説明

ハードディスクドライブの検査方法及びハードディスクドライブを備えた記録再生装置

【課題】製造工程において、ハードディスクドライブの全ての領域を検査する場合よりも短時間でハードディスクドライブの良否判定を行うハードディスクドライブの検査方法を提供することである。
【解決手段】製造工程におけるハードディスクドライブの検査方法において、全プラッター31、32、33の各記録面31a、31b、32a、32b、33a、33bの始端及び終端を含む所定の一部領域について読取り検査した結果からハードディスクドライブの良否判定を行うこととする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工程におけるハードディスクドライブの検査方法及びその検査方法を実行する記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブ(HDD)の小型化や大容量化に伴い、HDDは様々な記録再生装置に搭載されるようになっている。ここでHDDは非常に精密なため運搬中や製造中の振動や衝撃によって故障するケースがある。そのため、一般に記録再生装置の製造工程においては、HDDの書込み/読取り検査を行い、不良がないか確認している。HDDの検査方法は以下に例示するような様々な方法が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、HDDに記録されたデータの抜き取り領域を指定する検査領域設定工程と、HDDから取得するデータのサイズを設定するデータサイズ設定工程と、HDDから取得するデータの開始セクターを決定する開始セクター決定工程と、開始セクター決定工程で決定した開始セクターからデータサイズ設定工程で設定したサイズ分の第1データおよび第2データを読み取るデータ取得工程と、データ取得工程で読み取った第1データを開始セクターから書き込むデータ記録工程と、再び開始セクターから第2データを読み取って第1データと比較するデータ比較工程を有し、データサイズ設定工程で設定したデータのサイズと開始セクター決定工程で決定した開始セクターを用いて、検査領域設定工程で設定された抜き取り領域に記録されたデータを、繰り返し抜き取って比較するハードディスクドライブのデータ読みとり検査方法が開示されている。
【0004】
また特許文献2のランダムアクセスデバイス評価装置および方法には、ハードディスク装置等のランダムアクセスデバイスにおいて、ヘッドを実際にランダムシークさせてデータ書込み/読出しを行い、ランダムアクセス動作を評価すると記載されている。
【0005】
また特許文献3の磁気ディスク装置及びディスク制御装置には、磁気ヘッド診断処理時間を短縮するために、各磁気ヘッド毎の診断領域を磁気記録媒体上、磁気ヘッド切り替え処理時間分ずらして配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−87479号公報
【特許文献2】特開平10−188476号公報
【特許文献3】特開2003−263703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、製品の製造工程の過程毎に異なる領域の抜き取り検査を所定回数実施することで、HDDに存在する全てのセクターを検査するために必要な回数、すなわち、累積で全てのセクターを検査している。したがって、一度に全てのセクターを検査する方法より短時間で済むというわけではない。
【0008】
また、特許文献2はHDD装置等のランダムアクセス可能なデバイスのランダム書込み/読出し特性を評価するものであって、記録再生装置の生産ラインでの書込み/読取りに関するものではない。また、特許文献3は定期的又は不定期に磁気ヘッド診断を実施して、特殊な障害(書込不可・不通知障害)の発生を検知するものであって、記録再生装置の生産ラインでの書込み/読取りに関するものではない。
【0009】
さらに、HDDの検査では各プラッターに設けられたヘッドが問題なく移動可能かどうかも良否判定の項目となる。
【0010】
本発明は、製造工程において、ハードディスクドライブの全ての領域を検査する場合よりも短時間でハードディスクドライブの良否判定を行うハードディスクドライブの検査方法を提供することを目的とする。また、該ハードディスクドライブの検査方法を実施する記録再生装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、製造工程におけるハードディスクドライブの検査方法において、全プラッターの各記録面の始端及び終端を含む所定の一部領域について読取り検査した結果からハードディスクドライブの良否判定を行うことを特徴とする。
【0012】
上記のハードディスクドライブの検査方法において、前記所定の一部領域は、例えば、ハードディスクドライブの容量に対する指定割合に基づいて決定することができる。
【0013】
上記のハードディスクドライブの検査方法において、前記読取り検査に加え書込み検査を行うようにしてもよい。
【0014】
また本発明の記録再生装置は、ハードディスクドライブを備え、上記の何れかに記載のハードディスクドライブの検査方法を実行するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、全プラッターの各記録面の始端及び終端を含む所定の一部領域について読取り検査した結果からHDDの良否判定を行うことにより、HDDの全ての領域を検査する場合よりも短時間で良否判定することができ、生産性の向上に寄与する。
【0016】
また、全プラッターの各記録面の始端及び終端を必ず検査しているので、磁気ヘッドが端から端まで問題なく移動可能かどうかの検査も同時に行っていることになり、これも良否判定に含まれる。つまり、本発明の検査方法によれば、磁気ヘッドの動作確認も同時に行うことができる。
【0017】
さらに、本発明の検査方法によれば、制御部がテストモードで検査を制御しているので、制御部の動作が正常かどうかも良否判定に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のHDD一体型光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2A】HDD記録再生部のHDDの概略正面図である。
【図2B】HDD記録再生部のHDDの概略平面図である。
【図3】本発明のHDD一体型光ディスク装置の製造工程において行うHDDの良否判定に関する動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明のHDD一体型光ディスク装置におけるHDDの容量の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、ハードディスクドライブ(HDD)を搭載した記録再生装置の一例として、HDD一体型光ディスク装置を用いて説明する。
【0020】
図1は、HDD一体型光ディスク装置10の構成を示すブロック図である。HDD一体型光ディスク装置10は、アンテナ(不図示)で受信したデジタルテレビ放送信号を復調、デジタル化するチューナ16と、チューナ16や外部装置(不図示)から受け取った映像/音声データをMPEG2等に準拠して圧縮符号化したり、HDD記録再生部18又はBD/DVD記録再生部19で再生された圧縮された映像/音声データを伸長復号したりする映像/音声圧縮伸長部17と、映像/音声圧縮伸長部17から受け取った圧縮された映像/音声データをHDDに記録したり、HDDに記録されたデータを再生したりするHDD記録再生部18と、映像/音声圧縮伸長部17から受け取った圧縮された映像/音声データを挿入されたDVD又はBDに記録したり、DVD又はBDに記録されたデータを再生したりするBD/DVD記録再生部19と、各種設定値をテレビ等の表示装置(不図示)の一部に表示しながら設定できるようにするOSD(On Screen Display)部20と、OSD部20からの映像信号をアナログ化し、接続された表示装置へ出力する映像出力部21と、映像/音声圧縮伸長部17からの音声信号をアナログ化し、接続された表示装置へ出力する音声出力部22と、ROMやRAMからなるメモリ23と、リモコン(不図示)からの信号を受信するリモコン受信部24と、外部装置(不図示)が接続される外部入力端子を有する外部I/F25と、HDD一体型光ディスク装置10の各部を制御する制御部26とを備えている。外部装置とは、ケーブルテレビや衛星放送等のセットトップボックス又はビデオデッキ等の映像音声記録装置に代表される装置である。
【0021】
次に、HDD記録再生部18のHDDの構成を説明する。図2AはHDD記録再生部18のHDDの概略正面図、図2BはHDD記録再生部18のHDDの概略平面図である。
【0022】
HDD30は、データを記録するための磁性体を両面に塗布した金属製のディスクである3枚のプラッター31、32、33と、プラッター31、32、33を高速回転させるモーター34と、各プラッター31、32、33の記録面31a、31b、32a、32b、33a、33b上を移動するアーム35a〜35fと、アーム35a〜35fの先端に記録面31a、31b、32a、32b、33a、33bに対向して配設されたデータ読み書き用の磁気ヘッド36a〜36fと、磁気ヘッド36a〜36fを任意のトラック上に移動させるためのアクチュエータ37とを備えている。
【0023】
そしてHDD30は、プラッター31、32、33を一定速度で回転させながら、適切な場所にアーム35a〜35fで磁気ヘッド36a〜36fを移動させてデータを読み書きする。なお、プラッターは1枚以上備えていればよく、記録面が片面のものを用いてもよい。
【0024】
次に、HDD一体型光ディスク装置10の製造工程において行うHDDの検査方法を説明する。検査方法としては、全プラッターの各記録面の始端(各記録面における最小番号のセクタ)及び終端(各記録面における最大番号のセクタ)を含む所定の一部領域について少なくとも読取り検査した結果からHDDの良否判定を行うこととする。
【0025】
図3は、HDD一体型光ディスク装置10の製造工程において行うHDDの良否判定に関する動作の一例を示すフローチャートである。HDDの検査及び良否判定は、HDD一体型光ディスク装置10の製造工程において、少なくともHDDと、検査プログラム及び良否判定プログラムが格納されたメモリ23と、制御部26とが実装されている状態で行う。
【0026】
まず、ステップS10においてテストモードとして制御部26はメモリ23の検査プログラムを実行する。そして、ステップS11へ進んで全プラッター31、32、33の各記録面31a、31b、32a、32b、33a、33bの始端及び終端を含む所定の一部領域について読取り検査する。読取り検査は、例えば、ATA(Advanced Technology Attachment)規格であれば、Read Verifyコマンドでエラーが帰ってこないか確認すればよい。
【0027】
図4に、HDD一体型光ディスク装置10におけるHDDの容量の概念図を示す。図4では横棒線でHDDの全容量を表している。そして、各記録面31a、31b、32a、32b、33a、33bの始端及び終端を含む所定の一部領域40が斜線部分であり、計12個ある。
【0028】
ここで所定の一部領域40は、例えばHDDの容量に対する指定割合に基づいて決定することができる。例えば、検査時間を半分にするには指定割合は50%に設計する必要がある。指定割合を50%とすると、3枚のプラッター31、32、33の場合、所定の一部領域40の12の領域はそれぞれ約4.2%ずつとなる。よって、各始端からHDDの容量に対して約4.2%の領域と、各終端までHDDの容量に対して約4.2%の領域とについて読取り検査することになる。HDDの容量は予め決まっているので、検査する領域はアドレスで指定できる。
【0029】
なお、HDDの容量に対して何%検査するかは、判定精度と検査時間とを考慮して設計すればよい。判定精度を上げたければ割合を上げればよいし、検査時間を短くしたければ割合を下げればよい。
【0030】
一般的なHDDにおいては、全ての磁気ヘッドが互いに固定されており同時に移動する。したがって各磁気ヘッドは、いつでもそれぞれのプラッター上の同じトラック上に位置することになる。この一連のトラックのグループはシリンダーと呼ばれる。このようなHDDの構成の場合、磁気ヘッドをプラッターの内周側と外周側とに移動させれば、全プラッターの各記録面の始端と終端とを検査することができる。
【0031】
図3の説明に戻り、ステップS11からステップS12へ進んで制御部26はメモリ23の良否判定プログラムを実行する。そして、ステップS13へ進んで読取りエラーがあったか否かを判定する。ステップS13において読取りエラーがなかった場合は、ステップS14へ進んでこのHDDは良品であると判定する。一方、ステップS13において読取りエラーがあった場合は、ステップS15へ進んでこのHDDは不良品であると判定する。
【0032】
なお、1セクターでもエラーがあれば、埃や傷がある可能性があるため、不良品であると判定することが好ましい。この場合、検査中にエラーが見つかった時点で検査を終了すれば、検査時間を短縮できる。
【0033】
このように、全プラッターの各記録面の始端及び終端を含む所定の一部領域について読取り検査した結果からHDDの良否判定を行うことにより、HDDの全ての領域を検査する場合よりも短時間で良否判定することができ、生産性の向上に寄与する。
【0034】
また、全プラッターの各記録面の始端及び終端を必ず検査しているので、磁気ヘッドが端から端まで問題なく移動可能かどうかの検査も同時に行っていることになり、これも良否判定に含まれる。つまり、本発明の検査方法によれば、磁気ヘッドの動作確認も同時に行うことができる。さらに、本発明の検査方法によれば、制御部がテストモードで検査を制御しているので、制御部の動作が正常かどうかも良否判定に含まれる。
【0035】
なお、本発明の検査方法はHDDの製造工程において行うHDDの検査にも同様に適用できる。その場合、検査プログラムを有する制御装置を接続して検査すればよい。
【0036】
上記の実施形態では読取り検査のみ行う例について説明したが、適宜書込み検査を行うようにしてもよい。例えば、読込み検査と同じ領域について書込み検査も行うようにしたり、書込み検査はシステム領域のみについて行うようにしたりすることができる。書込み検査は、例えば、ATA規格であれば、Writeコマンドにて書き込みエラーがないか確認すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、HDDをはじめ、HDDを搭載した記録再生装置であるHDDレコーダ、HDD一体型光ディスク装置、HDD内蔵テレビなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 HDD一体型光ディスク装置
16 チューナ
17 映像/音声圧縮伸長部
18 HDD記録再生部
19 BD/DVD記録再生部
20 OSD部
21 映像出力部
22 音声出力部
23 メモリ
24 リモコン受信部
25 外部I/F
26 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造工程におけるハードディスクドライブの検査方法において、
全プラッターの各記録面の始端及び終端を含む所定の一部領域について読取り検査した結果からハードディスクドライブの良否判定を行うことを特徴とするハードディスクドライブの検査方法。
【請求項2】
前記所定の一部領域は、ハードディスクドライブの容量に対する指定割合に基づいて決定することを特徴とする請求項1記載のハードディスクドライブの検査方法。
【請求項3】
前記読取り検査に加え書込み検査を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のハードディスクドライブの検査方法。
【請求項4】
ハードディスクドライブを備え、請求項1〜3の何れかに記載のハードディスクドライブの検査方法を実行する記録再生装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−48778(P2012−48778A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188965(P2010−188965)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】