説明

ハウジング形管継手

【課題】 作業現場での組み立て作業および管への着脱作業を簡便に行うことができ、軽量コンパクト化を可能にするハウジング形管継手を提供する。
【解決手段】 少なくとも3つの円弧状セグメント25を周方向に間隔を置くように配置して形成されたハウジング21と、ハウジング21の内部に配置され、一対の管の端部を液密シールする弾性リング22と、両端部にループ部29,29を有し、ハウジング21の外面を囲むように配置された締め付けバンド23と、締め付けバンド23の両端ループ部29,29に連結され、締め付けバンド23を締め付けることにより円弧状セグメント25同士を接合させる締め付け手段24とを有し、前記弾性リング22は、各円弧状セグメント25に対応するように周方向に間隔を置いて半径方向外方に延びる係止突部28を有し、前記円弧状セグメント25は、外面両側部に締め付けバンド案内部26、26と前記弾性リング22に設けた係止突部28が挿着される位置合わせ孔27とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部に環状溝を有する2つの管を液密にシールするためのハウジング形管継手に係り、特に、着脱作業が簡便で軽量コンパクト化が可能なハウジング形管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
上水道のような比較的小口径配管に用いられる管の接合部を液密にシールするハウジング形管継手として、図8に示す構成のハウジング形管継手が多くの産業で使用されている。
【0003】
上記ハウジング形管継手は、鋳物で作られた一対の半円状継手セグメント1,2と、半円状継手セグメント1の両端部に一体に形成されたボルト座3,3と、半円状継手セグメント2の両端部に一体に形成されたボルト座4,4と、各半円状継手セグメント1,2に形成された2つの管5,6の端部を収容するための空間7と、半円状継手セグメント1,2に形成された空間7に2つの管5,6の端部をシールするように配置された弾性リング8と、半円状継手セグメント1,2の空間7の両側に形成され、2つの管5,6の端部に設けた周方向溝5a,6aに係合する2つの締付部9,10と、半円状継手セグメント1,2のボルト座3,4に設けた開口3a,4aに挿通され一対の半円状継手セグメント1,2を互いに結合するボルトナット固定手段11とから構成されている。
【0004】
上記ハウジング形管継手は、半円状継手セグメント1,2の空間7,7に配置された弾性リング8を2つの管5,6の端部外周面に圧接することで2つの管5,6の端部を液密シールし、各継手セグメント1,2に設けた締付部9,10を2つの管5,6の端部に設けた周方向溝5a,6aに係着することで2つの管5,6を位置固定するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記形式のハウジング形管継手は、半円状継手セグメントが鋳物で作られているため、全体重量が重くなるとともに構造的にコンパクト化することができず、しかも、作業現場での組み立て作業および管への取り付けおよび取り外し作業を簡便に行うことができないという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解消し、作業現場での組み立て作業および管への着脱作業を簡便に行うことができるハウジング形管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のハウジング形管継手は、少なくとも3つの円弧状セグメントを周方向に間隔を置くように配置して形成されたハウジングと、ハウジングの内部に配置され、一対の管の端部を液密シールする弾性リングと、両端部にループ部を有し、ハウジングの外面を囲むように配置された締め付けバンドと、締め付けバンドの両端ループ部に連結され、締め付けバンドを締め付けることにより円弧状セグメント同士を接合させる締め付け手段とを有し、前記弾性リングは、各円弧状セグメントに対応するように周方向に間隔を置いて位置する半径方向外方に延びる係止突部を有し、前記円弧状セグメントは、外面両側部に締め付けバンド案内部と前記弾性リングに設けた係止突部が挿着される位置合わせ孔とを有して構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハウジングを少なくとも3つの円弧状セグメントから形成し、円弧状セグメントに設けた位置合わせ孔に弾性リングに設けた半径方向外方に延びる係止突部を挿着することで、ハウジングの弾性リングに対する位置決めができ、管と管の継ぎ目に弾性リングおよびハウジングを配置し、ハウジングを締め付けバンドを介して締め付けることで取り付けが完了するので、作業現場での組み立て作業および管への着脱作業を簡便に行うことができる。
【0009】
また、本発明によれば、ハウジングを金属板の成形品とすることで、軽量コンパクト化が可能になり、溶接手段や小ねじ等の部品を使用することなく構成部材を組み立てることができるので、部品管理の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明によるハウジング形管継手の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は本発明によるハウジング形管継手の斜視図である。図2は本発明によるハウジング形管継手の分解斜視図である。
【0011】
本発明によるハウジング形管継手20は、図1および図2に示すように、ハウジング21と、このハウジング21の内部に配置された弾性リング22と、ハウジング21の外面を囲むように配置された締め付けバン23と、締め付けバンド23の両端部を締め付け自在に連結する締め付け手段24とから構成される。
【0012】
上記ハウジング21は、4つの円弧状セグメント25,25,25,25を周方向に間隔を置くように弾性リング22の外面に配置して形成される。各円弧状セグメント25は、同一形状であり、略90度の円弧面を有する。円弧状セグメント25は、ステンレス鋼板のような金属板を細長い矩形状に裁断したハウジング素材を図示しない成形手段により図2に示すような断面逆U形に成形し、断面逆U形に成形した素材を1/4円環形に成形することで作られる。ハウジング21を構成する円弧状セグメント25の逆U形端部は、図8に示す2つの管5,6の端部に設けた周方向溝5a,6aに係合する締付部として作用する。
【0013】
上記円弧状セグメント25は、両端部の両側の一部を切り起こすことで作られた締め付けバンド案内部26、26と、周方向中間部の両側に形成された位置合わせ孔27,27とを有する。円弧状セグメント24の外面に形成された締め付けバンド案内部26、26の間に締め付けバンド23が配置される。円弧状セグメント25の締め付けバンド案内部26は、別体の案内片を円弧状セグメント25の両側に結合することで形成してもよい。また、円弧状セグメント25の位置合わせ孔27は、周方向中間部の両側に限らず、周方向端部の両側あるいは周方向中間部の中央部分に形成してもよい。
【0014】
上記弾性リング22は、ゴムを素材として成形された円筒体であり、対内圧および外圧の圧力に応じて安定したシール力を発揮するリップタイプのオートマチックシール機構を搭載した構成であることが好ましい。
【0015】
上記弾性リング22は、図2および図3に示すように、幅方向に間隔を置いて半径方向外方に延びる係止突部28,28を周方向に90度の角度間隔を置いて有する。弾性リング22に設けた90度の角度間隔を置いた係止突部28,28に、各円弧状セグメント25に設けた位置合わせ貫通孔27,27が挿入される。これにより、各円弧状セグメント25は、等間隔Lを置いて弾性リング22の外面に固定される。
【0016】
上記締め付けバンド23は、細長い矩形状に裁断したステンレス鋼板により形成されたものであり、その両端部を外側に本体側に重なるように曲げることで形成されるループ部29,29を有する。各ループ部29に円形孔30,30が形成されている。
【0017】
上記締付手段24は、図6および図7に示すように、ねじ部31とヘッド部32を有するボルト33と、ボルト33のねじ部31に螺着されたナット34と、ボルト33のねじ部31とヘッド部32の間に一体形成されたループ押圧部35とを有する。ナット34とループ押圧部35の対向する側は円弧面となっている。
【0018】
上記締付手段24は、締め付けバンド23の一方のループ部29にナット34が位置し、他方のループ部29にループ押圧部35が位置するように締め付けバンド23に取り付けられる。
【0019】
つぎに、本発明のハウジング形管継手20の作用を説明する。
本発明のハウジング形管継手20は、製造工場で下記する手順で組み立てられる。
【0020】
まず、4つの円弧状セグメント25を、図2に示すように、弾性リング22の外周面に沿って配置し、各円弧状セグメント25の位置合わせ孔27,27を弾性リング22の係止突部28,28に整合させる。
【0021】
ついで、円弧状セグメント25を弾性リング22の外面に押し付け、図3に示すように、各円弧状セグメント25の位置合わせ孔27,27に弾性リング22の係止突部28,28を挿着する。これにより、4つの円弧状セグメント25は、弾性リング22に周方向間隔Lを置いて取り付けられる。
【0022】
つぎに、4つの円弧状セグメント25の外面を囲むように締め付けバン23を配置し、締め付けバンド23の両端部に設けたループ部29に締め付け手段24を取り付ける。これにより、本発明のハウジング形管継手20の組み立てが完了する。
【0023】
本発明のハウジング形管継手20を配管の継ぎ目に取り付けるには、作業現場において組み立てられたハウジング形管継手20を、図4および図6に示すように、弾性リング22が2つの管5,6の接合部を囲むように管5,6に装着する。この場合、弾性リング22の内径を管5,6の外径より大径に設定しておく。
【0024】
つぎに、ハウジング21を形成する各円弧状セグメント25のの締付部を2つの管5,6の端部に設けた周方向溝5a,6aに対応するように配置する。
【0025】
ついで、締め付けバン23に取り付けられた締付手段24のボルト33を締める方向に回す。これにより、締付手段24のボルト33に設けたループ押圧部35とねじ部31に螺着されたナット34との距離が、図6に示す位置から図7にに示す位置に移動し、ハウジング21を形成する4つの円弧状セグメント25は、図6に示す位置から図7に示す位置に移動し、ハウジング21を構成する4つの円弧状セグメント25の間隔Lが零になり、ハウジング21が円環状になる。ハウジング21が円環状になることで、ハウジング21の逆U形の両端部が、2つの管5,6の端部に形成された周方向溝5a,6aに係合し、ハウジング21は、2つの管5,6の端部に固定される。
【0026】
ハウジング形管継手20の締め付けに際して、ハウジング21を形成する円弧状セグメント25は弾性リング22に対して等間隔に配置されているので、円弧状セグメント25が弾性リング22を噛み込むことがなく、ステンレス板等のバックアップが不要となる。
【0027】
また、本発明のハウジング形管継手20は、工場で組み立てられた状態で作業現場に送られ、2つの管5,6の継ぎ目に配置し、締め付けバン23を締め付けるだけで取付けられ、また、ハウジング形管継手20の取り外しを締め付けバン23を緩めることで行なうので、従来のハウジング形管継手に比べて配管に対する着脱作業を簡便に行うことができる。
【0028】
また、本発明のハウジング形管継手20は、ハウジング21を構成する4つの円弧状セグメント25を金属板により成形することで、従来品に比べて軽量化を図ることができ、ハウジング21にボルト支持構造を形成する必要がないので、コンパクト化が可能になる。
【0029】
本発明のハウジング形管継手20は、溝付管の端部にそのまま適用できるので、従来のハウジング形管継手との互換性がある。
【0030】
なお、上記実施の形態では、ハウジング21を4つの円弧状セグメント25により構成したが、ハウジング21を3つの円弧状セグメントで構成することも、5つ以上の円弧状セグメントにより構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるハウジング形管継手の一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明によるハウジング形管継手の分解斜視図である。
【図3】本発明によるハウジング形管継手のハウジングを構成する円弧状セグメントと弾性リングとの位置関係を示す図である。
【図4】本発明によるハウジング形管継手をシールすべき管の端部に配置した状態を示す一部を断面で示す側面図である。
【図5】本発明によるハウジング形管継手をシールすべき管の端部に取り付けた状態を示す一部を断面で示す側面図である。
【図6】本発明によるハウジング形管継手をシールすべき管の端部に配置した状態を示す断面図である。
【図7】本発明によるハウジング形管継手をシールすべき管の端部に取り付けた状態を示す断面である。
【図8】従来のハウジング形管継手の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
5 管
6 管
20 ハウジング形管継手
21 ハウジング
22 弾性リング
23 締め付けバンド
24 締付手段
25 円弧状セグメント
26 締め付けバンド案内部
27 位置合わせ孔
28 係止突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの円弧状セグメントを周方向に間隔を置くように配置して形成されたハウジングと、ハウジングの内部に配置され、一対の管の端部を液密シールする弾性リングと、両端部にループ部を有し、ハウジングの外面を囲むように配置された締め付けバンドと、締め付けバンドの両端ループ部に連結され、締め付けバンドを締め付けることにより円弧状セグメント同士を接合させる締め付け手段とを有し、前記弾性リングは、各円弧状セグメントに対応するように周方向に間隔を置いて位置する半径方向外方に延びる係止突部を有し、前記円弧状セグメントは、外面両側部に締め付けバンド案内部と前記弾性リングに設けた係止突部が挿着される位置合わせ孔とを有することを特徴とするハウジング形管継手。
【請求項2】
円弧状セグメントは4つであり、各円弧状セグメントは1/4円の円弧面を有することを特徴とする請求項1に記載のハウジング形管継手。
【請求項3】
円弧状セグメントは、金属板を逆U形に成形することで作られることを特徴とする請求項1または2に記載のハウジング形管継手。
【請求項4】
円弧状セグメントの案内部は、円弧状セグメントの一部を切り起こすことで形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のハウジング形管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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