ハーフプレキャスト柱状構造物およびその構築方法
【課題】ハーフプレキャスト柱状構造物およびその構築方法を提供すること。
【解決手段】外周側にハーフプレキャスト版1を配置し、そのハーフプレキャスト版1には、その内周側に鉛直方向にトラス筋3が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋3の先端部がコンクリート製柱状構造物8の主筋6と接合され、そのトラス筋の上に、帯筋となるPC鋼材5が、らせん状に配置されている。外周側にハーフプレキャスト版を複数並べて筒状体を構成し、各ハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部にコンクリート製柱状構造物の主筋6を配置して接合してハーフプレキャスト版1を保持し、帯筋となるPC鋼材5が、各トラス筋3に支持させるようにらせん状に配置された後、筒状体と内型枠との間にコンクリートを打設する。
【解決手段】外周側にハーフプレキャスト版1を配置し、そのハーフプレキャスト版1には、その内周側に鉛直方向にトラス筋3が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋3の先端部がコンクリート製柱状構造物8の主筋6と接合され、そのトラス筋の上に、帯筋となるPC鋼材5が、らせん状に配置されている。外周側にハーフプレキャスト版を複数並べて筒状体を構成し、各ハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部にコンクリート製柱状構造物の主筋6を配置して接合してハーフプレキャスト版1を保持し、帯筋となるPC鋼材5が、各トラス筋3に支持させるようにらせん状に配置された後、筒状体と内型枠との間にコンクリートを打設する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠としてのプレキャスト版を備えたハーフプレキャスト柱状構造物およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スリムケーソン工法におけるコンクリート製筒状構造物(ケーソン躯体)を構築する場合、図14および図15に示すように、これまで、コンクリート製筒状構造物本体9の上端にコンクリート20を現場打設で行われており、その施工順序は、(1)ケーソン躯体の沈設、(2)前記ケーソン躯体の上端部に筒状コンクリート構造物の構築、の前記(1)および(2)の工程の繰り返しにより施工していた。
【0003】
このような場合、施工工期の短縮を考えると、筒状コンクリート構造物を構築する場合には、既設側の筒状コンクリート構造物側の鉄筋に適宜接続するように鉄筋組立てを行い、型枠組、コンクリート打設、養生と多くの工程を経なければならない。
【0004】
ケーソン躯体の沈設については、機械化により工期短縮に貢献してきたが、筒状コンクリート構造物の構築については、機械化が難しく、筒状コンクリート構造物の構築にかかる日数が、全体工程および施工コストに大きな影響を及ぼしてきた。
なお、立体三角トラス鉄筋を型枠に組み込んで一体化し、構造物の一部を構成し埋め込み型枠として使用されるコンクリート用型枠構造物についても知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、鉄筋の一部をコンクリートに埋め込むように配置したプレキャスト部材は知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、オープンケーソン構造物において、プレキャストコンクリート部材を用いることは知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭59−4741号公報
【特許文献2】特開昭57−49514号公報
【特許文献3】特開平07−197473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンクリート製筒状構造物を構築する場合の工程を短縮するために、プレキャスト型枠部材を円周方向に分割した場合に、通常の帯鉄筋では、継手部にフックを必要となり、鉄筋の配置が困難になるという問題がある。
本発明は、前記の課題を有利に解消したハーフプレキャスト柱状構造物およびその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明のハーフプレキャスト柱状構造物においては、コンクリート製柱状構造物であって、外周側にハーフプレキャスト版を配置し、そのハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部がコンクリート製柱状構造物の主筋と接合され、そのトラス筋の上に、帯筋となるPC鋼材が、らせん状に配置されていることを特徴とする。
また、第2発明では、第1発明のハーフプレキャスト柱状構造物において、帯筋となるPC鋼材が載置される側の前記トラス筋には、略水平部を備えていることを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明または第2発明のハーフプレキャスト柱状構造物において、帯筋となるPC鋼材にテンションが与えられていることを特徴とする。
また、第4発明のハーフプレキャスト柱状構造物の構築方法においては、コンクリート製柱状構造物の構築方法であって、外周側にハーフプレキャスト版を複数並べて筒状体を構成し、各ハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部にコンクリート製柱状構造物用の主筋を配置して接合してハーフプレキャスト版を保持し、帯筋となるPC鋼材が、各トラス筋に支持させるようにらせん状に配置された後、前記筒状体と内型枠との間にコンクリートを打設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によると、ハーフプレキャスト柱状構造物においては、コンクリート製柱状構造物であって、外周側にハーフプレキャスト版を配置し、そのハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部がコンクリート製柱状構造物の主筋と接合され、そのトラス筋の上に、帯筋となるPC鋼材が、らせん状に配置されているので、トラス筋を棚筋として利用して、PC鋼材をらせん状に配置することができ、また、連続したPC鋼材を帯筋として有利に利用することができるため、帯筋としてのPC鋼材の配置が容易であると共に、連結するためのフック等を鉄筋の端部に必要としないので、構造が簡単で施工工程を簡素にすることができる柱状構造物とすることができる等の効果が得られる。
また、第2発明によると、帯筋となるPC鋼材が載置される側の前記トラス筋には、略水平部を備えているので、前記トラス筋を棚筋として利用することができ、前記水平部をPC鋼材を支持する棚部として利用して、PC鋼材を安定して状態で容易に載置することができ、そのため、PC鋼材の設置が容易であり、施工性が向上する等の効果が得られる。
第3発明によると、帯筋となるPC鋼材にテンションが与えられているので、PC鋼材を若干緊張させた状態で配置することにより、ハーフプレキャスト版が外側に開きるのを防止して保持することができ、また、主桁にPC鋼材を係合させるだけで、ハーフプレキャスト版が横方向に変位するのを防止するように支持することができ、ハーフプレキャスト版を正確に配置した状態で埋め込むことができ、また、主筋の横方向への変形するのを防止し、主筋から帯筋となるPC鋼材に確実に応力を伝達することができる。
第4発明によると、ハーフプレキャスト柱状構造物の構築方法においては、コンクリート製柱状構造物の構築方法であって、外周側にハーフプレキャスト版を複数並べて筒状体を構成し、各ハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部にコンクリート製柱状構造物用の主筋を配置して接合してハーフプレキャスト版を保持し、帯筋となるPC鋼材が、各トラス筋に支持させるようにらせん状に配置した後、前記筒状体と内型枠との間にコンクリートを打設するので、主筋間の空間および主筋とハーフプレキャスト版との間の間隙(空間)を利用すると共にトラス筋を棚筋として利用して、連続したPC鋼撚り線等のPC鋼材を帯鉄筋として、主筋とハーフプレキャスト版との間に後から挿入して容易に配置することができ、施工性を格段に向上させることができ、施工コストを低減させることができる等の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
先ず、図11〜図13を参照しながら、本発明において使用するハーフプレキャスト版1の一形態について説明する。
【0010】
前記ハーフプレキャスト版1は、平面円弧状あるいは多角形状のハーフプレキャスト版本体2に、横方向に間隔をおいて対をなすように配置された各側面三角波形のトラス筋3が上下方向に延長するように配置され、前記各側面三角波形のトラス筋3における基端側がハーフプレキャスト版本体2に埋め込み固定され、各側面三角波形のトラス筋3は、上下方向に間隔をおいて平行で、ほぼ水平な支持部4が折り曲げ加工により形成されたものである。
前記側面三角波形のトラス筋3は組みをなすように配置され、隣り合う組をなす各側面三角波形のトラス筋3は、平面円弧状の横方向におけるハーフプレキャスト版本体2の中心点に向かって、互いに接近するように配置され、ハーフプレキャスト版本体2の基端側は埋め込み配置されている。
【0011】
前記側面三角波形のトラス筋3の基端側には、上下方向に延長するように、縦鉄筋16が配置されて溶接等により固定され、前記縦鉄筋16と側面三角波形のトラス筋3との間には、前記縦鉄16に当接するように、配力筋18が配置されて、溶接等により固定され、前記縦鉄筋16と、三角波形のトラス筋3の基端側と、前記配力筋18とは、ハーフプレキャスト版本体2のコンクリート等に込み固定されている。
前記の横方向に隣り合う組をなす各側面三角波形のトラス筋3におけるほぼ水平な支持部4は、周方向に多数組み配置され、しかも、ハーフプレキャスト版1の内側の周方向に、所定のピッチで徐々にレベルが高くなるように所定の傾斜角(α)で設けられて(図11(b)参照)、多数のハーフプレキャスト版1を周方向に並べて筒状体12aを構成した場合に螺旋状に徐々にレベルが高くなるように設置されており、前記支持部4に渡って載置される帯筋(フープ筋)としてのPC鋼材5を、らせん状に配置して支持することが可能にされている。
前記のトラス筋3における支持部4は、棚筋の一部を兼ねており、その突出寸法は、前記支持部の先端部に、鉛直方向(軸方向)の太径の主筋6を接合した状態で、太径の軸方向主筋6とハーフプレキャストコンクリート版1との間には、PC鋼材5またはそのシースを横方向から片押し挿入できるようにするために、組立て時には間隙(空間)が形成可能な寸法とされている。横方向に間隔をおいた多数のトラス筋3における水平な支持部4により、らせん状に所定のピッチで上昇する棚筋7を構成することが可能にされている。この棚筋7の上側に、PC鋼より線からなるPC鋼材5を連続して螺旋状に片押し挿入できるようにされ、従来のような複雑な帯鉄筋の配置に替え、現場施工手間を大幅に低減可能にされ、施工コストを低減可能にされている。
【0012】
次に、前記のハーフプレキャスト版本体2を使用した本発明のハーフプレキャスト柱状構造物8およびその構築方法について、図1〜図10を参照しながら説明する。
【0013】
図1には、本発明の一形態のハーフプレキャスト柱状構造物8の縦断正面図が示され、図2から図5には施工工程が示され、図6および図7には、主筋6を配置した状体の拡大した縦断側面および横断平面が示され、図8には変形形態が、図9には、図1の一部の詳細構造が示され、図10には、図9の横断平面図が示されている。
【0014】
図2に示すように、ハーフプレキャスト版1を、下位に位置する既に築造された既設側のコンクリート製筒状構造物本体(ケーソン躯体本体)9の上端部の外周縁上面に、ハーフプレキャスト版1を周方向に複数(例えば、8枚)並べて載置し、各ハーフプレキャスト版1の下端部を、適宜既設筒状構造物本体9に、図示省略の金具等により立設固定する。
【0015】
前記のハーフプレキャスト版1は、図示の形態では、平面視で、円周方向に8等分した形態のハーフプレキャスト版1であり、周方向に隣り合うハーフプレキャスト版1相互の側端面は当接されるか(図7参照)、適宜図示省略の雄型嵌合継手あるいは雌型嵌合継手による嵌合等により係合されて配置されている。
【0016】
また、ハーフプレキャスト版1の鉛直方向の接合(または係合)は、ハーフプレキャスト版1の上下両端面に、凹部または凸部あるいは凹凸部を設けてもよく、あるいは、上下両端面に筒状構造物の中心側に向かって下降する緩傾斜面を設けて、傾斜面相互を係合させるようにしてもよい。
【0017】
また、ハーフプレキャスト版1の下端面には、必要に応じ係合用凹部または係合用凸部が設けられ、また、下位に位置するコンクリート製筒状構造物本体9の上端面には、係合用凸部または係合用凹部が設けられて、これらの係合用凹部と係合部凸部との係合により、ハーフプレキャスト版1は、コンクリート製筒状構造物本体9に対して、その半径方向の位置決めが図られる。
【0018】
なお、前記コンクリート製筒状構造物本体9の上端面に、半径方向中心側に向かって、下がる緩傾斜の傾斜面を設け、また、ハーフプレキャスト版1の下端面に、半径方向中心側に向かって、下がる緩傾斜の傾斜面を設けて、傾斜面相互の係合により、ハーフプレキャスト版1の半径方向の位置決めを図るようにしてもよい。
【0019】
また、ハーフプレキャスト版1の上端部に、係合用凸部あるいは凹部を設けることにより、上位に位置するハーフプレキャスト版1の下端部の位置きめを、下位に位置する既設側の筒状構造物本体9におけるハーフプレキャスト版1の外周側の上端の凹部または凸部あるいは傾斜面を利用して、所定の位置に設定することができる。
このように、凹部と凸部との係合あるいは傾斜面相互の係合等により、コンクリートが打設された場合、ハーフプレキャスト版1が半径方向外側にずれ移動するのを防止することができるようになる。またハーフプレキャスト版1の下端部と筒状構造物本体の上端部とを接合金物により接合するようにしてもよい。
【0020】
前記のハーフプレキャスト版1の設置にあたっては、図3に示すように、下位に位置する主筋6に、鋼製雌ねじ筒等からなる連結スリーブ10の一端側を連結し、前記連結スリーブ10の他端に、上位に位置する主筋6を吊り下ろして連結する。吊り降ろされる前記の主筋6は、両端部に雄ねじ部を有する鉄筋が使用され、例えば、直径51mm等の鉄筋両端部に雄ねじ部を設けた連結鉄筋が用いられる。
【0021】
前記の吊降ろされる主筋6は、1組のトラス筋3間に配置されるように設置され、トラス筋3における水平な支持部4の先端付近4aと、主筋6とは溶接等により連結され、また、必要に応じ、主筋6と、水平部先端部とは、主筋6を囲むように、平面半円状の連補強鉄筋11が配置されて、水平な支持部4先端部を補強するようにされている。
トラス筋3と主筋6との接合は、溶接接合でもよく、繋ぎ治具を用いて繋いでもよい。
主筋6をハーフプレキャスト版1から半径方向で間隔をおいて設置した後、ハーフプレキャスト版1を建て込むようにしてもよく、ハーフプレキャスト版1を建て込んだ状態で新たな上位に配置すべき主筋6を配設するようにしてもよい。
柱状構造物を構築する場合その半径方向で、主筋6外端部とハーフプレキャスト版1の内側との間には、間隙Gが形成された状態で配置されている。このように間隙Gを設けることで、周方向に間隔をおいて隣り合う主筋6間の間隙から、シースまたはPC鋼材をトラス筋3に向かって挿入することができ、主筋6とハーフプレキャスト版1との間隙Gを利用して、さらに水平な支持部4に向けて、シースまたはPC鋼材を挿入配置することが可能になる。また、主筋6間の間隙を利用して、シースまたはPC鋼材を、螺旋状の棚筋7に沿って、作業員により送るように搬送設置ことができる。
【0022】
なお、図7に示すように、組をなすトラス筋3の水平な支持部4先端部間の間隔が、平面視で主筋6の直径よりも狭い間隔に設定しておくと、主筋6の直径よりも狭いために、主筋6を、組をなすトラス筋3の水平な支持部4間に吊り降ろす等により配置した場合、主筋6が平面視で、筒状体12の中心側よりCに抜け出すのを防止することができ、施工が容易になる。また、主筋6を正確な位置に設置することができる。
【0023】
このようにハーフプレキャスト版1を配置した後、図7に示すようにPC鋼材5を間隙Gに向かって棚筋7に片押して配置し、図4に示すように、各ハーフプレキャスト版1における水平な各支持部4にPC鋼材5を載置し、前記PC鋼材を所定の位置に配置し、または必要に応じ、支持部4に結束線等により結束する。
前記の場合、各トラス筋3の上に、図示省略のシースを配置し、その後、前記シース内に、PC鋼撚り線等のPC鋼材5をシース内に挿入してもよく、前記のように、直接PC鋼材5をトラス筋3の上に帯筋として配置してもよい。このような場合には、鋼製シースを支持部4に結束線等により結束する。
前記の場合、周方向に間隔をおいた主筋6間の間隙G1、主筋6とハーフプレキャスト版との間の間隙Gを利用して、シースあるいはPC鋼材を、多数のトラス筋3による支持部4に配置することにより、全体として螺旋状に配置することができる。帯筋の施工性が格段に向上し、ハーフプレキャスト版1を用いた柱状構造物の急速施工および施工工期および施工コストを格段に低減することができる。
本来、帯筋は鉄筋でラップするなどして配置されるが、本発明のように、帯筋とし、PC鋼材を利用することで、1本でらせん状に配置される。鉛直方向のコンクリート打設区間のPC鋼材は、適宜、図示省略の連結金具により連結される。帯筋としてのPC鋼材は緊張する必要はないが、若干緊張することで、ハーフプレキャスト版が傾倒しないように所定の位置に支持することができる。
なお、通常、型枠は、セパレーターなどによって内側型枠と結ばれることで支持されるが、ケーソンコンクリート躯体では、内側型枠まで距離があり無理になる恐れが高い。セパレーターより主筋外側、トラス筋の上側にPC鋼材を配置し、若干テンションを加えることでハーフプレキャスト版1を内側に引っ張ることで、各ハーフプレキャスト版1は側端部相互が競り合うため、ハーフプレキャスト版1の支持にもなると共に、場所打ちコンクリートの側圧にも耐える機能も生じる。
【0024】
また、コンクリート製筒状構造物本体9の内側端部に、ハーフプレキャスト版1に対向するように内型枠12を設置する。前記の内型枠12としては、マテリアルシャフトの外側に螺旋状階段を備えたマンシャフトを同心状に配置して構成されるペアシャフト13の周りに木製で製作してものであってもよく、鋼管を用いたものでもよい。前記の内型枠12と、ペアシャフト13との間に適宜、着脱可能な間隔調整材を介在させるようにしてもよい。ペアシャフト13側との間隔が狭い場合には、必要に応じ、独立気泡製の発泡合成樹脂版を型枠として設置して、コンクリート養生硬化後に、溶媒により、前記発泡合成樹脂を溶解させるようにしてもよい。
また、前記の内型枠12の上下部は、繋ぎ材14の一端側がねじ接合等により連結され、ハーフプレキャスト型枠1の半径方向内側の前記繋ぎ材14の他端は、主筋6に、結束線あるいは溶接等により結合される。
【0025】
次いで、図5に示すように、ハーフプレキャスト版1による筒状体12aと内型枠12との間に、場所打ちコンクリート17が打設されて硬化され、ハーフプレキャスト版1およびこれによる筒状体12aと主筋6とPC鋼材並びにコンクリート17との一体化が図られる。
前記のように、内型枠12と多数のハーフプレキャスト版1からなる筒状体(外型枠)12aとの間に場所打ちコンクリート17を充填して硬化した状態が、図6に示されている。
なお、内型枠12は、適宜、脱型(または脱型後上昇)または溶解されて撤去される。また、上位に位置する型枠が、下位に位置する型枠の上端部の所定の位置に設置され、以下同様な工程により、順次、上位に位置するプレキャストコンクリート製筒状体からなるハーフプレキャスト版1が順次設置される。
前記のような工程を所定回繰り返して、図1に示すようなハーフプレキャストコンクリート製筒状構造物8を構築する。
【0026】
前記実施形態では、天井スラブを有するニューマチックケーソンにおける筒状躯体部分の柱状構造物を構築する場合に適用するようにしたが、本発明を実施する場合、コンクリート製竪坑またはコンクリート製支柱、あるいはコンクリート製煙突等、コンクリート製筒状躯体を有する構造物を築造する場合にも本発明を適用して、ハーフプレキャスト柱状構造物を構築するようにしてもよい。
【0027】
図8は、主筋6と一対のトラス筋3との接合部の変形形態を示すものであって、図8(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は断面図である。この形態では、一対のトラス筋3の水平な支持部4の先端部を接近するように平面視で傾斜させて配置し、主筋6を一対のトラス筋3の水平な支持部4の先端部により挟むようにした状態で溶接により固着し、また、トラス筋3の水平部先端相互に渡って、主筋6を囲むように半円状の連結補助鉄筋21を配置して、その連結補助鉄筋21の先端部を、水平な支持部4または主筋6に溶接等により連結することにより、主筋6とトラス筋3の一体化を高め、完成系における筒状構造物の耐力を高めるようにしている形態である。
【0028】
前記のように、本発明のハーフプレキャスト柱状構造物の構築方法においては、コンクリート製柱状構造物の構築方法であって、外周側にハーフプレキャスト版を複数並べて筒状体を構成し、各ハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、帯筋となるPC鋼材が、各トラス筋に支持させるようにらせん状に配置した後、トラス筋の先端部にコンクリート製柱状構造物用の主筋を配置して接合し、その後、前記筒状体と内型枠との間にコンクリートを打設するようにしている。
【0029】
本発明を実施する場合、前記のPC鋼材としては、PC鋼線あるいはPC撚り線を使用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のハーフプレキャスト柱状構造物を示す縦断正面図である。
【図2】本発明のハーフプレキャスト柱状構造物を構築する場合の工程を示すものであって、プレキャスト外型枠を建て込んだ状態を示す縦断正面図である。
【図3】本発明のハーフプレキャスト柱状構造物を構築する場合の工程を示すものであって、プレキャスト外型枠の内側にらせん状にフープ筋を配置すると共に内型枠を配置した状態を示す縦断正面図である。
【図4】本発明のハーフプレキャスト柱状構造物を構築する場合の工程を示すものであって、プレキャスト外型枠の内側に、主筋らせん状にフープ筋を配置した状態を示す縦断正面図である。
【図5】本発明のハーフプレキャスト柱状構造物を構築する場合の第2工程を示すものであって、プレキャスト外型枠を建て込んだ状態を示す縦断正面図である。
【図6】図4の一部の詳細構造を拡大して示す図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】(a)(b)(c)は、トラス筋と主筋と補強筋とを使用する場合の例を示す拡大図である。
【図9】コンクリートを打設した状態を示す縦断側面図である。
【図10】コンクリートを打設した状態を示す横断平面図である。
【図11】外周側に配置されるプレキャスト型枠を示すものであって、(a)は概略平面図、(b)は正面図である。
【図12】外周側に配置されるプレキャスト型枠を示すものであって、(a)は概略縦断側面図、(b)は(a)の一部の拡大図である。
【図13】図12(b)の横断平面図である。
【図14】従来の柱状構造物を説明するための縦断正面図である。
【図15】従来の柱状構造物を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ハーフプレキャスト版
2 ハーフプレキャスト版本体
3 トラス筋
4 水平な支持部
5 PC鋼材
6 主筋
7 棚筋
8 ハーフプレキャスト柱状構造物
9 コンクリート製筒状構造物本体(ケーソン躯体本体)
10 連結スリーブ
11 補強鉄筋
12 内型枠
12a 筒状体
13 ペアシャフト
14 繋ぎ材
15 補強鉄筋
16 縦鉄筋
17 場所打ちコンクリート
18 配力筋
20 コンクリート
21 連結補助鉄筋
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠としてのプレキャスト版を備えたハーフプレキャスト柱状構造物およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スリムケーソン工法におけるコンクリート製筒状構造物(ケーソン躯体)を構築する場合、図14および図15に示すように、これまで、コンクリート製筒状構造物本体9の上端にコンクリート20を現場打設で行われており、その施工順序は、(1)ケーソン躯体の沈設、(2)前記ケーソン躯体の上端部に筒状コンクリート構造物の構築、の前記(1)および(2)の工程の繰り返しにより施工していた。
【0003】
このような場合、施工工期の短縮を考えると、筒状コンクリート構造物を構築する場合には、既設側の筒状コンクリート構造物側の鉄筋に適宜接続するように鉄筋組立てを行い、型枠組、コンクリート打設、養生と多くの工程を経なければならない。
【0004】
ケーソン躯体の沈設については、機械化により工期短縮に貢献してきたが、筒状コンクリート構造物の構築については、機械化が難しく、筒状コンクリート構造物の構築にかかる日数が、全体工程および施工コストに大きな影響を及ぼしてきた。
なお、立体三角トラス鉄筋を型枠に組み込んで一体化し、構造物の一部を構成し埋め込み型枠として使用されるコンクリート用型枠構造物についても知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、鉄筋の一部をコンクリートに埋め込むように配置したプレキャスト部材は知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、オープンケーソン構造物において、プレキャストコンクリート部材を用いることは知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭59−4741号公報
【特許文献2】特開昭57−49514号公報
【特許文献3】特開平07−197473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンクリート製筒状構造物を構築する場合の工程を短縮するために、プレキャスト型枠部材を円周方向に分割した場合に、通常の帯鉄筋では、継手部にフックを必要となり、鉄筋の配置が困難になるという問題がある。
本発明は、前記の課題を有利に解消したハーフプレキャスト柱状構造物およびその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明のハーフプレキャスト柱状構造物においては、コンクリート製柱状構造物であって、外周側にハーフプレキャスト版を配置し、そのハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部がコンクリート製柱状構造物の主筋と接合され、そのトラス筋の上に、帯筋となるPC鋼材が、らせん状に配置されていることを特徴とする。
また、第2発明では、第1発明のハーフプレキャスト柱状構造物において、帯筋となるPC鋼材が載置される側の前記トラス筋には、略水平部を備えていることを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明または第2発明のハーフプレキャスト柱状構造物において、帯筋となるPC鋼材にテンションが与えられていることを特徴とする。
また、第4発明のハーフプレキャスト柱状構造物の構築方法においては、コンクリート製柱状構造物の構築方法であって、外周側にハーフプレキャスト版を複数並べて筒状体を構成し、各ハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部にコンクリート製柱状構造物用の主筋を配置して接合してハーフプレキャスト版を保持し、帯筋となるPC鋼材が、各トラス筋に支持させるようにらせん状に配置された後、前記筒状体と内型枠との間にコンクリートを打設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によると、ハーフプレキャスト柱状構造物においては、コンクリート製柱状構造物であって、外周側にハーフプレキャスト版を配置し、そのハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部がコンクリート製柱状構造物の主筋と接合され、そのトラス筋の上に、帯筋となるPC鋼材が、らせん状に配置されているので、トラス筋を棚筋として利用して、PC鋼材をらせん状に配置することができ、また、連続したPC鋼材を帯筋として有利に利用することができるため、帯筋としてのPC鋼材の配置が容易であると共に、連結するためのフック等を鉄筋の端部に必要としないので、構造が簡単で施工工程を簡素にすることができる柱状構造物とすることができる等の効果が得られる。
また、第2発明によると、帯筋となるPC鋼材が載置される側の前記トラス筋には、略水平部を備えているので、前記トラス筋を棚筋として利用することができ、前記水平部をPC鋼材を支持する棚部として利用して、PC鋼材を安定して状態で容易に載置することができ、そのため、PC鋼材の設置が容易であり、施工性が向上する等の効果が得られる。
第3発明によると、帯筋となるPC鋼材にテンションが与えられているので、PC鋼材を若干緊張させた状態で配置することにより、ハーフプレキャスト版が外側に開きるのを防止して保持することができ、また、主桁にPC鋼材を係合させるだけで、ハーフプレキャスト版が横方向に変位するのを防止するように支持することができ、ハーフプレキャスト版を正確に配置した状態で埋め込むことができ、また、主筋の横方向への変形するのを防止し、主筋から帯筋となるPC鋼材に確実に応力を伝達することができる。
第4発明によると、ハーフプレキャスト柱状構造物の構築方法においては、コンクリート製柱状構造物の構築方法であって、外周側にハーフプレキャスト版を複数並べて筒状体を構成し、各ハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部にコンクリート製柱状構造物用の主筋を配置して接合してハーフプレキャスト版を保持し、帯筋となるPC鋼材が、各トラス筋に支持させるようにらせん状に配置した後、前記筒状体と内型枠との間にコンクリートを打設するので、主筋間の空間および主筋とハーフプレキャスト版との間の間隙(空間)を利用すると共にトラス筋を棚筋として利用して、連続したPC鋼撚り線等のPC鋼材を帯鉄筋として、主筋とハーフプレキャスト版との間に後から挿入して容易に配置することができ、施工性を格段に向上させることができ、施工コストを低減させることができる等の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
先ず、図11〜図13を参照しながら、本発明において使用するハーフプレキャスト版1の一形態について説明する。
【0010】
前記ハーフプレキャスト版1は、平面円弧状あるいは多角形状のハーフプレキャスト版本体2に、横方向に間隔をおいて対をなすように配置された各側面三角波形のトラス筋3が上下方向に延長するように配置され、前記各側面三角波形のトラス筋3における基端側がハーフプレキャスト版本体2に埋め込み固定され、各側面三角波形のトラス筋3は、上下方向に間隔をおいて平行で、ほぼ水平な支持部4が折り曲げ加工により形成されたものである。
前記側面三角波形のトラス筋3は組みをなすように配置され、隣り合う組をなす各側面三角波形のトラス筋3は、平面円弧状の横方向におけるハーフプレキャスト版本体2の中心点に向かって、互いに接近するように配置され、ハーフプレキャスト版本体2の基端側は埋め込み配置されている。
【0011】
前記側面三角波形のトラス筋3の基端側には、上下方向に延長するように、縦鉄筋16が配置されて溶接等により固定され、前記縦鉄筋16と側面三角波形のトラス筋3との間には、前記縦鉄16に当接するように、配力筋18が配置されて、溶接等により固定され、前記縦鉄筋16と、三角波形のトラス筋3の基端側と、前記配力筋18とは、ハーフプレキャスト版本体2のコンクリート等に込み固定されている。
前記の横方向に隣り合う組をなす各側面三角波形のトラス筋3におけるほぼ水平な支持部4は、周方向に多数組み配置され、しかも、ハーフプレキャスト版1の内側の周方向に、所定のピッチで徐々にレベルが高くなるように所定の傾斜角(α)で設けられて(図11(b)参照)、多数のハーフプレキャスト版1を周方向に並べて筒状体12aを構成した場合に螺旋状に徐々にレベルが高くなるように設置されており、前記支持部4に渡って載置される帯筋(フープ筋)としてのPC鋼材5を、らせん状に配置して支持することが可能にされている。
前記のトラス筋3における支持部4は、棚筋の一部を兼ねており、その突出寸法は、前記支持部の先端部に、鉛直方向(軸方向)の太径の主筋6を接合した状態で、太径の軸方向主筋6とハーフプレキャストコンクリート版1との間には、PC鋼材5またはそのシースを横方向から片押し挿入できるようにするために、組立て時には間隙(空間)が形成可能な寸法とされている。横方向に間隔をおいた多数のトラス筋3における水平な支持部4により、らせん状に所定のピッチで上昇する棚筋7を構成することが可能にされている。この棚筋7の上側に、PC鋼より線からなるPC鋼材5を連続して螺旋状に片押し挿入できるようにされ、従来のような複雑な帯鉄筋の配置に替え、現場施工手間を大幅に低減可能にされ、施工コストを低減可能にされている。
【0012】
次に、前記のハーフプレキャスト版本体2を使用した本発明のハーフプレキャスト柱状構造物8およびその構築方法について、図1〜図10を参照しながら説明する。
【0013】
図1には、本発明の一形態のハーフプレキャスト柱状構造物8の縦断正面図が示され、図2から図5には施工工程が示され、図6および図7には、主筋6を配置した状体の拡大した縦断側面および横断平面が示され、図8には変形形態が、図9には、図1の一部の詳細構造が示され、図10には、図9の横断平面図が示されている。
【0014】
図2に示すように、ハーフプレキャスト版1を、下位に位置する既に築造された既設側のコンクリート製筒状構造物本体(ケーソン躯体本体)9の上端部の外周縁上面に、ハーフプレキャスト版1を周方向に複数(例えば、8枚)並べて載置し、各ハーフプレキャスト版1の下端部を、適宜既設筒状構造物本体9に、図示省略の金具等により立設固定する。
【0015】
前記のハーフプレキャスト版1は、図示の形態では、平面視で、円周方向に8等分した形態のハーフプレキャスト版1であり、周方向に隣り合うハーフプレキャスト版1相互の側端面は当接されるか(図7参照)、適宜図示省略の雄型嵌合継手あるいは雌型嵌合継手による嵌合等により係合されて配置されている。
【0016】
また、ハーフプレキャスト版1の鉛直方向の接合(または係合)は、ハーフプレキャスト版1の上下両端面に、凹部または凸部あるいは凹凸部を設けてもよく、あるいは、上下両端面に筒状構造物の中心側に向かって下降する緩傾斜面を設けて、傾斜面相互を係合させるようにしてもよい。
【0017】
また、ハーフプレキャスト版1の下端面には、必要に応じ係合用凹部または係合用凸部が設けられ、また、下位に位置するコンクリート製筒状構造物本体9の上端面には、係合用凸部または係合用凹部が設けられて、これらの係合用凹部と係合部凸部との係合により、ハーフプレキャスト版1は、コンクリート製筒状構造物本体9に対して、その半径方向の位置決めが図られる。
【0018】
なお、前記コンクリート製筒状構造物本体9の上端面に、半径方向中心側に向かって、下がる緩傾斜の傾斜面を設け、また、ハーフプレキャスト版1の下端面に、半径方向中心側に向かって、下がる緩傾斜の傾斜面を設けて、傾斜面相互の係合により、ハーフプレキャスト版1の半径方向の位置決めを図るようにしてもよい。
【0019】
また、ハーフプレキャスト版1の上端部に、係合用凸部あるいは凹部を設けることにより、上位に位置するハーフプレキャスト版1の下端部の位置きめを、下位に位置する既設側の筒状構造物本体9におけるハーフプレキャスト版1の外周側の上端の凹部または凸部あるいは傾斜面を利用して、所定の位置に設定することができる。
このように、凹部と凸部との係合あるいは傾斜面相互の係合等により、コンクリートが打設された場合、ハーフプレキャスト版1が半径方向外側にずれ移動するのを防止することができるようになる。またハーフプレキャスト版1の下端部と筒状構造物本体の上端部とを接合金物により接合するようにしてもよい。
【0020】
前記のハーフプレキャスト版1の設置にあたっては、図3に示すように、下位に位置する主筋6に、鋼製雌ねじ筒等からなる連結スリーブ10の一端側を連結し、前記連結スリーブ10の他端に、上位に位置する主筋6を吊り下ろして連結する。吊り降ろされる前記の主筋6は、両端部に雄ねじ部を有する鉄筋が使用され、例えば、直径51mm等の鉄筋両端部に雄ねじ部を設けた連結鉄筋が用いられる。
【0021】
前記の吊降ろされる主筋6は、1組のトラス筋3間に配置されるように設置され、トラス筋3における水平な支持部4の先端付近4aと、主筋6とは溶接等により連結され、また、必要に応じ、主筋6と、水平部先端部とは、主筋6を囲むように、平面半円状の連補強鉄筋11が配置されて、水平な支持部4先端部を補強するようにされている。
トラス筋3と主筋6との接合は、溶接接合でもよく、繋ぎ治具を用いて繋いでもよい。
主筋6をハーフプレキャスト版1から半径方向で間隔をおいて設置した後、ハーフプレキャスト版1を建て込むようにしてもよく、ハーフプレキャスト版1を建て込んだ状態で新たな上位に配置すべき主筋6を配設するようにしてもよい。
柱状構造物を構築する場合その半径方向で、主筋6外端部とハーフプレキャスト版1の内側との間には、間隙Gが形成された状態で配置されている。このように間隙Gを設けることで、周方向に間隔をおいて隣り合う主筋6間の間隙から、シースまたはPC鋼材をトラス筋3に向かって挿入することができ、主筋6とハーフプレキャスト版1との間隙Gを利用して、さらに水平な支持部4に向けて、シースまたはPC鋼材を挿入配置することが可能になる。また、主筋6間の間隙を利用して、シースまたはPC鋼材を、螺旋状の棚筋7に沿って、作業員により送るように搬送設置ことができる。
【0022】
なお、図7に示すように、組をなすトラス筋3の水平な支持部4先端部間の間隔が、平面視で主筋6の直径よりも狭い間隔に設定しておくと、主筋6の直径よりも狭いために、主筋6を、組をなすトラス筋3の水平な支持部4間に吊り降ろす等により配置した場合、主筋6が平面視で、筒状体12の中心側よりCに抜け出すのを防止することができ、施工が容易になる。また、主筋6を正確な位置に設置することができる。
【0023】
このようにハーフプレキャスト版1を配置した後、図7に示すようにPC鋼材5を間隙Gに向かって棚筋7に片押して配置し、図4に示すように、各ハーフプレキャスト版1における水平な各支持部4にPC鋼材5を載置し、前記PC鋼材を所定の位置に配置し、または必要に応じ、支持部4に結束線等により結束する。
前記の場合、各トラス筋3の上に、図示省略のシースを配置し、その後、前記シース内に、PC鋼撚り線等のPC鋼材5をシース内に挿入してもよく、前記のように、直接PC鋼材5をトラス筋3の上に帯筋として配置してもよい。このような場合には、鋼製シースを支持部4に結束線等により結束する。
前記の場合、周方向に間隔をおいた主筋6間の間隙G1、主筋6とハーフプレキャスト版との間の間隙Gを利用して、シースあるいはPC鋼材を、多数のトラス筋3による支持部4に配置することにより、全体として螺旋状に配置することができる。帯筋の施工性が格段に向上し、ハーフプレキャスト版1を用いた柱状構造物の急速施工および施工工期および施工コストを格段に低減することができる。
本来、帯筋は鉄筋でラップするなどして配置されるが、本発明のように、帯筋とし、PC鋼材を利用することで、1本でらせん状に配置される。鉛直方向のコンクリート打設区間のPC鋼材は、適宜、図示省略の連結金具により連結される。帯筋としてのPC鋼材は緊張する必要はないが、若干緊張することで、ハーフプレキャスト版が傾倒しないように所定の位置に支持することができる。
なお、通常、型枠は、セパレーターなどによって内側型枠と結ばれることで支持されるが、ケーソンコンクリート躯体では、内側型枠まで距離があり無理になる恐れが高い。セパレーターより主筋外側、トラス筋の上側にPC鋼材を配置し、若干テンションを加えることでハーフプレキャスト版1を内側に引っ張ることで、各ハーフプレキャスト版1は側端部相互が競り合うため、ハーフプレキャスト版1の支持にもなると共に、場所打ちコンクリートの側圧にも耐える機能も生じる。
【0024】
また、コンクリート製筒状構造物本体9の内側端部に、ハーフプレキャスト版1に対向するように内型枠12を設置する。前記の内型枠12としては、マテリアルシャフトの外側に螺旋状階段を備えたマンシャフトを同心状に配置して構成されるペアシャフト13の周りに木製で製作してものであってもよく、鋼管を用いたものでもよい。前記の内型枠12と、ペアシャフト13との間に適宜、着脱可能な間隔調整材を介在させるようにしてもよい。ペアシャフト13側との間隔が狭い場合には、必要に応じ、独立気泡製の発泡合成樹脂版を型枠として設置して、コンクリート養生硬化後に、溶媒により、前記発泡合成樹脂を溶解させるようにしてもよい。
また、前記の内型枠12の上下部は、繋ぎ材14の一端側がねじ接合等により連結され、ハーフプレキャスト型枠1の半径方向内側の前記繋ぎ材14の他端は、主筋6に、結束線あるいは溶接等により結合される。
【0025】
次いで、図5に示すように、ハーフプレキャスト版1による筒状体12aと内型枠12との間に、場所打ちコンクリート17が打設されて硬化され、ハーフプレキャスト版1およびこれによる筒状体12aと主筋6とPC鋼材並びにコンクリート17との一体化が図られる。
前記のように、内型枠12と多数のハーフプレキャスト版1からなる筒状体(外型枠)12aとの間に場所打ちコンクリート17を充填して硬化した状態が、図6に示されている。
なお、内型枠12は、適宜、脱型(または脱型後上昇)または溶解されて撤去される。また、上位に位置する型枠が、下位に位置する型枠の上端部の所定の位置に設置され、以下同様な工程により、順次、上位に位置するプレキャストコンクリート製筒状体からなるハーフプレキャスト版1が順次設置される。
前記のような工程を所定回繰り返して、図1に示すようなハーフプレキャストコンクリート製筒状構造物8を構築する。
【0026】
前記実施形態では、天井スラブを有するニューマチックケーソンにおける筒状躯体部分の柱状構造物を構築する場合に適用するようにしたが、本発明を実施する場合、コンクリート製竪坑またはコンクリート製支柱、あるいはコンクリート製煙突等、コンクリート製筒状躯体を有する構造物を築造する場合にも本発明を適用して、ハーフプレキャスト柱状構造物を構築するようにしてもよい。
【0027】
図8は、主筋6と一対のトラス筋3との接合部の変形形態を示すものであって、図8(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は断面図である。この形態では、一対のトラス筋3の水平な支持部4の先端部を接近するように平面視で傾斜させて配置し、主筋6を一対のトラス筋3の水平な支持部4の先端部により挟むようにした状態で溶接により固着し、また、トラス筋3の水平部先端相互に渡って、主筋6を囲むように半円状の連結補助鉄筋21を配置して、その連結補助鉄筋21の先端部を、水平な支持部4または主筋6に溶接等により連結することにより、主筋6とトラス筋3の一体化を高め、完成系における筒状構造物の耐力を高めるようにしている形態である。
【0028】
前記のように、本発明のハーフプレキャスト柱状構造物の構築方法においては、コンクリート製柱状構造物の構築方法であって、外周側にハーフプレキャスト版を複数並べて筒状体を構成し、各ハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、帯筋となるPC鋼材が、各トラス筋に支持させるようにらせん状に配置した後、トラス筋の先端部にコンクリート製柱状構造物用の主筋を配置して接合し、その後、前記筒状体と内型枠との間にコンクリートを打設するようにしている。
【0029】
本発明を実施する場合、前記のPC鋼材としては、PC鋼線あるいはPC撚り線を使用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のハーフプレキャスト柱状構造物を示す縦断正面図である。
【図2】本発明のハーフプレキャスト柱状構造物を構築する場合の工程を示すものであって、プレキャスト外型枠を建て込んだ状態を示す縦断正面図である。
【図3】本発明のハーフプレキャスト柱状構造物を構築する場合の工程を示すものであって、プレキャスト外型枠の内側にらせん状にフープ筋を配置すると共に内型枠を配置した状態を示す縦断正面図である。
【図4】本発明のハーフプレキャスト柱状構造物を構築する場合の工程を示すものであって、プレキャスト外型枠の内側に、主筋らせん状にフープ筋を配置した状態を示す縦断正面図である。
【図5】本発明のハーフプレキャスト柱状構造物を構築する場合の第2工程を示すものであって、プレキャスト外型枠を建て込んだ状態を示す縦断正面図である。
【図6】図4の一部の詳細構造を拡大して示す図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】(a)(b)(c)は、トラス筋と主筋と補強筋とを使用する場合の例を示す拡大図である。
【図9】コンクリートを打設した状態を示す縦断側面図である。
【図10】コンクリートを打設した状態を示す横断平面図である。
【図11】外周側に配置されるプレキャスト型枠を示すものであって、(a)は概略平面図、(b)は正面図である。
【図12】外周側に配置されるプレキャスト型枠を示すものであって、(a)は概略縦断側面図、(b)は(a)の一部の拡大図である。
【図13】図12(b)の横断平面図である。
【図14】従来の柱状構造物を説明するための縦断正面図である。
【図15】従来の柱状構造物を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ハーフプレキャスト版
2 ハーフプレキャスト版本体
3 トラス筋
4 水平な支持部
5 PC鋼材
6 主筋
7 棚筋
8 ハーフプレキャスト柱状構造物
9 コンクリート製筒状構造物本体(ケーソン躯体本体)
10 連結スリーブ
11 補強鉄筋
12 内型枠
12a 筒状体
13 ペアシャフト
14 繋ぎ材
15 補強鉄筋
16 縦鉄筋
17 場所打ちコンクリート
18 配力筋
20 コンクリート
21 連結補助鉄筋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製柱状構造物であって、外周側にハーフプレキャスト版を配置し、そのハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部がコンクリート製柱状構造物の主筋と接合され、そのトラス筋の上に、帯筋となるPC鋼材が、らせん状に配置されていることを特徴とするハーフプレキャスト柱状構造物。
【請求項2】
帯筋となるPC鋼材が載置される側の前記トラス筋には、略水平部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のハーフプレキャスト柱状構造物。
【請求項3】
帯筋となるPC鋼材にテンションが与えられていることを特徴とする請求項1または2に記載のハーフプレキャスト柱状構造物。
【請求項4】
コンクリート製柱状構造物の構築方法であって、外周側にハーフプレキャスト版を複数並べて筒状体を構成し、各ハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部にコンクリート製柱状構造物用の主筋を配置して接合してハーフプレキャスト版を保持し、帯筋となるPC鋼材が、各トラス筋に支持させるようにらせん状に配置された後、前記筒状体と内型枠との間にコンクリートを打設することを特徴とするハーフプレキャスト柱状構造物の構築方法。
【請求項1】
コンクリート製柱状構造物であって、外周側にハーフプレキャスト版を配置し、そのハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部がコンクリート製柱状構造物の主筋と接合され、そのトラス筋の上に、帯筋となるPC鋼材が、らせん状に配置されていることを特徴とするハーフプレキャスト柱状構造物。
【請求項2】
帯筋となるPC鋼材が載置される側の前記トラス筋には、略水平部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のハーフプレキャスト柱状構造物。
【請求項3】
帯筋となるPC鋼材にテンションが与えられていることを特徴とする請求項1または2に記載のハーフプレキャスト柱状構造物。
【請求項4】
コンクリート製柱状構造物の構築方法であって、外周側にハーフプレキャスト版を複数並べて筒状体を構成し、各ハーフプレキャスト版には、その内周側に鉛直方向にトラス筋が間隔をおいて内向きに突出するように設けられており、トラス筋の先端部にコンクリート製柱状構造物用の主筋を配置して接合してハーフプレキャスト版を保持し、帯筋となるPC鋼材が、各トラス筋に支持させるようにらせん状に配置された後、前記筒状体と内型枠との間にコンクリートを打設することを特徴とするハーフプレキャスト柱状構造物の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−47976(P2010−47976A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213158(P2008−213158)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
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