説明

バイオセンサ補正チップ及びバイオセンサシステム

【課題】測定器に挿入されたチップがバイオセンサチップであるかバイオセンサ補正チップであるかの判別が自動的かつ確実にできるバイオセンサ補正チップ及びバイオセンサシステムを提供する。
【解決手段】測定器2の挿入部5に挿入して接続電極16をコネクタ電極6に接続したとき、コネクタ電極6の複数の端子のうちの第1の端子dに現れる電圧レベルがバイオセンサチップ1を挿入した場合と異ならせることで、バイオセンサチップ1とバイオセンサ補正チップ14との判別をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサチップの測定を行う測定器の挿入部に挿入可能であり、測定器の挿入部に設けられたコネクタ電極に接続可能なディジタル信号出力用の複数の接続端子と、バイオセンサチップの製造ロット毎に異なるデータを記憶する記憶手段と、を備えるバイオセンサ補正チップ及びバイオセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生体機能をエレクトロニクス分野に応用するバイオエレクトロニクスの研究が進んでいる。このバイオエレクトロニクス分野におけるバイオセンサチップは、生体が持つ優れた分子識別機能を利用したデバイスであり、化学物質を迅速にしかも簡便に測定できるものとして、将来有望視されている。
【0003】
かかるバイオセンサチップは、微量試料測定用センサとして応用され、例えば血糖値や尿糖値を測定して糖尿病を自己管理し、予防する家庭内健康診断(セルフケア)に使い捨て使用されたり、工業的には生産ライン上の商品の抜取品質検査等に用いられたりするなど応用分野は広い。
【0004】
前記バイオセンサチップを利用するバイオセンサシステムとして、例えば特許文献1に記載の定量分析装置がある。この定量分析装置では、使い捨てセンサ(バイオセンサチップ)を、コネクタ端子を介して測定回路に接続可能とする構成を持ち、コネクタ端子の接続後にスイッチを入れて電源としての電池からオペアンプを介して使い捨てセンサ(バイオセンサチップ)に電圧を印加可能にしている。
【0005】
この使い捨てセンサ(バイオセンサチップ)は、反応部における内部抵抗等のばらつきに基づいて生体情報の測定結果に違い(測定誤差)が生じることがある。このため、測定誤差を、調整モード切換え用、機差補正用・校正用、単位切換え用などの用途ごとに、異なった抵抗値を持つバイオセンサ補正チップを前記測定器に挿し込むことによって、自動的に補正する方法が、前記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特公平8−20412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のバイオセンサ補正チップにあっては、前述の用途ごとに異なった値の抵抗を持ち、バイオセンサ補正チップの前記差込み時に、測定器側ではその抵抗値に応じた電流値を検知し、測定値の補正、検量線の識別・選択、濃度値に基づく装置異常の有無、濃度単位の変更等が行えるものの、前記用途ごとのバイオセンサ補正チップを測定器に接続するという、極めて面倒な作業が必要になる。
【0007】
また、各補正用の抵抗値が固定値であるため、温度などの周辺環境の変化や経時変化に柔軟に対応できず、出荷段階などにおいて前記測定誤差の補正が行えないという不都合がある。また、調整モード切換え用、機差補正用・校正用、単位切換え用などの用途ごとに、抵抗値が異なる抵抗を持つ別々のバイオセンサ補正チップを用意する必要がある。
【0008】
さらに、各バイオセンサ補正チップは、抵抗値(または電流値)の違いによって測定値の補正を行うため、使用済みのバイオセンサチップと補正用チップとの区別が付かなくなる。例えば、使用済みのバイオセンサチップを用いた前記補正の処理を制御部に対して誤って実行させてしまう場合が考えられる。
【0009】
本発明は前記のような従来の問題点に着目してなされたものであり、バイオセンサチップの測定を行う測定器の挿入部に挿入可能であり、測定器の挿入部に設けられたコネクタ電極に接続可能なディジタル信号出力用の複数の接続端子と、バイオセンサチップの製造ロット毎に異なるデータを記憶する記憶手段と、を備え、自動的にかつ確実にバイオセンサチップとの判別ができるバイオセンサ補正チップ及びバイオセンサシステムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的達成のために、本発明に係るバイオセンサ補正チップは、バイオセンサチップの測定を行う測定器の挿入部に挿入可能であり、前記測定器の挿入部に設けられた複数の端子を持つコネクタ電極に接続可能な複数の端子を持つディジタル信号出力用の接続電極と、
前記バイオセンサチップの製造ロット毎に異なるデータを記憶する記憶手段と、を備え、
該記憶手段から読み出した前記データを前記接続電極及びコネクタ電極を介して前記測定器に送信可能に構成され、
前記測定器の挿入部に挿入して接続電極をコネクタ電極に接続したとき、前記コネクタ電極の複数の端子のうちの第1の端子に現れる電圧レベルが前記バイオセンサチップを挿入した場合と異なることにより、前記バイオセンサチップと判別可能に構成されることを特徴とする。
【0011】
また、前記コネクタ電極の第1の端子に接続されるバイオセンサチップの接続電極の端子が開放である場合に、前記コネクタ電極の第1の端子に接続される接続電極の端子にプルダウン用の抵抗が接続されることが好ましい。
【0012】
また、前記コネクタ電極の第2の端子に接続されるバイオセンサチップの接続電極の端子が接地電位である場合に、前記コネクタ電極の第2の端子に接続される接続電極の端子にプルダウン用の抵抗が接続されることが好ましい。
【0013】
また、前記データは検量線を補正する検量線データであり、該検量線データは検量線計算式に代入する複数の係数からなることが好ましい。
【0014】
また、前記記憶手段に、ロット管理用データが記憶されていることが好ましい。
【0015】
また、前記記憶手段が、書き換え可能な不揮発性メモリ、特にシリアルクロックとシリアルデータ用の2本の信号線を備えたICEEPROMであることであることが好ましい。
【0016】
また、本発明のかかるバイオセンサシステムは、バイオセンサチップの測定を行う測定器の挿入部に挿入可能であり、前記測定器の挿入部に設けられた複数の端子を有するコネクタ電極に接続可能な複数の端子を有するディジタル信号出力用の接続電極と、前記バイオセンサチップの製造ロット毎に異なるデータを記憶する記憶手段と、を備えるバイオセンサ補正チップと、
前記バイオセンサ補正チップを前記挿入部に挿入して接続電極をコネクタ電極に接続したとき、前記コネクタ電極が持つ複数の端子のうちの第1の端子に現れる電圧レベルが前記バイオセンサチップを挿入した場合と異なることによりチップの種類を判別するチップ判別手段を備える測定器と、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、前記バイオセンサ補正チップには、前記コネクタ電極の第1の端子に接続されるバイオセンサチップの接続端子が開放である場合に、前記コネクタ電極の第1の端子に接続される接続電極の端子にプルダウン用の抵抗が接続されることが好ましい。
【0018】
また、前記バイオセンサ補正チップには、前記コネクタ電極の複数の端子のうちの第2の端子に接続されたバイオセンサチップの接続電極の端子が接地電位である場合に、前記コネクタ電極の第2の端子に接続される前記接続電極の端子にプルダウン用の抵抗を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るバイオセンサ補正チップ及びバイオセンサシステムによれば、自動的にチップの挿入が検知できると共に、挿入されたチップがバイオセンサチップであるかバイオセンサ補正チップであるかの判別が自動的かつ確実にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態によるバイオセンサ補正チップ及びバイオセンサシステムを、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態では、バイオセンサチップに供給される生体物質(試料)の一例として血液を挙げ、この血液中の血糖値を測定するバイオセンサシステムを例にして説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るバイオセンサ補正チップを接続した測定器を示す回路図、図2は、バイオセンサチップを測定器に接続した状態の測定器を示す回路図、図3は、測定器各部の電圧、電流波形のタイミングチャートである。
図2及び図3を参照しながら、バイオセンサチップ1を使用するバイオセンサシステムについて説明する。このバイオセンサシステムは、バイオセンサチップ1と、バイオセンサ補正チップ14と、バイオチップセンサ1に供給された生体物質の生体情報を測定する測定器2とからなる。
【0022】
これらのうち、バイオセンサチップ1は、複数のセンサ電極としての接続電極(以下、接続電極という)3に接続するように設けられ、かつ生体物質が供給(滴下)される反応部4を備えている。接続電極3は5個の端子a〜eを備えている。
反応部4は、例えば血糖値反応用として構成されるものでは、酸化還元酵素と電子伝導体(メディエータ)との混合物、例えば、グルコースオキシダーゼとフェリシアン化カリウムとの混合物により形成される。
【0023】
測定器2は、コネクタ電極6及び制御部7を有する。これらのうちコネクタ電極6は5個の端子a〜eを備えている。
制御部7は、アナログ/ディジタル変換回路(以下、ADCという)9、生体情報測定回路10、メモリ11、チップ判別手段12及びディジタル/アナログ変換回路(以下、DACという)13を有する。チップ判別手段12は挿入部5に挿入された(コネクタ電極6に接続された)チップが、後述のチップ判別信号がハイレベルかローレベルかによってバイオセンサチップ1か、後述のバイオセンサ補正チップ14であるかを判別するものである。
【0024】
前記ADC9には、コネクタ電極6と生体情報測定回路10とを直接接続するバイパス回路及びスイッチ(いずれも、図示省略)が設けられている。また、生体情報測定回路10は、挿入部5へのバイオセンサチップ1の挿入によって、DAC13を通じて反応部4に対する印加電圧を所定レベルに立ち上げるように機能する。
【0025】
生体情報測定回路10は、反応部4に血液が供給されると、この反応部4に対する印加電圧を所定時間、酸化還元電位以下のレベル(例えば、反応物質がフェリシアン化カリウムの場合は0.33V)に維持するように機能する。これにより、前記血液の酵素反応による電荷の生成が促される。
【0026】
さらに、生体情報測定回路10は、前記所定レベルの印加電圧を設定時間内で再び立ち上げた後、所定時間内における反応部4の電荷放出による反応電流値を測定するように機能する。
【0027】
DAC13は、0V以上のレベル可変の印加電圧を連続的に生成することができ、接続電極3及びコネクタ電極6を介して反応部4に所定レベルの電圧を、任意に設定するように機能する。
【0028】
従って、本実施形態では、図3に示すように、バイオセンサチップ1の挿入部5への挿入タイミングt1時から血液滴下時を含む所定時間及びt3時からt4時を含む期間は、所定の高い電圧に設定することができる。また、t2時からt3時を含む期間は前記酸化還元電位以下の電圧に設定できる。
メモリ11は、バイオセンサ補正チップ14から得られる情報を記憶する。
【0029】
次に、この測定器の動作を、図3のタイミングチャートを参照しながら説明する。
まず、血液などの生体物質の測定開始時には、制御部7のDAC13から印加電圧を出力し、さらにバイオセンサチップ1を測定器2の挿入部5に挿し込む。
このとき印加電圧は、接続電極3及びコネクタ電極6を介して反応部4に印加される。
【0030】
このため、この印加電圧によって反応部4に電流が流れ、この電流が図3(a)において、t1時にADC9を介して制御部7の生体情報測定回路10に入力される。
【0031】
このようにバイオセンサチップ1を挿入部5へ挿入した後は、所定時間経過した後のt2時に、反応部4上に生体物質を、ここでは血液を供給(滴下)する。この血液の滴下によって反応部4に流れる反応電流は、図2(b)に示すように瞬時に立ち上がる。制御部7はこの血液の滴下を、瞬時に立ち上がるパルス状の電流に基づいて認識する。
【0032】
続いて、制御部7は、DAC13から酸化還元電位以下の電圧を、接続電極3及びコネクタ電極6を介して反応部4に加える。制御部7は、反応部4に加える前記低電圧を予め設定された放置期間(t3時まで)維持し、この間に血液の化学(酵素)反応により生成される電荷を反応部4に蓄積させる。
【0033】
次に、制御部7は、t2時からの放置期間を経過したt3時に、DAC13から前記所定レベルの電圧を再び反応部4の両端に印加する。これにより反応部4には酵素反応に基づく抵抗値変化に応じた、図3(b)に示すような反応電流が放出される。この反応電流値に対応する電圧が、前述のように制御部7に印加される。
【0034】
前記反応電流は、印加電圧の印加時に鋭く所定の高レベルに立ち上がった後、反応部4における前記電荷の放電時定数に従って徐々に漸減していく傾向にある。そこで、この反応電流の漸減動作終盤付近の所定タイミングt4で反応電流値をそれぞれ採取する。
【0035】
そして、電流値と血糖値との関係を示す検量線を使用して、採取した反応電流値から血糖値を計算する。
例えば、以下の検量線計算式を使用して計算する。
(式1)
I<Gのとき、
Y=(A1−B1×T)×I+(C1−D1×T)×I+(E1−F1×T)
(式2)
I≧Gのとき、
Y=(A2−B2×T)×I+(C2−D2×T)×I+(E2−F2×T)
【0036】
ここで、Yは血糖値、Iは反応電流値、Tは測定環境温度、Gは検量線選定閾値、A1〜F1はI<Gのときの検量線の計数、A2〜F2はI≧Gのときの検量線の計数である。
ところで、バイオセンサチップ1は、製造ロット毎に上記の式1,式2におけるA1〜F1,A2〜F2,Gの値(検量線データ)が異なっており、この検量線データは、バイオセンサ補正チップ14のEEPROM15に格納されている。
【0037】
本実施形態では、バイオセンサチップ1による測定を行う前に、バイオセンサ補正チップ14を接続して測定器2に予めバイオセンサチップ1が属する製造ロットの検量線データを送信する。これにより、バイオセンサチップ1の製造ロットに対応した検量線データを、検量線計算式(前記式1または式2)に用いて血糖値を計算することができる。
【0038】
バイオセンサ補正チップ14は、書き換え可能な不揮発性メモリの一例であり電気的に書き換え可能なEEPROM15を記憶手段として持ち、EEPROM15には、上記の検量線データ(A1〜F1,A1〜F1,Gの値)の他に、ロット管理用データとして、バイオセンサチップのロット番号、製造日、当該製造ロットのバイオセンサチップの枚数、バイオセンサ補正チップのロット番号等を格納しており、これらのロット管理用データも上記の検量線データとともに制御部7へディジタル信号として送信する。
【0039】
バイオセンサ補正チップ14は、測定器2のコネクタ電極6に接続可能なディジタル信号出力用の接続電極16を備える。
また、前述のように、制御部7にはメモリ11が設けられている。このメモリ11には、バイオセンサ補正チップ14から送信された製造ロットに対応する検量線データが記憶される。
【0040】
EEPROM15を備えるバイオセンサ補正チップ14は、前述のようにバイオセンサチップ1の製造ロット毎に異なる情報を持っている。従って、バイオセンサチップ1を用いた生体情報の測定の際には、同一製造ロットのバイオセンサチップ1に対して予め用意されたバイオセンサ補正チップ14を前もって挿入部5に挿し込み、EEPROM15に予め格納しておいた情報を測定器2に入力する。
【0041】
生体情報測定回路10は、メモリ11内の検量線データを読み出す。その後、バイオセンサ補正チップ14に代えて挿入されるバイオセンサチップ1から得られた反応電流値を、このバイオセンサチップ1の製造ロットに対応した検量線データの検量線計算式(式1)あるいは(式2)を用いて血糖値を計算する。
【0042】
この結果、生体情報測定回路10は、製造ロット毎のバイオセンサチップ1の出力に誤りを生じることない、正確な血糖値(生体情報値)を出力及び表示することとなる。
【0043】
また、EEPROM15に予め格納しておいたロット管理用データ、例えば、バイオセンサチップ1のロット番号、製造日、当該製造ロットのバイオセンサチップ1の枚数、バイオセンサ補正チップのロット番号などの情報も同時に測定器2に送信され、メモリ11内に記憶される。
【0044】
このようなロット管理用データを使用することにより、例えば、バイオセンサ補正チップと同じ製造ロットのバイオセンサチップ1が全て使用し終わったか否かが判別できる。あるいは、バイオセンサチップ1の製造日が使用期限を過ぎているか否かの判別なども可能である。
【0045】
なお、測定器2は、PCやネットワークを介してサーバ等に接続可能に構成することもできる。このように構成された測定器2を用いることにより、PCやネットワークを介して新たな製造ロットのデータを取得して、バイオセンサ補正チップ14の書き換え可能な記憶手段であるEEPROM15に記憶された検量線データ等の情報を、新たな製造ロットのデータに書き換えることも容易にできる。
【0046】
次に、本発明の実施形態によるバイオセンサチップ及びバイオセンサシステムを、図面を参照して説明する。図4はバイオセンサチップの回路図、図5はバイオセンサ補正チップの回路図、図6は測定器の入出力部の回路図、図7は測定器に挿入されたチップの判別時の電圧波形を示す図である。
【0047】
図4に示すように、バイオセンサチップ1は、接続電極3及び反応部4を有し、接続電極3は端子a〜eを有する。端子a、bは互いに接続され、さらに反応部4に接続されている。端子c、d、eはいずれも開放状態となっている。
【0048】
図5に示すように、バイオセンサ補正チップ14は、記憶手段としてのEEPROM15および接続端子16を有する。コネクタ電極6は端子a〜eを備え、これらのサイズ、数は接続端子16の端子a〜eに対応している。
【0049】
EEPROM15は、電源(Vcc)端子、シリアルクロック(SCL)端子、シリアルデータ(SDA)端子を有し、電源端子は接続電極16の端子cに接続されている。また、シリアルクロック端子はインダクタンスL1を介して接続電極16の端子b(第2の端子)に接続されている。シリアルデータ端子はインダクタンスL2を介して接続電極16の端子(第1の端子)dに接続されている。
【0050】
また、接続電極16の端子aは接地されるとともに、端子aと端子bとの間に抵抗(例えば、10kΩ)R1が接続されている。接続電極16の端子dは抵抗(例えば、10kΩ)R2を介して接地されている。なお、接続電極16の端子eは開放状態である。また、EEPROM15には電源電圧安定化用のダイオードDおよびコンデンサCが接続されている。
【0051】
図6は、測定器2における入出力部(チップ挿入検出部)の回路構成を示す。この入出力部を構成するコネクタ電極6の端子aは接地され、端子bにはシリアルクロック信号(SCL)出力、チップ検知入力TB0、抵抗R3を含むチップ検知用電圧出力P1が接続されている。
コネクタ電極6の端子cは電源Vccに接続されている。コネクタ電極6の端子dは、抵抗R4(例えば、100kΩ)を介して電源(Vcc)側に接続されるとともに、シリアルデータ信号(SDA)入力とチップ判別信号を兼ねたP3および抵抗R5を介してプルアップ信号出力P2にそれぞれ接続されている。接続電極16の端子eは測定電流を増幅するアンプAに接続されている。
【0052】
次に、測定器2におけるバイオセンサチップ1およびバイオセンサ補正チップ14の判別方法を、図7に示す回路各部のタイミングチャートに従って説明する。なお、測定器2における入出力部(チップ挿入検出部)においてチップ検知用電圧出力P1には所定の電圧(例えば、3.3V)が印加され(図7(a))、従って、チップ検知入力TB0はハイレベルの所定電位に保たれている。
【0053】
ここで、バイオセンサチップ1を測定器2の挿入部5に挿入し、測定器2の前記コネクタ電極6に、図4に示すようなバイオセンサチップ1の接続電極3を、図2に示すように接続する。これにより、各電極3、6の各端子a、bを介してチップ検知入力TB0の電位は接地電位側に引かれて、ローレベルとなる(図7(b))。これにより、測定器2のチップ判別手段12により、チップ(バイオセンサチップ1あるいはバイオセンサ補正チップ14のどちらか)が挿入されたことが検知される。
【0054】
また、接続電極3の端子c、dは開放状態であるため、抵抗R4を介して測定器2の電源Vccに接続されたチップ判別信号P3はVccと同レベルとなる。すなわち図7(e)に示すように、バイオセンサチップ1を接続した場合は、Vccがハイレベルであれば、チップ判別信号P3はハイレベルのLV1となり、チップ判別手段12により、挿入されたチップがバイオセンサチップ1であると判別される。
【0055】
一方、バイオセンサチップ1に代えてバイオセンサ補正チップ14を測定器に接続した場合には、チップ検知入力TB0が抵抗R1を介して接地された形態となり、このチップ検知入力TB0の電位は、図7(b)に示すように、ローレベルを維持する。これにより、測定器2のチップ判別手段12により、チップ(バイオセンサチップ1あるいはバイオセンサ補正チップ14のどちらか)が挿入されたことが検知される。そして、図7(c)に示すように、電源Vccからコネクタ電極6および接続電極16の各端子cを通じて、EEPROM15に動作電源が印加される。
【0056】
また、チップ判別信号P3はプルアップ抵抗R4を介して電源Vccに接続されている。チップ判別信号P3には抵抗R5を介してプルアップ信号出力P2が接続されている。従って、接続電極16をコネクタ電極6に接続した際に、それぞれの電極6、16の各端子dに接続されたプルダウン抵抗R2によって、チップ判別信号P3の電位は、図7(e)に示すように、略1/10のレベルのLV2に低下する。
【0057】
なお、上記のようにして、チップの判別がなされた後は、バイオセンサ補正チップ14と測定器2間でシリアルデータ(SDA)の送受信が行われる。測定器2からバイオセンサ補正チップ14へデータを送信する場合(送信時)は、図7(d)に示すようにP2をローレベルとして、図7(e)に示すようにP3からシリアルデータ(SDA)をバイオセンサ補正チップ14へ送信する。また、測定器2がバイオセンサ補正チップ14からのデータを受信する場合(受信時)は、図7(d)に示すようにP2をハイレベルとして、図7(e)に示すようにP3でバイオセンサ補正チップ14からのシリアルデータ(SDA)を受信する。
【0058】
以上のように、本発明の実施形態によれば、測定器2のコネクタ電極6に対し、バイオセンサチップ1側の接続電極3及びバイオセンサ補正チップ14の接続電極16のいずれを接続しても、チップ検知入力TB0の電位が下がるため、この電位を検出することで、それらの接続があったことを測定器2側で検知及び表示することができる。
さらに、測定器2のコネクタ電極6にバイオセンサチップ1側の接続電極3を接続した際には、チップ判別信号P3の電位に変化がないものの、バイオセンサ補正チップ14側の接続電極16を接続した場合には、チップ判別信号P3の電位が低下することによって、測定器2に接続されたチップの種類を判別することができる。
【0059】
なお、測定器2及びバイオセンサ補正チップ14がディジタル信号のやり取りを、IC通信方式によりSCL(シリアルクロック)とSDA(シリアルデータ)用の2本の信号線を用いることで可能になるため、これらを結ぶバイオセンサ補正チップ14側の電源用ピン及び接地用ピンを除く信号ピン数を少なく抑えることができ、合わせて高速のシリアル通信が可能になる。
【0060】
以上、詳述したように、本実施形態にかかるバイオセンサ補正チップ14及びバイオセンサシステムによれば、製造ロット毎に異なる検量線の違いによってバイオセンサチップ1で測定される血糖値を正確に測定できるバイオセンサ補正チップ14に対し、自動的にこのバイオセンサ補正チップの挿入が検知できると共に、挿入されたチップがバイオセンサチップであるかバイオセンサ補正チップであるかの判別が自動的かつ確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態に係るバイオセンサ補正チップを装着した測定器を示す回路図である。
【図2】本実施形態におけるバイオセンサチップを装着した測定器を示す回路図である。
【図3】図1に示す生体情報測定回路各部における電流、電圧のタイミングチャートである。
【図4】本実施形態におけるバイオセンサチップを示す回路図である。
【図5】本実施形態に係るバイオセンサ補正チップを示す回路図である。
【図6】本実施形態における測定器の入出力部を示す回路図である。
【図7】図6における入出力部の各部における電圧の波形図である。
【符号の説明】
【0062】
1 バイオセンサチップ
2 測定器
3 接続電極
4 反応部
5 挿入部
6 コネクタ電極
7 制御部
9 アナログ/ディジタル変換回路(ADC)
10 生体情報測定回路
11 メモリ
12 チップ判別手段
13 ディジタル/アナログ変換回路(DAC)
14 バイオセンサ補正チップ
15 EEPROM(記憶手段)
16 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセンサチップの測定を行う測定器の挿入部に挿入可能であり、前記測定器の挿入部に設けられた複数の端子を持つコネクタ電極に接続可能な複数の端子を持つディジタル信号出力用の接続電極と、
前記バイオセンサチップの製造ロット毎に異なるデータを記憶する記憶手段と、を備え、
該記憶手段から読み出した前記データを前記接続電極及びコネクタ電極を介して前記測定器に送信可能に構成され、
前記測定器の挿入部に挿入して接続電極をコネクタ電極に接続したとき、前記コネクタ電極の複数の端子のうちの第1の端子に現れる電圧レベルが前記バイオセンサチップを挿入した場合と異なることにより、前記バイオセンサチップと判別可能に構成されることを特徴とするバイオセンサ補正チップ。
【請求項2】
前記コネクタ電極の第1の端子に接続されるバイオセンサチップの接続電極の端子が開放である場合に、前記コネクタ電極の第1の端子に接続される接続電極の端子にプルダウン用の抵抗が接続されることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ補正チップ。
【請求項3】
前記コネクタ電極の第2の端子に接続されるバイオセンサチップの接続電極の端子が接地電位である場合に、前記コネクタ電極の第2の端子に接続される接続電極の端子にプルダウン用の抵抗が接続されることを特徴とする請求項1または2に記載のバイオセンサ補正チップ。
【請求項4】
前記データは検量線を補正する検量線データであり、該検量線データは検量線計算式に代入する複数の係数からなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のバイオセンサ補正チップ。
【請求項5】
前記記憶手段に、ロット管理用データが記憶されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のバイオセンサ補正チップ。
【請求項6】
前記記憶手段が、書き換え可能な不揮発性メモリであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のバイオセンサ補正チップ。
【請求項7】
前記記憶手段が、シリアルクロックとシリアルデータ用の2本の信号線を備えたICEEPROMであることを特徴とする請求項6に記載のバイオセンサ補正チップ。
【請求項8】
バイオセンサチップの測定を行う測定器の挿入部に挿入可能であり、前記測定器の挿入部に設けられた複数の端子を持つコネクタ電極に接続可能な複数の端子を持つディジタル信号出力用の接続電極と、前記バイオセンサチップの製造ロット毎に異なるデータを記憶する記憶手段と、を備えるバイオセンサ補正チップと、
前記バイオセンサ補正チップを前記挿入部に挿入して接続電極をコネクタ電極に接続したとき、前記コネクタ電極が持つ複数の端子のうちの第1の端子に現れる電圧レベルが前記バイオセンサチップを挿入した場合と異なることによりチップの種類を判別するチップ判別手段を備える測定器と、を含むことを特徴とするバイオセンサシステム。
【請求項9】
前記バイオセンサ補正チップには、前記コネクタ電極の第1の端子に接続されるバイオセンサチップの接続端子が開放である場合に、前記コネクタ電極の第1の端子に接続される接続電極の端子にプルダウン用の抵抗が接続されることを特徴とする請求項8に記載のバイオセンサシステム。
【請求項10】
前記バイオセンサ補正チップには、前記コネクタ電極の複数の端子のうちの第2の端子に接続されたバイオセンサチップの接続電極の端子が接地電位である場合に、前記コネクタ電極の第2の端子に接続される前記接続電極の端子にプルダウン用の抵抗を設けることを特徴とする請求項8または9に記載のバイオセンサシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−180545(P2009−180545A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17887(P2008−17887)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)