説明

ハロゲン化銀カラー写真感光材料

【課題】 本発明に目的は、高クロマで鮮やかな色再現性及び優れた色弁別性を有し、かつプリント収率の高いハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することにある。
【解決手段】 支持体上に少なくとも1層の赤感光性層、緑感光性層及び青感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(1):2×{(LSR−NR)−(LSG−NG)}+{(GG−NG)−(GR−NR)}≧1.00

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料に関し、詳しくは、肌色再現性の改良によるプリント生産効率の向上、更にはそれにより作製したカラープリントの鮮やかさ(クロマ)及び色相弁別性を向上させたハロゲン化銀カラー写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ハロゲン化銀カラー感光材料(以降、単に感光材料ともいう)における画質、とりわけ色再現性に関する技術的な進歩はめざましいものがある。しかしながら、ユーザー等の色再現性に対する更なる要望に対しては、充分に満足できるレベルには至っていないのが現状である。
【0003】現在の撮影用感光材料における色再現の課題としては、一つは鮮やかな色再現を達成する為のクロマの向上という課題である。また一方は、感光材料が基本的には赤、緑及び青の三原色による色再現システムであり、これは人間の目の分光感度分布と異なり、その結果として赤〜朱色、紫色等の中間色が出にくい欠点を有しており、それらの色を忠実に再現するという色相弁別性の向上である。
【0004】色再現性改良に対しては、数多くの提案がなされており、その中でも色再現性に対し特に重要な影響を与える因子として、撮影用カラー感光材料の現像処理過程で発現するインターイメージ効果(以下、IIEともいう)及び分光感度分布特性が挙げられる。前記課題の一つであるクロマの向上のためには、インターイメージ効果を増大することが特に有効であり、色相弁別性の改良には、赤色に対する適切な分光感度分布の設計がとりわけ有効であることが知られている。
【0005】また一方、出来上がったカラープリントの鑑賞において「色の鮮やかさ」を主に支配する因子について市場分析及び官能評価を行った結果、色鮮やかなプリントとは、主要被写体である人物における鮮やかな肌色再現性と風景撮影でとりわけ高い比率を占める木々の緑色のクロマが高いことが、大きく支配していることが判明した。
【0006】しかしながら、本発明者らは、上記視点に沿ってクロマを高めた撮影用カラー感光材料により検証を試みたが、実際に仕上がったプリントでは、予測に反し期待したほどのクロマの改良がなされていないことが判った。これについて、考察を行った結果、これは用いられている自動カラープリンターの基本的な機構に起因していると推察した。すなわち、これらのカラープリンターでは、不特定多数の顧客のカラーネガフィルムにおいて高い収率でプリントを作製するために、ある仮定に基づいたプリント条件を設定し、それに基づき好ましい露光条件を算出し、常に安定した品質で確実にカラープリントが生産できるよう設定されていることが大きく影響している。
【0007】詳しくは、前記カラープリンターにおける基本的な原理として、カラーネガフィルムの透過濃度の平均値は赤、緑、青の各濃度の何れにも極端に偏っていないグレーであるという前提のもとでプリント条件が設定されている。この結果、例えば緑の多いシーンで撮られた人物被写体においては、特に緑過多を補正するため、緑の補色であるマゼンタ色が強められた仕上がりになる、いわゆるカラーフェリアを生じ、このためより鮮やかな色のカラープリントを作製する上での大きな障害であることが判った。また、上記のケースでは、併せて人物被写体の肌色が不自然なマゼンタ色の強いプリントとなり、本来の淡い赤色を主とするきれいな肌色を再現するには至らず、ユーザーの要求に充分答えられるものではなかった。一方、肌色の鮮やかさを単純に高めるだけでは、上記のカラーフェリアで述べたように補色であるシアン色が強まり、肌色再現性が実質的には向上しない割に、緑色においてシアン濃度が高まり、その結果として色が濁り鮮やかな緑の再現を達成することが困難となる。
【0008】以上述べたように、撮影用ハロゲン化銀カラー感光材料を用いたとき、従来の技術では、プリントの生産性と求められる鮮やかな色再現性とでは相矛盾する事項があり、高いプリント収率を維持しつつ、高いクロマを有する肌色、緑の鮮やかなプリント品質を達成することが難しかった。
【0009】一方、ストロボ光により撮影された肌色の再現が、自然光で撮影されたケースに比較し、肌色のクロマが低いカラープリントとなってしまうことが良く知られている。これは、ストロボ光を用いた撮影シーンの多くが、画面構成として顔の比率が多くなり、上述と同様な理由でカラープリンターが自動的に赤色の補正を高める、その結果として肌色のクロマ低下を招いている。
【0010】このように、肌色再現性に優れ、かつ緑色再現が鮮やかな高品質のカラープリントを得ると同時に、高いプリント生産性が求められている現状では、上記課題を両立した新たな技術の開発が切望されている。
【0011】更に、第2の課題であるの色相弁別性の高い、忠実な色再現を目指すとき、分光感度分布のコントロール、とりわけ赤感光性層における分光感度分布を短波長化することが、人間の視感度分布に近づけると言う点からも重要であり、それらについては、特公昭49−6207号、特開昭53−20926号及び同59−131937号等に開示されている。しかしながら、肌色は主として赤色の長波長側の反射光成分が多いために、肌色のクロマを高く設計すると肌色以外の赤色の色相の違いを区別することが難しくなってしまうという問題、すなわち赤色弁別性の低下を引き起こす。
【0012】以上のように、鮮やかでクロマの高い肌色再現性と赤の弁別性の両者を満たすことができず、上記課題を両立した新たな技術の開発が切望されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、その目的は、高クロマで鮮やかな色再現性及び優れた色弁別性を有し、かつプリント収率の高い撮影用のハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は、以下の構成により達成された。
【0015】1.支持体上に少なくとも1層の赤感光性層、緑感光性層及び青感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0016】式(1)
2×{(LSR−NR)−(LSG−NG)}+{(GG−NG)−(GR−NR)}≧1.00式中、LSG及びLSRは、マクベス社製カラーチェッカーチャートを4800°Kの光源下で撮影、現像したハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該カラーチェッカーチャートのライトスキンチャート部の緑濃度及び赤濃度を表し、GG及びGRは同じく緑チャート部の緑濃度及び赤濃度を表し、NG及びNRは同じく18%反射のグレーチャート部の緑濃度及び赤濃度を表す。
【0017】2.支持体上に少なくとも1層の赤感光性層、緑感光性層及び青感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、下記式(2)の関係を満たすことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0018】式(2)
2×{(LSR2−NR2)−(LSG2−NG2)}+{(GG2−NG2)−(GR2−NR2)}≧1.50式中、LSG2及びLSR2は、マクベス社製カラーチェッカーチャートを4800°Kの光源下で撮影、現像したハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該カラーチェッカーチャートのライトスキンチャート部の緑感度及び赤感度を表し、GG2及びGR2は同じく緑チャート部の緑感度及び赤感度を表し、NG2及びNR2は同じく18%反射のグレーチャート部の緑感度及び赤感度を表す。
【0019】3.支持体上に少なくとも1層の赤感光性層、緑感光性層及び青感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該赤感光性層の分光感度の極大波長(λmax)に対し、相対感度値で1.4低い長波側の波長が660nm以下で、かつ前記式(1)の関係を満たすことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0020】4.支持体上に少なくとも1層の赤感光性層、緑感光性層及び青感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該赤感光性層の分光感度の極大波長(λmax)に対し、相対感度値で1.4低い長波側の波長が660nm以下で、かつ前記式(2)の関係を満たすことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0021】5.前記式(1)におけるLSR、LSG、NR及びNGが、下記式(3)の関係を満たすことを特徴とする前記1又は3項記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0022】式(3)
(LSR−NR)−(LSG−NG)≧0.35式中、LSR、LSG、NR及びNGは、それぞれ式(1)のそれと同義である。
【0023】6.前記式(2)におけるLSR2、LSG2、NR2及びNG2が、下記式(4)の関係を満たすことを特徴とする前記2又は4項記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0024】式(4)
(LSR2−NR2)−(LSG2−NG2)≧0.45式中、LSR2、LSG2、NR2及びNG2は、それぞれ式(2)のそれと同義である。
【0025】本発明者は、前述のハロゲン化銀カラー写真感光材料の色再現性及びプリント生産性に関し鋭意検討を行った結果、前述の屋外でのポートレート撮影においては、特にカラーフェリアシーンが多く、それがプリント仕上がり品質に大きく影響を与えていること見出した。すなわち、人間の持っている視感度においては、緑色及び肌色の主成分である赤色に対し一定の比率での重み付があり、ネガ画像からポジ画像(カラーペーパー等)への変換における色再現ではその人間の視感度に相対した期待色の再現を求められてはいるが、実際にプリント処理する自動プリンターにおいては、緑色と赤色を等価に扱っているため、予想外のカラーフェリアが発生してしまうことが判明した。また、屋外撮影における光源の多くは色温度が高いブルーシアン光であり、そのままの色再現情報では、実際の仕上がりプリントでは肌色再現が、ユーザーの期待色とずれを生じることが判明した。
【0026】以上の情報を基に鋭意検討を行った結果、ユーザーが求める好ましい色再現性を達成するには、上記カラーフェリアや撮影時の色温度特性等の変動因子に対応し、肌色の赤色と緑色のクロマ比率及びそのクロマの和を、更には肌色の赤色比率をある一定の数値以上に設定することにより、上記課題が解決されることを新たに見出した。
【0027】以下に、本発明について詳述する。請求項1に係る発明においては、マクベス社製カラーチェッカーチャートを4800°Kの光源下で撮影、現像したハロゲン化銀カラー写真感光材料において、ライトスキンチャート撮影部、緑チャート撮影部及びグレーチャート撮影部における緑濃度及び赤濃度が前記式(1)の関係であることが特徴である。本発明で用いるカラーチェッカーチャートとは、Kollmorgen Corp.の1divisionであるマクベス社製の「マクベスカラーチェッカーチャート」を指し、具体的には18種のカラーチェッカーチャートと6種のグレーチャートよりなるものである。本発明においては、そのうちのライトスキン部(Light Skin)、緑部(Green)及びグレー部(Neutral 5 光学濃度0.23、反射率18%)の3種のカラーチェッカーチャートを撮影した感光材料の緑濃度及び赤濃度のデータを使用する。また、撮影は色温度が4800±50°Kの白色光源を用いる。該白色光源は、市販されている各種光源より適宜選択することができるが、演色評価指数として90以上の光源で、かつ輝線のない光源が好ましい。例えば、人工太陽照明(SOLAX セリック社製)等より選択することができるし、或いは安定した各種光源(白色光源、タングステン光源、キセノンランプ等)と市販の色温度変換フィルターを適宜組み合わせ所望の色温度を得ることもできる。
【0028】発色現像処理された感光材料で形成された各濃度を測定するには、通常のカラー感光材料用の濃度計であればいかなるものでも用いることができ、例えば、X−rite社製の濃度計X−rite310型を用いて、B、G、Rの各フィルターを介して、それぞれの濃度を測定することができる。
【0029】前記式(1)においては、1.00以上であることが好ましく、1.05〜1.30であることがより好ましく、特には1.10〜1.20であることが好ましい。
【0030】更に、請求項5の発明では、式(1)において式(3)で表される(LSR−NR)−(LSG−NG)項が0.35以上であることが特徴であり、より好ましくは0.35〜0.55、特に好ましくは0.40〜0.45である。この範囲に感光材料の特性を設定することにより肌色のクロマが高くなり、プリントの生産性の重要な因子であるネガ判定の精度が高くなり、プリント容易性が向上する。
【0031】請求項2に係る発明においては、マクベス社製カラーチェッカーチャートを4800°Kの光源下で撮影、現像したハロゲン化銀カラー写真感光材料において、ライトスキンチャート撮影部、緑チャート撮影部及びグレーチャート撮影部における緑感度及び赤感度が前記式(2)の関係であることが特徴である。本発明でいう緑感度及び赤感度とは、以下の方法により求めることができる。
【0032】感光材料を色温度4800°Kの白色光源を用い、ウエッジを介した露光及び発色現像処理を行い、得られた発色画像についてB、G、Rの光学濃度を測定し、濃度D−露光量LogEからなる特性曲線を作製する。ついで請求項1と同様の方法でライトスキン部(Light Skin)、緑部(Green)及びグレー部(Neutral 8 光学濃度0.23、反射率18%)の3種のカラーチェッカーチャートの緑濃度及び赤濃度を測定し、各々の濃度が上記白色露光で作製した特性曲線の濃度と一致する時の露光量の逆数を本発明で言う感度と定義する。前記式(2)においては、1.50以上が特徴であるが、1.55〜1.75が好ましく、特に好ましくは1.60〜1.65である。
【0033】更には、請求項6の発明では、式(2)において式(4)で表される(LSR2−NR2)−(LSG2−NG2)項が0.45以上であることが特徴であり、より好ましくは0.45〜0.50である。この範囲に感光材料の特性を設定することにより、肌色のクロマが高くなり、プリントの生産性の大きな因子であるネガ判定の精度が高くなり、プリント容易性が向上する。
【0034】本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料において、上記式(1)〜(4)の条件を満たすための手段としては、例えば、感光性層のハロゲン化銀の種類(晶癖、ハロゲン組成等)及び使用量、カプラーの種類及び使用量、抑制剤放出型カプラー(DIRカプラー)の種類及び添加量、マスキング特性のコントロール、フィルター染料の種類及び使用量等を適宜選択することにより、所望の特性を達成することができる。赤色及びマゼンタで構成されている肌色と緑色の関係を本発明に係る好ましい条件に設定するには、とりわけ緑感光性層と赤感光性層間の層間効果、いわゆるインターイメージ効果をDIRカプラーの選択及びマスキング用カラードカプラーの選択によりコントロールすることが最も有効である。DIRカプラー及びマスキング用カラードカプラーは、公知のものを用いることができ、例えば、DIRカプラーとしては、特開昭58−160954号、同63−37350号、特開平4−356042号、同5−61160号及び米国特許4,482,629号等に記載されているいわゆる脱色流出型DIRカプラー、あるいは特開昭57−151944号で定義され、例示された化合物及び特開昭58−205150号、同60−218644号、同60−221750号、同60−233650号、同61−11743号、特開平2−48655号、同3−18844号、同3−228048号、同4−211245号、同4−308842号及び米国特許4,782,012号等に例示された失活型DIR−カプラー等を挙げることができる。また、カラードカプラーとしては、EP456,257A1号に記載のイエローカラードシアンカプラー、該EPに記載のイエローカラードマゼンタカプラー、US4,833,069号に記載のマゼンタカラードシアンカプラー、US4,837,136号の(2)、WO92/11575のクレーム1の式(A)で表される無色のマスキングカプラー(特に36−45頁の例示化合物)。現像主薬酸化体と反応して写真的に有用な化合物残査を放出する化合物(カプラーを含む)としては、以下のものが挙げることができるが、もちろん本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】請求項3に係る発明においては、赤感光性層の分光感度の極大波長(λmax)に対し、相対感度値で1.4低い長波側の波長が660nm以下であることが1つの特徴である。上記赤感光性層の分光感度分布を所望の構成にするには、各種の手段を任意に用いることができるが、例えば、任意のハロゲン化銀に対し目的とする赤色波長領域に吸収スペクトルを有する増感色素でスペクトル増感せしめる手段、ハロゲン化銀のハロゲン組成やその分布を適正化し目的とする分光感度分布に増感をせしめる手段、あるいは感光材料中に適当な分光吸収剤を用いて目的とする分光感度分布に調整する手段等を挙げることができる。また、もちろんこれらの手段を適宜組み合わせても良い。
【0036】本発明でいう分光感度分布とは、感光材料を380〜750nmまで、数nm間隔で露光エネルギーを一定としたスペクトル光で露光を与え、各波長で最低濃度+1.0の濃度を与えるに要する露光量の逆数を各波長における感度と定義し、その感度を波長の関数としたものである。本発明では、赤感光性層の該分光感度分布において、その極大波長(λmax)の感度に対し、LogEで1.4低い感度を有する長波側の波長が660nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは650nm以下であり、特に好ましくは640nm以下である。本発明における赤感光性層の分光感度分布は、前述したように最低濃度+1.0の濃度を与える露光量の逆数を波長の関数として得たものであるが、最低濃度+1.0のみでなく、最低濃度+0.3及び最低濃度+0.7においても同様に、上記赤感光性層の分光感度分布特性を具備することが好ましい。
【0037】本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料で、上記赤感光性層の分光感度分布を所望の構成にするには、各種の手段を任意に用いることができるが、例えば、任意のハロゲン化銀に対し目的とする赤色波長領域に吸収スペクトルを有する増感色素でスペクトル増感せしめる手段、ハロゲン化銀のハロゲン組成やその分布を適正化し目的とする分光感度分布に増感をせしめる手段、あるいは感光材料中に適当な分光吸収剤を用いて目的とする分光感度分布に調整する手段等を挙げることができる。また、もちろんこれらの手段を適宜組み合わせても良い。
【0038】上記手段の中で増感色素によるスペクトル増感では、公知の分光増感色素を用いることができ、例えば、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素等が挙げられる。
【0039】本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料の乳剤としては、立方体、八面体、十四面体のような正常晶でも、平板状または柱状の双晶もしくは不規則な多表面をもつ双晶でもよい。粒子のハロゲン組成は、特に制限はなく、例えば、沃化銀、臭化銀、塩化銀、沃臭化銀、塩臭化銀、塩沃化銀及び塩沃臭化銀のいずれでもよいが、本発明においては沃臭化銀であることが特に好ましい。
【0040】本発明においては、平板状の双晶粒子(以下、平板粒子という)を用いることが好ましい。本発明に用いられる平板粒子は、主平面に平行な双晶面を通常は2枚有する。双晶面は透過型電子顕微鏡により観察することができ、具体的な方法は次の通りである。まず、含有される平板粒子が、支持体上にほぼ主平面が平行に配向するようにハロゲン化銀写真乳剤を塗布し、試料を作製する。これをダイヤモンドカッターを用いて切削し、厚さ0.1μm程度の薄切片を得る。この切片を透過型電子顕微鏡で観察することにより双晶面の存在を確認することができる。平板粒子における2枚の双晶面間距離は、上記の透過型電子顕微鏡を用いた切片の観察において、主平面に対しほぼ垂直に切断された断面を示す平板粒子を任意に1000個以上選び、主平面に平行な偶数枚の双晶面の内、最も距離の短い2枚の双晶面間距離をそれぞれの粒子について求め、加算平均することにより得られる。双晶面間距離は、核形成時の過飽和状態に影響を及ぼす因子、例えば、ゼラチン濃度、ゼラチン種、温度、沃素イオン濃度、pBr、pH、イオン供給速度、撹拌回転数等の諸因子の組み合わせにおいて適切に選択することにより制御することができる。一般に核形成を高過飽和状態で行なうほど、双晶面間距離を狭くすることができる。過飽和因子に関しての詳細は、例えば、特開昭63−92924号あるいは特開平1−213637号等の記述を参考にすることができる。双晶面間距離の平均は0.01〜0.05μmが好ましく、更に好ましくは0.013〜0.025μmである。
【0041】本発明に係る平板粒子の厚さは、前述の透過型電子顕微鏡を用いた切片の観察により、同様にしてそれぞれの粒子について厚さを求め、加算平均することにより得られる。平板粒子の厚さは0.05〜1.5μmが好ましく、更に好ましくは0.07〜0.50μmである。
【0042】本発明に係る平板粒子は、全投影面積の50%以上がアスペクト比(粒径/粒子厚さ)が5以上のものを言うが、好ましくは全投影面積の60%以上がアスペクト比7以上であり、更に好ましくは全投影面積の70%以上がアスペクト比9以上である。
【0043】本発明に係る平板粒子の粒径は、該ハロゲン化銀粒子の投影面積の円相当直径(該ハロゲン化銀粒子と同じ投影面積を有する円の直径)で示されるが、0.1〜5.0μmが好ましく、更に好ましくは0.5〜3.0μmである。粒径は、例えば、該粒子を電子顕微鏡で1万倍から7万倍に拡大して撮影し、そのプリント上の粒子径または投影時の面積を実測することによって得ることができる(測定粒子個数は、無差別に1000個以上あることとする)。
【0044】ここで言う平均粒径rmとは、粒径riを有する粒子の頻度niとri3との積ni×ri3が最大となる時の粒径riと定義する(有効数字3桁、最小桁数字は4捨5入する)。また、平均厚さdlは、厚さdiを有する粒子の頻度miとdi3が最大となるときの厚さdiと定義する(有効数字3桁、最小桁数字は4捨5入する)。
【0045】本発明に係る平板粒子は、単分散のハロゲン化銀乳剤からなることが好ましい。ここでいう単分散のハロゲン化銀乳剤とは、平均粒径rmと平均厚さdlを中心に各々±20%の粒径範囲内に含まれるハロゲン化銀質量が、全ハロゲン化銀粒子質量の60%以上であるものが好ましく、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。加えて厚さ分布として、厚さ分布(厚さの変動係数)=(標準偏差/平均厚さ)×100(%)によって分布の広さを定義したとき、各々25%以下のものであり、好ましくは20%以下、更に好ましくは16%以下のものである。ここで平均粒径と平均厚さおよび各々の標準偏差は、上記定義した粒径ri及びdiから求めるものとする。
【0046】本発明に係る平板粒子は、上記のように沃臭化銀を主として含有する乳剤であるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の組成のハロゲン化銀、例えば、塩化銀を含有させることができる。ハロゲン化銀粒子における沃化銀の分布状態は、各種の物理的測定法によって検知することができ、例えば、日本写真学会・1981年度年次大会講演要旨集に記載されているような、低温でのルミネッセンスの測定やEPMA法、X線回折法によって調べることができる。
【0047】本発明において、個々のハロゲン化銀粒子の沃化銀含有率及び平均沃化銀含有率は、EPMA法(Electron Probe Micro Analyzer法)を用いることにより求めることができる。
【0048】本発明に係る平板粒子は、沃化銀含有率がより均一になっていることが好ましい。EPMA法により粒子間の沃化銀含有率の分布を測定した時に、相対標準偏差が30%以下、更に20%以下であることが好ましい。
【0049】本発明に係る平板粒子の表面の沃化銀含有率は、1モル%以上であるが、好ましくは2〜20モル%であり、更に好ましくは3〜15モル%である。
【0050】平板粒子の表面とは、ハロゲン化銀粒子の最表面を含む粒子の最外層であって、粒子の最表面から5μmまでの深さをいう。平板粒子の表面のハロゲン組成はXPS法(X−ray Photoelectron Spectroscopy法:X線光電子分光法)により求めることができる。
【0051】本発明に係るハロゲン化銀粒子には転位線を有することが好ましく、その転移線は、例えば、J.F.Hamilton;Photo.Sci.Eng.,11(1967)57やT.Shiozawa;J.Soc.Phot.Sci.,Japan35(1972)213に記載の低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察できる。
【0052】本発明に係る平板粒子は、個数比率の30%以上が、その主平面の中心領域と外周領域の両方に転位線を有し、かつ外周領域の転位線の本数が1粒子当たり20本以上を有するものであるが、50%以上(個数比率)の平板粒子がその主平面の中心領域と外周領域の両方に転位線を有し、かつ外周領域の転位線の本数が1粒子当たり30本以上を有する事が好ましく、70%以上(個数比率)の平板粒子がその主平面の中心領域と外周領域の両方に転位線を有し、かつ外周領域の転位線の本数が1粒子当たり40本以上を有する事が更に好ましい。
【0053】ハロゲン化銀粒子への転位線の導入法は、例えば、沃化カリウムのような沃素イオンを含む水溶液と水溶性銀塩溶液をダブルジェットで添加する方法、もしくは沃化銀を含む微粒子乳剤を添加する方法、沃素イオンを含む溶液のみを添加する方法、特開平6−11781号に記載されているような沃素イオン放出剤を用いる方法等、公知の方法を使用して所望の位置で転位線の起源となる転位を形成することができる。これらの方法の中では、沃化銀を含む微粒子乳剤を添加する方法や沃素イオン放出剤を用いる方法が特に好ましい。沃素イオン放出剤を用いる場合は、p−ヨードアセトアミドベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−ヨードエタノール、2−ヨードアセトアミドなどを好ましく用いることができる。
【0054】本発明に係る平板粒子は、分散媒の存在下、即ち分散媒を含む溶液中で製造される。ここで、分散媒を含む水溶液とは、ゼラチンその他の親水性コロイドを構成し得る物質(バインダーとなり得る物質等)により保護コロイドが水溶液中に形成されているものをいい、好ましくはコロイド状の保護ゼラチンを含有する水溶液である。
【0055】本発明において上記保護コロイドとしてゼラチンを用いる場合は、ゼラチンは石灰処理されたものでも、酸を使用して処理されたものでもどちらでもよい。ゼラチンの製法の詳細は、アーサー・グアイス著、ザ・マクロモレキュラー・ケミストリー・オブ・ゼラチン(アカデミック・プレス、1964年発行)に記載がある。保護コロイドとして用いることができるゼラチン以外の親水性コロイドとしては、例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類等の如きセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体などの糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質がある。ゼラチンの場合は、パギー法においてゼリー強度200以上のものを用いることが好ましい。
【0056】本発明において、平板粒子は粒子を形成する過程及び/又は成長させる過程で、カドミウム塩、亜鉛塩、鉛塩、タリウム塩、鉄塩、ロジウム塩、イリジウム塩、インジウム塩(錯塩を含む)から選ばれる少なくとも1種を用いて金属イオンを添加し、粒子内部及び/又は粒子表面にこれらの金属元素を含有させることができる。
【0057】本発明に係る平板粒子の形成手段は、当該分野でよく知られている種々の方法を用いることができる。すなわち、シングル・ジェット法、コントロールド・ダブルジェット法、コントロールド・トリプルジェット法等を任意に組み合わせて使用することができるが、高度な単分散粒子を得るためには、ハロゲン化銀粒子の生成される液相中のpAgをハロゲン化銀粒子の成長速度に合わせてコントロールすることが重要である。pAg値としては7.0〜12の領域を使用し、好ましくは7.5〜11の領域を使用することができる。添加速度の決定にあたっては、特開昭54−48521号、同58−49938号に記載の技術を参考にできる。
【0058】本発明に係る平板粒子の製造時に、アンモニア、チオエーテル、チオ尿素等の公知のハロゲン化銀溶剤を存在させることもできるし、ハロゲン化銀溶剤を使用しなくても良い。
【0059】本発明に係る平板粒子はハロゲン化銀粒子の成長終了後に、不要な可溶性塩類を除去したものであってもよいし、あるいは含有させたままのものでも良い。また、特開昭60−138538号に記載の方法のように、ハロゲン化銀成長の任意の点で脱塩を行なう事も可能である。該塩類を除去する場合には、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)17643号II項に記載の方法に基づいて行なうことができる。さらに詳しくは、沈澱形成後、あるいは物理熟成後の乳剤から可溶性塩を除去するためには、ゼラチンをゲル化させて行なうヌーデル水洗法を用いても良く、また無機塩類、アニオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー(例えば、ポリスチレンスルホン酸)、あるいはゼラチン誘導体(例えば、アシル化ゼラチン、カルバモイル化ゼラチンなど)を利用した沈澱法(フロキュレーション)を用いても良い。具体的な例としては、特開平5−72658号に記載の方法を好ましく使用することができる。
【0060】本発明に係るハロゲン化銀乳剤は、前述のように写真業界において増感色素として知られている色素を用いて所望の波長域に光学的に増感できる。増感色素は単独で用いても良いが、2種類以上を組み合わせて用いても良い。増感色素と共にそれ自身分光増感作用をもたない色素、あるいは可視光を実質的に吸収しない化合物であって、増感色素の増感作用を強める強色増感剤を乳剤中に含有させても良い。
【0061】本発明に係る平板粒子には、カブリ防止剤、安定剤などを加えることができる。バインダーとしては、ゼラチンを用いるのが有利である。乳剤層、その他の親水性コロイド層は硬膜することができ、また可塑剤、水不溶性または可溶性合成ポリマーの分散物(ラテックス)を含有させることができる。
【0062】上記で記載した以外の本発明に係るハロゲン化銀乳剤としては、RD308119に記載されているものを用いることができる。以下に記載されている頁を列挙する。
【0063】
〔項目〕 〔RD308119〕
沃度組成 993 I−A項 製造方法 993 I−A項 及び994 E項 晶癖 正常晶 993 I−A項 晶癖 双晶 993 I−A項 エピタキシャル 993 I−A項 ハロゲン組成一様 993 I−B項 ハロゲン組成一様でない 993 I−B項 ハロゲンコンバージョン 994 I−C項 ハロゲン置換 994 I−C項 金属含有 994 I−D項 単分散 995 I−F項 溶媒添加 995 I−F項 潜像形成位置 表面 995 I−G項 適用感光材料ネガ 995 I−H項 乳剤を混合している 995 I−J項 脱塩 995 II−A項本発明においては、各ハロゲン化銀乳剤は、物理熟成、化学熟成及び分光増感を行ったものを使用する。この様な工程で使用される添加剤は、RD17643、RD18716及びRD308119に記載されている。以下に関連事項が記載されている頁を列挙する。
【0064】
〔項目〕 〔RD308119〕 〔RD17643〕 〔RD18716〕
化学増感剤 996 III−A項 23 648 分光増感剤 996 IV−A−A, B,C,D, 23〜24 648〜649 H,I,J項 強色増感剤 996 IV−A−E,J項 23〜24 648〜649 カブリ防止剤998 VI 24〜25 649 安定剤 998 VI 24〜25 649本発明に係る感光材料に用いられるカプラーとしては、発色現像主薬の酸化体とカップリング反応して波長域600〜750nmに分光吸収極大波長を有するシアンカプラー、波長域500〜600nmに分光吸収極大波長を有するマゼンタカプラー、波長域350〜500nmに分光吸収極大波長を有するイエローカプラーが挙げられる。また、シアンカプラー及びマゼンタカプラーで形成されるシアン及びマゼンタ色素の2次吸収を補正するシアン及びマゼンタカラードカプラーや鮮鋭性、粒状性などを改善するDIR化合物も好ましく用いることができる。
【0065】上記、シアンカプラー、マゼンタカプラー及びイエローカプラーは、公知の、各カプラーを用いることができる。例えば、シアンカプラーとしては、フェノール系、ナフトール系化合物が、マゼンタカプラーとしては、5−ピラゾロン系、インダゾロン系、ピラゾロトリアゾール系、ピラゾロアゾール系化合物が、イエローカプラーとしては、ケトメチレン系化合物などが挙げられる。
【0066】本発明においては、DIR化合物としては、放出された抑制剤が拡散性を示す拡散性抑制剤放出型DIR化合物が好ましく、例えば特開平4−114153号明細書のD−1〜D−34、米国特許4,234,678号、同3,227,554号、同3,647,291号、同3,958,993号、同4,419,886号、同3,933,500号、特開昭57−56837号、同51−13239号、同58−140740号、米国特許2,072,363号、同2,070,266号、RD1981年12月第21228号などに記載されているものを挙げることができる。
【0067】上記に記載した以外にも種々のカプラーを使用することができ、その具体例は下記RDに記載されている。以下に関連ある事項が記載されている頁を示す。
【0068】
〔項目〕 〔RD308119〕〔RD17643〕
イエローカプラー 1001VII−D項 VIIC〜G項 マゼンタカプラー 1001VII−D項 VIIC〜G項 シアンカプラー 1001VII−D項 VIIC〜G項 カラードカプラー 1002VII−G項 VIIG項 DIR化合物 1001VII−F項 VIIF項 BARカプラー 1002VII−F項 その他の有用残基放出 1001VII−F項 カプラー アルカリ可溶カプラー 1001VII−E項本発明に用いられるカプラー等は、RD308119XIVに記載されている分散法などにより、添加することができる。
【0069】本発明に使用できる公知の写真用添加剤も上記リサーチ・ディスクロージャーに記載されている。以下に関連のある事項が記載されている頁を示す。
【0070】
〔項目〕 〔RD308119〕〔RD17643〕〔RD18716〕
色濁り防止剤 1002 VII−I項 25 650 色素画像安定剤 1001 VII−J項 25 増白剤 998 V 24 紫外線吸収剤 1003 VIII−I項, XIII−C項 25〜26 光吸収剤 1003 VIII 25〜26 光散乱剤 1003 VIII フィルター染料 1003 VIII 25〜26 バインダー 1003 IX 26 651 スタチック防止剤 1006 XIII 27 650 硬膜剤 1004 X 26 651 可塑剤 1006 XII 27 650 潤滑剤 1006 XII 27 650 活性剤・塗布助剤 1005 XI 26〜27 650 マット剤 1007 XVI 現像剤(感光材料中に含有)
1001 XXB項本発明の感光材料には、前述RD308119VII−K項に記載されているフィルター層や中間層等の補助層を設けることができる。
【0071】本発明の感光材料は、前述RD308119VII−K項に記載されている順層、逆層、ユニット構成等の様々な層構成をとることができる。
【0072】本発明において、透明支持体としては各種のものが使用できる。使用できる支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム等を挙げることができる。
【0073】ポリエステル支持体としては、特に限定されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸とエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等のアルキレングリコール類との縮合ポリマー、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ジナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等、或いはこれらの共重合体が挙げられる。
【0074】特に、現像処理後の巻きぐせ回復性から特開平1−244446号公報、同1−291248号公報、同1−298350号公報、同2−89045号公報、同2−93641号公報、同2−181749号公報、同2−214852号公報及び同2−291135号公報等に記載されるような含水率の高いポリエステルを用いることが好ましい。これらのポリエステルは、極性基、その他の置換基を有していてもよい。本発明において、支持体としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0075】上記ポリエステルは、フィルム支持体の機械的強度、寸法安定性などを満足させるために面積比で4〜16倍の範囲で延伸を行うことが好ましい。又、製膜後、特開昭51−16358号に記載されているような熱処理(アニール処理)を行うことが好ましい。
【0076】支持体にはマット剤、帯電防止剤、滑剤、界面活性剤、安定剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、導電性物質、粘着性付与剤、軟化剤、流動性付与剤、増粘剤、酸化防止剤等を添加することができる。
【0077】支持体は、最小濃度部の色味のニュートラル化、写真構成層を塗設したフィルムに光がエッジから入射した時に起こるライトパイピング現象(ふちかぶり)の防止、ハレーション防止等の目的で染料を含有させることができる。
【0078】染料の種類は特に限定されないが、支持体としてポリエステルフィルムを用いる場合、製膜工程上、耐熱性に優れたものが好ましく、例えば、アンスラキノン系化学染料等が挙げられる。また、色調としては、ライトパイピング防止を目的とする場合、一般の感光材料に見られるようにグレー染色することが好ましい。染料は、1種類もしくは2種類以上の染料を混合して用いてもよい。
【0079】本発明のハロゲン化銀カラー感光材料を現像処理するには、例えばT.H.ジェームズ著、セオリイ オブ ザ ホトグラフィック プロセス第4版(TheTheory of The Photografic Process Forth Edition)第291頁〜第334頁及びジャーナル オブ ザアメリカン ケミカル ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)第73巻、第3,100頁(1951)に記載されている、それ自体公知の現像剤を使用することができ、また、前述のRD17643 28〜29頁,RD18716 615頁及びRD308119XIXに記載されている通常の方法によって、現像処理することができる。
【0080】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0081】実施例1《ハロゲン化銀カラー写真感光材料の作製》下引層を施した厚み120μmのトリアセチルセルロースフィルム支持体上に、下記に示す組成の各層を順次支持体側から形成してハロゲン化銀カラー写真感光材料であるISO感度で400の試料101を作製した。なお、各素材の添加量は1m2当たりのグラム数で表す。ただし、ハロゲン化銀とコロイド銀は金属銀の量に換算し、増感色素は銀1モル当たりのモル数で示した。
【0082】
第1層:ハレーション防止層 黒色コロイド銀 0.16 紫外線吸収剤(UV−1) 0.3 カラードマゼンタカプラー(CM−1) 0.123 カラードシアンカプラー(CC−1) 0.044 高沸点有機溶媒(OIL−1) 0.167 ゼラチン 1.33 第2層:中間層 汚染防止剤(AS−1) 0.16 高沸点有機溶媒(OIL−1) 0.20 ゼラチン 0.69 第3層:低感度赤感色性層 沃臭化銀乳剤a 0.12 沃臭化銀乳剤b 0.29 増感色素(SD−1) 2.37×10-5 増感色素(SD−2) 1.2×10-4 増感色素(SD−3) 2.4×10-4 増感色素(SD−4) 2.4×10-6 シアンカプラー(C−1) 0.32 カラードシアンカプラー(CC−1) 0.038 高沸点有機溶媒(OIL−2) 0.28 汚染防止剤(AS−2) 0.002 ゼラチン 0.73 第4層:中感度赤感色性層 沃臭化銀乳剤c 0.10 沃臭化銀乳剤d 0.86 増感色素(SD−1) 4.5×10-5 増感色素(SD−2) 2.3×10-4 増感色素(SD−3) 4.5×10-4 シアンカプラー(C−2) 0.52 カラードシアンカプラー(CC−1) 0.06 DIR化合物(DI−1) 0.047 高沸点有機溶媒(OIL−2) 0.46 汚染防止剤(AS−2) 0.004 ゼラチン 1.30 第5層:高感度赤感色性層 沃臭化銀乳剤c 0.13 沃臭化銀乳剤d 1.18 増感色素(SD−1) 3.0×10-5 増感色素(SD−2) 1.5×10-4 増感色素(SD−3) 3.0×10-4 シアンカプラー(C−2) 0.047 シアンカプラー(C−3) 0.09 カラードシアンカプラー(CC−1) 0.036 DIR化合物(DI−1) 0.024 高沸点有機溶媒(OIL−2) 0.27 汚染防止剤(AS−2) 0.006 ゼラチン 1.28 第6層:中間層 高沸点有機溶媒(OIL−1) 0.29 汚染防止剤(AS−1) 0.23 ゼラチン 1.00 第7層:低感度緑感色性層 沃臭化銀乳剤a 0.19 沃臭化銀乳剤b 0.062 増感色素(SD−4) 3.6×10-4 増感色素(SD−5) 3.6×10-4 マゼンタカプラー(M−1) 0.18 カラードマゼンタカプラー(CM−1) 0.033 高沸点有機溶媒(OIL−1) 0.22 汚染防止剤(AS−2) 0.002 汚染防止剤(AS−3) 0.05 ゼラチン 0.61 第8層:中間層 高沸点有機溶媒(OIL−1) 0.26 汚染防止剤(AS−1) 0.054 ゼラチン 0.80 第9層:中感度緑感色性層 沃臭化銀乳剤e 0.54 沃臭化銀乳剤f 0.54 増感色素(SD−6) 3.7×10-4 増感色素(SD−7) 7.4×10-5 増感色素(SD−8) 5.0×10-5 マゼンタカプラー(M−1) 0.17 マゼンタカプラー(M−2) 0.33 カラードマゼンタカプラー(CM−1) 0.024 カラードマゼンタカプラー(CM−2) 0.029 DIR化合物(DI−2) 0.024 DIR化合物(DI−3) 0.005 高沸点有機溶媒(OIL−1) 0.73 汚染防止剤(AS−2) 0.003 汚染防止剤(AS−3) 0.035 ゼラチン 1.80 第10層:高感度緑感色性層 沃臭化銀乳剤f 1.19 増感色素(SD−6) 4.0×10-4 増感色素(SD−7) 8.0×10-5 増感色素(SD−8) 5.0×10-5 マゼンタカプラー(M−1) 0.065 カラードマゼンタカプラー(CM−1) 0.022 カラードマゼンタカプラー(CM−2) 0.026 DIR化合物(DI−2) 0.003 DIR化合物(DI−3) 0.003 高沸点有機溶媒(OIL−1) 0.19 高沸点有機溶媒(OIL−2) 0.43 汚染防止剤(AS−2) 0.014 汚染防止剤(AS−3) 0.017 ゼラチン 1.23 第11層:イエローフィルター層 黄色コロイド銀 0.05 高沸点有機溶媒(OIL−1) 0.18 汚染防止剤(AS−1) 0.16 ゼラチン 1.00 第12層:低感度青感色性層 沃臭化銀乳剤a 0.08 沃臭化銀乳剤b 0.22 増感色素(SD−9) 6.5×10-4 増感色素(SD−10) 2.5×10-4 イエローカプラー(Y−1) 0.77 DIR化合物(DI−4) 0.017 高沸点有機溶媒(OIL−1) 0.31 汚染防止剤(AS−2) 0.002 ゼラチン 1.29 第13層:高感度青感色性層 沃臭化銀乳剤h 0.41 沃臭化銀乳剤i 0.61 増感色素(SD−9) 4.4×10-4 増感色素(SD−10) 1.5×10-4 イエローカプラー(Y−1) 0.23 高沸点有機溶媒(OIL−1) 0.10 汚染防止剤(AS−2) 0.004 ゼラチン 1.20 第14層:第1保護層 沃臭化銀乳剤j 0.30 紫外線吸収剤(UV−1) 0.055 紫外線吸収剤(UV−2) 0.110 高沸点有機溶媒(OIL−2) 0.30 ゼラチン 1.32 第15層:第2保護層 ポリマー(PM−1) 0.15 ポリマー(PM−2) 0.04 滑り剤(WAX−1) 0.02 ゼラチン 0.55上記で用いた沃臭化銀乳剤の特徴を表1に示す。なお、表1中の平均粒径とは、同体積の立方体の一辺長を指す。
【0083】
【表1】


【0084】本発明で用いた好ましいハロゲン化銀乳剤として、沃臭化銀乳剤d及びfの作製例を以下に示す。又、沃臭化銀乳剤jについては、特開平1−183417号、同1−183644号、同1−183645号、同2−166442号に記載の方法を参考に調製した。
【0085】まず、種晶乳剤1を調製した。
(種晶乳剤1の調製)特公昭58−58288号、同58−58289号に記載の混合撹拌機を用いて、35℃に調整した下記溶液A1に硝酸銀水溶液(1.161モル)と、臭化カリウムと沃化カリウムの混合水溶液(沃化カリウム2モル%)を、銀電位(飽和銀−塩化銀電極を比較電極として銀イオン選択電極で測定)を0mVに保ちながら同時混合法により2分を要して添加し、核形成を行った。続いて、60分の時間を要して液温を60℃に上昇させ、炭酸ナトリウム水溶液でpHを5.0に調整した後、硝酸銀水溶液(5.902モル)と、臭化カリウムと沃化カリウムの混合水溶液(沃化カリウム2モル%)を、銀電位を9mVに保ちながら同時混合法により、42分を要して添加した。添加終了後40℃に降温しながら、通常のフロキュレーション法を用いて直ちに脱塩、水洗を行った。
【0086】得られた種晶乳剤1は、平均球換算直径が0.24μm、平均アスペクト比が4.8、ハロゲン化銀粒子の全投影面積の90%以上が最大辺長比率(各粒子の最大辺長と最小辺長との比)が1.0〜2.0の六角状の平板状粒子から成る乳剤であった。この乳剤を種晶乳剤1と称する。
【0087】
(溶液A1)
オセインゼラチン 24.2g 臭化カリウム 10.8g 界面活性剤(EO−1)の10%エタノール溶液 6.78ml 10%硝酸 114ml 水 9657ml(沃化銀微粒子乳剤SMC−1の調製)0.06モルの沃化カリウムを含む6.0質量%のゼラチン水溶液5リットルを激しく撹拌しながら、7.06モルの硝酸銀水溶液と7.06モルの沃化カリウム水溶液、各々2リットルを10分を要して添加した。この間pHは硝酸を用いて2.0に、温度は40℃に制御した。粒子調製後に、炭酸ナトリウム水溶液を用いてpHを5.0に調整した。得られた沃化銀微粒子の平均粒径は0.05μmであった。この乳剤をSMC−1とする。
【0088】(沃臭化銀乳剤dの調製)0.178モル相当の種晶乳剤1と界面活性剤(SU−1)の10%エタノール溶液0.5mlを含む、4.5質量%の不活性ゼラチン水溶液700mlを75℃に保ち、pAgを8.4、pHを5.0に調整した後、激しく撹拌しながら同時混合法により以下の手順で粒子形成を行った。
【0089】1)3.093モルの硝酸銀水溶液と0.287モルのSMC−1及び臭化カリウム水溶液を、pAgを8.4、pHを5.0に保ちながら添加した。
【0090】2)続いて溶液を60℃に降温し、pAgを9.8に調整した。その後、0.071モルのSMC−1を添加し、2分間熟成を行った(転位線の導入)。
【0091】3)0.959モルの硝酸銀水溶液と0.03モルのSMC−1及び臭化カリウム水溶液を、pAgを9.8、pHを5.0に保ちながら添加した。
【0092】尚、粒子形成を通して、各溶液は、新核の生成や粒子間のオストワルド熟成が進まないように最適な速度で添加した。
【0093】上記添加終了後に、40℃で通常のフロキュレーション法を用いて水洗処理を施した後、ゼラチンを加えて再分散し、pAgを8.1、pHを5.8に調整した。
【0094】以上のようにして得られた沃臭化銀乳剤dは、粒径(同体積の立方体1辺長)0.75μm、平均アスペクト比5.0、粒子内部から沃化銀含有率2/8.5/X/3モル%(Xは転位線導入位置)のハロゲン組成を有する平板状粒子から成る乳剤であった。この乳剤を電子顕微鏡で観察したところ、乳剤中の粒子の全投影面積の60%以上の粒子にフリンジ部と粒子内部双方に5本以上の転位線が観察された。表面沃化銀含有率は6.7モル%であった。
【0095】(沃臭化銀乳剤fの調製)沃臭化銀乳剤dの調製において、1)の工程でpAgを8.8、かつ添加する硝酸銀量を2.077モル、SMC−1の量を0.218モルとし、3)の工程で添加する硝酸銀量を0.91モル、SMC−1の量を0.079モルとした以外は沃臭化銀乳剤dと全く同様にして沃臭化銀乳剤fを調製した。
【0096】得られた乳剤は、粒径(同体積の立方体1辺長)0.65μm、平均アスペクト比6.5、粒子内部から沃化銀含有率2/9.5/X/8モル%(Xは転位線導入位置)のハロゲン組成を有する平板状粒子から成る乳剤であった。この乳剤を電子顕微鏡で観察したところ、乳剤中の粒子の全投影面積の60%以上の粒子にフリンジ部と粒子内部双方に5本以上の転位線が観察された。表面沃化銀含有率は、11.9モル%であった。
【0097】上記各乳剤に前述の増感色素を添加、熟成した後、トリフェニルホスフィンセレナイド、チオ硫酸ナトリウム、塩化金酸、チオシアン酸カリウムを添加し、カブリ−感度関係が最適になるように化学増感を施した。
【0098】沃臭化銀乳剤a、b、c、e、h、iについても、上記沃臭化銀乳剤d、fに準じ分光増感、化学増感を施した。
【0099】尚、上記組成物の他に、塗布助剤SU−1、SU−2、SU−3、分散助剤SU−4、粘度調整剤V−1、染料AI−1、AI−2、AI−3、安定剤ST−1、ST−2、カブリ防止剤AF−1(ポリビニルピロリドン、重量平均分子量:10,000)、AF−2(ポリビニルピロリドン、重量平均分子量:100,000)、抑制剤AF−3、AF−4、AF−5、硬膜剤H−1、H−2及び防腐剤Ase−1を添加した。
【0100】上記試料に用いた化合物の構造を以下に示す。
SU−1:C817SO2N(C37)CH2COOKSU−2:C817SO2NH(CH23+(CH33Br-SU−3:スルホ琥珀酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウムSU−4:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムST−1:4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンST−2:アデニンAF−3:1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールAF−4:1−(4−カルボキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾールAF−5:1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールH−1:〔(CH2=CHSO2CH23CCH2SO2CH2CH22NCH2CH2SO3KH−2:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウムOIL−1:トリクレジルホスフェートOIL−2:ジ(2−エチルヘキシル)フタレートAS−1:2,5−ビス(1,1−ジメチル−4−ヘキシルオキシカルボニルブチル)ハイドロキノンAS−2:没食子酸ドデシルAS−3:1,4−ビス(2−テトラデシルオキシカルボニルエチル)ピペラジン
【0101】
【化1】


【0102】
【化2】


【0103】
【化3】


【0104】
【化4】


【0105】
【化5】


【0106】
【化6】


【0107】
【化7】


【0108】
【化8】


【0109】次いで、試料101の各感光性層におけるそれぞれのハロゲン化銀乳剤の使用量及び平均粒径、カプラー、カラードカプラーの使用量及びDIR化合物の量を当業界で周知の方法により適宜調整して、本発明に係る式(1)における濃度1{(LSR−NR)−(LSG−NG)}と濃度2{(GG−NG)−(GR−NR)}が表2に示す値となるよう変更した以外は同様にして試料102〜109を作製した。
【0110】《色再現性及びプリント生産性の評価》以上により作製した各試料について、以下の評価を行った。
【0111】(撮影用試料の作製)上記作製したハロゲン化銀カラー写真感光材料である試料101〜109を35mmサイズ、24EXの規格に断裁し、既存のパトローネに収納し、それを焦点距離35mm、F:2のレンズを装備したニコン社製一眼レフカメラF4に装填した。
【0112】(式1の濃度1値及び濃度2値の測定)各試料を装填したカメラを用いて、色温度が4800°Kの人工光源下で24段からなるマクベス社製カラーチェッカーチャートを基準露光条件で撮影した後、下記に示す発色現像処理を行った。次いで得られたカラーネガ画像のうち、カラーチェッカーチャートのライトスキン部、緑チャート部及び18%反射率のグレーチャート部に相当する箇所の緑透過濃度(LSG、GG及びNG)と赤透過濃度(LSR、GR及びNR)を、濃度計X−rite310型(X−rite社製)を用いて測定し、前述の式(1)に則り、濃度1{(LSR−NR)−(LSG−NG)}と濃度2{(GG−NG)−(GR−NR)}の値を算出した。
【0113】
〔発色現像処理〕
処理工程 処理時間 処理温度 補充量* 発色現像 3分15秒 38±0.3℃ 780ml 漂 白 45秒 38±2.0℃ 150ml 定 着 1分30秒 38±2.0℃ 830ml 安 定 60秒 38±5.0℃ 830ml 乾 燥 60秒 55±5.0℃ − *補充量は感光材料1m2当たりの値である。
【0114】発色現像液、漂白液、定着液、安定液及びその補充液は、以下のものを使用した。
【0115】
〈発色現像液〉 水 800ml 炭酸カリウム 30g 炭酸水素ナトリウム 2.5g 亜硫酸カリウム 3.0g 臭化ナトリウム 1.3g 沃化カリウム 1.2mg ヒドロキシルアミン硫酸塩 2.5g 塩化ナトリウム 0.6g 4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)
アニリン硫酸塩 4.5g ジエチレントリアミン五酢酸 3.0g 水酸化カリウム 1.2g水を加えて1Lとし、水酸化カリウムまたは20%硫酸を用いてpH10.06に調整する。
【0116】
〈発色現像補充液〉 水 800ml 炭酸カリウム 35g 炭酸水素ナトリウム 3g 亜硫酸カリウム 5g 臭化ナトリウム 0.4g ヒドロキシルアミン硫酸塩 3.1g 4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)
アニリン硫酸塩 6.3g 水酸化カリウム 2g ジエチレントリアミン五酢酸 3.0g水を加えて1Lとし、水酸化カリウムまたは20%硫酸を用いてpH10.18に調整する。
【0117】
〈漂白液〉 水 700ml 1,3−ジアミノプロパン四酢酸鉄(III)アンモニウム 125g エチレンジアミン四酢酸 2g 硝酸ナトリウム 40g 臭化アンモニウム 150g 氷酢酸 40g水を加えて1Lとし、アンモニア水または氷酢酸を用いてpH4.4に調整する。
【0118】
〈漂白補充液〉 水 700ml 1,3−ジアミノプロパン四酢酸鉄(III)アンモニウム 175g エチレンジアミン四酢酸 2g 硝酸ナトリウム 50g 臭化アンモニウム 200g 氷酢酸 56gアンモニア水または氷酢酸を用いてpH4.4に調整後、水を加えて1Lとする。
【0119】〈定着液〉 水 800ml チオシアン酸アンモニウム 120g チオ硫酸アンモニウム 150g 亜硫酸ナトリウム 15g エチレンジアミン四酢酸 2gアンモニア水または氷酢酸を用いてpH6.2に調整後、水を加えて1Lとする。
【0120】
〈定着補充液〉 水 800ml チオシアン酸アンモニウム 150g チオ硫酸アンモニウム 180g 亜硫酸ナトリウム 20g エチレンジアミン四酢酸 2gアンモニア水または氷酢酸を用いてpH6.5に調整後、水を加えて1Lとする。
【0121】
〈安定液及び安定補充液〉 水 900ml パラオクチルフェニルポリオキシエチレンエーテル(n=10)
2.0g ジメチロール尿素 0.5g ヘキサメチレンテトラミン 0.2g 1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 0.1g シロキサン(UCC製L−77) 0.1g アンモニア水 0.5ml水を加えて1Lとした後、アンモニア水または50%硫酸を用いてpH8.5に調整する。
【0122】(色再現性の評価)
〈撮影及びプリントサンプル作製〉上記作製した各試料を装填したカメラを用いて、下記A〜Dの4シーンについて適正露光(ノーマル)、1絞りアンダー(−1)及び1絞りオーバー(+1)の3条件で人物の肌色、背景等について撮影し、前述の発色現像処理を施した。次いで得られた現像処理済みカラーネガフィルムをコニカ社製1チャネル型オートカラープリンターであるナイスプリントシステムNPS858を使用し、コニカ社製カラーペーパータイプQAA7にL版サイズプリントとして出力した。
【0123】−撮影シーン−シーンA:屋外昼光下で、背景がグレーで、主要被写体である人物は上半身が写るよう撮影した。なお、撮影時の色温度は5500°KであったシーンB:屋外昼光下で、背景に緑の木々を配置し、中央に主要被写体である人物の上半身が写るように撮影した。なお、撮影時の色温度は5500°KであったシーンC:屋外昼光下で、背景に緑の木々を配置し、中央に主要被写体である人物の顔のアップが写るように撮影した。なお、撮影時の色温度は5500°KであったシーンD:室内で、コニカ社製ストロボX−36を使用して、背景がグレーで、主要被写体である人物は上半身が写るよう撮影した。なお、撮影時の色温度は約6500°Kであった〈作製プリントサンプルの色再現性評価〉以上のようにして作製した試料101〜109のプリントサンプル各12枚に以下に述べる方法に従い官能評価を行った。
【0124】具体的には、10名のパネラーにより作製した各プリントサンプルの肌色再現性、木々の緑の再現性及び両者のバランスについて官能評価を行い、下記の基準に則り判定した。
【0125】−色再現性の判定ランク−◎:91%以上のプリントサンプルが好ましいと判定○:61〜90%のプリントサンプルが好ましいと判定△:41〜60%のプリントが好ましいと判定され、色再現で気になるプリントは特にはない×:10〜40%のプリントのみ好ましいが、色再現として好ましくないサンプルが60〜90%含まれている上記判定ランクのうち、◎〜△が実用上許容される範囲と判断した。
【0126】(プリント生産性の評価)
〈撮影及び発色現像処理〉上記作製した各試料を装備したカメラを用いて、以下に示すA〜Cのそれぞれ色温度の異なる条件下で、中央重点平均測光で求めた撮影条件により、主要被写体である人物までの撮影距離を4段階で変化させ、かつ背景のスクリーンの色をグレー、白、黒、緑及び黄色に変化させ撮影を行った。また同時に各々のシーンにおいて、被写体の撮影人数を1〜5名に変化させて、総計100シーンの撮影を各試料について行った。
【0127】−撮影シーン条件−A:夕暮れシーン(色温度を測定したところ3400°Kであった)
B:昼光シーン(色温度を測定したところ5500°Kであった)
C:ストロボシーン(コニカ社製ストロボX−36を使用。測定した色温度は約6500°Kであった)
以上のようにして撮影した各試料を、前記色再現性評価と同様の発色現像処理を行い、現像済みカラーネガフィルムを作製した。
【0128】〈プリント作製及び生産性の評価〉上記現像済み試料を用いて、色再現性評価と同様にして各プリントサンプルを作製し、以下に示す方法に従いプリント生産性の評価を行った。
【0129】予め上記現像済み試料を用いて、クロメガ社製引き延ばし機スーパークロメガFダイクロイックIIにより条件を適宜調整して、最も撮影条件に近い色調の基準プリントサンプルを作製した。
【0130】次いで、各100シーンのプリントサンプルについて、カラープリント作業熟練者5名により、各プリントサンプルの基準プリントサンプルからの色ずれ(プリントレベル変動ともいう)、すなわち基準プリントサンプルに合わせるために必要な補正の程度を目視判定し、下記の基準に則り評価を行った。
【0131】−プリントレベル変動巾の評価ランク−◎:オートプリンターで必要とされる色補正が3%未満で良好なプリント仕上がりである○:オートプリンターで色補正を要する巾が5%以内でありほぼ良好なプリント仕上がりである△:オートプリンターで色補正を要する巾が10%以内であるが許容の範囲内にあるプリント仕上がりである×:オートプリンターで色補正を要する巾が10%を越え、再度プリントを作製し直すレベルであるなお、上記判定基準において、◎〜△が実用上許容レベルにあると判断した。
【0132】以上の評価により得られた結果を表2に示す。
【0133】
【表2】


【0134】表2より明らかなように、式(1)においてその数値が1.00以上である本発明に係る試料101〜106より作製したカラープリントサンプルは、優れた肌色及び緑色の再現性とカラープリントプリントにおける色ずれが少なく、その結果プリント生産性が極めて高いことが判った。特に、その中でも濃度1の値が0.35以上である試料は、上記特性がとりわけ優れていることが判る。
【0135】実施例2実施例1で作製した試料101の各感光性層のそれぞれのハロゲン化銀乳剤の使用量及び平均粒径、カプラー、カラードカプラーの使用量、DIR化合物の使用量及び各染料(AI−1〜3)の使用量を、当業界で周知の方法により適宜調整して、本発明に係る式(2)における感度1{(LSR2−NR2)−(LSG2−NG2)}と感度2{(GG2−NG2)−(GR2−NR2)}が表3に記載の値となるよう変更した以外は同様にして試料201〜209を作製し、実施例1と同様にして撮影用の試料を作製した。
【0136】(式2の感度1値及び感度2値の測定)実施例1における式(1)の濃度1、2の測定と同様な方法でマクベス社製カラーチェッカーチャートの撮影済みカラーネガフィルムを作製した。
【0137】又別途、各試料を4800°Kの光源でウエッジを介して白色露光を施し、実施例1と同様の発色現像処理を行った後、濃度計X−rite310型(X−rite社製)を用いてB、G、R濃度を測定し、濃度D−露光量LogEからなる特性曲線を作製した。
【0138】ついで、マクベス社製カラーチェッカーチャートの撮影済みカラーネガフィルムにおけるライトスキン部、緑チャート部及び18%反射率のグレーチャート部に相当する箇所の緑透過濃度(LSG、GG及びNG)と赤透過濃度(LSR、GR及びNR)を測定し、各々の濃度が上記特性曲線における濃度値と一致する露光量の逆数を求めそれを感度と定義して、それぞれLSR2、NR2、LSG2、NG2、GG2、NG2、GR2、NG2を算出した。
【0139】(色再現性及びプリント生産性の評価)実施例1と同様な方法で色再現性及びプリント生産性の評価を行い、得られた結果を表3に示す。
【0140】
【表3】


【0141】表3より明らかなように、式(2)においてその数値が1.50以上である本発明に係る試料201〜206より作製したカラープリントサンプルは、優れた肌色及び緑色の再現性とカラープリントプリントにおける色ずれが少なく、その結果、プリント生産性が極めて高いことが判った。特に、その中でも感度1の値が0.45以上である試料は、上記特性がとりわけ優れていることが判る。
【0142】実施例3実施例1及び2で作製した試料101の各感光性層のそれぞれのハロゲン化銀乳剤の使用量及び平均粒径、カプラー、カラードカプラーの使用量、DIR化合物の使用量及び各染料(AI−1〜3)の使用量を、当業界で周知の方法により適宜調整して、式(1)に係る値を1.05と0.90とし、更に赤感光性層の増感色素であるSD−1〜SD−4の比率及び添加量を適宜調整して、分光感度分布の異なる試料301〜308を作製した。同様にして、式(2)に係る値を1.55と1.45とし、更に赤感光性層の分光感度分布を変更した試料401〜408を作製した。以上のようにして作製した各試料の内容を表4及び5に示す。なお、赤感光性層の分光感度分布及び長波端波長は、以下の方法により測定を行った。
【0143】(赤感光性の分光感度分布及び長波端波長の測定)各試料に、ウエッジを介して400〜850nmの波長領域において数nm間隔でスペクトル光による分光露光を与えた後、前記発色現像処理を行い、得られた各色画像について、濃度計X−rite310型(X−rite社製)を用いて透過濃度測定を行い、縦軸濃度D−横軸露光量LogEよりなる特性曲線を作製した。得られた特性曲線において赤濃度1.0を得るに要する露光量の逆数をその波長における感度と定義して、各波長毎の感度分布を算出して、赤感光性層に係る分光感度分布曲線を作製した。次いで、分光感度分布曲線で最大感度を示す極大波長をλmaxとし、その最大感度に対しLogEで1.4低い長波側の波長を求めた。
【0144】(色再現性、赤色弁別性及びプリント生産性の評価)実施例1で記載の方法に則り、色再現性及びプリント生産性の評価を行った。なお、色再現性の評価において赤色弁別性を評価するため、A〜Dの各シーンで人物に加え、深紅のバラ、淡赤のシクラメン及び色相の微妙に異なる赤い布地サンプル数種を併せて写し込み、下記に示す基準に則り赤色弁別性の評価を行った。
【0145】−赤色弁別性の評価ランク−○:ほぼすべてのプリントサンプルにおいて、実際に近い赤色で色の違いが弁別ができている△:一部の赤色サンプルで、赤色の違いが若干弁別しづらくなってはいるが、実用上問題のないレベル×:明らかに赤の弁別が不充分で、赤色の色相の違いが区別できておらず同一の赤色となっている上記ランクの内、○、△は実用上可能なレベルと判定した。
【0146】以上により得られた結果を表4、5に示す。
【0147】
【表4】


【0148】
【表5】


【0149】表4、5より明らかなように、式(1)及び式(2)の値が本発明に係る範囲にあり、かつ赤感光性層の長波端の波長が660nm以下である試料は、優れたた肌色及び緑色の再現性と高いプリント生産性を有すると共に、赤色弁別性が向上していることが判る。
【0150】
【発明の効果】本発明により、高クロマで鮮やかな色再現性及び優れた色弁別性を有し、かつプリント収率の高いハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上に少なくとも1層の赤感光性層、緑感光性層及び青感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(1)
2×{(LSR−NR)−(LSG−NG)}+{(GG−NG)−(GR−NR)}≧1.00〔式中、LSG及びLSRは、マクベス社製カラーチェッカーチャートを4800°Kの光源下で撮影、現像したハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該カラーチェッカーチャートのライトスキンチャート部の緑濃度及び赤濃度を表し、GG及びGRは同じく緑チャート部の緑濃度及び赤濃度を表し、NG及びNRは同じく18%反射のグレーチャート部の緑濃度及び赤濃度を表す。〕
【請求項2】 支持体上に少なくとも1層の赤感光性層、緑感光性層及び青感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、下記式(2)の関係を満たすことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(2)
2×{(LSR2−NR2)−(LSG2−NG2)}+{(GG2−NG2)−(GR2−NR2)}≧1.50〔式中、LSG2及びLSR2は、マクベス社製カラーチェッカーチャートを4800°Kの光源下で撮影、現像したハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該カラーチェッカーチャートのライトスキンチャート部の緑感度及び赤感度を表し、GG2及びGR2は同じく緑チャート部の緑感度及び赤感度を表し、NG2及びNR2は同じく18%反射のグレーチャート部の緑感度及び赤感度を表す。〕
【請求項3】 支持体上に少なくとも1層の赤感光性層、緑感光性層及び青感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該赤感光性層の分光感度の極大波長(λmax)に対し、相対感度値で1.4低い長波側の波長が660nm以下で、かつ前記式(1)の関係を満たすことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項4】 支持体上に少なくとも1層の赤感光性層、緑感光性層及び青感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該赤感光性層の分光感度の極大波長(λmax)に対し、相対感度値で1.4低い長波側の波長が660nm以下で、かつ前記式(2)の関係を満たすことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項5】 前記式(1)におけるLSR、LSG、NR及びNGが、下記式(3)の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は3記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(3)
(LSR−NR)−(LSG−NG)≧0.35〔式中、LSR、LSG、NR及びNGは、各々式(1)のそれと同義である。〕
【請求項6】 前記式(2)におけるLSR2、LSG2、NR2及びNG2が、下記式(4)の関係を満たすことを特徴とする請求項2又は4記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(4)
(LSR2−NR2)−(LSG2−NG2)≧0.45〔式中、LSR2、LSG2、NR2及びNG2は、各々式(2)のそれと同義である。〕

【公開番号】特開2001−201826(P2001−201826A)
【公開日】平成13年7月27日(2001.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−9007(P2000−9007)
【出願日】平成12年1月18日(2000.1.18)
【出願人】(000001270)コニカ株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】