説明

ハクサイの病害発生を抑制するための窒素成分含有被覆肥料の使用

【課題】ハクサイの病害発生を抑制する方法等を提供すること。
【解決手段】ハクサイの病害(特に、白斑病)発生を抑制するための窒素成分含有被覆肥料(好ましくは、熱硬化性樹脂で被覆されてなる窒素成分含有被覆肥料)の使用、及び、窒素成分含有被覆肥料を窒素成分量として0.1〜100kg/10aの割合で、ハクサイ苗の栽培土壌に施用する工程を有することを特徴とするハクサイの病害発生抑制方法等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハクサイの病害発生を抑制するための窒素成分含有被覆肥料の使用等に関する。
【背景技術】
【0002】
ハクサイに発生する各種病害を防除するために、農薬が使用されている(例えば、特許文献1、2及び3並びに非特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−320005
【特許文献2】特開平5−320006
【特許文献3】特開平5−320007
【非特許文献1】農業技術体系、野菜編7.ハクサイ基礎編、農山村文化協会発行、84頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、散布者及び環境に対する負荷軽減に対する社会的な要求が高まり、農薬の使用量を少なくする試みが行われている。例えば、従来のものに比べて環境に対して安全性が高く負荷の少ない農薬、低薬量で効果を示す高活性農薬の開発が行われてきた。
しかしながら、現在広く利用されている農薬の多くは、ハクサイに発生する多くの病害を同時に防除するには、必ずしも充分に満足できるものではなく、その結果農薬施用の際に多くの種類および/または多くの施用量を必要としていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは、ハクサイの栄養状態・土壌の物理化学性に病害発生が影響されることを確認し、肥料の施用方法とハクサイの病害発生との関係を検討したところ、肥料成分の溶出が制御された窒素成分含有肥料(以下、窒素成分含有被覆肥料と記すこともある)を施用することにより、ハクサイの病害(特に、白斑病)発生を抑制する効果を見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、
1.ハクサイの病害発生を抑制するための窒素成分含有被覆肥料の使用;
2.ハクサイの白斑病発生を抑制するための窒素成分含有被覆肥料の使用;
3.前記被覆肥料が熱硬化性樹脂で被覆されてなる被覆肥料であることを特徴とする前項1又は2記載の使用;
4.窒素成分含有被覆肥料を窒素成分量として0.1〜100kg/10aの割合で、ハクサイ苗の栽培土壌に施用する工程を有することを特徴とするハクサイの病害発生抑制方法;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、農薬を使用することなく、ハクサイの病害発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用される被覆肥料は、窒素成分を含有するものであれば、特に限定はなく公知の被覆肥料を用いることができる。例えば、前記被覆肥料としては、各種の樹脂、パラフィン類、油脂類、硫黄等で被覆若しくはカプセル化して窒素成分の溶出パターンが制御されてなるものが挙げられる(具体的には例えば、特公昭40−28927号公報、特公昭44−28457号公報、特公昭37−15382号公報、特公昭42−13681号公報、米国特許第3,264,089号、米国特許第3,264,088号、特開平9−263474号公報、特開平9−263475号公報等参照)。被覆に用いられる好ましい樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂(具体的には例えば、ウレタン樹脂)が挙げられる。
窒素成分の溶出パターンとしては、例えば、定植若しくは播種から結球開始までの外葉展開期間において、被覆肥料に含まれる全窒素成分量のうち50〜90%、好ましくは70〜85%の窒素成分量が溶出するもの、又は、25℃水中において被覆肥料に含まれる全窒素成分量のうち80%の窒素成分量が溶出に要する期間が20〜80日の範囲であり、より好ましくは20〜60日の間であるもの等を挙げることができる。
【0009】
被覆肥料は、ハクサイ苗を栽培する土壌に施用すればよい。
【0010】
施用方法としては、勿論、必要に応じて、前記被覆肥料と共に非被覆肥料を併用することもできる。前記被覆肥料に含まれる好ましい窒素成分としては、尿素態窒素、アンモニア態窒素成分等を挙げることができる。さらに当該窒素成分以外の成分として、硝酸態窒素、リン酸、カリウム、珪酸、マグネシウム、カルシウム、マンガン、ホウ素または鉄等の植物が要求する種々の成分を加えることもできる。これらの成分は被覆資材を通じて溶出するものであり、水溶性であることが望ましい。
上記の「尿素態窒素成分」、「アンモニア態窒素成分」の原料としては、例えば、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニアソ−ダ、硝酸アンモニア石灰、腐植酸アンモニア、液状窒素肥料、混合窒素肥料等があげられ、さらにホルムアルデヒド加工尿素肥料(UF)、アセトアルデヒド加工尿素肥料(CDU)、イソブチルアルデヒド加工尿素肥料(IBDU)、グアニール尿素(GU)、オキサミド、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、副産窒素肥料、液体副産窒素肥料、石灰窒素等の、分解により尿素態窒素又はアンモニア態窒素に変化しうる基質を有する物質を挙げることができる。
【0011】
前記窒素成分以外の成分の原料としては、例えば、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム等の硝酸態窒素肥料、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、苦土過リン酸、リン酸アンモニウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム、塩リン安等のリン酸質肥料、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、リン酸カリウム、硝酸カリウム等のカリウム質肥料、珪酸カルシウム等の珪酸質肥料、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム質肥料、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム等のカルシウム質肥料、硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン、鉱さいマンガン等のマンガン質肥料、ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素質肥料、鉄鋼スラグ等の含鉄肥料等の肥料取締法に定められる普通肥料(複合肥料を含む)等を挙げることができる。また、前記被覆肥料には、非イオン界面活性剤又はアミノ酸等の両性界面活性剤等を含有させておくこともできる。
【0012】
さらにまた、前記被覆肥料に、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調節剤等を含ませることもできる。このような殺菌剤としては、具体的には例えば、8−ヒドロキシキノリン銅、TPN、アゾキシストロビン、イプロジオン、オキシテトラサイクリン、オキソリニック酸、カーバムアンモニウム塩、カスガマイシン一塩酸塩、キャプタン、クレソキシムメチル、ジアゾファミド、ジチアノン、ジメトモルフ、シモキサニル、ストレプトマイシン硫酸塩、ダゾメット、チオファネートメチル、トリアジン、バリダマイシン、ファモキサドン、フルアジナム、フルスルファミド、プロベナゾール、ポリオキシン複合体、ポリカーバメート、マンゼブ、メタラキシル、硫黄、塩基性塩化銅、水酸化第二銅、有機銅等が挙げられる。また殺虫剤としては、具体的には例えば、チアメトキサム、イミダクロプリド、ニテンピラム、クロチアニジン、アセタミプリド、ジノテフラン、フィプロニル、エチルチオメトン、アセフェート、イソキサチオン、アセフェート、ジメトエート、ダイアジノン、エチルチオメトン等が挙げられる。また除草剤としては、具体的には例えば、CAT、DBN、DCMU、ジメテナミド、チフェンスルフロンメチル、トリフルラリン、ブタミホス、プロメトリン、ベンチオカーブ、ペンディメタリン、ペンディメタリン、リニュロン等が挙げられ、また植物成長調節剤としては、具体的には例えば、ウニコナゾールP、トリネキサパックエチル、プロヘキサジオンカルシウム、イナベンフィド、パクロブトラゾール、フルルプリミドール、ダミノジット、オキシベロン、1−ナフチルアセトアミド、ベンジルアミノプリン、ジベレリン等が挙げられる。
【0013】
前記被覆肥料の施用量としては、窒素成分量として、通常、約0.1〜100kg/10a、好ましくは約0.5〜50kg/10aの範囲をあげることができる。また施用時期は、植物の栄養特性、労働効率、製剤形態、環境条件等に応じて適したものを選択すれば良い。
【0014】
対象となるハクサイの病害としては、例えば、白斑病(Cercosporella brassicae)、黒斑病(Alternaria brassicae)、べと病(Peronospora parasitica)、黄化病(Verticillium dahliae)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、炭そ病(Colletotrichum higginsianum)、根くびれ病(Aphanomyces raphani)、根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、白さび病(Albugo macrospora)、苗立枯病(Pythium ultimum)、軟腐病(Erwinia carotovora subsp. carotovora)、黒斑細菌病(Pseudomonas syringae pv. maculicola)等を挙げることができる。本発明により病害発生を抑制することができる好ましい病害としては、例えば、白斑病等が挙げられる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例で本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
試験例
ハクサイ苗の栽培において、試験区ではウレタン樹脂で被覆されてなる被覆肥料(因みに、窒素成分の溶出パターンは、25℃水中において被覆肥料に含まれる全窒素成分量のうち80%の窒素成分量が溶出に要する期間が20〜60日の間であるものであって、定植若しくは播種から結球開始までの外葉展開期間において、被覆肥料に含まれる全窒素成分量のうち70〜85%の窒素成分量が溶出するものであった。)と有機肥料と化成肥料とを混合してなる肥料(NPK成分の配合割合:N/P/K=13/2/2)を250kg/10aの施用量で2006年9月4日にハクサイ苗の栽培土壌に元肥処理した。一方、施肥区(対照区)では、有機肥料(NPK成分の配合割合:N/P/K=4.2/0/1)を400kg/10aの施用量で8月13日に元肥処理し、さらに化成肥料(NPK成分の配合割合:N/P/K=16/2/15)を40kg/10aの施用量で10月23日と11月25日との両日(2回)に分けて追肥処理した。
【0017】
【表1】

【0018】
* 葉色の測定にはミノルタ製葉緑素計(SPAD-502)を使用した。数値が高いほど葉緑素量が多いことを示す。
その結果、表1の如く、試験区では白斑病の発生が抑制された。また同時に、葉長、生葉数、葉色においても慣行肥料区に比べ高い値を示し、十分な肥料効果も示した。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明により、ハクサイの病害発生を抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハクサイの病害発生を抑制するための窒素成分含有被覆肥料の使用。
【請求項2】
ハクサイの白斑病発生を抑制するための窒素成分含有被覆肥料の使用。
【請求項3】
前記被覆肥料が熱硬化性樹脂で被覆されてなる被覆肥料であることを特徴とする請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
窒素成分含有被覆肥料を窒素成分量として0.1〜100kg/10aの割合で、ハクサイ苗の栽培土壌に施用する工程を有することを特徴とするハクサイの病害発生抑制方法。

【公開番号】特開2008−283929(P2008−283929A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133810(P2007−133810)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】