説明

ハーベスタの落下防止装置

【課題】ジャガイモや玉葱やビート等の収穫作業に用いるハーベスタにおいて、板状の芋落下防止部材を配設し、コンベア移動時にはこれを上昇させ、コンベア停止時にはこれを下降させることにより、コンベア停止時にロッド式コンベアから根菜類が滑落するのを防止できるようにしたハーベスタの落下防止装置を提供すること。
【解決手段】掘取刃2の後方に、簀の子状にロッド6を取り付けたロッド式コンベア3が傾斜させて配設されているハーベスタ1において、ロッド式コンベアの任意位置の上方に、上下動が可能な板状の芋落下防止材9がロッド式コンベアの進行方向に対して直交するように配設されているとともに、板状の芋落下防止材は、ロッド式コンベアが作動時には上昇して退避位置に移動し、ロッド式コンベアが停止時には下降して落下防止位置に移動するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャガイモや玉葱やビート等の根菜類の収穫に用いるハーベスタに関するものであり、特に傾斜して配設されているロッド式コンベア上にある収穫された根菜類等が、ロッド式コンベア停止時に落下するのを防ぐようにしたハーベスタの落下防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハーベスタではジャガイモなどの根菜類を掘取刃で掘り起こし、掘り起こした根菜類を掘取刃の後方に設けたロッド式コンベアで土をふるい落としながら斜め上方へ移送しホッパー等に積み込むようにしている。
【0003】
通常、ロッド式コンベアは斜めに設置されているため、傾斜が急な場合や土の湿り具合によっては移送中にコンベアが停止すると、移送途中にあるロッド式コンベア上の根菜類が根菜類に付着している土とともに落下してしまうことがある。
【0004】
ところで、傾斜して設けたベルトコンベアが停止した場合に移送物の落下を防ぐために例えば特許文献1に示すように、短冊状の可撓板をベルト上方から下端がベルトの表面に可撓自在に密接するように懸吊した落石防止装置がある。
【特許文献1】実用新案登録第2566084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示されるような可撓板をハーベスタの傾斜して配置したロッド式コンベアの上に設置すると、確かにコンベア停止時の根菜類の落下防止には役立つが、コンベア作動時にはこの可撓板がコンベア上の根菜類の移動を妨げ、根菜類が可撓板を通過できない事態となる。
【0006】
ベルトコンベアの場合は、ベルトによる抵抗も大きいのでその上の物は可撓板の抵抗に打ち勝って可撓板を押しのけるようにして通過できる。しかし、ロッド式コンベアの場合はその上を移動してきた根菜類は、根菜類が可撓板に当接すると、ロッドが根菜類を移動させる力よりも可撓板が根菜類の移動を邪魔する力の方が大きく、結果として根菜類がロッドの上を滑ってしまい、ロッドのみが可撓板を通過し、根菜類は可撓板により移動を停止されてしまうのである。
【0007】
特に、湿った土が根菜類に多く付着している場合には全体の重量が重いため、可撓板を押しのけるためにもそれだけ強い力が必要となるため、根菜類が可撓板に当たると可撓板の抵抗により根菜類がロッドの上を滑り易くなり、根菜類が可撓板を押しのけて移動できない事態が発生し易い。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ジャガイモやさつまいも等の収穫作業に用いるハーベスタにおいて、板状の芋落下防止部材を配設し、コンベア作動時にはこれを上昇させ、コンベア停止時にはこれを下降させることにより、コンベア停止時にロッド式コンベア上から根菜類が滑落するのを防止することができるようにしたハーベスタの落下防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によるハーベスタの落下防止装置は、掘取刃の後方に、簀の子状にロッドを取り付けたロッド式コンベアが傾斜させて配設されているハーベスタにおいて、前記ロッド式コンベアの任意位置の上方に、上下動が可能な板状の芋落下防止材が前記ロッド式コンベアの進行方向に対して直交するように配設されているとともに、前記板状の芋落下防止材は、前記ロッド式コンベアが作動時には上昇して退避位置に移動し、前記ロッド式コンベアが停止時には下降して落下防止位置に移動するように構成されている。
【0010】
また、上記発明に加え、前記芋落下防止材は上側は硬質材料で、下側は可撓性材料で形成されているとともに、下側の可撓性材料は上下方向の長さが10〜25cmであり、前記芋落下防止材が上昇して退避位置にある時には、前記芋落下防止材の前記可撓性材料の下端と前記ロッド式コンベアのロッド上面との距離が15〜25cmであり、前記芋落下防止材が下降して落下防止位置にある時には、前記可撓性材料は上下方向の長さの1/4〜3/4の部分が、前記ロッド式コンベアのロッド上面に接触して折れ曲がるように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロッド式コンベアの上方に設けた板状の芋落下防止部材は、コンベア作動時には上昇させて退避位置に移動することによりロッド式コンベア上の根菜類の移動の妨げとならず、またコンベア停止時には下降させて落下防止位置に移動することによりロッド式コンベア上の根菜類の落下を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
先ず、本発明のハーベスタの落下防止装置の概略と作用について説明する。
本発明によるハーベスタの落下防止装置は、掘取刃の後方に、簀の子状にロッドを取り付けたロッド式コンベアが傾斜させて配設されている。そしてロッド式コンベアの任意位置の上方に、上下動が可能な板状の芋落下防止材がロッド式コンベアの進行方向に対して直交するように配設されているとともに、板状の芋落下防止材は、ロッド式コンベアが作動時には上昇して退避位置に移動し、ロッド式コンベアが停止時には下降して落下防止位置に移動するように構成されている。
【0013】
板状の芋落下防止材はコンベアが作動時には上昇させて退避位置に位置させることにより、ロッド上の根菜類の移動を妨げることがない。一方、コンベア停止時には板状の芋落下防止材は下降させて落下防止位置に位置させることにより、根菜類がロッドの上を滑落することを防止することになる。
【0014】
また、芋落下防止材は上側は硬質材料で、下側は可撓性材料で形成されている。下側の可撓性材料は上下方向の長さが10〜25cmであり、芋落下防止材が上昇して退避位置にある時には、芋落下防止材の可撓性材料の下端とロッド式コンベアのロッド上面との距離が15〜25cmとなるように構成されている。一方、芋落下防止材が下降して落下防止位置にある時には、可撓性材料は上下方向の長さの1/4〜3/4の部分が、ロッド式コンベアのロッド上面に接触して折れ曲がるように構成されている。
【0015】
板状の芋落下防止材は上側を硬質材料とし下側を可撓性材料とすることにより、下側は自由に変形するとともに、上側は落下防止材としての機能を確実に発揮する。すなわち、芋落下防止材とロッド上面との距離を適切に設定することにより、退避位置にある時には可撓性材料は根菜類に多少接触してもその移動を邪魔することなく、また落下防止位置にある時には根菜類が落下することを確実に防止する。
なお、退避位置から落下防止位置へ落下防止材が短時間で移動するようにするためには、根菜類等の移動を邪魔しない限度において、落下防止材はロッドコンベアに近いことが望ましい。
【0016】
また、芋落下防止材の下側はゴム製であるとともに、幅方向に短冊状となるように適宜箇所に上下方向に切れ目が形成されている。ゴムの厚みと短冊の幅を適宜選択し、また退避位置を調節することにより、コンベア作動時には短冊状のゴムが部分的には移動してくる根菜類等に接触しても、全体としては芋落下防止材が根菜類の移動を邪魔せず、またコンベア停止時にはロッド上面のそのときの根菜類や土砂の形状に対応して短冊状のゴムが変形して確実に接触し、根菜類の落下防止をより確実なものとしている。
【実施例】
【0017】
本発明のハーベスタの落下防止装置の一実施例を図1乃至図3に基づいて述べる。図1は本発明のハーベスタの落下防止装置の斜視図である。図2は図1の落下防止装置箇所の正面図である。図3は図2の側面図であり、(A)は芋落下防止材を下降させた状態、(B)は芋落下防止材を上昇させた状態を示す。
【0018】
ハーベスタ1は、掘取刃2とその後方に傾斜させて設けたエンドレスのロッド式コンベア3とホッパー(図示せず)より構成されている。ロッド式コンベア3は、左右の側壁4に沿わしてそれぞれ配置したベルトコンベア5と、その左右のベルトコンベア5の間にベルトコンベア5の進行方向に対して直角の向きに間隙を設けて簀の子状に配設したロッド6より構成されている。各ロッド6の両端はそれぞれ左右のベルトコンベア5に対して、固定金具となる2本のボルト7で固定されている。左右のベルトコンベア5は、駆動源(図示せず)により同期して回転するようになっている。そしてロッド式コンベア3は、ベルトコンベア5の回転によりロッド6がエンドレスに回転するようになっている。
【0019】
ロッド式コンベア3の上方には落下防止装置8が配設されている。落下防止装置8は、ロッド式コンベア3の進行方向に対して直交するように設けられた板状の芋落下防止材9と、芋落下防止材9を上下動させる油圧シリンダ10と、芋落下防止材9の両端が挿入され芋落下防止材9の上下動をガイドするために左右の側壁4に配設されている案内部材11及び油圧シリンダ10の動きを制御する制御装置(図示せず)より構成されている。落下防止装置8は図示した例ではロッド式コンベア3の上に1箇所だけ設けた例を示したが、落下防止装置8を設ける箇所と数は、ロッド式コンベア3の長さや傾斜角度に応じて適宜設定可能である。
【0020】
芋落下防止材9は、上側の硬質材料12と、下側の可撓性材料13の2部材により板状に形成されている。上側の硬質材料12としては、例えば鉄やアルミニウム等の金属製材料や合成樹脂製材料が使用可能である。下側の可撓性材料13は例えばゴム製とし、短冊状に幅方向に適宜箇所に上下方向に切れ目が形成されている。可撓性材料13は上下方向の長さを10〜25cmとするが、ジャガイモを対象とする場合は15〜20cmの範囲がよい。収穫する農作物により可撓性材料13の長さや材質等を変更できるように、硬質材料12に対して可撓性材料13を交換可能に取り付けておいてもよい。
【0021】
上側の硬質材料12の両端部は、左右の側壁4に対向させて配設されている断面凹状の案内部材11に摺動可能に挿入されている。硬質材料12の上端部の中央には油圧シリンダ10のピストンロッド14の下端が連結されており、油圧シリンダ10の上端はハーベスタ1の図示しない任意箇所に固定されている。
【0022】
そして、油圧シリンダ10はロッド式コンベア3の作動と連動し、制御装置によりロッド式コンベア3の作動時にはピストンロッド14は縮んで芋落下防止材9はロッド式コンベア3の上側のロッド6に対して遠ざかるように上昇して退避位置に移動され、ロッド式コンベア3の停止時にはピストンロッド14は伸びて芋落下防止材9はロッド式コンベア3の上側のロッド6に対して近づく方向に降下して落下防止位置に移動されるように制御される。
【0023】
芋落下防止材9が上昇して退避位置にある時には、芋落下防止材9の可撓性材料13の下端とロッド式コンベア3のロッド6上面との距離は15〜25cmとなるように構成されている。なお、ジャガイモを対象とする場合は15〜20cmがよい。収穫する農作物や土の湿り気具合により、この間隔を調節できるようにしておいてもよい。
【0024】
一方、芋落下防止材9が下降して落下防止位置にある時には、可撓性材料13は上下方向の長さの1/4〜3/4の部分が、ロッド式コンベア3のロッド6上面に接触して折れ曲がるように構成されている。可撓性材料13の長さや材質や、収穫する農作物や土の湿り気具合により、可撓性材料13がロッド6上面に接触して折れ曲がる長さを調節できるようにしておいてもよい。
【0025】
なお、上記した実施例では芋落下防止材9の上下動を油圧シリンダ10により行うものを示したが、芋落下防止材9の上下動は本実施例で示した油圧シリンダ10に限定されるものではなく、その他のいかなる駆動方法でもよく、何れにしてもロッド式コンベア3の作動に連動して芋落下防止材9が上下動されるように構成されていればよい。
【0026】
しかして、圃場を本発明の落下防止装置8が配設されたハーベスタ1をトラクタによって牽引する(あるいは自走式の場合は自走する)と、掘取刃2により肥土とともに例えばジャガイモ等の根菜類が肥土層から掘り取られ、ロッド式コンベア3のロッド6の上に移送されてくる。
【0027】
ロッド式コンベア3はベルトコンベア5の回転により、そのロッド6が後方へ移動するように回転する。したがって、掘取刃2からロッド式コンベア3に移ったジャガイモ等の根菜類は土とともにロッド6の上を適当に振動し、あるいは転がりながらホッパーがある後方へ移動する。この移動時の振動等により土は簀の子状に配してあるロッド6の隙間から落下し、圃場へ戻る。
【0028】
また、ロッド式コンベア3の作動時には図3(B)に示すように、油圧シリンダ10のピストンロッド14が制御装置により縮められ、落下防止装置8の芋落下防止材9は上昇して退避位置に移動される。芋落下防止材9は退避位置に移動することにより、ロッド式コンベア3のロッド6の上を移動してくる根菜類の移動を邪魔することはない。
【0029】
そして、ロッド式コンベア3が停止すると図3(A)に示すように、油圧シリンダ10のピストンロッド14が制御装置により伸ばされ、落下防止装置8の芋落下防止材9は下降して落下防止位置に移動される。この落下防止位置とは、可撓性材料13の上下方向の長さの1/4〜3/4の部分が、ロッド式コンベア3のロッド6上面に接触して折れ曲がるような状態をいう。可撓性材料13の上下方向の長さのうちどの程度をロッド6上面に接触するようにするかは、そのときの根菜類の大きさや土の湿り具合や、あるいはロッド式コンベア3の傾斜角度等により適宜選択可能である。
芋落下防止材9が落下防止位置へ移動することにより、ロッド6上の根菜類は可撓性材料13によりロッド式コンベア3上を落下するのが防止されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のハーベスタの落下防止装置の斜視図である。
【図2】図1の落下防止装置箇所の正面図である。
【図3】図2の側面図であり、(A)は芋落下防止材を下降させた状態、(B)は芋落下防止材を上昇させた状態を示す。
【符号の説明】
【0031】
1 ハーベスタ
2 掘取刃
3 ロッド式コンベア
4 側壁
5 ベルトコンベア
6 ロッド
7 ボルト
8 落下防止装置
9 芋落下防止材
10 油圧シリンダ
11 案内部材
12 硬質材料
13 可撓性材料
14 ピストンロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘取刃の後方に、簀の子状にロッドを取り付けたロッド式コンベアが傾斜させて配設されているハーベスタにおいて、
前記ロッド式コンベアの任意位置の上方に、上下動が可能な板状の芋落下防止材が前記ロッド式コンベアの進行方向に対して直交するように配設されているとともに、
前記板状の芋落下防止材は、前記ロッド式コンベアが作動時には上昇して退避位置に移動し、前記ロッド式コンベアが停止時には下降して落下防止位置に移動するように構成されていることを特徴とするハーベスタの落下防止装置。
【請求項2】
前記芋落下防止材は上側は硬質材料で、下側は可撓性材料で形成されているとともに、下側の可撓性材料は上下方向の長さが10〜25cmであり、
前記芋落下防止材が上昇して退避位置にある時には、前記芋落下防止材の前記可撓性材料の下端と前記ロッド式コンベアのロッド上面との距離が15〜25cmであり、
前記芋落下防止材が下降して落下防止位置にある時には、前記可撓性材料は上下方向の長さの1/4〜3/4の部分が、前記ロッド式コンベアのロッド上面に接触して折れ曲がるように構成されている請求項1に記載のハーベスタの落下防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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