説明

バイオセンサ測定装置及びその測定方法

【課題】バイオセンサ測定装置において、トランジスタの個体差による測定結果のばらつきを解消し、測定精度を高める。
【解決手段】バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成り、バイオセンサ部は、基材と、ドレイン電極およびソース電極と、基材上に配置された半導体膜と、半導体膜上に配置された絶縁膜と、絶縁膜上に配置され、被測定物が配置される感応膜と、被測定物と接触し、可変の参照電圧が印加される参照電極と、隔壁とを備え、測定部は、ドレイン電極と接続され、一定の電流を出力する電流源と、ソース電極と接続された基準電位部と、ドレイン電極と電流源との接続部を出力端子として出力電圧を測定する電圧計と、参照電極へと参照電圧を印加する参照電圧源とを備え、制御部は、測定部による測定を制御する測定設定部と、電圧計により測定した出力電圧を記憶する記憶部とを備えるバイオセンサ測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオセンサ測定装置に関し、特に、電界効果トランジスタを利用したバイオセンサ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や細胞等の生体試料やその中の特定成分について迅速かつ簡便に濃度等を測定する方法として、電気化学的検出手段によるバイオセンサが実用化されている。その一つとして、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、以下、FETという)を用いたバイオセンサが知られ、特にISFET(Ion−sensitive FET)と呼ばれている。ISFETを用いたDNA(Deoxyribonucleic acid)やタンパク質等の生体成分、細胞などの検出系への応用が盛んに研究されている。
【0003】
しかしながら、ISFETを用いたバイオセンサは、トランジスタごとの個体差が大きい。そのため、トランジスタの個体差により、測定結果にばらつきが生じてしまうという問題があった。そこで、個々のバイオセンサごとの個体差に合った最適な参照電圧を設定し、トランジスタの個体差による測定結果のばらつきを解消するとともに、個々のトランジスタの性能を最大限活かすことができる測定装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−242900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明においては、バイオセンサ測定装置において、トランジスタの個体差による測定結果のばらつきを解消し、測定精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置は、バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置であって、前記バイオセンサ部は、基材と、前記基材上に離隔して配置されたドレイン電極およびソース電極と、前記ドレイン電極及び前記ソース電極にオーミック接触して前記基材上に配置された半導体膜と、前記半導体膜上に配置された絶縁膜と、前記絶縁膜上に配置され、被測定物が配置される感応膜と、前記被測定物と接触し、可変の参照電圧が印加される参照電極と、前記感応膜における前記被測定物が配置される周囲に配置された隔壁とを備え、前記測定部は、前記ドレイン電極と接続され、一定の電流を出力する電流源と、前記ソース電極と接続された基準電位部と、前記ドレイン電極と前記電流源との接続部を出力端子として出力電圧を測定する電圧計と、前記参照電極へと前記参照電圧を印加する参照電圧源とを備え、前記制御部は、前記測定部による測定を制御する測定設定部と、前記電圧計により測定した前記出力電圧を記憶する記憶部とを備えることを特徴とする。
【0007】
前記制御部は、前記参照電圧の変化に応じた前記出力電圧の変化から傾きを算出する計算部を備えてもよい。
【0008】
前記バイオセンサ部は、前記ドレイン電極及び前記ソース電極と絶縁されたゲート電極を備えてもよい。
【0009】
また、本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置は、バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置であって、前記バイオセンサ部は、基材と、前記基材上に配置されて可変のゲート電圧が印加されるゲート電極と、前記ゲート電極と絶縁され、離隔して配置されたドレイン電極およびソース電極と、前記ドレイン電極及び前記ソース電極にオーミック接触して配置された半導体膜と、前記半導体膜上に配置された絶縁膜と、前記絶縁膜上に配置され、被測定物が配置される感応膜と、前記感応膜における前記被測定物が配置される周囲に配置された隔壁とを備え、前記測定部は、前記ドレイン電極と接続され、一定の電流を出力する電流源と、前記ソース電極と接続された基準電位部と、前記ドレイン電極と前記電流源との接続部を出力端子として出力電圧を測定する電圧計と、前記ゲート電極へと前記ゲート電圧を印加するゲート電圧源とを備え、前記制御部は、前記測定部による測定を制御する測定設定部と、前記電圧計により測定した前記出力電圧を記憶する記憶部とを備えることを特徴とする。
【0010】
前記制御部は、前記ゲート電圧の変化に応じた前記出力電圧の変化から傾きを算出する計算部を備えてもよい。
【0011】
前記バイオセンサ部は、前記ゲート電極と接続可能なゲート電極用補助電極を有し、参照電極と前記ゲート電極用補助電極とを切り替え可能なメカニカルスイッチを備えてもよい。
【0012】
前記基材、前記ドレイン電極、前記ソース電極、前記半導体膜、前記絶縁膜及び前記感応膜の少なくとも1つ以上が透明であってもよい。
【0013】
前記制御部は、前記電圧計により測定した前記出力電圧に基づくデータを表示する表示部を備えてもよい。
【0014】
前記計算部は、算出した傾きに基づいて信号増幅作用に優れた参照電圧を決定してもよい。
【0015】
前記計算部は、予め測定した前記被測定物搭載時の参照電圧−出力電圧特性と、予め測定した前記被測定物未搭載時のゲート電圧−出力電圧特性との特性差を被測定物電圧値として格納し、前記算出した傾きに基づき決定された電圧値を前記被測定物電圧値を用いて補整して信号増幅作用に優れた参照電圧を決定してもよい。
【0016】
前記表示部は、前記計算部により決定された前記参照電圧を表示し、前記バイオセンサ部を前記参照電圧により動作させる設定とするかの確認を利用者に求めてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法は、バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置による測定方法であって、前記バイオセンサ部のドレイン電極への入力電流を所定の電流値に設定し、前記バイオセンサ部の参照電極へと可変の参照電圧を印加して出力電圧を測定し、前記測定された前記出力電圧及びそれに対応する前記参照電圧を関連付けて記憶し、記憶された前記出力電圧及び前記参照電圧から傾きを計算し、算出された傾きに基づき固定値として印加する前記参照電圧の電圧値を特定し、特定された電圧値に基づき前記参照電圧を前記参照電極へと印加することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法は、バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置による測定方法であって、前記バイオセンサ部のドレイン電極への入力電流を所定の電流値に設定し、前記バイオセンサ部のゲート電極へと可変のゲート電圧を印加して出力電圧を測定し、前記測定された前記出力電圧及びそれに対応する前記ゲート電圧を関連付けて記憶し、記憶された前記出力電圧、前記ゲート電圧及び被測定物の出力電圧特性から傾きを計算し、算出された傾きに基づき固定値として参照電極へ印加する参照電圧の電圧値を特定し、特定された電圧値に基づき前記参照電圧を前記参照電極へと印加することを特徴とする。
【0019】
予め測定した前記被測定物搭載時の参照電圧−出力電圧特性と、予め測定した前記被測定物未搭載時のゲート電圧−出力電圧特性との特性差を被測定物電圧値として格納し、前記算出した傾きから特定された前記電圧値を前記被測定物電圧値を用いて補整して参照電極へ印加する参照電圧の電圧値を決定してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、個々のバイオセンサごとの個体差に合った最適な参照電圧を設定し、トランジスタの個体差による測定結果のばらつきを解消することができるバイオセンサ測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する図であり、(a)はバイオセンサ部の断面図と、バイオセンサ部、測定部及び制御部との接続構成を示す図であり、(b)はバイオセンサ部の上面図であり、(c)はバイオセンサ部の等価回路図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する図であり、(a)はトップゲート型のバイオセンサ部の断面図と、バイオセンサ部、測定部及び制御部との接続構成を示す図であり、(b)はバイオセンサ部の上面図であり、(c)はバイオセンサ部の等価回路図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する図であり、(a)はボトムゲート型のバイオセンサ部の断面図と、バイオセンサ部、測定部及び制御部との接続構成を示す図であり、(b)はバイオセンサ部の上面図であり、(c)はバイオセンサ部の等価回路図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する図であり、(a)はボトムゲート型のバイオセンサ部の断面図と、バイオセンサ部、測定部及び制御部との接続構成を示す図であり、(b)はバイオセンサ部の上面図であり、(c)はバイオセンサ部の等価回路図である。
【図5】バイオセンサ部のVG−VD特性のグラフの一例を示す図である。
【図6】図2のグラフにおいて、傾きが一定である部分Bを示す図である。
【図7】バイオセンサ部のVG−VD特性のグラフの一例を示す図であり、異なる時間間隔により求めた傾きを求め、同じ図にプロットした図である。
【図8】被測定物の出力電圧特性による、出力電圧の変化を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法の概要を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明に係るバイオセンサ測定装置及びその測定方法について説明する。但し、本発明のバイオセンサは多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
(バイオセンサ測定装置)
図1は、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する図であり、(a)はバイオセンサ部の断面図と、バイオセンサ部、測定部及び制御部との接続構成を示す図であり、(b)はバイオセンサ部の上面図であり、(c)はバイオセンサ部の等価回路図である。ただし、(b)では、感応膜150、及び絶縁膜155は省略している。
【0024】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置は、バイオセンサ部100と、測定部200と、制御部300とを有する。バイオセンサ部100は、基材110と、ドレイン電極120と、ソース電極130と、半導体膜140と、感応膜150と、絶縁膜155、参照電極160と、隔壁170と、被測定部180とを有する。測定部200は、電流源210と、基準電位部220と、電圧計230と、参照電圧源240とを有する。制御部300は、測定を制御し設定する測定設定部310と、電圧計230により測定された電圧を記憶する記憶部320とを有する。
【0025】
まず、バイオセンサ部100の構成の詳細について説明する。
【0026】
基材110は絶縁性の材料である。例えば、ガラスなどの無機材料や、PEN(Polyethylene naphthalate)またはPET(Polyethylene terephthalate)などのプラスチック(ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)に代表される有機材料であってもよい。基材110は、透明であることが好ましい。この透明とは、顕微鏡などの観察機器を用いて基材110から第2の絶縁膜151上に配置された被測定物191を観察することができる程度に透明であればよく、半透明のものは含まれない。
【0027】
また、基材110の形状は特に限定されることはなく、平板、平膜、フィルム、多孔質膜などの平坦な形状、シリンダ、スタンプ、マルチウェルプレート、マイクロ流路などの立体的な形状であってもよい。フィルムを使用する場合には、その厚さは特に限定されることはないが、例えば、1μm以上1mm以下であってもよい。
【0028】
基材110がフレキシブルな材料である場合には、基材110を曲げることが可能となり、測定時のFETセンサの設置などの自由度が増加する。また、ロール to ロールでのバイオセンサの形成が可能となり、低コストでのバイオセンサの製造が可能となる。
【0029】
なお、基材110上に他の絶縁膜が配置され形成されていてもよい。この場合には、FETセンサはその基材110上の他の絶縁膜上に形成される。また、この場合には、他の絶縁膜の材料は透明であることが好ましい。
【0030】
ドレイン電極120及びソース電極130は、基材110上に配置される。
【0031】
ドレイン電極120及びソース電極130には、導電性材料を用いる。例えば、チタン、アルミ、銅、金等を用いることができるが、特に透明な導電性材料を用いることが好ましく、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)等を用いることができる。ドレイン電極120及びソース電極130の厚さは、20nm〜200nmが好ましい。
【0032】
半導体膜140は、基材110上に配置されている。また、半導体膜140は、ドレイン電極120とソース電極130との間に、配置されている。そして、半導体膜140は、ドレイン電極120とソース電極130とにオーミック接触している。
【0033】
半導体膜140の材料としては、絶縁膜155を積層可能な材料であればよく、例えばアモルファス酸化物を用いることができる。そのようなアモルファス酸化物の主成分は、InMZnOと表すことができ、ここで、Mは、Ga(ガリウム)、Al(アルミニウム)、Fe(鉄)のうち少なくとも1種である。この中でも、アモルファス酸化物としては、MがGaであるInGaZnO系のものを用いるのが好ましい。InGaZnO系のアモルファス酸化物は、室温から150°C程度の低温で成膜が可能であることから、基材110が耐熱性に乏しいプラスチックやガラスにより構成されている場合でも使用することができる。また、InGaZnO系のアモルファス酸化物には、必要に応じて、Al、Fe、Snなどが加えられていてもよい。
【0034】
また、半導体膜140の別の材料としては、酸化物亜鉛(ZnO)を主成分とする酸化物半導体から用いられていてもよい。ZnOを主成分とする場合には、真性の酸化物亜鉛の他に、必要に応じて、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、窒素(N)及び炭素(C)等のp型ドーパント及びホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)等のn型ドーパントがドーピングされた酸化亜鉛及びマグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)などがドーピングされた酸化亜鉛を加えたものであってもよい。さらに、半導体膜140は、錫を添加した酸化インジウム(インジウム錫オキサイド:ITO)、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)または酸化マグネシウム(MgO)などの酸化物半導体から形成されていてもよい。
【0035】
半導体膜140は、透明であることが好ましい。この透明とは、基材110と同様に、顕微鏡などの観察機器を用いて基材110から感応膜150に配置された被測定物180が観察することができる程度に透明であればよく、半透明のものは含まれない。
【0036】
絶縁膜155は、ドレイン電極120、ソース電極130および半導体膜140の上に積層して配置される。
【0037】
絶縁膜155は、絶縁性材料が用いられるが、特に、透明な絶縁性材料を用いることが好ましく、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素等を用いることができる。また、プラスチック基板のような透明な有機樹脂からなる基板、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミドのような透明なフィルム等を用いてもよい。絶縁膜155の厚さは、50nm〜1μmの範囲で適宜選択することができる。なお、この透明とは、基材110と同様に、顕微鏡などの観察機器を用いて基材110から感応膜150に配置された被測定物180が観察することができる程度に透明であればよく、半透明のものは含まれない。
【0038】
感応膜150は、絶縁膜155と接触し、半導体膜140の上方に配置される。また、感応膜150は、絶縁膜155を介して、間接的に半導体膜140と接触して配置される。例えば、感応膜150は、絶縁膜155を覆って配置されてもよい。感応膜150は、被測定物180に添加された試料に含まれる被検査物、例えば、細胞、DNA、糖鎖、タンパク質等を配置可能なものである。感応膜150は、透明な絶縁材料を用い、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化タンタル、酸化アルミニウム等を用いることができる。
【0039】
また、図2に示すように、バイオセンサ部100は、ゲート電極145を有してもよい。なお、図2の(b)では、ゲート電極145、感応膜150、及び絶縁膜155は省略しており、(c)ではゲート電極145に係る回路は省略している。
【0040】
ゲート電極145には、導電性材料を用いる。例えば、チタン、アルミ、銅、金等を用いることができるが、特に透明な導電性材料を用いることが好ましく、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)等を用いることができる。ゲート電極145、ドレイン電極120及びソース電極130の厚さは、20nm〜200nmが好ましい。
【0041】
また、ゲート電極145は、バイオセンサによる被測定物の特性測定時には、フローティング電極として用いることができる。
【0042】
ゲート電極145、ドレイン電極120及びソース電極130の電極材料が透明であると、より確実にサンプルを顕微鏡で観察することが可能となるため、被測定物180の配置箇所に応じて、これらの電極の電極材料の1つ以上が透明であることが好ましい。この透明とは、基材110と同様に、顕微鏡などの観察機器を用いて基材110から感応膜150に配置された被測定物180が観察することができる程度に透明であればよく、半透明のものは含まれない。
【0043】
隔壁170は、被測定物180を配置するためのもので、例えば、ガラス、プラスチック等を用いることができる。なお、図1(b)においては、隔壁170を上方から見た場合に、四角くなっているが、これに限られず、例えば円形などでもよい。
【0044】
本発明の一実施形態に係るバイオセンサ部100は、ドレイン電極120及びソース電極130と絶縁された参照電極160を被測定物180に接触させることで被測定物180から出力される電気信号の測定を行う。参照電極160は、被測定物180に挿入してもよいし、パターンとして形成してもよい。
【0045】
次に、測定部200の構成の詳細について説明する。
【0046】
電流源210は、ドレイン電極120と電気的に接続される、ドレイン電流IDが一定な定電流源である。
【0047】
基準電位部220は、ソース電極130と電気的に接続される、回路のグランド(GND)である。
【0048】
電圧計230は、電流源210とドレイン電極120との接続部125と電気的に接続され、接続部125を出力端子として、出力電圧VDを測定する。
【0049】
従来、バイオセンサ部のトランジスタ特性を評価する場合には、VG−ID特性、すなわち参照電圧VGに対するドレイン電流IDを測定し、その関係により、トランジスタ特性を測定していた。
【0050】
一方、本発明においては、VG−VD特性、すなわちドレイン電流IDを固定の値とし、参照電圧VGと出力電圧VDを測定し、その関係により、トランジスタ特性を評価する。出力電圧VDを測定することにより、ドレイン電流IDを測定する場合と比べ、バイオセンサ部の電位変化を、増幅度を大きくし感度良く測定することができ、よりバイオセンサ部のトランジスタ特性の把握に優れる。
【0051】
参照電圧源240は、参照電極160と電気的に接続され、参照電極160へと参照電圧VGを印加する電圧源である。
【0052】
以上のように、測定部200は、電流源210より固定のドレイン電流IDをドレイン電極120へと出力し、参照電圧源240より参照電極160へと印加する参照電圧VGを変化させた場合における、接続部125における出力電圧VDの変化を、電圧計230により測定する。
【0053】
次に、制御部300の構成の詳細について説明する。
【0054】
制御部300は、例えば測定部200を制御するソフトウェアを備えたパーソナルコンピュータであり、測定部200を制御するとともに、測定部200における測定結果を記憶する。
【0055】
制御部300の測定設定部310は、測定部200における基本の測定シーケンスを設定し、制御する。すなわち、電流源210を制御して、ドレイン電流IDの値を設定したり、参照電圧源240を制御して、出力電圧VDの値を設定したりすることができる。
【0056】
また、測定設定部310は、電圧計230における電圧測定のタイミングを設定し、制御してもよい。これにより、電圧計230により、例えば1秒間隔で電圧を測定するなど、経時的に出力電圧VDを測定することができ、その結果、被検査物である細胞やタンパク質等の経時的な応答性を電気的に検知することが可能となる。
【0057】
また、記憶部320は、電圧計230により測定された出力電圧VDを参照電圧VGと対応付けて測定結果として記憶する。記憶部320は記憶媒体であり、例えばハードディスク、SSD、フラッシュメモリなどである。
【0058】
制御部300は、さらに表示部330を有してもよい。表示部330は、測定部200による測定結果を表示するディスプレイ装置である。表示する測定結果としては、例えば、電圧計により測定した出力電圧VDだけでなく、参照電圧VGと出力電圧VDとの対応関係を示すグラフ、バイオセンサ部の増幅度、感度、また後述する動作点電圧などである。
【0059】
次に、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置における、VG−VD特性の測定方法について説明する。
【0060】
まず、隔壁170で囲まれた空間へと、生体物質等の被検査物を添加しない状態の被測定物180を注入する。被測定物180は、例えば培養液などの薬液である。
【0061】
被測定物180へ、参照電極160を接触させた状態で、一定の電流IDを電流源210において出力し、参照電極160において、参照電圧VGを一定範囲で変化させた場合の、出力電圧VDを、電圧計230において測定する。
【0062】
制御部300の記憶部320は、参照電圧VGと出力電圧VDとを関連付けて記憶する。このとき、記憶部320は、時間経過も合わせて記憶してもよい。
【0063】
測定部200がVG−VD特性を継続的に、参照電圧VGの電圧値の一定間隔ごとに測定するよう、制御部300の測定設定部310において設定してもよい。例えば、出力電圧VDを測定する間隔は0.1V、0.3Vなどでよい。参照電圧VGの電圧値の変化に応じた出力電圧VDの変化を傾きとして測定するためには、ある程度小さな電圧値の差を見ることが好ましく、参照電圧VGの電圧値の変化は、0.3V以下の電圧間隔であることが好ましい。
【0064】
制御部300において、計算部(図示せず)を設け、一定の電圧間隔で測定したVG−VD特性についての傾きを計算してもよい。計算部は、例えば種々の演算を行うCPUの演算装置である。
【0065】
ある参照電圧VGにおける出力電圧VDと、ある参照電圧VGにおける出力電圧VDとの間の傾きは、次の数式(1)により求められる。
【数1】

【0066】
例えば、あるバイオセンサにおいて、参照電圧VG1が0.5Vのときの出力電圧VD1が0.301、参照電圧VG2が0.53Vのときの出力電圧VD2が0.282の場合に、傾きは0.63となる。
【0067】
バイオセンサの参照電圧は、ある入力電圧に対して、大きな出力電圧を得られる領域に設定することが好ましいところ、傾きを計算することにより、バイオセンサの動作点を決定する指標を得ることができる。より大きな出力電圧を得られる傾きが大きな地点とは、バイオセンサ部のトランジスタにおいて、入力された信号を増幅して出力している地点を意味し、小さな信号であっても、大きな信号として扱うことができることを意味する。
【0068】
すなわち、傾きと出力電圧、入力電圧との関係は、出力電圧=入力電圧×傾きで求められる。例えば、出力電圧VDが10Vで、入力する電圧が1Vである場合、傾きは10となるし、出力電圧VDが2Vで、入力する電圧が1Vである場合、傾きは2となる。このように、傾きが大きいほど、同じ入力電圧であっても出力電圧が大きくなることが分かる。
【0069】
なお、傾きを求める際の電圧の間隔は、ある程度短い方が好ましく、例えば参照電圧の変化が0.3V以下であることが好ましい。
【0070】
また、動作点を決定するための測定の際には、ドレイン電流IDの電流値は、通常、1nA〜1mAに設定される。もっとも、電流値が1mA程度の大きさの場合には、トランジスタの電流バイアスストレスの影響により、VG−VD特性についての測定結果が時間の経過とともに異なってしまうことがある。そのため、ドレイン電流IDの電流値は、電流バイアスストレスの影響が小さい1nA〜1μAに設定してVG−VD特性を測定するのが好ましく、測定装置の精度を考慮すると、10nA〜1μAがより好ましい。
【0071】
本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置では、被検査物の特性の測定の際に、傾きが0.5以上である領域における参照電圧を設定することが好ましい。本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置は、トランジスタを用いた被検査物に対して非侵襲で測定可能なバイオセンサ部を用いるため、信号増幅することができ、傾きが0.5以上であれば、被測定物180の電位を的確に測定できる。傾きが0.5未満である場合には、被測定物180の電位が、入力する電圧の50%を下回り、トランジスタを用いた信号増幅によるメリットに乏しい。なお、より好ましくは、傾きが1以上、さらに好ましくは、傾きが10前後であると、トランジスタによる信号増幅作用を十分に活かすことができる。
【0072】
図5はドレイン電流IDが100nAの場合におけるバイオセンサ部のVG−VD特性のグラフの一例を示す図である。図5において、横軸が参照電圧VG、縦軸が出力電圧VD及び傾きであり、参照電圧VGと出力電圧VDとの関係を示すグラフ及び参照電圧VGと傾きとの関係を示すグラフが記載されている。傾きは、参照電圧VGと出力電圧VDとの3秒間隔での変化から求めた。
【0073】
図5において特性が示されるバイオセンサにおいては、傾きが0.5以上であるのは、参照電圧VGが範囲Aに含まれる値の場合である。従って、参照電圧VGの値を、傾きが0.5以上の範囲Aから選択すると、図5に係るバイオセンサは、優れた信号増幅作用を発揮することができる。
【0074】
また、傾きが0.5以上の領域から、さらに傾きのある程度一定の部分、すなわち傾きが線形に近い部分の中心点に対応する参照電圧VGを選択することが好ましい。この場合、傾きがある程度一定の部分においては、多少参照電圧VGの値が上下しても、同様の信号増幅作用を発揮できるためである。
【0075】
図6は、図5のグラフにおいて、傾きが一定である部分Bを示す図である。図6を参照すると、参照電圧VGと傾きとの関係を示すグラフにおいて、傾きが0.5以上の範囲のうち、部分Bで傾きの値について上下への一定の振幅が多く見られる。この箇所においては、上下へ振幅している範囲内において傾きが一定となっているといえるから、参照電圧VGをこの部分Bに対応する範囲の値の中心値を選択することにより、図5及び図6に係るバイオセンサは、優れた信号増幅作用を安定して発揮することができる。
【0076】
また、傾きを求める場合の参照電圧VGの電圧値の間隔を複数設定し、傾きについて異なる間隔における出力電圧VDの変化を求め、それぞれのデータをプロットし、傾きについての傾向が重なる箇所を参照電圧VGとして設定してもよい。これにより、ある時間における傾きについての傾向をより正確に把握することができ、優れた信号増幅作用を安定して発揮することができる参照電圧VGを設定することができる。例えば、図7において特性が示されるバイオセンサにおいては、参照電圧VGについて、0.1V、0.2V、0.3Vの電圧値の間隔で傾きを求めたグラフを、同じ図にプロットしている。このうち、傾きについての傾向が重なる箇所Cに対応する範囲の値に、参照電圧VGを設定することにより、図7に係るバイオセンサは、優れた信号作用を安定して発揮することができる。
【0077】
こうした過程を経て、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置は、制御部300の測定設定部310により、自動でバイオセンサ部に応じた最適な参照電圧VGを参照電圧源240より出力することができる。なお、バイオセンサ部に応じた好ましい参照電圧VGが算出された後に、表示部330において、測定装置の利用者に対して、算出された参照電圧VGを示し、当該参照電圧VGによりバイオセンサ部を動作させて良いかの確認を求めてもよい。また好ましい参照電圧VGが複数存在する場合には、いずれの参照電圧VGを選択するかの確認を求めてもよい。これにより、より利用者のニーズに応じて参照電圧VGを設定することが可能となる。
【0078】
以上の本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置により、バイオセンサの個体差に応じて、被検査物の測定に適した参照電圧を設定することができ、バイオセンサの個体差により測定結果に差が生じることを防止することができるバイオセンサ測定装置が提供される。
【0079】
次に、本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する。
【0080】
図3は、本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置の構成を説明する図であり、(a)はボトムゲート型のバイオセンサ部の断面図と、バイオセンサ部、測定部及び制御部との接続構成を示す図であり、(b)はバイオセンサ部の上面図であり、(c)はバイオセンサ部の等価回路図である。ただし、(b)では、感応膜150、及び絶縁膜155は省略しており、(c)ではゲート電極145に係る一部の回路は省略している。
【0081】
図2を参照して前述した本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置は、トップゲート型の構成であったが、図3に係る実施形態に係るバイオセンサ測定装置は、ボトムゲート型の構成であり、ゲート電極145が、基材110上に配置され、ゲート電極145は、ゲート絶縁膜190により、ドレイン電極120及びソース電極130と電気的に絶縁される。ゲート絶縁膜190は、基材110及びゲート電極145上に配置され基材110及びゲート電極145を覆う。ゲート絶縁膜190の材料は、前述した絶縁膜155と同様の材料であってもよい。
【0082】
半導体膜140は、ゲート電極145の上方に配置される。ゲート電極145は、ドレイン電極120とソース電極130との間から引き出され、ゲート電極145が延伸された箇所の上方に隔壁170を設けて、被測定物180を配置してもよい。これにより、自由に被測定物の配置箇所を設定することができる。
【0083】
ゲート電極145には、測定部200のゲート電圧源250から、ゲート電圧VGが印加される。
【0084】
なお、図4に示すように、ゲート電極用補助電極端子145aを用意し、ゲート電極用補助電極端子145aとゲート電極145とを電気的に接触させて、ゲート電圧VGを印加してもよい。この場合、ゲート電圧源250とゲート電極用補助電極端子145aとの間にメカニカルスイッチ255を設けて、動作点を決定する際には、スイッチをオンして測定を行い、動作点決定後、被検査物の特性を測定する際には、スイッチをオフして、被検査物の特性の測定に影響が出ないようにすることができる。
【0085】
また、測定部において、参照電圧源240とゲート電圧源250とを切り替え可能な切替スイッチ(図示せず)を有してもよい。
【0086】
動作点を決定するためのバイオセンサ部のVG−VD特性の測定時に、参照電極160の代わりにゲート電極145を用いることにより、被測定物180が生体物質等の被検査物を添加されている場合においても、被検査物の影響を受けない状態で出力電圧VDを測定することができる。従って、被検査物がセットされた状態であっても、動作点を決定することができ、各バイオセンサに適した状態において被検査物の特性を測定することができる。
【0087】
このとき、被検査物を含まない被測定物180の出力電圧特性を予め測定しておくことが好ましい。すなわち、培養液等の被測定物180が持っている電荷(イオン)によって、被測定物180の電位が変化し、VG−VD特性は影響を受けるため、図8に示すように、同じ電圧VGを印加したとしても、異なる出力電圧VDとなる。そのため、ゲート電極145を用いた被測定物180の影響を受けない状態でのVG−VD特性の測定データについては、あらかじめ測定した被測定物180の出力電圧特性を考慮した上で、動作点を決定する必要がある。このとき、被測定物180の特性により、電圧値は変化するものの、トランジスタの傾きにおける傾き方には影響を与えることは基本的にないため、被測定物180ごとの出力電圧特性に基いて、出力電圧VDの測定値をシフトさせる補整を行い、最適な動作点を決定することができる。例えば、被測定物180搭載時の参照電圧−出力電圧特性と、被測定物未搭載時のゲート電圧−出力電圧特性との特性差、すなわちシフト量を被測定物電圧値として、記憶部320に格納しておく。そして、動作点電圧として印加する参照電圧VGとしては、傾きに基づき計算部340により算出された電圧から、シフト量に基づいてマイナスあるいはプラスされた電圧値が印加される。
【0088】
(バイオセンサ測定装置による測定方法)
次に、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法を説明する。なお、測定方法に用いるバイオセンサ測定装置の各構成の詳細は、上述したとおりである。
【0089】
図9は、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法の概要を示すフローチャートであり、以下、図9を参照しつつ測定方法の流れを説明する。図9における測定方法は、例えば図1や図2に係るバイオセンサ測定装置を用いた場合の測定方法である。
【0090】
まず、電流源210において入力するドレイン電流IDを設定する(S100)。ドレイン電流IDは固定値であり、例えば100nA以上500nA以下の電流値に設定される。
【0091】
次に、参照電圧源240により参照電極160へと印加する参照電圧VGを設定し、電圧計230において、出力電圧VDの測定を開始する(S110)。
【0092】
測定した出力電圧VDを、参照電圧VGと関連付けて記憶部320において記憶する(S120)。
【0093】
参照電圧VGを所定の電圧値の範囲内で変化させ、出力電圧VDの測定を繰り返す(S130)。所定の電圧値の範囲は、通常被測定物の測定のために参照電圧として印加する範囲の電圧値である。
【0094】
記憶部320に記憶された、出力電圧VDの測定データ及びそれに対応付けられた参照電圧VGに基づき、傾きを計算する(S140)。
【0095】
算出された傾きに基づき、信号増幅作用に優れた参照電圧VG、すなわち動作点であって、被検査物の測定時に固定値として印加する参照電圧の電圧値を特定する(S150)
【0096】
特定された参照電圧、すなわち特定された動作点に基づき、参照電圧源240により参照電極160へと印加する参照電圧を固定値として設定する(S160)。なお、ステップS160の前に、動作点として特定された参照電圧の電圧値を表示部330へと表示し、設定する参照電圧の確認を測定者へ求めてもよい。
【0097】
その後、設定に基づき参照電圧を印加し、出力電圧VDの測定を開始する。
【0098】
以上の本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法により、バイオセンサの個体差に応じて、被検査物の測定に適した参照電圧を設定することができ、バイオセンサの個体差により測定結果に差が生じることを防止することができるバイオセンサ測定方法が提供される。
【0099】
次に、図10を参照して、本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法の流れを説明する。なお、図10における測定方法は、例えば図3や図4に係るバイオセンサ測定装置を用いた場合の測定方法である。
【0100】
まず、電流源210において入力するドレイン電流IDを設定する(S200)。ドレイン電流IDは固定値であり、例えば100nA以上500nA以下の電流値に設定される。
【0101】
次に、ゲート電圧源250によりゲート電極145へと印加するゲート電圧VGを設定し、電圧計230において、出力電圧VDの測定を開始する(S210)。
【0102】
測定した出力電圧VDを、ゲート電圧VGと関連付けて記憶部320において記憶する(S220)。
【0103】
ゲート電圧VGを所定の電圧値の範囲内で変化させ、出力電圧VDの測定を繰り返す(S230)。所定の電圧値の範囲は、通常被測定物の測定のために参照電圧として印加する範囲の電圧値である。
【0104】
記憶部320に記憶された、出力電圧VDの測定データ及びそれに対応付けられたゲート電圧VGに基づき、傾きを計算する。このとき、予め測定しておいた被測定物180の出力電圧特性により、補整を行う(S240)。
【0105】
算出された傾きに基づき、信号増幅作用に優れた参照電圧VG、すなわち動作点であって、被検査物の測定時に固定値として印加する参照電圧の電圧値を特定する(S250)
【0106】
特定された参照電圧、すなわち特定された動作点に基づき、参照電圧源240により参照電極160へと印加する参照電圧を固定値として設定する(S260)。なお、ステップS160の前に、動作点として特定された参照電圧の電圧値を表示部330へと表示し、設定する参照電圧の確認を測定者へ求めてもよい。
【0107】
その後、設定に基づき参照電圧を印加し、出力電圧VDの測定を開始する。
【0108】
以上の本発明の他の実施形態に係るバイオセンサ測定装置による測定方法により、バイオセンサの個体差に応じて、被検査物の測定に適した参照電圧を設定することができ、バイオセンサの個体差により測定結果に差が生じることを防止することができるとともに、被検査物がセットされた状態であっても、動作点を決定することができ、各バイオセンサに適した状態において被検査物の特性を測定することができるバイオセンサ測定方法が提供される。
【符号の説明】
【0109】
110 基材
120 ドレイン電極
130 ソース電極
140 半導体膜
145 ゲート電極
150 感応膜
155 絶縁膜
160 参照電極
170 隔壁
180 被測定物
190 ゲート絶縁膜
210 電流源
220 基準電位部
230 電圧計
240 参照電圧源
250 ゲート電圧源
310 測定設定部
320 記憶部
330 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置であって、
前記バイオセンサ部は、
基材と、
前記基材上に離隔して配置されたドレイン電極およびソース電極と、
前記ドレイン電極及び前記ソース電極にオーミック接触して前記基材上に配置された半導体膜と、
前記半導体膜上に配置された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に配置され、被測定物が配置される感応膜と、
前記被測定物と接触し、可変の参照電圧が印加される参照電極と、
前記感応膜における前記被測定物が配置される周囲に配置された隔壁と
を備え、
前記測定部は、
前記ドレイン電極と接続され、一定の電流を出力する電流源と、
前記ソース電極と接続された基準電位部と、
前記ドレイン電極と前記電流源との接続部を出力端子として出力電圧を測定する電圧計と、
前記参照電極へと前記参照電圧を印加する参照電圧源と
を備え、
前記制御部は、
前記測定部による測定を制御する測定設定部と、
前記電圧計により測定した前記出力電圧を記憶する記憶部と
を備えることを特徴とするバイオセンサ測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記参照電圧の変化に応じた前記出力電圧の変化から傾きを算出する計算部を備えることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項3】
前記バイオセンサ部は、前記ドレイン電極及び前記ソース電極と絶縁されたゲート電極を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項4】
バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置であって、
前記バイオセンサ部は、
基材と、
前記基材上に配置されて可変のゲート電圧が印加されるゲート電極と、
前記ゲート電極と絶縁され、離隔して配置されたドレイン電極およびソース電極と、
前記ドレイン電極及び前記ソース電極にオーミック接触して配置された半導体膜と、
前記半導体膜上に配置された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に配置され、被測定物が配置される感応膜と、
前記感応膜における前記被測定物が配置される周囲に配置された隔壁と
を備え、
前記測定部は、
前記ドレイン電極と接続され、一定の電流を出力する電流源と、
前記ソース電極と接続された基準電位部と、
前記ドレイン電極と前記電流源との接続部を出力端子として出力電圧を測定する電圧計と、
前記ゲート電極へと前記ゲート電圧を印加するゲート電圧源と
を備え、
前記制御部は、
前記測定部による測定を制御する測定設定部と、
前記電圧計により測定した前記出力電圧を記憶する記憶部と
を備えることを特徴とするバイオセンサ測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ゲート電圧の変化に応じた前記出力電圧の変化から傾きを算出する計算部を備えることを特徴とする請求項4に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項6】
前記バイオセンサ部は、前記ゲート電極と接続可能なゲート電極用補助電極を備え、参照電極と前記ゲート電極用補助電極とを切り替え可能なメカニカルスイッチを備えることを特徴とする請求項4または5に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項7】
前記基材、前記ドレイン電極、前記ソース電極、前記半導体膜、前記絶縁膜及び前記感応膜の少なくとも1つ以上が透明であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記電圧計により測定した前記出力電圧に基づくデータを表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項9】
前記計算部は、算出した傾きに基づいて信号増幅作用に優れた参照電圧を決定することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項10】
前記計算部は、
予め測定した前記被測定物搭載時の参照電圧−出力電圧特性と、予め測定した前記被測定物未搭載時のゲート電圧−出力電圧特性との特性差を被測定物電圧値として格納し、
前記算出した傾きに基づき決定された電圧値を前記被測定物電圧値を用いて補整して信号増幅作用に優れた参照電圧を決定する
ことを特徴とする請求項9に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項11】
前記表示部は、前記計算部により決定された前記参照電圧を表示し、前記バイオセンサ部を前記参照電圧により動作させる設定とするかの確認を利用者に求めることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のバイオセンサ測定装置。
【請求項12】
バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置による測定方法であって、
前記バイオセンサ部のドレイン電極への入力電流を所定の電流値に設定し、
前記バイオセンサ部の参照電極へと可変の参照電圧を印加して出力電圧を測定し、
前記測定された前記出力電圧及びそれに対応する前記参照電圧を関連付けて記憶し、
記憶された前記出力電圧及び前記参照電圧から傾きを計算し、
算出された傾きに基づき固定値として印加する前記参照電圧の電圧値を特定し、
特定された電圧値に基づき前記参照電圧を前記参照電極へと印加する
ことを特徴とするバイオセンサ測定装置による測定方法。
【請求項13】
バイオセンサ部、測定部、及び制御部から成るバイオセンサ測定装置による測定方法であって、
前記バイオセンサ部のドレイン電極への入力電流を所定の電流値に設定し、
前記バイオセンサ部のゲート電極へと可変のゲート電圧を印加して出力電圧を測定し、
前記測定された前記出力電圧及びそれに対応する前記ゲート電圧を関連付けて記憶し、
記憶された前記出力電圧、前記ゲート電圧及び被測定物の出力電圧特性から傾きを計算し、
算出された傾きに基づき固定値として参照電極へ印加する参照電圧の電圧値を特定し、
特定された電圧値に基づき前記参照電圧を前記参照電極へと印加する
ことを特徴とするバイオセンサ測定装置による測定方法。
【請求項14】
予め測定した前記被測定物搭載時の参照電圧−出力電圧特性と、予め測定した前記被測定物未搭載時のゲート電圧−出力電圧特性との特性差を被測定物電圧値として格納し、
前記算出した傾きから特定された前記電圧値を前記被測定物電圧値を用いて補整して参照電極へ印加する参照電圧の電圧値を決定する
ことを特徴とする請求項13に記載のバイオセンサ測定装置による測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−92479(P2013−92479A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235508(P2011−235508)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)