説明

ハードディスク装置の制御方法。

【課題】アクセス性能の低いハードディスク装置により、放送用の画像を登録と同時に送出する安価なシステムを構築する。
【解決手段】書込データを一時的に書込保管する半導体メモリを含む制御部を有するハードディスク装置において、書込時にデータに優先順位を示す番号を付け、(放送用等)優先順位の高いデータの読出時は、登録用のデータを半導体メモリに一時的に書込保管し、ハードディスクへの書込を遅延させ、ディスクのアクセスに余裕が出来た時にデータを書きこむハードディスク装置の書込読出の制御方法を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、番組素材を、ビデオサーバーにファイリングした上でオンエアーする方式のテープレスシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン放送業務では、従来からビデオサーバーを備えたノンリニアバンクシステムを用い、VTR(Video Tape Recorder)等の記録装置に記録されている番組やCM等の放送素材を、ビデオサーバーにファイリングした上でオンエアーして放送している(特許文献1参照)。ビデオサーバーの入出力信号が非圧縮の映像信号から、圧縮されたファイル形式となり、テープレスシステムと呼称されるようになった。
【0003】
通常のハードディスクはバッファの半導体メモリを持っており、このバッファに一旦書きこんでから、データの読み出し順番を変えてA,B,Cの順にデータを出力することによりより高速にアクセスするようになっている。近年は、放送に用いる高価なハードディスク装置では、媒体記録再生データ転送速度1669Mbpsで平均シーク時間3.9msと高速になり、データバッファ容量が64MBと大容量になり、圧縮されたファイル形式の映像信号の記録再生が容易になった(非特許文献1参照)。しかし、民生映像記録に用いる安価なハードディスク装置では、媒体記録再生データ転送速度876Mbpsで平均シーク時間10ms、データバッファ容量が16MBと不十分である。(非特許文献2参照)。そこで、媒体記録再生データ転送速度が高い外周のトラックと媒体記録再生データ転送速度が低い内周のトラックとを組み合わせて媒体記録再生データ転送速度の実効的な最低値を向上させている。
【0004】
またハードディスクは、アクセス速度とデータの信頼性を向上させるため RAID(Redundant Arrays of Independent Disk)といわれる技術により、複数のディスクにデータを分散させてアクセスする方法をとれるため、実際にはこの数倍のアクセス速度を出すことが出来る。一例として、ハードディスク5台を用いてRAIDを構成した場合、データ用4台と補正データ用1台にデータを分割してアクセスするため、理論上は1台の場合の4倍の速度でアクセスすることが出来、1台のハードディスクが故障した場合にも補正データにより正常なデータを出力することが出来る。RAIDを構成するハードディスク数を多くすれば、れだけアクセス速度は上がるが、一般的には数台から10台程度が一般的である。
【0005】
これと比較して、画像データはHDTV(High Definition TeleVision)画像でも4〜20MByte/Secとデータ速度は遅い。
【0006】
放送用などの画像送出装置に於いては画像データがとぎれた場合、放送している画像も静止してしまったり、画像が乱れてしまうと言うことが起こり、これは放送事故(異常な映像・音声の放送を行ってしまう事)となり、社会的な責任問題となる。この様なことを防止するために、放送用の送出装置では、送出装置を完全に二重化して装置の故障に備えている。
【0007】
但し、ハードディスク装置からのデータの読み出しが間に合わずデータがとぎれることに関しては2重化されていても各系が同じ動きをしているので同じように送出画像が乱れてしまうといった事になってしまう。これを防止するために,放送の送出用のディスク装置と登録、登録確認用のディスク装置を分け、放送に必要な画像データのみを放送用のディスク装置に事前に転送し、放送時のディスク装置のデータの読み出しを減らし、かつハードディスク装置の読み出しスピードがピーク時のデータ読み出し速度よりも余裕を持った速度で読み出せるハードディスク装置を準備することにより、データがとぎれることを防いでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005 −210490号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日立グローバルストレージテクノロジーUltrastar C10K300
【非特許文献2】日立グローバルストレージテクノロジーTravelstar E7K200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、安価なハードディスク装置を用いたビデオサーバーにおいて、放送用の画像データがとぎれることがないか、ハードディスクの読み出し状態、速度等を予め計算装置で計算して読み出しが間に合わないと判断された場合、登録等の書込及び登録等の読み出しを一時的に中断(遅延)させる事により放送用の画像データをとぎれることなく送り出すことの出来るハードディスク装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の目的を達成するために、書込データを一時的に書込保管する半導体メモリを含む制御部を有するハードディスク装置において、書込時にデータに優先順位を示す番号を付け、(放送用等)優先順位の高いデータの読出時は、登録用のデータを半導体メモリに一時的に書込保管し、ハードディスクへの書込を遅延させ、ディスクのアクセスに余裕が出来た時にデータを書きこむことを特徴とするハードディスク装置の書込読出の制御方法である。
【0012】
上記ハードディスク装置において、ハードディスクの書込を遅延させても(放送用等)優先順位の高いデータの読出が間に合わない場合、(登録確認画像等中断しても問題の発生しない)優先順位の低いデータの読み出しを一時的に行わず、優先順位の高いデータの読出を行うことを特徴とするハードディスク装置の書込読出の制御方法である。
【0013】
上記ハードディスク装置において、書込時にデータにタイムスケジュールに基づいて優先順位を示す番号を付けることを特徴とするハードディスク装置の書込読出の制御方法である。
【0014】
上記ハードディスク装置において、ハードディスクの書込を遅延させても放送用データの読出が間に合わない場合、登録確認画像についてデータの読み出しを一時的に行わず、映像は静止画または黒味、白味の映像とし、画像データに画像がとぎれているという表示を送出することを特徴とするハードディスク装置の書込読出の制御方法である。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、放送用データについては、送出する映像はタイムスケジュールによってファイル名、送出開始時間、送出終了時間が通常は決まっているので、予め送出開始時間の前にそのファイルのデータをハードディスクから読み出し、高速の半導体メモリ等にバッファリングしておくことにより、より安全にデータを送出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例のハードディスクの構造を示す模式図。
【図2】ハードディスクの回転を角速度で時間軸を取った模式図。
【図3】本発明の1実施例のデータ読書の模式図。
【図4】本発明の1実施例のデータ読込の模式図。
【図5】本発明の1実施例のアクセス待ちの模式図。
【図6】本発明の1実施例のアクセス待ちの模式図。
【図7】本発明の1実施例の画像用データ読出の模式図。
【図8】本発明の1実施例の反転増幅回路のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
以下本発明の一実施例のハードディスクの構造と読書とを図1から図8を用いて説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施例のハードディスクの構造を示す模式図であり、ディスクの回転とヘッドの位置を示す。図1の例では、ディスクはディスクの回転の中心を軸にして回転する。ヘッドは、ッドの支点を軸にしてディスク上を移動する。ディスクには、ディスクの回転の中心から同心円状にトラックがあり、このトラックにデーターを書込、読み出しを行う。
【0019】
図2はハードディスクの回転を角速度で時間軸を取った模式図であり、横軸は、ハードディスクの回転を角速度で示し、縦軸はヘッドの移動を示す。図2の例では、ハードディスク上のトラックT1,T2、T3上にそれぞれA,B,Cというデータが書かれていることを表す。
【0020】
図3は、本発明の1実施例のデータ読書の模式図であり、時間とともにヘッドが移動してデータを読み書きしているところを示す。水平になっている部分は、ヘッドが同じトラック上にあることを示し、斜めの線はヘッドがトラック間を移動している事を示す。斜めの線は、ヘッドの移動時間(横軸)と移動距離(縦軸)を示す。図3では、ヘッドはT1のデータAを読み込んだ後、T3へ移動し、T3のデータBを読込、その後T2へ移動し、データCを読み込んでいるところを示す。図3では、連続するデータA、データB、データCの順にシーケンシャルに読み込む。この際、ディスクは2回転しており、データを読み込む時間は2回転分必要となっていることを示す。
【0021】
図4は、データを読み込む際にT1のデータA、T2のデータC、T3のデータBの順にデータを読み込んでいることを示す。この場合、データA、データC、データBのように順番が異なって読み込んでいますが、データ全体の読込時間は1回転で読み込めていることを示す。
【0022】
本発明では、データの読み出し順を、ヘッドの動きとディスクの回転とデータの読み出し状況とを予めシミュレーションして、最適な順番でデータのアクセスを行うものである。本発明では、このシミュレーションに加えて、このデータが映像情報であることと放送の送出用データ等のデータを必要としている時刻が事前に決まっている事などを利用して、優先順位の高いデータが必要な時刻に出力できることをシミュレーションして、もし、優先順位の高いデータがとぎれるような場合に、優先順位の低いデータの読み出しを後回しとして、優先順位の高いデータの連続性を維持するようにディスクのアクセスを行う。
【0023】
図5と図6とは、データAをアクセス後に、次にアクセスするべきデータがデータCとデータBの2つがあり、どちらかを先にアクセスすると反対のデータは次の周までアクセスが待たされる場合を示す。この場合、図5に示すように、データA、データB、データCの順にアクセスするか、図6に示すように、データA、データC、データBの順にアクセスする方法が考えられる。このような場合、優先順位の高いデータを先に読み、優先順位の低いデータを後回しにする用にアクセスする。これにより、優先順位を高く設定した画像データについて、データがとぎれることを防止する。読み出しと書込が重なった場合には、書込データは半導体メモリにバッファして読み出しを優先し、書きこむ余裕が出来た場合に書込を行う。
【0024】
図7はハードディスクをアクセスして画像用のデータを読み出しているところを示す。バッファメモリへのデータ転送は、電気的な処理による転送のためディスクのヘッドの移動時間に対し高速で転送することが出来るので、ほぼ瞬間的に転送される。画像送出は(8)の時点よりAの画像データを送出し始めている事を示している。データは(9)の時点よりBの画像データになり、(10)の時点よりCの画像データを送出している。画像送出のデータ速度は、ディスクのアクセス速度より遅く、ディスクのアクセス時間の数倍程度の時間の画像データを送出できることを示している。このため、ディスクからの読み出しデータは、完全に連続していなくてもバッファにより連続したデータにして送出することが出来る。
【0025】
図8は、図7のデータのアクセス順序をA,B,Cの順からトラックが近い順にA,C,Bの順でデータをアクセスした場合を示している。この場合、Aの画像データは(9)までで終わりとなり次のBは(10)まで送出できなくなるので(9)から(10)の間はデータが途切れることになる。途切れている間は一般的にはAの最後の画像を送り続けるが間隔が数フレームを超えると静止画として見えるようになり、画像が途切れたことが見ている人にわかってしまう。これが放送のデータであれば放送事故ということになる。この例では極端であるが、ハードディスクのアクセスを管理することにより、画像データのとぎれを防ぐことが可能であることを示している。
【0026】
更に、本発明に於いては、放送用の画像を送出するためのハードディスク装置に特化するため、ハードディスクをアクセスするデータに優先順位を設定し、優先順位が高いデータを優先してアクセスさせる事により、複数の同時アクセスに於いても放送用の画像データを確保することを提供する。つまり、ハードディスクの書込を遅延させても放送用等優先順位の高いデータの読出が間に合わない場合、登録確認画像等中断しても問題の発生しない優先順位の低いデータの読み出しを一時的に行わず、優先順位の高いデータの読出行う。
【0027】
また、放送用の画像データは放送スケジュールまたは番組表と呼ばれるタイムスケジュールに従って放送されており、どの時刻から画像が送出しなければならないか事前に決まっている。これらを利用し、書込時にデータにタイムスケジュールに基づいて優先順位を示す番号を付けることにより、放送用の画像データについては、放送開始時刻前にアクセスの余裕がある限り出来るだけ多くバッファにデータを蓄積させるように制御すれば、バッファによる送出時間が大きくなり、放送事故を防止することが出来る。
【0028】
これらのアクセスの制御に関しては、ディスク上のデータ位置、ディスクの回転位置、ヘッドの移動等のディスクの物理的な動作をマイクロコンピュータで高速にシミュレートすることにより、最適なディスクのアクセスを行う。具体的には、図2から図8に示したような、ディスク上のデータ位置を把握し、ディスク上の回転によるヘッドの移動とトラック間シークによるヘッドの移動を時間軸でシミュレートする。ハードディスク装置のアクセス速度をピーク時の速度以上にしなくても済むため、アクセス性能の低いハードディスク装置により、放送用の画像を登録と同時に送出する安価なシステムを構築できる。
【0029】
以上により、従来の放送に用いる高価なハードディスクを持たずに汎用の登録確認用ディスクと共用して、安価な放送用の画像を登録と同時に送出する為のハードディスク装置を提供する。
【符号の説明】
【0030】
T1,T2,T3:ハードディスク上のトラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書込データを一時的に書込保管する半導体メモリを含む制御部を有するハードディスク装置において、書込時にデータに優先順位を示す番号を付け、(放送用等)優先順位の高いデータの読出時は、登録用のデータを半導体メモリに一時的に書込保管し、ハードディスクへの書込を遅延させ、ディスクのアクセスに余裕が出来た時にデータを書きこむことを特徴とするハードディスク装置の書込読出の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−18395(P2011−18395A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162075(P2009−162075)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】