説明

ハロゲン化銀カラー写真感光材料および画像形成方法

【課題】劇場でスクリーンに映写された際のグレー階調再現性を良好にするハロゲン化銀カラー写真感光材料、特に映画用カラーポジ感光材料として好適に用いられるハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供すること、更にその画像形成方法を提供すること。
【解決手段】透過型支持体上にイエロー、マゼンタ、及びシアン色素形成カプラーのいずれか少なくとも一つを含有し、かつ互いに感色性の異なるハロゲン化銀乳剤粒子を含有する少なくとも3層の感光性親水性コロイド層、および少なくとも一層のアンチハレーション能を有する非感光性親水性コロイド層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、少なくとも3層の感光性親水性コロイド層に含有されるハロゲン化銀粒子の塩化銀含有率が95モル%以上であり、ネガフィルターSkinを通してタングステン光で露光処理した際のCIELab値で表されるL*値が5以上95以下の範囲におけるa*値が−2以上2以下、b*値が−10以上10以下であり、かつC*値が10.2以下であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン化銀カラー写真感光材料、特に映画用カラー写真感光材料として好適であり、特に高画質であり、更にはグレー諧調再現性並びにグレー色再現性に優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料、およびそれを用いた画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
色素画像の鑑賞、記録、保存に用いられているハロゲン化銀カラー写真感光材料において、その高画質化は常に望まれ、従来より数多くの研究が行われている。映画用、その中でも特に映写の段階で用いられる感光材料(映画用カラーポジフィルム)は映写機を通して直接ユーザーに鑑賞されるため高画質なこと、また世界中の映画館で鑑賞されるため大量に生産され、かつそれぞれが安定した均一な性能で仕上がる必要があること等が要求される。高画質なこととは、まず劇場でスクリーンに映写された際のシーンの再現が良好なことが重要である。再現が良好であることとはハイライトからシャドーに至るすべての部分で調子再現性が良好で詳細な表現力が豊かであることであり、その中でも特にグレーの調子再現性が豊かであることが重要である。
【0003】
カラープリント感光材料は撮影時に使用したカラーネガフィルムあるいはカラーインターネガフィルムの階調特性および焼き付け用プリント装置の特性を考慮した上でカラープリント感光材料のセンシトメトリー特性を設定している。一般的には各色のセンシトメトリー特性での階調(コントラスト)を低く設定しすぎると黒のトーンが灰色になる、全体にフラットな感じになり迫力のある絵柄にならない等の問題が生じる。反対にコントラストを高く設定しすぎると肌色の調子再現性が乏しくなる、シャドーディテェールの表現力が不十分になる等のことが生じ、このような映像も好ましくないものとなってしまう。このようなことを改良する技術が、例えば特許文献1及び2に開示されている。
【0004】
更に、黒濃度(最大発色濃度)が高いことは画像自体の表現可能な範囲(情報量)が広いことであり、映像品質として最重要項目の一つであるという観点から、中間調からシャドーにかけての階調を、シアン・マゼンタ・イエローのセンシトメトリー特性を得ることにより調子再現を向上する手段が、特許文献3において開示されている。
【0005】
ところがこれらの手法において、グレーの階調再現性を向上することはできるが、グレーの色再現性を向上するには不十分であり、具体的な測色方法と好ましいグレー色再現領域に関する開発手法の確立とその条件を満たすハロゲン化銀感光材料の開発が求められてきた。
【特許文献1】欧州特許第0779542A号
【特許文献2】欧州特許第0774689A号
【特許文献3】特開平2001−281816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、劇場でスクリーンに映写された際のグレー階調再現性およびグレー色再現性を良好にするハロゲン化銀カラー写真感光材料、特に映画用カラーポジ感光材料として好適に用いられるハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することと、その画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記問題点に対して鋭意検討した結果、以下に示す方法で本課題が解決されることを見いだした。
【0008】
(1) 透過型支持体上にイエロー色素形成カプラー、マゼンタ色素形成カプラー、及びシアン色素形成カプラーのいずれか少なくとも一つを含有し、かつ互いに感色性の異なるハロゲン化銀乳剤粒子を含有する少なくとも3層の感光性親水性コロイド層、および少なくとも1層のアンチハレーション能を有する非感光性親水性コロイド層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、少なくとも3層の感光性親水性コロイド層に含有されるハロゲン化銀粒子の塩化銀含有率が95モル%以上であり、ネガフィルターSkinを通してタングステン光で露光後、現像処理した際のCIELab値で表されるL*値が5以上95以下の範囲におけるa*値が−2以上2以下、b*値が−10以上10以下であり、かつC*値が10.2以下であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0009】
(2) 感光材料中の全塗設銀量が1.30g/m以上1.50g/m2以下であることを特徴とする(1)項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0010】
(3) 透過型支持体上にイエロー色素形成カプラー、マゼンタ色素形成カプラー、及びシアン色素形成カプラーのいずれか少なくとも一つを含有し、かつ互いに感色性の異なるハロゲン化銀乳剤粒子を含有する少なくとも3層の感光性親水性コロイド層、および少なくとも一層のアンチハレーション能を有する非感光性親水性コロイド層を有し、少なくとも3層の感光性親水性コロイド層に含有されるハロゲン化銀粒子の塩化銀含有率が95モル%以上であるハロゲン化銀カラー写真感光材料を露光した後、現像処理する画像形成方法において、ネガフィルターSkinを通してタングステン光で露光処理した際のCIELab値で表されるL*値が5以上95以下の範囲におけるa*値が−2以上2以下、b*値が−10以上10以下であり、かつC*値が10.2以下であるハロゲン化銀カラー写真感光材料を用いることを特徴とする画像形成方法。
【0011】
本発明によると、劇場でスクリーンに映写された際のグレー階調再現性を良好にするハロゲン化銀カラー写真感光材料、特に、映画用カラーポジ感光材料として好適に用いられるハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における露光、発色現像処理後の測色手段であるCIELabについて説明する。正式にはCIE1976L***表色空間(以後CIELab表色空間と略す)と称し、このCIELab表色空間上で本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料が下記条件を満たすことが好ましい。具体的には、ネガフィルターSkinを通してタングステン光で露光処理した際のL*値が5以上95以下の範囲におけるa*値が−2以上2以下、b*値が−10以上10以下であり、かつC*値が10.2以下であることである。更に好ましくはa*値が−1.8以上1.8以下、b*値が−10以上10以下であり、かつC*値が10.2以下である。より好ましくは、a*値が−1.5以上1.5以下、b*値が−10以上10以下であり、かつC*値が10.1以下である。
【0013】
ここで、CIELab表色空間の詳細は、日本写真学会・日本画像学会編「ファインイメージングとカラーハードコピー」354ページ(1999年、コロナ社刊行)に詳記されている。また、この表色空間を用いる際の3色刺激値は、蛍光性反射物体のX,Y,Z座標の3刺激値測定方法を規定したJIS Z8717記載の方法に従って求められた値である。CIELab上の色度は、基準となる白色の色度を標準昼光の国際標準である CIED65(6504K)に置いて測定する。したがって、a*値やb*値が、各条件を満たすことの検証のための測定はCIE1976L***表色空間上の色度を測定できるいずれの色度測定装置を用いることができる。例えば、富士フイルム社製SCD測色機および基準光源としてCIE D65(6504K)を用いて測定できる。
【0014】
つぎに、映画用ポジの露光に用いる映画用ネガとネガフィルターSkinについて説明する。映画用ポジの露光に用いるネガは、映画撮影用であれば特に限定はなく用いることが出来る。本発明で用いているネガフィルターSkinは、富士フイルム(株)社製映画用ネガETERNA500を用いてタングステン光源もとでグレタグマクベス社製マクベスカラーチャートNo.22のグレーパッチを撮影したものを指す。ネガフィルターSkinの具体的な分光スペクトルを図1に、露光に用いるタングステン光源の発光分布を図2に示す。
【0015】
つぎに、本発明で用いる発色現像処理について説明する。本発明の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料は、映画用ポジ感光材料の標準的な処理工程で処理することができる。
【0016】
従来の映画用ポジ感光材料の標準的な処理工程(乾燥以外)
(1)発色現像浴
(2)停止浴
(3)水洗浴
(4)第一定着浴
(5)水洗浴
(6)漂白浴
(7)水洗浴
(8)サウンド現像(塗り付け現像)
(9)水洗
(10)第二定着浴
(11)水洗浴
(12)安定浴
具体的な発色現像処理の例として、Kodak H-24 Manual, "Manual for Processing Eastman Motion Picture Films", Eastman Kodak Company, Rochester NYに記載されているKodak ECP-2D Color Print Development Processに従い処理することができる。但し、サウンドトラック現像に特異的な工程は省略してよい。当該処理は、一態様において、発色現像(3分)、停止浴(40秒)、第一水洗(40秒)、第一定着(40秒)、第二水洗(40秒)、漂白(1分)、第三水洗(40秒)、第二定着(40秒)、第四水洗(1分)、最終リンス(10秒)及びその後の高温空気による乾燥の各工程から成る。具体的には、本願実施例に従った現像処理が好ましい態様として挙げられる。
【0017】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における被膜のpHは、4.6〜6.4が好ましく、さらに好ましくは5.5〜6.3である。経時の長い試料において、被膜pHが6.4を超える場合、セーフライト照射によるシアン画像、マゼンタ画像の増感が大きく、逆に被膜pHが4.6を下回る場合、感光材料を露光してから現像するまでの時間変化に対して、イエロー画像濃度が大きく変化する。いずれの場合も実用上問題である。
【0018】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における被膜pHとは、塗布液を支持体上に塗布することによって得られた全写真層のpHであり、塗布液のpHとは必ずしも一致しない。その被膜pHは、特開昭61−245153号に記載されているような以下の方法で測定できる。即ち、(1)ハロゲン化銀乳剤が塗布された側の感光材料表面に純水を0.05ml滴下する。次に、(2)3分間放置後、表面pH測定電極(東亜電波製GS−165F、商品名)にて被膜pHを測定する。被膜pHの調整は、必要に応じて酸(例えば硫酸、クエン酸)又はアルカリ(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を用いて行うことができる。
【0019】
以下に、本発明で使用されるハロゲン化銀乳剤について説明する。
本発明は、透過型支持体上にイエロー色素形成カプラー、マゼンタ色素形成カプラー、及びシアン色素形成カプラーのいずれか少なくとも一つを含有し、かつ互いに感色性の異なるハロゲン化銀乳剤粒子を含有する少なくとも3層の感光性親水性コロイド層に含有されるハロゲン化銀乳剤粒子の塩化銀含有率が95モル%以上である。発色現像の迅速化の観点からも、塩化銀含有率95モル%以上の塩化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、又は塩沃臭化銀が好ましい。そのなかでも更に好ましいものとしては、塩化銀含有率98モル%以上のハロゲン化銀である。また、塩化銀粒子の表面に臭化銀局在相を有してもよい。該局在相のハロゲン化銀組成は、臭化銀含有率において少なくとも10モル%のものが好ましく、20モル%を越えるものがより好ましい。また主平面が(111)面又は(100)面である平板粒子を用いてもよい。主平面が(111)面又は(100)面である平板状高塩化銀乳剤粒子については、特開平6−138619号、米国特許第4,399,215号、同5,061,617号や米国特許第5,320,938号、同5,264,337号、同5,292,632号、同5,314,798号、同5,413,904号、WO94/22051号等に開示されている方法にて調製することができる。
【0020】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、乳剤粒子形成もしくは物理熟成の過程において、種々の多価金属イオン不純物を導入することができる。本発明においては、少なくとも一つのハロゲン化銀乳剤粒子中にイリジウム化合物(本明細書ではイリジウムイオン含有化合物とも称す)を含有するものである。なお、「ドープされる」とは、特性を大きく変える、または制御するために、意図的に少量添加されることを意味する。好ましくは異なる感光性を有するハロゲン化銀乳剤層において、各ハロゲン化銀乳剤層のそれぞれが、少なくとも一種のハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子中にイリジウム化合物を含有する場合であり、最も好ましくはすべてのハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子中にイリジウム化合物を含有する場合である。
【0021】
イリジウムイオン含有化合物は、3価または4価の塩または錯塩で、錯塩が好ましい。例えば、塩化第1イリジウム(III)、臭化第1イリジウム(III)、塩化第2イリジウム(IV)、ヘキサクロロイリジウム(III)酸ナトリウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム、ヘキサアンミンイリジウム(IV)塩、トリオキザラトイリジウム(III)塩、トリオキザラトイリジウム(IV)塩、等のハロゲン、アミン類、オキザラト錯塩類が好ましい。白金イオン含有化合物は、2価または4価の塩または錯塩で、錯塩が好ましい。例えば、塩化白金(IV)、ヘキサクロロプラチナム(IV)酸カリウム、テトラクロロプラチナム(II)酸、テトラブロモプラチナム(II)酸、テトラキス(チオシアナト)プラチナム(IV)酸ナトリウム、ヘキサアンミンプラチナム(IV)クロライド等が用いられる。イリジウムイオン含有化合物の添加量は目的に応じて広範囲にわたるが、ハロゲン化銀1モルに対して10-10〜10-2モルが好ましく、10-9〜10-6モルが更に好ましい。
【0022】
上記イリジウムイオン含有化合物は多価金属イオン不純物として、単独で用いても他の多価金属イオン不純物と併用してもよい。上記イリジウムイオン含有化合物と併用するのに好ましい多価金属イオン不純物としては、鉄、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、カドミウム、亜鉛、鉛、銅、タリウム等の周期律表第VIII族金属の塩、もしくは錯塩が挙げられる。本発明においては、少なくとも4つのシアノ配位子を有する鉄、ルテニウム、オスミウム、レニウム等の金属化合物が高照度感度を更に高め、潜像増感も抑制する点で、特に好ましい。これらの化合物の添加量は目的に応じて広範囲にわたるが、ハロゲン化銀1モルに対して10-10〜10-2モルが好ましい。これらの金属イオンについて更に詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0023】
パラジウムイオン含有化合物は、通常2価または4価の塩または錯塩で、特に錯塩が好ましい。例えば、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム、テトラアンミンパラジウム(II)クロライド、テトラシアノパラジウム(II)酸カリウム等が用いられる。ニッケルイオン含有化合物は、例えば、塩化ニッケル、臭化ニッケル、テトラクロロニッケル(II)酸カリウム、ヘキサアンミンニッケル(II)クロライド、テトラシアノニッケル(II)酸ナトリウム等が用いられる。
【0024】
ロジウムイオン含有化合物は通常3価の塩または錯塩が好ましい。例えばヘキサクロロロジウム酸カリウム、ヘキサブロモロジウム酸ナトリウム、ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム等が用いられる。鉄イオン含有化合物は、2価または3価の鉄イオン含有化合物で、好ましくは用いられる濃度範囲で水溶性をもつ鉄塩または鉄錯塩である。特に好ましくは、ハロゲン化銀粒子に含有させやすい鉄錯塩である。例えば塩化第一鉄、塩化第二鉄、水酸化第一鉄、水酸化第二鉄、チオシアン化第一鉄、チオシアン化第二鉄、ヘキサシアノ鉄(II)錯塩、ヘキサシアノ鉄(III)錯塩、チオシアン酸第一鉄錯塩やチオシアン酸第二鉄錯塩などがある。また、欧州特許第336,426A号に記載されているような少なくとも4つのシアン配位子を有する6配位金属錯体も好ましく用いられる。
【0025】
上記の金属イオン提供化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に、分散媒になるゼラチン水溶液中、ハロゲン化物水溶液中、銀塩水溶液中、またはその他の水溶液中、あるいは予め金属イオンを含有せしめたハロゲン化銀微粒子の形で添加しこの微粒子を溶解させる、等の手段によって本発明のハロゲン化銀粒子に含有せしめることができる。また、本発明で用いられる金属イオンを該粒子中に含有せしめるには、粒子形成前、粒子形成中、粒子形成直後のいずれかで行うことができる。これは、金属イオンを粒子のどの位置に含有させるかによって変えることができる。
【0026】
本発明におけるハロゲン化銀乳剤の調製工程は、一般によく知られているように、水溶性銀塩と水溶性ハロゲン化物の反応によるハロゲン化銀粒子形成工程、脱塩工程、及び化学熟成工程よりなる。
【0027】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、通常化学増感を施される。化学増感法については、不安定硫黄化合物の添加に代表される硫黄増感、金増感に代表される貴金属増感、あるいは還元増感等を単独もしくは併用して用いることができる。化学増感に用いられる化合物については、特開昭62−215272号の第18頁右下欄から第22頁右上欄に記載のものが好ましく用いられる。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、当業界に知られる金増感を施したものであることが好ましい。金増感を施すことにより、レーザー光等によって走査露光したときの写真性能の変動を更に小さくすることができるからである。金増感を施すには、塩化金酸もしくはその塩、チオシアン酸金類あるいはチオ硫酸金類等の化合物を用いることができる。これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るが通常ハロゲン化銀1モルあたり5×10-7〜5×10-3モル、好ましくは1×10-6〜1×10-4モルである。本発明においては、金増感を他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよく、本発明においてはより好ましい。
【0028】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、乳剤のあるいは感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちアゾール類、例えばベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアイジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールなど)、メルカプトピリミジン類、メルカプトトリアジン類など;例えばオキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類、例えばトリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン)ペンタアザインデン類;ベンゼンチオスルフォン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフォン酸アミドなどのようなかぶり防止剤または安定剤として知られた多くの化合物を加えることができる。特に好ましいのは、メルカプトテトラゾール類である。これは、かぶり防止、安定化以外に高照度感度を更に高める働きがあり好ましい。
【0029】
写真乳剤中のハロゲン化銀粒子は、立方体、八面体、十四面体のような規則的な結晶を有するもの、球状、板状のような変則的な結晶形を有するもの、双晶面などの結晶欠陥を有するもの、あるいはそれらの複合形でもよい。ハロゲン化銀の粒径は、約0.2μm以下の微粒子でも投影面積直径が約10μmに至るまでの大サイズ粒子でもよく、多分散乳剤でも単分散乳剤でもよいが、本発明のハロゲン化銀粒子は、現像進行を速くする目的で、単分散であることが好ましく、各ハロゲン化銀粒子の粒子サイズの変動係数が0.3以下(好ましくは0.3〜0.05)が好ましく、さらに好ましくは0.25以下(好ましくは0.25〜0.05)である。ここでいう変動係数とは、統計上の標準偏差値(s)と平均粒子サイズ(d)との比(s/d)で表される。
【0030】
本発明に使用できるハロゲン化銀写真乳剤は、例えばリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)No.17643(1978年12月), 22〜23頁,“I.乳剤製造(Emulsion preparation and types)”、および同No.18716(1979年11月), 648頁、同No.307105(1989年11月), 863〜865頁、およびグラフキデ著「写真の物理と化学」,ポールモンテル社刊(P. Glafkides,Chemie et Phisique Photographique, Paul Montel, 1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」,フォーカルプレス社刊(G.F. Duffin, Photographic Emulsion Chemistry, Focal Press, 1966)、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L. Zelikman, et al.,Making and Coating Photographic Emulsion, Focal Press, 1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。
【0031】
米国特許第3,574,628、同第3,655,394および英国特許第1,413,748に記載された単分散乳剤も好ましい。また、アスペクト比が約3以上であるような平板状粒子も本発明に使用できる。平板状粒子は、ガトフ著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Gutoff, Photographic Science and Engineering)、第14巻248〜257頁(1970年);米国特許第4,434,226、同第4,414,310、同第4,433,048、同第4,439,520および英国特許第2,112,157に記載の方法により簡単に調製することができる。
【0032】
結晶構造は一様なものでも、内部と外部とが異質なハロゲン組成からなるものでもよく、層状構造をなしていてもよい。エピタキシャル接合によって組成の異なるハロゲン化銀が接合されていてもよく、例えばロダン銀、酸化鉛などのハロゲン化銀以外の化合物と接合されていてもよい。また種々の結晶形の粒子の混合物を用いてもよい。
【0033】
上記の乳剤は潜像を主として表面に形成する表面潜像型でも、粒子内部に形成する内部潜像型でも表面と内部のいずれにも潜像を有する型のいずれでもよいが、ネガ型の乳剤であることが必要である。内部潜像型のうち、特開昭63-264740号公報に記載のコア/シェル型内部潜像型乳剤であってもよく、この調製方法は特開昭59-133542号公報に記載されている。この乳剤のシェルの厚みは現像処理等によって異なるが、3〜40nmが好ましく、5〜20nmが特に好ましい。
【0034】
ハロゲン化銀乳剤は、通常、物理熟成、化学熟成および分光増感を行ったものを使用する。このような工程で使用される添加剤はRDNo.17643、同No.18716および同No.307105に記載されており、その該当箇所を後掲の表にまとめた。本発明の感光材料には、感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子サイズ、粒子サイズ分布、ハロゲン組成、粒子の形状、感度の少なくとも1つの特性(本発明においては特に感度)の異なる2種類以上の乳剤を、同一層中に混合して使用することができ、本発明の好ましい形態である。
【0035】
米国特許第4,082,553に記載の粒子表面をかぶらせたハロゲン化銀粒子、米国特許第4,626,498、特開昭59-214852に記載の粒子内部をかぶらせたハロゲン化銀粒子、コロイド銀を感光性ハロゲン化銀乳剤層および/または実質的に非感光性の親水性コロイド層に適用することが好ましい。粒子内部または表面をかぶらせたハロゲン化銀粒子とは、感光材料の未露光部および露光部を問わず、一様に(非像様に)現像が可能となるハロゲン化銀粒子のことをいい、その調製法は、米国特許第4,626,498、特開昭59-214852に記載されている。粒子内部がかぶらされたコア/シェル型ハロゲン化銀粒子の内部核を形成するハロゲン化銀は、ハロゲン組成が異なっていてもよい。粒子内部または表面をかぶらせたハロゲン化銀としては、塩化銀、塩臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀のいずれをも用いることができる。これらのかぶらされたハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズとしては0.01〜0.75μm、特に0.05〜0.6μmが好ましい。また、粒子形状は規則的な粒子でもよく、多分散乳剤でもよいが、単分散性(ハロゲン化銀粒子の質量または粒子数の少なくとも95%が平均粒子径の±40%以内の粒子径を有するもの)であることが好ましい。
【0036】
本発明の感光材料の全塗布銀量は好ましくは1.30g/m以上1.50g/m2以下であり、更には、1.30g/m2以上1.45g/m2以下が好ましく、より好ましくは1.35g/m2以上1.45g/m2、最も好ましくは1.35g/m2〜1.40g/m2である。
【0037】
支持体上に設けられた感光性ハロゲン化銀乳剤層や非感光性親水性コロイド層(中間層や保護層など)からなる写真構成層中のいずれかの層、好ましくはハロゲン化銀乳剤層に、1−アリール−5−メルカプトテトラゾール化合物をハロゲン化銀1モル当たり1.0×10-5〜5.0×10-2モル添加することが好ましく、更には1.0×10-4〜1.0×10-2モル添加することが好ましい。この範囲で添加することによって、連続処理後の処理済みカラー写真表面への汚れをいっそう少なくすることができる。
【0038】
このような1−アリール−5−メルカプトテトラゾール化合物としては、1位のアリール基が無置換または置換フェニル基であるものが好ましく、この置換基の好ましい具体例としてはアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、−NHCOC511(n)など)、ウレイド基(例えば、メチルウレイドなど)、アルコキシ基(例えばメトキシなど)、カルボン酸基、アミノ基、スルファモイル基などであって、これらの基はフェニル基に複数個(2〜3個など)結合していてもよい。
【0039】
また、これらの置換基の位置はメタまたはパラ位が好ましい。これらの具体例としては、1−(m−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールや1−(m−アセチルアミノフェニル)−5−メルカプトテトラゾールが挙げられる。
【0040】
本発明は少なくとも一種のアンチハレーション能を有する非感光性親水性コロイド層を有するものである。アンチハレーション能を有する非感光性親水性コロイド層中にはハレーション防止染料が含有される。ハレーション防止に使用される染料はハレーション防止に有効であれば、いかなる染料でも構わない。水溶性染料であっても染料の固体微粒子分散物であっても構わないが、本発明の効果の点で、染料の固体微粒子分散物が好ましい。
【0041】
ここで、まず、本願明細書で使用する置換基の説明を行う。本明細書中、脂肪族とは、直鎖、分岐又は環状で飽和であっても不飽和であってもよく、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはシクロアルケニルを表し、これらは更に置換基を有していても良い。また、芳香族とはアリールを表し、これは更に置換基を有していても良く、複素環(ヘテロ環)とは環内にヘテロ原子を持つものであり、芳香族基であるものをも含み、さらに置換基を有してもかまわない。本明細書中の置換基およびこれらの脂肪族、芳香族及び複素環における有してもよい置換基としては、特に規定のない限り置換可能な基であればよく、例えば脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、複素環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、脂肪族カルバモイル基、芳香族カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、脂肪族スルファモイル基、芳香族スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、脂肪族スルフィニル基、芳香族スルフィニル基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシアミノ基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
【0042】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、以下の一般式(I)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0043】
一般式(I)
D−(X)y
一般式(I)中、Dは発色団を有する化合物残基を表し、Xは解離性水素原子または解離性水素原子を有する基を表し、yは1〜7の整数を表す。
【0044】
次に、一般式(I)で表される染料について更に詳細に説明する。一般式(I)において、Dは発色団を有する化合物残基を表し、Xは解離性水素または解離性水素を有する基を表し、yは1ないし7の整数を表す。本発明で好ましく使用される一般式(I)で表される染料は、分子構造中に解離性水素等を有する点に特徴がある。Dにおける発色団を有する化合物残基は、多くの周知の色素の中から選ぶことができる。これらの化合物としては、オキソノール色素、メロシアニン色素、シアニン色素、アリーリデン色素、アゾメチン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アントラキノン色素、インドアニリン色素を挙げることができる。
【0045】
XはDに直接もしくは2価の連結基を介して結合した解離性水素又は解離性水素を有する基を表す。XとDとの間の2価の連結基は、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環残基、−CO−、−SOn −(n=0,1,2)、−NR−(Rは水素原子、アルキル基、アリール基を表す)、−O−、及びこれらの連結基 を組み合わせた2価の基であり、更にそれらはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホンアミド基等の置換基を有していてもよい。好ましい例として−(CH2)n−(n=1,2,3)、−CH2CH(CH3) CH2−、1,2−フェニレン、5−カルボキシ−1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、6−メトキシ−1,3−フェニレン、−CONHC64−等を挙げることができる。
【0046】
Xで表される解離性水素又は解離性水素を有する基は、一般式(I)で表される染料が本発明のハロゲン化銀写真感光材料中に添加された状態では、非解離であって、一般式(I)の染料を実質的に水不溶性にする特性を有し、該感光材料が現像処理される工程では、解離して一般式(I)の化合物を実質的に水可溶性にする特性を有する。Xで表される解離性水素を有する基の例としては、カルボン酸基、スルホンアミド基、スルファモイル基、スルホニルカルバモイル基、アシルスルファモイル基、フェノール性水酸基などを有する基を挙げることができる。Xで表される解離性水素はオキソノール色素のエノール基の水素などを挙げることができる。
【0047】
yの好ましい範囲は、1〜5、特に好ましい範囲は、1〜3である。一般式(I)で表される化合物のうち好ましいものは、Xにおける解離性水素を有する基がカルボン酸基を有する基であるものであり、特にカルボキシル基で置換されたアリール基を有する化合物が好ましい。また一般式(I)で表される化合物のうち、より好ましいものは下記の一般式(II)または一般式(III)で表される化合物である。
【0048】
一般式(II)
1=L1−(L2=L3m−Q
一般式(II)中、A1は酸性核を表し、Qはアリール基または複素環基を表し、L1 、L2 、L3は各々メチン基を表し、mは0、1又は2を表す。但し、一般式(II)の化合物は分子内に水溶性基としてカルボン酸基、スルホンアミド基、スルファモイル基、スルホニルカルバモイル基、アシルスルファモイル基、フェノール性水酸基及びオキソノール色素のエノール基からなる群の中より選ばれる基を1〜7個有する。
【0049】
一般式(III)
1=L1−(L2=L3n−A2
一般式(III)中、A1及びA2は酸性核を表し、L1、L2、L3は各々メチン基を表し、nは0、1、2又は3を表す。但し、一般式(III)の化合物は分子内に水溶性基としてカルボン酸基、スルホンアミド基、スルファモイル基、スルホニルカルバモイル基、アシルスルファモイル基、フェノール性水酸基及びオキソノール色素のエノール基からなる群の中より選ばれる基を1〜7個有する。
【0050】
以下、一般式(II)及び(III)について詳細に説明する。A1及びA2で表される酸性核は、環状のケトメチレン化合物または電子吸引性基によって挟まれたメチレン基を有する化合物から誘導されるものが好ましい。環状のケトメチレン化合物の例としては、2−ピラゾリン−5−オン、ロダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、2,4−オキサゾリジンジオン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、チオバルビツール酸、インダンジオン、ジオキソピラゾロピリジン、ヒドロキシピリドン、ピラゾリジンジオン、2,5−ジヒドロフランを挙げることができる。これらは置換基を有していてもよい。
【0051】
電子吸引性基によって挟まれたメチレン基を有する化合物は、Z1CH22と表すことができる。ここにZ1およびZ2はそれぞれ−CN、−SO211、−COR11、−COOR12、−CONHR12、−SO2NHR12又は−C〔=C(CN)2〕R11を表す。R11は、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、R12は水素原子又はR11で表される基を表し、そしてこれらはそれぞれ置換基を有していてもよい。
【0052】
Qで表されるアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。これらはそれぞれ置換基を有していてもよい。Qで表される複素環基の例としては、ピロール、インドール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、インドリジン、キノリン、カルバゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、インドリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、チアジアジン、ピラン、チオピラン、オキソジアゾール、ベンゾキノリン、チアジアゾール、ピロロチアゾール、ピロロピリダジン、テトラゾール、オキサゾール、クマリン、およびクマロンを挙げることができる。これらはそれぞれ置換基を有していてもよい。
【0053】
1、L2及びL3で表されるメチン基は、置換基を有していてもよく、その置換基同士が連結して5又は6員環(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン)を形成していてもよい。
【0054】
上述した各基が有していてもよい置換基は、一般式(I)〜(III)の化合物をpH5〜pH7の水に実質的に溶解させるような置換基でなければ特に制限はない。例えば、以下の置換基を挙げることができる。
【0055】
カルボン酸基、炭素数1〜10のスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、n−オクタンスルホンアミド)、炭素数0〜10の無置換又はアルキルもしくはアリール置換スルファモイル基(例えば、無置換のスルファモイル、メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル、ナフチルスルファモイル、ブチルスルファモイル)、炭素数2〜10のスルホニルカルバモイル基(例えば、メタンスルホニルカルバモイル、プロパンスルホニルカルバモイル、ベンゼンスルホニルカルバモイル)、炭素数1〜l0のアシルスルファモイル基(例えば、アセチルスルファモイル、プロピオニルスルファモイル、ピバロイルスルファモイル、ベンゾイルスルファモイル)、
炭素数1〜8の鎖状又は環状のアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチル、ベンジル、フェネチル、4−カルボキシベンジル、2−ジエチルアミノエチル)、炭素数2〜8のアルケニル基(例えば、ビニル、アリル)、炭素数1〜8のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br)、炭素数0〜10のアミノ基(例えば、無置換のアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、カルボキシエチルアミノ)、炭素数2〜10のエステル基(例えば、メトキシカルボニル)、炭素数1〜10のアミド基(例えば、アセチルアミノ、ベンズアミド)、炭素数1〜10のカルバモイル基(例えば、無置換のカルバモイル、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、ヒドロキシフェニル、4−カルボキシフェニル、3−カルボキシフェニル、3,5−ジカルボキシフェニル、4−メタンスルホンアミドフェニル、4−ブタンスルホンアミドフェニル)、炭素数6〜10のアリーロキシ基(例えば、フェノキシ、4−カルボキシフェノキシ、3−メチルフェノキシ、ナフトキシ)、
炭素数1〜8のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ)、炭素数6〜10のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオ)、炭素数1〜10のアシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、プロパノイル)、炭素数1〜10のスルホニル基(例えば、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、炭素数1〜10のウレイド基(例えば、ウレイド、メチルウレイド)、炭素数2〜10のウレタン基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、複素環基(例えば、5−カルボキシベンゾオキサゾール環)、ピリジン環、スルホラン環、ピロール環、ピロリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、ピリミジン環、フラン環)。
【0056】
また一般式(III)で表される化合物のうちより好ましいものは、下記一般式(IV)で表される化合物である。この一般式(IV)で表される化合物は解離性水素としてエノール基の水素を有している。
【化1】

【0057】
一般式(IV)中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表し、R2は水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、−COR4または−SO24を表し、R3は水素原子、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、アルキル基、アリール基、−CO24、−OR4、−NR56、−CONR56、−NR5COR4、−NR5SO24、または−NR5CONR56(ここで、R4はアルキル基、またはアリール基を表し、R5、R6は各々水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。)を表す。L1、L2、L3は各々メチン基を表す。nは1又は2を表す。
【0058】
一般式(IV)において、R1のアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基、2−シアノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、カルボキシベンジル基が挙げられ、アリール基としてはフェニル基、2−メチルフェニル基、2−カルボキシフェニル基、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、3,6−ジカルボキシフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−クロロ−4−カルボキシフェニル基、4−メチルスルファモイルフェニル基が挙げられ、複素環基としては、5−カルボキシベンゾオキサゾール−2−イル基が挙げられる。
【0059】
2のアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基が挙げられ、アリール基としては2−カルボキシフェニル基、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、3,6−ジカルボキシフェニル基が挙げられ、複素環基としてはピリジル基が挙げられ、−COR4としてはアセチル基が挙げられ、−SO24としてはメタンスルホニル基が挙げられる。
【0060】
3、R4、R5、R6のアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。R3、R4、R5、R6のアリール基としてはフェニル基、メチルフェニル基が挙げられる。本発明においては、R1がカルボキシル基置換のフェニル基(例えば、2−カルボキシフェニル、3−カルボキシフェニル、4−カルボキシフェニル、3,6−ジカルボキシフェニル)であることが好ましい。
【0061】
以下に、本発明に好ましく用いられる一般式(I)ないし(IV)で表される化合物の具体例を記載するが、これらに限定されるものではない。
【化2】

【0062】
【化3】

【0063】
【化4】

【0064】
【化5】

【0065】
【化6】

【0066】
【化7】

【0067】
【化8】

【0068】
【化9】

【0069】
【化10】

【0070】
【化11】

【0071】
【化12】

【0072】
【化13】

【0073】
【化14】

【0074】
【化15】

【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
【表6】

【0081】
【表7】

【0082】
本発明に用いられる染料は、国際特許WO88/04794号、欧州公開特許第274,723A 1号、同第276,566号、同第299,435号、特開昭52−92716号、同55−155350号、同55−155351号、同61−205934号、同48−68623号、米国特許第2,527,583号、同第3,486,897号、同第3,746,539号、同第3,933,798号、同第4,130,429号、同第4,040,841号、特開平3−282244号、同3−7931号、同3−167546号等の明細書あるいは公報に記載されている方法又はその方法に準じて合成できる。
【0083】
本発明で用いられる、染料の固体微粒子分散物は、公知の方法で調製できる。製造法の詳細は、機能性顔料応用技術(シーエムシー刊、1991年)などに記載されている。メディア分散は一般的な方法の一つである。この方法では染料粉末またはそのウエットケーキと呼ばれる水や有機溶媒で湿った状態の染料を、水性スラリーにし、公知の粉砕機(例えばボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、縦型サンドミル、ローラーミル、ピンミル、コボールミル、キャディーミル、横型サンドミル、アトライター等)を用いて、分散メディア(スチールボール、セラミックボール、ガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアシリケートビーズ、ジルコニアビーズ、オタワサンドなど)の存在下で機械力によって粉砕する。これらのうち、ビーズの平均直径は好ましくは2mm〜0.3mm、より好ましくは1mm〜0.3mm、更に好ましくは0.5mm〜0.3mmのものが用いられる。これらの他にジェットミル、ロールミル、ホモジナイザー、コロイドミルやデゾルバーによって粉砕する方法や、超音波分散機による粉砕方法も用いることができる。
【0084】
また米国特許第2,870,012号に開示されているように、均一溶液に溶解した後、貧溶媒を加えて固体微粒子を析出させたり、例えば特開平3−182743号に開示されているように、アルカリ溶液に溶解した後pHを下げることで、固体微粒子を析出させる方法も用いることが出来る。
【0085】
これらの固体微粒子分散物を調製するときは、分散助剤を存在させるのが好ましい。従来より開示されてきた分散助剤としては、アルキルフェノキシエトキシスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナトリウムオレイルメチルタウライド、ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮重物、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、マレイン酸アクリル酸共重合物、カルボキシメチルセルロース、硫酸セルロース等のアニオン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系分散剤、カチオン系分散剤やベタイン系分散剤が挙げられるが、下記一般式(V−a)又は(V−b)で表されるポリアルキレンオキサイドを用いることが特に好ましい。
【化16】

【0086】
一般式(V−a)及び(V−b)中、a及びbはそれぞれ5ないし500の値を示す。好ましいaとbの値はそれぞれ10〜200、より好ましいaとbの値はそれぞれ50〜150である。aとbの値がこの範囲であると塗布面の均一性良化の点で好ましい。
【0087】
上記分散助剤において、ポリエチレンオキサイド部の比率は質量比で好ましくは0.3ないし0.9、より好ましくは0.7ないし0.9、更に好ましくは0.8ないし0.9であり、また、上記分散助剤の平均分子量は好ましくは1,000ないし30,000、より好ましくは5,000ないし25,000、更に好ましくは8,000ないし20,000である。更に、上記分散助剤のHLB(親水性親油性バランス)は好ましくは7ないし30、より好ましくは12ないし30、更に好ましくは18ないし30である。数値がこの範囲であると塗布面の均一性良化の点で好ましい。
【0088】
これらの化合物は市販品として入手可能であり、たとえばBASF社のPluronic等がある。
【0089】
以下に本発明に用いられる一般式(V−a)又は(V−b)で表される化合物の具体例を記載する。
【表8】

【0090】
本発明において、本発明で好ましく用いられる染料に対する上記分散助剤の使用量は質量比で好ましくは0.05ないし0.5、より好ましくは0.1ないし0.3である。分散助剤の使用量がこの範囲であると塗布面の均一性良化の点で好ましい。また固体微粒子分散物の調製時に分散物の安定化や低粘度化の目的でポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、多糖類、ゼラチンなどの親水性コロイドを共存させることもできる。本発明においては後記一般式(VI)の化合物を共存させることが特に好ましい。
【0091】
本発明で好ましく用いられる染料の固体微粒子分散物は、好ましくは、特開平5−216166号公報に開示されているような方法で、分散前、分散中または分散後に加熱処理される。
【0092】
本発明による染料は感光材料中に組み込む前に熱処理を行うことにより、本発明の効果を得るのに好ましい。本発明において、染料分散物に好ましく適用される熱処理としては、染料粉体を溶媒中で加熱するなど固体状に微分散する工程の前に行う方法と、染料を分散剤の存在下で水あるいは他の溶媒中に分散する際冷却せず、あるいは温度をかけて分散を行う方法、および分散後の液や塗布液を加熱処理する方法とがあるが、分散後に行なうのが特に好ましい。
【0093】
一般式(I)の染料を含有する固体微粒子分散物が、特定の層に複数種用いられているときは少なくとも1種が熱処理されていればよい。
【0094】
分散時及び分散後熱処理中のpHは分散物が安定に存在する条件であればよく、好ましくはpH2.0以上8.0以下、より好ましくは2.0以上6.5以下、更に好ましくは2.5以上4.5未満である。熱処理中のpHがこの範囲であると塗布物の膜強度改良の点で好ましい。分散物のpH調整は、例えば硫酸、塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、しゅう酸、炭酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムやそれらからなる緩衝液を用いることができる。
【0095】
熱処理をする温度としては熱処理をする工程、粉体ないし粒子の大きさ形状、熱処理条件、溶媒などによって異なるので一概には云えず40℃以上で染料が分解しない範囲であれば何度でもよいが、粉体で熱処理する場合には40℃ないし200℃が適当であり、好ましくは50℃ないし150℃が適当であり、溶媒中で熱処理する場合には40℃ないし150℃が適当であり、好ましくは50℃ないし150℃、分散中に熱処理する場合には40℃ないし90℃が適当であり、好ましくは50℃ないし90℃、分散後の分散液を熱処理する場合には40℃ないし100℃が適当であり、好ましくは50℃ないし95℃である。熱処理の温度が40℃より低いと効果が乏しく好ましくない。
【0096】
熱処理が溶媒中で行われる場合、その溶媒の種類としては、染料を実質的に溶解しないものであれば制限はなく、例えば水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアミルコール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチルセロソルブ)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル)、アルキルカルボン酸類(例えば、酢酸、プロピオン酸)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル)、エーテル類(例えば、ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド)等を挙げることができる。
【0097】
また、これらの溶媒単独では染料が溶解してしまう場合でも、水や他の溶媒と混合したり、pHを調節することで染料が実質溶解しなければ使用することができる。
【0098】
熱処理する時間についても一概には云えず、温度が低ければ長時間を要し、高ければ短時間で済む。製造工程上影響のない範囲内で熱処理が実現できるように任意に設定することができるが、通常1時間ないし4日であることが好ましい。
【0099】
写真感光材料に染料の微粒子を含有してなる層を設けるには、このようにして得た微粒子を適当なバインダー中に分散させることによってほぼ均一な粒子の固体分散物として調製した後、これを所望の支持体上に塗設することによって設けることが出来る。上記バインダーは感光性乳剤層や、非感光性層に用いることができる親水性のコロイドであれば特に制限はないが、通常ゼラチンまたはポリビニルアルコールやポリアクリルアミド等の合成ポリマーが用いられる。
【0100】
固体分散物中の微粒子は、平均粒子径0.005μm〜10μm、好ましくは0.01μm〜1μm、より好ましくは0.01μm〜0.7μmであることが好ましい。この範囲であると微粒子の非凝集性、光の吸収効率の点で好ましい。本発明で好ましく用いられる一般式(I)の染料の固体微粒子分散物は、単独又は複数の固体微粒子分散物と併用して使用することができる。
【0101】
さらに、固体微粒子を添加する親水性コロイド層はただ一層でも良いし、複数層であっても良い。例えば、単独の固体微粒子分散物をただ一層に添加する場合、複数層に分割して添加する場合、複数の固体微粒子分散物をただ一層に同時に添加する場合、それぞれ別層に添加する場合などが例として挙げられるが、上記に限られるものではない。
【0102】
さらに、固体微粒子分散物は、アンチハレーション層として必要な量を組み込まれたうえ、イラジエーション防止用に感光性ハロゲン化銀乳剤層に必要量を添加されることもできる。本発明で好ましく用いられる一般式(I)の染料の固体微粒子分散物を含有する親水性コロイド層は、支持体とこれに最も近いハロゲン化銀乳剤層の間に設けられる。ここで、支持体とこれに最も近いハロゲン化銀乳剤層の間には、固体微粒子分散物を含有する親水性コロイド層以外の他の非感光性親水性コロイド層を有していてもよい。
【0103】
本発明で好ましく用いられる染料の固体微粒子分散物は、ハロゲン化銀写真感光材料において、染料の色相に応じて非感光性親水性コロイド層に含有されるが、該非感光性層が複数層設けられている態様の感光材料においては、これらの複数層に含有させることもできる。本発明の好ましく用いられる固体微粒子分散物中の染料濃度は0.1〜50質量%が適当であり、好ましくは2〜30質量%である。染料濃度がこの範囲であると分散物の粘度の点で好ましい。また、固体微粒子染料の好ましい塗布量は、約0.05〜0.5g/m2である。
【0104】
本発明においては、固体微粒子分散物とともに下記一般式(VI)で表わされる化合物を同一写真構成層に含有することが好ましい。
【0105】
一般式(VI)
P−((S)m −R)n
一般式(VI)中、Rは水素原子、疎水性基または疎水性重合体を表わし、Pは下記構層単位A、B及びCのうちの少なくとも1つを含み、Pの重合度が10以上3500以下の重合体を表わす。nは1又は2を表わす。mは1又は0を表わす。
【化17】

【0106】
ここで、R1は−H又は炭素数1〜6のアルキル基を表わし、R2は−H又は炭素数1〜10のアルキル基を表わし、R3は−H又は−CH3を表わし、R4はH、−CH3、−CH2COOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CNを表わし、Xは−H、−COOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CONH2を表わし、Yは−COOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−SO3H(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−OSO3H(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−CH2SO3H(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−CONHC(CH3)2CH2SO3H(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CONHCH2CH2CH2+(CH3)3Cl-を表わす。
【0107】
本発明で好ましく使用される一般式(VI)で表される化合物の詳細(具体的な説明、好ましい限定、例示化合物、使用量、合成法等)は特開平11−95371号の24頁46欄27行目〜33頁63欄2行目(段落番号0090〜0128)に記載されており、本発明の明細書の一部として取り込まれる。
【0108】
次に本発明のハロゲン化銀写真感光材料の写真層等について記載する。本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、透明支持体を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であり、該支持体上に、実質的に感色性の異なる少なくとも3層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料である。本発明はカラーネガフィルム、反転フィルム、映画用カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、映画用ポジフィルムなど一般用、映画用カラー感光材料に適用することができる。特に映画用カラーポジ感光材料に適用するのが好ましい。
【0109】
本発明に使用できる写真用添加剤は以下のリサーチ・ディスクロジャー誌(RD)に記載されており、下記の表に関連する記載箇所を示した。
【0110】
添加剤の種類 RD17643 RD18716 RD307105
1.化学増感剤 23頁 648頁右欄 866頁
2.感度上昇剤 648頁右欄
3.分光増感剤、 23〜24頁 648頁右欄 866〜868頁
強色増感剤 〜649頁右欄
4.増白剤 24頁 647頁右欄 868頁
5.光吸収剤、 25〜26頁 649頁右欄 873頁
フィルター染料、 〜650頁左欄
紫外線吸収剤
6.バインダー 26頁 651頁左欄 873〜874頁
7.可塑剤、潤滑剤 27頁 650頁右欄 876頁
8.塗布助剤、 26〜27頁 650頁右欄 875〜876頁
表面活性剤
9.スタチック防止剤 27頁 650頁右欄 876〜877頁
10.マット剤 878〜879頁
本発明の感光材料には種々の色素形成カプラーを使用することができるが、以下のカプラーが特に好ましい。
【0111】
イエローカプラー:EP 502,424Aの式(I),(II)で表わされるカプラー;EP 513,496Aの式(1),(2)で表わされるカプラー(特に18頁のY-28);特開平5-307248号公報の請求項1の一般式(I)で表わされるカプラー;US 5,066,576のカラム1の45〜55行の一般式(I)で表わされるカプラー;特開平4-274425号公報の段落0008の一般式(I)で表わされるカプラー;EP 498,381A1の40頁のクレーム1に記載のカプラー(特に18頁のD-35); EP 447,969A1の4頁の式(Y)で表わされるカプラー(特にY-1(17頁),Y-54(41頁)); US 4,476,219のカラム7の36〜58行の式(II)〜(IV)で表わされるカプラー(特にII-17, 19(カラム17), II-24(カラム19))。
【0112】
マゼンタカプラー;特開平3-39737(L-57(11頁右下), L-68(12頁右下), L-77(13頁右下)); EP 456,257のA-4 -63(134頁), A-4 -73, -75(139頁); EP 486,965のM-4, -6(26頁), M-7(27頁);特開平6-43611の段落0024のM-45, 特開平5-204106の段落0036のM-1;特開平4-362631の段落0237のM-22。
【0113】
シアンカプラー:特開平4-204843のCX-1, 3, 4, 5, 11,12, 14, 15(14〜16頁);特開平4-43345のC-7, 10(35頁), 34, 35(37頁), (I-1), (I-17)(42〜43頁);特開平6-67385の請求項1の一般式(Ia)または(Ib)で表わされるカプラー、特開2004-37544のC-33、C-35、C-36、ポリマーカプラー:特開平2-44345のP-1, P-5(11頁)。また、特開平5-313324号,特開平6-347906号等に記載されているカプラーも好ましく用いられる。
【0114】
サウンドトラック形成用赤外カプラー:特開平63−143546号および該特許に引用されている特許に記載のカプラー。
【0115】
発色色素が適度な拡散性を有するカプラーとしては、US 4,366,237、GB 2,125570、EP 96,873B、DE 3,234,533に記載のものが好ましい。発色色素の不要吸収を捕正するためのカプラーは、EP 456,257A1の5頁に記載の式(CI), (CII), (CIII), (CIV)で表わされるイエローカラードシアンカプラー(特に84頁のYC-86)、該EPに記載のイエローカラードマゼンタカプラーExM-7(202頁、EX-1(249頁)、EX-7(251頁)、US 4,833,069に記載のマゼンタカラードシアンカプラーCC-9(カラム8)、CC-13(カラム10)、US 4,837,136の(2)(カラム8)、W092/11575のクレーム1の式(A)で表わされる無色のマスキングカプラー(特に36〜45頁の例示化合物)が好ましい。
【0116】
現像主薬酸化体と反応して写真的に有用な化合物残基を放出する化合物(カプラーを含む)としては、以下のものが挙げられる。
【0117】
現像抑制剤放出化合物:EP 378,236A1の11頁に記載の式(I),(II),(III),(IV)で表わされる化合物(特にT-101(30頁), T-104(31頁), T-113(36頁), T-131(45頁), T-144(51頁), T-158(58頁)),EP 436,938A2の7頁に記載の式(I)で表わされる化合物(特にD-49(51頁))、特開平5-307248の式(1)で表わされる化合物(特に没落0027の(23))、EP 440,195A2の5〜6頁に記載の式(I),(II),(III)で表わされる化合物(特に29頁のI-(1));漂白促進剤放出化合物: EP 310,125A2の5頁の式(I),(I′)で表わされる化合物(特に61頁の(60),(61))及び特開平6-59411の請求項1の式(I)で表わされる化合物(特に段落0022の(7)); リガンド放出化合物:US 4,555,478のクレーム1に記載のLIG-Xで表わされる化合物(特にカラム12の21〜41行目の化合物);ロイコ色素放出化合物; US 4,749,641のカラム3〜8の化合物1〜6;蛍光色素放出化合物:US 4,774,181のクレーム1のCOUP-DYEで表わされる化合物(特にカラム7〜10の化合物1〜11);現像促進剤又はカブラセ剤放出化合物:US 4,656,123のカラム3の式(1)、(2)、(3)で表わされる化合物(特にカラム25の(I-22))及びEP 450,637A2の75頁36〜38行目のExZK-2;離脱して初めて色素となる基を放出する化合物: US 4,857,447のクレーム1の式(I)で表わされる化合物(特にカラム25〜36のY-1〜Y-19)。
【0118】
カプラー以外の添加剤としては、以下のものが好ましい。
油溶性有機化合物の分散媒:特開昭62-215272のP-3, 5,16, 19, 25, 30, 42,49, 54, 55, 66, 81, 85, 86, 93(140〜144頁);油溶性有機化合物の含浸用ラテックス:US 4,199,363に記載のラテックス;現像主薬酸化体スカベンジャー:US4,978,606のカラム2の54〜62行の式(I)で表わされる化合物(特にI-,(1),(2),(6),(12)(カラム4〜5)、US 4,923,787のカラム2の5〜10行の式(特に化合物1(カラム3);ステイン防止剤:EP 298321Aの4頁30〜33行の式(I)〜(III),特にI-47, 72, III-1, 27(24〜48頁);褪色防止剤:EP 298321AのA-6, 7, 20, 21,23, 24, 25, 26, 30, 37, 40, 42, 48, 63, 90, 92, 94, 164(69〜118頁), US5,122,444のカラム25〜38のII-1〜III-23, 特にIII-10, EP 471347Aの8〜12頁のI-1〜III-4,特にII-2, US 5,139,931のカラム32〜40のA-1〜48, 特にA-39, 42;発色増強剤または混色防止剤の使用量を低減させる素材:EP 411324Aの5〜24頁のI-1〜II-15,特にI-46;ホルマリンスカベンジャー:EP 477932Aの24〜29頁のSCV-1〜28, 特にSCV-8;
硬膜剤:特開平1-214845の17頁のH-1, 4, 6, 8, 14, US 4,618,573のカラム13〜23の式(VII)〜(XII)で表わされる化合物(H-1〜54),特開平2-214852の8頁右下の式(6)で表わされる化合物(H-1〜76),特にH-14, US 3,325,287のクレーム1に記載の化合物;現像抑制剤プレカーサー:特開昭62-168139のP-24, 37, 39(6〜7頁); US 5,019,492のクレーム1に記載の化合物, 特にカラム7の28〜29;防腐剤、防黴剤:US 4,923,790のカラム3〜15のI-1〜III-43, 特にII-1, 9, 10,18, III-25;安定剤、かぶり防止剤:US 4,923,793のカラム6〜16のI-1〜(14),特にI-1, 60, (2),(13), US 4,952,483のカラム25〜32の化合物1〜65, 特に36:化学増感剤:トリフェニルホスフィンセレニド, 特開平5-40324の化合物50;染料:特開平3-156450の15〜18頁のa-1〜b-20, 特にa-1, 12, 18, 27, 35, 36,b-5, 27〜29頁のV-1〜23, 特にV-1, EP 445627Aの33〜55頁のF-I-1〜F-II-43,特にF-I-11, F-II-8, EP 457153Aの17〜28頁のIII-1〜36, 特にIII-1, 3, W088/04794の8〜26のDye-1〜124の微結晶分散体, EP 319999Aの6〜11頁の化合物1〜22,特に化合物1, EP 519306Aの式(1)ないし(3)で表わされる化合物D-1〜87(3〜28頁), US 4,268,622の式(I)で表わされる化合物1〜22(カラム3〜10), US 4,923,788の式(I)で表わされる化合物(1)〜(31)(カラム2〜9);UV吸収剤: 特開昭46-3335の式(1)で表わされる化合物(18b)〜(18r), 101〜427(6〜9頁),EP 520938Aの式(I)で表わされる化合物(3)〜(66)(10〜44頁)及び式(III)で表わされる化合物HBT-1〜HBT-10(14頁), EP 521823Aの式(1)で表わされる化合物(1)〜(31)(カラム2〜9)。
【0119】
本発明の感光材料は、乳剤層を有する側の全親水性コロイド層の膜厚の総和が28μm以下であることが好ましく、23μm以下がより好ましく、18μm以下が更に好ましく、16μm以下が特に好ましい。また膜膨潤速度T1/2は30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。T1/2は、発色現像液で30℃、3分15秒処理した時に到達する最大膨潤膜厚の90%を飽和膜厚としたとき、その膜厚が1/2に到達するまでの時間と定義する。膜厚は、25℃相対湿度55%調湿下(2日)で測定した膜厚を意味し、T1/2は、エー・グリーン(A.Green)らのフォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング (Photogr. Sci. Eng), 19巻、2, 124〜129頁に記載の型のスエロメーター(膨潤計)を使用することにより測定できる。T1/2は、バインダーとしてのゼラチンに硬膜剤を加えること、あるいは塗布後の経時条件を変えることによって調整することができる。
【0120】
ここで膨潤率とは、本発明のハロゲン化銀写真感光材料を35℃の蒸留水に浸し膨潤させたときの平衡膨潤量を表す尺度であり、
膨潤率(単位:%)= 膨潤時の全膜厚/乾燥時の全膜厚×100
と定義される。膨潤率は170%以上280%以下が好ましく、190%以上250%以下がより好ましい。膨潤率はゼラチン硬化剤の添加量を調節することにより上記範囲とすることができる。
【0121】
以下、支持体について説明する。プラスチックフィルム支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンのフィルムを挙げることができる。
【0122】
中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、特に2軸延伸、熱固定されたポリエチレンテレフタレートフィルムが、安定性、強靱さなどの点からも特に好ましい。
【0123】
支持体の厚さに特に制限はないが、15〜500μmの範囲が一般的で、特に40〜200μmの範囲のものが取扱易さ、汎用性などの点から有利なため好ましく、100〜150μmが最も好ましい。透過型支持体とは、好ましくは可視光が90%以上透過するものを意味し、光の透過を実質的に妨げない量であれば染料化ケイ素、アルミナゾル、クロム塩、ジルコニウム塩などを含有していても良い。
【0124】
上記プラスチックフィルム支持体の表面に、感光層を強固に接着させるために、一般に下記の表面処理が行なわれる。帯電防止層(バック層)が形成される側の表面も、一般に同様な表面処理が行なわれる。
【0125】
(1)薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸素処理、などの表面活性処理した後、直接に写真乳剤(感光層形成用塗布液)を塗布して接着力を得る方法と、
(2)一旦これらの表面処理した後、下塗層を設けこの上に写真乳剤層を塗布する方法
との二法がある。
【0126】
これらのうち(2)の方法がより有効であり広く行われている。これらの表面処理はいずれも、本来は疎水性であった支持体表面に、多少とも極性基を形成させること、表面の接着に対してマイナスの要因になる薄層を除去すること、表面の架橋密度を増加させ接着力を増加させるものと思われ、その結果として下塗層用溶液中に含有される成分の極性基との親和力が増加することや、接着表面の堅牢度が増加すること等により、下塗層と支持体表面との接着性が向上すると考えられる。
【0127】
上記プラスチックフィルム支持体上の感光層が設けられない側の表面には、本発明の導電性金属酸化物粒子を含有する非感光性層(本発明の帯電防止層)が設けられる。本発明の非感光性層のバインダーとしては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく使用される。本発明の非感光性層は硬膜されているのが好ましく、硬膜剤としては、アジリジン系、トリアジン系、ビニルスルホン系、アルデヒド系、シアノアクリレート系、ペプチド系、エポキシ系、メラミン系などが用いられるが、導電性金属酸化物粒子を強固に固定する観点からは、メラミン系化合物が特に好ましい。
【0128】
導電性金属酸化物粒子の材料としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、MgO、BaO、MoO3およびV25及びこれらの複合酸化物、そしてこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。
【0129】
金属酸化物としては、SnO2、ZnO、Al23、TiO2、In23、MgO、およびV25が好ましく、さらにSnO2、ZnO、In23、TiO2およびV25が好ましく、SnO2およびV25が特に好ましい。異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAlあるいはIn、TiO2に対してNbあるいはTa、In23に対してSn、及びSnO2に対してSb、Nbあるいはハロゲン元素などの異種元素を0.01〜30モル%(好ましくは0.1〜10モル%)ドープしたものを挙げることができる。異種元素の添加量が、0.01モル%未満の場合は酸化物または複合酸化物に充分な導電性を付与することができず、30モル%を超えると粒子の黒化度が増し、帯電防止層が黒ずむため感材用としては適さない。従って、導電性金属酸化物粒子の材料としては、金属酸化物または複合金属酸化物に対し異種元素を少量含むものが好ましい。また結晶構造中に酸素欠陥を含むものも好ましい。
【0130】
導電性金属酸化物粒子は、非感光性層全体に対し、体積比率が50%以下である必要があるが、好ましくは3〜30%である。塗設量としては1〜300mg/m2が好ましく、2〜200mg/m2がより好ましく、100〜250mg/m2が最も好ましい。体積比率が50%を越えると処理済カラー写真の表面に汚れが付着しやすくなる。
【0131】
硬膜剤として好ましく用いられるメラミン化合物としては、メラミン分子内に二個以上(好ましくは三個以上)のメチロール基および/またはアルコキシメチル基を含有する化合物およびそれらの縮重合体であるメラミン樹脂あるいはメラミン・ユリア樹脂などを挙げることができる。メラミンとホルマリンの初期縮合物の例としては、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどがあり、その具体的な市販品としては、例えばスミテックス・レジン(Sumitex Resin)M−3、同MW、同MK及び同MC(住友化学(株)製)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0132】
上記縮重合体の例としては、ヘキサメチロールメラミン樹脂、トリメチロールメラミン樹脂、トリメチロールトリメトキシメチルメラミン樹脂等を挙げることができる。市販品としては、MA−1及びMA−204(住友ベークライト(株)製)、ベッカミン(BECKAMINE)MA−S、ベッカミンAPM及びベッカミンJ−101(大日本インキ化学工業(株)製)、ユーロイド344(三井化学(株)製)、大鹿レジンM31及び大鹿レジンPWP−8(大鹿振興(株)製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
メラミン化合物としては、分子量を1分子内の官能基数で割った値で示される官能基当量が50以上300以下であることが好ましい。ここで官能とはメチロール基および/またはアルコキシメチル基を示す。この値が300を超えると硬化密度が小さく高い強度が得られず、メラミン化合物の量を増やすと塗布性が低下する。硬化密度が小さいとスリ傷が発生しやすくなる。また硬化する程度が低いと導電性金属酸化物を保持する力も低下する。官能基当量が50未満では硬化密度は高くなるが透明性が損なわれ、減量しても良化しない。水性メラミン化合物の添加量は、上記ポリマーに対して0.1〜100質量%、好ましくは10〜90質量%である。
【0134】
帯電防止層には必要に応じて、マット剤、界面活性剤、滑り剤などを併用して使用することができる。マット剤としては、0.001μm〜10μmの粒径をもつ酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの酸化物や、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等の重合体あるいは共重合体等が挙げられる。
【0135】
界面活性剤としては公知のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。滑り剤としては、炭素数8〜22の高級アルコールのリン酸エステルもしくはそのアミノ塩;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸およびそのエステル類;及びシリコーン系化合物等を挙げることができる。カチオン帯電調節剤としては、4級アンモニウム塩が好ましく、特にテトラエチルアンモニウム塩が好ましい。
【0136】
帯電防止層の層厚は、0.01〜1μmの範囲が好ましく、さらに0.01〜0.2μmの範囲が好ましい。0.01μm未満では塗布剤を均一に塗布しにくいため製品に塗布むらが生じやすく、1μmを超える場合は、帯電防止性能や耐傷性が劣る場合がある。帯電防止層の上には、表面層を設けるのが好ましい。表面層は、主として滑り性及び耐傷性を向上させるため、及び帯電防止層の導電性金属酸化物粒子の脱離防止の機能を補助するために設けられる。
【0137】
表面層の材料としては、(i)エチレン、プロピレン、1−ブテン及び4−メチル−1−ペンテン等の1−オレフィン系不飽和炭化水素の単独または共重合体からなるワックス、樹脂及びゴム状物(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体及びプロピレン/1−ブテン共重合体)、(ii)上記1−オレフィンの二種以上と共役または非共役ジエンとのゴム状共重合体(例えば、エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン/プロピレン/1,5−ヘキサジエン共重合体及びイソブテン/イソプレン共重合体)、(iii)1−オレフィンと共役または非共役ジエンとの共重合体(例えば、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/エチリデンノルボルネン共重合体)、(iv)1−オレフィン、特にエチレンと酢酸ビニルとの共重合体およびその完全もしくは部分ケン化物、(v)1−オレフィンの単独または共重合体に上記共役もしくは非共役ジエンまたは酢酸ビニル等をグラフトさせたグラフト重合体およびその完全もしくは部分ケン化物、などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。上記化合物は、特公平5−41656号公報に記載されている。
【0138】
上記のポリオレフィンであって、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩基を有するものが好ましい。通常水溶液あるいは水分散液として使用する。
【0139】
上記表面層には、メチル基置換度2.5以下の水溶性メチルセルロースを添加しても良く、その添加量は表面層を形成する全結合剤に対して0.1質量%〜40質量%が好ましい。上記水溶性メチルセルロースについては、特開平1−210947号公報に記載されている。
【0140】
上記表面層は、本発明の帯電防止層上に一般によく知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストル−ジョンコート法などにより上記バインダー等を含む塗布液(水分散液又は水溶液)を塗布することにより形成することができる。上記表面層の層厚は、0.01〜1μmの範囲が好ましく、さらに0.01〜0.2μmの範囲が好ましい。0.01μm未満では塗布剤を均一に塗布しにくいため製品に塗布むらが生じやすく、1μmを超える場合は、帯電防止性能や耐傷性が劣る場合がある。
【0141】
本発明に使用する非脱色性着色物は、現像処理時に溶出あるいは消色することがなく、処理前後でその膜中における光吸収特性が実用上変化しないものである。その種類については特に制限はなく、公知の物質を含む種々の染料、顔料を使用することができる。
【0142】
公知の染料については、例えばオキソノール染料、アゾメチン染料、アゾ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、アリーリデン染料、スチリル染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、ペリノン染料、メロシアニン染料、シアニン染料、インドアニリン染料、フタロシアニン染料、インジゴ染料、チオインジゴ染料などを挙げることができる。
【0143】
顔料については、例えばアゾ顔料(不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、金属錯塩アゾ顔料)、フタロシアニン顔料、染付けレーキ顔料(酸性染料レーキ、塩基性染料レーキ)、縮合多環顔料(キナクリドン顔料、チオインジゴ顔料、ペリレン顔料、アントラキノン系顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、イソインドリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料)、その他(ニトロソ顔料、アリザリンレーキ顔料、アルカリブルー)などの有機顔料を挙げることができる。
【0144】
具体的な化合物については「新版染料便覧」(有機合成化学協会編;丸善,1970) 、「カラーインデックス」(The Society of Dyers and colourists)、「色材工学ハンドブック」(色材協会編;朝倉書店、1989)、「改訂新版顔料便覧」などに記載されている。好ましい染料および顔料の具体例として、特開平11−95371号の明細書段落番号0191〜段落番号0250に記載のD−1〜D−35およびP−1〜P−30を好ましく挙げることができ、またこれらの感光材料中への添加方法も該特許の段落番号0206〜0215に詳細に記載され、これらの記載部分は本願の明細書の一部として取り込まれる。
【実施例】
【0145】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0146】
(実施例1)
[支持体の準備]
乳剤塗設面側に下塗りを施し、乳剤塗設面の反対側に下記の導電性ポリマー(0.05g/m)と酸化スズ微粒子(0.20g/m)、及びテトラエチルアンモニウムクロリド(5mg/m)を含有するアクリル樹脂層を塗設したポリエチレンテレフタレートフィルム支持体(厚さ120μm)を準備した。
【化18】

【0147】
[ハロゲン化銀乳剤の準備]
−青感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(BO−01)
(立方体、粒子サイズ0.71μm、粒子サイズ分布0.09、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
当業界で知られたコントロールダブルジェット法により、硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより、調製した。イリジウム含有量は4×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
【0148】
青色増感色素(A’);3.5×10-5モル/モル銀
青色増感色素(B’);1.9×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’);1.8×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸とトリエチルチオ尿素を用いて最適に金硫黄増感した。
【0149】
中サイズ乳剤(BM−01)
(立方体、粒子サイズ0.52μm、粒子サイズ分布0.09、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
当業界で知られたコントロールダブルジェット法により、硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより、調製した。イリジウム含有量は6×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
【0150】
青色増感色素(A’);6.9×10-5モル/モル銀
青色増感色素(B’);2.3×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’);2.7×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸とトリエチルチオ尿素を用いて最適に金硫黄増感した。
【0151】
小サイズ乳剤(BU−01)
(立方体、粒子サイズ0.31μm、粒子サイズ分布0.08、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
BM−01乳剤の調製において、粒子形成温度を下げたこと以外はBM−01と同様にした。
【0152】
後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
【0153】
青色増感色素(A’):8.5×10-4モル/モル銀
青色増感色素(B’):4.1×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’):3.7×10-5モル/モル銀
−赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(RO−01)
(立方体、粒子サイズ0.23μm、粒子サイズ分布0.11、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
当業界で知られているコントロールダブルジェット法により硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより調製した。イリジウム含有率は2×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように添加し分光増感した。
【0154】
赤感性増感色素(D’):4.5×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):0.2×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.2×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸と、トリエチルチオ尿素を用いて、最適に金硫黄増感した後、後述する構造式で表されるCpd−71をハロゲン化銀1モル当たり、9.0×10-4モル添加した。
【0155】
中サイズ乳剤(RM−01)
(立方体、粒子サイズ0.174μm、粒子サイズ分布0.12、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
粒子形成温度を変更したこと以外はRO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように使用した。
【0156】
赤感性増感色素(D’):7.0×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):1.0×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.4×10-5モル/モル銀
小サイズ乳剤(RU−01)
(立方体、粒子サイズ0.121μm、粒子サイズ分布0.13、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
粒子形成温度を変更したこと以外はRO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように使用した。
【0157】
赤感性増感色素(D’):8.9×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):1.2×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.5×10-5モル/モル銀
−緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(GO−01)
(立方体、粒子サイズ0.20μm、粒子サイズ分布0.11、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
当業界で知られているコントロールダブルジェット法により硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより調製した。イリジウム含有率は2×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように添加し分光増感した。
【0158】
緑感性増感色素(G’):2.8×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):0.8×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.2×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
更に、塩化金酸と、トリエチルチオ尿素を用いて、最適に金硫黄増感した。
【0159】
中サイズ乳剤(GM−01)
(立方体、粒子サイズ0.146μm、粒子サイズ分布0.12、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
粒子形成温度を変更したこと以外はGO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように使用した。
【0160】
緑感性増感色素(G’):3.8×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):1.3×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.4×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
小サイズ乳剤(GU−01)
(立方体、粒子サイズ0.102μm、粒子サイズ分布0.10、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
粒子形成温度を変更したこと以外はGO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように使用した。
【0161】
緑感性増感色素(G’):5.1×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):1.7×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.9×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
【化19】

【0162】
【化20】

【0163】
【化21】

【0164】
【化22】

【0165】
[染料固体微粒子分散物の調製]
化合物(IV−1)のメタノールウェットケーキを化合物の正味量が240gになるように秤量し、分散助剤として下記化合物(Pm−1)を48g秤量し、水を加えて4000gとした。‘流通式サンドグラインダーミル(UVM−2)’(アイメックスK.K製)にジルコニアビーズ(0.5mm径)を1.7リットル充填し、吐出量0.5リットル/mIn、周速10m/sで2時間粉砕した。その後、分散物を化合物濃度が3質量%となるように希釈し、下記構造式で表される化合物(Pm−1)を染料に対し質量比で3%添加した(分散物Aと称する)。この分散物の平均粒子サイズは0.45μmであった。
【0166】
さらに、同様な方法で化合物(II−25)を5質量%含む分散物(分散物Bと称する)を得た。
【化23】

【0167】
[試料100の作製]
支持体上に、下記に示すような組成の各層を重層塗布し、多層カラー写真感光材料である試料100を作製した。
【0168】
−塗布液調整―
水不溶性の化合物は良溶媒に溶解し、ゼラチン水溶液に乳化分散させて、乳化分散物を調整した。上記乳化分散物と、乳剤および水溶性化合物を必要に応じて混合溶解し、後記組成となるように第1層〜第7層用の塗布液を調整した。例として第6層塗布液の調整方法を示す。
【0169】
−第6層塗布液調整−
マゼンタカプラー(ExM’)75.0g、添加物(Cpd−49)1.5g、添加物(Cpd−51)0.1gおよび例示化合物(SR−2)2.3gを溶媒(Solv−21)15gおよび酢酸エチル80mlに溶解し、この溶液を、例示化合物(SR−1)の10%水溶液20mlを含む10%ゼラチン水溶液1000gに乳化分散させて、乳化分散物Mを調整した。一方、前述した塩臭化銀乳剤GO−01、GM−01,およびGU−01を用いて、前記乳化分散物Mとこの塩臭化銀乳剤とを混合溶解し、後記組成となるように第6層塗布液を調製した。
【化24】

【0170】
−層構成−
以下に各層の組成を示す。数字は塗布量(g/m)を表す。ハロゲン化銀乳剤塗布量は銀換算塗布量を表す。また、ゼラチン硬膜剤として、1−オキシ−3,5−ジクロロ−s−トリアジンナトリウム塩を用いた。
【0171】
[試料100の層構成]
支持体
・上記ポリエチレンテレフタレートフィルム
第1層(ハレーション防止層(非感光性親水性コロイド層))
ゼラチン 1.03
上記分散物A(染料塗布量として) 0.10
上記分散物B(染料塗布量として) 0.03。
【0172】
第2層(青感性ハロゲン化銀乳剤層)
塩臭化銀乳剤BO−01、乳剤BM−01、および
乳剤BU−01の3:1:6混合物(銀モル比) 0.57
ゼラチン 2.71
イエローカプラー(ExY’) 1.19
(Cpd−41) 0.0006
(Cpd−42) 0.01
(Cpd−43) 0.05
(Cpd−44) 0.003
(Cpd−45) 0.012
(Cpd−46) 0.001
(Cpd−54) 0.08
(Cpd−65) 0.02
(SR−1) 0.07
溶媒(Solv−21) 0.26。
【0173】
第3層(混色防止層)
ゼラチン 0.59
(Cpd−49) 0.02
(Cpd−43) 0.05
(Cpd−53) 0.005
(Cpd−61) 0.02
(Cpd−62) 0.03
(SR−1) 0.01
溶媒(Solv−21) 0.06
溶媒(Solv−23) 0.04
溶媒(Solv−24) 0.002。
【0174】
第4層(赤感性ハロゲン化銀乳剤層)
塩臭化銀乳剤RO−01、乳剤RM−01および
乳剤RU−01の2:2:6混合物(銀モル比) 0.40
ゼラチン 2.79
シアンカプラー(ExC’) 0.80
(Cpd−47) 0.06
(Cpd−48) 0.06
(Cpd−50) 0.03
(Cpd−53) 0.03
(Cpd−57) 0.05
(Cpd−58) 0.01
(Cpd−60) 0.02
(SR−2) 0.03
(SR−1) 0.04
溶媒(Solv−21) 0.53
溶媒(Solv−22) 0.28
溶媒(Solv−23) 0.04。
【0175】
第5層(混色防止層)
ゼラチン 0.56
(Cpd−49) 0.02
(Cpd−43) 0.05
(Cpd−53) 0.005
(Cpd−62) 0.03
(Cpd−64) 0.002
(SR−1) 0.01
溶媒(Solv−21) 0.06
溶媒(Solv−23) 0.04
溶媒(Solv−24) 0.002。
【0176】
第6層(緑感性ハロゲン化銀乳剤層)
塩臭化銀乳剤GO−01、GM−01、GU−01
の1:3:6混合物(銀モル比) 0.54
ゼラチン 1.66
マゼンタカプラー(ExM’) 0.73
(Cpd−49) 0.013
(Cpd−51) 0.001
(SR−2) 0.02
(SR−1) 0.02
溶媒(Solv−21) 0.15。
【0177】
第7層(保護層)
ゼラチン 0.97
アクリル樹脂(平均粒径2μm) 0.002
(Cpd−55) 0.005
(Cpd−56) 0.08
(SR−2) 0.03
ここで使用した化合物を以下に示す。
【化25】

【0178】
【化26】

【0179】
【化27】

【0180】
【化28】

【0181】
【化29】

【0182】
【化30】

【0183】
【化31】

【0184】
【化32】

【0185】
【化33】

【0186】
【化34】

【0187】
以上のように試料100を作製した。
【0188】
<試料101〜113の作製>
次に、前記感光材料100の作製において、第2層、第4層中の乳剤、及び第4層のCpd-58を、表Aに示すように変更したこと以外は全く同様の方法で、試料101〜113を作製した。
【表9】

【0189】
<試験及び評価>
(露光)前記のように作製された映画用ポジは、塗布後25℃55%の環境下で1ヶ月保管した後、タングステン光源を用いた富士フイルム(株)社製FWK型感光計によってSkinフィルターと銀ウェッジを重ねて露光した。未露光部からL*5の領域が入るように露光量を調節した。
【0190】
(処理液の準備)
映画用カラーポジフィルムの標準的な処理方法として、イーストマンコダック社から公表されているECP−2Dプロセスに対し、第一定着液とそれに続く水洗浴及びサウンド現像工程を除いた処理プロセスを準備した。作製した全試料について、塗布銀量の約30%が現像されるような画像を露光した。露光の終了した試料は上記処理プロセスにて発色現像浴の補充液量がタンク容量の2倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を実施し、ランニング平衡にある現像処理状態を作製した。
【0191】
ECP−2Dプロセス
<工程>
工程名 処理温度(℃) 処理時間(秒) 補充量
(ml 35mm×30.48m当たり)
1.現像 6.7±0.1 180 690
2.停止 27±1 40 770
3.水洗 27±3 40 1200
4.第一定着 27±1 40 200
5.水洗 27±3 40 1200
6.漂白 27±1 60 400
7.水洗 27±3 40 1200
8.サウンド現像 室温 10〜20 ―――(塗り付け)
9.水洗 27±3 1〜2 ―――(スプレー)
10.第二定着 27±1 40 200
11.水洗 27±3 60 1200
12.リンス 27±3 10 400
13.乾燥。
【0192】
<処理液処方>
1リットル当たりの組成を示す。
【0193】
工程名 薬品名 タンク液 補充液
現像 コダック(SO-50)
アンチカルシウムNo.4
(商品名) 1.0ml 1.4ml
亜硫酸ナトリウム 4.35g 4.50g
FCD-02 2.95g 6.00g
炭酸ナトリウム 17.1g 18.0g
臭化ナトリウム 1.72g 1.60g
水酸化ナトリウム ――― 0.6g
硫酸(7N) 0.62ml ―――
停止(SB-14) 硫酸(7N) 50ml 50ml
定着(F-35d) (第一/第二共通)
チオ硫酸アンモニウム(58%) 100ml 170ml
亜硫酸ナトリウム 2.5g 16.0g
亜硫酸水素ナトリウム 10.3g 5.8g
ヨウ化カリウム 0.5g 0.7g
漂白 Avecia社製 Proxel GXL 0.07ml 0.07ml
水酸化カリウム ――― 84ml
Kodak社製キレートNo.1 54g 60g
臭化カリウム 92g 101g
硫酸(7N) 13.5ml 15.0ml
サウンド現像 Natrosal 250 HR 2.0g
(SD-43b) 水酸化ナトリウム 80g
ヘキシルグリコール 2.0ml
亜硫酸ナトリウム 60g
ヒドロキノン 60g
エチレンジアミン(98%) 13ml
リンス Kodak Stabilizer Additive 0.14ml 0.17ml
Dearcide 702(商品名) 0.7ml 0.7ml
なお、上記において、現像工程で使用するFCD-02は現像主薬であり、リンス工程で使用するDearcide702は防黴剤である。
【0194】
(測色)
上記手法で作製されたグレー連続階調試料は、富士フイルム(株)社製SCD測色機を用いて、L*a*b*を測った。この結果を元に、C*値を算出した。
【0195】
(官能評価条件)
財団法人NHKエンジニアリングサービスで販売されているテレビジョン・システム評価用テストチャート(HD ハイビジョン画像)を用いて評価した。本画像をARRI社製ARRILASERを用いてEastman Kodak社製Vision50Dに焼き付け、映画用ネガの標準現像処理を行い、官能評価用標準ネガを作成した。このネガを、Spirit DataCineを用いてHD形式に逆変換し、標準画像の中にある「グレースケール」「カラーチャート」を用いて、CMSを調整して色校正を行った。この操作によって調整されたCMSを用いて、本標準画像のなかに有る「玄関ホール」「雪景色と川船」「人混み」「競技場(スーパー付加)」をARRI社製ARRILASERを用いてEastman Kodak社製Vision 50Dに焼き付けた。FWK感光計と同じ発光スペクトル分布を有するタングステン光源を備えたBell & Howell社製プリンターを用いて、試料100〜113を露光し、グレー露光試料を作成したのと同じ発色現像処理プロセスを用いて実技を作成した。CINE FORD社製映写機を用いて、実技映写を実施し、30人に対して官能評価を行った。グレーの色味、グレーの繋がりが「好ましい」〜「悪い」の順で、5〜1の5段階評価を行った。
【0196】
測色結果と、実技官能評価結果を表Bに示す。
測定結果中、L*値が5以上95以下の範囲で、C*値が最大となる点のL*値、a*値、b*値、C*値を示す。
【表10】

【0197】
試料100〜105及び112〜113は、a*値、b*値、C*値のいずれかが本発明で好ましいと考えている範囲を逸脱しており、特にa*値が低くなる場合に反応評価結果が悪化する方向にある。一方、試料106〜111は、これら特性値が本発明で見い出した好ましい範囲にすべて含まれており、官能評価結果も好ましいものとなっている。
【0198】
実施例2
実施例1で作製した試料について、現像処理時に実施例1で用いた簡易化したECP−2Dプロセスから、現像液のpHを0.2上げ、かつ処理時間を180秒から140秒に短縮させてさらに簡易化した処理工程にて現像処理を行った。その結果、実施例1と同様な結果が得られ、簡易化した現像処理(迅速処理)においても本発明の効果が発現することが分かった。
【0199】
これらの結果から、本発明により、高画質であり、ラボでの処理安定性に優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料、特に映画用ハロゲン化銀カラーポジ感光材料を得ることができることがわかった。更には迅速処理適性をも有する映画用ハロゲン化銀カラーポジ感光材料を得ることができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】タングステン光源を用いた時のネガフィルターSkinの分光スペクトルを示す図。
【図2】タングステン光源の発光分布を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型支持体上にイエロー色素形成カプラー、マゼンタ色素形成カプラー、及びシアン色素形成カプラーのいずれか少なくとも一つを含有し、かつ互いに感色性の異なるハロゲン化銀乳剤粒子を含有する少なくとも3層の感光性親水性コロイド層、および少なくとも1層のアンチハレーション能を有する非感光性親水性コロイド層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、少なくとも3層の感光性親水性コロイド層に含有されるハロゲン化銀粒子の塩化銀含有率が95モル%以上であり、ネガフィルターSkinを通してタングステン光で露光後、現像処理した際のCIELab値で表されるL*値が5以上95以下の範囲におけるa*値が−2以上2以下、b*値が−10以上10以下であり、かつC*値が10.2以下であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項2】
感光材料中の全塗設銀量が1.30g/m以上1.50g/m2以下であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項3】
透過型支持体上にイエロー色素形成カプラー、マゼンタ色素形成カプラー、及びシアン色素形成カプラーのいずれか少なくとも一つを含有し、かつ互いに感色性の異なるハロゲン化銀乳剤粒子を含有する少なくとも3層の感光性親水性コロイド層、および少なくとも一層のアンチハレーション能を有する非感光性親水性コロイド層を有し、少なくとも3層の感光性親水性コロイド層に含有されるハロゲン化銀粒子の塩化銀含有率が95モル%以上であるハロゲン化銀カラー写真感光材料を露光した後、現像処理する画像形成方法において、ネガフィルターSkinを通してタングステン光で露光処理した際のCIELab値で表されるL*値が5以上95以下の範囲におけるa*値が−2以上2以下、b*値が−10以上10以下であり、かつC*値が10.2以下であるハロゲン化銀カラー写真感光材料を用いることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−299001(P2008−299001A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143941(P2007−143941)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】