説明

ハウス栽培用の暖房システム

【課題】簡素な構造で、かつ、効果的な暖房を実現することができ、しかも、暖房コストを低く抑えることができるハウス栽培用の暖房システムを提供する。
【解決手段】ヒートポンプ式暖房機2が備えられ、ビニールハウス1を構成する躯体パイプ3…が、内部を熱媒通路とする熱交換器4を形成し、該熱交換器4と蓄熱部5とポンプ6とが、熱媒循環回路7に設けられ、太陽光を受けているときにポンプを駆動すると、太陽熱が蓄熱部5に蓄熱されるようになっている。ヒートポンプ式暖房機2の蒸発器を流通する冷媒と、熱媒循環回路7を循環する熱媒とが熱交換するようになっていて、蓄熱部5に太陽熱が蓄熱された状態でポンプ6とヒートポンプ式暖房機2を駆動すると、蓄熱部5に蓄熱された太陽熱が、ヒートポンプ式暖房機2の熱源として利用されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウス栽培用の暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハウス栽培用の冬季の暖房システムとして、栽培用ハウスに、外気を熱源とするヒートポンプ式暖房機を設け、該暖房機を駆動してハウス内を暖房するようにしたものは、従来より提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−246829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外気を熱源とするヒートポンプ式暖房システムでは、冬季には外気は低温ゆえ熱源として機能しにくく、そのため、暖房コストが高くついてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑み、簡素な構造で、かつ、効果的な暖房を実現することができ、しかも、暖房コストを低く抑えることができるハウス栽培用の暖房システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、栽培用ハウス内を暖房するヒートポンプ式暖房機が備えられると共に、
該ハウスの躯体がパイプからなって、該躯体パイプは、内部を熱媒通路とする熱交換器を形成しており、該躯体パイプ熱交換器と蓄熱部とポンプとが熱媒循環回路に設けられ、太陽光を受けているときにポンプを駆動することにより、太陽熱が前記躯体パイプ熱交換器で熱媒に伝えられて蓄熱部に蓄熱されるようになされており、
前記ヒートポンプ式暖房機の蒸発器を流通する冷媒と、前記熱媒循環回路を循環する熱媒とが熱交換をすることができるようになされていて、前記蓄熱部に太陽熱が蓄熱された状態で前記ポンプとヒートポンプ式暖房機を駆動することにより、蓄熱部に蓄熱された太陽熱が、ヒートポンプ式暖房機の熱源として利用されるようになされていることを特徴とするハウス栽培用の暖房システムによって解決される(第1発明)。
【0007】
このシステムでは、蓄熱部に蓄熱した太陽熱をヒートポンプ式暖房機の熱源として利用することができるようになされているので、ヒートポンプ式暖房機に少ない電力で効率の良い暖房を行わせることができて、効果的な暖房を実現できると共に、暖房コストを低く抑えることができる。
【0008】
しかも、栽培用ハウスの躯体を構成している躯体パイプの内部を熱媒通路にして該躯体パイプで太陽熱収集用の熱交換器を形成した構造としたものであるから、躯体パイプとは別に太陽熱収集用の熱交換器を備えさせる必要がなく、簡素なシステム構成にすることができる。
【0009】
第1発明において、前記蓄熱部に太陽熱が蓄熱された状態で前記ポンプを駆動することにより、蓄熱部に蓄熱された太陽熱が、躯体パイプ熱交換器からハウス内に放熱されて、ハウス内が暖房されるようになされているとよい(第2発明)。
【0010】
この場合は、上記のように、蓄熱部に蓄熱された太陽熱を躯体パイプ熱交換器からハウス内に放熱してハウス内を暖房することができるようになされているので、
・ 躯体パイプ熱交換器からの放熱による暖房で充分であれば、ヒートポンプ式暖房機の運転を停止することも可能であるし、
・ 充分でない場合であっても、太陽熱をヒートポンプ式暖房機の熱源として利用してヒートポンプ式暖房機に少ない電力で効率の良い暖房を行わせることができて、
暖房コストを低く抑えることができる。
【0011】
第1,第2発明において、前記躯体パイプ熱交換器を構成する躯体パイプに太陽熱集熱用のカバーが着脱可能に取り付けられ、該カバーが集熱した太陽熱が躯体パイプを通じて内部を通過する熱媒に伝えられるようになされているとよい(第3発明)。
【0012】
この場合は、躯体パイプに取り付けられた太陽熱集熱用カバーによって、太陽熱を効率良く集熱することができ、しかも、太陽熱集熱用カバーは躯体パイプに対して着脱可能に取り付けられているから、暖房の必要ない夏季には、太陽熱集熱用カバーを取り外して、躯体パイプの無用な温度上昇を抑えることができる。
【0013】
第3発明において、前記太陽熱集熱用のカバーが、断面C形のスリット入り弾性筒状材からなり、該弾性筒状材のスリットを開いて躯体パイプの側方より嵌め込むことにより躯体パイプの外周部に着脱可能に取り付けられるようになされているとよい(第4発明)。
【0014】
このような断面C形のスリット入り弾性筒状材からなる太陽熱集熱用カバーによれば、躯体パイプ外周部に対する太陽熱集熱用カバーの脱着を容易に行っていくことができる。
【0015】
また、第3,第4発明において、前記太陽熱集熱用カバーが、外周面を黒色系にした筒状材の外周面部に、該外周面部から放射方向に延びる多数本の光ファイバーを密集状態となるように設け、各光ファイバーの先端で受けた太陽光が、光ファイバーを通じて筒状材の外周面部に伝えられ、該外周面部で集熱するようになされたものからなっている場合は(第5発明)、太陽熱を効果的に集熱することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハウス栽培用の暖房システムは、以上のとおりのものであるから、簡素な構造で、かつ、効果的な暖房を実現することができ、しかも、暖房コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図(イ)は実施形態の暖房システムを示す斜視図、図(ロ)は太陽熱集熱用カバーと躯体パイプとを分離状態にして示す斜視図、図(ハ)は他の太陽熱集熱用カバーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1(イ)に示す実施形態は、ビニールハウスに適用した暖房システムを示すもので、1はビニールハウス、2はヒートポンプ式暖房機であり、ヒートポンプ式暖房機2を駆動することにより、ビニールハウス1内に温風が供給されてハウス内が暖房されるようになされている。
【0020】
そして、ビニールハウス1の躯体は、ビニールの内側に備えられた鋼製パイプ等の金属パイプ3…からなっていて、太陽光を受けやすい屋根側の躯体パイプ3…が、内部を熱媒通路とするパラレルフロータイプの熱交換器4を形成しており、該躯体パイプ熱交換器4と、蓄熱部としての貯湯タンク5と、ポンプ6とが、熱媒循環回路7に設けられ、太陽光を受けているときにポンプ6を駆動することにより、太陽熱が躯体パイプ熱交換器4で熱媒としての不凍液に伝えられて貯湯タンク5に蓄熱されるようになされている。8は、躯体パイプ熱交換器4を形成するための、躯体パイプ内を仕切る仕切り部である。
【0021】
本実施形態では、貯湯タンク5には、予め不凍液が収容されていて、下部側から内部の不凍液が熱媒循環回路7に送り出され、躯体パイプ熱交換器4を通過した後、上部側から戻されるようになされていて、貯湯タンク5に多くの太陽熱を効率良く蓄熱することができるようになされている。
【0022】
また、上記の躯体パイプ熱交換器4での太陽熱の集熱を効率の良いものにするため、躯体パイプ熱交換器4を構成する躯体パイプ3には、図1(ロ)(ハ)に示すような太陽熱集熱用のカバー9が取り付けられ、該カバー9が集熱した太陽熱が躯体パイプ3を通じて内部を通過する不凍液に伝えられるようになされている。
【0023】
該カバー9は、断面C形のスリット10a入りの弾性筒状材10で構成され、該弾性筒状材10のスリット10aを開いて躯体パイプ3の側方より嵌め込むことによって、カバー9を躯体パイプ3の外周部に容易に取り付けることができるようになされており、また、スリット10aを開いて容易に取り外すことができるようになされている。
【0024】
図1(ロ)に示すカバー9は、外周面を黒色系にした弾性筒状材10からなり、図1(ハ)に示すカバー9は、寒冷地仕様で、太陽熱をより一層効果的に集熱することができるよう、外周面を黒色系にした弾性筒状材10の外周面部に、該外周面部から放射方向に延びる多数本の光ファイバー11…を密集状態となるように設け、各光ファイバー11…の先端で受けた太陽光が、光ファイバー11…を通じて弾性筒状材10の外周面部に伝えられるようになされているものである。
【0025】
そして、ヒートポンプ式暖房機2には、図示しない熱源用熱交換器が備えられており、該熱源用熱交換器が熱媒循環回路7に介設され、貯湯タンク5の不凍液に太陽熱が蓄熱された状態でポンプ6とヒートポンプ式暖房機2を駆動することにより、熱源用熱交換器を通過する不凍液と、ヒートポンプ式暖房機2の蒸発器を流通する冷媒とが熱交換を行い、貯湯タンク5に蓄熱された太陽熱が、ヒートポンプ式暖房機の熱源として利用されるようになされている。
【0026】
また、貯湯タンク5に太陽熱が蓄熱された状態でポンプ6を駆動することにより、貯湯タンク5に蓄熱された太陽熱は、躯体パイプ熱交換器4からハウス1内に放熱されて、ハウス1内が暖房されるようになされている。
【0027】
更に、ヒートポンプ式暖房機2には、熱媒循環回路7を循環する不凍液の温度を検知する図示しない温度センサーと制御部とが設けられ、
・ 該温度センサーで検知した温度が、躯体パイプ熱交換器4からの放熱のみによってハウス1内の暖房をまかなえる温度であるときには、制御部が、ポンプ6の駆動のみを行って、ヒートポンプ式暖房機2は駆動しない制御を行い、
・ 該温度センサーで検知した温度が、躯体パイプ熱交換器4からの放熱のみによってはハウス1内の暖房をまかなえない温度ではあるが、ヒートポンプ式暖房機2の熱源として利用することができる温度であるときは、制御部が、ポンプ6の駆動と併せてヒートポンプ式暖房機2を駆動する制御を行い、
・ 該温度センサーで検知した温度が、ヒートポンプ式暖房機2の熱源としても利用できない低温であるときは、ポンプ6の駆動を停止して、ヒートポンプ式暖房機2を駆動する制御を行うようになされている。
【0028】
なお、12は、温度センサー付の開閉バルブで、この温度センサー付の開閉バルブ12で検知された温度が、ヒートポンプ式暖房機2の熱源として利用できない低温であるときに閉じるようになされている。GLはグランドラインで、本実施形態では、貯湯タンク5や熱媒循環回路7の一部が地中埋込み状態に備えられている。
【0029】
このように上記の暖房システムでは、貯湯タンク5に蓄熱した太陽熱をヒートポンプ式暖房機2の熱源として利用することができるようになされているものであるから、ヒートポンプ式暖房機2に少ない電力で効率の良い暖房を行わせることができて、効果的な暖房を実現できると共に、暖房コストを低く抑えることができる。
【0030】
しかも、ビニールハウス1の躯体を構成している躯体パイプ3…の内部を熱媒通路にして該躯体パイプ3…で太陽熱収集用の熱交換器4を形成した構造としたものであるから、躯体パイプ3とは別に太陽熱収集用の熱交換器を備えさせる必要がなく、簡素なシステム構成にすることができる。
【0031】
更に、熱媒循環回路7を循環する不凍液の温度状況に応じて、躯体パイプ熱交換器4からの放熱のみによる暖房を行うこともできて、暖房コストをより一層低く抑えることができる。
【0032】
また、本実施形態では、躯体パイプ3に取り付けられた太陽熱集熱用カバー9によって、太陽熱を効率良く集熱することができ、しかも、太陽熱集熱用カバー9は躯体パイプに対して着脱可能に取り付けられているから、暖房の必要ない夏季には、太陽熱集熱用カバー9を取り外して、躯体パイプの無用な温度上昇を抑えることができる。特に、ビニールハウスの場合には、カバー9を取り外しておくことで、ビニールに対する熱負荷を小さく抑えることができる。
【0033】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、蓄熱部として、貯湯タンクを用いた場合を示したが、潜熱蓄熱材からなる蓄熱部を採用し、該蓄熱部に備えさせた潜熱蓄熱用の熱交換器を熱媒循環回路に介設するようにしてもよい。また、貯湯タンク式の蓄熱部として、タンク内の水中に備えさせた蓄熱用の熱交換器を熱媒循環回路に介設するようにしてもよい。
【0034】
また、上記の実施形態では、栽培用ハウスがビニールハウスからなっている場合を示したが、栽培用ハウスは、躯体部を室内側に備えた各種の栽培用温室からなっていてよい。
【符号の説明】
【0035】
1…ビニールハウス(栽培用ハウス)
2…ヒートポンプ式暖房機
3…躯体パイプ
4…躯体パイプ熱交換器
5…貯湯タンク(蓄熱部)
6…ポンプ
7…熱媒循環回路
9…太陽熱集熱用カバー
10…弾性筒状材
10a…スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培用ハウス内を暖房するヒートポンプ式暖房機が備えられると共に、
該ハウスの躯体がパイプからなって、該躯体パイプは、内部を熱媒通路とする熱交換器を形成しており、該躯体パイプ熱交換器と蓄熱部とポンプとが熱媒循環回路に設けられ、太陽光を受けているときにポンプを駆動することにより、太陽熱が前記躯体パイプ熱交換器で熱媒に伝えられて蓄熱部に蓄熱されるようになされており、
前記ヒートポンプ式暖房機の蒸発器を流通する冷媒と、前記熱媒循環回路を循環する熱媒とが熱交換をすることができるようになされていて、前記蓄熱部に太陽熱が蓄熱された状態で前記ポンプとヒートポンプ式暖房機を駆動することにより、蓄熱部に蓄熱された太陽熱が、ヒートポンプ式暖房機の熱源として利用されるようになされていることを特徴とするハウス栽培用の暖房システム。
【請求項2】
前記蓄熱部に太陽熱が蓄熱された状態で前記ポンプを駆動することにより、蓄熱部に蓄熱された太陽熱が、躯体パイプ熱交換器からハウス内に放熱されて、ハウス内が暖房されるようになされている請求項1に記載のハウス栽培用の暖房システム。
【請求項3】
前記躯体パイプ熱交換器を構成する躯体パイプに太陽熱集熱用のカバーが着脱可能に取り付けられ、該カバーが集熱した太陽熱が躯体パイプを通じて内部を通過する熱媒に伝えられるようになされている請求項1又は2に記載のハウス栽培用の暖房システム。
【請求項4】
前記太陽熱集熱用のカバーが、断面C形のスリット入り弾性筒状材からなり、該弾性筒状材のスリットを開いて躯体パイプの側方より嵌め込むことにより躯体パイプの外周部に着脱可能に取り付けられるようになされている請求項3に記載のハウス栽培用の暖房システム。
【請求項5】
前記太陽熱集熱用カバーが、外周面を黒色系にした筒状材の外周面部に、該外周面部から放射方向に延びる多数本の光ファイバーを密集状態となるように設け、各光ファイバーの先端で受けた太陽光が、光ファイバーを通じて筒状材の外周面部に伝えられ、該外周面部で集熱するようになされたものからなっている請求項3又は4に記載のハウス栽培用の暖房システム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−10624(P2011−10624A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159334(P2009−159334)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】