説明

ハニカムフィルタ製造装置

【課題】多孔質体からなる基材表面に、均一な厚さの捕集層を形成してなる、品質の優れたハニカムフィルタを高い歩留まりで作製可能な手段を提供する。
【解決手段】ハニカムフィルタの製造装置であって、基材を固定するワーク固定部10と、ワーク固定部の一の側に配設され、加圧気体を用いて粉体を気流に乗せて搬送する粉体搬送部20と、粉体搬送部とワーク固定部の間で、粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を他の気流と更に混合して、装置使用時にワーク固定部に固定される基材へ導入する導入部40と、ワーク固定部の他の側に配設され、吸引手段を用いてワーク固定部の他の側をワーク固定部の一の側に対して減圧にして基材を通過した気流を吸引する吸引部30と、粉体導入後の基材端面に付着している余剰粉体を除去する清掃部50と、粉体の付着量を判定する判定部60と、基材の搬送を行うワーク搬送部70と、を有するハニカムフィルタ製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質体からなる基材と、その基材の表面に設けられた、微粒子を捕集するための捕集層と、を有するハニカムフィルタを製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関や各種の燃焼装置等から排出されるガスには、スート(黒鉛)を主体とする粒子状物質(パティキュレートマター(PM))が、多量に含まれている。このPMがそのまま大気中に放出されると、環境汚染を引き起こすため、排出ガスの流路には、PMを捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を備えたフィルタ装置が搭載される。
【0003】
このようなフィルタ装置の中心となるそのDPF(エレメント)として、例えば、ハニカム構造を有するハニカムフィルタが知られている。このハニカムフィルタは、多数の細孔を有するセラミックの多孔質体からなる隔壁によって区画された、ガスの流路となる複数のセルを有し(ハニカム構造を呈し)、隣接する複数のセルの、一方の開口端と他方の開口端とを、互い違いに目封止してなるものである。このハニカムフィルタをキャニングし、一のセルの開口端から排出ガスを流入させると、排出ガスは、隔壁を通過して隣接するセルの他方の開口端から流出し、その際にPMが隔壁に捕集され除去されて、浄化される。
【0004】
しかし、このようなハニカムフィルタでは、PMが堆積することに伴って、圧力損失が急激に増加し易い。そこで、圧力損失の抑制を図るべく、例えば、特許文献1〜3には、新たな構造のハニカムフィルタが開示されている。これらのハニカムフィルタに共通する特徴は、多孔質体であるハニカム構造体をハニカムフィルタの基材(支持体)とし、その基材の表面に、PMを捕集するための捕集層を設けたところにあり、特許文献1〜3には、その新たなハニカムフィルタの製造方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−249124号公報
【特許文献2】特開2006−685号公報
【特許文献3】特開平10−263340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景の下でなされたものであり、その課題とするところは、多孔質体からなる基材の表面に、漏れなく均一な厚さの捕集層を形成してなる、品質の優れたハニカムフィルタを、高い生産性、高い歩留まりで作製可能な手段を提供することである。研究が重ねられた結果、以下の手段によって、この課題が解決されることが見出され、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、先ず、本発明によれば、ハニカムフィルタの製造に使用する装置であって、ハニカムフィルタの基材を固定するためのワーク固定部と、そのワーク固定部の一の側に配設され、加圧気体を用いて粉体を気流に乗せて搬送する粉体搬送部と、その粉体搬送部とワーク固定部の間に設けられ、粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を他の気体と更に混合して、前記装置使用時に前記ワーク固定部に固定される基材へ導入する導入部と、前記ワーク固定部の他の側に配設され、吸引手段を用いて前記ワーク固定部の他の側を前記ワーク固定部の一の側に対して減圧にして前記ワーク固定部に固定される基材を通過した気体を吸引する吸引部と、粉体導入後の基材の端面に付着している余剰粉体を除去する清掃部と、基材に付着した粉体の付着量を判定する判定部と、駆動機構によって駆動され、前記ワーク固定部、前記清掃部及び前記判定部の間で、基材の搬送を行うワーク搬送部と、を有するハニカムフィルタ製造装置が提供される。
【0008】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の製造対象であるハニカムフィルタは、外形が周面と2つの端面とからなる柱状(好ましくは円柱状又は四角柱状)を呈する基材を備え、その基材は、一の端面から他の端面まで延びる複数のセルを有し、流体の流路となるそのセルは多孔質体からなる隔壁によって区画され、隣接する複数のセルは、一方の開口端と他方の開口端とを互い違いに目封止されているとともに、その基材の内表面に捕集層が形成されてなるものである。
【0009】
ワーク固定部のワークとは、処理の対象であり、本明細書においては、ハニカムフィルタの基材(多孔質体)のことを指す。ワーク固定部とは、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の使用時に、ワークが(ハニカムフィルタの基材が)固定される部分である。ワークであるハニカムフィルタの基材において、捕集層が形成される基材の内表面は、基材の表面のうち、セルを形成する表面であり、これをセル内面ともいう。セルを形成する基材の部分を、隔壁又はセル壁とよぶ。基材の内表面、セル内面、隔壁の表面、及びセル壁の表面は、何れも同じ部分を指す。又、粉体搬送部が配設されるワーク固定部の一の側を入口側ともいい、吸引部が配設されるワーク固定部の他の側を出口側ともいう。
【0010】
導入部は、粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を他の気体(気流)と更に混合しワーク固定部に固定される基材へ導入する部分であり、これは閉じていない空間である。即ち、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、ワーク固定部と、そのワーク固定部の一の側に配設される粉体搬送部と、を備え、それら粉体搬送部とワーク固定部の間に、開放された空間(即ち、導入部)を有する、と表現することも出来る。導入部の寸法は、換言すれば、ワーク固定部と粉体搬送部との距離(厳密にはワーク固定部に固定した基材と粉体搬送部との距離)は、粉体搬送部の側における基材の端面の、粉体搬送部の側における基材の端面を内包する最小の円の、直径以上であることが好ましく、直径の3倍以上であればより好ましい。尚、「粉体搬送部の側における基材の端面を内包する最小の円」とは、粉体搬送部の側における基材の端面の形状が円形である場合は、その端面の形状・寸法と合致する円(その端面の直径と同一の直径を持つ円)であり、粉体搬送部の側における基材の端面の形状が非円形である場合、例えば多角形である場合は、図6に示すような、粉体搬送部の側における基材の端面11aに外接する円80である。本発明に係るハニカムフィルタ製造装置において、1つの導入部に対し、2つ以上の粉体搬送部を設けてもよい。
【0011】
分散した粉体を含む気体、及び粉体を分散させる加圧気体は、何れも通常は空気であればよい。加圧気体の圧力は、特に制限されないが、1.5〜5気圧程度の圧力を、好ましく用いることが出来る。
【0012】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、この基材の内表面に捕集層が形成されてなるハニカムフィルタを製造する装置である。本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、気体中に分散した粉体(エアロゾルともいう)を用いて対象物(基材)に製膜可能であるから、乾式の製膜装置ということが出来る。本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、粉体を気流に乗せて粉体搬送部から噴射し、導入部において他の気体と混合し、その混合した気体(混合気体ともいう)を、基材のセルに送り込み、基材の反対側から吸引する。このとき、気体は基材の隔壁を通過するが、粉体は通過せず、その通過しない粉体がセル内面に(基材の内表面に)堆積し、その後の熱処理によって基材と粉体とを結合させ、捕集層となる。
【0013】
清掃部は、粉体導入後の基材の端面に付着している余剰粉体を除去する部分である。基材に導入された粉体は、その大部分がセル内面に堆積するが、少なくとも一部の粉体は、粉体搬送部の側における基材の端面に付着する。セル内面に堆積した粉体は、その後、焼成を経て捕集層を形成することになる。一方、基材の端面に付着した粉体は、捕集層を形成しない余剰の粉体であるので、粉体導入後に除去する必要が有る。粉体導入後の基材の端面に付着している余剰粉体の除去を、この清掃部にて行うことにより、余剰粉体が残存していない品質の優れたハニカムフィルタを効率良く製造することが出来る。
【0014】
判定部は、基材に付着した粉体の付着量を判定する部分である。品質の一定したハニカムフィルタを安定的に製造するためには、基材毎の粉体の付着量(製膜量)にバラツキが無く、付着量が所定の範囲に納まっていることが必要である。判定部にて、この付着量を判定することにより、その付着量が所定の範囲に納まっているかどうかを容易に知ることが出来、品質の優れたハニカムフィルタを安定的に製造することが可能となる。
【0015】
ワーク搬送部は、ワーク固定部、清掃部及び判定部の間で、基材の搬送を行うための部分である。このワーク搬送部は、駆動機構によって駆動され、例えば、一般的なウオーキングビームのように前後方向へ所定のストロークで往復動作する。ワーク固定部、清掃部及び判定部の間における基材の搬送を、このワーク搬送部にて行うことにより、製膜作業の効率が向上し、高い生産性が得られる。
【0016】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記清掃部が、余剰粉体を除去するための粉体除去手段として、エアノズル又はブラシを備えることが好ましい。
【0017】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記判定部が、基材に付着した粉体の付着量を判定するための判定手段として、粉体導入前の基材の重量を測定する計量器と、粉体導入後の基材の重量を測定する計量器とを備えることが好ましい。
【0018】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記ワーク搬送部を駆動させる駆動機構が、ワーク固定部よりも上方に配設されていることが好ましい。又、ワーク搬送部は、基材の搬送時に基材を把持するための把持手段として、クランプ荷重を制御可能で、かつ、基材との接触面が樹脂からなる開閉クランプを備えることが好ましい。
【0019】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記粉体搬送部が、加圧気体を用いた粉体分散手段を備えることが好ましい。粉体分散手段としては、エジェクタやエアロゾル化室を挙げることが出来るが、粉体分散手段は、エジェクタであることが特に好ましい。そのエジェクタは、粉体を気流によって吸引し、加圧気体とともに粉体を排出して、気体中へ分散するものであることが好ましい。即ち、この場合、エジェクタは、粉体を気体中に分散させ、気流に乗せて(気体とともに)噴射する機器であり、加圧気体による高速の気流によって生じた負圧を利用して粉体を吸引し、これを加圧気体とともに気体中へ噴射するもの、ということが出来る。このエジェクタは、1つだけ備わっていてもよく、2以上備わっていてもよい。加えて、そのエジェクタにおける粉体の吸引方向と排出方向とが、略平行であることが好ましい。
【0020】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記粉体搬送部が、定量の粉体を供給するための粉体供給手段を備えることが好ましい。エジェクタを備える場合には、そのエジェクタの粉体吸引側に、複数の粉体供給手段を設けてもよい。
【0021】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記導入部が、粉体を、ワーク固定部に固定される基材へ案内するガイド部材を有することが好ましい。このガイド部材の形状は、基材が柱状である場合に、基材(ワーク)の外形(特に端面の形状)に合わせたものとすればよい。ガイド部材の形状は、基材の外形(特に端面の形状)とほぼ相似な断面をもつ筒状であるのが好ましく、円筒状や角パイプ状であってもよい。基材が円柱状である場合には、基材の端面を内包する最小の円の直径とほぼ同じ径、あるいは、その直径より大きな径を持つ円筒形であることが好ましい。ガイド部材の長さは、粉体搬送部の側における基材の端面の、基材の端面を内包する最小の円の直径以上、より好ましくは、その直径の3倍以上、の長さである。このガイド部材は、ワーク固定部とは反対側が、開放されているものである。又、ワーク固定部の側は、ワーク固定部に固定したときの基材の端面あるいは外周と近接していることが好ましく、それらと接触してシールされていることが、より好ましい。
【0022】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、ハニカムフィルタの基材は柱状を呈し、使用時において、ワーク固定部に固定される基材の軸方向が、略鉛直であり、気流が下から上へ流れるものが好ましい。即ち、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、使用時に、基材を縦置きにして、気流を基材の下から基材を通し基材の上へ通り抜けさせるものが好ましい。基材の軸方向が略鉛直とは、重力の方向から30度以内に収まる範囲をいう。重力の方向から15度以内に収めることが、より好ましい。この態様は、換言すれば、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の好ましい使用方法ということが出来るが、装置としても、基材を縦置きにして使用出来るようになっていることが好ましい、ということである。
【0023】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記粉体搬送部又は導入部に、(粉体の)分級手段を備えることが好ましい。分級手段としては、例えば、遠心分級、重力分級等が好ましく用いられる。当該部において、管径を太くしたり、曲線部分を形成してもよいし、気流が下から上へ流れる部分を設けてもよい。
【0024】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、ワーク固定部が、基材の側面を覆うカバーを備えることが好ましい。カバーの形状は、基材の外形に合わせたものとすればよい。又、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、吸引部が、流量計を備えることが好ましい。吸引対象は、粉体が(セル内面に付着して)抜けた気体であるので、流量計の代わりに風速計を用いることが出来る。更に、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、吸引部が、整流板を備えることが好ましい。
【0025】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、ワーク固定部に基材を固定したときに、その基材の粉体搬送部の側における端面を内包する最小の円の直径rと、その端面から粉体搬送部の噴射端(エジェクタの噴射端)までの距離dとが、r<dの関係を満たすことが好ましい。又、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、ワーク固定部に基材を固定したときに、基材の粉体搬送部の側における端面から粉体搬送部の噴射端までの距離dと、ガイド部材の長さLとが、0.5d<Lの関係を満たすことが好ましい。
【0026】
次に、本発明によれば、上記した何れかのハニカムフィルタ製造装置を用い、吸引部が吸引する気体aの流量A、粉体搬送部から噴射される気体bの流量B、導入部において気体bと混合される気体cの流量Cが、A=B+C、且つ、C>0の関係を満たすように流量を調節して、ハニカムフィルタの基材の内表面に、粉体を堆積させる過程を有するハニカムフィルタの製造方法が提供される。
【0027】
例えば、粉体搬送部から噴射される気体の流量Bを一定にして、その流量Bより、吸引部が吸引する流量Aを、流量Cだけ多くすればよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、ワーク固定部の一の側に配設され、加圧気体を用いて粉体を気流に乗せて搬送する粉体搬送部と、ワーク固定部の他の側に配設され、吸引手段を用いて他の側を一の側に対して減圧にする吸引部と、を有し、吸引部によって基材を通過した気体が吸引されるので、気流が整流される。そして、その整流された気流の軌道に乗って、粉体は、基材が有する多数のセルへ、均一且つ安定に、供給される。従って、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置によれば、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、そして、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能である。又、整流されることによって、粉体が周りに飛散し難くなり、良好な作業環境が保持される。
【0029】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、粉体を気流に乗せて粉体搬送部から噴射し、導入部において他の気体と混合し、その混合した気体(気流)を基材のセルに送り込むので、混合の過程で粉体が拡散するため、その粉体が、基材の端面の一部だけでなく全体に広がってセル内に導入されるようになるので、製膜分布の均一性が向上する。加えて、基材を通過する気流の流速と、粉体搬送部を流れる気流の流速と、を独立に制御可能となる。捕集層の微構造や製膜量分布は、セル内に導入する混合気体に含まれる粉体の密度や気体の流速によって変化することが、研究によって明らかとなってきた。これらは、吸引部からの吸引流量や、粉体搬送部から供給する混合気体中の粉体の密度によって、制御することが出来る。一方、粉体搬送部にて粉体を気中に分散させるために必要な流速がある。従って、これらを両立させるには、2つの流速を独立に制御可能なことが、極めて有効である。
【0030】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、粉体を気体中に分散させるに際し、加圧気体を用いているので、流速を大きくし速度勾配を形成することが出来、粉体に十分な衝撃力やせん断力を与えることが出来る。そのため、粉体が均一に気体中に分散する。粒子径が概ね20μm以下の微粉体は、静置した状態では凝集して、それより大きな粒子を形成している場合があり、それによって、粉体が均一に気体中に分散し難くなるおそれがあるが、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、加圧気体によって解砕されるので、このような問題は生じない。
【0031】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、既述の通り、乾式の製膜装置ということが出来、堆積させる粉体は、乾燥した状態で、セル内面(隔壁の表面)に供給されるので、水やバインダ等の添加剤を使用する場合に必要となる乾燥工程や脱脂工程は必要なく、基材(隔壁)の上に、欠陥のない良好な捕集層を形成することが出来る。
【0032】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、粉体導入後の基材の端面に付着している余剰粉体の除去を、清掃部にて行うことにより、余剰粉体が残存していない品質の優れたハニカムフィルタを効率良く製造することが出来る。
【0033】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、基材に付着した粉体の付着量(製膜量)の判定を、判定部にて行うことにより、その付着量が所定の範囲に納まっているかどうかを容易に知ることが出来、品質の優れたハニカムフィルタを安定的に製造することが可能となる。
【0034】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、ワーク固定部、清掃部及び判定部の間における基材の搬送を、ワーク搬送部にて行うことにより、製膜作業の効率が向上し、高い生産性が得られる。
【0035】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、清掃部が、余剰粉体を除去するための粉体除去手段として、エアノズルを備えるので、粉体導入後の基材における粉体が導入された側の端面に対し、このエアノズルにて当該端面と平行に空気を吹き付けることにより、基材のセル内面に堆積した粉体は剥離させず、基材の端面に付着した粉体のみを除去することが出来る。
【0036】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、清掃部が、ブラシを備えるので、このブラシにて、端面のブラッシングを行うことにより、基材のセル内面に堆積した粉体は剥離させず、基材の端面に付着した粉体のみを除去することが出来る。
【0037】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、判定部が、基材に付着した粉体の付着量を判定するための判定手段として、粉体導入前の基材の重量を測定する計量器と、粉体導入後の基材の重量を測定する計量器とを備えるので、これらの計量器にて、粉体導入前と粉体導入後の基材の重量を測定し、その差を算出することにより、基材に付着した粉体の付着量が、所定の範囲内に納まっているかどうかの判定を、短時間で精度良く行うことが出来る。
【0038】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ワーク搬送部を駆動させる駆動機構が、ワーク固定部よりも上方に配設されているので、基材に付着しなかった粉体が駆動機構の内部に侵入しにくく、粉体の侵入による駆動機構の動作部位の摩耗が軽減され、耐久性が向上するとともに、搬送の位置精度が安定する。
【0039】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ワーク搬送部が、基材の搬送時に基材を把持するための把持手段として、クランプ荷重を制御可能で、かつ、基材との接触面が樹脂からなる開閉クランプを備えるので、基材を把持する際のクランプ荷重を制御するとによって、把持時の衝撃を抑制することが可能となり、当該衝撃により基材のセル内面に堆積した粉体が剥離するのを防止出来る。又、基材との接触面が柔軟な樹脂からなることにより、把持時に基材にダメージが生じるのを防止することが出来る。
【0040】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、粉体搬送部が加圧気体を用いた粉体分散手段を備え、それがエジェクタであるので、時間あたりに大量の粉体を気体に分散させ、噴射することが出来る。例えば、0.1m/分の気体に対し50g/分の粉体を分散し噴射することが可能である。又、所定の量の粉体を、粗粒子を解砕しながら搬送することが出来、それをセルへ送り込むことが可能である。従って、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置によれば、短時間で、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、そして、短時間で、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能である。粉体搬送部が複数のエジェクタを備えている場合にも、基材を通過する気体の流量を制御し易いので、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが出来る。更に、エジェクタが発生する負圧で吸引する気流を形成し、粉体を吸引するように用いることで、エジェクタへの粉の供給も気流に乗せて行うことが出来る。こうすることで、エジェクタに加圧気体を供給していない間(負圧の発生しない間、従って吸引する気流の形成されていない間)は、管路に粉が触れないようにすることが出来る。これにより、粉が管路に堆積して粗大粒子の発生源となったり、ブリッジによる供給不良が発生することを防止することが可能である。
【0041】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ワーク固定部に基材を固定したときに、その基材の粉体搬送部の側における端面を内包する最小の円の直径rと、その端面から粉体搬送部の噴射端までの距離dとが、r<dの関係を満たすので、基材の径方向に均一に、粉体がセル内面に堆積する。噴射された粉体は、無駄なく、基材のセルの全面に、均一に入り込む。加えて、装置のサイズも大きくならない。この関係を満たす場合に比して、端面と粉体搬送部の噴射端(エジェクタの噴射端)とが近ければ(距離dが小さければ)、エジェクタから噴射された粉体が基材のセルの一部にしか入らず、遠ければ(距離dが大きければ)、基材のセルに到達せず別の部材に付着したり落下する。何れにしても、無駄が多くなる。基材の粉体搬送部の側における端面を内包する最小の円の直径rと、その端面から粉体搬送部の噴射端(エジェクタの噴射端)までの距離dとは、3r<dの関係を満たすことが、より好ましい。
【0042】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、導入部が、エアロゾルを基材に案内するガイド部材を有するので、エアロゾルの広がり、拡散が抑えられ、気流は整流され、収率が向上する。又、例えば、周辺環境からの気流流入等の外乱や、基材の外周形状の状態等の影響を受け難くなる。そして、基材の最外周のセルも含め、基材の径方向の全面にわたって均一に、粉体がセル内面に堆積する。
【0043】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ガイド部材は、ワーク固定部とは反対側が開放されているので、その開放部分は、基材を通過する(エジェクタから噴射されるエアロゾル以外の)気体を吸引するための開口として機能する。又、その開放部分は、基材に付着しなかった粉体を排出する開口としても機能する。
【0044】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ワーク固定部に基材を固定したときに、基材の粉体搬送部の側における端面から粉体搬送部の噴射端までの距離dと、ガイド部材の長さLとが、0.5d<Lの関係を満たすので、十分に、上記効果を発現する。即ち、エアロゾルの広がり、拡散が十分に抑えられ、気流の整流効果は大きい。加えて、装置のサイズも抑制される。この関係を満たす場合に比して、基材の粉体搬送部の側における端面と粉体搬送部の噴射端(エジェクタの噴射端)とが近ければ(距離dが小さければ)、上記効果は十分に発現せず、遠ければ(距離dが大きければ)、装置が大きくなってしまう。
【0045】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、粉体搬送部が、定量の粉体を供給するための粉体供給手段を備えるので、定量(一定質量)の粉体をエジェクタから吸引させて、容易にエアロゾルの密度を制御することが可能であり、エアロゾルの密度を一定にすることが出来る。そして、そのような密度一定のエアロゾルをセルへ送り込めば、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、更には、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能となる。
【0046】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ワーク固定部が、基材の側面を覆うカバーを備えるので、基材が、その側面(外周)に気孔を有するハニカム構造体である場合でも、最外周のセルも含めて、基材の径方向の全面にわたって均一に、粉体をセル内面に堆積させることが出来る。基材の側面に気孔が有ると、その外周の気孔から最外のセルに気体が流入する結果、正常に端面の開口からセルに流入するエアロゾルが減少してしまい、セル内面に付着する粉体が減少するおそれがあるが、基材の側面を覆うカバーがあれば、そのようなおそれは排除される。側面からの気体の流入は防止され、所望の気流を実現することが出来る。
【0047】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、吸引部が、流量計を備えるので、基材を通過する気体の流速を制御することが出来、その結果、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、更には、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能となる。
【0048】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、吸引部が、整流板を備えるので、基材に多数のセルがある場合にも、そこを通過する流量を、整流版が無い場合に比して、より均一化することが出来る。
【0049】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、エジェクタにおける粉体の吸引方向と排出方向とが、略平行であるので、エジェクタにおける気流の方向変化が殆どなく、そうしない場合より大量の粉体を供給することが出来る。又、エジェクタの磨耗が少ない。更には、ブリッジ(アーチ)やラットホールが抑制され、粉体不供給という問題が生じ難くなる。
【0050】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ハニカムフィルタの基材は柱状を呈し、使用時において、ワーク固定部に固定される基材の軸方向が、略鉛直であり、気流が下から上へ流れる(即ち、使用時に、基材が縦置きになる)ので、先ず、導入部が分布均一性のある重力分級機能を備えるようになり、製膜分布の均一性が向上する。横置きにすると(即ち、使用時においてワーク固定部に固定される基材の軸方向が略水平であると)、粉体が重力の影響を受け、セル内で下側になった隔壁表面に、上側になった隔壁表面より、多くの粉体が付着してしまう。このことは、気流の流速が遅い場合に顕著である。次に、使用時に基材を縦置きにすることによって、製膜不良を引き起こす粗大粒子が、セル内へ流入することを抑制出来る。仮に、粗大粒子が、一旦、セル内に入っても、重力の効果によって、気流に乗らない粗大粒子は失速して落下するため、隔壁表面に付着せず、製品不良を防止出来る場合がある。横置きの場合には、粗大粒子のセル内へ流入抑制を図るには、導入部の寸法を大きくする(ワーク固定部と粉体搬送部の距離を長くする)必要があるとともに、粗大粒子が、一旦、セル内に入ってしまえば、製膜不良は避けられない。又、適切な大きさであってもセル内面に付着しなかった粒子は、導入部に戻り、再び、気流と混合され、再度、セル内へ導入される。よって、収率が向上する。更には、縦置きによれば、未付着粉体の回収が容易である。例えば、製品の直下に、受け台を設けておけば、容易に粉体を回収することが出来る。ガイド部材を設ける場合は、ガイド部材の開口を未付着粉の排出口とすることによって、ガイド部材がない場合より、容易に粉体を回収可能である。横置きでは、ガイド部材があっても、ガイド部材に粉体が堆積してしまい、回収に手間がかかるし、気流によって粉体が、再度、飛散し、予期せずに、製品に飛び込んでしまい、製品不良が発生するおそれがある。
【0051】
上記のような縦置きの効果によって、品質を確保可能な制御範囲が広く取れるため、装置が複雑になることなく、高品質で安定した製膜が可能となる。又、縦置きの効果は、複数の種類の粉体を供給する場合に、より顕著となる。
【0052】
尚、使用時に、柱状の基材を縦置きにする場合、基材の軸方向と、導入部で形成する気流の方向とは、概ね同方向とするのが好ましい。これら方向が異なっていると、粉体が一方向に偏って堆積してしまうおそれがある。
【0053】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、粉体搬送部又は導入部に、分級手段を備えるので、粗大粒子を除外することが出来、製膜不良の発生が抑制される。尚、本明細書において、粗大粒子とは、粉体の粒子のうち、解砕されずに大きな粒子のままのものや、管内に付着、凝集したものが剥離して搬送されたもの等を指す。
【0054】
本発明に係るハニカムフィルタ製造方法は、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置を用い、吸引部が吸引する気体aの流量A、粉体搬送部から噴射される気体bの流量B、導入部において気体bと混合される気体cの流量Cが、A=B+C、且つ、C>0の関係を満たすように流量を調節して、ハニカムフィルタの基材の内表面に、粉体を堆積させる過程を有するので、基材を通過する気体へ、エジェクタで気体と混合された粉体を、良好に分散させることが可能であり、基材のセルへ、粉体を均一に送り込むことが出来る。従って、本発明に係るハニカムフィルタ製造方法によれば、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能である。気体aの流量Aに対する気体bの流量Bの比(=B/A)は、1より小さくする。この比は、好ましくは、1/3以下、より好ましくは1/10以下である。粉体搬送部から噴射される気流は、大量の粉の搬送に伴い脈動を生じる場合があるが、この比を1/3以下にすると、ワークを通過する気流の流速分布に対し、その影響を小さくすることが出来る。尚、本明細書において、流量A〜流量Cは時間あたりの流量であり、即ち流速のことである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の一の実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置によって、ワークに粉体が導入されている時の状態を示す模式図である。
【図3】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置のワーク固定部の構造を示す模式図である。
【図4】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置において、ワーク固定部にワークが固定される様子を示す模式図である。
【図5】ワーク搬送部の構造を示す模式図である。
【図6】粉体搬送部の側における基材の端面を内包する最小の円の一例を示す説明図である。
【図7A】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置で製造されるハニカムフィルタの利点を説明する図であり、表面捕集層が設けられていないハニカムフィルタの1/4を切り取って内部を表した斜視図である。
【図7B】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置で製造されるハニカムフィルタの利点を説明する図であり、表面捕集層が設けられていないハニカムフィルタの一部分(隔壁とセル)を拡大して表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明の実施の形態について、適宜、図面を参酌しながら説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。
【0057】
先ず、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置で製造される、捕集層が形成された(製膜された)ハニカムフィルタの利点について、図7A及び図7Bを参照しながら説明する。ハニカムフィルタを、PM除去用のフィルタとして使用した場合、捕集層の設けられていないハニカムフィルタ201であっても、PM205を含む排出ガス206は、一のセル203a内へ導入され、ハニカムフィルタ201の隔壁204を通過して、隣接するセル203bの他方の開口端から流出する。その際にPM205は、隔壁204に捕集され、排出ガス206は浄化されるのである(図7A、図7Bを参照)。しかし、このとき、隔壁204の表面に捕集層がないと、PM205が隔壁204(基材)の細孔内へ侵入し、細孔を閉塞させるので、初期に圧損が急上昇してしまう。捕集層があれば、PM205が隔壁204(基材)の細孔内へ侵入することを防止出来るので、細孔がPM205で閉塞することはなく、従って、初期に圧損が上昇することもなく、圧損の低減が図れる。本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、このような優れた(捕集層の付いた)ハニカムフィルタを製造する手段である。
【0058】
次に、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置について、その構成と材料を説明する。図1は、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の一の実施形態を示す模式図であり、図2は、そのハニカムフィルタ製造装置によって、ワークに粉体が導入されている時の状態を示す模式図である。図2に示される矢印は、粉体、エアロゾル、気体(空気)の流れを示している。尚、図2においては、清掃部、判定部及びワーク搬送部の記載を省略している。図1に示されるハニカムフィルタ製造装置1は、ワーク固定部10、粉体搬送部20、吸引部30、導入部40、清掃部50、判定部60、及びワーク搬送部70を有する。ワーク11である基材は、ハニカムフィルタ前駆体である。ハニカムフィルタ前駆体とは、製膜することによって捕集層が設けられたハニカムフィルタとなるハニカムフィルタ用の基材である。
【0059】
ハニカムフィルタ製造装置1のワーク固定部10は、ワーク11(基材)を固定する部分であり、ワーク11であるハニカムフィルタ前駆体は、セラミック製の目封止ハニカム構造体である。即ち、ワーク11は、その外形が、周面と2つの端面とからなる角柱状を呈しており、一の端面から他の端面まで延びる複数のセルを有し、そのセルは、多数の細孔を有するセラミックの多孔質体からなる隔壁によって区画されていて、ハニカム構造を呈している。セルは、ガス(流体)の流路となるものである。そして、ワーク11は、その隣接する複数のセルが、一方の開口端と他方の開口端とを互い違いに目封止されていて、一の端面と他の端面を見ると、ともに千鳥模様ないし市松模様のようになっている。
【0060】
ハニカムフィルタ製造装置1において、ワーク固定部10は、図3に示すように、ワークチャック13a,13b、及びカバー12を有する。ワークチャック13aは、導入部40に設けられたガイド部材42と接続されており、ワークチャック13bは、吸引部30を構成するダクト34と接続されている。ワークチャック13a,13bは、上下方向に移動可能に配設されている。ワーク搬送部70によって、ワーク固定部10のワークチャック13aとワークチャック13bとの間の空間にワーク11が搬送されて来る前は、ワークチャック13aとワークチャック13bとの間隔は、ワーク11の長さ(高さ)よりも長くなるように保たれている。そして、図4に示すように、ワーク搬送部70によって、ワークチャック13aとワークチャック13bとの間の空間にワーク11が搬送されて来ると、ワークチャック13aが上昇するとともにワークチャック13bが下降して、図3のように、ワーク11が固定される。ワークチャック13a,13bは、ウレタンゴムやシリコンゴム等の柔軟な材料からなるパッキン14(シール材)を介して、ワーク11の周面の端を締め付け固定するとともに、ワーク11の両端面と周面とを遮断する。
【0061】
カバー12は、上下方向にスライド可能に配設されており、ワーク搬送部70によって、ワークチャック13aとワークチャック13bとの間の空間に、ワーク11が搬送されて来る前は、搬送されて来るワーク11と干渉しない位置まで上昇している。そして、ワーク搬送部70によって、ワーク固定部10のワークチャック13aとワークチャック13bとの間の空間にワーク11が搬送され、そのワーク11が前記のようにワークチャック13aとワークチャック13bとによって固定された後、カバー12が下降してワーク11の周面(側面)を覆い、ワーク11の外周側から気体が侵入することを防止する。カバー12の形状は、角柱状のワーク11に合わせて角筒状である。カバー12の材料としては特に限定はなく、好適なものは、金属、樹脂等である。
【0062】
粉体搬送部20は、ワーク固定部10の一の側に配設され、ワーク11に捕集層を形成するための粉体を用いて、これを気体中に分散させてエアロゾルを作製し、そのエアロゾルをワーク11へ導く部分である。ここでエアロゾルを作製するのであるから、ワーク固定部10からみて、エアロゾルの入口側となる。この粉体搬送部20は、主に、エジェクタ21、定量の粉体を供給するための粉体供給装置24で構成される。
【0063】
エジェクタ21は、気流とともに粉体を噴射させる装置である。好ましくは、高速の気流によって生じた負圧を利用して、粉体を吸引し、気流とともに、排出する機構を有するものである。即ち、先ず、このエジェクタ21で、エアロゾルが作製される。高速の気流は、図2には具体的に示されない加圧気体供給機23(コンプレッサ等)から、流量計26及び調節弁27が設けられた配管28を通して、所定の流量で、エジェクタ21へ供給される。粉体は、重量計25(質量計)が付属した粉体供給装置24によって、チューブ29を介し、所定の送り量で、エジェクタ21へ供給される。図2に示されるように、エジェクタ21は、粉体を吸引していることが好ましい。配管やエジェクタ内でのブリッジ(アーチ)やラットホールが抑制され、粉体不供給という問題が生じ難くなるからである。捕集層を形成する(セラミック)粉体は、微粒子であり、凝集し易い性質があり、このような粉体を、セル内面に確実に付着させるとともに、その反対に気流で搬送される間は配管等に付着させないことが必要であるが、エジェクタ21は、これらに対し効果的なものである。又、粉体の吸引方向とエアロゾルの排出方向とが略平行であることが、更に好ましい。
【0064】
エジェクタ21は、粉体との接触のよる摩擦で磨耗するのを低減するために、粉体と接する面に、ダイヤモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)、炭窒化珪素(SiCN)、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(SiN)や超硬材料、又はこれらの合金や組合せからなる材料が用いられていることも好ましく、コーティング、メッキ、ライニング等によって形成してもよい。
【0065】
エジェクタ21として市販されているものを用い、その本体に配管を接続して、噴射端を延ばしてもよい。又、噴射時の流速を低減させるため、噴射端自体あるいは接続した配管の径を、大きくしてもよい。粉体から粗大粒子を除去するために、エジェクタ21本体又は接続する配管との間に、分離機能を付与することも好ましい。その分離機能は、具体的には、接続する配管を部分的に太くしたり、渦流を形成したり、配管を縦にして下から上への気流を形成したり、スクリーンメッシュを挿入することによって、実現される。
【0066】
粉体供給装置24は、エジェクタ21における粉体の吸引側に粉体を落下させて、エジェクタ21へ粉体を供給する装置であり、定量の粉体を供給することを可能とする自動供給装置である。粉体供給装置24には、重量計25(質量計)が付属しているのが望ましく、重量計の代わりに容積計を用いることも可能である。粉体供給装置24の供給機構は、例えばスクリュー式であるが、他にロータリー式、振動式、テーブル式、ベルト式等の機構のものを採用することが出来る。粉体供給装置24は、タイムスケジュールに合わせた自動供給や、供給重量(質量)の変更等が可能なものであり、更に、供給速度(供給量/供給時間)の制御も容易に行うことが出来るものである。
【0067】
吸引部30は、ワーク固定部10の他の側に配設され、エジェクタ21から噴射されるエアロゾルに新たな気体(空気)が混合されたエアロゾルをワーク11(ハニカムフィルタ前駆体)へ吸引する部分である。エアロゾルをワーク11へ吸引するのであるから、ワーク固定部10からみて、ワーク11の出口側となる。
【0068】
この吸引部30は、主に、吸引機33とダクト34で構成される。ダクト34は、ワークチャック13bと接続されている。吸引機33は(例えば)ファンであるが、他にブロワ、集塵機を用いることが出来る。吸引部30として、吸引流量を制御可能であることが好ましい。例えば、吸引機33にかかる電動機の回転数を可変とし、あるいは、バルブ等でダクト34(流路)の径を調整して、吸引流量を制御することが可能である。好ましい吸引流量は、ワーク11が、例えば自動車に搭載されるDPFとして使用されるハニカムフィルタ前駆体である場合には、0.1〜400m/min程度である。
【0069】
吸引部30のダクト34(流路)には、風速計32が設けられ、吸引流量を監視するとともに、制御のためのデータを提供する。風速計32は熱線式のものであるが、他に機械式、ピトー管式等のものを採用することが出来る。ワーク11を通過してしまった粉体から保護するために、フィルタを前置してもよい。又、エアロゾルが導入されている間は、保護のためのカバーを設けたり、ダクト34内から退避させる機構を設けてもよい。更に風速計32に付着した粉体を取り除くためのブローノズルを配置してもよい。
【0070】
ハニカムフィルタ製造装置1では、粉体搬送部20が下側に位置し、吸引部30が上側に位置する。即ち、エアロゾルがワーク11へ導入される側が下であり、排出される側が上であり、気流の方向は下から上である。そのため、付着しなかった粉体は下へ落下し、セル内面に付着しなかった粉体の回収が容易である。
【0071】
ハニカムフィルタ製造装置1においては、導入部40は、粉体搬送部20とワーク固定部10の間に形成されている。導入部40は、何の構造物も存在しない開放された空間であってもよいが、粉体を、ワーク固定部10に固定されたワーク11へ案内するガイド部材42を設けることが好ましい。この導入部40において、粉体搬送部20から気流に乗って搬送された粉体は、他の気体と更に混合され、ワーク固定部10に固定されたワーク11へ導入される。
【0072】
導入部40に設けられたガイド部材42は、角柱状のワーク11に合わせて、角筒状であり、このガイド部材42は、ワークチャック13aに接続される。そして、ガイド部材42は、エジェクタ21から噴射されたエアロゾルを、無駄なくワーク11へ導く役割を果たす。一方、ガイド部材42のワーク固定部10とは反対側は、開放されており、ここから、エジェクタ21を通過する気体とは別に、気体が吸引される。即ち、エジェクタ21から噴射されるエアロゾルに、新たな気体(空気)が混合されて新たなエアロゾルになり、この新たなエアロゾルがワーク11のセル内へ導入される。
【0073】
ガイド部材42の材料として好適なものは、カバー12と同様に、金属、樹脂である。具体的には、アルミニウム、ステンレス、真鍮、鉄、アクリル、塩化ビニル、ナイロン(ポリアミド樹脂)、ベークライト(フェノール樹脂)等を挙げることが出来る。ガイド部材42の材料として導電性を有するものを用い、ガイド部材42をアースしておくことが、特に好ましい。又、エジェクタと同様に、粉体との接触のよる摩擦で磨耗するを低減するために、粉体と接する面に、ダイヤモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、TiN、TiCN、SiCN、又はこれらの合金や組合せからなる材料を用いて、コーティング、メッキ、ライニングを施すことも好ましく、更に、粉体と接する部分の材料として、SiCや所謂超硬材料を用いることも好ましい。
【0074】
清掃部50は、粉体導入後(製膜後)のワーク11の端面に付着している余剰粉体を除去する部分である。ワーク11に導入された粉体は、その大部分がセル内面に堆積するが、少なくとも一部の粉体は、粉体搬送部20の側におけるワーク11の端面11aに付着する。このワーク11の端面11aに付着した粉体は、捕集層を形成しない余剰の粉体であるので、粉体導入後に除去する必要が有る。
【0075】
図1に示すハニカムフィルタ製造装置1において、清掃部50は、余剰粉体を除去するための粉体除去手段として、エアノズル51を備える。粉体導入後のワーク11における粉体が導入された側の端面に対し、このエアノズル51にて当該端面と平行に空気を吹き付けることにより、ワーク11のセル内面に堆積した粉体は剥離させず、ワーク11の端面に付着した粉体のみを除去することが出来る。ワーク11の端面から除去された粉体は、清掃部50においてエアノズル51の噴射方向に設けられた排気ダクト52に吸引される。尚、清掃部50は、余剰粉体を除去するための粉体除去手段として、エアノズル51の代わりにブラシを備えることも好ましい。ブラシにて、ワーク11の端面のブラッシングを行うことによっても、ワーク11のセル内面に堆積した粉体は剥離させず、ワーク11の端面に付着した粉体のみを除去することが出来る。
【0076】
判定部60は、ワーク11に付着した粉体の付着量を判定する部分である。品質の一定したハニカムフィルタを製造するためには、ワーク11毎の粉体の付着量(製膜量)にバラツキが無く、付着量が所定の範囲に納まっていることが必要である。
【0077】
図1に示すハニカムフィルタ製造装置1において、判定部60は、ワーク11付着した粉体の付着量を判定するための判定手段として、粉体導入前(製膜前)のワーク11の重量を測定する計量器61と、粉体導入後のワーク11の重量を測定する計量器62とを備える。これら計量器61,62にて、粉体導入前と粉体導入後のワーク11の重量を測定し、その差を算出することにより、ワーク11に付着した粉体の付着量(製膜量)が、所定の範囲内に納まっているかどうかの判定を、短時間で精度良く行うことが出来る。尚、計量器61,62には、分解能10mg以下の計量器を用いることが好ましい。
【0078】
ワーク搬送部70は、図示しない駆動機構によって駆動され、ワーク固定部10、清掃部50及び判定部60の間で、ワーク11の搬送を行う部分である。ワーク固定部10、清掃部50及び判定部60の間におけるワーク11の搬送を、ワーク搬送部70にて行うと、例えば、手作業によりワーク11の搬送を行う場合に比べて、製膜作業の効率が向上し、高い生産性が得られる。
【0079】
図1に示すハニカムフィルタ製造装置1において、ワーク搬送部70は、前後方向(図の左右方向)へ所定のストロークで往復動作する。ワーク搬送部70を駆動させる駆動機構は、ワーク固定部10よりも上方に配設されていることが好ましい。通常、ワーク11に付着しなかった粉体は、下方に落下するので、駆動機構がワーク固定部10よりも上方に配設されていると、ワーク11に付着しなかった粉体が駆動機構の内部に侵入しにくく、粉体の侵入による駆動機構の動作部位の摩耗が軽減され、耐久性が向上するとともに、搬送の位置精度が安定する。
【0080】
ハニカムフィルタ製造装置1において、ワーク搬送部70は、図5に示すように、板面が水平方向となるように配設された移動板71と、移動板71の下面側に所定間隔で設けられた複数の開閉クランプ72とを備える。移動板71には、ワーク固定部10と干渉しないようスリット73が形成されている。開閉クランプ72は、ワーク11の搬送時にワーク11を把持するための把持手段として設けられている。図5に示すように、開閉クランプ72は、ワーク11の外周面を挟み込むようにしてワーク11を把持する。開閉クランプ72は、クランプ荷重を制御可能で、かつ、ワーク11との接触面74が樹脂からなることが好ましい。このような開閉クランプ72を用いれば、ワーク11を把持する際のクランプ荷重を制御するとによって、把持時の衝撃を抑制することが可能となり、製膜後のワーク11を搬送する際に、前記衝撃によりワーク11のセル内面に堆積した粉体が剥離するのを防止出来る。又、ワーク11との接触面74が柔軟な樹脂からなることにより、把持時にワーク11にダメージが生じるのを防止することが出来る。
【0081】
ワーク搬送部70が、ワーク11を搬送する際の具体的な動作としては、まず、搬送元において開閉クランプ72がワーク11を把持し、次いで、移動板71が前進する。そして、移動板71の前進により、開閉クランプ72に把持されたワーク11が所定の搬送先に到達したら、移動板71が停止し、開閉クランプ72が開いてワーク11を離す。その後、移動板71が元の位置まで後退し、次回の搬送のための待機状態となる。ハニカムフィルタ製造装置1においては、このような搬送動作の繰り返しにより、以下の(1)〜(3)の搬送が順次行われる。
(1)計量器61に載置されたワーク11のワーク固定部10への搬送。
(2)ワーク固定部10にて粉体が導入されたワーク11の清掃部50への搬送。
(3)清掃部50にて余剰粉体が除去されたワーク11の計量器62への搬送。
【0082】
以上、本発明のハニカムフィルタ製造装置の構成と材料について説明したが、このハニカムフィルタ製造装置は、市販の機器や部品を利用し、市販の材料を加工して、適宜、組み合せることによって、作製することが出来る。
【0083】
次に、本発明に係るハニカムフィルタ製造方法について、説明する。本発明に係るハニカムフィルタ製造方法は、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置を用いて、外形が略柱状の多孔質体からなる基材を備え、その基材が、一の端面から他の端面まで延びるセルを有するとともに、その基材の内表面に、捕集層が形成されてなるハニカムフィルタを製造する方法である。
【0084】
先ず、セラミック原料を含有する成形原料を押出成形することによって、外形が略柱状であって流体の流路となる一の端面から他の端面まで延びる複数のセルを有する成形体を得る。より詳細には、好ましくは、コージェライト、炭化珪素、アルミナ、ムライト、チタン酸アルミニウム、又は窒化珪素のうちの何れかからなる骨材粒子、水、有機バインダ(ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等)、造孔材(グラファイト、澱粉、合成樹脂等)、界面活性剤(エチレングリコール、脂肪酸石鹸等)等を混合し、ニーダ、真空土練機等を用いて混練することによって坏土を得て、その坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を備えた押出成形機を用いて、押出成形して、所望の形状に成形し、その後、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機で乾燥することによって、成形体を得る。
【0085】
次いで、その成形体の隣接する複数のセルに対し、成形体の一の端面と他の端面を見ると、ともに千鳥模様ないし市松模様のようになるように、一方の開口端と他方の開口端とを互い違いに目封止し、その後、焼成して、基材を得る。より詳細には、好ましくは上記骨材粒子と同じ材料からなる目封止用のスラリーを、容器に貯留しておき、成形体の一方の端面において、千鳥模様ないし市松模様のようになるように、概ね半数のセルをマスクし、その側を、容器中に浸漬して、マスクしていないセルの開口にスラリーを充填して、目封止する。成形体の他方の端面については、一方の端面において目封止されたセルについてマスクを施し(当然に千鳥模様ないし市松模様のようになる)、その側を、容器中に浸漬して、マスクしていないセルの開口にスラリーを充填して、目封止する。こうすると、一方の端面において目封止されていないセルは、他方の端面において目封止され、他方の端面において目封止されていないセルは、一方の端面において目封止され、両端面において千鳥模様ないし市松模様のようにセルが交互に塞がれた構造となる。そして、目封止された成形体を仮焼きして脱脂し、その後、焼成(本焼成)を行えば、基材が得られる。有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の温度は200〜1000℃程度とすればよい。焼成温度は、骨材粒子の原料により異なるため、それに応じて適当な条件を選択すればよい。一般に、1400〜1500℃程度である。
【0086】
次に、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置を用い、判定部にて、得られた基材の重量を、好ましくは分解能10mg以下の計量器を用いて計量し(製膜前計量工程)、その後、ワーク搬送部により、この基材をワーク固定部に搬送して、基材のセル内へエアロゾルを導入し、基材のセル内面に粉体を堆積させる(製膜工程)。粉体(粒子)の平均粒径は、隔壁の平均細孔径によって異なるが、1〜15μmであることが好ましい。粉体の材料として、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、チタン酸アルミニウム、等が、好ましく用いられる。特に好ましい材料は、(基材の)上記骨材粒子と同じ材料である。
【0087】
粉体は、より詳細には、上記材料を分粒した後、ジェットミル(乾式)、ポットミル(湿式)によって、粗粒子を更に粉砕し、微粒、且つシャープな粒子径分布を持つ粉砕粒子として、得ることが出来る。尚、粉体として、基材における隔壁の平均細孔径より小さいものを用いても、粉体は、隔壁の表面(厳密には表層(隔壁の厚さ方向において隔壁の表面から20%までの範囲))に堆積する。これは、隔壁の細孔よりも粉体(粒子)の方が小さいが、粉体を含むエアロゾルが隔壁を通過する際に、粉体の拡散やさえぎりの粒子捕集メカニズムによって気流の流線に乗らず、隔壁の表面(表層)に堆積するためと考えられる。
【0088】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置を用いて、基材の隔壁に、粉体を付着させ堆積させるに際しては、基材(ワーク)をワーク固定部に固定し、粉体搬送部で、供給すべき粉体の量、及び加圧気体供給機からの気流(空気)の流量を、それぞれ所定の値に設定するとともに、吸引部における吸引流量を所定の値に設定する。この吸引部の吸引流量の設定に際しては、セル内面(隔壁の表面)に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積させるために、エジェクタを通過する流量より、基材(の隔壁)を通過する流量が、多くなるようにすることが肝要である。
【0089】
基材の隔壁に、粉体を付着させ堆積させたら、その後、ワーク搬送部により、基材をワーク固定部から清掃部に搬送し、エアノズル等を用いて、基材の、エアロゾルが導入された側(入口側)の端面に残存した粉体を除去する(清掃工程)。そして、粉体が堆積した(製膜された)基材を、ワーク搬送部により、判定部に搬送し、好ましくは分解能10mg以下の計量器を用いて計量し(製膜後計量工程)、製膜の成否を確認する。
【0090】
最後に、焼成して、セル内面に堆積させた粉体を焼結させ安定させれば、ハニカムフィルタが得られる。このときの焼成温度は、基材を得た際の焼成温度よりも低いことが好ましい。粉体を焼結固定させるために必要な温度が加熱されればよい。粉体の材料によって異なるが、一般に、焼成温度は1250〜1350℃であることが好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0092】
(実施例1)骨材粒子として炭化珪素を用い、四角柱状の目封止ハニカム構造体を5個作製し、それらの目封止ハニカム構造体について、図1に示されるハニカムフィルタ製造装置1を使用して、目封止ハニカム構造体(基材)のセル内面に粉体を堆積させた。ワーク固定部10に目封止ハニカム構造体を固定したときに、目封止ハニカム構造体の端面からエジェクタ21の噴射端までの距離dは290mmであり、ガイド部材42の長さLは300mm、内寸は49mm角である。又、四角柱状の目封止ハニカム構造体の軸長は152.4mm、軸に垂直な断面の大きさは36.2mm×36.2mmであり、セル密度は300cpsi(セル/平方インチ)、隔壁の厚さは12ミル(1ミルは約0.0254mm)である。吸引部30が吸引する気体の流量を0.4m/minとし、粉体搬送部20から噴射される気体の流量を0.1m/minとし、導入部40において新たに混合される気体の流量を0.3m/minとした。又、粉体の供給量を2.2gとし、供給時間を3秒とし、供給速度を40g/minとした。そして、各目封止ハニカム構造体への、粉体の付着量/供給量によって収率を求めたところ、その平均値は86%であった。又、各目封止ハニカム構造体への粉体の付着量(製膜量)は1.7〜1.89gであり、付着量のバラツキは±5.5%であった。尚、目封止ハニカム構造体への粉体の付着量[g]は、製膜前計量工程での重量と製膜後計量工程での重量との差により求め、供給量[g]は、粉体供給装置からの供給量によって求めた。製膜後の重量は、目封止ハニカム構造体の端面に付着した余剰の粉体をエアノズルからのエア噴射により除去してから測定した。
【0093】
(実施例2)実施例1により製膜した目封止ハニカム構造体を焼成して、捕集層が形成された目封止ハニカム構造体を得た。得られた目封止ハニカム構造体について、PMを堆積させた状態で圧力損失を測定したところ、捕集層のない場合と比較して、圧力損失が低下しており、捕集層の効果が確認された。更に、この目封止ハニカム構造体に対し、中央付近(中心軸を含む部分)と外周付近とから、それぞれ同じ大きさで切り出し、それぞれの圧力損失を測定したところ、両者に有意な差異は認められなかった。更に、それぞれの捕集層(セル内面)を走査型電子顕微鏡で観察したところ、両者の捕集層に外観上の差異はなく、未製膜部分も認められなかった。以上によって、均一な捕集層が形成されていることが確認出来た。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、DPFとして用いられるハニカムフィルタを製造する手段として、好適に利用される。DPFは、ディーゼルエンジンをはじめとする内燃機関や、各種燃焼装置から排出されるガス中に含まれるパティキュレートを捕集し、ガスを浄化するために使用されるフィルタである。
【符号の説明】
【0095】
1:ハニカムフィルタ製造装置
10:ワーク固定部
11:ワーク
11a:粉体搬送部の側における基材(ワーク)の端面
13a,13b:ワークチャック
12:カバー
14:パッキン
20:粉体搬送部
21:エジェクタ
23:加圧気体供給機
24:粉体供給装置
25:重量計
26:流量計
27:調節弁
28:配管
29:チューブ
30:吸引部
32:風速計
33:吸引機
34:ダクト
40:導入部
42:ガイド部材
50:清掃部
51:エアノズル
52:排気ダクト
60:判定部
61,62:計量器
70:ワーク搬送部
71:移動板
72:開閉クランプ
73:スリット
74:接触面
80:粉体搬送部の側における基材の端面を内包する最小の円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムフィルタの製造に使用する装置であって、
ハニカムフィルタの基材を固定するためのワーク固定部と、
そのワーク固定部の一の側に配設され、加圧気体を用いて粉体を気流に乗せて搬送する粉体搬送部と、
その粉体搬送部と前記ワーク固定部の間に設けられ、前記粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を他の気体と更に混合して、前記装置使用時に前記ワーク固定部に固定される基材へ導入する導入部と、
前記ワーク固定部の他の側に配設され、吸引手段を用いて前記ワーク固定部の他の側を前記ワーク固定部の一の側に対して減圧にして前記ワーク固定部に固定される基材を通過した気体を吸引する吸引部と、
粉体導入後の基材の端面に付着している余剰粉体を除去する清掃部と、
基材に付着した粉体の付着量を判定する判定部と、
駆動機構によって駆動され、前記ワーク固定部、前記清掃部及び前記判定部の間で、基材の搬送を行うワーク搬送部と、
を有するハニカムフィルタ製造装置。
【請求項2】
前記駆動機構が、ワーク固定部よりも上方に配設されている請求項1に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項3】
前記清掃部が、余剰粉体を除去するための粉体除去手段として、エアノズルを備える請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項4】
前記清掃部が、余剰粉体を除去するための粉体除去手段として、ブラシを備える請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項5】
前記判定部が、基材に付着した粉体の付着量を判定するための判定手段として、粉体導入前の基材の重量を測定する計量器と、粉体導入後の基材の重量を測定する計量器とを備える請求項1〜4の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項6】
前記ワーク搬送部が、基材の搬送時に基材を把持するための把持手段として、クランプ荷重を制御可能で、かつ、基材との接触面が樹脂からなる開閉クランプを備える請求項1〜5の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項7】
前記粉体搬送部が、加圧気体を用いた粉体分散手段を備える請求項1〜6の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項8】
前記粉体分散手段は、エジェクタである請求項7に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項9】
前記エジェクタは、粉体を気流によって吸引し、加圧気体とともに粉体を排出して、気体中へ分散する請求項8に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項10】
前記エジェクタにおける粉体の吸引方向と排出方向とが、略平行である請求項9に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項11】
前記粉体搬送部が、定量の粉体を供給するための粉体供給手段を備える請求項1〜10の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項12】
前記導入部が、前記粉体を、前記ワーク固定部に固定される基材へ案内するガイド部材を有する請求項1〜11の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項13】
前記粉体搬送部又は導入部に、分級手段を備える請求項1〜12の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置を用い、前記吸引部が吸引する気体aの流量A、前記粉体搬送部から噴射される気体bの流量B、前記導入部において前記気体bと混合される気体cの流量Cが、A=B+C、且つ、C>0の関係を満たすように流量を調節して、
ハニカムフィルタの基材の内表面に、前記粉体を堆積させる過程を有するハニカムフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2011−212671(P2011−212671A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43877(P2011−43877)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】