説明

バイオセンシング及び外科的処置のための能動的カニューレ

【課題】バイオセンシング及び外科的処置のための能動的カニューレを導くためのコンピュータで読取り可能な媒体を提供する。
【解決手段】外科用カニューレ102を導くためのソフトウェアにより符号化されたコンピュータ150で読取り可能な媒体であって、当該ソフトウェアが、所望のカニューレ経路を受け取るプログラム、所望のカニューレ経路にほぼ合致する複数の重なり合う可撓性チューブ110の構成を計算するプログラム、所望のカニューレ経路に対応する複数の中間的構成を計算するプログラム、及び複数の中間的構成に従って複数の作動器に命令するプログラムを含む、コンピュータで読取り可能な媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年11月15日出願の米国仮特許出願第60/736789号(発明の表題「ACTIVE CANNULAS FOR BIO-SENSING AND SURGICAL INTERVENTION」)及び2006年10月6日出願の同第60/849788号(発明の表題「METHOD FOR CONTROLLING SNAKE-LIKE ROBOTS FOR SURGICAL APPLICATIONS」)の優先権を主張し、これらの出願の内容全体を全ての目的のために本出願に参照文献として包含する。
【0002】
本発明の分野
本発明は概して、侵襲が最小となるような手術を行うための外科用カニューレ及びバイオセンサに関する。具体的には、本発明は、外科用器具、注入可能物、診断デバイス、及び/又はバイオセンサを複雑な軌跡を通して導くためのデバイスと方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
近年の、侵襲を最小にする外科技術(MIS)は、一般に伝統的な切開手術に起因する大規模な外傷を生じない外科的処置を可能にすることにより医学を革新した。MIS技術は、従来の切開手術技術では到達不可能だった解剖学的構造領域に医師がアクセスして処置を行うことを可能にした。更にMIS技術は、手術に伴う外傷を大きく減少させ、これにより手術に関連する合併症を減らし、術後の回復を促進させた。実現性のあるMISの代替技術無しで、人体(特に、頭部及び頸部)内部の閉じ込められたスペースにおける手術を行うには、単に手術部位への術具のアクセスを可能にするのに、健康な骨、皮膚、及び筋肉構造の大規模な切開と破壊的な解体が必要である。
関連技術によるMISツールは剛性の腹腔鏡デバイスを含み、このデバイスは、手術で器用な動きをするために体の内部及び外部の両方に大きな開放スペースを要する。開放スペースに対するこの要件は概して、多くの種類の手術において腹腔鏡デバイスの使用を妨げる。関連技術による他のMISツールは可撓性の形状記憶合金デバイスを含み、この場合デバイスの形状は、デバイスが患者の体内で案内される際に形状記憶合金に熱を加えることにより変更が可能である。このようなデバイスの1つの問題は、周囲の組織に意図せずに熱を加えてしまうことである。別の問題は、形状記憶合金の熱時定数が、加えた適切な熱が放散するのにかなりの時間(数秒に亘る)を要することである。これらの熱時定数によって生じる遅れはこのようなMISデバイスの使用を制限する。
【0004】
関連技術による他のMISツールは、一般に5〜10mmの直径を有する真っ直ぐで剛性のツールを備えた遠隔操作手術ロボットを含み、このようなロボットはワイヤ作動式又はプッシュロッド作動式の手関節を有する。このような関連技術による手術ロボットの問題は、このようなロボットが人体への進入点での転回に限定され、いったん体内に入ると湾曲した軌跡を通ったり、障害物を迂回したりする操作の器用さを持たないことである。人体の進入点に転回が限定されることより、このような手術ロボットは概して、子宮内での胎児の手術のような複雑な手術手順に適さない。胎児の手術の場合には、少なくとも2つの転回点、即ち母親の皮膚における転回点と、子宮の壁部における転回点が必要である。
頭部及び頸部に関する外科的処置は、MIS技術の出現をもってしても特に難題である。例えば、頭蓋底における病変の処置では、一般に、鼻を通してMISデバイスを内視鏡的に挿入する。関連技術によるMISデバイスは、洞内の小さな開口部を迂回して又は通って曲がる器用さに欠けるので、頭蓋底を含む種々の手術部位にMISデバイスを到達させるために、鼻甲介のような多くの健康な組織及び骨構造を除去しなければならない。鼻甲介に関し、その通常の機能は、空気を浄化すること及び嗅覚を助けることである。手術部位へのアクセスのために除去されてしまうと、その機能が回復するような方法で鼻甲介を再構築することはできない。関連技術による直線的MISデバイスを用いて到達できない手術部位の例を二つ挙げると、頚動脈の後の区域(眼底の近く)及び前頭洞で、これらの区域は鼻柱の直ぐ後に位置する骨を迂回して到達する操作を要する。
【0005】
関連技術によるMISデバイスでは器用さを欠く他の手術方法の例は、肺の手術と喉の手術である。肺手術に関しては、関連技術による気管支鏡は概して肺の内部の約三分の一にしか到達できない。現今、それよりも深い肺内部において生検組織を取る方法又は直接癌を治療する方法で危険の低い方法はない。関連技術による肺生検及び治療の更なる方法は針の挿入で、これは肺収縮を含む合併症のリスクを生じさせる。喉の手術に関しては、喉の内部深くに位置する病変は、大規模な切開なしには極めて到達困難である。大規模な切開は一般に縫合可能に行われる。喉自体が縫合の道筋であり、大規模な切開の必要性が軽減される。しかし、関連技術によるMISデバイスは、一般に11mmの直径を有する喉頭鏡を通って長距離を移動する器用さに欠ける。
従って、必要とされるのは、他の手法では到達不可能な手術部位に到達するために、解剖学的身体部分を迂回して操作できる器用さを有する手術具である。更に、必要とされるのは、組織媒体だけでなく、洞、喉、及び肺のような空洞内の自由空間を通して動かすことが可能な手術デバイスである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、関連技術の限界に起因する上記問題の一以上を回避する、バイオセンシング及び外科的処置のための能動的カニューレを提供する。
【0007】
従って、本発明の1つの利点は、一般に到達不可能な身体内部の領域への医師による到達領域を広げることである。
本発明の別の利点は、対象となる組織領域への到達過程で組織が受ける付帯的外傷を低減することである。
【0008】
本発明の更に別の利点は、本発明が新規の治療方法を可能にすることである。
本発明の更に別の利点は、治療及び診断のための針の解剖学的特徴の到達能を増大させることである。
【0009】
本発明の更に別の利点は、自由空間及び組織媒体の両方において外科用器具の操作性を向上させることである。
本発明の更に別の利点は、外科用カニューレの小型化が進むことである。
【0010】
本発明の更に別の利点は、敏感な組織の存在下で外科用器具を導く際の安全性を向上させることができることである。
上記以外の本発明の利点は以下の説明で開示され、その一部は説明から明らかになるか、又は本発明の実施により教示される。本発明の利点は、添付図面だけでなく、本明細書及び特許請求の範囲において指摘される構造によって実現され、取得される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの及びその他の利点を達成するために、本発明は外科用カニューレに関する。この外科用カニューレは、第1の予め形成された湾曲を有する第1の可撓性チューブと、第2の予め形成された湾曲を有する第2の可撓性チューブであって、第1の可撓性チューブの内部に配置される第2のチューブと、第1の可撓性チューブに結合された第1の作動器であって、第1の可撓性チューブの平行移動及び回転を制御する第1の作動器と、第2の可撓性チューブに結合された第2の作動器であって、第1の可撓性チューブの平行移動及び回転から独立して第2の可撓性チューブの回転及び平行移動を制御する第2の作動器とを備える。
【0012】
本発明の別の態様においては、上記及びその他の利点は、外科用カニューレを導くためのソフトウェアを用いて符号化されたコンピュータで読取り可能な媒体によって達成される。このソフトウェアは、所望のカニューレ経路を受け取るプログラムと、所望のカニューレ経路にほぼ合致する複数の重なり合う可撓性チューブの構成を計算するプログラムと、所望のカニューレ経路に対応する複数の中間的構成を計算するプログラムと、複数の中間的構成に従って複数の作動器に命令するプログラムとを備える。
【0013】
本発明の別の態様においては、上記及びその他の利点は、複数の重なり合う可撓性チューブを有する外科用カニューレを導く方法によって達成される。本方法は、所望の針の経路を決定するステップと、各々が予め形成された湾曲と可撓性とを有する複数の可撓性チューブを選択するステップと、結果として得られる重なり合い構成の湾曲が、所望の針経路にほぼ対応するように、複数の可撓性チューブの最終的重なり合い構成を決定するステップと、各々が所望の針経路に対応する、複数の可撓性チューブの複数の中間的重なり合い構成を決定するステップとを含む。
【0014】
上記の概要説明及び以下の詳細説明は共に、例示及び説明を目的とするものであり、請求の範囲に規定される本発明を更に説明することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示内容に含まれて本開示内容の一部を構成する、本発明を更に説明するための添付図面は、本発明の実施形態を図示し、明細書と共に本発明の原理を説明する。
【図1】本発明による能動的カニューレ及びその制御システムを示す。
【図2】A〜Cは、能動的カニューレの、それぞれ例示的外部チューブ、例示的中間チューブ及び例示的内部チューブを示し、Dは、A〜Cに示す3つのチューブを含む例示的能動的カニューレを示す。
【図3】各チューブの自由度を含め、図2Bの能動的カニューレを更に示す。
【図4】Aは、本発明による1組の2軸作動器を示し、Bは、2軸作動器の例示的機構を示す。
【図5】1組の手動作動器を示す。
【図6】能動的カニューレの制御の例示的方法を示す。
【図7】チューブを制御するための運動学的機構を示す。
【図8】ひずみとチューブの側長及び湾曲との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図示された実施形態の詳細な説明
本発明は、中に外科針を配置することができる能動的カニューレ(外科用カニューレとも称する)に関する。能動的カニューレは、蛇状外科用ロボットとも称される。能動的カニューレは、複数の同心の可撓性中空チューブを有し、各チューブは所定の可撓性と予め形成された湾曲とを有する。能動的カニューレの先端部は、可撓性チューブの各々を選択的に平行移動及び回転させることにより前進する。能動的カニューレは、各可撓性チューブの可撓性、予め形成された湾曲、角度方向、及び平行移動位置に応じて、自由空間(例えば、洞の通路又は気管支の気道内で)及び/又は異なる抵抗を有する組織内における能動的カニューレの操作を可能にする計画された複雑形状を取るように操作することができる。能動的カニューレの形状は組織媒体の抵抗による影響も受ける。この場合、組織媒体の抵抗を利用して、能動的カニューレを導くことができる。能動的カニューレは、可撓性チューブが平行移動及び回転の間に互いに対してスライドする際に可撓性チューブの各々に蓄積される弾性エネルギーによって連続的に作動することができる。
更に、同心の可撓性チューブの相互作用力を介して「内部で押し合うこと」により、自由空間内又は組織媒体内を通って導かれながら、能動的カニューレは複雑な形状を取ることができる。これは、手術針を、軟組織又は動脈壁のような解剖学的形状で有り得る組織媒体に押し付けることにより導く関連技術の方法と対照的である。
【0017】
図1は、本発明に従って能動的カニューレを制御するための例示的システム100を示す。システム100は、外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120を有する能動的カニューレ102を含む。内部可撓性チューブ120は、端部にエンドエフェクタ125を有する。システム100は更に、内部可撓性チューブ120に結合された内部駆動モジュール140、中間可撓性チューブ115に結合された中間駆動モジュール135、及び外部可撓性チューブ110に結合された外部駆動モジュール130を有する。内部駆動モジュール140、中間駆動モジュール135、及び外部駆動モジュール130は、制御コンピュータ145に接続される。
制御コンピュータ145は、制御ネットワーク接続146aを介してホストコンピュータ150に接続される。ホストコンピュータ150と制御コンピュータ145とが同じ場所に配置されている場合、制御ネットワーク接続146aはローカルエリアネットワーク(LAN)である。別の構成として、ホストコンピュータ150と制御コンピュータ145は大きく距離を隔てて配置することができ、その場合制御ネットワーク接続146aはインターネットを含むことができる。
【0018】
ホストコンピュータ150はメモリ152を有し、メモリ152は、本発明に連関するプロセスを実行するソフトウェア(以下、「本ソフトウェア」)により符号化されている。ホストコンピュータ150はユーザインタフェース155に接続される。ホストコンピュータ150は単一のコンピュータとすることができるか、又はインターネットを含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータとすることができる。メモリ152は、ハードドライブのような単一の記憶デバイスを有することも、又は複数のコンピュータに分散された多数のメモリデバイス及びデータベースを有することもできる。当業者であれば、ホストコンピュータ150、メモリ152、及びユーザインタフェース155には多くのこのようなアーキテクチャが可能であり且つ本発明の範囲に含まれることを容易に理解するであろう。
システム100は更に、医療用画像化システム160を含むことができ、この医療用画像化システム160は画像プロセッサ165を有する。画像プロセッサ165は、画像化ネットワーク接続146bを介してホストコンピュータ150に接続することができ、画像化ネットワーク接続146bは、制御ネットワーク接続146aと同じ種類のネットワーク接続とすることができる。
【0019】
図1は、患者の体170の内部に配置された能動的カニューレ102を示す。患者の体170及び能動的カニューレ102は共に、医療用画像化システム160の視野内にある。患者の体170は、能動的カニューレ102が患者に入る個所である進入点175と、外科的処置又は診断が行われる、対象となる患者内部の標的部位である手術部位180とを含む。
医療用画像化システム160は、蛍光透視、MRI、超音波等の、1以上の医療用画像化態様を含むことができる。医療用画像化システム160の特定の画像化態様は、能動的カニューレ102に用いられる材料と、能動的カニューレ102を用いる患者の体170の性質とに応じて決定することができる。医療用画像化システム160は、ホストコンピュータ150上で動くソフトウェアによる能動的カニューレ102の画像に基づくフィードバック制御を可能にするのに十分な適時性及び十分なフレーム率を有する3次元画像を提供する種類のものとすることができる。
【0020】
図2A〜図2Dは、能動的カニューレ102と、それを構成する可撓性チューブとを示す。図2Aは、例示的外部可撓性チューブ110を示す。外部可撓性チューブ110は、外部チューブ直線区分210、外部チューブ湾曲区分212、及び外部チューブ直線区分210と外部チューブ湾曲区分212との境界を画定する外部チューブ移行点211を有することができる。外部可撓性チューブ110は、中間可撓性チューブ115と内部可撓性チューブ120が外部可撓性チューブ110の内部表面内で独立して摺動することを可能にするのに十分な広さの内径を有することができる。外部可撓性チューブ110の厚さは、チューブに所望の可撓性の関数とすることができる。これについては後述で更に説明する。従って、外部可撓性チューブ110の厚さは、指定の可撓性をもたらすように調整することができる。外部可撓性チューブ110の、図示された円形の湾曲は例示的なものであり、チューブの材料、厚さ、及び能動的カニューレ102の使用目的に応じて、異なる湾曲形状が可能である。
外部可撓性チューブ110は、ニチノール等の形状記憶合金を用いて作製できるが、外科的使用に適し、例えば材料特性によって、又はチューブ壁の厚さを指定することによって予め定めることの可能な可撓性を有するものであれば、他の材料を使用することもできる。
【0021】
図2Bは、例示的な中間可撓性チューブ115を示す。中間可撓性チューブ115は、中間チューブ直線区分215、中間チューブ湾曲区分217、及び中間チューブ直線区分215と中間チューブ湾曲区分217との境界を画定する中間チューブ移行点216を有することができる。中間可撓性チューブ115は、内部可撓性チューブ120が中間可撓性チューブ115の内部表面内で独立して摺動することを可能にするのに十分な広さの内径を有することができる。中間可撓性チューブ115の厚さは、チューブに所望の可撓性の関数とすることができる。これについては後述で更に説明する。従って、中間可撓性チューブ115の厚さは、指定の可撓性をもたらすように調整することができる。中間可撓性チューブ115の、図示された湾曲は例示的なものであり、チューブの材料、厚さ、及び能動的カニューレ102の使用目的に応じて、異なる湾曲が可能である。
外部可撓性チューブ110の場合と同様に、中間可撓性チューブ115は、ニチノール等の形状記憶合金を用いて作製できるが、外科的使用に適し、例えばチューブに特定の厚さを指定することによって予め定めることの可能な可撓性を有するものであれば、他の材料を試用することもできる。更に、中間可撓性チューブ115には、能動的カニューレ102に意図された形状、厚さ、及び全体的可撓性に応じて、外部可撓性チューブ110と同じ材料を用いても用いなくてもよい。
【0022】
図2Cは、例示的な内部可撓性チューブ120を示す。内部可撓性チューブ120は、内部チューブ直線区分220、内部チューブ湾曲区分222、及び内部チューブ直線区分220と内部チューブ湾曲区分222との境界を画定する内部チューブ移行点221を有することができる。内部可撓性チューブ120は、流体等を通すためのカニューレとして機能するのに十分な広さの内径を有することができる。更に、この内径は、ワイヤ、針、弾性のプッシュロッド、又は光ファイバケーブルのようなケーブルがエンドエフェクタ125まで運ばれるのを可能にするのに十分に大きくすることができる。内部可撓性チューブ120の厚さは、チューブに所望の可撓性の関数とすることができる。これについては後述で更に説明する。従って、内部可撓性チューブ120の厚さは、指定の可撓性をもたらすように調整することができる。内部可撓性チューブ120の、図示された湾曲は例示的なものであり、チューブの材料、厚さ、能動的カニューレ102の使用目的に応じて異なる湾曲が可能である。
外部可撓性チューブ110の場合と同様に、内部可撓性チューブ120は、ニチノール等の形状記憶合金を用いて作製できるが、外科的使用に適し、例えばチューブに特定の厚さを指定することによって予め定めることの可能な可撓性を有するものであれば、他の材料を用いることもできる。更に、内部可撓性チューブ120には、外部可撓性チューブ110及び中間可撓性チューブ115と同じ材料を用いても用いなくてもよい。
【0023】
エンドエフェクタ125は、目的の外科的処置に適した多くのデバイスの1つとすることができる。例えば、エンドエフェクタ125は、熱的切除プローブ、光ファイバカメラ、放射性シード注入用先端、生検用の針等とすることができる。更に、エンドエフェクタ125は、外部での分析のための組織又は流体試料を採取するために用いることができる。また更に、エンドエフェクタ125は、関心部位内で用いられるバイオセンサとすることができる。このようなバイオセンサには、定位位置決め装置(例えば、磁気トラッカー)、分子センサ、電気的インピーダンスセンサ、無接触型機械的インピーダンスセンサ、光学的発光センサ等が含まれる。当業者であれば、エンドエフェクタ125は多数の形態及び多数の異なる機能を有することができ、それらは全て本発明の範囲内に含まれることが分かるであろう。
図2Dは、図2A〜図2Cに示される各チューブを含む能動的カニューレ102を示す。内部可撓性チューブ120は中間可撓性チューブ115内に挿入されており、内部可撓性チューブ120と中間可撓性チューブ115との組合せは外部可撓性チューブ110内に挿入されている。
【0024】
図3は、内部可撓性チューブ120、中間可撓性チューブ115、及び外部可撓性チューブ110を含む能動的カニューレ102を示す。図示のように、各可撓性チューブは2つの自由度、即ち軸方向に沿った回転軸まわりの自由度と、直線平行移動軸に沿う自由度とを有する。例えば、外部可撓性チューブ110は、外部回転自由度305及び外部平行移動自由度310を有する。外部回転自由度305及び外部平行移動自由度310は、他のチューブとは無関係に外部可撓性チューブ110に適用される。中間可撓性チューブ115は、中間回転自由度315及び中間平行移動自由度320を有し、これらの自由度は共に、他のチューブとは無関係に中間可撓性チューブ115に適用される。内部可撓性チューブ120は、内部回転自由度325及び内部平行移動自由度330を有し、これらの自由度は共に、他のチューブとは無関係に内部可撓性チューブ120に適用される。
図3に示すように、能動的カニューレ102は複数の重なり合い移行点T〜Tを有する。各重なり合い移行点T〜Tは、外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120(又はこれら3つのチューブのいずれかの部分集合)の各々がほぼ一定の湾曲度を有するか又は湾曲を欠如する領域の境界を画定する。例えば、重なり合い移行点TとTの間の領域は、外部チューブ湾曲区分212と、中間チューブ直線区分215と、内部チューブ直線区分220とを含む。重なり合い移行点Tは、中間チューブ移行点216と一致する。従って、重なり合い移行点TとTの間の領域は、外部チューブ湾曲区分212と、中間チューブ湾曲区分217と、内部チューブ直線区分220とを含む。
【0025】
重なり合い移行点T〜Tのうちの少なくとも1つによって画定された各領域は、外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120の各々の湾曲及び可撓性並びに周囲の組織媒体の抵抗の関数である湾曲を有する。中間可撓性チューブ115及び内部可撓性チューブ120のみを有する領域があることに留意されたい。この場合、その領域の湾曲は、領域内のそれら2つのチューブの湾曲の関数である。最も単純な場合には、移行点Tからエンドエフェクタ125までの領域の湾曲は、内部可撓性チューブ120の湾曲及び周囲の組織媒体の抵抗の関数である。
【0026】
図4Aは、本発明による1組の2軸作動器を示す。これらの2軸作動器は、外部可撓性チューブ110に結合された外部駆動モジュール130、中間可撓性チューブ115に結合された中間駆動モジュール135、及び内部可撓性チューブ120に結合された内部駆動モジュール140を含む。これらの駆動モジュールの各々は、それぞれの可撓性チューブを独立して駆動する。例えば、外部駆動モジュール130は、外部可撓性チューブ110を、外部回転自由度305のまわりで、且つ外部平行移動自由度310に沿って駆動する。中間駆動モジュール135は、中間可撓性チューブ115を、中間回転自由度315のまわりで、且つ中間平行移動自由度320に沿って駆動する。内部駆動モジュール140は、内部可撓性チューブ120を、内部回転自由度325のまわりで、且つ内部平行移動自由度330に沿って駆動する。
図4Bは、本発明による例示的な2軸作動器405を示す。2軸作動器405は、外部駆動モジュール130、中間駆動モジュール135、及び内部駆動モジュール140のいずれに用いてもよい。2軸作動器405は、可撓性チューブ(例として外部可撓性チューブ110を示す)に堅固に取り付けることが可能な案内ねじ棒410と、案内ねじ棒410にねじ係合するナット415と、平行移動歯車425を介してナット415に結合される直線平行移動モータ435とを含む。2軸作動器405は更に、スプロケット437を介して案内ねじ棒410に結合されるベルト駆動部440を含む。ベルト駆動部440は、回転歯車445を介して回転モータ450にも結合される。2軸作動器405はまた、制御コンピュータ145に直線平行移動位置と角度方向の信号をそれぞれ供給する平行移動及び回転エンコーダ(図示しない)を含むことができる。
【0027】
2軸作動器405は次のように動作する。直線平行移動の場合、直線平行移動モータ435が、制御コンピュータ145から、特定の平行移動距離だけその可撓性チューブを平行移動させるようにとの命令を受ける。これに応答して、直線平行移動モータ435は平行移動歯車425を回転させ、この平行移動歯車425はナット415と係合する。続いてナット415が回転して案内ねじ棒410と係合し、可撓性チューブを平行移動させる。
回転の場合、回転モータ450が、制御コンピュータ145から、特定の回転角だけその可撓性チューブを回転させるようにとの命令を受ける。これに応答して、回転モータ450は回転歯車445を回転させ、この回転歯車445はベルト駆動部440と係合する。ベルト駆動部440はスプロケット437と係合し、次にスプロケット437が案内ねじ棒410を回転させる。このような案内ねじ棒410の回転が、ナット415の存在によって案内ねじ棒410を平行移動させることに留意されたい。従って、寄生的な平行移動を防止するために、直線平行移動モータ435はナット415を反対方向に回転させることによって補償を行う。従って、可撓性チューブの純粋な回転には、回転モータ450と直線平行移動モータ435との負時の調和が必要である。
【0028】
図4Bに示すように、案内ねじ棒410は中空とすることができる。この場合、2軸作動器405が外部駆動モジュール130として用いられるならば、外部可撓性チューブ110は案内ねじ棒410に結合され、中間可撓性チューブ115及び内部可撓性チューブ120は、案内ねじ棒410の中空部分の内部で独立して平行移動及び回転を行うことができる。このようにして、外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120は、独立して平行移動及び回転を行うことができる。
【0029】
図5は、1組の手動2軸作動器505a〜505cを示す。この実施形態では、手動2軸作動器505aは、外部駆動モジュール130の代わりに外部可撓性チューブ110を駆動することができ、手動2軸作動器505bは、中間駆動モジュール135の代わりに中間可撓性チューブ115を駆動することができ、手動2軸作動器505cは、内部駆動モジュール140の代わりに内部可撓性チューブ120を駆動することができる。手動2軸作動器505a〜505cの各々は、平行移動及び回転エンコーダを有することができ、これらのエンコーダは制御コンピュータ145に直線平行移動位置及び角度方向の信号を供給する。
2軸作動器には様々な変形例が可能である。例えば、2軸作動器405は、それぞれ直線平行移動モータ435及び回転モータ450に優先して作動するノブのような手動制御器を含むことができる。更に、システム100は、モータ駆動式作動器と手動作動式との組み合わせを含むことができる。更に、2軸作動器は例示的なものである。従って、ここに示す方法以外に、可撓性チューブの各々の直線平行移動及び回転を行う他の方法が可能である。当業者であれば、本発明の範囲内で多数のこのような変形が可能であることを容易に理解するであろう。
【0030】
図6は、本発明に連関する能動的カニューレを制御するための例示的プロセス600を示す。プロセス600の全部又は一部は、メモリ152上に記憶されホストコンピュータ150及び/又は制御コンピュータ145及び/又は画像プロセッサ165上で実行されるソフトウェアによって行うことができる。プロセス600は、2つのサブプロセス、即ち経路計画(ステップ605〜625)と経路計画の実行(ステップ630〜655)に分割することができる。
ステップ605において、医療用画像化システム160は患者の体170の内部の画像を取得する。医療用画像化システム160は、進入点175及び手術部位180を含む視野を有するように構成することができる。その画像化態様(例えば、MRI、超音波等)により、医療用画像化システム160は、画像の各画素又は3D画素が画像座標フレームに登録されている患者の体の三次元画像を取得することができる。画像プロセッサ165は、画像、並びに画像登録情報を、画像化ネットワーク接続146bを介してホストコンピュータ150に供給することができる。
【0031】
ステップ610では、医師が進入点175から手術部位180までの所望の経路を決定する。その際、医師は、能動的カニューレ102が通る経路を、経路の周りの誤境界と共に特定することができる。手術部位180の位置及び介入する組織又は器官の存在に応じて、経路は種々の誤境界を有する複雑な経路となり得る。
医師は、経路及びその誤境界を画定するためのユーザインタフェース155を用いることができる。その際、医師は、ステップ605において取得された登録画像内部の点にタグをつけるためにカーソルを用いることができる。ソフトウェアは、登録画像中のこれら選択された点の位置を特定し、これらの位置をメモリ152に記憶する。
【0032】
ステップ615では、ソフトウェアは、ステップ610において選択された経路を達成する能動的カニューレ102の最終構成を計算する。その際、ソフトウェアは、外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120の各々の平行移動位置及び回転方向を決定することができ、これによって能動的カニューレ102が経路に適合される。
経路に適合した最終構成を計算するため、ソフトウェアは、重なり合い移行点T〜Tによって画定される一組の領域に能動的カニューレ102を分割する。その際、ソフトウェアは、外部可撓性チューブ110及び中間可撓性チューブ115の各々について、平行移動位置と回転方向位置との最初の組を選択することができる。重なり合い移行点T〜Tの位置は、3つの可撓性チューブの重なり合いに依存する。次いで、重なり合い移行点T〜Tにより画定された各領域について、ソフトウェアが、次の関係式により、その領域における瞬時的平衡曲線(x及びy成分)を計算する。


ここで、nは可撓性チューブの数(本実施例ではn=3)であり、κはその領域内でのi番目の可撓性チューブの瞬時的湾曲であり、Eは当該i番目の可撓性チューブの材料の弾性係数(ヤング係数)であり、Iはi番目の可撓性チューブの横断面慣性モーメントであり、θは作動器の方向で最も近い重なり合い移行点Tにおけるi番目の可撓性チューブの角度方向であり、φは、組み合わされた可撓性チューブの個別の角度方向が既知である場合のこれら組み合わせの平衡角であり、φは当該領域の底部において決定される。言い換えれば、例えば、重なり合い移行点TとTによって画定された領域のφは、Tにおける平衡角に関係する。
【0033】
これらの項のうち、κ、E、及びIは既知である。残りの項は、(1)作動器と第1の移行点の間の直線区分における捩れエネルギーと、能動的カニューレ内に蓄積された曲げエネルギー(可撓性チューブの方位の関数として)とを計算することによって、及び(2)最小エネルギーを与える形状を解くことによって導かれる。その際、ソフトウェアは、外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120のそれぞれの直線区分210、215、及び220に蓄積された捩れエネルギーを計算し、且つ外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120のそれぞれの湾曲区分212、217、及び222に蓄積された曲げエネルギーを計算する。ソフトウェアは、次の関係式により組み合わされた蓄積エネルギーを計算することによってこれを行う。


ここで、αは、内部駆動モジュール140、中間駆動モジュール135、及び外部駆動モジュール130に入力される角度であり、θi,jはj番目の移行点Tにおけるi番目の可撓性チューブの角度であり、φ,φ,・・・φは、重なり合い移行点Tの間のm個の重なり合い領域の各々の平衡平面であり、q=(θ1,1,θ1,2,・・・θ1,n,φ,φ,・・・φ)である。E(q)の最小値を解くことで、移行点Tにおける回転方向θ1,1,θ1,2,・・・θ1,n、及び移行点T間の各重なり領域の平衡平面φ,φ,・・・φが得られる。これらの値はまた、能動的カニューレ102の移行点T間の各重なり領域における湾曲を計算するために、上記等式のκ及びκに用いることができる。
図7は、可撓性チューブを制御するための運動フレームを示す。図示のように、φは重なり合い移行点Tにおける可撓性チューブ710の平衡角を示し、αは2軸作動器405の回転モータによって伝達される入力回転角を示す。
【0034】
ステップ615では更に、ソフトウェアにより、外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120のチューブ目録から複数の異なるチューブを選択することができる。この場合、複数の各種可撓性チューブが利用可能であり、それらの特性(直線区分の長さ、湾曲区分の長さ、湾曲区分の曲率半径、可撓性等)をメモリ152に記憶することができる。従って、ソフトウェアは、毎回異なるチューブを用いて上記のステップ610において蒸気計算を反復することができる。このようにして、ソフトウェアが2つのこと、即ち、第1に、医師によって決定された経路を能動的カニューレ102によって複製可能か、第2に、どのようなチューブの組合せがそのような経路を達成するかを決定することができる。更に、上記の関係は、3つの可撓性チューブに限られない。従って、ソフトウェアは、医師によって決定された経路を達成するために、使用する可撓性チューブの数を含め、チューブの種々の組み合わせを選択することができる。当業者であれば、4以上の可撓性チューブについて上記の関係式を実施する方法が分かるであろう。
ステップ620では、ソフトウェアは、ステップ615において計算された最終構成を徐々に達成でき、医師によって決定された経路及び誤境界以外に位置することのない能動的カニューレ102の複数の構成を計算する。その際、ソフトウェアは、一連の中間構成を計算し、各中間構成を達成する一組の直線平行移動及び回転を計算することができる。ソフトウェアは、計算された各中間構成を次に計算される中間構成の初期構成としながら、上記ステップ615において行われた計算とほぼ同様の計算を反復的に行うことができる。
【0035】
ステップ620では更に、各中間構成を連続的に達成するために、ソフトウェアは、外部駆動モジュール130、中間駆動モジュール135、及び内部駆動モジュール140の各々の、一連の回転モータ450への回転命令及び直線平行移動モータ435への直線平行移動命令を計算することができる。
ステップ625では、ソフトウェアは、ステップ615及びステップ620においてそれぞれ計算された能動的カニューレの最終及び中間構成を、医療用画像化システム160の座標フレームに登録する。その際、ソフトウェアは、ステップ605において取得された登録画像に、ステップ610において医師が経路を指定したものを取り出し、能動的カニューレ102の最終及び中間構成を登録することができる。この結果、1の中間構成につき1の曲線と最終構成の1の曲線とからなる一組の曲線が得られ、各組の湾曲は重なり合い移行点T〜Tの間の能動的カニューレ102の領域に対応する。ソフトウェアはこれを、能動的カニューレの起点(画像スペースに登録されている)から開始して、進入点175を通り、手術部位180で(又は中間構成における能動的カニューレ102のエンドエフェクタ125において)で終結することによって行うことができる。ソフトウェアはこれらの湾曲の組をメモリ152に格納する。
【0036】
これによりプロセス600の例示的経路計画サブプロセスが完了する。このような経路計画のサブプロセスは、手術室において手術の直前に行われる。或いは、経路計画サブプロセスは術前に、手術室とは異なる設定において行ってもよい。後者の場合、経路計画サブプロセスと実行サブプロセスとの間に患者が動いてしまっているために、ステップ605において取得された画像は古いかもしれない。この場合、実行サブプロセスの準備段階として医療用画像化システム160により新たな登録画像を取得する必要があり、新たに取得された画像を、ステップ625において計算された能動的カニューレ102の登録された構成(湾曲)を有する以前の登録画像に加えて登録する必要がある。ロボット的経路計画に関する更なる情報について、Planning Algorithms, Steven M. La Valle, Cambridge University Press (2006), (ISBN-10:0521862051 | ISBN-13:9780521862059)を参照することができ、この文献の内容全体をここに引用文献として包含する。
【0037】
実行サブプロセスの開始時点では、患者の手術の準備が整い、図1に示すように、患者の体170が医療用画像化システム160の視野内に置かれる。能動的カニューレ102を進入点175の近傍に配置し、外部駆動モジュール130、中間駆動モジュール135、及び内部駆動モジュール140を能動的カニューレ102に接続する。制御コンピュータ145をこれら3つの駆動モジュール130、135、及び140に接続し、制御ネットワーク接続146aを介して制御コンピュータ145とホストコンピュータ150との通信を確立する。
実行サブプロセスの第1のステップであるステップ630において、医師は(ユーザインタフェース155を介して)ソフトウェアに対し、ステップ620(経路計画サブプロセス)で計算された第1の中間構成へ能動的カニューレ102を動かすように命令する。その際、ホストコンピュータ150及び/又は制御コンピュータ145上で実行されるソフトウェアは、ステップ620で計算された第1の中間構成を達成するように外部駆動モジュール130、中間駆動モジュール135、及び内部駆動モジュール140の各々の平行移動モータ435及び回転モータ450に対し、適切に命令する。
【0038】
ステップ635では、医療用画像化システム160が、患者の体170内の能動的カニューレ102の画像を取得する。その際、画像プロセッサ165は、画像座標フレーム内で能動的カニューレ102をセグメント化して登録することができる。画像プロセッサ165は、既知の1以上のセグメント化アルゴリズムを利用することができる。画像プロセッサ165は、画像化ネットワーク接続146bを介してホストコンピュータ150に登録情報及び画像を送信することができる。ソフトウェアは、患者の体170の内部の能動的カニューレ102の登録情報及び画像を受信し、ユーザインタフェース155を介してこの情報及び画像を医師に提供することができる。
ステップ640では、ソフトウェアは、能動的カニューレ102の登録画像を、ステップ620で計算された中間構成と比較する。その際、ソフトウェアは、2つの画像を比較するための多数の画像処理アルゴリズムのうちの1以上を利用することができる。更に、ソフトウェアは、セグメント化されて登録された能動的カニューレ102の座標を、所与の中間構成の計算された座標と比較し、この比較に基づいて経路誤り又は微分変位を計算することができる。
【0039】
ステップ645において、ソフトウェアは、セグメント化されて登録された能動的カニューレ102と所与の中間構成の間に不一致があるかどうかを決定する。不一致がない場合、プロセス600は「いいえ」の分岐を通ってステップ645からステップ655に進む。
ステップ655では、ソフトウェアは、所与の中間構成がステップ615において計算された最終構成であるかどうかを決定する。そうである場合、プロセス600はステップ655から「はい」の分岐を通って進み、終了する。最終構成でない場合、プロセス600はステップ655の「いいえ」の分岐を通って進み、次の中間構成(又は最終構成)についてステップ630〜645を繰り返す。
【0040】
ステップ645において、セグメント化されて登録された能動的カニューレ102と所与の中間構成の間に不一致がある場合、プロセス600はステップ645から「はい」の分岐を通ってステップ650に進む。
ステップ650では、ソフトウェアにより、ステップ630において能動的カニューレ102が患者の体170を通して押し込まれた際に能動的カニューレ102に加わる力及びトルクを計算する。ソフトウェアは、次の関係式によってこの力及びトルクを計算することができる。


ここで、fx,y,zは2つの重なり合い移行点T及びTi+1の間の所与の領域において組織媒体によって能動的カニューレ102上に伝達される力の成分であり、τx,y,zは、同じ領域において組織媒体によって能動的カニューレ102上に伝達されるトルクであり、dispx,y,zは、ステップ640において計算された能動的カニューレ102の微分変位の平行移動成分であり、rotx,y,zは、ステップ640において計算された能動的カニューレ102の微分変位の回転成分であり、Kはコンプライアンス行列である。この行列は、2つの重なり合い移行点TとTi+1の間の所与の領域の能動的カニューレ102の力とトルクのコンプライアンスに対応する6X6行列である。
【0041】
コンプライアンス行列Kは、能動的カニューレ102を、既知の抵抗特性を有する1以上の擬似環境において平行移動及び回転させる較正過程において予め決定することができる。加えて、コンプライアンス行列Kが既知であれば、能動的カニューレ102は力センサとして使用できる。この場合、医師は、エンドエフェクタ125が対象の組織領域に接触するように能動的カニューレの経路を(例示的プロセス600の全部又は一部を用いて)計画することができる。エンドエフェクタ125が対象の組織領域に接触した後では、ステップ650において計算された値fx,y,z及びτx,y,zは、それぞれ対象の組織領域によってエンドエフェクタ125上に伝達される力及びトルクに対応する。従って、能動的カニューレ102は力センサとして用いることができる。
【0042】
図8は、ひずみが可撓性チューブの側長にどのように関係するかを示す。この可撓性チューブは、外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120のいずれでもよい。ステップ615及びステップ620で最終及び中間構成を計算する際に、ソフトウェアは、可撓性チューブに塑性変形を生じさせない範囲の限界となる最大湾曲度又は最小半径を決定することができる。塑性変形とは、材料がもはや本来の形状に復帰しなくなる形状記憶材料の曲げ度合いを指す。これは、可撓性チューブの許容湾曲の限度に対応する。ソフトウェアは、次の関係式により最大湾曲度を計算することができる。


ここで、dは可撓性チューブの直径であり、εは可撓性チューブの材料の、復元可能な最大ひずみである。ニチノールのεは、0.08〜0.1である。上記の関係式から推測できるように、可撓性チューブが細いほど最大湾曲度は大きく(又は最小曲率半径が小さく)なる。従って、ステップ610で医師により決定された経路によっては、チューブは細い方が望ましい。ソフトウェアは、ステップ610において決定された経路に応じて医師が可撓性チューブの好ましい太さを選択するのを援助する。
能動的カニューレ102、システム100、及びプロセス600の変形例が可能であり、且つ本発明の範囲に含まれる。例えば、能動的カニューレ102内の可撓性チューブの一部又は全部は、ほぼ同じ度合いの可撓性を有してもよく、又は異なる度合いの可撓性を有してもよい。可撓性チューブのすべてが同様の可撓性を有する場合、能動的カニューレ102の動きは機敏となり、複雑な経路内を容易に導くことができる。別の構成では、外部可撓性チューブ110を中間可撓性チューブ115より堅くし、中間可撓性チューブ115を内部可撓性チューブ120より堅くすることができる。この場合、能動的カニューレ102の機敏さは前記実施例(全ての可撓性チューブが同じ可撓性を有する)より低下する。しかしながら、後者の場合、能動的カニューレ102の経路は計算し易く、例えば図5に示した手動2軸作動器505を用いることにより、手動操作能が向上する。
【0043】
別の変形例では、任意の可撓性チューブの内部形状及び/又は外部形状を非円形とすることができる。可撓性チューブの横断面をこのように変形させることで、曲げ角度の関数として異なる可撓性が得られる。更に、可撓性チューブの形状を長さに沿って変えることができ、よって異なる形状を有する各領域は異なる横断面形状を有する。
能動的カニューレ102内の任意の可撓性チューブは、1の湾曲区分のみ又は1の直線区分のみを有してもよい。更に、任意の可撓性チューブは、各々が異なる湾曲度合い(湾曲のない場合を含む)を備える複数のセグメントを有することができる。これにより、能動的カニューレ102は更に複雑な形状を取ることが可能になる。例えば、任意の可撓性チューブは、一連の3次元湾曲と直線領域とを有することができる。また、任意の可撓性チューブは、らせん形状、楕円形状、放物線形状、3次元での可変湾曲等の複雑な形状を持つセグメントを有することができる。これらの場合のいずれにおいても、特定の可撓性チューブの曲率半径の変化を表わす複数の移行点(内部チューブ移行点221、中間チューブ移行点216、及び外部チューブ移行点211等)を画定することができる。従って、ステップ615及びステップ620におけるカニューレの最終及び中間構成の計算の一部において、重なり合い領域を画定するために、湾曲の個別の段階をセグメント化することができる。
【0044】
別の変更例では、1以上の可撓性チューブの剛性を、可撓性チューブが曲げられる方向に沿って可変に設計することができる。例えば、1以上の可撓性チューブは、可撓性チューブの内部又は外部表面上に切り込み又は溝を有することができる。
別の変更例では、1以上の可撓性チューブは基準となる指標を有することができ、これらの基準はチューブ材料に埋め込むことができ、医療用画像化システム160に可視となるように設計することができる。例えば、医療用画像化システム160が光学カメラである場合、埋め込まれる基準は、色付きの縞、又は明色と暗色の縞の形態を取ることができる。更に、医療用画像化システムがCアーム透視装置である場合、埋め込まれる基準は、チューブ材料に植え込まれたワイヤ構造を含むことができる。当業者であれば、多数のこのような変形が可能であり且つ本発明の範囲に含まれることを理解するであろう。
【0045】
上記の可撓性チューブのいずれかにニチノールが用いられる場合、システム100は1以上の加熱エレメントを含むことができ、これらの加熱エレメントは、可撓性チューブ110、115、及び120のうちの1以上に沿って配置することができる。この変形例によれば、所与の可撓性チューブの形状を変化させるために熱を加えることが可能である。当業者であれば、能動的カニューレ102及びシステム100内に加熱エレメントを組み込む方法、及びこのような変形が本発明に含まれることを理解するであろう。
上述の肺及び咽頭の手術に加えて、本発明は、能動的カニューレ102及びシステム100により付与される器用さが有利となる他の手術法にも使用できる。このような手術法には高周波切除が含まれる。高周波切除においては、手術部位に電極が置かれ、電極の周囲の組織を加熱するために、無痛高周波エネルギーが伝達される。この手術法は、肝臓、腎臓、及び肺の腫瘍の治療の一部として細胞を殺すために用いられる。能動的カニューレ102及びシステム100は、電極を配置するのに用いることができる。
【0046】
別の可能な外科的用途には、網膜の後側での外科的処置が含まれる。1のこのような外科的処置には、失明の主な原因の1つである凝血を治療するための網膜のカニューレ挿入が含まれる。
別の可能な外科的適用途には経胃手術が含まれ、この場合、口から術具を胃に挿入し、胃から腹腔に出す。能動的カニューレ102の、器用さ、並びに自由空間及び組織内を導き易い性質は、経胃手術を可能にすることができる。
【0047】
別の変形例では、システム100は第2の能動的カニューレ102を有することができ、これには制御コンピュータ145に接続された第2の組の内部、中間、及び外部駆動モジュールが含まれる。この変形例では、これら2つの能動的カニューレを並行ロボットとして用いることができ(「スチュアートプラットフォーム」は並行ロボットの種類の一例であるが、多数の変形例が当分野で既知である)、この場合、2つの能動的カニューレの内部可撓性チューブの先端が単一のエンドエフェクタ125に結合される。これにより、システムが、エンドエフェクタの位置及び方位を制御すること、並びに位置及び方位の固さを制御することが可能になる。2つの能動的カニューレを有するシステム100の変形例の別の適用例では、これら2つの能動的カニューレを患者の体170の内部に配置して、柔組織を手術部位から離して保持し、手術部位を露出させるための反応器として用いることができる。
上記の説明は本発明の外科的用途に関するが、当業者であれば、自由空間を伴う複雑な経路を通してデバイスを導く必要がある他の用途に使用できることを理解するであろう。他の用途には、製造及び微細組立、遠隔構造検査、兵器の信管除去、崩壊した構造物内部での捜索及び救出等が含まれる。
【0048】
当業者には、本発明の精神又は範囲から離脱することなく、本発明に種々の改変及び変形が可能であることは明らかである。従って、請求の範囲及び本発明の均等物に含まれる限り、本発明はそれらの改変及び変形を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の予め形成された湾曲を有する第1の可撓性チューブ、
第2の予め形成された湾曲を有する第2の可撓性チューブであって、第1の可撓性チューブの内部に配置される第2の可撓性チューブ、
第1の可撓性チューブに結合された第1の作動器であって、第1の可撓性チューブの平行移動及び回転を制御する第1の作動器、及び
第2の可撓性チューブに結合された第2の作動器であって、第2の可撓性チューブの回転及び平行移動を、第1の可撓性チューブの平行移動及び回転とは関係なく制御する第2の作動器
を備える外科用カニューレ。
【請求項2】
第1の可撓性チューブが第2の可撓性チューブよりも堅い、請求項1に記載の外科用カニューレ。
【請求項3】
第1の可撓性チューブが第1の剛性を有し、第2の可撓性チューブが第2の剛性を有し、第1の剛性と第2の剛性がほぼ等しい、請求項1に記載の外科用カニューレ。
【請求項4】
第1の可撓性チューブがニチノールを含む、請求項1に記載の外科用カニューレ。
【請求項5】
第1の可撓性チューブが直線部分を有する、請求項1に記載の外科用カニューレ。
【請求項6】
第1の可撓性チューブが複雑な形状を有する領域を含む、請求項1に記載の外科用カニューレ。
【請求項7】
第1の可撓性チューブが、それぞれ厚さの異なる複数の領域を含む、請求項1に記載の外科用カニューレ。
【請求項8】
第2の可撓性チューブがニチノールを含む、請求項1に記載の外科用カニューレ。
【請求項9】
第2の可撓性チューブが直線部分を有する、請求項1に記載の外科用カニューレ。
【請求項10】
第2の可撓性チューブが複雑な形状を有する領域を含む、請求項1に記載の外科用カニューレ。
【請求項11】
第2の可撓性チューブが、それぞれ厚さの異なる複数の領域を含む、請求項1に記載の外科用カニューレ。
【請求項12】
更に、第1の作動器と第2の作動器とに接続されたコンピュータを含み、このコンピュータが、第1の可撓性チューブの直線部分の位置、第1の可撓性チューブの角度方向、第1の予め形成された湾曲、第2の可撓性チューブの直線部分の位置、第2の可撓性チューブの角度方向、第2の予め形成された湾曲、及び第1の可撓性チューブと第2の可撓性チューブの重なり合いに基づいて外科用カニューレの形状を決定するプログラムにより符号化された、コンピュータで読取り可能な媒体を備える、請求項1に記載の外科用カニューレ。
【請求項13】
第3の予め形成された湾曲を有する第3の可撓性チューブであって、第2の可撓性チューブの内部に配置される第3の可撓性チューブ、及び
第3の可撓性チューブに結合された第3の作動器
を更に備える、請求項1に記載の外科用カニューレ。
【請求項14】
更に、第1の作動器、第2の作動器、及び第3の作動器に接続されたコンピュータを備え、このコンピュータが、第1の可撓性チューブの直線部分の位置、第1の可撓性チューブの角度方向、第1の予め形成された湾曲、第2の可撓性チューブの直線部分の位置、第2の可撓性チューブの角度方向、第2の予め形成された湾曲、第3の可撓性チューブの直線部分の位置、第3の可撓性チューブの角度方向、第3の予め形成された湾曲、第1の可撓性チューブと第2の可撓性チューブと第3の可撓性チューブとの重なり合いに基づいて外科用カニューレの形状を決定するプログラムにより符号化された、コンピュータで読取り可能な媒体を備える、請求項13に記載の外科用カニューレ。
【請求項15】
外科用カニューレを導くためのソフトウェアにより符号化されたコンピュータで読取り可能な媒体であって、当該ソフトウェアが、
所望のカニューレ経路を受け取るプログラム、
所望のカニューレ経路にほぼ合致する複数の重なり合う可撓性チューブの構成を計算するプログラム、
所望のカニューレ経路に対応する複数の中間的構成を計算するプログラム、及び
複数の中間的構成に従って複数の作動器に命令するプログラム
を含む、コンピュータで読取り可能な媒体。
【請求項16】
ソフトウェアが更に、
カニューレの画像を取得するプログラム、
画像内のカニューレの位置を登録するプログラム、及び
カニューレの位置を所望のカニューレ経路と比較するプログラム
を含む、請求項15に記載のコンピュータで読み取り可能な媒体。
【請求項17】
ソフトウェアが更に、カニューレに加わる力及びトルクを計算するプログラムを含む、請求項16に記載のコンピュータで読取り可能な媒体。
【請求項18】
複数の重なり合う可撓性チューブの構成を計算するプログラムが、
複数の重なり合う領域を特定するプログラム、及び
重なり合う領域の各々の内部の、複数の重なり合う可撓性チューブの各々の予め形成された湾曲と、重なり合う可撓性チューブの各々の可撓性とに基づいて、複数の重なり合う領域の各々の湾曲を計算するプログラム
を含む、請求項15に記載のコンピュータで読取り可能な媒体。
【請求項19】
複数の重なり合う可撓性チューブを有する外科用カニューレを導く方法であって、
所望のカニューレ経路を決定するステップ、
各々が予め定め形成された湾曲と可撓性とを有する、複数の可撓性チューブを選択するステップ、
結果として得られる重なり合い構成の湾曲が所望のカニューレ経路にほぼ対応するように、複数の可撓性チューブの最終的な重なり合い構成を決定するステップ、及び
各々が所望のカニューレ経路に対応する、複数の可撓性チューブの複数の中間的重なり合い構成を決定するステップ
を含む方法。
【請求項20】
最終的な重なり合い構成を決定するステップが、複数の重なり合う可撓性チューブの各々の平行移動及び回転を決定するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
複数の中間的重なり合い構成の各々に従って、複数の可撓性チューブの各々を平行移動及び回転させるステップを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
最終的な重なり合い構成を決定するステップが、
複数の重なり合う可撓性チューブの各々に対応する平行移動及び回転の最初の組を選択するステップ、
平行移動及び回転の最初の組に対応する複数の重なり合う領域を特定するステップ、及び
複数の重なり合う領域の各々に対応する瞬間的湾曲を計算するステップ
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
複数の重なり合う領域の各々に対応する瞬間的湾曲を計算するステップが、
外科用カニューレの直線区分に対応する捩れエネルギーを計算するステップ、
外科用カニューレに対応する曲げエネルギーを計算するステップ、及び
最小の捩れエネルギーと最小の曲げエネルギーとに対応する外科用カニューレの形状を求めるステップ
を含む、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−228523(P2012−228523A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−139088(P2012−139088)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【分割の表示】特願2008−541319(P2008−541319)の分割
【原出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(398076227)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー (35)