説明

ハーネスガイド

【課題】被ガイド部材がガイド部材から脱落するのを防止したハーネスガイドを提供する。
【解決手段】ハーネスガイド10は、長尺状のガイド部材50と、ワイヤハーネス20が挿通される被ガイド部材70と、被ガイド部材70に一体又は別体に設けられ、ガイド部材50を長さ方向に転動することでガイド部材50に対し被ガイド部材70が移動案内されるようにした回転部材80とを備える。ガイド部材50は、互いに平行な板状をなす一対の対向部51を有し、回転部材80は、両対向部51の夫々に対し長さ方向に複数並んで配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネスガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体とスライドドアとの間に配索されるワイヤハーネスをガイドするためのハーネスガイドが開示されている。このハーネスガイドは、ガイド部材と、被ガイド部材とを備えている。ガイド部材は、長尺板状をなし、互いに平行な一対の対向部と、両対向部の内側面から突出して長さ方向に延びる一対のレール部とを有している。被ガイド部材は、ワイヤハーネスが挿通される本体部と、本体部の両側外面に凹設された一対のガイド溝とを有している。両ガイド溝には両レール部が進入して嵌合される。スライドドアが開閉されると、ガイド溝の溝面にレール部が長さ方向に摺動し、これによって被ガイド部に対するガイド部の移動が案内されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−336613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のハーネスガイドでは、スライドドアの開閉操作に伴って本体部がレール部を摺動するため、摩擦抵抗が大きくなり勝ちであるという事情がある。その結果、操作負担が増加するばかりでなく、本体部とレール部との当接領域が摩耗し、この当接領域の変形によって、最悪の場合、被ガイド部材がガイド部材から脱落するおそれがある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、被ガイド部材がガイド部材から脱落するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、長尺状のガイド部材と、ワイヤハーネスが挿通される被ガイド部材と、前記被ガイド部材に一体又は別体に設けられ、前記ガイド部材を長さ方向に転動することで前記ガイド部材に対し前記被ガイド部材が移動案内されるようにした回転部材とを備えるところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ガイド部材は、互いに平行な板状をなす一対の対向部を有し、前記回転部材は、前記両対向部の夫々に対し前記長さ方向に複数並んで配置されるところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記回転部材の全体が、前記両対向部の対向面間の空間内に収容されるところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記回転部材は、前記被ガイド部材に対し軸部を介して回転可能に設けられるローラを有し、前記ガイド部材は、互いに平行な板状をなす一対の対向部を有し、前記両対向部の夫々には、前記長さ方向に延びるレール部が形成され、前記レール部は、前記ローラを挟んだ上下両側に対をなして配置されるところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記ガイド部材は、互いに平行な板状をなす一対の対向部を有し、前記両対向部の夫々には、前記長さ方向に延びるレール部が形成され、前記回転部材は、前記被ガイド部材に対し軸部を介して回転可能に設けられるローラを有し、前記ローラが、前記レール部を挟んだ上下両側に対をなして配置されるところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記ガイド部材は、互いに平行な板状をなす一対の対向部を有し、前記両対向部の夫々には、前記長さ方向に延びるレール部が形成され、前記回転部材は、前記被ガイド部材に連なって軸線を上下方向に向けた軸部と、前記軸部に対し前記軸線周りに回転可能に設けられるローラとを有し、前記ローラと前記レール部とが、互いに上下方向で当接する形態とされているところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記ガイド部材は、互いに平行な板状をなす一対の対向部を有し、前記両対向部の夫々には、前記長さ方向にほぼ平行に延びる支軸が架設され、前記回転部材は、前記支軸に摺動可能に貫通して装着されるベアリングとされ、前記被ガイド部材は、前記ベアリングを内包してこのベアリングとともに前記長さ方向に移動するところに特徴を有する。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記ガイド部材は、互いに平行な板状をなす一対の対向部を有し、前記両対向部の夫々には、前記長さ方向に延びるレール部が形成され、前記回転部材は、前記レール部を転動する複数のベアリングボールとされ、前記被ガイド部材は、前記複数のベアリングボールを内包してこの各ベアリングボールとともに前記長さ方向に移動するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0014】
<請求項1の発明>
回転部材がガイド部材を転動するため、回転部材とガイド部材との間に大きな摩擦抵抗が発生することはない。したがって、回転部材とガイド部材との間の当接領域が摩耗するのが回避され、ひいては被ガイド部材がガイド部材から脱落するのが防止される。
【0015】
<請求項2の発明>
回転部材が両対向部の夫々に対し長さ方向に複数並んで配置されるため、案内の信頼性がより高められる。
【0016】
<請求項3の発明>
回転部材の全体が両対向部の対向面間の空間内に収容されるため、回転部材が外部異物と干渉するのが回避される。
【0017】
<請求項4の発明>
レール部がローラを挟んだ上下両側に対をなして配置されるため、レール部に対してローラが上下両側に移動するのが規制され、案内の信頼性がより高められる。
【0018】
<請求項5の発明>
ローラがレール部を挟んだ上下両側に対をなして配置されるため、レール部に対してローラが上下両側に移動するのが規制され、案内の信頼性がより高められる。
【0019】
<請求項6の発明>
回転部材が被ガイド部材に連なって軸線を上下方向に向けた軸部と、軸部に対し軸線周りに回転可能に設けられるローラとを有し、ローラとレール部とが互いに上下方向で当接する形態とされているから、上下方向と直交する幅方向へのローラの突出量が小さく抑えられ、スペース効率に優れる。
【0020】
<請求項7の発明>
回転部材が支軸に摺動可能に貫通して装着されるベアリングとされ、被ガイド部材がベアリングを内包してこのベアリングとともに長さ方向に移動するため、ベアリングに塵埃が付着して案内機能が低下するのが防止される。
【0021】
<請求項8の発明>
回転部材がレール部を転動する複数のベアリングボールとされ、被ガイド部材が複数のベアリングボールを内包してこの各ベアリングボールとともに長さ方向に移動するため、各ベアリングボールが高速回転することにより、被ガイド部材が円滑に移動案内される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態1に係るハーネスガイドの斜視図である。
【図2】ハーネスガイドの正面図である。
【図3】ハーネスガイドの側面図である。
【図4】実施形態2に係るハーネスガイドの正面図である。
【図5】ハーネスガイドの側面図である。
【図6】実施形態3に係るハーネスガイドの前方からみた断面図である。
【図7】ハーネスガイドの側方からみた断面図である。
【図8】実施形来4に係るハーネスガイドの斜視図である。
【図9】ハーネスガイドの正面図である。
【図10】実施形態5に係るハーネスガイドの前方からみた断面図である。
【図11】ハーネスガイドの側方からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図3によって説明する。実施形態1に係るハーネスガイド10は、車体側からスライドドア側に電力を供給するための電線や車体側とスライドドア側との間で電気信号を授受するための電線を一纏めに束ねたワイヤハーネス20がスライドドアの開閉に伴って所定経路に沿って移動するようにしたものである。
【0024】
図1に示すように、ハーネスガイド10は、ブラケット30を介してスライドドアに固定されるガイド部材50と、ガイド部材50に対して移動可能に取り付けられる被ガイド部材70と、ガイド部材50に固定されるドア側固定部材31と、ドア側固定部材31と被ガイド部材70とを連結する可動案内部材32と、車体に固定される車体側固定部材33と、車体側固定部材33に支持されて前方に延びる筒状アーム部材34とを備えている。
【0025】
ガイド部材50は、アルミニウムやステンレススチール等の金属部材からなり、互いに平行な長尺板状をなす一対の対向部51を有している。両対向部51は、その板面を左右方向に向けた状態(板面が鉛直方向に沿った状態)で前後方向(長さ方向であってスライドドアの開閉時におけるスライド方向)に細長く延びる形態とされている。両対向部51には、双方間の内側空間52を横切るように軸線を左右方向に向けたピン状のスペーサ53が連結されている。両対向部51間の間隔は、スペーサ53によってほぼ一定に保持されている。また、両対向部51の一方は、ブラケット30を介してスライドドアに固定されている。
【0026】
両対向部51の内側面(対向面)には、この内側面と直角な方向に突出し、かつ、前後方向のほぼ全長に亘って延びる上下一対ずつのレール部54が一体に形成されている。各レール部54は、リブ状をなし、図2に示すように、下端部に位置する一対の第1レール部55と、両第1レール部55よりも上側に位置する一対の第2レール部56とからなる。両第1レール部55同士は互いに同じ高さ位置に配置され、両第2レール部56同士も互いに同じ高さ位置に配置されている。また、両第1、第2レール部55、56は、互いにほぼ平行に配置されている。そして、両第1、第2レール部55、56間の上下方向の離間距離は、後述するローラ82の径寸法よりも少し大きくされている。両第1、第2レール部55、56の上下両面はほぼ水平に配置され、このうち、両第1レール部55の上面は各ローラ82が転動するガイド面57とされている。
【0027】
ドア側固定部材31は、ガイド部材50の前後方向ほぼ中央部に固定されている。ドア側固定部材31と被ガイド部材70との間には、U字形に屈曲可能なキャタピラ状の可動案内部材32が設けられている。可動案内部材32の内部とドア側固定部材31の内部とには、被ガイド部材70から導出されたワイヤハーネス20が挿通されている。また、ドア側固定部材31の外部に導出されたワイヤハーネス20のドア側端末部は、図示しないドア側ハーネスに接続されている。
【0028】
車体側固定部材33は、被ガイド部材70よりも後方の位置において車体に固定されている。車体側固定部材33には、筒状アーム部材34の後端部が左右方向に首を振るように支持されている。筒状アーム部材34の前端部は、被ガイド部材70に連結されている。筒状アーム部材34の内部と車体側固定部材33の内部とには、被ガイド部材70から導出されたワイヤハーネス20が挿通され、車体側固定部材33の外部へ導出されたワイヤハーネス20の車体側端末部は、図示しない車体側ハーネスに接続されている。
【0029】
被ガイド部材70は合成樹脂製であって、両対向部51間に挟まれるように配置され、ほぼ角ボックス状をなす本体部71と、本体部71の下端に連なる連結部72とから一体に構成されている。連結部72は、本体部71の下端面における外側パネル側(車体の外側)の端縁から下方に延びる第1板部73と、第1板部73の下端からほぼ直角に屈曲して内側パネル側(車体の内側)に向けて延びる第2板部74とからなり、全体としてL字形に形成されている。連結部72における本体部71の下端面とこれに対向する第2板部74との間の空間内には、筒状アーム部材34の前端部が収容されている。この場合、筒状アーム部材34は、連結部72に左右方向への首振りを可能に支持されている。
【0030】
本体部71の内部には挿通孔75が形成され、この挿通孔75内にワイヤハーネス20が屈曲状態で挿通されている。そして、本体部71は、全体として上下方向に細長く延びる形態とされ、下端部において左右に膨出する下側本体部76と、下側本体部76の上方において下側本体部76よりも幅狭(左右方向の寸法が小さい)とされる上側本体部77とを有している。両第1、第2レール部55、56の突出端間の離間距離は、下側本体部76の幅寸法よりも小さく、上側本体部77の幅寸法よりも大きくされている。上側本体部77は、両対向部51間の内側空間52内で、かつ第1、第2レール部55、56の突出端間の空間内に収容されている。
【0031】
上側本体部77の左右両側面は、ほぼ垂直に切り立つ平坦面とされ、その前後両端部に、前後一対ずつの回転部材80が設けられている。
各回転部材80は、上側本体部77の左右両側面から両側外方に突出する前後一対ずつのピン状の軸部81と、各軸部81に回転可能に設けられる前後一対ずつの円盤状のローラ82とを有している。各ローラ82及び各軸部81は、互いにほぼ同じ高さ位置に配置されている。各軸部81の軸方向は幅方向(水平方向)に向けられ、各ローラ82の左右両端面(周面と直交する面)は上下方向(鉛直方向)にほぼ沿って配置されている。また、各軸部81の突出端側及び各ローラ82は、両第1、第2レール部55、56間の上下方向の空間内に収容されている。
【0032】
次に、実施形態1に係るハーネスガイド10の作用を説明する。
ガイド部材50の端部開口から両第1、第2レール部55、56間の上下方向の空間内に被ガイド部材70の各ローラ82が挿入され、ガイド部材50に被ガイド部材70が組み付けられる。その状態で、スライドドアが開閉されると、各ローラ82が、各軸部81の軸線周りに回転しながら両第1レール部55のガイド面57を前後方向に円滑に転動する。それに伴い、ガイド部材50が被ガイド部材70に対して相対的に前後方向に移動し、かつ、本体部71内のワイヤハーネス20がその屈曲状態を漸次変化させる。
【0033】
被ガイド部材70の移動過程では、筒状アーム部材34が左右方向に首を振り、可動案内部材32がU字形に屈曲することにより、被ガイド部材70に前後方向と交差する方向への力が作用する。このため、被ガイド部材70が所定の移動経路から上下両側に外れる懸念がある。しかるに実施形態1によれば、図3に示すように、各ローラ82が両第1、第2レール部55、56間の上下方向の空間内に収容されているため、仮に、被ガイド部材70に下向きの力が作用しても、各ローラ82が両第1レール部55のガイド面57を転動する状態を維持し、被ガイド部材70に上向きの力が作用しても、各ローラ82が両第2レール部56の下面を転動してそれ以上の変位が規制される。このため、被ガイド部材70が所定の移動経路から上下両側に外れるのが防止される。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、回転部材80がガイド部材50を転動するため、回転部材80とガイド部材50との間に大きな摩擦抵抗が発生することはない。したがって、回転部材80とガイド部材50との間の当接領域(各ローラ82の周面及び両第1レール部55のガイド面57等)が摩耗するのが回避され、ひいては被ガイド部材70がガイド部材50から脱落するのが防止される。
【0035】
また、回転部材80が両対向部51の夫々に対し前後方向に複数並んで配置されるため、案内の信頼性がより高められる。しかも、回転部材80の全体が両対向部51間の内側空間52内に収容されているため、回転部材80が外部異物と干渉するのが回避される。さらに、両第1、第2レール部55、56が各ローラ82を挟んだ上下両側に対をなして配置されるため、両第1、第2レール部55、56に対して各ローラ82が上下両側に移動するのが規制され、案内の信頼性が高められる。
【0036】
<実施形態2>
図4及び図5は、本発明の実施形態2に係るハーネスガイド10Aをあらわす。実施形態2では、ガイド部材50A及び回転部材80Aの構造が実施形態1とは異なる。その他は、実施形態1とほぼ同様であり、実施形態1と同様の構造には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0037】
両対向部51の内側面(対向面)には、この内側面と直角な方向に突出し、かつ、前後方向のほぼ全長に亘って延びる一対のレール部54Aが一体に形成されている。両レール部54Aは、リブ状をなし、下端側に位置して互いにほぼ同じ高さ位置に配置されている。両レール部54Aの上下両面はいずれもほぼ水平に配置され、この上下両面を後述する各第1、第2ローラ86、88が転動可能とされている。
【0038】
回転部材80Aは、本体部71の下端部に連結される一対の第1回転部材83と、第1回転部材83よりも上方に位置する前後一対ずつの第2回転部材84とからなる。各第2回転部材84は、図5に示すように、両第1回転部材83を挟んだ前後両側における本体部71の前後両端部に配置され、各第2回転部材84同士は互いにほぼ同じ高さ位置に配置されている。
【0039】
両第1回転部材83は、図4に示すように、本体部71の両側外面に連なって軸心を幅方向に向けた一対の第1軸部85と、第1軸部85に回転可能に設けられ、上下方向(鉛直方向)にほぼ沿った左右両端面(周面と直交する面)を有する一対の第1ローラ86とを有している。各第2回転部材84は、本体部71の両側外面に連なって軸心を幅方向と交差する斜め上向きに向けた前後一対ずつの第2軸部87と、第2軸部87に回転可能に設けられ、上下方向と交差する方向に沿ったテーパ状の左右両端面を有する前後一対ずつの第2ローラ88とを有している。言い換えれば、各第2軸部87は上方に向けて互いに拡開して配置され、各第2ローラ88は下方に向けて互いに拡開して配置されている。
【0040】
各第1、第2軸部85、87は互いにほぼ同じ突出寸法を有し、各第2軸部87の突出端は各第1軸部85の突出端よりも幅方向に関して内側へ引っ込む位置に配置されている。被ガイド部材70がガイド部材50Aに組み付けられると、両第1ローラ86が両対向部51の下端外方に配置されて両レール部54Aの下面に下方から当接し、各第2ローラ88が両対向部51の内側空間52内に配置されて両レール部54Aの上面に斜め上方から当接する。この場合、各第2軸部87の突出端が内側に控えて位置するため、各第2軸部87と両対向部51との干渉が回避される。
【0041】
ここで、スライドドアが開閉されると、両第1ローラ86が両レール部54Aの下面を転動するとともに、各第2ローラ88が両レール部54Aの上面を転動し、これによって被ガイド部材70がガイド部材50Aに前後方向に移動案内される。実施形態2によれば、各第1、第2回転部材83、84が両レール部54Aを挟んだ上下両側に対をなして配置され、両レール部54Aが各第1、第2ローラ86、88によって上下両側から挟まれる形態とされるため、被ガイド部材70が所定の移動経路から上下両側に外れることがない。その結果、ガイド部材50Aに対する被ガイド部材70の案内の信頼性が高められる。
【0042】
<実施形態3>
図6及び図7は、本発明の実施形態3に係るハーネスガイド10Bをあらわす。実施形態3では、ガイド部材50B、被ガイド部材70B、及び回転部材80Bの構造が実施形態1とは異なる。その他は、実施形態1とほぼ同様であり、実施形態1と同様の構造には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
両対向部51の内側面(対向面)には、この内側面と直角な方向に突出し、かつ、前後方向のほぼ全長に亘って延びる一対のレール部54Bが一体に形成されている。両レール部54Bは、内側へ屈曲されたリブ状の形態とされ、上端側に位置して互いにほぼ同じ高さ位置に配置されている。両レール部54Bの上下両面は、完全な水平面ではなく、若干傾斜しており、この上下両面を後述する各ローラ82Bが転動可能とされている。
【0044】
被ガイド部材70Bは角ボックス状の本体部71Bを有し、組み付け状態では、本体部71Bの全体が両対向部51間の内側空間52内に配置されている。本体部71Bの内部は、挿通孔75Aとされ、本体部71Bの上壁のほぼ中央部と本体部71Bの後壁とには、それぞれ挿通孔75Aに連通する導出口78、79が開口して形成されている。ワイヤハーネス20は、本体部71B内でほぼ直角に屈曲された状態で両導出口78、79を通して後方及び上方に導出されるようになっている。
【0045】
回転部材80Bは、本体部71Bの上壁に連結されて上方に突出する前後一対でかつ左右一対の軸部81Bと、各軸部81Bに対しその軸心周りに回転可能に設けられた円盤状をなす前後一対でかつ左右一対のローラ82Bとを有している。各軸部81Bは互いに同じ突出寸法を有し、各ローラ82Bは互いに同じ高さ位置に配置されている。そして、各軸部81Bの軸心は上下方向(鉛直方向)に向けられ、各ローラ82Bの上下両端面(周面と直交する面)は幅方向(水平方向)にほぼ沿って配置されている。
【0046】
また、各ローラ82Bの周面には、両レール部54Bが進入可能な凹溝89が全周に亘って形成されている。各凹溝89は、断面U字形をなし、組み付け状態では、各凹溝89の内周面の上下両側に両レール部54Bが当接するようになっている。
【0047】
各凹溝89内に各レール部54Bが側方から進入した状態で、スライドドアが開閉されると、各ローラ82Bが幅方向に沿って回転しながら両レール部54Bを転動し、それに伴い被ガイド部材70Bがガイド部材50Bに対し前後方向に移動案内される。実施形態2によれば、各ローラ82Bと両レール部54Bとが互いに上下方向で当接する形態とされているため、上下方向と直交する幅方向への各ローラ82Bの突出量を小さく抑えることができる。その結果、両対向部51間の距離(内側空間52の幅寸法)を大きくしなくても両対向部51間に被ガイド部材70Bを難なく配置することができ、スペース効率に優れる。
【0048】
<実施形態4>
図8及び図9は、本発明の実施形態4に係るハーネスガイド10Cをあらわす。実施形態4では、ガイド部材50C、被ガイド部材70C、及び回転部材80Cの各構造が実施形態1とは少し異なる。
【0049】
ガイド部材50Cは、互いに平行な板状をなす一対の対向部51と、対向部51の前後両端から内側に突出する前後一対ずつの支持部58と、前後の支持部58に連結され、かつ両支持部58間に架橋される一対の支軸59とを有している。両支軸59は、前後方向に細長く延びる丸棒状の形態とされている。
【0050】
回転部材80Cは、両支軸59の夫々に前後一対ずつ取り付けられ、両支軸59の周りを回転可能なベアリング90(すべり軸受)によって構成されている。各ベアリング90は各支軸59の周面を摺動しつつ前後方向に移動可能とされている。
【0051】
被ガイド部材70Cは、各ベアリング90を内包可能なボックス状の本体部71Cを有している。本体部71Cはその内面で各ベアリング90と当接可能とされている。なお、本体部71Cの下端面には、実施形態1と同様の連結部72が連結されている。
【0052】
ここで、スライドドアが開閉されると、各ベアリング90が支軸59の周面を円滑に滑りながら転動し、それに伴って被ガイド部材70Cがガイド部材50Cに対して前後方向に移動案内されるようになっている。実施形態4によれば、回転部材80Cが両支軸59に摺動可能に貫通して装着される各ベアリング90とされ、被ガイド部材70Cが各ベアリング90を内包してこの各ベアリング90とともに前後方向に移動するため、ベアリング90に塵埃が付着して案内機能が低下するのが防止される。
【0053】
<実施形態5>
図10及び図11は、本発明の実施形態5に係るハーネスガイド10Dをあらわす。実施形態5では、ガイド部材50D、被ガイド部材70D、及び回転部材80Dの各構造が実施形態1とは異なる。
【0054】
ガイド部材50Dは、互いに平行な板状をなす一対の対向部51を有する。両対向部51の内側面(対向面)には、この内側面と直角な方向に突出し、かつ、前後方向のほぼ全長に亘って延びる一対のレール部54Dが一体に形成されている。両レール部54Dは、リブ状をなし、下端側に位置して互いにほぼ同じ高さ位置に配置されている。両レール部54Dの上下両面はいずれもほぼ水平に配置され、この上下両面を後述する各ベアリングボール95が転動可能とされている。
【0055】
回転部材80Dは、両レール部54Dの上面両面に当接する複数のベアリングボール95によって構成されている。各ベアリングボール95(玉軸受)は、図11に示すように、円球体状をなし、前後方向で互いに当接しつつ両レール部54Dの上面両面に並列に配置されている。
【0056】
被ガイド部材70Dの両側外面には、各レール部54Dが進入する一対のガイド溝40が凹み形成され、かつ両ガイド溝40の上下両面に、各ベアリングボール95を収容可能な上下一対ずつの収容溝60が形成されている。両ガイド溝40及び各収容溝60は、前後方向に沿って細長く延びる形態とされ、組み付け状態では、両レール部54Dが両ガイド溝40内に挿入されるとともに、両レール部54Dの上下両面と両ガイド溝40の内面との間に各ベアリングボール95が上下方向に挟まれるように配置される。ここで、スライドドアが開閉されると、各ベアリングボール95が収容溝60内で自在に回転しながら両レール部54Dの上面両面を転動し、それに伴って被ガイド部材70Dがガイド部材50Dに対して前後方向に移動案内されるようになっている。実施形態5によれば、回転部材80Dが両レール部54Dを転動する複数のベアリングボール95とされ、被ガイド部材70Dが各ベアリングボール95を内包してこの各ベアリングボール95とともに前後方向に移動するため、各ベアリングボール95が高速回転することにより、被ガイド部材70Dの移動案内が円滑になされる。
【0057】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)各ローラ、ベアリング、ベアリングボールの個数は任意であり、状況に応じて適宜変更可能である。
(2)実施形態2では、各第1ローラが両レール部の下面から離間して配置されていてもよい。
(3)実施形態3では、ローラの周面に凸条が形成され、レール部に凹溝が形成され、凹溝に凸条が嵌り込むことでローラとレール部とが互いに上下方向で当接する構成であってもよい。
(4)本発明は、回転部材を利用してガイド部材に対する被ガイド部材の移動案内を行うハーネスガイドに広く適用可能であり、その適用箇所がスライドドア構造に限定されるわけではない。
【符号の説明】
【0058】
10、10A、10B、10C、10D…ハーネスガイド
20…ワイヤハーネス
54、54A、54B、54D…レール部
55…第1レール部
56…第2レール部
50、50A、50B、50C、50D…ガイド部材
51…対向部
59…支軸
70、70B、70C、70D…被ガイド部材
80、80A、80B、80C、80D…回転部材
81、81B…軸部
85…第1軸部
87…第2軸部
82、82B…ローラ
86…第1ローラ
88…第2ローラ
90…ベアリング
95…ベアリングボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のガイド部材と、
ワイヤハーネスが挿通される被ガイド部材と、
前記被ガイド部材に一体又は別体に設けられ、前記ガイド部材を長さ方向に転動することで前記ガイド部材に対し前記被ガイド部材が移動案内されるようにした回転部材とを備えることを特徴とするハーネスガイド。
【請求項2】
前記ガイド部材は、互いに平行な板状をなす一対の対向部を有し、前記回転部材は、前記両対向部の夫々に対し前記長さ方向に複数並んで配置されることを特徴とする請求項1記載のハーネスガイド。
【請求項3】
前記回転部材の全体が、前記両対向部の対向面間の空間内に収容されることを特徴とする請求項2記載のハーネスガイド。
【請求項4】
前記回転部材は、前記被ガイド部材に対し軸部を介して回転可能に設けられるローラを有し、前記ガイド部材は、互いに平行な板状をなす一対の対向部を有し、前記両対向部の夫々には、前記長さ方向に延びるレール部が形成され、前記レール部は、前記ローラを挟んだ上下両側に対をなして配置されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のハーネスガイド。
【請求項5】
前記ガイド部材は、互いに平行な板状をなす一対の対向部を有し、前記両対向部の夫々には、前記長さ方向に延びるレール部が形成され、前記回転部材は、前記被ガイド部材に対し軸部を介して回転可能に設けられるローラを有し、前記ローラが、前記レール部を挟んだ上下両側に対をなして配置されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のハーネスガイド。
【請求項6】
前記ガイド部材は、互いに平行な板状をなす一対の対向部を有し、前記両対向部の夫々には、前記長さ方向に延びるレール部が形成され、前記回転部材は、前記被ガイド部材に連なって軸線を上下方向に向けた軸部と、前記軸部に対し前記軸線周りに回転可能に設けられるローラとを有し、前記ローラと前記レール部とが、互いに上下方向で当接する形態とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のハーネスガイド。
【請求項7】
前記ガイド部材は、互いに平行な板状をなす一対の対向部を有し、前記両対向部の夫々には、前記長さ方向にほぼ平行に延びる支軸が架設され、前記回転部材は、前記支軸に摺動可能に貫通して装着されるベアリングとされ、前記被ガイド部材は、前記ベアリングを内包してこのベアリングとともに前記長さ方向に移動することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のハーネスガイド。
【請求項8】
前記ガイド部材は、互いに平行な板状をなす一対の対向部を有し、前記両対向部の夫々には、前記長さ方向に延びるレール部が形成され、前記回転部材は、前記レール部を転動する複数のベアリングボールとされ、前記被ガイド部材は、前記複数のベアリングボールを内包してこの各ベアリングボールとともに前記長さ方向に移動することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のハーネスガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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