説明

バイオベース繊維および糸

本明細書において、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーまたはバイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと相溶性の80重量%以下の少なくとも1つの他のポリマーとのブレンドから形成された複数の連続フィラメントを含む多成分繊維集合体を開示する。ポリヘキサメチレンセバカミドポリマーまたはバイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと相溶性の80重量%以下の少なくとも1つの他のポリマーとのブレンドを含むポリマーメルトを溶融紡糸して少なくとも1つのフィラメントを形成する工程と、少なくとも1つのフィラメントを延伸段階に移して延伸段階でフィラメントを延伸し、延長して糸を製造し、続いて糸をテクスチャード加工する工程を含む、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミド嵩高加工連続フィラメント(BCF)糸の調製方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオベース繊維およびバイオベース繊維から形成した嵩高加工連続フィラメント糸に関する。
【背景技術】
【0002】
利用可能で到達可能な石油化学資源の枯渇するにつれて、再生可能資源に由来する化学物質を利用する材料の開発に対するニーズが増大している。特に、ポリアミドから調製されるという利点があるが、再生可能資源に由来する原料を少なくとも部分的に利用して製造される糸および布地を提供することに社会的ニーズがある。
【0003】
本明細書において、バイオベース繊維は、1種のポリマーまたは2種以上のポリマーのブレンドもしくはアロイを含む繊維であって、ポリマーの1種または複数がその高分子を構成する成分の少なくとも1つとして、全体としてまたは部分的に生物学的な再生可能資源に究極的には由来する物質を含むものと定義する。このような資源は、たとえば、植物または根、茎、葉、花もしくは種子等の前記植物の部分であってもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーまたはバイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと相溶性の80重量%以下の少なくとも1つの他のポリマーとのブレンドから形成された連続フィラメントまたは複数の連続フィラメントが提供される。
【0005】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の複数の連続フィラメントを含む嵩高加工連続フィラメント糸が提供される。
【0006】
本発明の第3の態様によれば、ポリヘキサメチレンセバカミドポリマーまたはバイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと相溶性の80重量%以下の少なくとも1つの他のポリマーとのブレンドを含むポリマーメルトを溶融紡糸して少なくとも1つのフィラメントを形成する工程と、少なくとも1つのフィラメントを延伸段階に移して延伸段階で少なくとも1つのフィラメントを延伸し、延長して部分的に配向したフィラメントまたは糸を製造し、続いて該部分配向フィラメントまたは糸をテクスチャード加工して嵩高加工連続フィラメント糸を生成する工程を含む、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミド嵩高加工連続フィラメント(BCF)糸の調製方法が提供される。
【0007】
本発明の第4の態様によれば、第3の態様の方法によって調製されたバイオベースポリヘキサメチレンセバカミド嵩高加工連続フィラメント糸が提供される。
【0008】
定義
以下は、本発明の説明の理解に役立つことができるいくつかの定義である。これらは一般的な定義として意図されており、本発明の範囲をそれらの用語のみに限定するものでは決してなく、以下の説明をより良く理解するために記載するものである。
【0009】
文脈から他のことが要求されない限り、また特に逆のことが述べられない限り、本明細書において単数の整数、工程または要素として記載する本発明の整数、工程、または要素は、記載した整数、工程または要素の単数形および複数形の両方を明らかに包含する。
【0010】
本明細書を通して、文脈から他のことが要求されない限り、「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」等の変形は、記載した工程もしくは要素もしくは整数、または工程もしくは要素もしくは整数の群を包含することを意味するが、いかなる他の工程もしくは要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群をも除外することを意味していないことが理解されよう。したがって、本明細書の文脈においては、「含む(comprising)」という用語は「主として含むが、必ずしもそれだけではない」ことを意味する。
【0011】
本明細書において提示される情報および引用される参照文献は、読者の理解を助けるためにのみ提示し、参照文献または情報のいずれもが本発明の先行技術であることの承認を構成するものではない。
【0012】
「フィラメント」(単数または複数)という用語は、極端なまたは不確定の長さを有するストランドを意味する。
【0013】
「糸」という用語は、絡合され、撚り合わされもしくは引き揃えられていてもよく、またはそうでなくてもよい多数のフィラメントの集合体を意味する。
【0014】
「テクスチャード加工」という用語は、カバー、弾性、嵩を増大させるか、または異なった表面テクスチャーもしくは風合いを提供するために、フィラメントを捲縮、ループ化もしくは他の方法で改質する、フィラメントの任意の操作を意味する。「嵩高加工連続フィラメント」は、1つまたは複数の「テクスチャード加工」操作が行なわれたフィラメントであるということになる。
【0015】
「バイオベース」は、該当材料が生物に由来する物質から作られたものであることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーまたはバイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと相溶性の80重量%以下の少なくとも1つの他のポリマーとのブレンドから形成された連続フィラメントまたは複数の連続フィラメントを提供する。本発明はまた、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーまたはそのブレンドもしくはアロイの連続フィラメントまたは複数の連続フィラメントから形成された複数の連続フィラメントを含む嵩高加工連続フィラメント糸を提供する。
【0017】
これに関し、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーは適切にはBASFから入手可能なUltramid Balance 6,10である。この材料は、それ自体Ricinus Communisの種子から得られる再生可能資源であるひまし油からに由来する60%を超のセバシン酸をベースとするポリアミド6,10である。好ましくは、ポリマーは63%がバイオベースである。一実施形態において、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーは、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと相溶性の80重量%以下の少なくとも1つのポリマーとブレンドする。バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーとブレンドするのに適切なポリマーとしては、これだけに限らないが、ナイロン6,6またはナイロン6,12が挙げられる。
【0018】
ポリヘキサメチレンセバカミドポリマーまたはバイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと相溶性の80重量%以下の少なくとも1つの他のポリマーとのブレンドを含むポリマーメルトを溶融紡糸して少なくとも1つのフィラメントを形成する工程と、少なくとも1つのフィラメントを延伸段階に移して延伸段階でフィラメントを延伸し、延長して、続いてテクスチャード加工する工程を含む、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドの嵩高加工連続フィラメント(BCF)糸の調製方法も提供する。
【0019】
一実施形態において、前記方法は連続的に実施する。別の実施形態において、前記方法は独立した逐次的操作として実施する。
【0020】
適切には、ポリマーメルトには紡糸前に着色剤が分散されていてもよく、着色剤は少なくとも1種の顔料および/またはポリマー可溶性色素から選択される。別法として、得られた紡糸フィラメント、延伸フィラメントまたは嵩高加工連続糸を染色してもよい。少なくとも1種の分散着色剤は任意の適切な顔料であってもよく、有機および/または無機の種類から選択できる。一実施形態において、顔料は、キナクリドンマゼンタPR202、ペリレンレッドPR178、酸化鉄レッドPR101、亜鉛鉄イエローPY119、ニッケルアゾイエローPY150、フタロシアニングリーンPG7、フタロシアニンブルーPB15:1、二酸化チタンPW6およびカーボンブラックPBlk7の中から選択される少なくとも1種の顔料である。着色剤の添加範囲は典型的には、それ以下では外観または耐光性が適切でない機能的最小値、または色飽和に達する機能的最大値によって限定される。上述の無機および有機着色剤の各々によって異なるが、典型的な最小値0.05重量%および典型的な最大値2.5重量%が見られる。
【0021】
適切には、ポリマーメルトは少なくとも1種の安定剤を含む。これに関し、安定剤は任意の適切な安定剤であってもよい。一実施形態において、安定剤はヨウ化第一銅、ヨウ化カリウムおよび臭化カリウムまたは他の適切な安定剤の混合物である。他の適切な安定剤には、ベンゾトリアゾールまたはヒンダードアミンファミリーの構成員が含まれる。一実施形態において、第一銅カチオンを10〜100ppmの範囲で含んでいてもよい。別の実施形態において、ハロゲン化物アニオンを100〜5000ppmの範囲で含んでいてもよい。別の実施形態において、ベンザトリアゾールまたはヒンダードアミンを0.1〜2.0重量%の範囲で含んでいてよい。
【0022】
ポリマーメルトに添加できる他の任意選択の添加剤には、これだけに限らないが、1種または複数の帯電防止剤、抗酸化剤、抗菌剤、防炎剤、艶消し剤、および潤滑剤が含まれる。
【0023】
任意のまたは全ての上記の着色剤、安定剤および添加剤は、直接計量によってポリマーメルトに組み込んでもよい。任意のまたは全ての上記の着色剤、安定剤および添加剤は、マスターバッチの形態でポリマーメルトに組み込んでもよい。マスターバッチという用語は当業者にはよく知られている。マスターバッチに用いられるキャリア樹脂は好ましくは、連続フィラメントを形成するものと同じポリマーであるが、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドと完全に混和性の任意の繊維形成性ポリマーであってもよい。機能改質ポリエステルならびにNylon 6,6およびNylon 6,12等の機能改質もしくは未改質ポリアミド等の樹脂もキャリア樹脂として用いてもよい。適切には、着色剤および/または安定剤および/または添加剤は、適切に分散するように、キャリア中に配合する。着色剤および/または安定剤および/または添加剤ならびに調製されたマスターバッチは、適切には水分含量0.2重量%未満まで乾燥する。
【0024】
前記方法の速度および温度は適切には、形成される繊維の物理的性質を最適化し、かつ処理量の経済性を最大化するように選択する。
【0025】
適切には、ポリマーメルトの紡糸速度は約400m/分〜1500m/分、たとえば約1100m/分である。一実施形態において、押出機が溶融ポリマー材料を、多数の小オリフィスを有する紡糸ヘッドに供給する。溶融ポリマー材料を、小オリフィスを通して押出して、フィラメントを形成し、次いでフィラメントを適切に急冷チャンバーに移し、急冷チャンバー中で急冷ガス(空気、水蒸気または窒素等の不活性ガス等)を供給してフィラメントを冷却し、固化させる。適切には、急冷ガスは、フィラメント走行方向に対して垂直な方向で、フィラメントに向ける。
【0026】
適切には、フィラメントは集めてマルチフィラメント糸としてから、糸を延伸段階に通す。適切には、延伸は接触点上またはロール周囲のいずれかで行なう。これに関し、延伸は典型的にはゴデットロールの離れた対または異なった回転速度で操作される対(デュオ)上で実施する。フィラメント(単数または複数)の延伸は、速度差、糸温度および糸速度に依存する所望の延伸比で、ロール間で行う。ロールは適切にはテクスチャード加工の前にフィラメント温度を高めるために同じまたは同様の温度に加熱する。一実施形態において、繊維は、延伸によって、結晶成長および形態的整列を可能にすることによって、たとえば、フィラメント中の分子を異方的に配向できる少なくとも1つのローラーを横断して繊維を繰り返し一時的に滞留させることによって、配向させ、それにより横方向の強度を改善する。
【0027】
適切には、延伸比は2:1〜4:1、より好ましくは延伸比は約3以下である。適切には、フィラメントは1500m/分以下の速度で延伸段階に移し、その記載した複数の速度で延伸段階から出て、それによってテクスチャード加工を実際に施すことができる。
【0028】
適切には、テクスチャード加工は流体ジェットテクスチャード加工ユニットを用いて実施し、フィラメントは、テクスチャード加工された糸が引き取られる速度よりも速い速度でユニットに供給する。別法として、テクスチャード加工は機械的捲縮によって実施する。適切には、テクスチャード加工によって繊維の嵩を増大する。加えたテクスチャード加工は適切には、配向のみによって誘起される直線的収縮よりも多い乾熱収縮を誘起するのに充分である。テクスチャード加工の後、糸は、自然にまたは湿熱環境を適用することによる加速法によって、平衡に到達させることができる。
【0029】
上述の方法中における何らかの適切な段階で、糸を仕上げ剤塗布機と接触させ、ここで所望により液体仕上げ剤を塗布する。仕上げ剤は、単一点または複数の段階で塗布できる。
【0030】
テクスチャード加工された、またはテクスチャード加工および仕上げ処理された糸は適切には、他の同種または異種の糸と組み合わせて空気絡合(たとえば、Gilbosユニット上または適切なデザインの1つ)によってより大きな集合体を形成でき、またはケーブル撚り、エア撚りもしくは編組によって組み合わせて、必要なデザインおよび審美的要求を満たす仕上げ糸を形成できる。
【0031】
テクスチャード加工された、またはテクスチャード加工および仕上げ処理された糸は、次にパッケージに巻きつけることができる。
【0032】
上記の方法工程は連続的に実施してもよいし、または個別に実施してもよい。好ましくは前記方法工程は中断せずに連続的に実施する。
【0033】
典型的には、限定するものではないが、各糸は15〜21のデニール、2.5〜3.5g/デニールの強力および30%超の破断点伸びを有する。
【0034】
前記方法によって調製したバイオベースポリヘキサメチレンセバカミド嵩高加工連続フィラメント糸ならびに該糸から形成される機能性または装飾性テキスタイルおよび布等の物品も提供する。
【0035】
(実施例)
(実施例1)
BASFから入手できるUltramid Balance(登録商標)バイオベースナイロン6,10樹脂を乾燥させ、溶融紡糸し、延伸し、エアジェットでテクスチャード加工して、3ローブ断面を持つ60フィラメントを含有する1000デニールの嵩高加工連続フィラメント糸を生成した。溶融紡糸段階の間に種々の顔料を含む配合マスターバッチを加えることによって、4色の糸を生成した。4色は、ダークブラウン(「レーズン(Raison)」)、ライトグレイ(「ホークグレイ(Hawk Grey)」)、ミディアムグレイ(「エレファント(Elephant)」)およびダークグレイ(「シール(Seal)」)であった。紡糸速度は1100m/分、延伸比は約2.7:1であった。紡糸段階の間に仕上げ油を糸に塗布し、糸上の仕上げ剤を約0.45重量%とした。生成した4種の糸の強力および破断点伸びは以下の通りであった。
【0036】
【表1】

【0037】
(実施例2)
実施例1で用いた6,10樹脂90重量%およびナイロン6,6樹脂10%を含み、硫酸相対溶液粘度が3.1の糸を、実施例1と同様の方法を用いて生成した。溶融紡糸ステージの間にナイロン6,10およびナイロン6,6を溶融ブレンドした。生成した嵩高加工連続糸は600gのデニールを有し、3ローブ断面の30フィラメントからなっていた。
【0038】
本発明を好ましい実施形態に関して記述したが、本発明は、好ましい実施形態に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の精神および範囲内の種々の変更および等価の配置を網羅するよう意図されることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーまたはバイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと相溶性の80重量%以下の少なくとも1つの他のポリマーとのブレンドから形成された連続フィラメントまたは複数の連続フィラメント。
【請求項2】
請求項1に記載の連続フィラメントまたは複数の連続フィラメントから形成された複数の連続フィラメントを含む嵩高加工連続フィラメント糸。
【請求項3】
ポリヘキサメチレンセバカミドポリマーまたはバイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミドポリマーと相溶性の80重量%以下の少なくとも1つの他のポリマーとのブレンドを含むポリマーメルトを溶融紡糸して少なくとも1つのフィラメントを形成する工程と、少なくとも1つのフィラメントを延伸段階に移して延伸段階でフィラメントを延伸し、延長して糸を生成する工程を含む、バイオベースポリヘキサメチレンセバカミド嵩高加工連続フィラメント(BCF)糸の調製方法。
【請求項4】
ポリマーメルトが少なくとも1種の顔料またはポリマー可溶性色素を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ポリマーメルトが少なくとも1種の安定剤を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
延伸および延長の後でフィラメントをテクスチャード加工して嵩高加工連続フィラメント(BCF)糸を生成する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法によって調製されたバイオベースポリヘキサメチレンセバカミド嵩高加工連続フィラメント糸。

【公表番号】特表2013−512354(P2013−512354A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541284(P2012−541284)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001632
【国際公開番号】WO2011/066620
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512144645)インターフェース・オーストラリア・ピーティーワイ・リミテッド (2)
【出願人】(512144656)ユニバーサル・ファイバーズ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】