説明

ハニカム構造体の搬送装置、及び、ハニカム構造体の封口方法

【課題】ハニカム構造体の貫通孔と封口用マスクの貫通孔との正確な位置合わせを容易に行なうことのできるハニカム構造体の搬送装置及びハニカム構造体の封口方法を提供する。
【解決手段】コントローラ80の初期回転角度認識部82が、ハニカム構造体70の鉛直軸周りの初期回転角度を認識し、必要回転角度取得部84が、認識した初期回転角度に基づいて封口用マスク170に対するハニカム構造体70の回転角度を所望の最終回転角度とするために必要な回転角度を取得し、必要回転角度取得部84が取得した必要な回転角度に基づいてハンド回転部20を駆動してハニカム構造体70を回転させる。回転角度が不揃なハニカム構造体70を移送する際に、ハニカム構造体70を封口用マスク170の上に所望の回転角度として配置できるので、封口用マスク170とハニカム構造体70との位置合わせが容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の搬送装置、及びハニカム構造体の封口方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハニカムフィルタが、DPF(Diesel particulate filter)用等として広く知られている。このハニカムフィルタは、多数の貫通孔を有するハニカム構造体の一部の貫通孔の一端側を封口材で封じると共に、残りの貫通孔の他端側を封口材で封じた構造を有する。そして、特許文献1には、このようなハニカムフィルタを製造する方法が開示されている。特許文献1では、シリンダ内に配置したハニカム構造体の一端面に対して、封口する場所に貫通孔を有する封口用マスクを介してピストンにより封口材を貫通孔に押圧することにより、ハニカム構造体の所望の貫通孔の端部に封口材を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−24731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハニカム構造体の貫通孔の径は小さい。また、封口用マスクの貫通孔の径もハニカム構造体の貫通孔と同程度である。したがって、ハニカム構造体の貫通孔と、マスクの貫通孔とを正しく重ね合わせた状態では、封口用マスクの開口から、ハニカム構造体の外壁の輪郭や貫通孔の輪郭を見ることは困難である。したがって、ハニカム構造体の貫通孔と、封口用マスクの貫通孔との正確な位置合わせが非常に困難であった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ハニカム構造体の貫通孔と、封口用マスクの貫通孔との正確な位置合わせを容易に行なうことのできるハニカム構造体の搬送装置及びハニカム構造体の封口方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鉛直方向に配置された柱状のハニカム構造体を把持可能であるハンドと、第1の水平方向に延びる第1軸レールに沿ってハンドを移動させる第1軸駆動部と、第1の水平方向とは異なる第2の水平方向に延びる第2軸レールに沿って第1軸レールを平行移動させる第2軸駆動部と、第1軸レールに対してハンドを鉛直軸周りに回転させるハンド回転部と、基準位置においてハンドが把持したハニカム構造体の端面を撮影するカメラと、カメラの画像に基づいて、基準位置におけるハニカム構造体の鉛直軸周りの初期回転角度を認識する初期回転角度認識部と、第1軸駆動部及び第2軸駆動部を駆動することにより、ハンドが把持するハニカム構造体を基準位置から封口用マスクまで搬送させる軸駆動制御部と、初期回転角度認識部が基準位置で認識した初期回転角度に基づいて、封口用マスクに対するハニカム構造体の回転角度を所望の最終回転角度とするために必要な回転角度を取得する必要回転角度取得部と、必要回転角度取得部が取得した必要な回転角度に基づいてハンド回転部を駆動してハニカム構造体を回転させるハンド回転制御部とを備えるハニカム構造体の搬送装置である。
【0007】
この構成によれば、初期回転角度認識部が、基準位置におけるハニカム構造体の鉛直軸周りの初期回転角度を認識し、必要回転角度取得部が、基準位置で認識した初期回転角度に基づいて、封口用マスクに対するハニカム構造体の回転角度を所望の最終回転角度とするために必要な回転角度を取得し、必要回転角度取得部が取得した必要な回転角度に基づいてハンド回転部を駆動してハニカム構造体を回転させる。これにより、ハンドで把持したハニカム構造体を、封口用マスクの上に所望の回転角度として配置できるので、封口用マスクとハニカム構造体との位置合わせが容易となる。
【0008】
この場合、第1軸レールに対して第2軸レールは直交していることが好適である。
【0009】
この構成によれば、第1軸レールに対して第2軸レールは直交している。これにより、第1軸駆動部及び第2軸駆動部はそれぞれ最小の移動距離でハニカム構造体を所定の位置に移動させることができる。
【0010】
また、カメラはハニカム構造体の下端面を撮影することが好適である。
【0011】
この構成によれば、カメラはハニカム構造体の下端面を撮影する。これにより、ハニカム構造体をハンドで把持したままで端面を容易に撮影できるため、ハンドから開放して撮影し再度ハンドで把持する場合に比べて、角度検出精度や、位置合わせの精度が高くなる。
【0012】
また、本発明は、鉛直方向に配置された柱状のハニカム構造体をハンドで把持する工程と、ハンドが把持したハニカム構造体の端面の画像を撮影する工程と、画像に基づいて、撮影がなされた基準位置におけるハニカム構造体の鉛直軸周りの初期回転角度を認識する工程と、第1の水平方向に延びる第1軸レールに沿ってハンドを移動させつつ、第1の水平方向とは異なる第2の水平方向に延びる第2軸レールに沿って第1軸レールを平行移動させることによって、ハンドが把持するハニカム構造体を基準位置から封口用マスクまで搬送する工程と、基準位置で認識した初期回転角度に基づいて、封口用マスクの上におけるハニカム構造体の回転角度を所望の最終回転角度とするために必要な回転角度を取得する工程と、必要な回転角度に基づいてハンドを回転させる工程と、ハンドの回転後に封口用マスク上のハニカム構造体を封口用マスク上に載置する工程と、載置された封口用マスクを介してハニカム構造体に封口材を供給する工程とを含むハニカム構造体の封口方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハニカム構造体の搬送装置及びハニカム構造体の封口方法によれば、ハニカム構造体の貫通孔と、封口用マスクの貫通孔との正確な位置合わせを容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る搬送装置、フィード装置、封口装置を示す斜視図である。
【図2】図1のコントローラ及びその周辺部の構成を示すブロック図である。
【図3】(a)はハニカム構造体70の基準となる回転状態を示す平面図であり、(b)はハニカム構造体70が角度θ回転した状態を示す平面図である。
【図4】(a)は封口装置を示す断面図であり、(b)は封口装置の動作を示す(a)に続く断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる搬送装置のハニカム構造体の封口時における動作を示す図1に続く斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる搬送装置のハニカム構造体の封口時における動作を示す図5に続く斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る搬送装置、フィード装置、封口装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、ハニカム構造体について説明する。
【0016】
まず、搬送対象となるハニカム構造体70について説明する。
【0017】
本実施形態に係るハニカム構造体70は、図1に示すように、鉛直方向に延びて上下両端面に開口する多数の貫通孔70aを有する柱体である。ハニカム構造体70の外形形状は特に限定されないが、例えば、円柱、楕円柱、角柱(例えば、正三角柱、正方形柱、正六角柱、正八角柱等の正多角柱や、正多角柱以外の、3角柱、4角柱、6角柱、8角柱等)等である。また、各貫通孔70aの断面形状も特に限定されず、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形、六角形等の多角形等が挙げられる。貫通孔70aには、径の異なるもの、断面形状の異なるものが混在してもよい。
【0018】
ハニカム構造体70の上下の端面から見た場合の、貫通孔70aの配置の形態も特に限定されず、たとえば、貫通孔70aの中心軸が正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている正方形配置、貫通孔70aの中心軸が正三角形の頂点に配置される正三角形配置等が挙げられる。
【0019】
貫通孔70aの径も特に限定されず、例えば、断面が正方形の場合、一辺0.8〜2.5mmとすることができる。貫通孔70a同士を隔てる隔壁の厚みは、例えば、0.15〜0.76mmとすることができる。
【0020】
また、ハニカム構造体70の貫通孔70aが延びる方向の長さ(鉛直方向の全長)は特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、ハニカム構造体70の外径も特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。
【0021】
ハニカム構造体70は、後で焼成することによりセラミクスとなるグリーン(未焼成体)であることが好ましく、特に、多孔性セラミクスとなるグリーンであることが好ましい。セラミクスは特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。なお、ハニカム構造体70は、焼結後のセラミクスであってもよい。
【0022】
続いて、このようなハニカム構造体70の本発明の第1実施形態に係る搬送装置400aについて説明する。
【0023】
この搬送装置400aは、フィード装置1、及び、封口装置200に隣接して設けられている。フィード装置1は、ハニカム構造体70を搬送装置400aにフィードする。搬送装置400aは、フィード装置1によりフィードされたハニカム構造体70を、封口装置200の封口用マスク170上に、定められた回転角度で載置する。封口装置200は、ハニカム構造体70の一端面に封口材を供給する。本実施形態では、封口装置200は搬送装置400aの周りに二つ並んで設けられている。本実施形態の搬送装置400aは、ロボット搬送システムである。
【0024】
搬送装置400aは、主として、ハンド10、X軸レール32、Y軸レール34、XY軸駆動部40、ハンド回転部20、ハンド昇降部22、カメラ90、コントローラ80を主として備える。
【0025】
ハンド10は、ベース部14及びベース部14に固定され、ハニカム構造体70を把持可能な把持部材12を有している。把持部材12は、鉛直方向に沿って配置された柱状のハニカム構造体70を、当該方向を保持した状態で把持する。具体的には、例えば、把持部材12は、ハニカム構造体70の側面の上部を複数本の指部材で挟むことができる。ハンド10には、鉛直回転軸16が接続されている。
【0026】
図中Y軸方向に水平に伸びるY軸レール34に沿ってハンド10を移動させるY軸駆動部44と、Y軸方向と直交する図中X軸方向に水平に延びるX軸レール32に沿ってY軸レール34を平行移動させるX軸駆動部42とが設けられている。Y軸駆動部44には、Y軸駆動部44に対してハンド10を鉛直回転軸16周りに回転させるハンド回転部20を介してハンド10が固定されている。X軸駆動部42及びY軸駆動部44が、XY軸駆動部40を構成する。
【0027】
なお、鉛直回転軸16には、さらに、鉛直回転軸16を上下方向に移動させるハンド昇降部22が設けられている。
【0028】
カメラ90は、ハニカム構造体70を把持したハンド10の端面、好ましくは、下端面を撮影できる位置に配置されている。
【0029】
コントローラ80は、図2に示すように、ハンド10、XY軸駆動部40、ハンド回転部20、ハンド昇降部22及びカメラ90と接続されている。コントローラ80は、通常コンピュータにより構成され、以下の機能を発揮できる。
【0030】
把持・初期移動部81は、XY軸駆動部40及びハンド10を駆動して、フィード装置1によりフィードされたハニカム構造体70を把持し、カメラ90の上方の位置(以下、基準位置と呼ぶことがある)までハニカム構造体70を搬送させる。
【0031】
初期回転角度認識部82は、カメラ90によるハニカム構造体70の端面の撮影をすると共に、カメラ90が撮影した画像に基づいて、撮影がなされた基準位置における、ハンド10に把持されたハニカム構造体70の鉛直軸周りの初期回転角度θを認識する。
【0032】
回転角度とは、ハニカム構造体70が、鉛直軸周りにおいて、基準となる回転状態に対して、どれだけの角度で回転中心周りに回転した状態となっているかを示す角度である。例えば、図3の(a)の状態を、ハニカム構造体70の基準となる回転状態とする。ここでは、回転状態を容易に把握すべく、ハニカム構造体70の周辺部にマーク70m(オリエンテーションフラットでもよい)を付与する。そして、基準となる回転状態を、マーク70mが、回転中心Oを通るX軸上にある状態とする。そして、図3の(b)のように、ハニカム構造体70のマーク70mが場所Bにあれば、回転角度θを、X軸と、中心Oと位置Bとを結ぶ直線とのなす角と規定することができる。そして、初期回転角度θとは、カメラ90の上の基準位置における回転角度である。
【0033】
カメラ90の画像に基づく初期回転角度の認識方法は公知の画像処理法を用いればよく、特に限定されない。例えば、予めハニカム構造体70の端面における例えば周辺部にマーク70mを設けておき、画像から当該マーク70m及び回転中心Oを抽出し、マーク70mと回転中心Oとを結ぶ線と、基準となる方向例えばX軸とのなす角に基づいて、予め定められた基準状態に対する初期回転角度θを取得できる。また、回転中心Oをはさんでマーク70mとは反対側に、マーク70nを設け、マーク70m、70nを結ぶ線と、基準方向とのなす角に基づいて初期回転角度θを得てもよい。
【0034】
また、マーク70mを設けない場合でも、初期回転角度θの取得は可能である。例えば、ハニカム構造体70の外形形状が矩形等のように非円形である場合には、画像処理により輪郭を抽出し、頂点を結ぶ線等に基づいて初期回転角度θを求めることができる。また、画像処理によりハニカム構造体70の貫通孔70aの並ぶ方向等を認識し、当該方向とX軸とのなす角によりハニカム構造体70の初期回転角度θを認識することもできる。
【0035】
XY軸駆動制御部83は、XY軸駆動部40を駆動することにより、ハンド10が把持するハニカム構造体70を基準位置(カメラ上)から封口用マスク170の上まで搬送させる。具体的には、基準位置及び封口用マスク170の位置の相対的位置関係は予めわかっているので、この位置関係に応じて、X軸駆動部42のX軸レール32上の位置及びY軸駆動部44のY軸レール34上の位置をそれぞれ適切に定めることにより、このような搬送は容易である。すなわち、回転角度以外の、XY方向の位置をハニカム構造体70と封口用マスク170との間で合わせることは容易である。
【0036】
必要回転角度取得部84は、基準位置で認識した初期回転角度θに基づいて、封口用マスク170の上におけるハニカム構造体の最終回転角度を所望の回転角度とするために必要な回転角度を取得する。
【0037】
ここでは、図1に示すように封口用マスク170には周辺部にマーク170mがあり、このマーク170mと、ハニカム構造体70のマーク70mとが合致するように、封口用マスク170上においてハニカム構造体70の最終回転角度を合わせなければならないものとする。封口用マスク170にも、ハニカム構造体70と同様の回転角度を定義できる。ここでは、封口装置200にセットされた封口用マスク170の回転角度がφであるとする。この場合、ハニカム構造体70のとるべき最終回転角度はφとなる。
【0038】
そして、カメラ90の上の基準位置におけるハニカム構造体70の初期回転角度はθである。初期回転角度θ及び最終回転角度φを考慮すると、封口用マスク170上において、ハニカム構造体70の回転角度を、所望の最終回転角度φにするためには、γ=φ−θの角度だけ、ハンド10を回転させる必要がある。
【0039】
ハンド回転制御部85は、上述の必要な回転角度γに基づいてハンド回転部20を駆動してハニカム構造体70を回転させる。
【0040】
後工程指示部86は、ハンド回転制御部85によるハンド10の回転後に、ハンド昇降部22及びハンド10を駆動して、封口用マスク170上のハニカム構造体70を封口用マスク170上に降下させ、さらに、ハンド10から開放して封口用マスク170上に載置させる。なお、ハンド10からハニカム構造体70を開放せず把持したままでもよい。
【0041】
続いて、封口装置200の一例について、図4を参照して説明する。
【0042】
本実施形態に係る封口装置200は、主として、本体部210、弾性板220、ポンプ250を備える。
【0043】
本体部210は、金属(例えばステンレス)やポリマー材料(例えば繊維強化プラスチック等の)等から形成された剛性部材である。本体部210には、凹部210dが形成され、凹部210dの内面には、多孔質部材210pが貼り付けられている。
【0044】
弾性板220は、凹部210dの開口面を覆うように、本体部210の上に配置されている。弾性板220は、弾性を有し、容易に変形しうる。弾性板220としては、ゴム板が好ましい。
【0045】
弾性板220は、リング部材225により本体部210に固定されている。リング部材225は、本体部210の凹部210dに対応する位置に開口225aを有し、これにより環状形状をなしている。そして、リング部材225は、弾性板220における中央部(凹部210dとの対向部)が露出するように弾性板220上に配置されている。
【0046】
本体部210は、さらに、凹部210dの底面の多孔質部材210pに連通する連通路210eを有している。連通路210eにはポンプ250が接続されている。
【0047】
ポンプ250は、シリンダ251、及び、シリンダ251内に配置されたピストン253を備える。ピストン253には、ピストン253を軸方向に往復移動させるモータ255が接続されている。
【0048】
本実施形態では、弾性板220と、ピストン253と、の間には、本体部210、連通路210e、及び、シリンダ251により形成される閉鎖空間Vが形成され、閉鎖空間V内には、液体等の流体FLが充填されている。
【0049】
そして、ピストン253を移動させることにより、本体部210の凹部210d内から流体FLを排出して弾性板220を凹部210dの内面に密着させて弾性板220による凹部220dを形成することができ(図4の(a)の状態)、また、凹部210d内に流体FLを供給することに弾性板220を凹部210dの底部から引き離すこと(図4の(b)の状態)が出来る。
【0050】
そして、予め、図4の(a)のように、ピストン253を下げることにより、弾性板220による凹部220dを形成し、この凹部220d内に封口ペーストPを貯留しておく。
【0051】
続いて、本体部210の凹部210d上に、封口用マスク170を配置しておく。封口用マスク170の孔170aは、セラミクスハニカム構造体70の貫通孔70aの内、封口すべき孔のみに対向するようにハニカム構造体70に対して位置決めされる必要がある。本実施形態では、図1に示すように、封口用マスク170は外周部にマーク170mを有する。マーク170mは、例えば、オリエンテーションフラット等である。
【0052】
続いて、本実施形態にかかるハニカムフィルタの製造方法を説明する。
【0053】
まず、図1のように、フィード装置1によりハニカム構造体70を搬送装置400aの近傍まで搬送する。このとき、搬送されたハニカム構造体70における回転角度は、通常不揃いである。
【0054】
続いて、コントローラ80の把持・初期移動部81の指示により、XY軸駆動部40及びハンド10が駆動され、ハンド10でハニカム構造体70を把持し、その後、図5に示すようにカメラ90上に搬送する。
【0055】
次に、カメラ90は、ハニカム構造体70の端面を撮影する。
【0056】
続いて、コントローラ80の初期回転角度認識部82が、カメラ90の画像に基づいて、撮影がなされた基準位置における、ハンド10に把持されたハニカム構造体70の鉛直軸周りの初期回転角度θを認識する。
【0057】
続いて、コントローラ80のXY軸駆動制御部83は、図6に示すように、XY軸駆動部40を駆動することにより、ハンド10が把持するハニカム構造体70をカメラ90上の基準位置から封口用マスク170の上まで搬送させる。本実施形態では、封口装置200が複数あるので、適宜、準備が完了した封口装置200の封口用マスク170の上に搬送すればよい。
【0058】
続いて、コントローラ80の必要回転角度取得部84は、基準位置で認識した初期回転角度θに基づいて、封口用マスク170の上におけるハニカム構造体の回転角度を所望の最終回転角度φとするために必要な回転角度γを取得する。本例の場合には、γ=φ−θである。
【0059】
つづいて、ハンド回転制御部85は、上述の必要な回転角度γに基づいてハンド回転部20を駆動してハニカム構造体70を回転させる。これにより、封口用マスク170上において、ハニカム構造体70の回転角度がφとなり、封口用マスク170との回転角度の位置合わせが完了する。
【0060】
その後、後工程指示部86は、ハンド昇降部22及びハンド10を駆動して、封口用マスク170上のハニカム構造体70を封口用マスク上に降下させ、さらに、ハンド10から開放して封口用マスク170上に載置させる(図4の(a)の状態)。なお、ハンド10からハニカム構造体70を開放せず把持したままでもよい。
【0061】
続いて、図4の(b)に示すように、ポンプ250のピストン253を上方に移動させることにより、凹部210d内に流体FLを供給し、これによって、弾性板220をマスク170に向かって移動させる。これにより、封口ペーストPがマスク170の貫通孔170aを介して、セラミクスハニカム構造体70の一部の貫通孔70a内に供給され、封口部72が形成される。
【0062】
続いて、図示は省略するが、ピストン253をさらに上昇させ弾性板220と本体部210との間にさらに流体FLを供給し、弾性板220を上方向に凸状に変形させ、セラミクスハニカム構造体70及びマスク170を、弾性板220から引き離す。そして、必要に応じて、図示しない反転装置によりハニカム構造体の向きを上下反転させ、同様の操作により(なお、初期の回転角度が一定であれば、撮影や初期回転角度の認識は不要である)、ハニカム構造体70を他の封口部200に載置し、セラミクスハニカム構造体70の他の面に対して同様の封口を行うことができる。そして、封口されたセラミクスハニカム構造体を乾燥、焼成することにより、セラミクスハニカムフィルタを製造することが出来る。このようなセラミクスハニカムフィルタは、例えば、ディーゼルパティキュレートフィルタとして用いることができる。
【0063】
また、互いに種類や形態の異なる封口用マスク170を多数用意し、封口用マスク170の交換装置(不図示)を設けることにより、二種類以上のハニカム構造体を本装置で順番に封口することができる。
【0064】
本実施形態によれば、コントローラ80の初期回転角度認識部82が、基準位置におけるハニカム構造体70の鉛直軸周りの初期回転角度を認識し、必要回転角度取得部84が、基準位置で認識した初期回転角度に基づいて、封口用マスク170に対するハニカム構造体70の回転角度を所望の最終回転角度とするために必要な回転角度を取得し、必要回転角度取得部84が取得した必要な回転角度に基づいてハンド回転部20を駆動してハニカム構造体70を回転させる。これにより、予め回転角度が不揃いであるハニカム構造体70を封口用マスク170の上に移送する際に、ハンド10で把持したハニカム構造体70を封口用マスク170の上に所望の回転角度として配置できるので、封口用マスク170とハニカム構造体70との位置合わせが容易となる。
【0065】
特に本実施形態では、Y軸レール32に沿ってハンド10を移動させるY軸駆動部44と、X軸レール34に沿ってY軸レール32を平行移動させるX軸駆動部42とを備えるため、簡易な構成によりハンド10で把持したハニカム構造体70の回転角度を変えることなく、平行移動させることが可能であるため、搬送装置400aの制御が容易となる。
【0066】
また、本実施形態では、X軸レール32に対してY軸レール34は直交している。これにより、X軸駆動部42及びY軸駆動部44はそれぞれ最小の移動距離でハニカム構造体70を所定の位置に移動させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、カメラ90はハニカム構造体70の下端面を撮影する。これにより、ハニカム構造体70をハンド10で把持したままで端面を容易に撮影できるため、ハンド10から開放して撮影し再度ハンド10で把持する場合に比べて、角度検出精度や、位置合わせの精度が高くなる。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。
【0069】
例えば、図7に示す本発明の第2実施形態に係る搬送装置400bのように、X軸レール32以外にもう一本のX軸レール33を配置し、Y軸レール34をX軸レール32,33に跨るように配置して、Y軸レールをX軸レール32に沿って摺動するX軸駆動部42とX軸レール33に沿って摺動するX軸駆動部43とで平行移動させるようにしても良い。これにより、動作の精度と装置の強度を向上させることができる。
【0070】
また、上記実施形態では、カメラ90は、フィード装置1とは離れた位置に配置されているが、フィード装置1の底面を透明とし、ハンド10でフィード装置1からハニカム構造体70を把持する位置で、撮影を行うこともできる。
【0071】
また、上記実施形態では、ハンド回転部20による回転角度γに基づくハンド10の回転のタイミングは、ハニカム構造体70が、封口用マスク170の上に搬送されてからであるが、これに限定されず、例えば、基準位置から封口用マスク170の上まで搬送する間であってもよく、また、搬送前に基準位置にいる間であってもよく、これらの期間の任意の複数の期間にわたって回転させてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…フィード装置、10…ハンド、12…把持部材、14…ベース部、16…鉛直回転軸、20…ハンド回転部、22…ハンド昇降部、32…X軸レール、34…Y軸レール、40…XY軸駆動部、42…X軸駆動部、44…Y軸駆動部、70…ハニカム構造体、70a…貫通孔、70m,70n…マーク、80…コントローラ、81…把持・初期移動部、82…初期回転角度認識部、83…XY軸駆動制御部、84…必要回転角度取得部、85…ハンド回転制御部、86…後工程指示部、90…カメラ、170…封口用マスク、170a…貫通孔、170m…マーク、200…封口装置、210…本体部、210d…凹部、210e…連通路、210p…多孔質部材、220…弾性板、225…リング部材、225a…開口、250…ポンプ、251…シリンダ、253…ピストン、255…モータ、400a,400b…搬送装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に配置された柱状のハニカム構造体を把持可能であるハンドと、
第1の水平方向に延びる第1軸レールに沿って前記ハンドを移動させる第1軸駆動部と、
前記第1の水平方向とは異なる第2の水平方向に延びる第2軸レールに沿って前記第1軸レールを平行移動させる第2軸駆動部と、
前記第1軸レールに対して前記ハンドを鉛直軸周りに回転させるハンド回転部と、
基準位置において前記ハンドが把持したハニカム構造体の端面を撮影するカメラと、
前記カメラの画像に基づいて、前記基準位置における前記ハニカム構造体の鉛直軸周りの初期回転角度を認識する初期回転角度認識部と、
前記第1軸駆動部及び前記第2軸駆動部を駆動することにより、前記ハンドが把持するハニカム構造体を前記基準位置から封口用マスクまで搬送させる軸駆動制御部と、
初期回転角度認識部が前記基準位置で認識した前記初期回転角度に基づいて、前記封口用マスクに対する前記ハニカム構造体の回転角度を所望の最終回転角度とするために必要な回転角度を取得する必要回転角度取得部と、
前記必要回転角度取得部が取得した前記必要な回転角度に基づいて前記ハンド回転部を駆動して前記ハニカム構造体を回転させるハンド回転制御部と、
を備えるハニカム構造体の搬送装置。
【請求項2】
前記第1軸レールに対して前記第2軸レールは直交している、請求項1に記載のハニカム構造体の搬送装置。
【請求項3】
前記カメラは前記ハニカム構造体の下端面を撮影する、請求項1又は2記載のハニカム構造体の搬送装置。
【請求項4】
鉛直方向に配置された柱状のハニカム構造体をハンドで把持する工程と、
前記ハンドが把持したハニカム構造体の端面の画像を撮影する工程と、
前記画像に基づいて、前記撮影がなされた基準位置における前記ハニカム構造体の鉛直軸周りの初期回転角度を認識する工程と、
第1の水平方向に延びる第1軸レールに沿って前記ハンドを移動させつつ、前記第1の水平方向とは異なる第2の水平方向に延びる第2軸レールに沿って前記第1軸レールを平行移動させることによって、前記ハンドが把持するハニカム構造体を前記基準位置から封口用マスクまで搬送する工程と、
前記基準位置で認識した前記初期回転角度に基づいて、前記封口用マスクの上における前記ハニカム構造体の回転角度を所望の最終回転角度とするために必要な回転角度を取得する工程と、
前記必要な回転角度に基づいて前記ハンドを回転させる工程と、
前記ハンドの回転後に前記封口用マスク上のハニカム構造体を前記封口用マスク上に載
置する工程と、
前記載置された封口用マスクを介して前記ハニカム構造体に封口材を供給する工程と、
を含むハニカム構造体の封口方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−161955(P2012−161955A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22965(P2011−22965)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】