、高容量型非水電解質電池群1と高出力型非水電解質電池群2とが並列に接続されており、各電池群はそれぞれ1つの単電池、非水電解質電池1a、2aから構成されている。
【0018】
本発明では、この高容量型非水電解質電池群1を構成する非水電解質電池1aと高出力型非水電解質電池群2を構成する非水電解質電池2aの放電特性が異なることを特徴とする。すなわち、本発明のハイブリッド電源装置3は、低負荷の0.2Cの放電容量は非水電解質電池1aが非水電解質電池2aより大きいが、0.2Cの放電容量に対する高負荷の5Cの放電容量(5C放電容量/0.2C放電容量)は非水電解質電池2aが非水電解質電池1aより大きくなるように設計されている。なお、上記0.2Cの放電容量及び5Cの放電容量は、単電池をそれぞれ使用機器での満充電に相当する電圧まで充電した後、放電終止電圧まで理論容量に対して0.2C放電あるいは5C放電を行ったときの容量である。
【0019】
通常、モバイル分野等の低負荷用途で使用されている非水電解質電池は高容量型であり、0.2Cでの低負荷の放電特性には優れるが、電動アシスト自転車、電動バイク等の電源として利用される場合、スタート時や坂路では5C以上の大電流での放電が要求されるため十分な放電が得られ難く、さらに負荷が大きくなると放電ができなくなる。このため、本発明のハイブリッド電源装置3は高負荷時でも十分な放電が可能となるように高容量型の非水電解質電池1aとともに、高出力型の非水電解質電池2aとを組み合わせた電源とし、大電流放電時には高出力型の非水電解質電池2aがその大電流の大部分を担い、小電流放電時には高負荷特性に優れる高容量型の非水電解質電池1aと高出力型の非水電解質電池2aの両方で放電を行うとともに、両電池が並列に接続されることにより高容量型の非水電解質電池1aから高出力型の非水電解質電池2aへ電位平衡が達成される電気量分の充電が行われるように構成されている。
【0020】
また、非水電解質電池では大電流放電を行うと、リチウムイオン濃度が負極近傍で増大し正極近傍で減少して不均一なリチウムイオンの分布が発生する。特に、動力分野では電源の頻繁な電源のオン、オフが繰り返されるため大電流のパルス放電が行われるが、このような場合リチウムイオンの不均一な分布が増幅され、結果として電圧降下が生じパルス放電容量が低下する。本実施の形態のハイブリッド電源装置3では放電オン時に高出力型の非水電解質電池2aが大電流放電するが、放電オフ時には高容量型の非水電解質電池1aから高出力型の非水電解質電池2aに充電が行われるため、単一の非水電解質電池のみからなる充電が行われない電源と比較して積極的に電池内のリチウムイオンの分布が均一化される。このため、大電流でのパルス放電が繰り返し行なわれても、高容量型あるいは高出力型非水電解質電池のみからなる電源より電圧降下が低減されパルス放電容量の低下が抑制される。
【0021】
本発明において、高容量型非水電解質電池群1を構成する非水電解質電池1a及び高出力型非水電解質電池群2を構成する非水電解質電池2aは各電池で正極活物質の種類、正極合剤の組成等を変えることにより放電特性を調整してもよいが、正極活物質の塗工量を変更して正極中の集電体と正極活物質の割合を変更すれば同一種の正極活物質を用いて簡便に低負荷と高負荷での放電容量を調整することができるため好ましい。例えば、モバイル分野で使用されている代表的な高容量型の非水電解質電池であるリチウムイオン二次電池では正極の容量当たりの極板面積が200cm/Ah未満であるが、容量当たりの極板面積をさらに大きくすることにより、正極中の正極活物質と集電体との体積割合が変更され放電特性の異なる高出力型の非水電解質電池が得られる。
【0022】
本発明において、同一の正極活物質を用いて上記のような容量当たりの極板面積を変更することにより放電特性の異なる非水電解質電池を作製する場合、容量当たりの極板面積が200cm/Ah未満の正極を有する非水電解質電池を高容量型の非水電解質電池として用い、容量当たりの極板面積が200cm/Ah以上、800cm/Ah以下の正極を有する非水電解質電池を高出力型の非水電解質電池として用いることが好ましい。
【0023】
上記容量当たりの極板面積が200cm/Ah未満の正極を作製する場合、例えば代表的な正極活物質であるコバルト酸リチウムを用いる場合について説明すると、正極活物質の片面当たりの塗工量を17.8mg/cm以上とすることにより調整できる。また、同活物質を用いて容量当たりの極板面積が200cm/Ah以上、800cm/Ah以下の正極とする場合、正極活物質の片面当たりの塗工量を4.4〜17.7mg/cmとすることにより調整できる。
【0024】
本発明において、容量当たりの極板面積を変更することにより放電特性の異なる非水電解質電池を作製する場合、高容量型の非水電解質電池1aと高出力型の非水電解質電池2aの各正極の容量当たりの極板面積の差は使用される機器の特性に基づいて適宜選択することができるが、100cm/Ahより大きいことが好ましい。高容量型の非水電解質電池の正極と高出力型の非水電解質電池の正極の容量当たりの極板面積の差が小さいと、低負荷に対する高負荷の放電特性に十分な差が得られ難くなる。
【0025】
本発明の正極に用いられる構成材料としては従来から公知のものを使用することができる。正極活物質としては、具体的には、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物を用いることができる。結着剤としては、具体的には、例えば、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の他、ポリアクリル酸系誘導体ゴム粒子(商品名BM−500B,日本ゼオン(株)社製)等のゴム系結着剤を用いることができる。PTFEやBM−500Bが結着剤として使用される場合、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)の他、変性アクリロニトリルゴム(商品名BM−720H,日本ゼオン(株)社製)等と組み合わせて用いることが好ましい。結着剤と増粘剤の添加量は、特に制限されるものではないが、正極活物質100質量部当たりの結着剤量が0.1〜5質量部、増粘剤量が0.1〜5質量部であることが好ましい。また、本発明では他の任意成分として導電剤等を添加してもよい。導電剤としては、具体的には、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、各種黒鉛等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明の正極は、上記のような正極活物質、結着剤、必要により増粘剤及び導電剤をN−メチルピロリドン(NMP)等の溶媒を用いて混合することによりペーストを調整し、例えば、厚さ10〜50μmのアルミニウム製の集電体上に正極活物質と集電体が各正極中で所定の厚みとなるように塗布し、乾燥、圧延後、裁断することにより得られる。
【0027】
本発明の負極に用いられる構成材料としては従来から公知のものを使用することができる。負極活物質としては、具体的には、例えば、各種天然黒鉛、各種人造黒鉛、シリコン含有複合材料、各種合金材料等を用いることができる。結着剤としては、具体的には、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、SBRのアクリル酸変性体等を用いることができる。また、本発明では他の任意成分として水溶性高分子からなる増粘剤を併用してもよく、水溶性高分子としては、具体的には、例えば、セルロース系樹脂が挙げられ、その中でもCMCが好ましい。結着剤と増粘剤の添加量は、特に制限されるものではないが、負極活物質100質量部当たりの結着剤量が0.1〜5質量部、増粘剤量が0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0028】
本発明の負極は、上記のような負極活物質、結着剤、必要により増粘剤及び導電剤をN−メチルピロリドン(NMP)等の溶媒を用いて混合してペーストを調整し、例えば、厚さ10〜50μmの銅製の集電体上に所定厚みとなるように塗布し、乾燥、圧延後、裁断することにより得られる。なお、本発明の非水電解質電池は負極容量を正極容量より大きくした正極容量規制とされる。
【0029】
次に、上記のようにして得られる正極及び負極をセパレータを介して対向させて電極が巻回あるいは積層された構造を有する電極体が作製される。
【0030】
本発明で用いることができるセパレータとしては、融点が200℃以下の樹脂製微多孔質フィルムが好ましい。これらの中でも、ポリエチレンやポリプロピレンもしくはポリエチレンとポリプロピレンの混合物や共重合体等からなるセパレータがより好ましい。このようなセパレータであれば電池が外部短絡した場合、セパレータが溶融することで電池の抵抗が高くなり、短絡電流が小さくなるため電池が発熱して高温になることを防ぐことができる。なお、セパレータの厚みはイオン伝導性を確保しつつエネルギー密度を維持する観点から、10〜40μmの範囲が好ましい。
【0031】
上記のようにして作製される電極体は各電極から集電が行われるように集電板と接続される。集電板との接続には、例えば、各電極の幅方向端部で集電体の露出部分を形成しておき、その露出部分と集電板とを多数点で接触させる方法を用いることができる。
【0032】
本発明で用いることができる非水電解質としては、例えば、非水溶媒にLiPF、LiBF等の各種リチウム塩を溶質として1種または2種以上溶解したものが望ましい。非水溶媒としては、具体的には、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等を用いることができる。非水溶媒は、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。また、正極および/または負極の活物質表面に皮膜を形成させ過充電時の安定性等を確保するために、ビニレンカーボネート(VC)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、またはVCやCHBの誘導体等を添加してもよい。なお、本発明の非水電解質は液体電解質だけでなく、ゲル状または固体電解質を用いてもよい。
【0033】
本発明の非水電解質電池は上記のようにして作製される電極体及び非水電解質を用い、これらを電池缶内に挿入し、封口する工程を経て作製される。
【0034】
(実施の形態2)
本発明のハイブリッド電源装置は、高容量型非水電解質電池群及び高出力型非水電解質電池群の少なくとも一方が複数の非水電解質電池からなる構成を有していてもよい。図2(a)〜(c)は本実施の形態のハイブリッド電源装置の一例を示す模式図である。なお、本実施の形態で使用される各非水電解質電池の放電特性及び電極等の構成は実施の形態1で説明された各非水電解質電池と同様であるため、その説明は省略し、異なる点のみ説明する。
【0035】
図2(a)は高容量型非水電解質電池群1が2つの非水電解質電池1aを並列に接続した電池群からなり、その高容量型非水電解質電池群1と1つの非水電解質電池2aからなる高出力型非水電解質電池群2とが並列に接続されたハイブリッド電源装置である。このような構成とすることにより、高容量型非水電解質電池群1は複数の非水電解質電池1aを並列に接続して構成されているため、低負荷で大きな電池容量が求められる用途に好適な電源装置が得られる。
【0036】
図2(b)は、高容量型非水電解質電池群1及び高出力型非水電解質電池群2のいずれも各2個の非水電解質電池1aあるいは2aが並列に接続されたハイブリッド電源装置である。このような構成とすることにより、低負荷及び高負荷両方の容量が増加するため、両負荷特性で大きな電池容量が求められる用途に好適な電源装置が得られる。
【0037】
図2(c)は、高容量型非水電解質電池群1及び高出力型非水電解質電池群2のいずれも各2個の非水電解質電池1aあるいは2aが直列に接続されたハイブリッド電源装置である。このような構成とすることにより、各電池群で異なる電池電圧が得られるため、低負荷及び高負荷で高電圧が求められる用途に好適な電源装置が得られる。
【0038】
なお、図2(a)〜(c)では複数の単電池からなる電池群はいずれも2つの単電池が接続された形態で示されているが、使用機器で要求される特性に応じてその数は適宜変更することができる。また、図2では各電池群で単電池が並列または直列に接続された構成のみが説明されたが、使用機器で要求される特性に応じて接続形態を適宜変更することができる。例えば、一方の電池群は並列に接続し、他方の電池群は直列に接続した構成とすることもできる。
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例
<単電池の作製>
(リチウムイオン二次電池A)
コバルト酸リチウム30kgを、呉羽化学(株)製PVDF#1320(固形分12質量部のN−メチルピロリドン(NMP)溶液)10kg、アセチレンブラック900gおよび適量のNMPとともに双腕式練合機にて撹拌し、正極ペーストを調整した。このペーストを15μm厚のアルミニウム箔上に集電板と接続される露出部分を形成するため幅方向端部を除いて片面活物質量が35.3mg/cmとなるように両面に塗布、乾燥し、総厚が215μmとなるように圧延した後、幅56mm、長さ411mmの寸法に裁断し、正極を作製した。
【0041】
上記とは別に、人造黒鉛20kgを、日本ゼオン(株)製のSBRアクリル酸変性体であるBM−400B(商品名、固形分40質量部)750g、CMC300gおよび適量の水とともに双腕式練合機にて撹拌し、負極ペーストを作製した。このペーストを10μm厚の銅箔上に正極と同様にして幅方向端部の銅箔の露出部分を除いて片面活物質量が16.0mg/cmとなるように両面に塗布、乾燥し、総厚が215μmとなるように圧延した後、幅58mm、長さ471mmの寸法に裁断し、負極を作製した。
【0042】
上記の正極及び負極を、ポリエチレン製微多孔質セパレータ(旭化成社製9420G)を介して捲回し、円筒形の電極体を作製した。この際、電池缶に挿入したときの電極体の蓋面側には正極ペーストが塗布されていない無垢のアルミニウム箔が、底面側には負極ペーストが塗布されていない無垢の銅箔が、それぞれ露出するよう配置した。正極のアルミニウム箔部にはアルミニウム製の集電板(厚み0.3mm)を、負極の銅箔部には鉄製の集電板(厚み0.3mm)を溶接した後、直径18mm、高さ68mmの円筒形の電池ケースに電極体を挿入した。その後、ECとEMCとの混合溶媒(体積比1:3)に1.0MのLiPFを溶解させた非水電解質を5g注入し、封口加工を施して、電池ケース内径に対する電極体直径が95%、理論容量2300mAh、正極の容量当たりの極板面積が100cm/Ahの円筒形のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0043】
(リチウムイオン二次電池B)
リチウムイオン二次電池Aの作製において、正極を片面活物質量が22.8mg/cm、圧延後の総厚が144μm、長さが536mm、負極を片面活物質量が17.2mg/cm、総厚が141μm、長さが596mmとなるようにした以外は、リチウムイオン二次電池Aと同様にして理論容量2000mAh、正極の容量当たりの極板面積が150cm/Ahの円筒形のリチウムイオン二次電池Bを作製した。
【0044】
(リチウムイオン二次電池C)
リチウムイオン二次電池Aの作製において、正極を片面活物質量が17.7mg/cm、圧延後の総厚が115μm、長さが643mm、負極を片面活物質量が15.0mg/cm、総厚が111μm、長さが703mmとなるようにした以外は、リチウムイオン二次電池Aと同様にして理論容量1800mAh、正極の容量当たりの極板面積が200cm/Ahの円筒形のリチウムイオン二次電池Cを作製した。
【0045】
(リチウムイオン二次電池D)
リチウムイオン二次電池Aの作製において、正極を片面活物質量が11.5mg/cm、圧延後の総厚が80μm、長さが858mm、負極を片面活物質量が12.1mg/cm、総厚が75μm、長さが918mmとなるようにした以外は、リチウムイオン二次電池Aと同様にして理論容量1600mAh、正極の容量当たりの極板面積が300cm/Ahの円筒形のリチウムイオン二次電池Dを作製した。
【0046】
(リチウムイオン二次電池E)
リチウムイオン二次電池Aの作製において、正極を片面活物質量が8.9mg/cm、圧延後の総厚が65μm、長さが1000mm、負極を片面活物質量が11.0mg/cm、総厚が60μm、長さが1060mmとなるようにした以外は、リチウムイオン二次電池Aと同様にして理論容量1400mAh、正極の容量当たりの極板面積が400cm/Ahの円筒形のリチウムイオン二次電池Eを作製した。
【0047】
(リチウムイオン二次電池F)
リチウムイオン二次電池Aの作製において、正極を片面活物質量が4.4mg/cm、圧延後の総厚が40μm、長さが1572mm、負極を片面活物質量が8.9mg/cm、総厚が34μm、長さが1632mmとなるようにした以外は、リチウムイオン二次電池Aと同様にして理論容量1100mAh、正極の容量当たりの極板面積が800cm/Ahの円筒形のリチウムイオン二次電池Fを作製した。
【0048】
上記のようにして作製した各リチウムイオン二次電池の0.2Cの放電容量及び5Cの放電容量を下記の条件で測定した。この結果を表1に示す。
【0049】
[0.2C容量]
各電池を電流1Aで4.2Vに達するまで充電を行った後、設計理論容量の0.2C放電を行い、電池電圧が2.5Vに達するまでの容量を測定した。
【0050】
[5C容量]
各電池を電流1Aで4.2Vに達するまで充電を行った後、設計理論容量の5C放電を行い、電池電圧が2.5Vに達するまでの容量を測定した。
【0051】
【表1】

【0052】
上記のようにして作製した各リチウムイオン二次電池を使用し、以下のハイブリッド電源装置を作製し、評価した。
【0053】
<ハイブリッド電源装置の作製>
(実施例1)
リチウムイオン二次電池Aとリチウムイオン二次電池Fの各1セルの電池群を並列に接続し、ハイブリッド電源装置を作製した。
【0054】
(実施例2)
リチウムイオン二次電池Aとリチウムイオン二次電池Eの各1セルの電池群を並列に接続し、ハイブリッド電源装置を作製した。
【0055】
(実施例3)
リチウムイオン二次電池Aとリチウムイオン二次電池Dを各1セルの電池群を並列に接続し、ハイブリッド電源装置を作製した。
【0056】
(実施例4)
リチウムイオン二次電池Bとリチウムイオン二次電池Fの各1セルの電池群を並列に接続し、ハイブリッド電源装置を作製した。
【0057】
(実施例5)
リチウムイオン二次電池Aとリチウムイオン二次電池Fの各2セルが並列に接続された電池群を並列に接続し、ハイブリッド電源装置を作製した。
【0058】
(実施例6)
リチウムイオン二次電池Aの2セルが並列に接続された電池群とリチウムイオン二次電池Fの1セルの電池群とを並列に接続し、ハイブリッド電源装置を作製した。
【0059】
(実施例7)
リチウムイオン二次電池Aとリチウムイオン二次電池Fの各2セルが直列に接続された電池群を並列に接続して電源装置を作製した。
【0060】
(比較例1)
2セルのリチウムイオン二次電池Aを並列に接続して電源装置を作製した。
【0061】
(比較例2)
2セルのリチウムイオン二次電池Bを並列に接続して電源装置を作製した。
【0062】
(比較例3)
2セルのリチウムイオン二次電池Cを並列に接続して電源装置を作製した。
【0063】
(比較例4)
2セルのリチウムイオン二次電池Dを並列に接続して電源装置を作製した。
【0064】
(比較例5)
2セルのリチウムイオン二次電池Eを並列に接続して電源装置を作製した。
【0065】
(比較例6)
2セルのリチウムイオン二次電池Fを並列に接続して電源装置を作製した。
【0066】
(比較例7)
リチウムイオン二次電池Dとリチウムイオン二次電池Eの各1セルの電池群を並列に接続し、ハイブリッド電源装置を作製した。
【0067】
上記のようにして作製した各電源について、以下の0.2C容量、最大パルス放電電流、パルス放電容量、パルス放電効率(パルス放電容量/0.2C容量)、Cレート(最大パルス放電電流/0.2C容量)、及び放電電圧を測定し評価した。この結果を表2に示す。
【0068】
[0.2C容量]
実施例1〜6及び比較例1〜7の各電源を電流1Aで4.2Vに達するまで充電を行った後、設計理論容量の0.2C放電を行い、電池電圧が2.5Vに達するまでの容量を測定した。また、実施例7の電源は電流1Aで8.4Vに達するまで充電を行った後、設計理論容量の0.2C放電を行い、電池電圧が5.0Vに達するまでの容量を測定した。
【0069】
[最大パルス放電電流]
実施例1〜6及び比較例1〜7の各電源を電流1Aで4.2Vに達するまで充電を行った後、0.5秒ON、10秒OFFの連続パルス放電を行った。この際、パルス電流値を増加させ、放電開始時に3.0V以上の電圧を維持可能な最大パルス放電電流を測定した。また、実施例7の電源は電流1Aで8.4Vに達するまで充電を行った後、0.5秒ON、10秒OFFの連続パルス放電を行い、放電開始時に6.0V以上の電圧を維持可能な最大放電電流を測定した。
【0070】
[パルス放電容量]
実施例1〜6及び比較例1〜7の各電源を電流1Aで4.2Vに達するまで充電を行った後、前記最大電流で0.5秒ON、10秒OFFの連続パルス放電を行い、電圧が2.5Vに達するまでの容量を測定した。また、実施例7の電源は電流1Aで8.4Vに達するまで充電を行った後、前記最大電流で0.5秒ON、10秒OFFの連続パルス放電を行い、電源電圧が5.0Vに達するまでの容量を測定した。
【0071】
[パルス放電効率]
各電源の0.2C容量に対するパルス放電容量の百分率をパルス放電効率とした。
【0072】
[Cレート]
各電源の0.2C容量に対する最大パルス放電電流をCレートとして評価した。
【0073】
[放電電圧評価]
各電源の最大パルス放電電流での連続パルス放電中の放電平均電圧を測定した。
【0074】
【表2】

【0075】
表2に示すように、本発明の実施例1〜4のハイブリッド電源装置は、それぞれ各電池群に相当する同一の放電特性の電池群が並列に接続された比較例1〜6の電源の平均よりも高いパルス放電容量が得られており、高負荷の特性が改善されていることが分かる。これは放電オン時に高出力型非水電解質電池群が大電流放電し、放電オフ時には高容量型非水電解質電池群から高出力型非水電解質電池群に充電が行われるため、単一種の非水電解質電池のみからなる充電が行われない電源と比較して積極的に電池内のリチウムイオンの分布が均一化されるためである。このため、大電流でのパルス放電が繰り返し行なわれても、高容量型あるいは高出力型の非水電解質電池のみからなる電源より電圧降下が低減されパルス放電容量の低下が抑制される。なお、正極の容量当たりの極板面積が異なるリチウムイオン二次電池を有する比較例7の電源は、各電池群の0.2Cと5Cの放電特性で差がないため、高負荷の特性の改善が十分得られない。
【0076】
また、並列あるいは直列に接続された非水電解質電池からなる電池群を有する実施例5〜7の電源によれば、高負荷特性を低下することなく高容量化あるいは高電圧化できることが分かる。
【0077】
以上説明されたように、本発明のハイブリッド電源装置によれば、同種の非水電解質電池で、複雑な制御システムを使用することなく、長時間の連続放電が可能な高容量特性と大電流でのパルス放電が可能な高出力特性を同時に満足する電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態1のハイブリッド電源装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態2のハイブリッド電源装置の一例を示す模式図である。(a)は2つの非水電解質電池1aを並列に接続した高容量型非水電解質電池群1と1つの非水電解質電池2aからなる高出力型非水電解質電池群2とが並列に接続されたハイブリッド電源装置、(b)は各2個の非水電解質電池1aあるいは2aが並列に接続された高容量型非水電解質電池群1と高出力型非水電解質電池群2が並列に接続されたハイブリッド電源装置、(c)は、各2個の非水電解質電池1aあるいは2aが直列に接続された高容量型非水電解質電池群1と高出力型非水電解質電池群2が並列に接続されたハイブリッド電源装置である。
【符号の説明】
【0079】
1 高容量型非水電解質電池群
1a 高容量型の非水電解質電池
2 高出力型非水電解質電池群
2a 高出力型の非水電解質電池
3 ハイブリッド電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電特性の異なる高容量型非水電解質電池群と高出力型非水電解質電池群とが並列に接続されたハイブリッド電源装置であって、
単電池当たりの0.2Cの放電容量は前記高容量型非水電解質電池群が前記高出力型非水電解質電池群より大きく、
単電池当たりの0.2Cの放電容量に対する5Cの放電容量(5C放電容量/0.2C放電容量)は前記高出力型非水電解質電池群が前記高容量型非水電解質電池群より大きいことを特徴とするハイブリッド電源装置。
【請求項2】
前記高容量型非水電解質電池群及び高出力型非水電解質電池群の少なくとも一方の電池群は複数の単電池から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電源装置。
【請求項3】
前記複数の単電池が直列に接続されていることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド電源装置。
【請求項4】
前記複数の単電池が並列に接続されていることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド電源装置。

【図1】
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【図2】
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