説明

バイオマスのガス化方法

【課題】効率よく熱エネルギーを回収するとともに、改質炉の内部におけるクリンカ生成を回避しつつ、改質炉の後段に更に配置されたフィルタの処理時間経過に伴う差圧上昇を抑制して継続運転を可能としたバイオマスのガス化方法を提供すること。
【解決手段】加熱炉3における熱分解工程と、高温サイクロン5における除塵工程と、改質炉6おけるガス改質工程と、フィルタ9における除塵処理工程を有するバイオマスのガス化方法であって、改質工程を経て粒径5μm以下の灰分を含有する排ガスに、高温サイクロン5で回収された粒径5〜100μmの灰分を混入後、改質炉6の後段に配置されたフィルタ9における除塵処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオマスのガス化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、有機汚泥等のバイオマスから効率よく熱エネルギーを回収する技術として、バイオマスを循環流動加熱炉において熱分解し、その熱分解ガスを改質炉において、前記循環流動加熱炉の熱分解温度より高い温度で酸素と反応・改質させ可燃ガスを製造する技術を開示している(特許文献1)。
【0003】
循環流動加熱炉における熱分解工程では、熱分解ガスとともにタール分(比較的大きな分子構造を有する有機分)が発生するが、改質炉を約900℃〜1200℃の高温条件とすることで、改質炉においてタール分を低分子化し、熱エネルギー回収率の向上を図ることができる。
【0004】
循環流動加熱炉における熱分解工程では、熱分解ガス・タール分の他に熱分解残渣が発生するが、改質炉を約900℃〜1200℃の高温条件下とした場合、該熱分解残渣に含まれる灰分が溶融し、改質炉の内部にクリンカが生成する問題があった。
【0005】
当該問題を回避する技術として、本願出願人は、改質炉の前段に高温サイクロンを設けて除塵を行う技術を開示している(特許文献2)。
【0006】
改質炉で改質されたガスには、未だ微細な灰分が含まれており、エンジン等の運転に用いるためには、改質炉の後段に例えばバグフィルタを配置して更なる除塵を行うことが必要となる。
【0007】
運転中のバグフィルタは、通常、数十秒間隔で逆洗処理されているが、改質炉の前段に高温サイクロンを配置して除塵を行っている場合には、バグフィルタに導かれる排ガスには微細な灰分のみが残留しており、該微細な灰分がバグフィルタの繊維に入り込むため、処理時間経過に伴い逆洗の効果が十分得られなくなってバグフィルタの差圧が上昇し、バイオマスのガス化処理装置の継続運転が困難になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−51745号公報
【特許文献2】特開2007−229563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は前記問題を解決し、効率よく熱エネルギーを回収するとともに、改質炉の内部におけるクリンカ生成を回避しつつ、改質炉の後段に更に配置されたフィルタの処理時間経過に伴う差圧上昇を抑制して継続運転を可能としたバイオマスのガス化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明のバイオマスのガス化方法は、加熱炉における熱分解工程と、加熱炉の後段に配置された高温サイクロンにおける除塵工程と、高温サイクロンの後段に配置された改質炉におけるガス改質工程と、改質炉の後段に配置されたフィルタにおける除塵処理工程を有するバイオマスのガス化方法であって、改質工程を経て粒径5μm以下の灰分を含有する排ガスに、高温サイクロンで回収された粒径5〜100μmの灰分を混入後、改質炉の後段に配置されたフィルタにおける除塵処理を行うことを特徴とするものである。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のバイオマスのガス化方法において、フィルタの逆洗を定期的に行いつつ、バグフィルタの差圧が一定値を超えた場合に、高温サイクロンで回収された粒径5〜100μmの灰分を混入することを特徴とするものである。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1〜2の何れかに記載のバイオマスのガス化方法において、フィルタがバグフィルタであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のバイオマスのガス化方法において、加熱炉の熱分解温度が500〜900℃、改質炉の反応温度が900〜1200℃であって、バグフィルタの前段に設けた冷却塔を経て150〜200℃に冷却された排ガスに、高温サイクロンで回収された灰分を混入後、バグフィルタに導くことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るバイオマスのガス化方法は、加熱炉における熱分解工程と、加熱炉の後段に配置された高温サイクロンにおける除塵工程と、高温サイクロンの後段に配置された改質炉におけるガス改質工程と、改質炉の後段に配置されたフィルタにおける除塵処理工程を有するバイオマスのガス化方法であって、改質工程を経て粒径5μm以下の灰分を含有する排ガスに、高温サイクロンで回収された粒径5〜100μmの灰分を混入後、改質炉の後段に配置されたフィルタにおける除塵処理を行う構成からなり、改質炉においてタール分を低分子化して熱エネルギー回収率の向上を図ると共に、改質炉の前段に設けた高温サイクロンで除塵を行って改質炉の内部におけるクリンカ生成を回避しつつ、改質工程を経て粒径5μm以下の微細な灰分を含有する排ガスに、ろ過助剤として粒径5〜100μmの高温灰を混入してバグフィルタにおける除塵処理を行うことで、微細な灰分がフィルタに入り込んで、バグフィルタの差圧が上昇し、処理時間経過に伴い定期的な逆洗を行っても逆洗の効果が得られ難くなり、継続運転が困難になるという問題を回避可能としている。
【0015】
バグフィルタの差圧上昇抑制に関し、具体的には、改質ガス中に残留している微細な灰分を粒径の比較的大きい高温灰の混入によって凝集させることにより、バグフィルタの繊維に入りこむ前にその表面で付着させて、逆洗による効果的な除去を可能としている。また、凝集した灰分は微細な灰分に比べて飛散し難くなるため、従来、逆洗直後に微細な灰分がガス中に飛散して再度バグフィルタの繊維に入り込んでいた現象を効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態のバイオマスのガス化方法に最適に用いられるバイオマスのガス化装置である。
【図2】本発明の方法に係るバイオマスのガス化処理を行い、バグフィルタの差圧挙動を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。図1には、本実施形態のバイオマスのガス化方法に最適に用いられるバイオマスのガス化装置を示している。
【0018】
図1において、1はホッパー、2はフィーダ、3は循環流動床式のガス化炉、4はブロア、5は高温灰回収用サイクロン装置、6は改質炉、7は冷却塔、8は高温灰供給機、9はバグフィルタである。バイオマスはガス化炉3で熱分解され、サイクロン装置5で熱分解残渣を除塵後に、改質炉6で改質ガスに改質され、さらにバグフィルタ9で微細な灰分も除塵して、後段の処理工程に送られ、ガスエンジン等の運転に用いるガスとして精製される。
【0019】
下水汚泥や木質廃棄物等のバイオマスは、ホッパー1から、フィーダ2により流動床式のガス化炉3に投入される。このガス化炉3の内部は空気比を1以下の還元雰囲気に保たれている。ブロア4でガス化炉3内に空気を送給し、流動媒体砂を撹拌する。廃棄物はガス化炉3内で、流動媒体砂とともに流動、撹拌されながら部分燃焼し、熱分解反応が行われ、可燃性の熱分解ガス、タール、炭素分を含む熱分解残渣に分解される。熱分解反応を行う際に、ガス化炉3の内部の温度は500℃〜900℃であることが好ましい。なお、流動床式のガス化炉は循環流動床炉、気泡流動床炉いずれも適用可能である。
【0020】
ガス化炉3で生成された分解ガス、タール、熱分解残渣はガス化炉3上部から、ガス化炉3の後段に設けられた高温灰回収用サイクロン装置5に送られ、遠心力の作用により熱熱分解残渣である灰分が分離されて回収される。高温灰回収用サイクロン装置5で回収される灰分の粒径設定を例えば5μ以上とすることにより、熱分解残渣である灰分の大部分を高温灰として回収することができる。
【0021】
灰分を含む熱分解残渣の大部分が高温灰回収用サイクロン装置5で回収されるため、改質炉6には、ほぼ熱分解残渣が除去された状態で、熱分解ガスとタールを供給することができ、改質炉6内部におけるクリンカ生成による改質炉6のトラブルを防止することができ、またクリンカを除去する手間を省くことが可能となる。
【0022】
熱分解ガス及びタールは、約900℃〜1200℃に保たれた改質炉6に供給され、酸素と水蒸気により改質される。改質炉6の昇温方法は部分燃焼であり、改質炉6の内部で進む反応は下記の通りである。なお、下式中のCxHyは熱分解ガスとタールである。
【0023】
【数1】

【数2】

【0024】
熱分解ガスと酸素との反応(数1)による燃焼熱は、改質炉6の熱源として利用される。タール及び熱分解ガス(CxHy)は、改質炉6中で熱により、水蒸気(H2O)と反応し、水素(H2)と一酸化炭素(CO)を主成分とする改質ガスになる。なお、タールと熱分解ガスが最適に改質されるために、水蒸気の投入量や、改質炉6の温度と酸素比が調整される。
【0025】
改質炉6で生成された改質ガスには、前段の高温灰回収用サイクロン装置5で回収されなかった微細な灰分が残留している。しかし、バイオマスのガス化により得られたガスを、エンジンの運転等に使用する場合には、ガス中の微細な灰分の残留も好ましくない。そこで、改質炉の後段にバグフィルタ9設けて、更なる除塵を行っている。
【0026】
運転中のバグフィルタ9は、数十秒間隔で逆洗処理されているが、従来、改質ガス中に残留している微細な灰分がバグフィルタ9の繊維に入り込むため、処理時間経過に伴い逆洗の効果が十分得られなくなりバグフィルタ9の差圧が上昇し、また、定期的な逆洗を行っても微細な灰分は、逆洗直後にガス中に飛散して再度バグフィルタ9の繊維に入り込むため、逆洗の効果が得られ難い問題があった。
【0027】
これに対し、本発明では、フィルタの逆洗を数十秒間隔で定期的に行いつつ、バグフィルタ9の差圧が一定値を超えた場合には、改質炉6で生成された改質ガスに、高温灰回収用サイクロン装置5で一旦回収された粒径の比較的大きい高温灰の混入を行っている。高温灰回収用サイクロン装置5で回収された高温灰は、バグフィルタ9の直前に配置した高温灰供給機8に送られ、バグフィルタ9の差圧が一定値を超えた場合に、上昇改質ガス中に投入される。
【0028】
本発明によれば、改質ガス中に残留している微細な灰分は、粒径の比較的大きい高温灰の混入により凝集するため、バグフィルタ9の繊維に入り込むことなくバグフィルタ9の表面に付着されるようになる。凝集してバグフィルタ9の表面に付着した灰分は逆洗により効果的に除去することができ、また、逆洗直後にガス中に飛散することもないため、前記の処理時間経過に伴い逆洗の効果が十分得られなくなってバグフィルタ9の差圧が上昇し、また、定期的な逆洗を行っても逆洗の効果が得られ難い問題を回避することができる。
【実施例】
【0029】
図1に示すガス化装置用いて、本発明の方法に係るバイオマスのガス化処理を行い、バグフィルタ9の差圧挙動を測定した結果を図2に示す。
【0030】
バイオマスとしては、下水汚泥の乾燥物を使用し、投入量は約80kg/hとした。該バイオマスの組成を下記の表1に示している。
【表1】

【0031】
ガス化炉の温度は850℃、改質炉の温度は1000℃で処理を行った。
【0032】
高温灰回収用サイクロン装置5で回収する高温灰の粒径は、5μm以上に設定した。高温灰回収用サイクロン装置5では、約7kg/hの高温灰が回収され、その平均粒径は、約30μmであった。
【0033】
バグフィルタ9の直前に配置した高温灰供給機8から、概ね1時間に1回の割合で、高温灰回収用サイクロン装置5からの回収灰を投入し、1回の投入量は約7kgとした。
【0034】
図2に示すように、高温灰回収用サイクロン装置5からの回収灰を投入直後には、バグフィルタ9の差圧を運転開始時と同等にまで低下させることができる。すなわち、本発明の方法によれば、処理時間経過に伴う逆洗効果の低下およびそれに伴う差圧上昇の問題を回避することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ホッパー
2 フィーダ
3 流動床式のガス化炉
4 ブロア
5 高温灰回収用サイクロン装置
6 改質炉
7 冷却塔
8 高温灰供給機
9 バグフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉における熱分解工程と、加熱炉の後段に配置された高温サイクロンにおける除塵工程と、高温サイクロンの後段に配置された改質炉におけるガス改質工程と、改質炉の後段に配置されたフィルタにおける除塵処理工程を有するバイオマスのガス化方法であって、
改質工程を経て粒径5μm以下の灰分を含有する排ガスに、高温サイクロンで回収された粒径5〜100μmの灰分を混入後、改質炉の後段に配置されたフィルタにおける除塵処理を行うことを特徴とするバイオマスのガス化方法。
【請求項2】
フィルタの逆洗を定期的に行いつつ、バグフィルタの差圧が一定値を超えた場合に、高温サイクロンで回収された粒径5〜100μmの灰分を混入することを特徴とする請求項1記載のバイオマスのガス化方法。
【請求項3】
フィルタがバグフィルタであることを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載のバイオマスのガス化方法。
【請求項4】
加熱炉の熱分解温度が500〜900℃、改質炉の反応温度が900〜1200℃であって、バグフィルタの前段に設けた冷却塔を経て150〜200℃に冷却された排ガスに、高温サイクロンで回収された灰分を混入後、バグフィルタに導くことを特徴とする請求項3記載のバイオマスのガス化方法。


【図2】
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【図1】
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