説明

ハロゲン化銀カラー写真感光材料

本発明は、撮影時に用いるカメラ品質にかかわらず、コントラスト及び色再現性に優れたプリント品質が得られ、かつデジタルプリント適性を有する低銀量のハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供する。このハロゲン化銀カラー写真感光材料は、現像処理後、アンダー露出、適正露出及びオーバー露出より算出されるCrm値が下式(1)を満し、該感光性層のいずれもが、アンダー露出、ノーマル露出及びオーバー露出での階調度(γU、γN、γO)が、下式(2)、(3)を満足するハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(1) Crm値≧1045−log10S×75
式(2) 0.92≦γU/γN≦1.05
式(3) 0.92≧γO/γN≧1.05

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、撮影時に用いるカメラ品質にかかわらず、コントラスト及び色再現性に優れたプリント品質を提供でき、かつデジタルプリント適性を有する低銀量のハロゲン化銀カラー写真感光材料に関する。
【背景技術】
近年、一般撮影用のハロゲン化銀写真感光材料(以下、単に感光材料、あるいはネガフィルムともいう)の技術進歩により、従来常用感度とされていたISO100より高感度の感光材料が次々と発売され、普及してきている。
一方、撮影に用いるカメラとしては、例えば、高級機といわれる一眼レフカメラ、ズーム機能等を有したコンパクトカメラ、あるいは固定焦点、固定絞り、固定シャッター速度のカメラやレンズ付きカメラ等の簡易カメラなど、多種多様のカメラが市場に提供されている。しかしながら、露出制御機構を持たない一部のカメラでは、露出アンダー撮影シーンや露出オーバー撮影シーン、所謂適性露出から外れたシーンの出現率が高くなり、現像所等でのプリント生産性の低下や、あるいはプリント仕上がり品質の低下を招く大きな要因となっており、早急な対応が望まれている。
上記課題をハロゲン化銀カラー写真感光材料から捉えると、ネガフィルムに対する露出がアンダーとなった場合、プリントした際のプリント品質は、主要被写体の濃度に対し、ハイライト、シャドー側でネガの濃度表現力(階調再現性)が不足するため、被写体の濃度を高くしたときは全体の濃度も同様に高く、つまり暗くなり、逆に全体の濃度を低くすると被写体の濃度も薄くなり、画像に締まりがなく、色再現性が低下し、観察に耐えないプリント画像となってしまう。この様な状況においては、適正なプリント濃度の許容される範囲が極めて狭くなり、プリントしにくい条件となる。
これらの露出アンダー撮影シーンの出現は、例えば、室内、夜間の撮影、暗所の比率の高いシーン、および簡易カメラを使用した場合の他にも、「背景が空等の明るい状態で、被写体はそれよりはやや暗い」というような一般に逆光撮影と呼ばれる場合にも起こりやすく、このような撮影は、実際に撮影を行ったユーザーは、決して暗いシーンで撮影したという認識は薄いが、実際に手にするプリントではアンダー撮影のような仕上がりになるケースが多く、この様な撮影者の認識、あるいは期待値と実際の仕上がりプリント品質の差が大きく、特に、この様なケースが、多くの品質クレームの要因となっていることがアンケート調査の結果判明した。
上記のような撮影におけるシステムの感度は、一般に実効感度といわれ、カラーネガフィルム−カラーペーパーによるネガポジシステムでの実効感度としては、通常言われているカラーネガフィルムのISO規格で規定される感度(以下、ISO感度と略することがある)とは多少の相関はあるものの単純に関連づけることができないのは周知の事実である。
上述した様な露光不足のアンダーシーンのプリント品質課題を解決する方法の1つとして、カラーネガフィルムのISO感度を向上させる手段を挙げることができ、例えば、ハロゲン化銀乳剤の感度はハロゲン化銀結晶のサイズに対する依存性が大きいので、大粒子サイズのハロゲン化銀乳剤を用いることで感度を向上させることができ技術的には容易で公知の例、文献にも報告され一般的に行われている。また、上記露出アンダーシーンにおける問題は、露出オーバーシーンにおいても同様に発生する。
又、スキャナーを搭載した1チャンネル型プリンター(以下、1chプリンターと略すことがある)は、CCDカメラを用いてネガ画像を今までよりきめ細やかにスキャニング(画像走査)し、各シーンでのパターン分析をも加味してより適切な露出制御をすることができる。しかし、それらのプリンター機器を用いても、プリント収率はさほど向上せず、また、プリントの仕上がり品質、特に、色再現性も決して満足のいくレベルにないのが実状である。
上述したように、近年のプリンターの技術の進歩により、プリント収率は若干向上したものの、更なる改良が要望されているが現状である。
また、現在のネガポジプリント方法においては、アンダーシーン及びオーバーシーンの出現比率が高く、特に、アンダーシーンの総合画質、特に、色再現性は、ノーマル、オーバーシーンに比べて著しく劣り、総合的なプリント画質の向上、あるいはプリント収率の向上に対しては、アンダーシーンの画質向上が望まれている。
一方、文献(例えば、「写真工学の基礎(銀塩写真編):コロナ社出版」)等では、総合画質には鮮鋭性、粒状性が大きく影響していることが知られており、例えば、特開平10−268467号には、適正露出付近でのRMS粒状度等による画像向上方法が開示されているが、アンダーシーンでの総合画質はノーマルシーンのそれとは異なり、単純にこれら鮮鋭性、粒状性だけでは説明することができず、また、単に画質向上を目的として、例えば、塗布銀量や発色カプラー等の素材を多量に使うことは、コスト増大につながり決して効率的な方法とは言い難い。
一方、上記のような昔ながらの露光制御方式のプリンター以外に、近年では現像したネガ画像をスキャニングして、画像の濃度情報をデジタル情報として取得し、様々な画像処理を行った後、その情報を基にしてプリントを行うデジタル、もしくはハイブリッド方式のプリンターが台頭しつつある。
これらのプリンターを用いた場合、上述のようなアンダー、オーバーでの露光制御方式の問題以外に、濃度をデジタル(量子)化する際の情報の圧縮、欠如が問題となっている。これは、通常、ネガ濃度は3.5(300階調以上)ぐらいまでの情報を持っているのに対し、標準フォーマットの画像は量子化の際に256階調に圧縮せねばならず、その際に一部の情報が適切に変換されないことによる。
特に、これによる弊害として、アンダー撮影でコントラストが低いシーンにおいて、適正なコントラストに変換する際に、ネガ濃度の範囲と量子化の範囲の不一致により、人間が必要とする以上に無理にコントラストを強調しすぎてしまうため、結果として、色再現性の劣化を招いたり、あるいは、オーバー撮影で主要被写体とバックの輝度が乖離しているコントラストの高いシーンにおいて、過剰にコントラストを軟調にしすぎるという問題があり、結果として、ダイナミックレンジを十分に生かし切れておらず、彩度の低い不自然な画像のプリントになってしまうしケースが多く、またプリントレベル変動も起こりやすいことが判明している。アルゴリズムを複雑にすることで、一部の現象に関しては改善がなされてはいるが、時間あたりの生産性の低下を招き、決して実用的ではないのが現状である。
更に、市場における写真業界の動向として、現像処理の迅速化、また処理の多様化により、一定量以上の銀量を用いているハロゲン化銀感光材料においては、一部、デジタル化の際にSN比の低下が起きてくることが判明した。これは、様々な現像処理によるデジタルプリントにおいて、ネガ画像のネガ−ポジ変換を行う際に、現像処理過程で脱銀処理が不十分なケース、例えば、漂白液の疲労等により塗膜中に金属銀が残留することにより、SN比の低下を招いていると推測している。また、現像済みネガに金属銀が残留している場合、実際にプリンターによるネガフィルムのスキャニングの際に、撮影の一駒ごとの位置決めが正確に行われず、特に撮影時の搬送精度の低い、低価格カメラ等で撮影されたシーンにおいては、実際のシーンに関係ない部分(最小濃度)のデータを画像処理に組み込むため、ポジ画像データー(8bitまたは〜16bit)のダイナミックレンジを有効に使ったポジ画像処理が出来ず、従来のアナログ型プリンターと比べ違和感のある階調性でプリントされる結果となっている。
上記の様な課題に対し、プリントの仕上がり品質、とりわけ色再現性や階調再現性を向上するためのハロゲン化銀カラー写真感光材料やカメラについての種々の提案がなされている。
例えば、白色露光によるラチチュード、赤色露光によるラチチュード及び緑色階調度を特定の条件に設定することにより、様々な露光条件のネガから良好で安定したプリント品質が得られる撮影用カラー写真感光材料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、白色露光による緑色階調、緑色露光による緑色階調との比を特定の関係に制御し、かつ特定の空間周波数を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料により、処理安定性を損なうことなく色再現性と鮮鋭性を改良する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、カメラ、特に簡易カメラについては、固定焦点距離、固定絞り値で、固定シャッター速度のシャッターを有し、システム感度指数Sが0以上4.5以下とすることにより、簡易カメラであっても露出アンダーや露出オーバーになる頻度が少なく、満足度の高い写真プリントが得られるレンズ付きフィルムユニットが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、いずれの提案されている方法も、高級カメラから簡易カメラにおいて、その効果を十分に発揮できるものではなく、また使用するフィルムの実効感度の違いによりその効果に差異が見られ、特に、色再現性については、全ての条件で満足のいく品質であるとは言い難いのが現状である。
【特許文献1】 特開平9−90575号公報(特許請求の範囲)
【特許文献1】 特開2000−321727号公報(特許請求の範囲)
【特許文献1】 特開2000−47280号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
本発明の上記目的は、下記の各々の構成により達成される。
(1) 支持体上に、それぞれ少なくとも1層の赤色感光性層、緑色感光性層及び青色感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、発色現像処理後、下記で規定するアンダー露出、適正露出及びオーバー露出より算出されるCrm値が下式(1)を満足し、かつ該赤色感光性層、緑色感光性層及び青色感光性層のいずれもが、アンダー露出、ノーマル露出及びオーバー露出での階調度(γU、γN、γO)が、下式(2)及び(3)を同時に満足することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(1)
Crm値≧1045−log10S×75
〔式(1)において、Sは撮影表示感度であり、Crm値は下記のように定義する。
Crm値とは、マクベスカラーチャート(24段)を、色温度4800°Kの太陽光源下で、適正露出条件(N)、適正露出条件に対し−2絞りアンダーの露出条件(U)及び適正露出条件に対し+2絞りオーバーの露出条件(O)で撮影し、発色現像処理後に、それぞれの露出について、マクベスカラーチャートのN5グレー(18%反射のグレーチャート)がL=50、a=0、b=0となる露光条件でカラープリントにプリントしたとき、カラーチャートBlue、Green、Red、Yellow、Magenta、CyanのメトリッククロマCabを求め、アンダー露出、適正露出及びオーバー露出での合計値である。〕
式(2)
0.92≦γU/γN≦1.05
式(3)
0.92≧γO/γN≧1.05
〔式(2)、(3)において、階調度γU、γN、γOは、発色現像処理後、露光量と発色濃度の関係を示す濃度関数曲線(D−logE)を作成し、以下の方法に従ってもとめる。
γU:露光量点(−0.1−log10S)と露光量点(0.9−log10S)を結ぶ直線の傾き(tanθ)
γN:露光量点(0.5−log10S)と露光量点(1.5−log10S)を結ぶ直線の傾き(tanθ)
γO:露光量点(2.0−log10S)と露光量点(3.0−log10S)を結ぶ直線の傾き(tanθ)
ただし、Sは撮影表示感度である。〕
(2) 支持体上に、それぞれ少なくとも1層の赤色感光性層、緑色感光性層及び青色感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、発色現像処理後、下記で規定される品質値QCが下式(4)を満足し、かつ該赤色感光性層、緑色感光性層及び青色感光性層のいずれもが、アンダー露出、ノーマル露出及びオーバー露出での階調度(γU、γN、γO)が、前式(2)を満足することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(4)
QC≧15.982×S−0.378
〔式(4)において、Sは撮影表示感度であり、好ましくは100〜800であり、QCは下記のように定義する。
マクベスカラーチャート(24段)を、色温度4800°Kの光源下で、適正露出条件に対して−3絞りアンダーの露出条件で撮影し、発色現像処理の後にマクベスカラーチャートのN5グレー(18%反射のグレーチャート)がL=50、a=0、b=0となる露光条件でカラープリントにプリントし、グレー以外の18色の色度測定し、下式(5)に従い品質値QCを計算する。
式(5)
QC=(Cr+Ch)/2
式(5)において、Cr及びChは以下のようにして決定する。
撮影に用いたマクベスカラーチャート18色の色度値から算出したメトリッククロマCabの平均と、同様にプリントから求められた各輝度での18色のメトリッククロマCabの平均との比をCr0とし、また、マクベスカラーチャート18色のオリジナルの各色ベクトルと、プリントから求められた各色のベクトルから、色毎での色度ずれをベクトル差の角度の絶対値で求め、その平均値をCh0としたとき、
式(6)
Cr=20×log10(Cr0)
式(7)
Ch=7.0−3×log10(Ch0)
により、Cr及びChを算出する。〕
(3) 金属銀に換算した総塗布銀量が、下式(8)で規定する銀量値B(g/m)であることを特徴とする(1)または(2)に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(8)
B≦10.0−10(−0.005×S+0.85)
〔式中、Sは撮影表示感度を表す。〕
(4) 前記撮影表示感度Sが、100〜800であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明者は、上記課題を鑑み鋭意検討を進め、様々なカメラを用いて撮影された一般ユーザーの撮影シーンの濃度分布解析等を詳細に行った結果、プリンターの各指定感度における露光制御のアルゴリズムには、感光材料のアンダー、ノーマル、オーバー側での色再現が、各フィルム感度毎にある一定値以上であると、適正露出条件を求め易いということが判明した。
このように、その画質向上を如何に効率よく達成するかが長年に亘る命題であり、かつその方法の開発が望まれていたが、本発明者らが鋭意検討した結果、プリント品質の安定性の支配因子としては、単に粒状性だけではなく、使用する感光材料の撮影感度に応じて、色再現性に係る品質値であるCrm値あるいは品質値QCを一定値以上とすることとともに、アンダー、ノーマル、オーバー階調域での階調比を特定の条件内に設定することにより、プリント画質として良好な品質と認識することができ、かつこれらの各品質値は、使用するフィルムの撮影指定感度にそれぞれ依存していることが判明し、本発明に至った次第である。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、支持体上に、それぞれ少なくとも1層の赤色感光性層、緑色感光性層及び青色感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、発色現像処理後、下記で規定するアンダー露出、適正露出及びオーバー露出より算出されるCrm値が前式(1)を満足し、かつ該赤色感光性層、緑色感光性層及び青色感光性層のいずれもが、アンダー露出、ノーマル露出及びオーバー露出での階調度(γU、γN、γO)が、前式(2)及び(3)を同時に満足することが特徴である。
はじめに、前記式(1)に係るCrm値について説明する。
本発明者は、様々なカメラを用いて撮影された一般ユーザーの撮影シーンの解析等を詳細に行った結果、撮影表示感度ごとに、アンダー、ノーマル、オーバー露出時に、カラー画像、特に基本色であるBlue、Green、Red、Yellow、Magenta、CyanのメトリッククロマCabの合計値が、一定以上にあれば、ユーザーに満足される色再現性であると認識されることを見出したものである。
本発明に係るCrm値は、マクベスカラーチャート(24段)を、色温度4800°Kの太陽光源下で、適正露出条件(N)、適正露出条件に対し−2絞りアンダーの露出条件(U)及び適正露出条件に対し+2絞りオーバーの露出条件(O)で撮影し、規定の現像処理、例えば、特開平10−123652号の段落[0220]〜同[0227]に記載の現像処理工程に従ってカラー現像処理を行った後に、それぞれの露出について、マクベスカラーチャートのN5グレー(18%反射のグレーチャート)がL=50、a=0、b=0となる露光条件でカラープリントにプリントしたとき、カラーチャートBlue、Green、Red、Yellow、Magenta、CyanのメトリッククロマCabを求め、アンダー露出、適正露出及びオーバー露出での合計値である。
本発明におけるL、a、bとは、CIE 1976(L)空間で表される座標であり、観察光源として標準光源Cで測定して3刺激値を計算する。Lの値は、新編色彩科学ハンドブック83〜146頁及び182〜255頁(日本色彩学会編,東京大学出版会刊)に記載される方法により測定して求めたものである。
本発明でいうメトリッククロマCabは、CIE 1976(L)空間における知覚量であり、新編色彩科学ハンドブックの277頁に記載されている方法により求めたものである。
詳しくは、これらの撮影用感光材料の色度をカラーアナライザー(村上色彩社製CMS−1200)で測定し、2°視野の等色関数、観察光源として標準光のC光源を用いてL空間の色度点及びメトリッククロマCabを求めた。
また、本発明でいうSで表される撮影表示感度とは、公知の135サイズ、IX240タイプ等のようにその写真フィルムを内蔵するカートリッジ、パトローネ、または内蔵容器等、呼び名はいろいろあるがその容器の外側に示されているISOに続いて表示される数値であり、あるいは、135サイズロール状フィルム用の金属製の写真フィルム収納容器(パトローネともいう)の外表面に、フィルムの撮影感度をカメラで検知するため導通部と非導通部で出来た部分、いわゆるCAS部が設けられており、それで表示される感光材料の感度で最終的にはその感光材料を用いる際に、カメラに内蔵された際に表示される感光材料の感度の数値を意味する。感光材料の感度の表示方法としては、国により様々な表示方法があるが、本発明では国際的な表示方法であるISOによる表示感度を用いる。本発明では、Sとしては100以上、800以下が好ましい。
本発明に係るCrm値は、〔1045−log10S×75〕以上であることが特徴であり、撮影表示感度が100である感光材料では895以上、同様に撮影表示感度が200では872以上、撮影表示感度が400では850以上、撮影表示感度が800では828以上である。
次いで、式(2)で規定する階調度について説明する。
本発明者は、様々なカメラを用いて撮影された一般ユーザーの撮影シーンの解析等を詳細に行った結果、一般に、ノーマル撮影領域での階調に対し、アンダー撮影領域では軟調化し、また、オーバー撮影領域においても、ラチチュードの低下により軟調化する傾向があり、そのためノーマル撮影シーンに対し、アンダーあるいはオーバーシーンのプリント品質の低下を引き起こしていた。
本発明者は、鋭意解析を行った結果、撮影表示感度ごとに、アンダー、ノーマル、オーバーにおける各々の階調度を、特定の比に設定することにより、アンダーシーンからオーバーシーンまでのプリント安定性を維持できることを見出したものである。
本発明においては、階調度は以下のようにして測定して求めることができる。
ハロゲン化銀カラー写真感光材料を、4800°Kの光源を用いて、1/200秒で光学ウェッジを介して露光を与える。次いで、規定の現像処理、例えば、特開平10−123652号の段落[0220]〜同[0227]に記載の現像処理工程に従ってカラー現像処理を行った後に、形成された画像濃度を透過型光学濃度計、例えば、X−rite社製濃度計を用いて、横軸が露光量(logE)、縦軸が発色濃度(D)からなるイエロー、マゼンタ及びシアンの特性曲線を作成し、前記の各露光域間を結ぶ直線の傾きを求め、これを階調度とした。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料において、上記で規定する式(1)及び式(2)の条件を達成する手段としては、特にその方法に制限はないが、以下の手段を適宜選択、あるいは組み合わせて用いることが好ましい。
1:各感光性層を、2層以上の多層構成とし、各層に最適のハロゲン化銀乳剤(粒径、形状、ハロゲン組成、添加量(銀量)、分光増感色素の種類や添加量等)を選択する方法、
2:各感光性層を、2層以上の多層構成とし、各層に最適のカラーレスカプラー(反応速度、発色後の分光吸収特性、添加量等)を選択する方法、
3:各感光性層を、2層以上の多層構成とし、各層に最適のカラードカプラー(種類、添加量等)を選択する方法、
4:各感光性層を、2層以上の多層構成とし、特定の構成層にDIRカプラーを使用し、DIRカプラーの種類(反応速度、抑制成分の拡散性、抑制度)、添加量等を適宜調製する方法、
5:各構成層の乾燥膜厚、硬膜度を適宜調製して、特に、DIRカプラーの抑制成分の拡散度を制御する方法、
6:感色性の異なる感光性層間に設けた中間層中に、現像主薬の酸化体をトラップする化合物を添加する方法、
等を挙げることができるが、本発明はこれらの方法にのみ限定されるものではない。
また、本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料では、支持体上に、それぞれ少なくとも1層の赤色感光性層、緑色感光性層及び青色感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、発色現像処理後、下記で規定される品質値QCが前式(4)を満足し、かつ該赤色感光性層、緑色感光性層及び青色感光性層のいずれもが、アンダー露出、ノーマル露出及びオーバー露出での階調度(γU、γN、γO)が、前式(2)を満足することが特徴である。
本発明に係る式(4)で表される品質値QCとは、アンダー撮影シーンにおけるプリント仕上がり時の色バランスの度合いを表す指標である。
本発明者らは、市場のアナログプリンターでのプリント品質変動の問題を低減する方法に関し鋭意検討した結果、プリンターで適正な露光条件が算出されないことが、プリント品質を増大させる因子であることがわかった。また、仕上がったプリントの品質問題の分析の結果では、得られるプリント画像のコントラストが低いことが原因であることが判明した。
しかし、これら両者の問題を単純に両立させることは、アンダー撮影シーンと適正露出での撮影シーンを同一特性とすることを意味し、これは、撮影用感光材料の銀量を単純に高めることとなり、それに伴う様々な問題、例えば、脱銀不良、カブリの増大、コスト増加等を引き起こすため、決して有効な手段とは言い難い。また、特に撮影用感光材料のアンダー撮影で使用される特性曲線でいう脚部領域のコントラストを高める1つの手段として、大粒子サイズのハロゲン化銀乳剤を用いてISO感度を高くする方法があるが、この方法ではプリントした際の実効感度も若干高くなるが、反面、得られるプリントの粒状性が粗くなり、ユーザーに対し許容されない品質を招きやすくなる。また、上述の方法により実効感度を高めたとしても、色コントラストがやはりが不足し、適正なプリント条件が算出されずレベル変動を低減させるにはあまり効果がないことが分かった。
本発明は、上記課題を踏まえてなされたものであり、プリンターの露光条件はニュートラル濃度で全体の露光条件、つまり仕上がりの濃度の底上げ、底下げを行うのみであり、各色の分解された濃度が、特にアンダーでの濃度が異なるときの補正値を算出し、この補正値である品質値QCと撮影感光材料の指定感度との関係を特定の条件に規定することにより、アンダー側でも安定した色バランスを持ったプリントを提供するものである。なお、本発明において、品質値QCは、計算した値の小数点2桁を四捨五入して表示する。
前記式(4)に従った本発明に係る品質値QCとしては、撮影表示感度100の感光材料では2.8以上、撮影表示感度200の感光材料では2.2以上、撮影表示感度400の感光材料では1.7以上、撮影表示感度800の感光材料では1.3以上である。
以下、本発明に係る品質値QCについて、更に詳細に説明する。
式(4)
QC≧15.982×S−0.378
上記式(4)において、Sは撮影表示感度であり、QCは下記のように定義される。
すなわち、24段のカラーチャート及びグレーチャートからなるマクベスカラーチャートを、色温度4800°Kの光源下で、適正露出条件に対して−3絞りアンダーの露出条件で撮影し、規定の現像処理、例えば、特開平10−123652号の段落[0220]〜[0227]記載の現像処理工程に従ってカラー現像処理を行った後に、マクベスカラーチャートのN5グレー(18%反射率のグレーチャート)が、プリントのカラーバランスとしてL=50、a=0、b=0となる露光条件でカラーペーパーにプリントし、グレー以外の18色の色度測定し、下記式(5)に従い品質値QCを計算する。
式(5)
QC=(Cr+Ch)/2
式(5)において、Cr及びChは以下のようにして決定する。
撮影に用いたマクベスカラーチャート18色の色度値から算出したメトリッククロマCabの平均と、同様にプリントから求められた各輝度での18色のメトリッククロマCabの平均との比をCr0とし、また、マクベスカラーチャート18色のオリジナルの各色ベクトルと、プリントから求められた各色のベクトルから、色毎での色度ずれをベクトル差の角度の絶対値で求め、その平均値をCh0としたとき、Cr=20×log10(Cr0)、Ch=7.0−3×log10(Ch0)により、Cr及びChを算出することにより、品質値QCを求めることができる。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料において、上記で規定する式(4)で規定する条件を達成する手段としては、特にその方法に制限はないが、前述の手段1〜6を適宜選択、あるいは組み合わせて用いることが好ましい。
また、本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、金属銀に換算した総塗布銀量が、下式(8)で規定する銀量値B(g/m)であることが好ましい。
式(8)
B≦10.0−10(−0.005×S+0.85)
式(8)において、Sは撮影表示感度であり、好ましくは100〜800である。
ハロゲン化銀カラー写真感光材料として、撮影表示感度Sに比例した銀量値とすることにより、各感光材料の到達感度、到達画質を最適化し、かつ種々の現像処理における脱銀性を適正化とすることにより、デジタルプリントにおけるネガフィルム画像のネガ/ポジ変換でのSN比を向上することができる。
前記式(8)に従った銀量値Bとしては、撮影表示感度が100の感光材料では3.4(g/m)以下、撮影表示感度が200の感光材料では3.8(g/m)以下、撮影表示感度が400の感光材料では4.6(g/m)以下、撮影表示感度が800の感光材料では5.9(g/m)以下である。
次いで、本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料の各構成要素について、以下説明する。
本発明に係るハロゲン化銀乳剤の調製については、Research Disclosure(以降、RDと略す)No.308119に記載されている各項目に記載されているものを用いることができる。
以下に記載箇所を示す。
〔項目〕 〔RD308119の頁〕
沃度組成 993 I−A項
製造方法 993 I−A項 及び994 E項
晶癖 正常晶 993 I−A項
晶癖 双晶 993 I−A項
エピタキシャル 993 I−A項
ハロゲン組成一様 993 I−B項
ハロゲン組成一様でない 993 I−B項
ハロゲンコンバージョン 994 I−C項
ハロゲン置換 994 I−C項
金属含有 994 I−D項
単分散 995 I−F項
溶媒添加 995 I−F項
潜像形成位置 表面 995 I−G項
潜像形成位置 内部 995 I−G項
適用ハロゲン化銀写真感光材料ネガ995 I−H項
ポジ(内部カブリ粒子含) 995 I−H項
乳剤を混合している 995 I−J項
脱塩 995 II−A項
本発明においては、ハロゲン化銀乳剤に関して、物理熟成、化学熟成及び分光増感を行ったものを使用する。この様な工程で使用される添加剤は、RDNo.17643、No.18716及びNo.308119に記載されている。以下に記載箇所を示す。
〔項目〕 〔RD308119の頁〕 〔RD17643〕〔RD18716〕
化学増感剤 996 III−A項 23 648
分光増感剤 996 IV−A−A、
B、C、D、 23〜24 648〜649
H、I、J項
強色増感剤 996 IV−A−E、J項
23〜24 648〜649
カブリ防止剤 998 VI 24〜25 649
安定剤 998 VI 24〜25 649
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料に使用できる公知の写真用添加剤も、上記RDに記載されている。以下に関連のある記載箇所を示す。
〔項目〕 〔RD308119の頁〕〔RD17643〕〔RD18716〕
色濁り防止剤 1002VII−I項 25 650
色素画像安定剤 1001VII−J項 25
増白剤 998V 24
紫外線吸収剤 1003VIII−I項、
XIII−C項 25〜26
光吸収剤 1003VIII 25〜26
光散乱剤 1003VIII
フィルター染料 1003VIII 25〜26
バインダー 1003IX 26 651
スタチック防止剤1006XIII 27 650
硬膜剤 1004X 26 651
可塑剤 1006XII 27 650
潤滑剤 1006XII 27 650
活性剤・塗布助剤1005XI 26〜27 650
マット剤 1007XVI
現像剤(ハロゲン化銀カラー写真感光材料に含有)
1001XXB項
本発明に係る感光性層には、種々のカプラーを使用することが出来、その具体例は、上記RDに記載されている。以下に関連のある記載箇所を示す。
〔項目〕 〔RD308119の頁〕 〔RD17643〕
イエローカプラー 1001VII−D項 VIIC〜G項
マゼンタカプラー 1001VII−D項 VIIC〜G項
シアンカプラー 1001VII−D項 VIIC〜G項
カラードカプラー 1002VII−G項 VIIG項
DIRカプラー 1001VII−F項 VIIF項
BARカプラー 1002VII−F項
その他の有用残基放出 1001VII−F項
カプラー
アルカリ可溶カプラー 1001VII−E項
上記各添加剤は、RD308119XIVに記載されている分散法などにより、添加することが出来る。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料には、前述RD308119VII−K項に記載されているフィルター層や中間層等の補助層を設けることも出来る。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、前述RD308119VII−K項に記載されている順層、逆層、ユニット構成等の様々な層構成をとることが出来る。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料を現像処理するには、例えばT.H.ジェームズ著、セオリイ オブ ザ ホトグラフィック プロセス第4版(The Theory of The Photographic Process Forth Edition)第291〜334頁及びジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)第73巻、No.3、100頁(1951)に記載されている公知の現像剤を使用することができる。また、前述のRD17643の28〜29頁、RD18716の615頁及びRD308119XIXに記載された通常の方法によって、現像処理することができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
〔試料101の作製〕
下引き層を施した厚さ125μmのトリアセチルセルロースフィルム支持体上に、下記に示すような組成の各層を順次支持体側から形成してハロゲン化銀カラー写真感光材料である試料101を作製した。
下記の各素材の添加量は1m当たりのグラム数で表す。但し、ハロゲン化銀とコロイド銀は銀の量に換算し、増感色素(SDで示す)は銀1モル当たりのモル数で示した。
(第1層:ハレーション防止層) (g/m
黒色コロイド銀 0.13
UV−1 0.30
CM−1 0.11
OIL−1 0.23
ゼラチン 1.20
(第2層:中間層)
OIL−3 0.267
ゼラチン 0.89
(第3層:低感度赤感色性層)
沃臭化銀乳剤a 0.31
沃臭化銀乳剤c 0.22
SD−1 1.28×10−4
SD−2 1.78×10−5
SD−3 8.40×10−5
C−1 0.324
CC−1 0.056
D−1 0.014
AS−2 0.002
OIL−2 0.320
ゼラチン 1.06
(第4層:中感度赤感色性層)
沃臭化銀乳剤b 0.08
沃臭化銀乳剤d 0.40
SD−1 2.56×10−4
SD−2 3.50×10−5
SD−3 1.72×10−4
C−1 0.219
CC−1 0.044
D−1 0.010
D−3 0.002
AS−2 0.002
OIL−2 0.001
ゼラチン 0.84
(第5層:高感度赤感色性層)
沃臭化銀乳剤d 0.10
沃臭化銀乳剤g 0.42
SD−1 7.11×10−5
SD−2 9.78×10−6
SD−3 4.72×10−5
C−1 0.046
C−2 0.041
CC−1 0.019
D−3 0.003
AS−2 0.001
OIL−2 0.088
ゼラチン 0.84
(第6層:中間層)
OIL−1 0.25
ゼラチン 0.91
(第7層:低感度緑感色性層)
沃臭化銀乳剤b 0.23
沃臭化銀乳剤c 0.10
SD−4 1.17×10−4
SD−5 1.28×10−5
SD−6 1.61×10−5
M−1 0.275
CM−1 0.085
D−2 0.001
D−3 0.001
AS−2 0.001
X−2 0.069
AS−3 0.033
OIL−1 0.410
ゼラチン 1.14
(第8層:中度感度緑感色性層)
沃臭化銀乳剤c 0.09
沃臭化銀乳剤d 0.40
SD−4 3.83×10−4
SD−5 4.00×10−5
SD−6 5.00×10−5
M−1 0.101
CM−1 0.039
D−2 0.001
D−3 0.005
AS−2 0.001
X−2 0.014
AS−3 0.007
OIL−1 0.280
ゼラチン 1.06
(第9層:高感度緑感色性層)
沃臭化銀乳剤f 0.60
SD−4 1.01×10−4
SD−5 3.78×10−5
SD−6 6.33×10−6
M−1 0.058
CM−1 0.029
AS−2 0.001
X−2 0.015
AS−3 0.007
OIL−1 0.141
ゼラチン 1.11
(第10層:イエローフィルター層)
黄色コロイド銀 0.06
AS−1 0.02
OIL−1 0.09
ゼラチン 0.90
(第11層:低感度青感色性層)
沃臭化銀乳剤b 0.11
沃臭化銀乳剤d 0.20
沃臭化銀乳剤e 0.20
SD−7 2.78×10−4
SD−8 7.17×10−5
Y−1 0.925
AS−2 0.003
OIL−1 0.371
ゼラチン 1.91
(第12層:高感度青感色性層)
沃臭化銀乳剤e 0.03
沃臭化銀乳剤h 0.25
SD−7 2.78×10−5
SD−8 1.83×10−5
Y−1 0.078
AS−2 0.001
D−4 0.038
OIL−1 0.047
ゼラチン 0.61
(第13層:第1保護層)
沃臭化銀乳剤i 0.22
UV−1 0.10
UV−2 0.06
X−1 0.04
ゼラチン 0.70
(第14層:第2保護層)
PM−1 0.10
PM−2 0.018
WAX−1 0.02
SU−1 0.003
ゼラチン 0.55
尚、上記の組成物の他に、塗布助剤SU−1、SU−2、SU−3、分散助剤SU−4、粘度調整剤V−1、安定剤ST−1、重量平均分子量:10,000及び重量平均分子量:100,000の2種のポリビニルピロリドン(AF−1、AF−2)、塩化カルシウム、抑制剤AF−3、AF−4、AF−5、AF−6、AF−7、硬膜剤H−1、H−2及び防腐剤Ase−1を添加した。
上記試料101の作製に用いた各沃臭化銀乳剤の特徴を下表に表示する。なお、平均粒径は沃臭化銀乳剤c、d、e、f、g、hについては、投影面積が同じである円相当の直径(平均値)で、沃臭化銀乳剤a、b、iについては、立方体の一辺長(平均値)で表した。

沃臭化銀乳剤iを除く各乳剤は、上記に記載した各増感色素を添加した後、トリフェニルホスフィンセレナイド、チオ硫酸ナトリウム、塩化金酸、チオシアン酸カリウム等を添加し、カブリ−感度の関係が最適になるように化学増感を施した。
上記作製した試料101は、撮影表示感度が200で、総塗布銀量は4.15g/mである。
後述の方法で求めた試料101のCrm値は840、品質値QCは2.1であった。
〔試料102〜108の作製〕
上記試料101において、各感光性層で用いる沃臭化銀乳剤の平均粒径、アスペクト比、化学増感条件、銀量量と各感光性層で用いるカプラー(含むカラードカプラー)、DIRカプラーの添加量、中間層のAS剤等を適宜調製して、下記に記載の撮影表示感度、Crm値、品質値QCとなるようにして、試料102〜108を作製した。
〔Crm値の測定〕
上記作製した試料101〜108をパトローネに収納した後、市販の135サイズ用一眼レフカメラに装填し、マクベスカラーチャート(24段)を、色温度4800°Kの太陽光源下で、適正露出条件(N)、適正露出条件に対し−2絞りアンダーの露出条件(U)及び適正露出条件に対し+2絞りオーバーの露出条件(O)で撮影した後、特開平10−123652号の段落[0220]〜同[0227]に記載の現像処理工程に従ってカラー現像処理を行った後に、各露出において、マクベスカラーチャートのN5グレー(18%反射のグレーチャート)がL=50、a=0、b=0となる露光条件でカラープリントにプリントしたとき、カラーチャートBlue、Green、Red、Yellow、Magenta、CyanのメトリッククロマCab総合計を求め、これをCrm値とした。
なお、感光材料の色度は、カラーアナライザー(村上色彩社製CMS−1200)で測定し、2°視野の等色関数、観察光源として標準光のC光源を用いてL空間の色度点を求めた。
〔階調度の測定〕
各試料を、4800°Kの光源を用いて、1/200秒で光学ウェッジを介して露光を与えた。次いで、特開平10−123652号の段落[0220]〜同[0227]に記載の現像処理工程に従ってカラー現像処理を行った後に、形成された画像濃度を透過型光学濃度計、X−rite社製濃度計を用いて、横軸が露光量(logE)、縦軸が発色濃度(D)からなるイエロー、マゼンタ及びシアンの特性曲線を作成し、下記の各露光域間を結ぶ直線の傾きを求め、これを階調度とした。
γU:露光量点(−0.1−log10S)と露光量点(0.9−log10S)を結ぶ直線の傾き(tanθ)
γN:露光量点(0.5−log10S)と露光量点(1.5−log10S)を結ぶ直線の傾き(tanθ)
γO:露光量点(2.0−log10S)と露光量点(3.0−log10S)を結ぶ直線の傾き(tanθ)
〔品質値QCの測定〕
上記作製した試料101〜108をパトローネに収納した後、市販の135サイズ用一眼レフカメラに装填し、色温度4800°Kの光源下で、マクベスカラーチャート(24段)を、適正露出条件に対して−4絞りアンダー〜+1絞りオーバーの露出条件で撮影し、更に、屋外での逆光シーン、ストロボシーンについて、被写体までの撮影距離を4段階で変化させながら、被写体の背景色をグレー、白、黒、緑、黄色に変化させながら適正露出条件を中心に−2絞りアンダーから+1絞りオーバーの範囲で、被写体として1〜5人と人数変化させてシーン数としては約100シーンずつ撮影した。また、背景が白壁、青空等の被写体より明るいバックを用いたシーンで中央重点測光により適正露出条件を中心に−1絞りアンダーから+1絞りオーバーまで撮影し、特開平10−123652号の段落[0220]〜同[0227]に記載の現像処理工程に従ってカラー現像処理を行った後に、前述の方法に従って品質値QCを求めた。
以上により得られた結果を下表に示す。


なお、γU/γN及びγO/γNの値は、赤感光性層、緑感光性層、青感光性層ともほぼ近似の値であったため、代表として緑感光性層の各階調度のみを表示した。
〔プリントの色変動、画質評価〕
(アナログプリンターによるアンダー露出シーンのプリント色品質の評価)
上記作製した試料101〜108をパトローネに収納した後、市販の135サイズ用一眼レフカメラ(カメラA)と固定焦点、固定絞り、固定シャッタースピードの簡易カメラ(カメラB)とに装填し、アンダー露出シーンとして、夕暮れ及び室内の通常で2絞りアンダー相当のシーンを、また適正露出シーンとして屋外の昼光下で順光のポートレートを、またオーバー露出シーンとして白壁、夏の砂浜等の被写体よりも明るいバックを用いた通常で2絞りオーバー相当のシーン設定で、各シーンをランダムに撮影した。
上記撮影済みの各試料を、特開平10−123652号の段落[0220]〜同[0227]に記載の現像処理工程に従ってカラー現像処理を行った後、アナログプリンター(コニカ社製 ナイスプリントシステムNPS858:1ch型)を使用して、コニカ(株)製カラーペーパーQAタイプA7にプリントし、現像処理(コニカCPK−2−21)を行って、各試料当たり100枚のプリントを出力し、そのプリントの仕上がりの色品質(プリントレベル)について、一般被験者10人により目視観察を行い、下記に記載の基準に則り4段階でそれぞれ評価した。
◎:アンダー露出シーン〜オーバー露出シーンで、コントラスト、色再現ともに極めて良好な仕上がりである
○:アンダー露出シーン〜オーバー露出シーンで、コントラストと色再現ともにほぼ良好である
△:アンダー露出シーン〜オーバー露出シーンにおいて、アンダー露出シーン及びオーバー露出シーンで色バラツキ及びコントラストの低下がやや認められる
×:アンダー露出シーン〜オーバー露出シーンの全てのシーンで、明らかな色バラツキ及びコントラストの低下が認められる
(デジタルプリンターによるコントラスト、色再現性の評価)
上記アナログプリンターによる評価で作成した試料のうち、カメラBを用いて撮影、現像した試料について、デジタルプリンター(コニカ社製 KONICA QD21)を使用して、コニカ(株)製カラーペーパーQAタイプA7を用いてL版サイズ(プリント倍率:4.5倍)に各々100枚プリントし、現像処理(コニカCPK−2−21)を行って、そのプリントの画質について、一般被験者10人により、前記アナログプリントとの相対目視観察を行い、下記に記載の基準に則り4段階でそれぞれ評価した。
◎:アナログプリントに比較し、アンダー露出シーン及びオーバー露出シーンで極めて良好なコントラスト変換が行われ、かつ他のプリント品質に問題が認められない
○:アナログプリントに比較し、アンダー露出シーン及びオーバー露出シーンで良好なコントラスト変換が行われ、かつ他のプリント品質に問題が認められない
△:アナログプリントに比較し、ほぼ同等のコントラストであり、問題ない仕上がり
×:アナログプリントに比較し、コントラストを強調しすぎ、不自然なプリントで許容範囲外であると判断される
(デジタルプリンターによるプリントの色品質の評価:アンダーシーン)
上記カメラBで撮影した試料のうち、アンダー〜適正露出条件で撮影されたシーンについて、デジタルプリンター(コニカ社製 KONICA コニカ−QD21)でプリントした。なお、デジタルプリンターは覆い焼き補正を自動で行う状態で行った。
プリントの仕上がりの色品質(プリントレベル)について、プリンターの使用経験者10人により、好ましいニュートラルのレベルからのプリントレベル変動の発生比率を加味し、下記に記載の基準に則り4段階でそれぞれ評価した。
◎:プリンターでのカラー補正が5%未満で良好な仕上がり
○:カラーボタンで5〜10%の補正を要するプリントの出現が10%未満の発生率であり、ほぼ良好な仕上がり
△:カラーボタンで5%以上10%未満の補正を要するプリントの出現が10〜30%以内の発生率であるが、実用上許容の範囲になる
×:カラーボタンで10〜30%の補正を要するプリントの出現が30%以内の発生率であり、実用に耐えない
以上の評価により得られた結果を、下表に示す。

【産業上の利用の可能性】
以上のように、本発明に係る構成により、撮影時に用いるカメラ品質にかかわらず、コントラスト及び色再現性に優れたプリント品質が得られ、かつデジタルプリント適性を有する低銀量のハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、それぞれ少なくとも1層の赤色感光性層、緑色感光性層及び青色感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、発色現像処理後、下記で規定するアンダー露出、適正露出及びオーバー露出より算出されるCrm値が下式(1)を満足し、かつ該赤色感光性層、緑色感光性層及び青色感光性層のいずれもが、アンダー露出、ノーマル露出及びオーバー露出での階調度(γU、γN、γO)が、下式(2)及び(3)を同時に満足することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(1)
Crm値≧1045−log10S×75
〔式(1)において、Sは撮影表示感度であり、Crm値は下記のように定義する。
Crm値とは、マクベスカラーチャート(24段)を、色温度4800°Kの太陽光源下で、適正露出条件(N)、適正露出条件に対し−2絞りアンダーの露出条件(U)及び適正露出条件に対し+2絞りオーバーの露出条件(O)で撮影し、発色現像処理後に、それぞれの露出について、マクベスカラーチャートのN5グレー(18%反射のグレーチャート)がL=50、a=0、b=0となる露光条件でカラープリントにプリントしたとき、カラーチャートBlue、Green、Red、Yellow、Magenta、CyanのメトリッククロマCabを求め、アンダー露出、適正露出及びオーバー露出での合計値である。〕
式(2)
0.92≦γU/γN≦1.05
式(3)
0.92≧γO/γN≧1.05
〔式(2)、(3)において、階調度γU、γN、γOは、発色現像処理後、露光量と発色濃度の関係を示す濃度関数曲線(D−logE)を作成し、以下の方法に従ってもとめる。
γU:露光量点(−0.1−log10S)と露光量点(0.9−log10S)を結ぶ直線の傾き(tanθ)
γN:露光量点(0.5−log10S)と露光量点(1.5−log10S)を結ぶ直線の傾き(tanθ)
γO:露光量点(2.0−log10S)と露光量点(3.0−log10S)を結ぶ直線の傾き(tanθ)
ただし、Sは撮影表示感度である。〕
【請求項2】
支持体上に、それぞれ少なくとも1層の赤色感光性層、緑色感光性層及び青色感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、発色現像処理後、下記で規定される品質値QCが下式(4)を満足し、かつ該赤色感光性層、緑色感光性層及び青色感光性層のいずれもが、アンダー露出、ノーマル露出及びオーバー露出での階調度(γU、γN、γO)が、前式(2)を満足することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(4)
QC≧15.982×S−0.378
〔式(4)において、Sは撮影表示感度であり、好ましくは100〜800であり、QCは下記のように定義する。
マクベスカラーチャート(24段)を、色温度4800°Kの光源下で、適正露出条件に対して−3絞りアンダーの露出条件で撮影し、発色現像処理の後にマクベスカラーチャートのN5グレー(18%反射のグレーチャート)がL=50、a=0、b=0となる露光条件でカラープリントにプリントし、グレー以外の18色の色度測定し、下式(5)に従い品質値QCを計算する。
式(5)
QC=(Cr+Ch)/2
式(5)において、Cr及びChは以下のようにして決定する。
撮影に用いたマクベスカラーチャート18色の色度値から算出したメトリッククロマCabの平均と、同様にプリントから求められた各輝度での18色のメトリッククロマCabの平均との比をCr0とし、また、マクベスカラーチャート18色のオリジナルの各色ベクトルと、プリントから求められた各色のベクトルから、色毎での色度ずれをベクトル差の角度の絶対値で求め、その平均値をCh0としたとき、
式(6)
Cr=20×log10(Cr0)
式(7)
Ch=7.0−3×log10(Ch0)
により、Cr及びChを算出する。〕
【請求項3】
金属銀に換算した総塗布銀量が、下式(8)で規定する銀量値B(g/m)であることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(8)
B≦10.0−10(−0.005×S+0.85)
〔式中、Sは撮影表示感度を表す。〕
【請求項4】
前記撮影表示感度Sが、100〜800であることを特徴とする請求の範囲第1項から第3項のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。

【国際公開番号】WO2004/046818
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【発行日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553108(P2004−553108)
【国際出願番号】PCT/JP2002/012109
【国際出願日】平成14年11月20日(2002.11.20)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】