説明

ハゼ掴み金具

【課題】 折板屋根に屋根設置物を設置するに用いるハゼ掴み金具を、一対の挟持金具を一体化した単一部材として強固且つ確実なハゼ部の挟持をなし得るようにする。
【解決手段】 ハゼ掴み金具Aの一対の挟持金具1、2を、先端にハゼ部B1を挟持する底板11、21と、該底板11、21から起立した起立板12、22をそれぞれ備えるとともに一方の挟持金具1の上記起立板12上端に天板13を配置し、他方の挟持金具2の端部に配置した回動ガイド23の案内で、上記天板13の端部に対接した状態でその起立板22を跳ね上げ回動自在に連結し、一方の挟持金具1を先置きし、他方の挟持金具2を回動して、Uボルト3の締着によってハゼ部B1を挟持し、ハゼ掴み金具Aを折板屋根Bに設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根(折版屋根といってもよい)に、太陽電池モジュール、花壇等の屋根設置物を設置するに用いるハゼ掴み金具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のハゼ掴み金具として、本発明者は、相互に引き寄せ締着自在に配置した一対の挟持金具によって折板屋根のハゼ部を底板の幅方向中間位置で挟持して該ハゼ部上に跨設配置した天板に支持して折板屋根上に屋根設置物を設置するように用いるものを提案済みであり、これによれば、例えば、上記一対の挟持金具を、底板、側板及び天板を備えた同一形状のボックス状一体に鋳造形成し、天板下面に配置した接続プレートによって突合せ配置した一対の挟持金具を接続するとともに上記一対の挟持金具の引寄せ締着をUボルト又は一対のボルトを用いて行なって、天板端部下位に位置する挟持突片によって折板屋根のハゼ部を挟持するようにし、上記接続プレートから上向きの固定用ボルトを金具本体上方に突出し、該上向きの固定用ボルトによって上記天板に支持することによって屋根設置物を設置するものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2010−273229
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、構造を比較的簡易なものとして折板屋根に対して確実に設置することができるハゼ掴み金具とすることができるが、一対の挟持金具は、ハゼ部の挟持前に接続プレートによって突き合せ配置するまで分離2部材のものとされるから、一般に、ハゼ部の挟持は、作業者が挟持金具を両手で支え持ちして所定の位置に据え置き配置するようにハゼ部にセットし、その後に、Uボルト又はボルトを用いた引き寄せ締着を行う必要を生じる。
【0005】
然るに、ハゼ掴み金具の一対の挟持金具を分離2部材とすることなくそれ自体を一体化した単一部材とすることができれば、ハゼ部の挟持作業、即ち、ハゼ掴み金具の折板屋根への設置作業を更に容易化して、その作業効率を可及的に向上することが可能となる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、上記ハゼ掴み金具の一対の挟持金具を一体化して単一部材とするとともに強固且つ確実なハゼ部の挟持をなし得るようにしたハゼ掴み金具を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に沿って鋭意検討した結果、ハゼ掴み金具の一対の挟持金具が、ハゼ部を挟持した設置状態で断面ロ字状の形状をなす点に着目し、該断面ロ字状の形状を、一方の挟持金具の天板部位、即ち断面ロ字状の形状における上辺部において、他方の挟持金具を跳ね上げ回動自在に連結することによって、該一対の挟持金具を一体化し得ること、該一体化によってハゼ掴み金具の折板屋根への設置に際して、一対の挟持金具の据え置き設置を片手で容易になし得ること、ハゼ部の挟持は、一方の挟持金具を先置きして他方の挟持金具を回動すれば、ハゼ部と一対の挟持金具の相対位置関係を定めて挟持金具によるハゼ部の挟持を可能とし得ることの知見を得て、本発明を行うに至ったもので、即ち、請求項1に記載の発明を、相互に引き寄せ締着自在に配置した一対の挟持金具によって折板屋根のハゼ部を底板の幅方向中間位置で挟持して該ハゼ部上に跨設配置した天板に支持して折板屋根上に屋根設置物を設置するに用いるハゼ掴み金具であって、上記一対のうちの一方の挟持金具の天板に他方の挟持金具を跳ね上げ回動自在に連結して、上記ハゼ部に先置きした一方の挟持金具に対して他方の挟持金具を回動挟持自在としてなることを特徴とするハゼ掴み金具としたものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、上記一対の挟持金具を可及的に簡易にしてハゼ掴みに適した形態のものとするとともに一方の挟持金具に対する他方の挟持金具の回動連結を、現場において異なることの多い折板屋根のハゼ部の厚さの如何を問わずに常にハゼ部の挟持を簡易且つ確実になし得るものとするように、これを、上記一方の挟持金具を、上記底板と、該底板から起立した起立板と該起立板から突出した天板を備えて断面C字状とし、他方の挟持金具を底板と該底板から起立した起立板を備えた断面L字状とし、上記他方の挟持金具の跳ね上げ回動自在の連結を、一方の挟持金具の天板の突出方向端部と他方の挟持金具の起立板上端に支軸と支軸長手方向両側の軸受を配置するとともに少なくとも支軸長手方向片側の軸受を長孔とすることによって他方の挟持金具の起立板上端を天板面方向にスライド自在として行ってなることを特徴とする請求項1に記載のハゼ掴み金具としたものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、現場によって異なることの多いハゼ部の厚さ幅が厚いとき、上記他方の挟持金具を天板面方向にスライド回動すると、挟持金具相互の引寄せ締着時に、他方の挟持金具の底板がハゼ部の厚さ幅に応じて定位置より外側に蹴り出される結果、該他方の挟持金具が一方の挟持金具の天板と無関係にフリーの状態のまま、その起立板が上端前のめりの転び状となって、その上端が天板側にスライドする結果、該他方の挟持金具は、その回動中心をなす支点を得られないことになり、従って、締着力を加えても、該他方の挟持金具は揺動するも、引寄せ締着の締着力が作用しないことによって引寄せ締着不良を招くに至るところ、該他方の挟持金具の起立板のスライド回動を、常に上記一方の挟持金具の天板に対接した状態で行うように回動ガイドを配置することによって、回動ガイドの天板との対接部位を他方の挟持金具の回動中心をなす支点として、ハゼ部の厚さ幅の如何に拘わらず、該他方の挟持金具の常に安定且つ確実な引寄せ締着をなし得るものとするように、これを、上記他方の挟持金具の起立板上端に、上記一方の挟持金具の天板に対接し、上記相互の引寄せ締着によって、起立板上端を該天板の端部に対接した状態で該他方の挟持金具を回動する回動ガイドを配置してなることを特徴とする請求項2に記載のハゼ掴み金具としたものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記回動ガイドを、他方の挟持金具の相対的位置を定めて、引寄せ締着時のその確実な回動を行うに適したものとするように、これを、上記回動ガイドを、他方の挟持金具の起立板上端の長手方向両端部に該上端から下降傾斜した傾斜ガイドによるものとしてなることを特徴とする請求項3に記載のハゼ掴み金具としたものである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、一方の挟持金具に対する基本的な関係を維持しつつ他方の挟持金具の形態を、上記断面L字状のものに代えて、断面C字状として上記と同様なものとするように、これを、上記他方の挟持金具を、上記底板と起立板に加えて、該起立板から突出した部分天板を備えた断面C字状とし、上記他方の挟持金具の起立板上端に代えて、該部分天板先端を用いてなることを特徴とする請求項2、3又は4に記載のハゼ掴み金具としたものである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、同じく上記に加えて、一対の挟持金具の引き寄せ締着を安定且つ確実になし得るものとするように、これを、上記一対の挟持金具の引寄せ締着を、その各起立板を引寄せ締着するように起立板間に配置したUボルト又は一対のボルトによって行なってなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載のハゼ掴み金具としたものである。
【0013】
本発明は、これらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、ハゼ掴み金具の一対の挟持金具におけるハゼ部を挟持した設置状態の断面ロ字状の形状を、一方の挟持金具の天板部位、即ち断面ロ字状の形状における上辺部において、他方の挟持金具を跳ね上げ回動自在に連結することによって、該一対の挟持金具を一体化し、ハゼ掴み金具の折板屋根への設置に際して、一対の挟持金具の据え置き設置を片手で容易になし得るようにし、ハゼ部の挟持を、一方の挟持金具を先置きして他方の挟持金具を回動して、ハゼ部と一対の挟持金具の相対位置関係を定めて挟持金具によるハゼ部の挟持を可能とすることによって、ハゼ掴み金具の一対の挟持金具を一体化して単一部材とするとともに強固且つ確実なハゼ部の挟持をなし得るようにしたハゼ掴み金具を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、上記一対の挟持金具を可及的に簡易にしてハゼ掴みに適した形態のものとするとともに一方の挟持金具に対する他方の挟持金具の回動連結を、現場において異なることの多い折板屋根のハゼ部の厚さの如何を問わずに常にハゼ部の挟持を簡易且つ確実になし得るものとすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、ハゼ部の厚さ幅が厚いときに生じることある他方の挟持金具の引寄せ締着不良を解消して、該他方の挟持金具の起立板のスライド回動を、常に上記一方の挟持金具の天板に対接した状態で行うように回動ガイドを配置することによって、回動ガイドの天板との対接部位を他方の挟持金具の回動中心をなす支点として、ハゼ部の厚さ幅の如何に拘わらず、該他方の挟持金具の常に安定且つ確実な引寄せ締着をなし得るものとすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記回動ガイドを、他方の挟持金具の相対的位置を定めて、引寄せ締着時のその確実な回動を行うに適したものとすることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、一方の挟持金具に対する基本的な関係を維持しつつ他方の挟持金具の形態を、上記断面L字状のものに代えて、断面C字状として上記と同様なものとすることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、同じく上記に加えて、一対の挟持金具の引き寄せ締着を安定且つ確実になし得るものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ハゼ掴み金具の斜視図である。
【図2】ハゼ掴み金具の左側面図である。
【図3】ハゼ掴み金具の正面図である。
【図4】ハゼ掴み金具と折板屋根の関係を示す斜視図である。
【図5】ハゼ掴み金具の挟持金具回動状態を示す正面図である。
【図6】ハゼ掴み金具のハゼ部挟持状態を示す縦断面図である。
【図7】ハゼ掴み金具と屋根設置物の関係を示す縦断面図である。
【図8】他の例のハゼ掴み金具の斜視図である。
【図9】ハゼ部の厚さ幅によって生じる状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば、Aはハゼ掴み金具であり、該ハゼ掴み金具Aは、相互に引き寄せ締着自在に配置した一対の挟持金具1、2によって折板屋根Bのハゼ部B1を底板11、21の幅方向中間位置で挟持して該ハゼ部B1上に跨設配置した天板13に支持して折板屋根B上に屋根設置物を設置するに用いるものとしてあり、このとき、該ハゼ掴み金具Aは、その上記一対のうちの一方の挟持金具1の天板13に他方の挟持金具2を跳ね上げ回動自在に連結して、上記ハゼ部B1に先置きした一方の挟持金具1に対して他方の挟持金具2を回動挟持自在としたものとしてある。
【0022】
本例にあって該ハゼ掴み金具Aは、一方及び他方を一対とする挟持金具1、2と、該一対の挟持金具1、2の引寄せ締着を行うに用いるUボルト又は一対のボルト、本例にあってはUボルト3と、上記一方の挟持金具1の天板13に配置した、上記屋根設置物を設置するに用いる上向きに突出配置した固定用ボルト4を備えたものとしてあり、上記挟持金具1、2は、これらをそれぞれプレス成形によって形成した鋼製のものとしてあり、例えば、本例にあって正面図における横幅(天板短辺)を6cm程度、奥行(天板長辺)を7cm程度、高さを5cm弱とした平面矩形、正面ロ字状(下面開口のC字状といってもよい)のフレーム形状をなすものとしてある。
【0023】
本例にあって上記一方の挟持金具1は、これを、上記底板11と、該底板11から起立した起立板12と該起立板12から突出した天板13を備えて断面C字状とし、他方の挟持金具2は、これを底板21と該底板21から起立した起立板22を備えた断面L字状とし、上記他方の挟持金具2の跳ね上げ回動自在の連結を、一方の挟持金具1の天板13の突出方向端部と他方の挟持金具2の起立板22上端に支軸 と支軸長手方向両側の軸受 を配置するとともに少なくとも支軸長手方向片側の軸受 を長孔とすることによって他方の挟持金具2の起立板22上端を天板13面方向にスライド自在として行ったものとしてある。このとき、本例のハゼ掴み金具Aは、その上記他方の挟持金具2の起立板22上端に、上記一方の挟持金具1の天板13に対接し、上記相互の引寄せ締着によって、起立板22上端を該天板13の端部に対接した状態で該他方の挟持金具2を回動する回動ガイド23を配置したものとしてあり、該回動ガイド23は、これを、他方の挟持金具2の起立板22上端の長手方向両端部に該上端から下降傾斜した傾斜ガイドによるものとしてある。
【0024】
本例にあって、上記一方及び他方の挟持金具1、2の底板11、21は、先端を該底板11、21から屈曲して上方に、例えば数mm程度立ち上げ且つ上記ハゼ部B1との対面部に、例えばクロス形状のローレットを配置して、ハゼ部B1の滑りのない挟持を可及的確実になし得るようにしてある。このとき、各底板11、21は、起立板12、22側から数度、本例にあっては5度程度の勾配を付して、上記ハゼ部B1の挟持状態で起立板12、22側が折板屋根Bに対して線接触するようにして、折板屋根Bに凹凸等がある場合に生じる面接触の場合の設置不良を解消して、ハゼ掴み金具Aの確実な設置をなし得るようにしてある。
【0025】
起立板11、21はそれぞれ上記ハゼ掴み金具Aの高さを有する同高のものとするとともに上記Uボルト3のボルト軸を挿通する一対の透孔121、221を幅方向に並べて透設してあり、このとき、本例の透孔121、221は、例えば一方の挟持金具1側でボルト軸に合せて円形孔とし、他方の挟持金具2側で、Uボルト3のボルト軸を上下に揺動可能として、該他方の挟持金具2の跳ね上げ回動を可能とするように上下に長孔をなすものとしてあり、本例にあって上記円形孔とした透孔121は、ボルト軸の軸径8mmと同等乃至やや径大の1cm程度、長孔とした透孔221は、幅を該円形孔の透孔と等しく1cm程度、長さをその2倍の2cm程度としてある。
【0026】
本例の天板13は、他方の挟持金具2に配置することなく、一方の挟持金具1に配置してあり、該一方の挟持金具1に配置した天板13は、その中央位置、即ち、天板13の対角線交点位置に透孔を配置し、該透孔に上記固定用ボルト4のボルト軸を挿通して該固定用ボルト4を上下動自在に起立してあり、このとき天板13下面にボルト頭41を配置するとともに天板13上でそのボルト軸に、該ボルト軸を挿通する、上記透孔より径大の、例えば軟質系樹脂を用いた円形パッキン42を配置し、該固定用ボルト4の天板13からの突出長さを規制し、また、その抜け止めを行うようにしてある。
【0027】
一方と他方の挟持金具1、2を一対とするハゼ掴み金具Aは、上記一方の天板13に他方を跳ね上げ回動自在に連結してあり、このとき、跳ね上げ回動自在の連結を、該固定用ボルト4位置より天板13の突出方向端部側、本例にあっては天板13の突出方向端部とし、該連結は、これを、上記一方の挟持金具1の天板13の突出方向端部と他方の挟持金具2の起立板22上端に配置した支軸と軸受によって、軸受に支軸を挿通してヒンジ5を形成することによって行ったものとしてある。本例にあって、一方の挟持金具1における天板13の上記突出方向端部の下面に、例えば端部中央位置に1ヶ所、他方の挟持金具2における起立板22の上端内側に、支軸長手方向両端、即ち、ハゼ掴み金具の奥行方向両側2ヶ所にそれぞれ軸受51を配置し、これら軸受51を、例えばリベットとした支軸52によって軸支して、その上記跳ね上げ回動を自在としてある。このとき、支軸長手方向両端の軸受、即ち、他方の挟持金具2に配置した軸受の双方又は一方、本例にあっては支軸長手方向片側の軸受を長孔、即ち、起立板上端位置から天板の面方向に軸孔を長くした長孔とするとともに他方の軸受を上記支軸の径に応じた円形孔とし、該円形孔の軸受位置を、上記長孔の奥行方向端部位置に合せた天板側に変位した位置としてあり、これによって、該円形孔の軸受位置を基準に、長孔の軸受によって支軸をスライド自在として、その上記跳ね上げ回動をなし得るようにしてある。本例にあって、上記長孔とした軸受51は、支軸52の径5mmに対して、これと同等乃至やや大の高さ、本例にあっては5〜6mmの高さを有するものとし、長さをその2倍の1cm程度としてある。
【0028】
本例の上記回動ガイド23は、他方の挟持金具2における起立板22の長手方向上端の両端部、即ち、ハゼ掴み金具Aの奥行方向両端部に該起立板22の上端から一方の挟持金具1の天板13下面に向けて潜り込むように所定角度、例えば45度の傾斜角度で下降傾斜した、幅を1cm以下、例えば0.5cm、長さを1〜2cm、例えば1.5cm程度としたものとしてあり、これによって該回動ガイド23は、一方及び他方の挟持金具1、2の引寄せ締着に際して、該他方の挟持金具2の回動を、上記一方の挟持金具1の天板13の端部に対接した状態で行うように、該天板13端部との対接部位を、該他方の挟持金具2の回動中心をなす回動支点とするようにしてある。
【0029】
以上の構成に係る一体形成のハゼ掴み金具Aは、例えば、Uボルト3に締着ナット31を螺装して、一対の挟持金具1、2を上記断面ロ字状とする出荷形態をとるものとするから、屋根設置物の設置現場では、締着ナット31を緩めて、他方の挟持金具2における起立板22の長孔によってUボルト3の揺動を許容し、図4に示すように、該他方の挟持金具2を跳ね上げ状に回動して、一対の挟持金具1、2の底板11、21の挟持片112、212間に折板屋根Bのハゼ部B1を受け入れて、上記Uボルト3に締着ナット31を締着して該ハゼ部B1の挟持を行って、その折板屋根Bへの設置を行うようにすればよい。
【0030】
このとき、他方の挟持金具2を跳ね上げ回動した状態で、一方の挟持金具1の底板11を折板屋根Bに載置するように先置きし、他方の挟持金具2を復帰方向に回動して上記締着ナット31を締着すれば、図 に示すように、ハゼ部B1の挟持を行うことができ、折板屋根Bに対する先置きのセットは、これを片手でできるから、セット後に他の片手で締着ナット31の締着を行うことができ、その作業の効率を高度に確保できる。
【0031】
ハゼ部B1を挟持して折板屋根Bに設置したハゼ掴み金具Aを用いた屋根設置物の固定は、図7に示すように、上記一方の挟持金具1の天板13に配置した上向きの固定用ボルト4を用いて、該天板13上に、例えば、上下を一対とする取付金具7を配置し、該取付金具7を介して、折板屋根Bに屋根設置物として、例えば太陽電池モジュール8を設置するように用いるものとしてある。本例にあって取付金具7は、上下位一対にして固定用ボルト4に固定用ナット43を螺装して屋根設置物、本例にあっては隣接する太陽電池モジュール8の端部を挟持してその連結固定を行うものとしてあり、本例の取付金具7は、天板13と同幅にして上向き一対の起立片を有する天板載置用の下位金具71と、屋根設置物、本例にあっては太陽電池モジュール8の端部を押圧保持する上位金具72を備え、下位金具71の中央に配置したボルト透孔に固定用ボルト4のボルト軸を挿通して、該下位金具71を天板13上に、本例にあっては上記円形パッキン42を介して載置し、その上向き一対の起立片に端面を突き当て状にして上記太陽電池モジュール8の端部を該下位金具71上に載置する一方、上位金具72の同じく中央に配置したボルト透孔に固定用ボルト4のボルト軸を挿通して、その両側の押圧片を該太陽電池モジュール8の端部上に載置し、固定用ボルト4に固定用ナット43を締着して、天板13下面のボルト頭41と該固定用ナット43によって、天板13、これら上下位金具71、72を一体的に挟持するように固定するものとしてある。
【0032】
図8は、ハゼ掴み金具Aの他の例を示すもので、該ハゼ掴み金具Aは、上記例のものと比較して、上記回動ガイド23の配置を省略するも、その余の構成を上記例と同様とした例である。従って、そのハゼ部B1の挟持、屋根設置物8の設置は、上記と同様であるところ、この場合、上記回動ガイド23の配置を省略したことによって、例えば、折板屋根Bのハゼ部B1の厚さ幅が比較的薄いものに用いるに適当であるが、ハゼ部B1の厚さ幅が厚いとき、場合によって一方の挟持金具1との間で、引寄せ締着の不良を招くことがあるから、この点に留意することが好ましい。
【0033】
即ち、折板屋根Bにおけるハゼ部B1の厚さ幅は必ずしも薄いとは限らず、現場によっては相当程度、例えば1cm程度の厚さを呈するものも見られる。これは、折板屋根Bのハゼ部B1は、工場生産ではなく、屋根上の人手作業によって鋼板にハゼ折りを施すことによって、これを形成するから、ハゼ部B1の長手方向にハゼ折りの状態が異なることがある。例えば、ハゼ部B1の長手方向端部は薄く仕上がるも、長手方向中間位置ではハゼ折りが不充分でハゼ部B1に膨らみが生じることもあり、その結果、ハゼ部B1の厚さ幅が区々となって、厚さ幅の厚い部位が生じていることがある。
【0034】
このように、ハゼ部B1の厚さ幅が、例えば1cm程度と厚いときにおける、上記回動ガイド23の有無によるハゼ部B1の挟持について作用の相違を示すと、図9に示すように、回動ガイドを備えないものにあって、ハゼ部B1の挟持を行おうとすると、ハゼ部B1の厚さ幅によって、他方の挟持金具2の底板21がハゼ部B1の挟持の定位置より外側に蹴り出され、その起立板22が上端前のめりの転び状となるとともに起立板22の上端が一方の挟持金具1の天板13と無関係にフリーの状態のまま軸受51の長孔長さ分だけ天板13側にスライドする結果、該他方の挟持金具2は、その回動中心をなす支点を得られないことになり、従って、締着力を加えても、該他方の挟持金具2は揺動するも、引寄せ締着の締着力が作用しないことによって引寄せ締着不良を招くに至る。ハゼ部B1が薄いときは、このような現象が生じないから問題はないが、ハゼ部B1が厚いときは、例えば、挟持部分のハゼ部B1を薄くするように、該ハゼ部B1の現場補修を行えば、同様に問題はないが、現場補修を一般作業者が行うのは困難を伴なう上、煩雑であるから、一般に、このような厚さ幅の厚い折板屋根Bの現場においては、該図8に示すハゼ掴み金具Aは、必ずしも適当ではないことになる。
【0035】
これに対して上記図1乃至図7に示した上記回動ガイド23を配置したハゼ掴み金具Aにあっては、ハゼ部B1の厚さ幅が薄いときはもとより、厚いときでも、他方の挟持金具2に配置した該回動ガイド23は、引寄せ締着時に、これを、一方の挟持金具1の天板13の端部に対接した状態で回動するようにしたことによって、他方の挟持金具2の底板21が挟持の定位置に達せずに転び状となっても、その天板13に対接した回動ガイド23を常に回動中心をなす回動支点とすることができ、従って、該他方の挟持金具2の引寄せ締着を行えば、その起立板22に該引寄せ締着の締着力が確実に作用する結果、該他方の挟持金具2は、その天板13に対接した部位を回動中心として転び状の状態から回動し、底板21がハゼ部B1に対接した状態で、一方の挟持金具1に対してその締着を行うことができる。
【0036】
図中6は底板11、21と起立板12、22、起立板12、22と天板13間に配置した補強突起、14は、天板13の下面にボルト頭41を挟んで対向して一対突出配置して、屋根設置物を設置したとき固定用ボルト4のボルト頭41の回転を防止してボルトの弛みを防止するボルト回り止め、31はUボルト3の締着ナット、43は固定用ボルト4の固定ナットを示す。
【0037】
図示した例は以上のとおりとしたが、上記他方の挟持金具を、上記底板と起立板に加えて、該起立板から突出した部分天板を備えた断面C字状とし、上記他方の挟持金具の起立板上端に代えて、該部分天板先端を用いたものとすること、このとき、該部分天板は、一方の挟持金具の天板を幾分短寸化して、その分を分担するように短寸のものとし、上記回動ガイドを設けるとき該部分天板の突出方向先端からこれを同様に配置するようにすること、上記スライド自在とした跳ね上げ回動自在の連結を、ヒンジの軸を一方の挟持金具又は他方の挟持金具に配置した軸固定部に固定した固定軸とし、他方の挟持金具又は一方の挟持金具に配置した長孔の軸受によって該固定軸を軸支して行い、また、一方の挟持金具及び他方の挟持金具にそれぞれ長孔の軸受を配置し、該長孔の軸受に揺動自在に両端に抜け止めを有する独立した連結軸を配置することによって行うようにすること等を含めて、本発明の実施に当って、ハゼ掴み金具、屋根設置物、一方の挟持金具、他方の挟持金具、跳ね上げ回動自在の連結、天板、必要に応じて用いる底板、起立板、回動ガイド、固定用ボルト、支軸、軸受、Uボルト又は一対のボルト等の各具体的形状、構造、材質、寸法、数、用途、これらの関係、これらに対する付加等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【符号の説明】
【0038】
A ハゼ掴み金具
B 折板屋根
B1 ハゼ部
1 一方の挟持金具
11 底板
112 挟持片
12 起立板
121 透孔
13 天板
14 ボルト回り止め
2 他方の挟持金具
21 底板
212 挟持片
22 起立板
221 透孔
23 回動ガイド
3 Uボルト
31 締着ナット
4 固定用ボルト
41 ボルト頭
42 円形パッキン
43 固定用ナット
5 ヒンジ
51 軸受
52 軸
6 補強突起
7 取付金具
71 下位金具
72 上位金具
8 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に引き寄せ締着自在に配置した一対の挟持金具によって折板屋根のハゼ部を底板の幅方向中間位置で挟持して該ハゼ部上に跨設配置した天板に支持して折板屋根上に屋根設置物を設置するに用いるハゼ掴み金具であって、上記一対のうちの一方の挟持金具の天板に他方の挟持金具を跳ね上げ回動自在に連結して、上記ハゼ部に先置きした一方の挟持金具に対して他方の挟持金具を回動挟持自在としてなることを特徴とするハゼ掴み金具。
【請求項2】
上記一方の挟持金具を、上記底板と、該底板から起立した起立板と該起立板から突出した天板を備えて断面C字状とし、他方の挟持金具を底板と該底板から起立した起立板を備えた断面L字状とし、上記他方の挟持金具の跳ね上げ回動自在の連結を、一方の挟持金具の天板の突出方向端部と他方の挟持金具の起立板上端に支軸と支軸長手方向両側の軸受を配置するとともに少なくとも支軸長手方向片側の軸受を長孔とすることによって他方の挟持金具の起立板上端を天板面方向にスライド自在として行ってなることを特徴とする請求項1に記載のハゼ掴み金具。
【請求項3】
上記他方の挟持金具の起立板上端に、上記一方の挟持金具の天板に対接し、上記相互の引寄せ締着によって、起立板上端を該天板の端部に対接した状態で該他方の挟持金具を回動する回動ガイドを配置してなることを特徴とする請求項2に記載のハゼ掴み金具。
【請求項4】
上記回動ガイドを、他方の挟持金具の起立板上端の長手方向両端部に該上端から下降傾斜した傾斜ガイドによるものとしてなることを特徴とする請求項3に記載のハゼ掴み金具。
【請求項5】
上記他方の挟持金具を、上記底板と起立板に加えて、該起立板から突出した部分天板を備えた断面C字状とし、上記他方の挟持金具の起立板上端に代えて、該部分天板先端を用いてなることを特徴とする請求項2、3又は4に記載のハゼ掴み金具。
【請求項6】
上記一対の挟持金具の引寄せ締着を、その各起立板を引寄せ締着するように起立板間に配置したUボルト又は一対のボルトによって行なってなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載のハゼ掴み金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−32679(P2013−32679A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249433(P2011−249433)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(392018078)日栄インテック株式会社 (28)