説明

ハンドタイプの播種器

【課題】野菜や草花の種子を畑地や菜園などに一粒毎に点播可能なハンドタイプの播種器の提供を図る。
【解決手段】
種子収納容器と本体と搬送管とで構成されるハンドタイプの播種器であって、
前記本体には種子選定機構を備え、種子通過孔と遮断壁を形成する摺動板と種子の数量を限定する棒状のストッパーピンと磁力の反発作用で往復起動するマグネット部とを備える前記スライドレバーを、前記種子導入穴と前記種子排出穴との間に直交させて、種子の通過を遮断可能とすると共に、前記種子選定リング内に複数の種子が装填されるのを防ぐ機能及び任意の個数の種子の装填を可能とするために、該ストッパーピンを種子選定リング内部から外部までスライドして位置決め固定できる構造としたことを特徴とするハンドタイプの播種器

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜や草花の種子を畑地や菜園などに一粒毎に点播可能なハンドタイプの播種器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の大根や人参などの野菜の小粒種子の播種方法は、作業者が畑や菜園で袋詰めされた種子を掌に移し、指で揉み出しながら土壌に点播する方法が主に採られている。しかしながら、その種子の播種状態に適した量を適度に指で揉み出しながら点播するには、熟練度を必要とする一方、高価な種子を一粒毎に点播することは容易な作業ではなかった。
【0003】
また、適量の種子を均等且つ、連続して播種するには、さらに熟練度を必要とするもので、初心者においては種子量を必要以上に播種してしまうことにより、その後の生育段階での間引き作業を必要としたり、種子の購入コストの増大につながるものであった。
【0004】
一方、野菜や草花の種子を畑や菜園などの土壌に一粒毎に点播するハンドタイプの播種器においては、下記の要件が満たされていることが望ましいとされる。
(a)小型、軽量で持ち運びし易いこと。
(b)ハンドタイプで、片手で持ちやすいこと。
(c)播種用溝掘り機能と土寄せ機能があること。
(d)腰を曲げない姿勢で播種作業ができること。
(e)操作が簡単であること。
(f)装置のメンテナンス作業が簡単な構造であること。
(g)種子の種類や大きさに合わせて播種できる構造であること。
(h)安価であること。
(i)一粒毎ならびに多粒毎の切り替えができる構造であること。
(j)種子の表面を傷つけない構造であること。
(k)種子の残量が外部から視認できる構造であること。
(l)作業者の意図に合わせて種子の搬送が確実に行える構造であること。
【0005】
従来より、以上の要件を満たそうとするハンドタイプの播種器が提案されている。
例えば、種子ホッパーの中に入れた種子が、上板、中板、下板を3枚重ねにした本体フレームの上板の孔から、中板の幅の中央部に嵌め込まれて且つ、摺動可能な種子押し棒が常時スプリングで押し出された初期の位置で待機する孔に落下して、その孔の容積により小粒な種子の大きさや数量が決まり、次に前記押し出し棒の所定の位置まで押し込むことにより前進幅で、下板の中央部の孔の下部の出口パイプから下方に種子が落下する構造の「種まき器」(特許文献1参照)が提案され、公知技術となっている。
【0006】
しかしながら、上記の「種まき器」(特許文献1参照)の提案は、前述の(c)、(d)、(g)、(i)、(j)、(l)の要件を満たしておらず、特に押し出し棒によって押し込まれた種子が、中央部の孔の壁面に摺れて表面を傷つける構造であることが指摘されるものである。
【0007】
また、上部枠とV字形の下部枠で構成する中空軸の先端端部に、下方を開放した菱形開口部を有する仕切り板を設け、この仕切り板下方前方に、前記下部枠と連続するV字形の送り出し溝を設け、この送り出し溝の内面と前記仕切り板の菱形開口部に内接するそろばん玉状の弾性部材からなる回転体を設けて、前記仕切り板の下方に種子通過可能な大きさの流出口と、前記送り出し溝との接点に種子より小さい送り出し口を形成した「種蒔き器」(特許文献2参照)が提案され、公知技術となっている。
【0008】
しかしながら、上記の「「種蒔き器」(特許文献2参照)の提案は、前述の(c)、(d)、(g)、(i)、(j)、(k)、(l)の要件を満たしておらず、特に種蒔き器の全長が短いため、播種作業が腰を曲げないとできないことと、種子を回転体とV字形の下部枠で挟み込んで送り出す手法を採用しているため、種子が連続して送られることにより作業者の意図に合わせて種子の搬送が確実に行えない問題が指摘されるものである。
【0009】
また、本出願人が係わる種子を収納するための容器と、播種操作及び播種量を調整する本体と、種子播種位置へ導く誘導部とで構成される「播種器」(特許文献3参照)が提案され、公知技術となっている。
【0010】
しかしながら、上記の「播種器」(特許文献3参照)の提案は、前述の(g)、(i)、(j)の要件を満たしておらず、特に種子を一粒毎する工程で平板による分離方式を採用していることで、種子を傷つけてしまう構造である問題が指摘されるものである。
【0011】
本出願人は、それらの問題を解決し、さらに前述の播種器に求められる要件を満たすことができる一粒毎に点播するハンドタイプの播種器を開発し、また同時に一粒播きのみならず、任意の個数の種子を選択的に播種可能とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004-283035号公報
【特許文献2】特表2009-254277号公報
【特許文献3】特開2010-268744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑み、野菜や草花の種子を畑地や菜園などに一粒毎に点播可能なハンドタイプの播種器の提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のハンドタイプの播種器は、種子収納容器と本体と搬送管とで構成されるハンドタイプの播種器であって、前記種子収納容器は、中空の透明素材で形成し、該中空部を種子収納貯蔵部として利用し、一端を種子投入口として形成して密封キャップで止栓し、他端を種子収納容器排出口として前記本体の種子導入穴又は種子導入ホルダーに着脱自在に連結可能な形状に形成して成り、前記本体は、種子選定機構を備え、該種子選定機構の前後には前記種子導入穴と種子排出穴が連通するように穿設し、該種子導入穴と該種子排出穴の間にはスライドレバーを摺動状態でスライド可能にするためのスライド溝穴を形成し、前記種子導入穴の本体端部は、前記種子収納容器排出口又は前記種子導入ホルダーを着脱自在に連結可能な形状に形成し、該種子導入穴の内部には、中心に種子選定通過孔を設けた種子選定リングを内設する前記種子導入ホルダーを着脱自在に設けると共に、該種子搬出穴の本体端部は、前記搬送管を着脱自在に連結可能に形成し、前記種子選定機構は、種子通過孔と遮断壁を形成する摺動板と種子の数量を限定する棒状のストッパーピンと磁力の反発作用で往復起動するマグネット部とを備える前記スライドレバーを、前記種子導入穴と前記種子排出穴との間に直交させて、種子の通過を遮断可能とすると共に、前記種子選定リング内に複数の種子が装填されるのを防ぐ機能、及び任意の個数の種子の装填を可能とするために、該ストッパーピンを種子選定リングの内部から外部までスライドして位置決め固定できる構造とし、前記搬送管は、中空の透明素材で形成し、前記本体の種子排出穴の本体端部に着脱自在に連結可能な形状に形成して成る手段を採る。
【0015】
また本発明は、前記搬送管の先端部に耕作具を備えた構成の前記ハンドタイプの播種器であって、該耕作具には、土中に種子を播種するため播種用溝掘り機能と、播種後に種子を土壌で被覆するための土寄せ機能を果たす耕作用突起を形成すると共に、前記搬送管より搬送された種子を該搬送管の延長方向から向きを変えて放出させるための放出口を設けた手段を採る。
【0016】
また本発明は、前記種子選定機構の複数の種子選定リングが、孔径が異なる種子選定通過孔を一列に列設するスライドプレートに着脱自在に装着され、該スライドプレートが、前記種子導入ホルダーの端部と前記スライドレバーの間に当接して摺動することで、種子選定通過孔の選択機能を有する種子選定機構である手段を採る。
【0017】
また本発明は、前記種子選定機構の複数の種子選定リングが、孔径が異なる種子選定通過孔を円周状に列設する回転プレートに着脱自在に装着され、該回転プレートが、前記種子導入ホルダーの端部と前記スライドレバーの間に当接して摺動することで、種子選定通過孔の選択機能を有する種子選定機構である手段を採る。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るハンドタイプの播種器によれば、種子選定機構が、スライドレバーの遮断壁と棒状のストッパーピンで分離される構造であるため、一粒蒔きや複数播き、或いは連続蒔きの場合であっても種子を傷つけることなく種子の種類や大きさに合わせて遮断(分離)、搬送、播種できる優れた効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係るハンドタイプの播種器によれば、種子収納容器と本体と搬送管と播種具とが、直線状に連結される小型、軽量で且つ、安価である上、片手で持ちやすい棒状のハンドタイプの構造であると共に、農業用の播種器としてや家庭用の種蒔き器として手軽に購入できることや、畑や菜園などの播種作業が腰を曲げない楽な姿勢でできる優れた効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係るハンドタイプの播種器によれば、搬送管の先端に耕作具を備えれば、土中に種子を播種するための播種用溝掘り作業と播種後に種子を土壌で被覆するための土寄せ作業が同時にできる優れた効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係るハンドタイプの播種器によれば、極めて簡単な構造で形成されているため、種子送り操作が簡単であることや、作業者の意図に合わせて種子の搬送が確実に行えることから機械操作に疎い年配者や主婦などにおいても装置のメンテナンス作業が容易に行える共に、種子収納容器が中空の透明素材から形成されていることから、種子の残量が外部から視認できる優れた効果を奏する。
【0022】
また、本発明に係る請求項3及び4の発明では、種子選定機構の種子選定リングを交換することなく、スライドプレートや回転プレートに差し替えることで種子の種類や大きさに合わせて播種作業ができる優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態を示す拡散分解図である。
【図2】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明に係る種子選定機構の説明図である。
【図4】本発明の作動状態を示す要部断面説明図である。
【図5】本発明の播種作業手順を示す説明図である。
【図6】本発明に係る請求項3記載の実施形態を示す拡散分解図である。
【図7】本発明に係る請求項3記載の実施形態を示す断面説明図である。
【図8】本発明に係る請求項4記載の実施形態を示す拡散分解図である。
【図9】本発明に係る請求項4記載の実施形態を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のハンドタイプの播種器は、特に、種子選定機構において、種子通過孔と遮断壁を形成する摺動板と種子の数量を限定する棒状のストッパーピンと磁力の反発作用で往復起動するマグネット部とを備える前記スライドレバーを、前記種子導入穴と前記種子排出穴との間に直交させて、種子の通過を遮断可能とすると共に、前記種子選定リング内に複数の種子が装填されるのを防ぐ機能及び任意の個数の種子の装填を可能とするために、該ストッパーピンを種子選定リング内部から外部までスライドして位置決め固定できる構造としたことで、種子の数を任意に特定できるようにしたことを最大の特徴とするものである。以下、実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明のハンドタイプの播種器における請求項1記載の実施形態を示す拡散分解図である。
本発明のハンドタイプの播種器1は、把手と種子収納部を兼ねる種子収納容器30と、種子選定機構12を着脱自在に備える本体10と、播種作業負担を軽減する長手仕様の搬送管40と、を直線状に連結して形成されるものである。
【0026】
図2は、本発明のハンドタイプの播種器における請求項1記載の実施形態を示す説明図であり、図2(a)は、本発明のハンドタイプの実施形態を示す断面説明図である。ハンドタイプの播種器1は、種子収納容器30と本体10と搬送管40とで構成され、具体的な形状寸法は、例えば、種子収納容器30はパイプ長150mm、パイプ径25mm。本体10は50×25×30mm。搬送管40はパイプ長350mm、パイプ径15mm、全長550mmで形成する。
【0027】
本体10は、種子選定機構12を備え、該種子選定機構12の前後には種子導入穴11と種子排出穴17が連通するように穿設し、該種子導入穴11と該種子排出穴17の間にはスライドレバー20を摺動状態でスライド可能にするためのスライド溝穴19を形成し、種子導入穴11の本体端部は、種子収納容器排出口33又は種子導入ホルダー15を着脱自在に連結可能な形状に形成し、該種子導入穴11の内部には、種子選定リング13を内設する種子導入ホルダー15を着脱自在に設けると共に、該種子搬出穴17の本体端部は、搬送管40を着脱自在に連結可能に形成されるもので、種子を一粒毎にまたは連続的に放出し、さらに、種子Sの表面を傷つけない構造を有するものである。
【0028】
種子選定機構12は、種子通過孔28と遮断壁23を形成する摺動板21と種子Sの数量を限定する棒状のストッパーピン26と磁力の反発作用で往復起動するマグネット部25とを備えるスライドレバー20を、種子導入穴11と種子排出穴17との間に直交させて、種子Sの通過を遮断可能とすると共に、種子選定リング13内に複数の種子Sが装填されるのを防ぐ機能を本体10に取り付け、種子Sの大きさや種類に合わせて着脱自在に設けられるものである。そして、該ストッパーピン26は、スライドレバー20の保持部により
【0029】
種子選定リング13は、ピン孔16を備える種子導入ホルダー15内にセットビスで固定され、種子Sの大きさによって種子選定通過孔22が異なる差し替え自在な図(b)に示すようなコマ状のリングで、ピン溝14を片面に設けて棒状のストッパーピン26の摺動を可能とすることで、種子選定リング内に複数の種子が装填されるのを防ぐ機能及び任意の個数の種子の装填を可能としている。
【0030】
種子導入ホルダー15は、種子選定リング13を内設してセットビスで固定されるもので、ピン孔16で棒状のストッパーピン26の通過を可能としている。種子収納容器30内の種子Sを集結するホッパーの役目と、種子選定リング13の種子選定通過孔22に種子Sを序列する役目と、種子収納容器30を本体10に連結する役割を果たす構造を有して形成されている。
【0031】
スライドレバー20は、種子導入穴11と該種子排出穴17の間で、種子通過孔28と遮断壁23を形成する摺動板21と種子の数量を限定する棒状のストッパーピン26と磁力の反発作用で往復起動するマグネット部25とをラチェットストッパー62の作動範囲でスライド可能とするスライド溝穴19を備えて形成され、本体10の側面に種子選定機構12と直交して設けられる。
【0032】
マグネット部25は、本体10側とスライドレバー20側に対向して設けられ、磁力の反発作用でスライドレバー20が往復起動するもので、従来のスプリング等を使用した付勢手段と比較して構造が極めて簡単且つ、軽量で誤作動がないものである。
【0033】
ストッパーピン26は、上端面にピン溝14が形成される種子選定リング13と、該種子選定リング13を内設するピン穴16を外筒に形成する種子導入ホルダー15とからなる種子選定機構12のピン穴16を貫通し、さらにピン溝14を摺動して種子導入ホルダー15の種子通過孔28の上方端を遮断して種子Sの数量を限定する棒状のピンである。形状が棒状のピンであることから、最小限の接触面積で種子Sに接触し、さらに接触面に空間隙間があることによって無理な状態で種子Sが遮断される場合は、種子Sが回転して逃げられる状態になることから、種子Sの表面を傷つけることなく遮断することができる。なお、該ストッパーピン26の取付位置は、種子選定リング13との関係において、距離を調整できるようになっている。また、ピン先端の突き出し量を調整できるようにすることも有効であり、係る調節機構を設けた場合は、その調整により、連続蒔きの場合でも、スライドレバー20をフルプッシュした状態で、排出量を抑制して一気に種子が排出されてしまうのを防ぎ、穏やかな連続排出状態に調整することができるようになる。係る突き出し量の調整は、構造的にはネジ式等が考え得る。
【0034】
種子収納容器30は、中空の透明素材で形成され、該中空部を把手を兼ねる種子収納貯蔵部として利用し、一端を種子投入口31として形成して密封キャップ34で止栓し、他端を種子収納容器排出口33として本体10の種子導入穴11又は種子導入ホルダー15に着脱自在に連結可能な形状に形成されているため、播種作業中に種子Sの残量を外部から視認することができる。
【0035】
搬送管40は、中空の透明素材で形成し、本体10の種子排出穴17の本体端部に着脱自在に連結可能な形状に形成されている。搬送管40を35cm程度の長さにすることによって、直接耕作地面Dに種子Sを播種することができるため、播種作業において腰を屈めることなく楽な姿勢で農作業ができる。
【0036】
耕作具50は、前記のように播種作業負担を軽減する長手仕様の搬送管40としたときに、任意に該搬送管40の先端部に装着するものである。該耕作具50は、耕作地面Dに種子Sを播種するため播種用溝掘り機能と、播種後に種子Sを土壌で被覆するための土寄せ機能を果たす耕作用突起51を搬送管40の先端部に形成すると共に、搬送管40より搬送された種子Sを該搬送管40の延長方向から向きを変えて放出させるための放出口52を設けて形成されるもので、先端部に播種用溝掘り機能と土寄せ機能を備える耕作用突起51を形成することにより、播種溝堀り作業ならびに土寄せ作業を同時に行うことができる。
【0037】
図2(b)は、本発明のハンドタイプの種子選定リングの実施形態を示す説明図である。
種子選定リング13は、種子選定通過孔22が基本的な孔径の1.8mm、2.5mm、3.0mm、4.5mm、6.5mmの5種類程度を揃え、それ以外は、播種する野菜や草花の種類や大きさに合わせて揃えればよい。
【0038】
図3は、本発明に係る種子選定機構12の説明図である。図3(a)は一粒播種、(b)は二粒播種、図3(c)は三粒播種時の例をそれぞれ示している。例えば、直径が約1.5mm程度の種子を一粒播種する場合において、種子選定リング13の種子選定通過孔22の内径が1.8mmで厚みが5mmのものを用いた場合、種子選定リング13内には3個程度充填されることになる。そこで、スライドレバー20に設けられている棒状のストッパーピン26の位置を、種子選定リング13とスライドバー20の接触面から1.5mmから1.8mm程度の距離を離して位置させれば、二個目以降はストッパーピン26に遮られて落ちることはなく、一粒播種が可能となる。また、係るストッパーピン26位置を種子直径の約2倍、約3倍とすれば、図3(b)や図3(c)のように任意の個数選択による播種が可能となる。
【0039】
図4は、本発明のハンドタイプの播種器における請求項1記載の作動状態を示す要部断面説明図であり、図4(a)は、スライドレバー20に設けられている棒状のストッパーピン26が上方に位置することで種子選定リング13の種子選定通過孔22が開放され、スライドレバー20の種子通過孔28が閉じている状態を示す。種子収納容器30に収納されている種子Sが、種子収納容器排出口33から種子導入ホルダー15のホッパー部18に集結され、該集結した種子Sが、種子収納容器30に収納されている種子Sの自重で種子導入ホルダー15の中心の種子通過孔28ならびに種子選定リング13の種子選定通過孔22に序列される。
【0040】
図4(b)は、スライドレバー20が下方にスライドし、種子選定リング13の種子選定通過孔22が棒状のスライドピン26によって遮断され、スライドレバー20の種子通過孔28が開放されて搬送管40に落下搬送される状態を示す。種子導入ホルダー15のピン穴16と種子選定リング13のピン溝14を通過する棒状のスライドピン26と、種子選定リング13の下方面を摺動するスライドレバー20の遮断壁23を形成する摺動板21によって種子Sは一粒毎に遮断される。
【0041】
図4(c)は、スライドレバー20が下方にスライドし、種子導入ホルダー15の棒状のスライドピン26を短く設定することで、種子導入ホルダー15の種子通過孔28と、種子選定リング13の種子選定通過孔22と、スライドレバー20の種子通過孔28が開放されることで搬送管40に連続的に落下搬送される状態を示している。種子導入ホルダー15の種子通過孔28と種子選定リング13の種子選定通過孔22とスライドレバー20の種子通過孔28を同時に開放することで、種子Sは遮断されることなく連続的に播種することができるものである。
【0042】
図4(d)は、スライドレバー20がマグネット部25の反発作用で上方に位置に戻され、種子選定リング13の種子選定通過孔22が開放され、スライドレバー20の種子通過孔28が閉じている状態を示している。一粒毎に遮断された種子Sは、スライドレバー20が上方にスライドすることによって遮断壁23が上方に位置して種子選定リング13の種子選定通過孔22が閉じられる。
【0043】
図5は、本発明のハンドタイプの播種器における請求項2記載の播種作業の手順を示す説明図である。
(1)畑や菜園などの現地にハンドタイプの播種器1を持参する。
(2)ハンドタイプの播種器1の先端部の耕作具50を耕作地面Dに押し当てて播種溝堀り作業を行う。
(3)ハンドタイプの播種器1のスライドレバー20を操作して種子Sを放出する。
(4)ハンドタイプの播種器1の先端部に設けたヘラ53で土寄せ作業を行う。
【0044】
以上のような簡単な作業で、播種溝堀り作業ならびに土寄せ作業が同時に行えるもので、
腰を曲げることなく、一粒毎に正確に播種作業が出来るものである。
【0045】
図6は、本発明のハンドタイプの播種器における請求項3記載の実施形態を示す拡散分解図である。本発明のハンドタイプの播種器1は、種子選定機構12の複数の種子選定リング13が、孔径が異なる種子選定通過孔61を一列に列設するスライドプレート60に着脱自在に装着され、該スライドプレート60が、種子導入ホルダー15の端部とスライドレバー20の間に当接してラチェットストッパー62の作動範囲で摺動することで、種子選定通過孔61の選択機能を有する種子選定機構12である構造を有するもので、スライドプレート60をスライドさせることによって種子Sの大きさや種類に合った種子選定通過孔61を任意に設定することができるものである。
【実施例2】
【0046】
図7は、本発明のハンドタイプの播種器における請求項3記載の実施形態を示す断面説明図である。下記に動作手順を説明する。
(1)スライドプレート60の種子選定通過孔61を目的とする種子Sの大きさに合わせてスライドさせる。
(2)本体10を下方に向けることによって、種子収納容器30に収納されている種子Sが、種子導入ホルダー15のホッパー部18に集結される。
(3)種子導入ホルダー15のホッパー部18に集結した種子Sが、種子収納容器30に収納されている種子Sの重みで種子導入ホルダー15の中心の種子通過孔28に序列される。
(4)種子導入ホルダー15のピン穴16とスライドプレート60のピン溝14を通過する棒状のスライドピン26と、スライドプレート60の下方面を摺動するスライドレバー20の遮断壁23を形成する摺動板21によって種子Sは一粒毎に遮断される。
(5)また、種子導入ホルダー15の種子通過孔28とスライドプレート60の種子選定通過孔61とスライドレバー20の種子通過孔28を同時に開放することで、種子Sは遮断されることなく連続的に播種することもできる。
(6)一粒毎に遮断された種子Sは、スライドレバー20が上方にスライドすることによって遮断壁23が上方に位置し、スライドレバー20の種子通過孔28が開放され、自重で搬送管40に放出される。
(7)種子Sを耕作地面Dに播種する。(図5参照)
【実施例3】
【0047】
図8は、本発明のハンドタイプの播種器における請求項4記載の実施形態を示す拡散分解図である。本発明のハンドタイプの播種器1は、種子選定機構12の複数の種子選定リング13が、孔径が異なる種子選定通過孔71を円周状に列設する回転プレート70に着脱自在に装着され、該回転プレート70が、種子導入ホルダー15の端部とスライドレバー20の間に当接してラチェットストッパー62の作動範囲で摺動することで、種子選定通過孔71の選択機能を有する種子選定機構12である構造を有するもので、回転プレート70を回転させることによって種子Sの大きさや種類に合った種子選定通過孔71を任意に設定することができるものである。
【0048】
図9は、本発明のハンドタイプの播種器における請求項4記載の実施形態を示す断面説明図である。下記に動作手順を説明する。
(1)回転プレート70の種子選定通過孔71を目的とする種子Sの大きさに合わせて回転させる。
(2)本体10を下方に向けることによって、種子収納容器30に収納されている種子Sが、種子導入ホルダー15のホッパー部18に集結される。
(3)種子導入ホルダー15のホッパー部18に集結した種子Sが、種子収納容器30に収納されている種子Sの重みで種子導入ホルダー15の中心の種子通過孔28に序列される。
(4)種子導入ホルダー15のピン穴16と回転プレート70のピン溝14を通過するスライドピン26と、回転プレート70の下方面を摺動するスライドレバー20の遮断壁23を形成する摺動板21によって種子Sは一粒毎に遮断される。
(5)また、種子導入ホルダー15の種子通過孔28と回転プレート70の種子選定通過孔71とスライドレバー20の種子通過孔28を同時に開放することで、種子Sは遮断されることなく連続的に播種することもできる。
(6)一粒毎に遮断された種子Sは、スライドレバー20が上方にスライドすることによって遮断壁23が上方に位置し、回転プレート70の種子選定通過孔71が開放され、種子Sの自重で搬送管40に放出される。
(7)種子Sを耕作地面Dに播種する。(図5参照)
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のハンドタイプの播種器は、種子を傷つけることなく種子の種類や大きさに合わせて一粒毎ならびに多粒毎に切り替えて、分離、搬送、播種できるハンドタイプの播種器であることから、農作業、園芸用の播種作業用としてや、果樹や植木、菜園の粒状肥料の散布器としてや、魚類養殖用の餌やり器としても使用できるもので、本発明におけるハンドタイプの播種器の産業上の利用可能性は大とするものと解する。
【符号の説明】
【0050】
1 ハンドタイプの播種器
10 本体
11 種子投入穴
12 種子選定機構
13 種子選定リング
14 ピン溝
15 種子導入ホルダー
16 ピン孔
17 種子搬出穴
18 ホッパー部
19 スライド溝穴
20 スライドレバー
21 摺動板
22 種子選定通過孔
23 遮断壁
25 マグネット部
26 ストッパーピン
27 ピン穴
28 種子通過孔
30 種子収納容器
31 種子投入口
32 種子収納貯蔵部
33 種子収納容器排出口
34 密封キャップ
40 搬送管
50 耕作具
51 耕作用突起
52 放出口
53 ヘラ
60 スライドプレート
61 種子選定通過孔
62 ラチェットストッパー
70 回転プレート
71 種子選定通過孔
72 ラチェットストッパー
S 種子
D 耕作地面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子収納容器と本体と搬送管とで構成されるハンドタイプの播種器であって、
前記種子収納容器は、中空の透明素材で形成し、
該中空部を種子収納貯蔵部として利用し、
一端を種子投入口として形成して密封キャップで止栓し、
他端を種子収納容器排出口として前記本体の種子導入穴又は種子導入ホルダーに着脱自在に連結可能な形状に形成して成り、
前記本体は、種子選定機構を備え、該種子選定機構の前後には前記種子導入穴と種子排出穴が連通するように穿設し、該種子導入穴と該種子排出穴の間にはスライドレバーを摺動状態でスライド可能にするためのスライド溝穴を形成し、
前記種子導入穴の本体端部は、前記種子収納容器排出口又は前記種子導入ホルダーを着脱自在に連結可能な形状に形成し、該種子導入穴の内部には、中心に種子選定通過孔を設けた種子選定リングを内設する前記種子導入ホルダーを着脱自在に設けると共に、
該種子搬出穴の本体端部は、前記搬送管を着脱自在に連結可能に形成し、
前記種子選定機構は、種子通過孔と遮断壁を形成する摺動板と種子の数量を限定する棒状のストッパーピンと磁力の反発作用で往復起動するマグネット部とを備える前記スライドレバーを、前記種子導入穴と前記種子排出穴との間に直交させて、種子の通過を遮断可能とすると共に、前記種子選定リング内に複数の種子が装填されるのを防ぐ機能及び任意の個数の種子の装填を可能とするために、該ストッパーピンを種子選定リング内部から外部までスライドして位置決め固定できる構造とし、
前記搬送管は、中空の透明素材で形成し、前記本体の種子排出穴の本体端部に着脱自在に連結可能な形状に形成して成ることを特徴とするハンドタイプの播種器。
【請求項2】
前記搬送管の先端部に耕作具を備えた構成の前記ハンドタイプの播種器であって、
該耕作具には、土中に種子を播種するため播種用溝掘り機能と、播種後に種子を土壌で被覆するための土寄せ機能を果たす耕作用突起を形成すると共に、前記搬送管より搬送された種子を該搬送管の延長方向から向きを変えて放出させるための放出口を設けたことを特徴とする請求項1に記載のハンドタイプの播種器。
【請求項3】
前記種子選定機構の複数の種子選定リングが、孔径が異なる種子選定通過孔を一列に列設するスライドプレートに着脱自在に装着され、該スライドプレートが、前記種子導入ホルダーの端部と前記スライドレバーの間に当接して摺動することで、種子選定通過孔の選択機能を有する種子選定機構であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハンドタイプの播種器。
【請求項4】
前記種子選定機構の複数の種子選定リングが、孔径が異なる種子選定通過孔を円周状に列設する回転プレートに着脱自在に装着され、該回転プレートが、前記種子導入ホルダーの端部と前記スライドレバーの間に当接して摺動することで、種子選定通過孔の選択機能を有する種子選定機構であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハンドタイプの播種器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−170451(P2012−170451A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39079(P2011−39079)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【特許番号】特許第4855543号(P4855543)
【特許公報発行日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(503083236)
【Fターム(参考)】