説明

ハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物

【課題】 本発明の目的は、長期保存時の容器汚れが低減されたハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物を提供することにある。
【解決手段】 漂白剤を含有する濃縮組成物パートと定着剤を含有する濃縮組成物パートとの2パートから構成されるハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物において、該漂白剤を含有する濃縮組成物パートのpHが2.0〜3.6であり、アミノポリカルボン酸第2鉄錯塩及び硝酸塩とを含有し、該第2鉄錯塩の鉄イオンと該硝酸塩の硝酸イオンとの含有モル比率が1:2〜1:6であって、かつ該漂白剤を含有する濃縮組成物パートが容器に収納され、収納後の該容器の空隙率が3〜30%であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の現像処理において、一般ユーザーへの迅速なサービスや写真店と大型現像所間での集配輸送の合理化のため、写真店の店頭に設置してハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理を行う、いわゆるミニラボと称する自動現像処理機が普及している。ミニラボに用いる現像処理剤は、あらかじめ構成処理薬品を水などの溶媒に溶解した液体組成物の形態であれば、使用する処理液を調製する際には、混合及び水で希釈するなどの簡単な調製作業で処理液を調製できる利点があり、この様な形態で供給されることが多い。しかしながら、液体組成物の形態は、処理剤成分の溶解に要する水などの溶媒と組成物を収納する容器とを必要とするため、輸送コストの点では不利となるため、液体組成物を濃厚化して容積を減らした液体濃縮組成物の形で供給がされるのが一般的である。
【0003】
また、漂白定着に用いられる液体濃縮組成物は、単一液の構成よりも安定性の高い2液構成、すなわち漂白剤を含有する濃縮組成物パート(以後、漂白剤パートともいう)と定着剤を含有する濃縮組成物パート(以後、定着剤パートともいう)の2つのパートから構成されていることが一般的である。
【0004】
一方、ミニラボにおける現像処理では、上記輸送上の利便性に加えて、ユーザーサービスの一環として、現像処理の迅速化及び処理時に発生する廃液量の軽減のための低補充化が望まれている。漂白定着液濃縮組成物が使用される漂白定着工程において、低補充化と迅速化を行うには、漂白剤の濃度を高くするとともに、漂白定着処理液の漂白性能維持のため、pHを下げる必要がある。定着剤パートを低pH化すれば、定着剤の分解や析出が生じるので、定着剤パートを低pH化することはできない。しかしながら、漂白剤パートを低pH化し、さらに漂白剤の高濃度化を行うと、夏季のような高温環境下での保存において、容器内部に細かな黒色物が生成し、これが容器内壁に付着して、商品価値を低下させる問題が発生する。この容器汚れは、容易に洗浄では除去することができず、廃容器をリサイクルすることが難しくなり、環境保護面での運用も困難としていた。
【0005】
この高温保存において発生する黒色物の生成に起因した容器汚れに対して、例えば、漂白剤として鉄(III)・エチレンジアミンジ琥珀酸錯塩及び鉄(III)・エチレンジアミンジグルタミン酸錯塩のいずれか、又は両方を主成分として含有し、充填物1リットル当たりの酸素供給速度が10ミリリットル/hr以下の容器に充填された1パート構成の写真用漂白定着処理剤が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、特許文献1に記載の技術は、特定構造アミノポリカルボン酸第2鉄錯塩及び容器を必要とし、また上記提案されている化合物や容器等は製造コスト等が高く、経済的に不利が生じることで、汎用を困難なものとしている。また、漂白剤パートの低pH下での高濃度化に関する技術については、漂白剤を含有する濃縮組成物パートと定着剤を含有する濃縮組成物パートとの2パートから構成され、漂白剤含有パートがpH、比重、漂白剤の種類、漂白剤の濃度及びアミノポリカルボン酸の含有量を特定の条件に規定したハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、特許文献2に記載の技術では、漂白定着液濃縮組成物の析出性改良について言及しているものの、本発明の目的効果である容器汚れの解決に関しては、何ら言及及び記載がされていない。
【特許文献1】特開2000−98553号公報
【特許文献2】特開2004−53921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、長期保存時の容器汚れ低減されたハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0008】
(請求項1)
漂白剤を含有する濃縮組成物パートと定着剤を含有する濃縮組成物パートとの2パートから構成されるハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物において、該漂白剤を含有する濃縮組成物パートのpHが2.0〜3.6であり、アミノポリカルボン酸第2鉄錯塩及び硝酸塩とを含有し、該第2鉄錯塩の鉄イオンと該硝酸塩の硝酸イオンとの含有モル比率が1:2〜1:6であって、かつ該漂白剤を含有する濃縮組成物パートが容器に収納され、収納後の該容器の空隙率が3〜30%であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物。
【0009】
(請求項2)
前記空隙率が、5〜20%であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物。
【0010】
(請求項3)
前記アミノポリカルボン酸第2鉄錯塩の濃度が、0.4モル/L以上、1.0モル/L以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物。
【0011】
(請求項4)
前記漂白剤を含有する濃縮組成物パートが、下記一般式(I)〜(V)から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、A1及びA2はそれぞれアリール基又は芳香族ヘテロ環基を表す。ただし、A1がトリアジニル基の場合を除く。Xは2価の連結基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はピリジニウムを表す。ただし、上記の一般式(I)で表される分子内には、−N=N−及び−SHで表される基を含有しない。nは2〜4の整数を表し、n個のX−A2は同一でも異なっていてもよく、r及びsはそれぞれ0〜10の整数を表すが、r+sは2以上である。また、nが2であってA1が芳香族へテロ環基の場合、2個のXはそれぞれN(R1)、S又はO以外の2価の連結基を表し、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。〕
【0014】
【化2】

【0015】
〔式中、L1、L2はそれぞれ独立にアリール基、ヘテロ環基またはアルキル基を表し、少なくとも一方はアリール基またはヘテロ環基である。Y1はアミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、スルホ基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。ただし2つのトリアジン環の間に共役結合はない。〕
【0016】
【化3】

【0017】
〔式中、L3とL4はそれぞれ独立にアリール基、ヘテロ環基またはアルキル基を表し、少なくとも一方はアリール基またはヘテロ環基である。R3は水素原子またはアルキル基を表す。Y3はアミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、スルホ基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。ただし、2つのトリアジン環の間に共役結合はない。〕
【0018】
【化4】

【0019】
〔式中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Qは水素原子、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、スルホ基、−NR1516、−OR17またはハロゲン原子を表し、R15、R16、R17はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ基を表す。R11とR12、R13とR14、及びR15とR16はそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。ただし、分子内に−SO3M、−CO2Mまたは−OHで表される基を少なくとも1つ含有し、ここでMは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはピリジニウムを表す。また、R11、R12、R13、R14、R15及びR16のうち3個以上がアリール基となることはない。さらに、上記の一般式(IV)で表される分子内には、2つのトリアジン環の間に共役結合はなく、また−N=N−で表される基を含有しない。〕
【0020】
【化5】

【0021】
〔式中、X1、X2、Y1及びY2は、それぞれアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、アミノ基、塩素原子、アルキル基、アリール基または下記一般式(V−a)で表される基を表す。X及びYはそれぞれNR4、OまたはSを表し、R4は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。Lはフェニレン基、ナフチル基またはヘテロ環基を表す。〕
【0022】
【化6】

【0023】
〔式中、R1、R2及びR3は、それぞれアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。〕
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、長期保存時の容器汚れが低減されたハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0026】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を進めた結果、漂白剤を含有する濃縮組成物パートと定着剤を含有する濃縮組成物パートとの2パートから構成されるハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物において、該漂白剤を含有する濃縮組成物パートのpHが2.0〜3.6であり、アミノポリカルボン酸第2鉄錯塩及び硝酸塩とを含有し、該第2鉄錯塩の鉄イオンと該硝酸塩の硝酸イオンとの含有モル比率が1:2〜1:6であって、かつ該漂白剤を含有する濃縮組成物パートが容器に収納され、収納後の該容器の空隙率が3〜30%であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物により、容器中に収納された状態で長期間にわたり保存された際にも、濃縮組成物中での分解物の生成が大幅に抑制され、その結果、保存容器への着色を防止することができた。更に、本発明の漂白定着液濃縮組成物を用いることで、迅速処理時の脱銀性及び復色性といった処理の適性を可能とすることができた。
【0027】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0028】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物(以下、単に本発明の漂白定着液濃縮組成物ともいう)は、漂白剤を含有する濃縮組成物パートと定着剤を含有する濃縮組成物パートとの2パートから構成される。
【0029】
はじめに、本発明の漂白定着液濃縮組成物に係る漂白剤パートから説明する。
【0030】
本発明においては、本発明に係る漂白剤パートのpHが2.0〜3.6であることを特徴の1つとし、より好ましくは2.5〜3.3である。
【0031】
また、本発明に係る漂白剤パートにおいては、アミノポリカルボン酸第2鉄錯塩及び硝酸塩を含有し、第2鉄錯塩の鉄イオンと硝酸塩の硝酸イオンとの含有モル比率が1:2〜1:6であることを1つの特徴とし、好ましくは1:3〜1:5の範囲である。
【0032】
上記pH範囲及び鉄イオンと硝酸イオンを上記モル比率で含有することにより、保存容器への着色を抑制でき、更には低補充、迅速処理時の良好な処理適性が得られる。
【0033】
アミノポリカルボン酸第2鉄錯塩の含有量としては、0.4〜1.0モル/Lの範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.5〜0.8モル/Lであり、保存容器への着色と分解ガス等の発生による容器膨張の抑制、更には、低補充及び迅速処理時の良好な処理適性が得られる。
【0034】
本発明で用いることのできるアミノポリカルボン酸第2鉄錯塩としては、例えば、エチレンジアミンジ琥珀酸(S,S体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、ベーターアラニンジ酢酸、メチルイミノジ酢酸をはじめ、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸等のアミノポリカルボン酸との第2鉄錯塩を挙げることができ、これら化合物のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩又はアンモニウム塩を挙げることができる。
【0035】
また、これらの化合物の中で、エチレンジアミンジ琥珀酸(S,S体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、エチレンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、メチルイミノ二酢酸の第2鉄錯塩が、漂白性能が良好な点から好ましい。これら第2鉄錯塩は、錯塩の形で使用してもよいし、例えば、硫酸第2鉄、塩化第2鉄、硝酸第2鉄、硫酸第2鉄アンモニウム、燐酸第2鉄などと上記したアミノポリカルボン酸と溶液中で錯形成させてもよい。
【0036】
また、上記アミノポリカルボン酸と鉄イオンとのモル比率はキレート構造の安定性から、アミノポリカルボン酸:鉄イオン=1.01:1.00〜1.10:1.00が好ましい範囲である。
【0037】
また、本発明に係るアミノポリカルボン酸第2鉄錯塩に加えて、そのほかの公知の漂白剤も併用して用いることができる。併用できる漂白剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの有機酸の第2鉄錯塩、過硫酸塩、過酸化水素などが挙げられる。
【0038】
上記硝酸塩としては、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウムや硝酸カリウムなどを挙げることができ、漂白剤パートに含有される範囲としては、0.5〜7.0モル/Lが濃縮組成物の安定性から好ましい範囲である。
【0039】
本発明に係る漂白剤パートには、上記pHに調節するため、種々の有機酸塩(例えば、酢酸、乳酸、グリコール酸、琥珀酸、マレイン酸、マロン酸、クエン酸、スルホ琥珀酸、クエン酸、酒石酸、グルタル酸、乳酸など)、有機塩基(例えば、イミダゾール、ジメチルイミダゾールなど)あるいは、2−ピコリン酸やコージ酸等を含有することができる。これら化合物の添加量は、調製した処理液(タンク液(使用液)、補充液)1L当たり0.05〜3.0モルが好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.0モルである。
【0040】
上記化合物の他に、銀の酸化を促進する為の再ハロゲン化剤として、塩化物、臭化物、ヨウ化物の如きハロゲン化物を添加しても良い。また、ハロゲン化物の代わりに難溶性銀塩を形成する有機性配位子を加えてもよく、ハロゲン化物はアルカリ金属塩あるいはアンモニウム塩、あるいはグアニジン、アミンなどの塩として加えることができる。具体的には臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム、塩化カリウム、塩酸グアニジンなどが挙げられる。その添加量は、処理液として調製した際の濃度が、1L当たり0.01〜2.0モルとなる範囲が好ましい。
【0041】
また、本発明に係る漂白剤パートには、処理性を考慮するときはアンモニウムイオンを使用することが好ましく、一方で、作業環境性に重点をおく場合は、実質上アンモニウムイオンを含まない方が好ましい。
【0042】
また、本発明に係る漂白剤パートには、上記で規定する構成に加えて、前記一般式(I)〜(V)から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが、より過酷な保存条件等で、本発明の目的効果である保存容器の着色、並びに分解ガス等の発生による容器膨張を抑制できる点で好ましい。
【0043】
以下、本発明に係る前記一般式(I)〜(V)で表される化合物について説明する。
【0044】
はじめに、前記一般式(I)で表される化合物について説明する。
【0045】
前記一般式(I)において、A1及びA2はそれぞれアリール基または芳香族ヘテロ環基を表し、アリール基としては、炭素数6〜20であることが好ましく、より好ましくは炭素数6〜10、特に好ましくは炭素数6〜8のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、3,5−ジカルボキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−スルホフェニル基、4−スルホフェニル基、5,7−ジスルホ−2−ナフチル基、3,6−ジスルホ−2−ナフチル、アンスラニル基が挙げられる。芳香族ヘテロ環基としては、炭素数2〜20であることが好ましく、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜8の5又は6員環のヘテロ環基であり、例えば、2−フリル基、2−ピリミジニル基、3,5−(1,2,4−トリアゾール)−ジイル基、3,5−イソチアゾールジイル基、2,6−ピリジンジイル基、2,6−ピラジンジイル基、2,6−ピリミジンジイル基、3,6−ピリダジンジイル基、1,4−フタラジンジイル基が挙げられる。
【0046】
Xは2価の連結基を表し、例えば、−CH(R1)−、−NR1−、−S−、−O−、−CON(R1)−、−SO2N(R1)−、−CO2−で表される基が挙げられ、R1で表される置換基としては、例えば、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基が挙げられる。好ましくは−CON(R1)−、−SO2N(R1)−、−CO2−で表される基である。−SO3M基又は−CO2M基は一般式(I)で表される分子内のいずれかに存在すれば良い。すなわち、−SO3M基又は−CO2M基は、A1及び/又はA2に直接結合して、又はA1及び/又はA2上の置換基中に存在するのが好ましい。或いは−SO3M基又は−CO2M基はXに直接結合して、又はX上の置換基中に存在していてもよい。また、A1及びA2上に他の置換基が存在していても良い。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはピリジニウムである。そのうちアルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましく、特に好ましいのはNa及びKである。アンモニウム基としては、例えば、アンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムが挙げられ、そのうちアンモニウムが好ましい。nは2〜4の整数を表し、r及びsはそれぞれ0〜10の整数を表す。r及びsはそれぞれ1〜6の整数が好ましい。また、r+sは2以上であり、好ましくは2〜6の整数である。
【0047】
以下に一般式(I)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0048】
【化7】

【0049】
【化8】

【0050】
【化9】

【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

【0053】
【化12】

【0054】
【化13】

【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
【化16】

【0058】
【化17】

【0059】
【化18】

【0060】
次いで、本発明に係る前記一般式(II)及び(III)で表される化合物について詳しく説明する。
【0061】
前記一般式(II)または(III)において、L1、L2はそれぞれ独立にアリール基、ヘテロ環基またはアルキル基を表し、L1とL2とが同時にアルキル基になることはない。L3、L4はそれぞれ独立にアリール基、ヘテロ環基またはアルキル基を表し、L3とL4とが同時にアルキル基になることはない。アリール基、ヘテロ環基、アルキル基は置換基を有するものを含む。ただし、アリール基はスチルベン骨格を持たない。
【0062】
1、L2、L3及びL4がそれぞれアリール基であるとき、その炭素数は6〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜15、特に好ましくは6〜10であり、例えば、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−トルイル基、ナフチル基が挙げられる。アリール基は、水溶性基を持つことが好ましく、水溶性基としてはスルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルバモイル基またはスルファモイル基が挙げられ、スルホ基とカルボキシル基が特に好ましい。具体的には、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、2−スルホフェニル基、4−スルホフェニル基、2−メチル−4−スルホフェニル基、2,5−ジスルホフェニル基、4−スルホ−1−ナフチル基、6,8−ジスルホ−2−ナフチル基、5,7−ジスルホ−2−ナフチル基が挙げられる。
【0063】
1、L2、L3及びL4がそれぞれヘテロ環基であるとき、その炭素数は2〜20であることが好ましく、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数3〜8の5または6員の芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から1個の水素原子を取り除いた1価の基であり、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基が挙げられる。
【0064】
1、L2、L3及びL4がそれぞれアルキル基であるとき、炭素数が1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、2−メトキシエチル基が挙げられる。アルキル基は水溶性基で置換されていることが好ましく、水溶性基としては、例えば、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルバモイル基またはスルファモイル基が挙げられ、スルホ基、カルボキシル基及びヒドロキシル基が特に好ましく、例えば、スルホメチル基、2−スルホエチル基、1,2−ジカルボキシエチル、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3,4−ジヒドロキシブチル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基、2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル基が挙げられる。
【0065】
3は水素原子またはアルキル基を表し、置換基を有するものを含む。アルキル基であるとき、炭素数が1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜8であり、特に好ましくは1〜4のアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、2−メトキシエチル基が挙げられる。アルキル基は水溶性基で置換されていてもよく、水溶性基としては、例えば、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルバモイル基またはスルファモイル基が挙げられ、スルホ基、カルボキシル基及びヒドロキシル基が特に好ましく、例えば、スルホメチル基、2−スルホエチル基、1,2−ジカルボキシエチル、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3,4−ジヒドロキシブチル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基、2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル基が挙げられる。
【0066】
1は無置換アミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン、それぞれ置換してもよいアルキルアミノ基またはアルコキシ基であり、置換してもよいアルキルアミノ基及びアルコキシ基は、下記一般式(a)〜(c)のように表される。
【0067】
一般式(a)
−NH−R31
一般式(b)
−N(R31)−R32
一般式(c)
−O−R33
上記一般式(a)〜(c)において、R31、R32及びR33はそれぞれアルキル基を表し、アルキル基としては炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−オクチル基、スルホメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−スルホエチル基、2−メトキシエチル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基、2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル基、スルホメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−スルホエチル基、1,2−ジカルボキシエチル基が挙げられる。
【0068】
また、一般式(II)及び一般式(III)で表される化合物がカルボキシル基またはスルホ基を有する場合、これらはフリー体でも塩でもよく、塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のアンモニウム基またはピリジニウムが挙げられ、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属であり、更に好ましいのはナトリウム及びカリウムである。
【0069】
以下、本発明に係る一般式(II)及び一般式(III)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0070】
【化19】

【0071】
【化20】

【0072】
上記説明した本発明に係る一般式(II)又は一般式(III)で表される化合物が分子内に不斉炭素を複数個有する場合、同一構造に対して複数の立体異性体が存在するが、本発明は可能性のある全ての立体異性体を示しており、複数の立体異性のうち1つだけを使用することも、あるいはそのうちの数種を混合物として使用することもできる。
【0073】
次いで、本発明に係る前記一般式(IV)で表される化合物について説明する。
【0074】
前記一般式(IV)において、R11、R12、R13及びR14がそれぞれアルキル基で表される場合、アルキル基としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−オクチル基、スルホメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−スルホエチル基、2−メトキシエチル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基、2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル基、2−(2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ)エチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3,4−ジヒドロキシブチル基、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル基等が挙げられる。
【0075】
11、R12、R13及びR14がそれぞれアリール基で表される場合、アリール基としては炭素数が6〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜10、特に好ましくは6〜8のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、3,5−ジカルボキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−スルホフェニル基、4−スルホフェニル基が挙げられる。
【0076】
11、R12、R13及びR14がそれぞれヘテロ環基で表される場合、ヘテロ環基としては炭素数2〜20であることが好ましく、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数3〜8の5または6員の芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から1個の水素原子を取り除いた1価の基であり、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基が挙げられる。
【0077】
11、R12、R13及びR14は、好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、スルホメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−スルホエチル基、2−メトキシエチル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基、2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3,4−ジヒドロキシブチル基、フェニル基、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、3,5−ジカルボキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−スルホフェニル基、4−スルホフェニル基であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、スルホメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−スルホエチル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、フェニル基、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、2−スルホフェニル基、4−スルホフェニル基であり、また更に好ましくは水素原子、メチル基、スルホメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−スルホエチル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、フェニル基、4−スルホフェニル基である。
【0078】
Qは水素原子、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、スルホ基、−NR1516、−OR17またはハロゲン原子を表し、R15、R16、R17はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ基を表し、それぞれの好ましい例は、R11、R12、R13、R14と同様である。
【0079】
11とR12、R13とR14及びR15とR16はそれぞれが互いに結合して環形成してもよく、環が形成される場合、それらが形成する環は5員環または6員環であることが好ましい。
【0080】
11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、一般式(IV)の化合物の分子内に、−SO3M、−CO2Mまたは−OHで表される基を少なくとも1つ含有するように選ばれる。ここでMは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはピリジニウムを表し、アルカリ金属、アルカリ土類金属のなかで特に好ましいのはNa及びKである。アンモニウム基としては、例えば、アンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、テトラブチルアンモニウム基が挙げられる。Mとしては最も好ましいものは、ナトリウム及びカリウムである。また、R11、R12、R13、R14、R15及びR16のうち、3個以上がアリール基となることはない。さらに一般式(IV)の化合物の分子内には、2つのトリアジン環の間に共役結合はなく、また−N=N−で表される基を含有しない。
【0081】
以下、本発明に係る一般式(IV)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0082】
【化21】

【0083】
【化22】

【0084】
【化23】

【0085】
【化24】

【0086】
一般式(IV)で表される化合物は、例えば、松井弘次著、有機合成化学協会誌、第17巻528頁(1959年刊)及び特許第2618748号を参考にして合成することができる。すなわち、塩化シアヌルにまずフェニレンジアミン誘導体またはナフタレンジアミン誘導体を反応させ、次いでアミン類を順次反応させる方法が好ましい。あるいはフェニレンジアミン誘導体またはナフタレンジアミン誘導体を第二段階または最後に反応させることも好ましい。この反応に用いる溶媒としては、例えば、水及びアルコール類、ケトン類、エーテル類、アミド類などの有機溶媒が挙げられるが、水及び水溶性の有機溶媒が好ましく、これらの混合溶媒でもよい。なかでも水とアセトンの混合溶媒系が最も好ましい。また、用いる塩基としてはトリエチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンなどの有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの無機塩基が挙げられる。これらのうち、無機塩基が好ましく、中でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。反応温度は−20℃〜150℃の範囲で可能であり、好ましくは−10℃〜100℃の範囲である。更に詳しく述べると第一段階は−10℃〜10℃が好ましく、第二段階は0℃〜40℃が好ましく、第三段階は40℃〜100℃が好ましい。
【0087】
次いで、本発明に係る前記一般式(V)で表される化合物について説明する。
【0088】
前記一般式(V)において、X1、X2、Y1及びY2は、それぞれアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、アミノ基、塩素原子、アルキル基、アリール基または前記一般式(V−a)で表される基を表す。X及びYはそれぞれNR3、OまたはSを表し、R3は水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基を表す。Lはフェニレン基、ナフチル基またはヘテロ環基を表す。
【0089】
また、前記一般式(V−a)において、R1、R2、R3は、それぞれアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、これらの各基は置換基を有するものを含む。
【0090】
1、R2及びR3がそれぞれアルキル基で表される場合、アルキル基としては炭素数1〜20が好ましく、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜4であり、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−オクチル基、スルホメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−スルホエチル基、2−メトキシエチル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基、2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル基、2−(2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ)エチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3,4−ジヒドロキシブチル基、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル基が挙げられる。
【0091】
1、R2及びR3がそれぞれアリール基で表される場合、アリール基としては炭素数6〜20が好ましく、より好ましくは6〜10、特に好ましくは6〜8であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、3,5−ジカルボキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−スルホフェニル基、4−スルホフェニル基、2、4−ジスルホフェニル基が挙げられる。
【0092】
1、R2及びR3がそれぞれヘテロ環基で表される場合、ヘテロ環基としては炭素数2〜20が好ましく、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数3〜8の5または6員の芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から1個の水素原子を取り除いた1価の基であり、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基が挙げられる。
【0093】
前記一般式(V)において、X1、X2、Y1及びY2がそれぞれヘテロ環基またはヘテロ環オキシ基の場合、そのヘテロ環部分としてはそれぞれ5または6員の芳香族もしくは非芳香族の含窒素ヘテロ環化合物から窒素原子に結合した1個の水素原子を取り除いた1価の5員環基または6員環基が好ましく、環の例としては、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環及びモルホリン環が挙げられる。
【0094】
アルキル基、アルコキシ基のアルキル部分、アリール基、アリールオキシ基のアリール部分としては、それぞれR1、R2、R3として示されたものが好ましく、同じものが例示される。
【0095】
X及びYはそれぞれ独立にNR3、OまたはSを表し、R3で表される置換基は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基が挙げられる)である。
【0096】
Lで表される基がフェニレン基またはナフチレン基としては、置換基を有するものを含み、炭素数6〜20が好ましく、より好ましくは6〜15、特に好ましくは6〜11のフェニレン基またはナフチレン基であり、例えば、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,2−フェニレン、1,5−ナフチレン、1,8−ナフチレン、4−カルボキシ−1,2−フェニレン、5−カルボキシ−1,3−フェニレン、3−スルホ−1,4−フェニレン、5−スルホ−1,3−フェニレン、2,5−ジメトキシ1,4−フェニレン、2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンが挙げられ、好ましくは1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,2−フェニレン、1,5−ナフチレン、5−カルボキシ−1,3−フェニレン、5−スルホ−1,3−フェニレンであり、さらに好ましくは1,4−フェニレン、1,3−フェニレンである。
【0097】
Lで表される基がヘテロ環基としては、好ましくは炭素数2〜20であり、より好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜8のヘテロ環基であり、置換基を有するものを含み、例えば、3,5−(1,2,4−トリアゾール)−ジイル基、3,5−イソチアゾールジイル基、2,6−ピリジンジイル基、2,6−ピラジンジイル基、2,6−ピリミジンジイル基、3,6−ピリダジンジイル基、1,4−フタラジンジイル基が挙げられる。
【0098】
一般式(V)で表される化合物がそれぞれカルボキシル基またはスルホ基で表される場合、これらはフリー体または塩の形で有っても良く、塩としてはアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のアンモニウム基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはピリジニウム等が挙げられる。このうち好ましい塩はアンモニウム、ナトリウム及びカリウムである。
【0099】
以下、本発明に係る一般式(V)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0100】
【化25】

【0101】
【化26】

【0102】
【化27】

【0103】
【化28】

【0104】
【化29】

【0105】
【化30】

【0106】
【化31】

【0107】
【化32】

【0108】
【化33】

【0109】
なお、本発明に係る一般式(V)で表される化合物が分子内に不斉炭素を複数個有する場合、同一構造に対して複数の立体異性体が存在するが、本発明は可能性のある全ての立体異性体を示しており、複数の立体異性のうち1つだけを使用することも、あるいはそのうちの数種を混合物として使用することもできる。
【0110】
本発明に係る一般式(I)〜(V)で表される各化合物は、1種のみで用いても良く、溶解性向上なとの観点で必要に応じて2種類以上を混合しても良い。トリアジニルスチルベン化合物と併用して用いることもでき、例えば、特開平6−329936号、特開平7−140625号、特開平10−104809号、特開2000−39690号の各公報に記載のトリアジニルスチルベン化合物を併用することもできる。市販の化合物としては、例えば、「染色ノート」第19版(色染社)P.165〜P.168に記載されている化合物を挙げることができる。
【0111】
また、本発明に係る一般式(I)〜一般式(V)で表される各化合物の添加量は、処理液として調製した際の濃度が、1L当たり0.02〜20ミリモルが好ましく、より好ましくは0.05〜10ミリモル、特に好ましくは0.1〜5ミリモルである。また、漂白剤パートには、p−トルエンスルフィン酸、m−カルボキシベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウムなどのアリールスルフィン酸などを含有しても良く、これら化合物は、スルフィン酸イオンに換算して約0.02〜1.0モル/L(調製した処理液の濃度として)の範囲で含有させることが好ましい。
【0112】
次に、漂白剤パートと組み合わせて本発明の漂白定着液濃縮組成物を構成する定着剤パートについて説明する。
【0113】
本発明に係る定着剤パートは、公知の定着薬品、すなわち、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムなどのチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムなどのチオシアン酸塩、エチレンビスチオグリコール酸、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールなどのチオエーテル化合物及びチオ尿素類などの水溶性のハロゲン化銀溶解剤から選択される1種あるいは2種以上を混合して含有させることができる。また、特開昭55−155354号公報に記載された定着剤と多量の沃化カリウムの如きハロゲン化物などの組み合わせからなる特殊な漂白定着液等も用いることができる。本発明においては、チオ硫酸塩特にチオ硫酸アンモニウム塩の使用が好ましい。
【0114】
本発明に係る定着剤パートの定着薬品の濃度は、漂白定着液を調製したときにその調合液1Lあたり0.3〜3モルとなるように設計されるのが好ましく、更に好ましくは0.5〜2.0モルの範囲に設計される。
【0115】
また、本発明に係る定着剤パートには、保恒剤として亜硫酸塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、など)、重亜硫酸塩(例えば、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、など)、メタ重亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸アンモニウム、など)等の亜硫酸イオン放出化合物を含有するのが好ましい。これらの化合物は亜硫酸イオンに換算して約0.02〜1.0モル/L(調製した処理液の濃度として)含有させることが好ましい。保恒剤としては、上記のほか、アスコルビン酸やカルボニル重亜硫酸付加物、あるいはカルボニル化合物等を添加しても良い。また、p−トルエンスルフィン酸、m−カルボキシベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウムなどのアリールスルフィン酸を含有しても良く、これらの化合物はスルフィン酸イオンに換算して約0.02〜1.0モル/L(調製した処理液の濃度として)含有させることが好ましい。
【0116】
本発明に係る定着剤パートにおいては、処理の迅速性を考慮するときにはアンモニウムイオンを使用することが好ましく、一方で、作業環境性に重点をおく場合は、実質上アンモニウムイオンを含まない方が好ましい。
【0117】
本発明に係る定着剤パートには、アルカリ剤として水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び酸性又はアルカリ性緩衝剤等を添加することもできる。
【0118】
その他、本発明に係る漂白剤パート及び定着剤パートには、必要に応じてその他の各種消泡剤、界面活性剤、ポリビニルピロリドン、又は蛍光増白剤等を含有させても良い。
【0119】
また、本発明に係る漂白剤パート及び定着剤パートは、均一液相である必要はなく、水で希釈することによって処理液を調製することができるものであれば、均一液相の組成物及び沈殿物や懸濁物を含んだスラリー状組成物のいずれであってもよい。均一液相の組成物である場合は、取り扱い性の点から好ましくは1.1以上の濃縮度であり、より好ましくは1.5〜2.5の濃縮度であって、その上限は、5.0以下であることが好ましい。スラリー組成物の場合は、その濃縮度は1.5以上、好ましくは1.5〜8.0、より好ましくは2.5〜5.0であり、その濃縮度の上限は10.0であることが好ましい。
【0120】
また、本発明の目的効果である保存容器への着色の抑制から、本発明の漂白定着液濃縮組成物を構成する漂白剤パートは、容器に充填され、かつその空隙率が3〜30%であることを1つの特徴とし、更に好ましくは5〜20%である。
【0121】
次に、本発明の漂白定着液濃縮組成物が充填される容器ついて説明する。
【0122】
本発明の漂白定着液濃縮組成物が充填される容器は、ある程度の酸素透過速度があることが、漂白定着液濃縮組成物の安定性から好ましい。酸素透過性を確保するには、必ずしも酸素透過性の容器材質を選択しなくても、例えば、容器口部の構造などで気密性を緩めてもよい。好ましい酸素透過性は、1日当たりの酸素透過量が4ml以上である。
【0123】
また、容器の材質としては、いかなる素材でもあっても良いが、プラスチック材料が好ましい。好ましく用いられるプラスチック材料としては、例えば、次に示す一般の包材が挙げられる。
【0124】
(一群)
A:ポリオレフィン系樹脂
B:ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂
C:エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂
D:ポリアミド系樹脂
E:セラミック
F:アクリロニトリル系樹脂
G:ポリエチレンテレフタレート系樹脂
H:ポリハロゲン化ビニリデン系樹脂
I:ポリハロゲン化ビニル系樹脂
ポリオレフィン系樹脂層に用いられる樹脂としては、ポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレン(以後、LDPEと略す)、中密度ポリエチレン(以後、MDPEと略す)及び高密度ポリエチレン(以後、HDPEと略す)のいずれも使用することができる。本発明に好ましく使用されるHDPEは、密度が0.941〜0.969のものである。また、LDPEは、高圧重合法で合成され、その密度は、0.910〜0.925である。
【0125】
本発明に用いられる容器としては、上記の密度範囲のHDPEを用いるのがよいが、さらにそのHDPEのメルトインデックス(ASTM D1238に規定された方法で、温度190°Cで押し出し圧力2.16kgで測定)が、0.3〜7.0g/10minであることが好ましく、より好ましくは0.3〜5.0g/10minである。この範囲にあると、本発明に係る漂白剤パートの容器として安定である。本発明における好ましい容器の厚みは、材質によって異なるが、好ましくは0.1〜2.0mm、とくに好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.4〜1.0mmである。
【0126】
ポリアミド系樹脂は、突き刺し強度や耐ピンホール性からナイロンが好ましく用いられ、厚みは3〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜30μmである。とりわけ延伸ナイロンが、本発明の目的効果がより発揮される観点から好ましい。
【0127】
セラミックは、酸化珪素を主体とする無機質であり、ポリエチレンとかポリエチレンフタレートに真空中でコートしても良い。これらの具体的なものは凸版印刷社製のGLタイプ(セラミック蒸着フィルム)等が挙げられる。
【0128】
また、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂としては、クラレ社製のクラレ、エバーフィルム(EF−XL,EF−F、EF−K)等が挙げられる。
【0129】
また、ポリハロゲン化ビニリデン系樹脂及びポリハロゲン化ビニル系樹脂のハロゲンとしては、塩素、フッ素、臭素等が挙げられる、具体的にはポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等の樹脂が挙げられる。
【0130】
しかしながら、本発明においては、環境適性の観点から焼却処理時に有害ガスの発生が無いものが好ましく、前記一群の中でも、A〜Gが好ましく用いられ、特に好ましくはA〜Fのものである。
【0131】
本発明において、容器の材質として用いられる各樹脂は、「プラスチックフィルム」(日刊工業新聞社発行、高橋儀作、昭和51年12月20日増補版)に記載のある中から本発明の条件を満足するものを用いることができる。
【0132】
これらの材料は、単一で成型して使用しても良いが、2種類以上の材料をフィルム状にして貼り会わせたいわゆる多層フィルムを使用しても良い。包材の形状も、瓶タイプ、ピロータイプ等あらゆる構成を取ることができる。
【0133】
前記多層フィルムの製造は、特に限定されないが、例えば、フィルムとフィルムを接着剤で貼り会わせる方法や、フィルムとフィルムを溶融した樹脂で貼り会わせる方法、2種類以上の樹脂をスリットから一緒に押し出すいわゆる共押し出しといわれる方法、その他の一般的に用いられるフィルム積層法などを単独又は組み合わせで用いられる。
【0134】
以下、漂白定着液濃縮組成物の漂白剤パートと定着剤パートを混合し、必要があれば水も加えて調薬する漂白定着処理液(使用液(タンク液)、補充液)について説明する。
【0135】
漂白定着処理液中の漂白剤濃度は0.08〜1.0モル/Lであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.7モル/Lであり、定着剤濃度は、0.3〜3モル/Lが好ましく、より好ましくは0.5〜2モル/Lである。またpHの領域は、3〜8が好ましく、更に好ましくは4〜8であり、高い漂白性能が得られるばかりか、ステイン等の発生もなく、優れた処理性能が得られる。上記濃度及びpHにするには、漂白定着濃縮組成物の各パートの溶解割合を調整することで達成できる。また、pHについては添加剤で調整しても良く、添加剤としてはアルカリである水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び硫酸、塩酸等の酸又は緩衝剤が挙げられる。
【0136】
次に、本発明の漂白定着液濃縮組成物を使用するカラー現像処理工程について説明する。
【0137】
本発明の漂白定着液濃縮組成物が適用されるカラー現像処理は、カラー現像工程、漂白定着工程、リンス、水洗又は安定化工程及び乾燥工程からなり、各工程間には中間水洗工程、中和工程などの補助的な工程を挿入することもできる。また、本発明の漂白定着液濃縮組成物は漂白定着工程で使用される。
【0138】
漂白定着工程の具体的構成例を以下に挙げる。
【0139】
1)漂白定着
2)漂白−漂白定着
3)漂白−水洗−漂白定着
4)漂白−漂白定着−定着
これらの工程は、必要により複数浴に仕切られて、カスケード方式を採用することもある。また、好ましい工程は1)である。
【0140】
本発明の漂白定着液濃縮組成物は、漂白定着使用液へ補充される補充液を顕著に低補充化することが可能であり、その量としてはハロゲン化銀カラー写真感光材料1m2あたり20〜100mlが好ましく、更に好ましくは35ml〜100mlである。またカラー現像工程の補充量も少ない方が廃液量の低減化の観点から好ましく、ハロゲン化銀カラー写真感光材料1m2当たり15〜200mlが通常であり、好ましくは15〜120ml、特に好ましくは30〜60mlである。リンス液(水洗水及び/又は安定化液)の補充量は液全体で、ハロゲン化銀カラー写真感光材料1m2当たり200ml以下が好ましく、更に好ましくは180ml以下である。
【0141】
発色現像時間(即ち、発色現像工程を行う時間)は迅速性の点から45秒以下が好ましく、より好ましくは30秒以下、さらに好ましくは26秒以下、6秒以上である。同様に、漂白定着時間(即ち、漂白定着を行う時間)も好ましくは45秒以下であり、より好ましくは30秒以下、さらに好ましくは25秒以下6秒以上である。
【0142】
リンス(水洗又は安定化)も同様に、リンス時間(即ち、リンス工程を行う時間)は、90秒以下が好ましく、より好ましくは30秒以下、さらに好ましくは30秒以下6秒以上である。
【0143】
なお、発色現像時間とは、ハロゲン化銀カラー写真感光材料が発色現像液中に入ってから、次の処理工程である漂白定着液に入るまでの時間をいう。例えば、自動現像機などで処理される場合には、ハロゲン化銀カラー写真感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、ハロゲン化銀カラー写真感光材料が発色現像液を離れ、次の処理工程である漂白定着液に向けて空気中を搬送されている時間(いわゆる、空中時間)との両者の合計を発色現像時間という。同様に、漂白定着時間とは、ハロゲン化銀カラー写真感光材料が漂白定着液中に入ってから次のリンス、水洗又は安定化浴に入るまでの時間をいう。また、リンス(水洗又は安定化)時間とは、ハロゲン化銀カラー写真感光材料がリンス液(水洗又は安定化液)中に入ってから乾燥工程に向けて液中にある時間(いわゆる、液中時間)を言う。
【0144】
発色現像工程、漂白定着工程、リンス(水洗又は安定化)工程の各処理液温度は、一般には30〜40℃であるが、迅速処理では38〜60℃が好ましく、より好ましくは40〜50℃である。
【0145】
乾燥工程は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の画像膜への水分の持込み量を減じる観点から、カラー現像処理のリンス(水洗又は安定化)工程を行った後、すぐにスクイズローラーや布などで水分を吸収することで乾燥を早めることも可能である。また、当然のことではあるが、温度を高くすることや吹きつけノズルの形状を変更し乾燥風を強くすることなどで乾燥を早めることが可能である。更に、特開平3−157650号公報に記載されているように、乾燥風のハロゲン化銀カラー写真感光材料への送風角度の調整や、排出風の除去方法によっても乾燥を早めることができる。
【0146】
リンス液(水洗又は安定化)の液量は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の特性(例えば、カプラー等使用素材による)や用途、温度、タンクの数(段数)、その他種々の条件によって広範囲に設定し得る。このうち、多段向流方式におけるリンス(水洗又は安定化)槽の数と水量の関係は、ジャーナル・オブ・ザ・ソサエティ・オブ・モーション・ピクチャー・アンド・テレヴィジョン・エンジエアズ(Journal of the Society of Motion Picture and Television Engineers)第64巻、p.248〜253(1955年5月号)に記載の方法で、求めることができる。通常、多段向流方式における段数は3〜15が好ましく、特に3〜10が好ましい。また、多段向流方式にすると、液量を大巾に減少できるが、タンク内での水の滞留時間増加により、バクテリアが繁殖し、生成した浮遊物が感光材料に付着する等の問題が生じるので、その解決策として、後述する防菌防黴剤を含有するリンス(水洗又は安定化)液が好ましい。
【0147】
次に、本発明の漂白定着液濃縮組成物とともに現像処理工程に使用される他の処理液及び構成成分について説明する。なお、前記した漂白定着液濃縮組成物も含めて、処理液濃縮組成物は使用に際して定められた比率で水などの溶媒と混合されて使用液(タンク液)又は補充液が調製されるが、本明細書においては、タンク液と補充液とを区別する格別の意味がない限り、両者を併せて処理液と表現している。
【0148】
はじめに、発色現像工程に用いられる発色現像処理液について説明する。
【0149】
本発明に係る発色現像処理液に用いられる発色現像主薬として好ましい例は、公知の芳香族第1級アミン発色現像主薬、特にp−フェニレンジアミン誘導体であり、代表例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
【0150】
1)N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン
2)4−アミノ−3−メチル−N,N−ジエチルアニリン
3)4−アミノ−N−(β−ヒドロキシエチル)−N−メチルアニリン
4)4−アミノ−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アニリン
5)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アニリン
6)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)アニリン
7)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(4−ヒドロキシブチル)アニリン
8)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン
9)4−アミノ−N,N−ジエチル−3−(β−ヒドロキシエチル)アニリン
10)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メトキシエチル)アニリン
11)4−アミノ−3−メチル−N−(β−エトキシエチル)−N−エチルアニリン
12)4−アミノ−3−メチル−N−(3−カルバモイルプロピル−N−n−プロピル−アニリン
13)4−アミノ−N−(4−カルバモイルブチル−N−n−プロピル−3−メチルアニリン
14)N−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3−ヒドロキシピロリジン
15)N−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3−(ヒドロキシメチル)ピロリジン
16)N−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3−ピロリジンカルボキサミド
上記p−フェニレンジアミン誘導体のうち、特に好ましくは、例示化合物5)、6)、7)、8)及び12)であり、その中でも例示化合物5)と8)が好ましい。また、これらのp−フェニレンジアミン誘導体は、硫酸塩、塩酸塩、亜硫酸塩、ナフタレンジスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの塩の形、或いは上述のように遊離塩基型でも良い。上記発色現像主薬の使用液中の濃度は、現像液1リットル当たり2ミリモル〜200ミリモル、好ましくは6ミリモル〜100ミリモル、より好ましくは10ミリモル〜40ミリモルとなるように加えられる。
【0151】
発色現像処理液には、有機保恒剤を添加してもよい。有機保恒剤とは、感光材料の処理液へ含ませることで、発色現像主薬の劣化速度を減じる有機化合物全般を指している。即ち、発色現像主薬の空気酸化などを防止する機能を有する有機化合物類であり、ヒドロキサム酸類、ヒドラジド類、フェノール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、糖類、モノアミン類、ジアミン類、ポリアミン類、四級アンモニウム塩類、ニトロキシラジカル類、アルコール類、オキシム類、ジアミド化合物類、縮環式アミン類などが特に有効な有機保恒剤である。これらは、特開昭63−4235号、同63−30845号、同63−21647号、同63−44655号、同63−53551号、同63−43140号、同63−56654号、同63−58346号、同63−43138号、同63−146041号、同63−44657号、同63−44656号、米国特許第3,615,503号、同2,494,903号、特開昭52−143020号、特公昭4830496号などの各公報又は明細書に開示されている。また、その他の有機保恒剤としては下記一般式(X)または(Y)で表される化合物を含有させることもできる。
【0152】
【化34】

【0153】
上記一般式(X)において、Lは置換してもよいアルキレン基を表し、Aはカルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ヒドロキシル基、アルキル置換してもよいアミノ基、アルキル置換してもよいアンモニオ基、アルキル置換してもよいカルバモイル基、アルキル置換してもよいスルファモイル基、アルキル置換してもよいスルホニル基、水素原子、アルコキシル基、または−O−(B−O)n−R′を表し、R、R′は各々水素原子、置換してもよいアルキル基を表す。Bは置換してもよいアルキレン基を表し、nは1〜4の整数を表す。
【0154】
上記一般式(X)において、Lは炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖の置換してもよいアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5が更に好ましい。具体的には、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン等の基が好ましい例として挙げられる。置換基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィン酸基、ヒドロキシル基、アルキル置換してもよいアンモニオ基を表し、カルボキシル基、スルホ基、ホスフィン基、ヒドロキシル基が好ましい例として挙げられる。Aはカルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィン酸基、ヒドロキシル基、又は、それぞれアルキル置換してもよいアミノ基、アンモニオ基、カルバモイル基又はスルファモイル基を表し、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、ホスホノ基、アルキル置換してもよいカルバモイル基が好ましい例として挙げられる。−L−Aの例として、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、スルホエチル基、スルホプロピル基、スルホブチル基、ホスホノメチル基、ホスホノエチル基、ヒドロキシエチル基を好ましい例として挙げることができ、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、スルホエチル基、スルホプロピル基、ホスホノメチル基、ホスホノエチル基が特に好ましい例として挙げることができる。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖の置換してもよいアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜5が好ましい。置換基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィン酸基、ヒドロキシル基、又は、それぞれアルキル置換してもよいアミノ基、アンモニオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシル基、または−O−(B−O)n−R′等が挙げられる。置換基は二つ以上あってもよい。Rとして水素原子、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、スルホエチル基、スルホプロピル基、スルホブチル基、ホスホノメチル基、ホスホノエチル基、ヒドロキシエチル基が好ましい例として挙げることができ、水素原子、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、スルホエチル基、スルホプロピル基、ホスホノメチル基、ホスホノエチル基が特に好ましい例として挙げることができる。LとRが連結して環を形成してもよい。
【0155】
以下に、一般式(X)で表される化合物のうち、その代表的な化合物例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0156】
【化35】

【0157】
【化36】

【0158】
【化37】

【0159】
次いで、一般式(Y)で表される化合物について説明する。
【0160】
【化38】

【0161】
上記一般式(Y)において、R、R′は各々炭素原子数1〜6の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素を表す。この場合、これらの炭化水素は、水酸基、カルボキシル基、スルホン基などで置換されていてもよい。また、カルボニル基等の2価の連結基を含んでもよい。nは4〜50,000の整数を表す。sは0または1を表す。sが1をとる場合、Aは
【0162】
【化39】

【0163】
を表す。R″はヒドロキシル基で置換されてもよい炭素数2〜8のアルキレン基またはアルカントリイル基を示し、アルキレン基の場合、qは0となり、アルカントリイル基の場合は1となる。qが1の場合、Bは一般式(Y)で表されるポリマーを示し、一般式(Y)は3次元構造となる。mは0〜30の整数を示す。
【0164】
sが0をとる一般式(Y)で表される化合物、例えば、ポリ(N−ヒドロキシアルキレンイミン)は既知の方法により容易に合成することができる。代表的な例としては、「ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティ」(J.Chem.Soc.,),75,1009(1899),J.Chem.Soc.,1963,3144等に記載の過酸化水素水を用いた2級アミンの酸化方法により、ポリ(アルキレンイミン)を酸化して合成する方法が挙げられる。この方法により合成された粗ポリ(N−ヒドロキシアルキレンイミン)は写真特性に影響を与える成分を含まないため、精製することなく、そのまま発色現像液の組成物として使用することができる。また、「マクロモレキュルズ」(Macromolecules),21,1995(1988)等に記載の反応と組み合わせて、ポリ(アルキレンイミン)の末端基である1級アミンを2級アミンとすることにより、更に性能の優れたポリ(N−ヒドロキシアルキレンイミン)を合成する方法も挙げられる。その他の方法としては、特開平3−259145号公報等に記載の方法を応用した、ヒドロキシルアミンとジハロゲン化アルキレンとの反応による合成方法等が挙げられる。以下、一般式(Y)で表される化合物のうち、その代表的な化合物例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0165】
【化40】

【0166】
【化41】

【0167】
また、その他の有機保恒剤として、特開昭57−44148号及び同57−53749号公報に記載の各種金属類、特開昭59−180588号公報に記載のサリチル酸類、トリエタノールアミンやトリイソパノールアミンのような特開昭54−3532号公報に記載のアルカノールアミン類、特開昭56−94349号公報に記載のポリエチレンイミン類、米国特許第3,746,544号明細書等に記載の芳香族ポリヒドロキシ化合物等を必要に応じて含有しても良い。上記有機保恒剤の発色現像組成物は1L当たり1×10-3モル以上、1×10-1モル以下で含有することが好ましい。また、発色現像液には、対象とするハロゲン化銀カラー写真感光材料の種類によって、少量の亜硫酸イオンを含んだり、あるいは実質的に含まない場合もあるが、本発明においては、亜硫酸イオンを少量含むことが好ましい。また、ヒドロキシルアミンを少量含有してもよい。ヒドロキシルアミン(通常、塩酸塩や硫酸塩の形で用いるが、以下塩の形は省略する)は、亜硫酸イオンと同様に現像液の保恒剤として作用するが、同時にヒドロキシルアミン自身の銀現像活性のために写真特性に影響することもあるので、この添加量も少量に留める必要がある。
【0168】
また、発色現像液は、ベンゼンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、m−カルボキシベンゼンスルフィン酸等のアリールスルフィン酸を含有しても良い。
【0169】
発色現像使用液のpHは9.0〜13.5が好ましく、その補充液のpHは9.0〜13.5が好ましい。このため、発色現像使用液及びその補充液には、そのpH値を維持できるようにアルカリ剤、緩衝剤及び必要によっては酸を含有させることもできる。
【0170】
上記pHを保持するための緩衝剤としては、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、グリシル塩、N,N−ジメチルグリシン塩、ロイシン塩、ノルロイシン塩、グアニン塩、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン塩、アラニン塩、アミノ酪酸塩、2−アミノ−2−メチル−1、3−プロバンジオール塩、バリン塩、プロリン塩、トリスヒドロキンアミノメタン塩、リシン塩などを用いることができる。特に炭酸塩、リン酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩は、pH9.0以上の高pH領域での緩衝能に優れ、発色現像液に添加しても写真性能面への悪影響(カブリなど)がなく、安価であるといった点から、特に好ましい緩衝剤である。
【0171】
上記緩衝剤の具体例としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、四ホウ酸カリウム、o−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(サリチル酸ナトリウム)、o−ヒドロキシ安息香酸カリウム、5−スルホ−2−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(5−スルホサリチル酸ナトリウム)、5−スルホ−2−ヒドロキシ安息香酸カリウム(5−スルホサリチル酸カリウム)などを挙げることができる。しかしながら本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0172】
上記緩衝剤の添加量は、発色現像使用液及びその補充液ともに1リットルあたり0.01〜2モルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5モルである。
【0173】
発色現像処理液には、その他の発色現像液成分として、例えばカルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤や、安定性向上剤でもある各種キレート剤を添加することもできる。例えば、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、N,N,N−トリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−テトラメチレンスルホン酸、トランスシロヘキサシジアミン四酢酸、1,2−ジアミノプロバン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミンオルトヒドロキシフェニル酢酸、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、N,N′−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N′−ジ酢酸、1,2−ジヒドロキシベンゼン−4,6−ジスルホン酸等が挙げられる。これらのキレート剤は必要に応じて2種以上併用しても良い。また、これらのキレート剤の量は、発色現像液中の金属イオンを封鎖するのに充分な量であれば良い。例えば、1L当り0.lg〜10g程度になるように添加する。
【0174】
発色現像処理液には、必要により任意の現像促進剤を添加することもできる。現像促進剤としては、特公昭37−16088号、同37−5987号、同38−7826号、同44−12380号、同45−9019号及び米国特許第3,813,247号等の各公報又は明細書に表されるネオエーテル系化合物、特開昭52−49829号及び同50−15554号公報に表されるp−フェニレンジアミン系化合物、特開昭50−137726号、特公昭44−30074号、特開昭56−156826号及び同52−43429号公報等に表される4級アンモニウム塩類、米国特許第2,494,903号、同3,128,182号、同4,230,796号、同3,253,919号、特公昭41−11431号、米国特許第2,482,546号、同2,596,926号及び同3,582,346号等の各公報又は明細書に記載のアミン系化合物、特公昭37−16088号、同42−25201号、米国特許第3,128,183号、特公昭41−11431号、同42−23883号及び米国特許第3,532,501号等の各公報又は明細書に表されるポリアルキレンオキサイド、その他1−フェニル−3−ビラゾリトン類又はイミダゾール類を必要に応じて添加することができる。それらの濃度は、発色現像液及びその補充液ともに1Lあたり0.001〜0.2mol、好ましくは0.01〜0.05molになるように組成物中の添加量が決められる。
【0175】
発色現像処理液には、必要に応じて、前記ハロゲンイオンのほかに、任意のカブリ防止剤を添加できる。有機カブリ防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、6−ニトロベンズイミダゾール、5−ニトロイソインダゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−ニトロベンゾトリアゾール、5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−チアゾリル−ベンズイミダゾール、2−チアゾリルメチル−ベンズイミダゾール、インダゾール、ヒドロキシアザインドリジン、アデニンの如き含窒素ヘテロ環化合物を代表例として挙げられる。
【0176】
発色現像処理液には、必要に応じてアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の各種界面活性剤を添加しても良い。それらの濃度は、発色現像液及びその補充液ともに1Lあたり0.0001〜0.2molが好ましく、より好ましくは0.001〜0.05molになるように添加量が決められる。
【0177】
発色現像処理液には、必要に応じて、蛍光増白剤を使用することができる。蛍光増白剤としては、ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンスルホン酸化合物が好ましい。ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンスルホン酸化合物としては、公知もしくは市販の物を用いることができる。公知のビス(トリアジニルアミノ)スチルベンスルホン酸化合物としては、例えば、特開平6−329936号、同7−140625号、同10−140849号などの公報に記載の化合物が好ましい。市販の化合物としては、例えば、「染色ノート」第9版(色染社),165〜168頁に記載されており、その中に記載されている化合物の中でも、Blankophor BSU liq.及びHakkolBRKが好ましい。
【0178】
また、その他のビス(トリアジニルアミノ)スチルベンスルホン酸化合物としては、特開2001−281823号公報の段落番号〔0038〕〜同〔0049〕に記載の化合物I−1〜I−48及び特開2001−281823号公報の段落番号〔0050〕〜同〔0052〕に記載の化合物II−1〜II−16を挙げることもできる。上記蛍光増白剤の添加量としては、発色現像使用液及びその補充液ともに1リットルあたり0.1ミリモル〜0.1モルが好ましい。
【0179】
ハロゲン化銀カラー写真感光材料がカラーネガフィルムである場合の発色現像使用液では、通常臭素イオンを0.2×10-2〜15.0×10-2モル/リットル含有させることが好ましく、より好ましくは0.5×10-2〜5.0×10-2モル/リットル含有することが多いが、臭素イオンは、通常現像の副生成物として該使用液中に放出されるので、補充液には添加不要のことが多い。また、沃素イオンを0.2×10-3〜15.0×10-3モル/リットル含有させることが好ましく、より好ましくは0.5×10-3〜5.0×10-3モル/リットル含有することが多いが、沃素イオンも通常現像の副生成物として該使用液に放出されることもあるので補充液には添加不要のことが多い。
【0180】
ハロゲン化銀カラー写真感光材料がカラーペーパーである場合の発色現像使用液では、通常、塩素イオンを3.5×10-2〜1.5×10-1モル/リットル含有することが多いが、塩素イオンは、通常現像の副生成物として該使用液に放出されるので補充液には添加不要のことが多い。
【0181】
次にリンス、水洗又は安定化工程の処理液について説明する。
【0182】
リンス、水洗又は安定化の処理液には、必要があれば下記のような添加剤を適宜用いることができる。例えば、特開昭57−8542号公報に記載のイソチアゾロン化合物やサイアベンダゾール類、同61−120145号公報に記載の塩素化イソシアヌール酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤、特開昭61−267761号公報に記載のベンゾトリアゾール、銅イオン、その他堀口博著「防菌防黴の化学」(1986年)三共出版、衛生技術会編、「微生物の減菌、殺菌、防黴技術」(1982年)工業技術会、日本防菌防黴学会編「防菌防黴剤事典」(1986年)に記載の殺菌剤、キレート剤(エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等)、緩衝剤(炭酸カリウム、硼酸塩、酢酸塩、リン酸塩等)、蛍光増白剤(トリアジニルスチルベン系化合物等)、酸化防止剤(アスコルビン酸塩等)、水溶性金属塩(亜鉛塩、マグネシウム塩等)、重亜硫酸塩又はメタ重亜硫酸塩等の亜硫酸塩である。亜硫酸塩は亜硫酸イオンを放出するものであれば、有機物、無機物いかなるものでも良いが、好ましくは無機塩である。好ましい具体的化合物としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸アンモニウム等が挙げられる。これらの塩は処理液中に少なくとも1×10-3モル/L以上になるような量が添加されることが好ましく、更に好ましくは5×10-3モル/L〜5×10-2モル/Lになるようなに添加されることである。また、pHは4.0〜10.0の範囲が好ましい。前記pHに調整するためのpH調整剤を含有する事も出来る。pH調整剤としては、一般に知られているアルカリ剤または酸剤のいかなるものでもよい。また、ハロゲン化銀カラー写真感光材料中に残存するマゼンタカプラーを不活性化して色素の褪色やステインの生成を防止するホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ピルビンアルデヒドなどのアルセヒド類、米国特許第4786583号に記載のメチロール化合物やヘキサメチレンテトラミン、特開平2−153348号に記載のヘキサヒドロトリアジン類、米国特許第4,921,779号に記載のホルムアルデヒド重亜硫酸付加物、欧州特許公開公報第504,609号、同第519,190号などに記載のアゾリルメチルアミン類などを添加してもよい。また、リンス又は安定化浴には、特開昭62−288838号公報に記載のカルシウム、マグネシウムを低減させる方法も用いることができる。
【0183】
以上で、本発明の漂白定着液濃縮組成物及びその漂白定着液濃縮組成物を用いる現像処理の方法について説明したが、次いで現像処理を行う現像処理装置について説明する。
【0184】
本発明に係る現像処理では、自動現像機を用いて行なうことが好ましい。
【0185】
以下、本発明に好ましく用いられる自動現像機について説明する。
【0186】
本発明に係る自動現像機は、搬送の線速度が100mm/秒以下であることが好ましく、より好ましくは27.8mm/秒〜80mm/秒、特に好ましくは27.8mm/秒〜50mm/秒である。
【0187】
カラーペーパー用自動現像機の搬送では、カラーペーパーを最終サイズにカットしてから現像処理を行う方式(シート型搬送方式)と、長巻で現像処理し、処理後に最終サイズにカットする方式(シネ型搬送方式)とがある。シネ型搬送方式は画像間に2mm程度の感光材料の無駄がでるため、シート型搬送方式が好ましい。
【0188】
本発明に係る処理液は、処理槽及び補充液槽で、液が空気と接触する面積(開口面積)はできるだけ小さい方が好ましい。例えば、開口面積(cm2)を槽中の液体槽(cm3)で割った値を開口率とすると、開口率は0.08(cm-1)以下が好ましく、更に好ましくは0.01(cm-1)以下である。
【0189】
また、空気と接触する面積を小さくする為に、処理槽及び補充槽では液面に浮かぶ固体または液体の空気非接触手段を設けることが好ましい。
【0190】
具体的には、プラスチック製の浮きなどを液面に浮かべる方法や、処理液と混ざらず、また化学反応を起こさない液体で覆うことが好ましい。液体の例としては、流動パラフィン、液状飽和炭化水素などが好ましい。本発明においては、迅速に処理を行うために、各処理液間をハロゲン化銀カラー写真感光材料が移動する際の空中時間、即ち、クロスオーバー時間は短い程良く、好ましくは10秒以下、より好ましくは7秒以下、更に好ましくは5秒以下である。また、クロスオーバー時間を短縮し、かつ処理液の混入を防止するために、混入防止板を取り付けたクロスオーバーラックの構造が好ましい。クロスオーバー時間を全くなくす方法として、特開2002−55422号記載のブレードによる液中搬送構造を用いることが特に好ましい。この方法では、処理槽間にブレードを設け、液漏れを防止し、感光材料は通過させることで、クロスオーバー時間をゼロにできる。このブレードによる液中搬送構造に、特開2002−339383号記載の液循環方向を下方向に流す液循環構造、循環系に多孔材質プリーツ状フィルターを設置することが特に好ましい。本発明に係る各処理液には、処理液の蒸発分に相当する水を供給する、いわゆる蒸発補正を行うことが好ましい。特に、発色現像液や漂白定着液において好ましい。
【0191】
このような水の補充を行う具体的方法としては、特に制限はないが、中でも特開平1−254959号や同1−254960号公報に記載の、漂白定着槽とは別のモニター水槽を設置し、モニター水槽内の水の蒸発量を求め、この水の蒸発量から漂白定着槽における水の蒸発量を算出し、この蒸発量に比例して漂白定着槽に水を補充する方法や液レベルセンサーやオーバーフローセンサーを用いた蒸発補正方法が好ましい。最も好ましい蒸発補正方法は、蒸発分に相当する水を予想して加えるもので、日本発明協会公開技報94−49925号1頁の右欄26行目〜同3頁左欄28行目に記載されているように自動現像機の運転時間、停止時間及び温調時間の情報に基づいて予め求められた係数により計算された加水量を添加するものである。また、蒸発量を減少させる工夫も必要であり、開口面積を少なくしたり、排気ファンの風量を調節することが要求される。例えば、カラー現像液の好ましい開口率は前記した通りであるが、他の処理液においても同様に開口面積を低下させることが好ましい。
【0192】
蒸発量を減少させる手段として、特開平6−110171号記載の「処理槽の上部空間の湿度を80%RH以上に保持する」ことが特に好ましく、上記公報の図1、2に記載の蒸発防止ラック及びローラー自動洗浄機構を有することが特に好ましい。温調時の結露防止のために排気ファンが通常取付けられているが、好ましい排気量としては毎分0.1m3〜1m3であり、特に好ましくは、0.2m3〜0.4m3である。ハロゲン化銀カラー写真感光材料の乾燥条件も処理液の蒸発に影響する。乾燥方式としては、セラミック温風ヒーターを用いるのが好ましく、供給風量としては毎分4m3〜20m3が好ましく、特に6m3〜10m3が好ましい。セラミック温風ヒーターの加熱防止用サーモスタットは、伝熱によって動作させる方式が好ましく、取付け位置は、放熱フィンや伝熱部を通じて風下または風上に取りつけるのが好ましい。乾燥温度は、処理される感光材料の含水量によって調整することが好ましく、APSフォーマット及び35mm幅のフィルムでは45〜55℃、ブローニーフィルムでは55〜65℃が最適である。乾燥時間は5秒〜2分が好ましく、特に5秒〜60秒がより好ましい。
【0193】
処理使用液の補充に際しては補充ポンプが用いられるが、ベローズ式の補充ポンプが好ましい。また、補充方式としては、直接処理槽に処理液濃縮組成物を添加するとともに、希釈率に見合った水を処理槽に直接加えても良く、また補充タンク内で処理液濃縮組成物を溶解・希釈して補充液として補充しても良く、また補充タンク内で自動調製装置を用いて処理液濃縮組成物を自動的に溶解・希釈して補充液として補充しても良い。また、補充精度を向上させる方法としては、ポンプ停止時の逆流を防止するため、補充ノズルへの送液チューブの径を細くしておくことが有効である。好ましい内径としては1〜8mm、特に好ましい内径として2〜5mmである。
【0194】
自動現像機には種々の部品材料が用いられ、好ましい材料を以下に記載する。
【0195】
処理槽及び温調槽等のタンク材質は、変性PPO(変性ポリフェニレンオキサイド)、変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)樹脂が好ましい。変性PPOは、日本ジーイープラスチック社製「ノリル」、変性PPEは、旭化成工業製「ザイロン」、三菱瓦斯化学製「ユピエース」等が挙げられる。また、これらの材質は、処理ラック、クロスオーバー等の処理液に接触する可能性のある部位に適している。
【0196】
処理部のローラー材質は、PVC(ポリ塩化ビニル)やPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、TPX(ポリメチルペンテン)等の樹脂が適している。また、これらの材質は、その他の処理液接触部にも使用することが可能である。尚、PE樹脂はブロー形成による補充タンクの材質にも好ましい。
【0197】
処理部、ギヤ、スプロケット、軸受などの材質には、PA(ポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、UHMPE(超高分子量ポリエチレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、LCP(全芳香族ポリエステル樹脂、液晶ポリマー)等の樹脂が適している。
【0198】
PA樹脂は、66ナイロンや12ナイロン、6ナイロン等のポリアミド樹脂で、ガラス繊維や炭素繊維等を含有したものは、処理液による膨潤に対して強く、使用可能である。
【0199】
また、MCナイロンの様な高分子量品やコンプレッション形成品は、繊維強化なしでも使用することが可能である。UHMPE樹脂は、未強化品が適しており、三井石油化学(株)製「リューブマ」、「ハイゼックス・ミリオン」、作新工業(株)製「ニューライト」、旭化成工業(株)製「サンファイン」等が適している。分子量は、好ましくは100万以上、より好ましくは100万〜500万である。PPS樹脂は、ガラス繊維や炭素繊維強化のものが好ましい。LCP樹脂は、ICIジャパン(株)製「ビクトレックス」、住友化学(株)製「エコノール」、日本石油(株)製「ザイダー」、ポリプラスチック(株)製「ベクトラ」などが含まれる。特に、搬送ベルトの材質としては、特開平4−151656号記載の超高強力ポリエチレン繊維やポリフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。スクイズローラー等の軟質材料としては、発泡塩化ビニル樹脂や発泡シリコン樹脂、発泡ウレタン樹脂が適している。発泡ウレタン樹脂としては東洋ポリマー(株)製「ルビセル」が挙げられる。配管の継手やアジテーションジェットパイプの継手、シール材などのゴム材質としては、EPDMゴム、シリコンゴム、バイトンゴムなどが好ましい。本発明に使用される処理液濃縮組成物は、各工程用の処理液濃縮組成物を個別に製品形態とするほかに、一組にまとめたカートリッジ形態で用いても良い。また、その場合はカートリッジを一括して装着できる装置を自動現像機が有していることが好ましい。
【0200】
つぎに、本発明の漂白定着液濃縮組成物が適用されるハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に「感光材料」という場合がある)について説明する。
【0201】
本発明の漂白定着濃縮組成物を用いた処理方法に適用できるハロゲン化銀カラー写真感光材料としては、支持体上にハロゲン化銀感光性層を有する多種多様の写真要素、例えば、カラーネガフィルム、カラーリバーサルフィルム、カラーペーパー、カラーディスプレイ、カラー映画フィルム等を挙げることができるが、好ましくはカラーペーパーである。
また、市販のカラーペーパーとしては、FUJICOLOR Crystal Archive ペーパー、FUJICOLOR SUPER FA ペーパー(以上、富士写真フィルム社製)、Kodak EKTACOLOR EDGE ペーパー、Kodak EKTACOLOR Royal ペーパー(以上、イーストマン・コダック社製)、AGFACOLOR TYPE ペーパー、AGFACOLOR Prestige ペーパー(以上、AGFA社製)、KONICACOLOR QA ペーパー(コニカミノルタフォトイメージング社製)(いずれも商品名)などの製品群が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0202】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0203】
実施例1
《漂白剤パートの調製:充填量1000ml》
アミノポリカルボン酸2鉄錯塩の種類と添加量、硝酸の添加量を表1に記載の組み合わせで混合及び水を加えて1Lとし、漂白剤パート1−1〜1−39を調製した。なお、pHは水を加える際に、表1に記載のpHとなるように、アンモニア水溶液及び過酸化水素を用いて調整した。
【0204】
次いで、各漂白剤パートを、表1に記載の空隙率とるように高密度ポリエチレン製のハードボトル容器に、充填、密封した。
【0205】
〔漂白剤パートの評価:容器着色耐性の評価〕
容器に充填した各漂白剤パートを、55℃で1.5ヶ月間保存させた後、漂白剤パートを容器から排出し、内部を50mlの水で2回洗浄した。次いで、この容器内壁の汚れの付着程度を目視観察し、下記の基準に従って容器着色耐性を評価した。
【0206】
◎:容器内壁の汚れ付着が全く認められない
○:僅かに容器内壁の汚れ付着が見られるが、良好な状態である
△:容器内壁の汚れの付着は見られるが、実用上許容範囲にある
×:容器内壁全面に激しい汚れの付着があり、商品価値として問題あるレベルである
以上により得られた評価結果を、表1に示す。
【0207】
なお、表1に略称で記載のアミノポリカルボン酸2鉄錯塩の詳細は、以下の通りである。
【0208】
化合物A:EDTA−Fe・NH4(エチレンジアミン四酢酸鉄アンモニウム)
化合物B:s,s−EDDS−Fe・NH4(エチレンジアミンジコハク酸鉄アンモニウム)
化合物C:DTPA−Fe・NH4(ジエチレントリアミン五酢酸鉄アンモニウム)
化合物D:PDTA−Fe・NH4(1,3−プロピレンジアミン四酢酸鉄アンモニウム)
上記記載の中で、s,s−とは光学異性体のs,s体を示す。
【0209】
【表1】

【0210】
表1に記載の結果より明らかなように、pH、鉄イオンと硝酸イオンとの含有モル比率及び空隙率が本発明で規定する要件を満す本発明の漂白剤パートは、比較例に対し、容器着色耐性に優れていることが分かる。また、本発明の組み合わせの中でも、空隙率が2〜20%とすることで、上記効果がより良く発揮されていることが分かる。
【0211】
実施例2
実施例1に記載の漂白剤パート1−4の調製において、表2に記載の各化合物を添加した以外は同様にして、漂白剤パート2−1〜2−16を調製した。
【0212】
上記調製した漂白剤含有パート2−1〜2−16と実施例1で調製した漂白剤パート1−4とを、65℃で1ヶ月間保存した後、実施例1と同様の方法で容器着色耐性の評価と、下記の方法に従って、容器膨張耐性の評価を行った。
【0213】
〔容器膨張耐性の評価〕
65℃で1ヶ月間保存した後の容器の膨らみ状態を目視観察し、下記の基準に従って容器膨張耐性の評価を行った。
【0214】
○:保存前後での容器の膨張が全く認められない
△:保存前に比較して、容器の膨張がやや認められるが、実用上許容されるレベルである
×:保存前に比較し、著しい容器膨張が認められ、液漏れが懸念されるレベルである
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0215】
【表2】

【0216】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する要件を満たす漂白剤パートに、更に本発明に係る一般式(I)〜(V)で表される化合物を添加することにより、高温保存時の容器着色耐性が更に向上すると共に、容器膨張耐性にも優れていることが分かる。
【0217】
実施例3
《漂白剤パートの調製及び容器着色耐性、容器膨張耐性の評価》
実施例1に記載の漂白剤パート1−4において、エチレンジアミン四酢酸第2鉄アンモニウム(EDTA−FeNH4)の添加量を表3記載の様に変化させた以外は同様にして、漂白剤パート3−1〜3−7を調製した後、実施例1に記載の方法と同様にして容器に充填した後、実施例1、2に記載の方法と同様にして容器着色耐性及び容器膨張耐性の評価を行った。得られた結果を表3に示す。
【0218】
《脱銀性、復色性の評価》
また、保存前の各漂白剤パートと、以下の添加剤より調製した定着剤パートとを1:1で混合し、水で1.5倍に希釈し、漂白定着補充液を調製した。なお、水で希釈する際に、pHが4.8となるようにpH調整剤(アンモニア水溶液又は硝酸)を添加して、pHを調整した。
【0219】
〔定着剤パート組成〕
亜硫酸アンモニウム 1.0mol
チオ硫酸アンモニム 1.7mol
コハク酸 45g
pH 5.7
水を加えて1Lとし、pHはアンモニア水溶液又は硝酸を用いて調整した。
【0220】
〔現像処理〕
次に、上記作製した各漂白定着補充液を用いて、以下の条件で現像処理を行った。
【0221】
現像のランニング処理は、コニカミノルタフォトイメージング社製のプリンタープロセッサーNPS−808GOLDを下記処理条件を満たすように改造して行った。また、漂白定着タンク液以外は、下記に示す各タンク液を処理タンクに満たし、コニカミノルタQAペーパー センチュリア フォー デジタル(コニカミノルタフォトイメージング社製)を連続で現像処理するとともに、各補充液を定量ポンプで補充することで行った。なお、漂白定着タンク液は、上記調製した各漂白定着補充液を70%に希釈し、pHをアンモニア水で6.0に調整したものを使用した。
【0222】
ランニング処理は、上記調製した各漂白定着補充液を使用し、漂白定着処理液中に補充された各漂白定着補充液の量が、該漂白定着タンクの液量(12.5L)の2倍(2ラウンド)になるまで、1日あたり0.22ラウンド相当の処理量で処理を行った。また、ランニング終了後、センチュリア フォー デジタルペーパーを常法に従いウエッジ露光し、この試料を処理して、後述の方法に従って、復色性及び脱銀性を評価した。
【0223】
(処理条件)
処理工程 処理温度 処理時間 タンク容量 補充量
(℃) (秒) (L) (ml/m2
発色現像 42.5 25 12.5 40
漂白定着 40.0 25 12.3 40
安定化−1 38.0 25 11.8
安定化−2 38.0 25 11.8
安定化−3 38.0 25 11.8 170
乾燥 60〜80 25
なお、クロスオーバータイムについては、全処理工程ともに3秒で行い、また、安定化工程は、安定化−3→安定化−2→安定化−1への多段向流方式とした。
【0224】
(処理液組成)
発色現像液及び安定化液のタンク液及び補充液は、下記のようにして調製した。
【0225】
〈発色現像液:1L当たり〉
タンク液 補充液
ポリエチレングリコール#4000 15.0g 15.0g
p−トルエンスルホン酸ナトリウム 10.0g 10.0g
塩化カリウム 4.0g −
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン硫酸 6.0g 12.0g
N,N−ビス(スルホエチル)ヒドロキシルアミンジナトリウム塩
4.0g 8.0g
炭酸カリウム 33.0g 33.0g
ジエチレントリアミン五酢酸 11.0g 11.0g
pH 10.20 12.40
水を加えて1Lとし、pHは水酸化カリウムまたは50%硫酸を用いて調整した。
【0226】
〈安定化液:1L当たり〉
タンク液=補充液
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸3ナトリウム 3.0g
エチレンジアミン四酢酸 1.5g
o−フェニルフェノール 0.1g
亜硫酸ナトリウム 0.5g
チノパールSFP(チバガイギー製) 0.6g
pH 7.5
水を加えて1Lとし、pHはアンモニア水溶液または50%硫酸を用いて調整した。
【0227】
〔処理特性の評価〕
(復色性の評価)
上記現像処理を行ったウエッジ試料の最大濃度部のシアン反射濃度DR1を、反射濃度計(Gretag Macbeth社製、X=rite310)を用いて測定した後、下記の再漂白液に35℃で3分間浸漬した後、水洗、乾燥し、再び上記反射濃度計を用いて最大濃度部のシアン濃度DR2を測定し、下式に従ってシアン濃度差ΔDRを求め、これを復色性の尺度とした。ΔDRの絶対値が小さいほど復色性に優れていることを示す。
【0228】
シアン濃度差ΔDR=(再漂白前のシアン濃度DR1)−(再漂白後のシアン濃度DR2
〈再漂白液組成〉
水 800ml
エチレンジアミン四酢酸第2鉄アンモニウム 0.075mol
pH 7.0
水を加えて1Lとし、pHをアンモニア又は50%硫酸を用いて調整した。
【0229】
〔脱銀性の評価〕
上記現像処理済みウエッジ試料の最大濃度部の残留銀量(μg/cm2)を、蛍光X線測定装置を用いて測定し、これを脱銀性の尺度とした。残留銀量が少ないほど脱銀性に優れていることを示す。
【0230】
以上により得られた各測定結果を、表3に示す。
【0231】
【表3】

【0232】
表3に記載の結果より明らかなように、EDTA−FeNH4(アミノポリカルボン酸第2鉄錯塩)の濃度が0.4mol/L〜1.0mol/Lの範囲にある漂白剤パートを用いて漂白定着補充液を調製し、現像処理した結果、低補充及び迅速処理条件でも良好な漂白性能(脱銀性、復色性)が得られ、かつ漂白剤パートの高温保存での容器着色耐性及び容器膨張耐性に優れていることが分かる。更に、漂白剤パートのEDTA−FeNH4の濃度が、0.5mol/L〜0.8mol/Lの範囲では、漂白性能、高温保存での容器着色耐性及び容器膨張耐性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漂白剤を含有する濃縮組成物パートと定着剤を含有する濃縮組成物パートとの2パートから構成されるハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物において、該漂白剤を含有する濃縮組成物パートのpHが2.0〜3.6であり、アミノポリカルボン酸第2鉄錯塩及び硝酸塩とを含有し、該第2鉄錯塩の鉄イオンと該硝酸塩の硝酸イオンとの含有モル比率が1:2〜1:6であって、かつ該漂白剤を含有する濃縮組成物パートが容器に収納され、収納後の該容器の空隙率が3〜30%であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物。
【請求項2】
前記空隙率が、5〜20%であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物。
【請求項3】
前記アミノポリカルボン酸第2鉄錯塩の濃度が、0.4モル/L以上、1.0モル/L以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物。
【請求項4】
前記漂白剤を含有する濃縮組成物パートが、下記一般式(I)〜(V)から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用の漂白定着液濃縮組成物。
【化1】

〔式中、A1及びA2はそれぞれアリール基又は芳香族ヘテロ環基を表す。ただし、A1がトリアジニル基の場合を除く。Xは2価の連結基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はピリジニウムを表す。ただし、上記の一般式(I)で表される分子内には、−N=N−及び−SHで表される基を含有しない。nは2〜4の整数を表し、n個のX−A2は同一でも異なっていてもよく、r及びsはそれぞれ0〜10の整数を表すが、r+sは2以上である。また、nが2であってA1が芳香族へテロ環基の場合、2個のXはそれぞれN(R1)、S又はO以外の2価の連結基を表し、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。〕
【化2】

〔式中、L1、L2はそれぞれ独立にアリール基、ヘテロ環基またはアルキル基を表し、少なくとも一方はアリール基またはヘテロ環基である。Y1はアミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、スルホ基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。ただし2つのトリアジン環の間に共役結合はない。〕
【化3】

〔式中、L3とL4はそれぞれ独立にアリール基、ヘテロ環基またはアルキル基を表し、少なくとも一方はアリール基またはヘテロ環基である。R3は水素原子またはアルキル基を表す。Y3はアミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、スルホ基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。ただし、2つのトリアジン環の間に共役結合はない。〕
【化4】

〔式中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Qは水素原子、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、スルホ基、−NR1516、−OR17またはハロゲン原子を表し、R15、R16、R17はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ基を表す。R11とR12、R13とR14、及びR15とR16はそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。ただし、分子内に−SO3M、−CO2Mまたは−OHで表される基を少なくとも1つ含有し、ここでMは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはピリジニウムを表す。また、R11、R12、R13、R14、R15及びR16のうち3個以上がアリール基となることはない。さらに、上記の一般式(IV)で表される分子内には、2つのトリアジン環の間に共役結合はなく、また−N=N−で表される基を含有しない。〕
【化5】

〔式中、X1、X2、Y1及びY2は、それぞれアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、アミノ基、塩素原子、アルキル基、アリール基または下記一般式(V−a)で表される基を表す。X及びYはそれぞれNR4、OまたはSを表し、R4は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。Lはフェニレン基、ナフチル基またはヘテロ環基を表す。〕
【化6】

〔式中、R1、R2及びR3は、それぞれアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。〕