説明

ハンドル装置

【課題】扉を閉めてハンドルを倒伏位置に押し下げたときに、ハンドルが自動的に錠止されるハンドル装置を提供する。
【解決手段】キャビネットの扉に取り付けられるハウジング2と、このハウジング2に対し水平軸心の回りで回動自在に上端近傍が枢支されたハンドル4とを備え、ハンドル4を手前に引く操作によってキャビネット側の係止片に対する係止が外れて扉が開かれるようにしたハンドル装置1であって、ハウジング2には、ハンドル4をハウジング2に対して下端を飛び出させて傾ける方向に付勢するボールプランジャー12が設けられ、ハンドル4の下端部にはハンドル4が閉状態のときにハウジング2に錠止する錠前ユニット24が設けられ、ハウジング2の下端部にはハンドル4の錠前ユニット24の止め板金35に係合する方向にばね付勢された受け金レバー13が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器類を格納したボックス本体に扉を係止するハンドル装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来から用いられるハンドル装置の錠前ユニットが記載されている。錠前ユニットは公知のシリンダー錠で構成されておりローターの内端部に連動装備したカム、あるいはローター自体に形成した偏心突起が錠止手段であるラッチボルトの受動孔に挿入されている。
【0003】
所定の鍵を用いて錠前ユニットのローターを回すとラッチボルトが上下方向にスライドして固定ケースの背面壁部の受溝部に係脱する。ラッチボルトの先端部が受溝部に係合することによって操作ハンドルが固定ケース内の倒伏位置に錠止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−73597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるハンドル装置の錠前ユニットでは、ラッチボルトを下方向にスライドさせて、ラッチボルトと固定ケースの背面壁部の受溝部との係合を解除して扉を開けるときのみならず、扉を閉めてラッチボルトと固定ケースの背面壁部の受溝部とを係合させるときにも鍵を用いて錠前ユニットのローターを回さなければならない。
【0006】
扉を閉めて操作ハンドルを固定ケース内の倒伏位置に押し下げたときに、ラッチボルトの先端部が受溝部に自動的に係合すれば操作手順が簡素化される。
本発明の目的は、このような課題を解決するもので、扉を閉めてハンドルを倒伏位置に押し下げたときに、ハンドルが自動的に錠止されるハンドル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために本発明は、キャビネットの扉に取り付けられるハウジングと、このハウジングに対し水平軸心の回りで回動自在に上端近傍が枢支されたハンドルとを備え、前記ハンドルを手前に引く操作によってキャビネット側の係止片に対する係止が外れて扉が開かれるようにしたハンドル装置であって、
ハウジングにはハンドルをハウジングに対して下端を飛び出させて傾ける方向に付勢する付勢手段を設け、ハンドルの下端部にはハンドルが閉状態のときにハウジングに錠止する錠前ユニットが設けられ、前記ハウジングの下端部にはハンドルの錠前ユニットの止め金板に係合する方向にばね付勢された受け金が設けられてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、ハンドルの下端部にはハンドルが閉状態のときにハウジングに錠止する錠前ユニットが設けられ、ハウジングの下端部にはハンドルの錠前ユニットの止め金板に係合する方向にばね付勢された受け金が設けられ、ハウジングにはハンドルをハウジングに対して下端を飛び出させて傾ける方向に付勢する付勢手段を設けているので、錠前ユニットのシリンダーを回し止め板金を下方に移動して収容したときに、ハンドルが付勢手段によってハウジングに対して下端が飛び出して傾いた状態となり、止め金板が上方に突出した状態で扉を閉めてハンドルを倒伏位置に押し下げると、止め金板がばね力に抗して受け金を回動させて受け金に係合し、ハンドルが自動的に錠止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ハンドル4が閉状態にあるハンドル装置1の正面図である。
【図2】ハンドル4が閉状態にあるハンドル装置1の断面図である。
【図3】ハンドル4が開状態にあるハンドル装置1の断面図である。
【図4】錠前ユニット24の部品構成を示す斜視図である。
【図5】ハンドル4の断面図である。
【図6】ハンドル4の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜図6に基づいて説明する。図1は、ハンドル4が閉状態にあるハンドル装置1の正面図である。図2は、ハンドル4が閉状態にあるハンドル装置1の断面図である。図3は、ハンドル4が開状態にあるハンドル装置1の断面図である。図4は、錠前ユニット24の部品構成を示す斜視図である。図5および図6は、ハンドル4の断面図である。
【0011】
ハンドル装置1は、ハウジング2と、フック3と、ハンドル4と、連結板5と、回動板6と、リンク板7,9と、ローラー17とを備える。ハウジング2には、ボールプランジャー12と受け金レバー13とが設けられ、ハンドル4の先端部には、錠前ユニット24が設けられる。
【0012】
ハウジング2およびハンドル4は、ともに亜鉛ダイカストで形成される。ハンドル4の一端部には操作者が操作する把手部14が形成されており、基端部が連結ピン15によってハウジング2に回転可能に軸支されている。ハンドル4の基端部は、さらに伸延し駆動部16が形成されている。駆動部16の先端部にはリンク板7が連結されており、リンク板7にはキャビネットの上部に設けられた受け金に係止する不図示の係止部が連結されている。
【0013】
金属製のフック3は、一端部をハウジング2に回転可能に軸支されており、ローラー17を介して駆動部16の端面に当接している。フック3の端面には、ハンドル4が閉状態のときにキャビネット本体の受け金18に係止する係止辺19が形成されている。
金属製の回動板6は一端部がハウジング2に回動可能に軸支されており、他端部にはリンク板9が連結されている。回動板6は連結板5を介してハンドル4に連結されており、リンク板9はハンドル4の操作に伴って上下方向に移動する。リンク板9には、キャビネットの扉の下部に設けられた受け金20に係止する係止部21が連結されている。
【0014】
金属製の受け金レバー13は、ハウジング2のうちハンドル4の把手部14で覆われる部分の下端部に、扉の前面と平行な連結ピン27によって回動可能に軸支されており、受け金レバー13の端面には、掛け止め部26が形成されている。掛け止め部26には、ハンドル4の先端部に設けられた錠前ユニット24の止め金板35が係合する。連結ピン27には、ねじりコイルばね31が設けられており、ねじりコイルばね31は、受け金レバー13をばね付勢する。付勢される受け金レバー13の先端部はハウジング2下端部の当接面32に当接している。
【0015】
ボールプランジャー12は、ハウジング2のうちハンドル4の把手部14で覆われる部分の上端部に設けられ、ハンドル4を引き上げる方向に付勢する。
ハンドル4の先端部に設けられた錠前ユニット24は、シリンダー36と、止め金板35と、ねじりコイルばね37と、抜け止めピン38とを備える。シリンダー36は略円筒形であり亜鉛ダイカストで形成される。シリンダー36の一端面にはマイナスドライバーなどを差し込む溝部39が形成されており、他端面には止め金板35の係合孔40に係合する偏心突起41が形成されている。シリンダー36の外周には凹部42が形成されており、ねじりコイルばね37が凹部42に嵌め込まれる。ねじりコイルばね37の一端部がシリンダー36に係止され他端部がハンドル4側に係止されて、シリンダー36をばね付勢する。なお、抜け止めピン38は、凹部42の後端部に設けられシリンダー36の抜け止めを防止する。
【0016】
止め金板35は、金属製の平板状で、シリンダー36の偏心突起41が係合する係合孔40を有しており、係合孔40が偏心突起41に係止された状態でハンドル4の背面側に挿入される。操作者が溝部39にマイナスドライバーなどを差し込み、ねじりコイルばね37のばね力に抗してシリンダー36を回動させると、偏心突起41に係止された止め金板35は、掛け止め部26から外れて下方に移動し、ハンドル4の内部に引っ込む。
【0017】
ここでハンドル装置1の動作について説明する。図2に示すハンドル装置1は、ハンドル4が閉状態にあり、シリンダー36の偏心突起41に係止された止め金板35は、ばね付勢されて受け金レバー13の掛け止め部26に係合している。
【0018】
操作者が、溝部39にマイナスドライバーなどを差し込んで、ねじりコイルばね37のばね力に抗してシリンダー36を回動させると、偏心突起41に係止された止め金板35が下方に移動しハンドル4の内部に引っ込むので、止め金板35と掛け止め部26との係合が解除される。そうすると、ハンドル4はボールプランジャー12によって少し持ち上げられる。この位置では、操作者が溝部39に差し込んだマイナスドライバーを抜き取って、止め金板35がハンドル4から飛び出しても、止め金板35は掛け止め部26に係合しない。
【0019】
操作者が溝部39からマイナスドライバーを抜き取ると、シリンダー36は、ねじりコイルばね37のばね力によって回動して初期の状態に戻る。それにともなって、偏心突起41に係止された止め金板35がハンドル4から上方に飛び出して突出した状態となる。
【0020】
操作者が、把手部14を持ってハンドル4を手前に引き上げる操作をすると、リンク板7,9に連結された係止部とキャビネットの受け金との係合が解除されるので、ハンドル4を引き上げた状態で手前に引っ張るとキャビネットの扉を開けることができる。
【0021】
次にハンドル4を錠止する手順について説明する。操作者は、まずハンドル4を手前に引き上げた状態を維持して扉を閉める。扉が閉じられた後に、把手部14を持ってハンドル4を押し下げる操作をすると、上方に突出した止め金板35が受け金レバー13の傾斜面33に当接する。ハンドル4をさらに押し下げると、受け金レバー13は、傾斜面33に当接した止め金板35に押圧され、ねじりコイルばね31のばね力に抗して上方に回動する。止め金板35は、受け金レバー13の傾斜面33に沿って移動し、掛け止め部26に嵌まり込む。このようにしてハンドルが錠止される。
【0022】
このときリンク板7,9に連結された係止部が各々キャビネットの受け金と係合し、フック3の係止辺19がキャビネット本体の受け金18に係止され、扉がキャビネット本体にロックされる。
【0023】
本実施例においては、所定の鍵を用いることなく、マイナスドライバーなどの汎用性のある工具を用いて解錠を行うので、作業者が鍵を持ち歩き、あるいは所定の場所に鍵を設置しておかなくてもよい。
【0024】
このように、キャビネットの扉に取り付けられるハウジング2と、このハウジング2に対し水平軸心の回りで回動自在に上端近傍が枢支されたハンドル4とを備え、ハンドル4を手前に引く操作によってキャビネット側の係止片に対する係止が外れて扉が開かれるようにしたハンドル装置1であって、ハウジング2には、ハンドル4をハウジング2に対して下端を飛び出させて傾ける方向に付勢する付勢手段であるボールプランジャー12が設けられ、ハンドル4の下端部にはハンドル4が閉状態のときにハウジング2に錠止する錠前ユニット24が設けられ、ハウジング2の下端部にはハンドル4の錠前ユニット24の止め板金35に係合する方向にばね付勢された受け金である受け金レバー13が設けられているので、マイナスドライバーなどで錠前ユニット24を回し、止め板金35を下方に移動させて収納したとき、ハンドル4が、ボールプランジャー12によってハウジング2に対して下端が飛び出して傾いた状態となる。このときマイナスドライバーなどを錠前ユニット24から抜くことで、錠前ユニット24内のねじりコイルばね37の作動により、止め板金35が上方に移動して突出する。止め板金35が突出した状態で扉を閉めてハンドル4を倒伏位置に押し下げると、止め金板35がばね力に抗して受け金レバー13を回動させて受け金レバー13に係合し、ハンドル4が自動的に錠止される。
【符号の説明】
【0025】
1 ハンドル装置
2 ハウジング
3 フック
4 ハンドル
5 連結板
6 回動板
7,9 リンク板
12 ボールプランジャー
13 受け金レバー
14 把手部
15,27 連結ピン
16 駆動部
17 ローラー
18,20 受け金
19 係止辺
21 係止部
24 錠前ユニット
26 掛け止め部
31,37 ねじりコイルばね
32 当接面
33 傾斜面
35 止め金板
36 シリンダー
38 抜け止めピン
39 溝部
40 係合孔
41 偏心突起
42 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットの扉に取り付けられるハウジングと、このハウジングに対し水平軸心の回りで回動自在に上端近傍が枢支されたハンドルとを備え、前記ハンドルを手前に引く操作によってキャビネット側の係止片に対する係止が外れて扉が開かれるようにしたハンドル装置であって、
ハウジングにはハンドルをハウジングに対して下端を飛び出させて傾ける方向に付勢する付勢手段を設け、ハンドルの下端部にはハンドルが閉状態のときにハウジングに錠止する錠前ユニットが設けられ、前記ハウジングの下端部にはハンドルの錠前ユニットの止め金板に係合する方向にばね付勢された受け金が設けられてなることを特徴とするハンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−36652(P2012−36652A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178246(P2010−178246)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(592163893)ジョー・プリンス竹下株式会社 (32)