説明

ハードディスク装置を備えた画像処理装置

【課題】本発明の課題は、ハードディスク装置を備え、起動処理を迅速に行うことを可能とする画像処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の課題は、ハードディスク装置を備えた画像処理装置であって、前記ハードディスク装置のレディ状態を監視する手段と、前記ハードディスク装置に対してデータの読み取り及び書き込みを行う手段と、前記ハードディスク装置の内部を複数の領域に分割して使用する手段と、前記ハードディスク装置の構成が正常であることを検査する手段と、前記ハードディスク装置内部ファイルシステムの整合性をチェックする手段と、前記ハードディスク装置の一部を使用して処理を行うプロセスに対して、そのプロセスが使用する該ハードディスク装置中の一部分が使用可能になったことを通知する手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置を備え、起動処理を迅速に行うことを可能とする画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コピー機や複合機では、電源OFF状態や省エネモードから、電源を入れて使用可能になるまでの立ち上がり時間の短縮が省エネや利便性の点で重要な課題になっている。
【0003】
一方、コピー機や複合機では複雑で多くの機能を持つことが求められており、そのため、文書を蓄積したり、電子ソート機能などの情報記憶装置としてハードディスク装置(HDD)を使うことが一般的になっている。
【特許文献1】特表平10−500509号公報
【特許文献2】特許2868001号公報
【特許文献3】特開2004−303216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、HDDはその物理的特性のため電源の供給を始めてから、実際にHDDへのアクセスが可能になるまでの時間が相対的に長く(ATA(AT Attachment)の規格では最大31秒とされている。標準的なHDDでも5秒位はかかる)、コピーや複合機で求められる立ち上がり時間内にHDDを使用するのは困難である。
【0005】
また、HDDを使用する場合、HDDの記憶領域をファイルシステムの形式で使用しなければならない場合もあり、この場合にはHDD内のファイルシステムの整合性が正しく保たれているかのチェックも行う必要があり、このことが、HDDが使用可能になるまでの時間が長くなる要因にもなっている。
【0006】
実際には、HDDのファイルシステムの整合性チェックの終了を待ってから、機器が使用可能になるのでは遅すぎるため、この点を解決し、HDDの準備完了を待たずに機器を使用可能にする必要がある。
【0007】
特許文献1は、汎用のイベント発生部と、イベント消費部を持ち、それらを管理するイベントマネージャに対する発明を開示している。しかしながら、HDDの複数の領域の整合性をチェックを考慮した発明ではないため、HDDの複数の領域の整合性のチェック結果をすばやく処理プロセスに伝えることができない。
【0008】
特許文献2は、ディスクアレイ装置における障害発生時の自動復帰処理時の構成情報に関する発明を開示している。しかしながら、ディスクアレイ装置の起動時のHDDの構成チェックを迅速に処理する発明ではない。
【0009】
特許文献3は、外部記憶装置のチェックを行い、その媒体から読み出したプログラムを起動するかどうかを判定する発明である。しかしながら、ディスクアレイ装置の起動時のHDDの構成チェックを迅速に処理する発明ではない。
【0010】
そこで、本発明の課題は、ハードディスク装置を備え、起動処理を迅速に行うことを可能とする画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載されるように、ハードディスク装置を備えた画像処理装置であって、前記ハードディスク装置のレディ状態を監視する手段と、前記ハードディスク装置に対してデータの読み取り及び書き込みを行う手段と、前記ハードディスク装置の内部を複数の領域に分割して使用する手段と、前記ハードディスク装置の構成が正常であることを検査する手段と、前記ハードディスク装置内部ファイルシステムの整合性をチェックする手段と、前記ハードディスク装置の一部を使用して処理を行うプロセスに対して、そのプロセスが使用する該ハードディスク装置中の一部分が使用可能になったことを通知する手段とを有するように構成される。
【発明の効果】
【0012】
本願発明では、ハードディスク装置の構成が正常であることと複数の領域の整合性とをチェックし、その処理終了を、使用するプロセスに通知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
プリンタ、コピー、ファクシミリ、スキャナなどの複数の画像形成機能を1つの筐体内に収納し、また、その筐体内に表示部、印刷部および撮像部などを設けるとともに、プリンタ、コピー、ファクシミリ、スキャナなどのそれぞれ対応する複数のアプリケーションを備えた融合型の画像処理装置は、での電源ONからの立ち上がり動作を説明する。
【0015】
想定するハードウェア構成の例として、図1に示すようなインテルx86系CPUを使用した構成と、図2に示すようなmips系CPUを使用した構成を示す。
【0016】
図1は、x86系CPUを使用した場合のハードウェア構成図である。CPU(中央処理装置)101はチップセット(MCH103とICH104)に接続され、MCH103からRAM(システムメモリ)102が接続されている。MCH103とICH104とはハブインターフェースにより接続され、ICH104からPCIバスを介してI/O処理用ASIC(Application Specific Integrated Circuit)105、PCI(オプション)109が接続されている。I/O処理用ASIC105は、USB、Ethernet(登録商標)、SDカード112とのI/O処理を行うものである。
【0017】
MCH103からはAGPバスを介して画像処理用ASIC106が接続される。画像処理用ASIC106は、HDD(Hard Disk Drive)111との入出力処理、RAM(ローカルメモリ)108の読み書き、画像編集処理、画像圧縮処理、画像回転処理などが行われる。画像処理用ASIC106からはPCI(RAPI)バスが出力されており、その先に連結用IEEE1394のコントローラ110と印刷・スキャン用エンジン107が接続されている。
【0018】
図2は、mips系CPUを使用した場合のハードウェア構成図である。CPU201は画像処理用ASIC206に接続され、画像処理用ASIC206を介してRAM202が接続されている。画像処理用ASIC206ではHDD211との入出力処理、画像編集処理、画像圧縮処理、画像回転処理が行われる。画像処理用ASIC206からはPCI(RAPI)バスが出力されており、その先に、I/O処理用ASIC205、PCIオプション209、IEEE1394のコントローラ210と印刷・スキャン用エンジン207が接続されている。I/O処理用ASIC206はUSB、Ethernet(登録商標)(登録商標)、SDカード212とのI/O処理を行うものである。
【0019】
図3は、本実施例で使用するHDDのデータ領域の構成を示す図である。図3中、HDD301は、図1に示すHDD111と、図2に示すHDD211とに相当する。1台のHDD301は複数の領域に分けられている。
【0020】
HDD301の複数の領域内は、それぞれ別の形式で使用されることがある。例えば、
領域1は、構造を仮定せず生のHDDブロックとして扱い、
領域2及び領域3はUNIX(登録商標)のFFSファイルシステムとして扱い、
領域4は、ログを保存するために信頼性を確保した方法(LOGFS)で扱う、
という具合に使用される。
【0021】
また、プロセス(処理単位)320毎にそれぞれ使用する領域が決められている。例えば、
IMH(Image Memory Handler)プロセス321は、領域1を使用し、
GPSプロセス322は、領域2を使用し、
ネットファイルプロセス(複数でも良い)323は、領域3を使用し、
FAXプロセス324は、領域4を使用する、
という具合に、プロセスごとにHDD301内の異なる領域を使用する。
【0022】
HDD301のパーティション分割(領域分割)について説明する。図4は、HDDのパーティション分割の方法を説明するための図である。HDD301の先頭 (あるいは先頭に近い決められた位置のセクタ)に、HDD301の分割情報を保存している disklabel という構造体が書き込まれている。
【0023】
HDD301を扱う場合、最初に disklabel を読み込み、HDD301内部がどのようなパーティションに分割されているか判断する。disklabel にはパーティションの数と、それぞれのパーティションごとに少なくとも以下の情報が保存されている。
【0024】
・パーティションの開始オフセット
・パーティションのサイズ
・パーティションのタイプ
図4の例では、4個のパーティション0、1、2、3に分割され、それぞれのパーティション0から3のタイプは最初からRAW、FFS、FFS、LOGとなっている。
【0025】
システム立ち上げ時のHDD301関連のブート処理について説明する。図5は、HDD全体が使用可能になるまでに必要な処理の流れを示す図である。図5において、HDD301が存在するかの否かの判定を行う(S501)。HDD301が存在しない場合は「HDDなし」というステータスで処理を異常終了する(S502)。
【0026】
HDD301がレディ(アクセス可能)になるのを待つ(S503)。HDD301がレディ(アクセス可能)でない場合、レディ待ちの最大時間を越えたか否かを判断する(S504)。レディ待ちの最大時間を越えていない場合、ステップS503へ戻る。一方、レディ待ちの最大時間を越えた場合、「HDDレディにならず」というステータスで処理を異常終了する(S507)。
【0027】
一方、ステップS503においてHDD301がレディ(アクセス可能)になったと判断すると、HDD301の構成情報ファイルを読み込む(S505)。この構成情報ファイルは、システムのROMや不揮発性RAMに記憶されており、以下の情報を保持している。
【0028】
・HDD301のパーティション数
・各パーティションの情報
・パーティションのサイズ
・パーティションのデバイス名
・パーティションのタイプ (RAW、FFS、 LOGなど)
・パーティションのチェックの順序
・パーティションのタイプ毎に依存した情報
そして、HDD301のdisklabelを読み込む(S506)。
【0029】
ステップS505で読み込んだHDD301の構成情報と、disklabelとを比較して矛盾がないか判定する(S508)。パーティションのサイズやタイプが違っているなど、2つの情報間に矛盾がある場合には、「HDDの分割情報が不正」というステータスで処理を異常終了する(S509)。
【0030】
以下、ステップS505で読み込んだHDD301の構成情報に従った順番で、各パーティションのチェックを行う。このチェックは当該パーティションのタイプに応じたチェック手順を使用する(S510)。
【0031】
ステップS510における当該パーティションのチェックの結果、パーティション内の情報にファイルシステムとして不整合が見つかって修復が不可能であるか否かを判定する(S511)。修復不可能な場合、「ファイルシステム不整合」というステータスで処理を異常終了する(S512)。
【0032】
一方、修復可能な場合、ステップS505で読み込んだHDD301の構成情報中の当該パーティションに対するデバイス名を取得し、このデバイス名のパーティションを使用するプロセスに、デバイスが使用可能になったことを通知する(S513)。この時点で、待機していたプロセスは、このパーティション内のデータにアクセスを行うことができるようになる。
【0033】
すべてのパーティションのチェック処理を終えたか否かを判定する(S514)。処理を行うパーティションが残っている場合にはS510に戻る。一方、すべてのパーティションのチェック処理を終えた場合、HDD301内のすべてのパーティションが使用可能になったことをシステムプロセスに通知して、正常終了する(S515)。
【0034】
上述したように、本願発明によれば、第一に、HDD301の構成が正常であることと複数の領域の整合性とをチェックし、その処理終了を、使用するプロセスに通知することが可能となる。
【0035】
第二に、第一に加えて、接続されているHDD301が、機器が期待する構成になっているか否かを検査することが可能となる。
【0036】
第三に、第一及び第二に加えて、接続されているHDD301が、正しく一部または全体をファイルシステムとして使用する構成になっているか判定することが可能となる。
【0037】
第四に、第三に加えて、接続されているHDD301の一部がファイルシステムになっている構成において、ファイルシステムの整合性を判定することが可能となる。
【0038】
第五に、第四に加えて、接続されているHDD301に複数のファイルシステムが存在する構成において、ファイルシステムの整合性チェックを行う順番を指定することが可能となり、システム立ち上げの早い時期に処理が必要なファイルシステムのチェックを先に行うことが可能となる。
【0039】
第六に、第三から第五に加えて、接続されているHDD301に複数の異なるファイルシステムが存在する構成において、ファイルシステムの種類に応じた整合性チェックを行うことが可能となる。
【0040】
第七に、第三から第六に加えて、接続されているHDD301に複数のファイルシステムが存在する構成において、システム立ち上げの早い時期に処理を行う必要なプロセスが必要としているファイルシステムの整合性チェックを先に行うことにより、早期にプロセスがHDD301上のファイルシステムを使用することが可能となる。
【0041】
本発明は、具体的に開示された実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】x86系CPUを使用した場合のハードウェア構成図である。
【図2】mips系CPUを使用した場合のハードウェア構成図である。
【図3】本実施例で使用するHDDのデータ領域の構成を示す図である。
【図4】HDDのパーティション分割の方法を説明するための図である。
【図5】HDD全体が使用可能になるまでに必要な処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0043】
101 CPU
102 RAM(システムメモリ)
103 MCH
104 ICH
105 I/O処理用ASIC
106 画像処理用ASIC
107 印刷・スキャン用エンジン
108 RAM(ローカルメモリ)
109 PCI(オプション)
110 連結用IEEE1394のコントローラ
111 HDD
112 SDカード
201 CPU
202 RAM
205 I/O処理用ASIC
206 画像処理用ASIC
207 印刷・スキャン用エンジン
209 PCIオプション
210 IEEE1394のコントローラ
211 HDD
212 SDカード
301 HDD
320 プロセス
321 IMH
322 GPS
323 ネットファイル
324 FAX

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードディスク装置を備えた画像処理装置であって、
前記ハードディスク装置のレディ状態を監視する手段と、
前記ハードディスク装置に対してデータの読み取り及び書き込みを行う手段と、
前記ハードディスク装置の内部を複数の領域に分割して使用する手段と、
前記ハードディスク装置の構成が正常であることを検査する手段と、
前記ハードディスク装置内部ファイルシステムの整合性をチェックする手段と、
前記ハードディスク装置の一部を使用して処理を行うプロセスに対して、そのプロセスが使用する該ハードディスク装置中の一部分が使用可能になったことを通知する手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ハードディスク装置の構成が正常であることを、該ハードディスク装置以外の記憶装置から該ハードディスク装置の構成情報を読み込み、該ハードディスク装置の実際の構成と比較することにより、該ハードディスク装置の構成が正常であることを検査する手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ハードディスク装置の内部の複数の領域の中の一部および全体をファイルシステムとして使用することを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ハードディスク装置以外の記憶装置から該ハードディスク装置の構成情報を読み込むことにより、該ハードディスク装置内部でファイルシステムを使用している部分の領域を判別して、その部分のファイルシステムの整合性チェックを行うことを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ハードディスク装置以外の記憶装置から該ハードディスク装置の構成情報を読み込むことにより、該ハードディスク装置内部で複数のファイルシステムを使用している場合の、該ファイルシステムの整合性チェックを行う順番を判別することを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記ハードディスク装置以外の記憶装置から該ハードディスク装置の構成情報を読み込むことにより、該ハードディスク装置内部で複数のファイルシステムを使用している場合の、該ファイルシステムの種類を判別し、その種類に応じたファイルシステムの整合性チェックを行うことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ハードディスク装置内部のファイルシステムの整合性チェックが終了したことを検出し、該ハードディスク装置の一部を使用して処理を行うプロセスに対して、そのプロセスが使用する部分が使用可能になったことを通知し、該ハードディスク装置を使用するプロセスがこの通知を受け取り、該ハードディスク装置が使用可能である場合の処理を行うことを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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