説明

ハーネス成形体

【課題】
ハーネス成形体の組み立て性を向上させること。
【解決手段】
ハーネス成形体9が、被覆ワイヤ11と、被覆ワイヤ11とアンテナ41、センサ電極42及びドアスイッチ44とを電気的に接続する接続部40a、40bとを有し、接続部40a、40bの周囲に封止部43,45が形成されて成るユニット部40と、ユニット部40から延在する被覆ワイヤ11の周囲に封止部43,45と同一材からなる被覆層12が一体成形にて形成されて成る成形部10とを備え、封止部43,45が形成されるのと同時に被覆層12が形成される構成としたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに用いられるワイヤハーネスの成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスは、組み立て電線とも言われ、複数本の電線を、その配線に必要な形態となるようにあらかじめ組み上げたものである。例えば、自動車用のワイヤハーネスは、バッテリー(電源)と各種の電装品、並びに電装品同士を接続するために使用される。
【0003】
公知のワイヤハーネスとして、後述の特許文献1に記載のものがある。
【0004】
このワイヤハーネス1は、図7に示す様に、テープ2とチューブ3を用いて複数本の電線4を束ねたものである。ワイヤハーネス1を構成する複数本の電線4は、テープ2とチューブ3とによって保護され、これにより、自身が配策される部位の周囲にある部材(ボディ等)との干渉による損傷が防止されている。
【特許文献1】特開平10−208556号公報(図1(B)参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したワイヤハーネス1の組み立ては、複数本の電線4を略円筒状に束ねた後、この束ねられた電線の周囲にテープ2を巻回し、チューブ3を被せることで成されていた。
【0006】
この一連の作業は、すべて作業者の手作業によって行われていたため、ワイヤハーネス1の組み立てに多大な時間を要し、作業の効率が悪かった。
【0007】
昨今では、組み立ての自動化が進んでおり、ワイヤハーネス1(ハーネス成形体)においても、その一連の組み立て作業をより簡単に、且つ効率よく行うことのできる構造が求められていた。
【0008】
よって、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ハーネス成形体の組み立て性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にて講じた技術的手段は、請求項1に記載の様に、ハーネス成形体が、被覆電線と、該被覆電線と電子部品とを電気的に接続する接続部とを有し、該接続部の周囲に第1樹脂部が形成されて成る第1構造体と、該第1構造体から延在する前記被覆電線の周囲に前記第1樹脂部と同一材からなる第2樹脂部が一体成形にて形成されて成る第2構造体とを備え、前記第1樹脂部が形成されるのと同時に前記第2樹脂部が形成される構成としたことである。
【0010】
好ましくは、請求項2に記載の様に、前記第2樹脂部は、金型に形成された溝内に前記被覆電線を配置し、前記溝に設けられた保持部により前記被覆電線を前記溝の中央に保持し、前記溝内に樹脂を充填し、その後硬化させて形成すると良い。
【0011】
好ましくは、請求項3に記載の様に、前記第2樹脂部は、前記被覆電線の長さ方向に関して間隔を隔てて設けられると良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1構造体から延在する被覆電線の周囲には、一体成形によって第2樹脂部が形成される。この第2樹脂部により、被覆電線が束ねられると共に保護される。したがって、被覆電線を束ねて保護するために手作業にて行われていたテープを巻く作業ならびにチューブを被せる作業が必要なくなる。なお、第2樹脂部を形成する作業は、この第2樹脂部と同一材からなる第1樹脂部が第1構造体において形成されるのと同時に、成形用の機械等を用いて効率よく行うことができる。その結果、ハーネス成形体の組み立て性を向上させることができる。
【0013】
また、金型を用いた樹脂成形時には、被覆電線が配置される溝に設けられた保持部により、被覆電線が溝の中央に保持される。したがって、被覆電線の周囲に形成される樹脂の厚みを、被覆電線の長さ方向に関して均一に形成できる。これにより、組み立てられたハーネス成形体の品質も良いものとなる。
【0014】
また、第2樹脂部は、被覆電線の長さ方向に関して間隔を隔てて設けられる。つまり、被覆電線は、この第2樹脂部により、長さ方向に関して断続的に被覆される。この場合、被覆電線は、被覆されない部位(非モールド部)において、外部に露出した状態となっているので、組み立てられたハーネス成形体は、この非モールド部にて屈曲できる。これにより、入り組んだ部位にハーネス成形体を配策する場合であっても、ハーネス成形体の取り回しを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を基に説明する。
【0016】
なお、以下の実施形態においては、本発明に係るハーネス成形体9が、車両のアウトサイドハンドル30に適用されている。
【0017】
図1は、車両のドア8を示す斜視図である。車両のドア8を形成するアウタパネル8aには、アウトサイドハンドル30が取り付けられている。アウトサイドハンドル30は、スマートエントリーシステムを構築する一部品で、車両のユーザのドア解錠及び施錠意思の確認を可能としたものである。アウトサイドハンドル30は、ドア8をボディ(図示なし)に対して開作動(閉作動)させるために、ドア8に対して傾動操作がなされる。
【0018】
図2は、アウトサイドハンドル30の縦断面図(図1におけるII−II線に沿う断面図)である。
【0019】
アウトサイドハンドル30は、車両の前後方向(図2示左右方向)に延びる樹脂製のハンドル本体31と、ハンドル本体31の車室外側(図2示上側)に被せられる樹脂製のカバー32とから成る。このカバー32は、アウトサイドハンドル30の外形に一致し、アウトサイドハンドル30の外観意匠を成している。
【0020】
ハンドル本体31には、車室外側に開口する凹状の収容部33が設けられている。収容部33は、アウトサイドハンドル30の長手方向(図2示左右方向)に沿って形成されている。収容部33には、ハーネス成形体9のユニット部40が配設されている。図3は、ユニット部40の構造を示す図である。
【0021】
ユニット部40(第1構造体)は、ユーザのドア解錠及び施錠意思を確認するための電子部品(アンテナ41、センサ電極42及びドアスイッチ44)が、被覆ワイヤ11と共に一体化された部位である。
【0022】
ユニット部40において、その長手方向(図3示左右方向)の一方側(図3示左側)には、複数本の被覆ワイヤ11が設けられている。被覆ワイヤ11(被覆電線)は、ユニット部40の内部の接続部40aにて、アンテナ41、センサ電極42に電気的に接続されている。この接続部40aの周囲には、樹脂43aが充填されている。これにより、当該接続部40aを封止する封止部43(第1樹脂部)が形成され、接続部40aにおける電気的な接続が確保される。
【0023】
ユニット部40において、その長手方向の他方側(図3示右側)には、ドアスイッチ44が設けられている。ドアスイッチ44は、ボタン44a(図2参照)の押下にともなって作動する。ドアスイッチ44は、フレキシブルケーブル(図示なし)を介して、上述した被覆ワイヤ11に電気的に接続されている。フレキシブルケーブルは、接続部40bにおいて、ドアスイッチ44に電気的に接続されている。この接続部40bの周囲には、接続部40aと同様に、樹脂45aが充填されている。これにより、当該接続部40bを封止する封止部45(第1樹脂部)が形成され、接続部40bにおける電気的な接続が確保される。なお、被覆ワイヤ11とフレキシブルケーブルとの接続部は、上述した接続部40aにあり、封止部43によって封止されている。
【0024】
上述のような構造を有するユニット部40は、その一方側に設けられた複数本の被覆ワイヤ11がハンドル本体31の開口31aを介して外部に導出されるように、ハンドル本体31の収容部33に配設されている(図2参照)。この場合、ユニット部40から延在し、ハンドル本体31の外部に導出された被覆ワイヤ11は、コネクタ14を介して、車両のドア8内に設けられる制御装置(図示なし)に連結される。これにより、ドアスイッチ44の作動信号や、センサ電極42における検出信号が、被覆ワイヤ11(コネクタ14)を介して、制御装置に伝達される。
【0025】
ユニット部40から延在し、ハンドル本体31の外部に導出された複数本の被覆ワイヤ11は、樹脂からなる被覆層12(図2においては1つにのみ符番を付す)に覆われることによって束ねられ、ハーネス成形体9の成形部10(第2構造体)を成している。以下、この成形部10について、図4乃至図6を参照して説明する。
【0026】
図4は、成形部10の構造を概略的に示す図(図2におけるIV示部分の拡大図)、図5は、成形部10の成形に使用する金型20の構造を概略的に示す図である。
【0027】
図4に示す様に、成形部10は、複数本の被覆ワイヤ11の周囲に被覆層12(第2樹脂部)が形成されて成り、その横断面は略四角形状を呈している。被覆層12は、樹脂により一体成形若しくは吹き付けにて形成され、成形部10の長さ方向(図4示L方向)に関して、間隔を隔てて設けられている。つまり、複数本の被覆ワイヤ11は、この被覆層12により、長さ方向に関して断続的に被覆される。この場合、複数本の被覆ワイヤ11は、被覆層12に被覆されない非モールド部13において、外部に対して露出した状態となっている。これにより、成形部10は、非モールド部13において、屈曲可能となっている。なお、非モールド部13の幅13aは、成形部10が配策される形態や部位に応じて適宜に設定すれば良い。例えば、成形部10が配策される部位の周辺(車両のドア8内)に鋭利な部位があり、この部位が成形部10の非モールド部13と干渉するおそれがある場合には、当該の鋭利な部位の幅よりも小さくなるように、非モールド部13の幅13aを設定すれば良い。これにより、非モールド部13において外部に対して露出した状態にある被覆ワイヤ11が、鋭利な部位によって損傷を受ける事態を防ぐことができる。さらには、非モールド部13が屈曲した時にその外側の幅が内側に対して広がってしまうことをも考慮した上で非モールド部13の幅13aを設定すると、なお良い。
【0028】
図5に示す様に、成形部10を成形する金型20には、成形溝21(溝)が形成されている。なお、金型20は、成形部10の成形型の下型を構成するもので、成形型の上型(図示なし)も、図5に示す金型20とほぼ同じ構造を有している。成形溝21は、略四角形状を呈する横断面を有し、金型20の長さ方向(図5示L方向)に延在している。成形溝21には、爪部22(保持部)が設けられている。爪部22は、成形溝21の内周面21aにおいて、金型20の長さ方向に関して間隔を隔てて複数(図5においては2つのみ示す)配置され、金型20の幅方向(図5示W方向)に関して略凹形状を成している。この爪部22における凹形状の部位は、金型20の幅方向に関して、成形溝21内のほぼ中央に位置し、成形部10の成形時には、複数本の被覆ワイヤ11を保持する。なお、上述した非モールド部13の長さ方向(図4示L方向)の幅13aは、爪部22の長さ方向(図5示L方向)の幅22aに対応するものとなっている。
【0029】
次に、成形部10の成形工程について、図6を参照して説明する。図6は、成形部10を一体成形する時の工程を模式的に示す図である。なお、図6(a)は被覆ワイヤ11の設置前、図6(b)は被覆ワイヤ11の設置後、図6(c)は成形後の状態を示す図である。
【0030】
図6(a)に示す様に、金型20に形成された成形溝21には、複数の爪部22(3箇所にのみ符番を付す)が設けられている。爪部22は、金型20の長さ方向(図6示L方向)に関して間隔を隔てて配置されている。
【0031】
成形部10の成形に際しては、図6(b)に示す様に、複数本の被覆ワイヤ11の端末11aにコネクタ14を予め取り付けた後、この複数本の被覆ワイヤ11を、金型20の長さ方向に沿って成形溝21内に設置する。このとき、金型20の成形溝21に設けられた爪部22によって複数本の被覆ワイヤ11が成形溝21の中心に保持された状態としておく。
【0032】
この状態で、上型(図示なし)を金型20(下型)に被せて型締めし、樹脂注入口(図示なし)を介して、成形溝21内の爪部22を除いた部分に樹脂を充填する。このとき、上述したユニット部40の接続部40a及び接続部40bに対しても、この成形溝21に充填する樹脂と同じものを充填する。なお、充填する樹脂としては、硬化後に弾性を有する柔軟なウレタン系樹脂、塩ビ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリアミド,ポリイミド,ポリオレフィン系樹脂等を用いると良い。
【0033】
そして、充填した樹脂を硬化させた後、金型20と上型を離型することで、図6(c)に示す様に、複数本の被覆ワイヤ11の周囲に被覆層12(3箇所にのみ符番を付す)が形成された成形部10が成形される。同時に、ユニット部40においても、封止部43,45が形成されている。つまり、ユニット部40の封止部43,45と、ユニット部40の一方側に設けられる被覆ワイヤ11を覆う被覆層12とが、1度の樹脂成形により形成される。成形された成形部10においては、複数本の被覆ワイヤ11は、被覆層12によって、成形部10の長さ方向(図6示L方向)に関して断続的に被覆されると共に、各被覆層12間には、上述した非モールド部13が設けられた状態となっている。
【0034】
以上説明した様に、本発明のハーネス成形体9によれば、ユニット部40から延在する被覆ワイヤ11の周囲には、一体成形若しくは吹き付けによって被覆層12が形成される。この被覆層12によって、被覆ワイヤ11が束ねられると共に保護される。したがって、被覆ワイヤ11を束ねて保護するために手作業にて行われていたテープを巻く作業ならびにチューブを被せる作業が必要なくなる。なお、被覆層12を形成する作業は、この被覆層12と同一材からなる封止部43,45がユニット部40における接続部40a及び接続部40bの周囲に形成されるのと同時に、成形用の機械等を用いて効率よく行うことができる。その結果、ハーネス成形体9の組み立て性を向上させることができる。
【0035】
また、金型20を用いた樹脂成形時には、複数本の被覆ワイヤ11が爪部22によって成形溝21の中央に保持される。したがって、複数本の被覆ワイヤ11の周囲に形成される被覆層12の厚みを、被覆ワイヤ11の長さ方向に関して均一に形成できる。これにより、組み立てられたハーネス成形体9の品質も良いものとなる。さらには、被覆ワイヤ11が被覆層12の最外周面で外部に対して露出することを防ぐことができる。
【0036】
また、複数本の被覆ワイヤ11は、爪部22に保持された部位を除いて、樹脂モールド成形される。つまり、複数本の被覆ワイヤ11は、その長さ方向に関して、被覆層12によって断続的に被覆される。この場合、複数本の被覆ワイヤ11は、被覆されない部位(非モールド部13)において、外部に対して露出した状態となっているので、組み立てられたハーネス成形体9は、この非モールド部13にて屈曲できる。これにより、入り組んだ部位にハーネス成形体9を配策する場合であっても、ハーネス成形体9の取り回しを容易に行うことができる。さらには、樹脂層12の形成に際し、硬化後に剛性を有する樹脂を用いた場合であっても、ハーネス成形体9を非モールド部13にて屈曲させることで、ハーネス成形体9全体の形状をその配策される形態に応じて所望に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】車両のドア8を示す斜視図。
【図2】アウトサイドハンドル30の縦断面図(図1におけるII−II線に沿う断面図)。
【図3】ユニット部40の構造を示す図。
【図4】成形部10の構造を概略的に示す図(図2におけるIV示部分の拡大図)。
【図5】成形部10の成形に使用する金型20の構造を概略的に示す図。
【図6】成形部10を一体成形する時の工程を模式的に示す図。
【図7】公知のワイヤハーネスの構造を示す図。
【符号の説明】
【0038】
9 ハーネス成形体
10 成形部(第2構造体)
11 被覆ワイヤ(被覆電線)
12 被覆層(第2樹脂部)
20 金型
21 成形溝(溝)
22 爪部(保持部)
40 ユニット部(第1構造体)
40a 接続部
40b 接続部
41 アンテナ(電子部品)
42 センサ電極(電子部品)
43 封止部(第1樹脂部)
44 ドアスイッチ(電子部品)
45 封止部(第1樹脂部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線と、該被覆電線と電子部品とを電気的に接続する接続部とを有し、該接続部の周囲に第1樹脂部が形成されて成る第1構造体と、
該第1構造体から延在する前記被覆電線の周囲に前記第1樹脂部と同一材からなる第2樹脂部が一体成形にて形成されて成る第2構造体とを備え、
前記第1樹脂部が形成されるのと同時に前記第2樹脂部が形成される
ことを特徴とするハーネス成形体。
【請求項2】
前記第2樹脂部は、金型に形成された溝内に前記被覆電線を配置し、前記溝に設けられた保持部により前記被覆電線を前記溝の中央に保持し、前記溝内に樹脂を充填し、その後硬化させて形成することを特徴とする請求項1に記載のハーネス成形体。
【請求項3】
前記第2樹脂部は、前記被覆電線の長さ方向に関して間隔を隔てて設けられることを特徴とする請求項2に記載のハーネス成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−127790(P2006−127790A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311020(P2004−311020)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】