説明

ハードキャンディ

【課題】 のど詰め危険性を完全に解消し、かつ口中において多くの個所でキャンディの味を楽しめ、多様な食感と多様な味を同時に味わえる新規なハードキャンディを提供する。
【解決手段】 貫通孔が形成されたハードキャンディを、互いに繋がった状態で2つ以上組み合わせたハードキャンディは、のど詰めの危険性を解消することが出来、更に2つ以上のハードキャンディの味、食感を互いに変えることによって、多様な味と多様な食感を同時に楽しめるハードキャンディにすることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードキャンディに関し、更に詳しくは、のど詰めの危険性を完全に解消し、かつ口中において多くの個所でキャンディの味を楽しめるハードキャンディに関するものである。更に、本発明は、多様な食感と多様な味が同時に味わえるハードキャンディに関するものである。
【背景技術】
【0002】
砂糖、水飴又はシュガーレスの糖質を主成分とするハードキャンディは様々なヴァリエーションを付与されて菓子売り場の定番の地位を保っている。一般に、このようなハードキャンディは、殆どの場合、球状乃至それに近い形状をしている。それは舐め心地の良さがハードキャンディの商品力の要素になっているからである。ところが、ハードキャンディの前記のような形状は、のど詰めの危険性を孕んでいる。従来、ハードキャンディののど詰めの危険性に対する対策が提案されたことは殆どなく、早急にのどへ流し込むことで窒息死を防止する装置の提案がある程度である(特許文献1参照。)。ハードキャンディののど詰めを防止するには、その大きさを、のどに詰まらない程度まで小さくすれば良いのだが、それだとキャンディの美味しさが損なわれる。他の方法としては、形を例えば、矩形にしたり、穴あきにしたりすることも考えられるが、これらの方法では、のど詰めに対する本質的な解決策にはならない。
【0003】
又、従来のハードキャンディは、味や食感のヴァリエーションは限定されたものであった。それを解決するために、2種類以上のハードキャンディを組み飴にしたり、異なった糖質のハードキャンディを層構造にする提案がなされている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、この程度では、ハードキャンディに味や食感のヴァリエーションの魅力を根本的に付与するには至らない。
【0004】
【特許文献1】特開平11−244382号公報
【特許文献2】特開2000−139356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、のど詰め危険性を完全に解消するとともに、口中において多くの個所でキャンディの味を楽しめ、しかも多様な食感と多様な味を同時に味わえる、全く新規なハードキャンディを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、2つのキャンディが繋がった状態で組み合わせるという従来にない全く新規な手法を採用することで、のど詰めの危険性が完全に解消し、かつ多様なヴァリエーションの味と食感が同時に味わえることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明に係るハードキャンディは、(1)少なくとも1つの貫通孔が形成された2つ以上のハードキャンディが、前記貫通孔に他のハードキャンディが挿通されて互いに繋がった状態で組み合わされていることを特徴とするハードキャンディ、(2)前記2つ以上のハードキャンディの味及び/又は食感が互いに異なったことを特徴とするハードキャンディである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るハードキャンディは、少なくとも1つの貫通孔が形成されたハードキャンディを、互いに繋がった状態で2つ以上組み合わせることによって、完全にのど詰めの危険性を解消することが出来た。また、前記2つ以上のハードキャンディの味、食感を互いに変えることによって、多様な味と多様な食感を同時に楽しめるハードキャンディにすることが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、貫通孔が形成されたハードキャンディは、様々な形をとり得る。例えば、球状、円形、楕円形、星形、矩形、長方形等を挙げることができる。これらのハードキャンディには、少なくとも一箇所以上に貫通孔が形成されていることが本発明においては必須である。最も単純な1つの態様として、穴が1つ開いた円形(リング状)のハードキャンディが、互いに繋がった状態で2つ組み合わさっているものである(図1(a)参照。)。こうすれば、口中に入れた時に、色々な個所でハードキャンディのおいしさを味わうことができる。他の簡単な態様として、一方のハードキャンディが矩形をしていて、他方のハードキャンディの形が円形をしているものが、互いに繋がった状態で組み合わさっている態様である(図1(b)参照。)。又、一方のハードキャンディが貫通孔が形成された球状であり、他方が円形又は楕円形のリング状のものであり、前記球状のハードキャンディの貫通孔に、後者のリング状のハードキャンディが挿入されて、形状の異なる2つのハードキャンディが互いに繋がっている態様である(図1(c)参照。)。更に、3つ以上のハードキャンディが順次繋がった状態で組み合わさった態様も考えられる(図1(d)参照。)。このように、極めて多様なハードキャンディの形状及び組み合わせの態様が本発明の範囲に入る。
【0010】
本発明の、2つ以上が組み合わさったハードキャンディの大きさは、口中に全体が入ることを上限として、多くの態様をとり得る。2つ以上のハードキャンディの大きさが互いに異なることも本発明の範囲内である。ごく普通には、各ハードキャンディの外径の大きさは5〜40mm程度、より好ましい外径の大きさは10〜25mm程度である。また、貫通孔の大きさは特に限定はされない。つまり、2つ以上のハードキャンディが互いが繋がった状態に組み合わせることさえできれば、貫通孔の大きさは特に限定されない。
【0011】
また、2つ以上のキャンディが繋がった状態で組み合わさった本発明のハードキャンディは、繋がったハードキャンディ同士が互いに自由に動く態様が好ましい。しかし、一部で互いに固着している態様も可能である。そうした固着の故に、完全にのど詰めの危険を解消する、という本発明の目的を阻害しないからである。又、繋がったハードキャンディが互いに離れない限り、ハードキャンディの一部にギャップ(切れ目、隙間)があっても良い(図1(e)参照。)。
【0012】
本発明のハードキャンディは、砂糖及び水飴を主成分としてなる場合のほか、シュガーレスキャンディと称する、砂糖を使わないハードキャンディにも適応できる。砂糖及び水飴を主成分とするキャンディの場合、生地中での水飴の比率(重量比、以下同じ)は20%〜60%程度の範囲で使用できるが、好ましくは35%〜45%の比率である。水飴以外の成分の中で一番多いのは、砂糖である。砂糖の比率は30%〜80%で使用できるが、好ましくは30%〜70%である。砂糖の一部を黒糖に代える態様はいわゆる黒飴であり、これも本発明に含まれる。又、砂糖の一部を練乳等の乳製品に代える態様は、いわゆるミルクキャンディであり、これも本発明のハードキャンディに含まれる。シュガーレスハードキャンディの場合、糖質として還元パラチノース、ソルビトール、マルチトール、マルチトリイトール、還元澱粉糖化物など、いかなるシュガーレス素材を使用することもできる。本発明のハードキャンディには、上記砂糖、水飴、黒糖、乳製品、シュガーレス素材のほか、消泡剤、香料、色素などを添加することも可能である。又、センターに果汁や果実を使ったジャム類、チョコレート等を入れることも可能である。更に、2つ以上のキャンディが繋がった状態で組み合わされた本発明のハードキャンディにおいて、それらが互いに糖質、香料等で異なっている態様は、のど詰め防止効果とともに、多様な味と多様な食感を付与する上で、極めて好ましい態様である。
【0013】
本発明に係る、2つ以上のハードキャンディが互いに繋がった状態で組み合わさったハードキャンディを製造する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、2つのキャンディをそれぞれ円形リング状にスタンピングで打ち抜いておき、このキャンディが温かい内に、一方のキャンディのリングの一部をハサミ等で切断し、他方のキャンディを切断部から嵌め込み、切断面を赤外線ランプで熱して接着する、といった方法を採用することができる。
【0014】
本発明を、以下の実施例により更に具体的に説明するが、これらの実施例は説明のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。なお、実施例中の「部」は重量部、「%」は重量%を意味する。また、キャンディはハードキャンディを意味し、水分の規定値は0.3%〜4%である。
【実施例1】
【0015】
喉への効能と鼻への効能を同時に体感できるキャンディの例である。まず、砂糖60部、酵素糖化水飴39部を水に溶解し、真空釜で130℃まで炊きあげた。カリンエキス1部とカリン香料少量を加えて混合し、スタンピング成型により内径7mm、外径20mm、幅6.5mm、厚さ6.5mmのリング状に成型して、砂糖と水飴からなるリングキャンディを得た。これとは別に、還元麦芽糖水飴80部、還元パラチノース10部、食物繊維10部を混合し、真空釜で140℃まで炊きあげ、メントール香料少量を加えて混合した。これを前記の方法でリング状に成型後、キャンディがまだ温かい内にリングの一部をハサミで切断し、前記のリングキャンディにはめ込み、切断面を赤外線ランプで熱して接着し、図1(a)に示されるような、2つのリングキャンディが互いに繋がった状態で組み合わされた形態ののど飴(ハードキャンディ)を得た。得られたキャンディは、繋がっている2つのリングキャンディが互いに離れることがなく、のど詰まりの起こらない安全なキャンディであった。
【実施例2】
【0016】
濃厚なバニラ感と酸味の利いたヨーグルト感を同時に味わえるキャンディの例である。まず、砂糖40部、酵素糖化水飴30部、乳製品30部、塩、乳化剤少量を水に溶解し、真空釜で110℃まで炊きあげた。バニラ香料少量を加えて混合し、スタンピング成型によりリング状に成型して、砂糖と水飴、乳製品からなるリング型ミルクキャンディを得た。これとは別に、還元麦芽糖水飴79部、還元パラチノース10部、食物繊維9部を混合し、真空釜で140℃まで炊きあげ、クエン酸1.5部、乳酸0.5部、ヨーグルト香料少量を加えて混合した。これを前記と同じ方法でリング状に成型後、実施例1と同様の方法により2つのリングキャンディが互いに繋がった状態で組み合わされた形態のキャンディを得た。得られたキャンディは、繋がった2つのリングキャンディが互いに離れることがなく、のど詰まりの起こらない安全なキャンディであった。
【実施例3】
【0017】
香ばしいスカッチと濃厚なバニラ感を同時に味わえるキャンディの例である。まず、砂糖55部、酵素糖化水飴10部を水に溶解し、植物油脂20部、乳製品15部、食塩、リンゴ酸、乳化剤少量を加え、常温で148℃まで炊き上げた。バター香料少量を加えて混合し、流し込み成型により内径7mm、外径20mm、幅6.5mm、厚さ6.5mmのリング状に成型して、キャンディを得た。これとは別に、実施例2と同じリング型ミルクキャンディを作成し、実施例1と同様の方法により2つのリングキャンディが互いに繋がった状態で組み合わされた形態のキャンディを得た。得られたキャンディは、繋がった2つのリングキャンディが互いに離れることがなく、のど詰まりの起こらない安全なキャンディであった。
【実施例4】
【0018】
実施例1において、リングの型を内径6mm、外径17mm、幅5.5mm、厚さ5.5mmに変えた以外は実施例1と同様にして、2つのリングキャンディからなるのど飴を得た。
【実施例5】
【0019】
実施例3において、スタンピングの型、流し込みの型をそれぞれ内径6mm、外径17mm、幅5.5mm、厚さ5.5mmに変えた以外は実施例3と同様にして、2つのリングキャンディからなるのど飴を得た。
【実施例6】
【0020】
香ばしいスカッチと濃厚なバニラ味、更に酸味の利いたヨーグルト味を同時に味わえるキャンディの例である。内径10mm、外径20mm、幅5mm、厚さ5mmのスタンピング、流し込みの両リング型を用い、実施例3と同様にしてスカッチとバニラの二つのリングキャンディからなるキャンディを得た。これとは別に、実施例2と同じミルクキャンディを作成し、同サイズのスタンピング型を用いて成型したものを、実施例1と同様の方法によりはめ込み、図1(d)に示されるような、3つのリングキャンディが順次繋がった形態のキャンディを得た。得られたキャンディは、繋がった3つのリングキャンディが互いに離れることがなく、のど詰まりの起こらない安全なキャンディであった。
【実施例7】
【0021】
キシリトールの結晶物を用いた例である。まず、キシリトール97部、還元麦芽糖水飴3部を溶解し、ハーブ香料少量を加えて混合した。これを内径7mm、外径20mm、幅6.5mm、厚さ6.5mmのリング型に流し込み、静置してキシリトールを結晶化させ、キャンディを得た。これとは別に、実施例1と同じノンシュガーリングキャンディを作成し、実施例1と同様の方法によりはめ込み、2つのリングキャンディが繋がったキャンディを得た。得られたキャンディは、繋がったリングキャンディが互いに離れることがなく、のど詰まりの起こらない安全なキャンディであった。
【実施例8】
【0022】
実施例1において、スタンピング型を同等の幅、厚さを有する楕円形、四角形、台形、ハート型、星型に変えて、図2(a)〜(e)に示されるような、2つのリングキャンディが互いに繋がった形態の各種のど飴(ハードキャンディ)を得た。
【実施例9】
【0023】
実施例3において、流し込みキャンディの形を、直径10mmの球形で中心からずれた位置に直径2.5mmの湾曲した貫通孔が形成された形状のものに変えた。これとは別に、実施例2と同じミルクキャンディを作成し、幅2mm、厚さ2mmの楕円形のリング状に成型し、実施例1と同様の方法により前記球状のキャンディにはめ込み、図1(c)に示されるような、球形キャンディとリングキャンディが互いに繋がった形態のキャンディを得た。得られたキャンディは、繋がった球形キャンディとリングキャンディとが互いに離れることがなく、のど詰まりの起こらない安全なキャンディであった。
【実施例10】
【0024】
実施例1において、一方のキャンディの形を直径5mmの貫通孔が両側の2箇所に形成された直径20mm、厚さ3mmの円形状とし、他方のキャンディの形を内径7mm、外径15mm、幅4mm、厚さ4mmのリング状に変えた。これを、実施例1と同様の方法により、円形状キャンディの2箇所の貫通孔にそれぞれ1つずつのリングキャンディをはめ込み、図3に示されるように、3つのキャンディが繋がった状態で組み合わされた形態のキャンディを得た。得られたキャンディは互いに離れることがなく、のど詰まりの起こらない安全なキャンディであった。
【実施例11】
【0025】
実施例1〜10において、組み合わせたキャンディの接点を赤外線ランプで熱して接着し、舐めたときにはその接着部が溶けて動き出すキャンディを得た。得られたキャンディは互いに離れることがなく、のど詰まりの起こらない安全なキャンディであった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)〜(e)は、本発明に係るハードキャンディの各種実施形態を示す斜視図である。
【図2】(a)〜(e)は、実施例8のハードキャンディの形態を示す斜視図である。
【図3】実施例10のハードキャンディの形態を示す斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの貫通孔が形成された2つ以上のハードキャンディが、前記貫通孔に他のハードキャンディが挿通されて互いに繋がった状態で組み合わされていることを特徴とするハードキャンディ。
【請求項2】
2つ以上のハードキャンディの味及び/又は食感が互いに異なっていることを特徴とする請求項1に記載のハードキャンディ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−50932(P2006−50932A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234047(P2004−234047)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】