説明

バイオマスプラント運転支援システム

【課題】 バイオマスプラントへの効率的な搬送を行うと共にバイオマスの生産・回収を促進することにより、バイオマスプラントの効率的な運転を可能にする。
【解決手段】 複数のバイオマスプラントにおける運転を支援するためのシステムであって、バイオマス収集センターCiに存在するバイオマス量Miを収集センターCi毎に取得するバイオマス量取得部D3と、前記バイオマス量取得部D3で取得されたバイオマス量MiがバイオマスプラントPiの運転に必要なバイオマス必要最小量Mimin以上である場合に運転を許可する運転情報伝達部D6と、プラントPiの運転に際して不足するバイオマス量Mneed=Mimin−Miを、バイオマス量Mkが最適運転量Mbestを越えて存在するバイオマス収集センターCkから供給するに際し、輸送エネルギーが最小となるようにバイオマス収集センターCkに要求する供給量の按分(収集係数Qk)を求める演算部D2を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオマスプラント運転支援システム、具体的には複数のバイオマスプラントを稼働させるに際し、各バイオマスプラントにバイオマスを効率よく分配・供給するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近い将来において、石炭や石油に代表される化石エネルギー源が枯渇すると叫ばれて久しい。また、化石エネルギー源の使用により大気中の二酸化炭素が増加しており、この増加が地球の温暖化に影響を及ぼしているとも言われている。
【0003】
化石エネルギー源の枯渇や温暖化の抑制を考慮すると化石エネルギーの代替に太陽光や風力などを利用する再生可能エネルギーの利用が好ましい。しかしながら、再生可能エネルギーの中で、太陽光発電や風力発電は天候により発電電力が変動する等の理由で、現存する電力供給系統との連携に問題がある。さらに風力発電は風況のよいところから率先して建設され、設置可能な地域が制限されやすいという特徴を持つ。大規模太陽光発電や風力発電においては出力を安定させるための蓄電装置や燃料電池を併設するなど付加的な装置も必要となり、立地上の制約条件も多い。
【0004】
一方、近年、伐採材やもみがら、雑草や木の葉、海藻などのバイオマスを資源とし、これを発電用燃料として利用したり、メタンガスなどのバイオマスガスやエタノールなどの液体燃料(以下、「バイオマス燃料」と称する。)へ資源化することが注目されている。こうしたバイオマスをバイオマス燃料へ資源化するバイオマスプラントは、気候による影響を受けにくい。資源化されたバイオマス燃料は、化石エネルギー源と同様に燃料として利用すればよいので安定した発電も可能となり、付加的な装置も不要となる。また、バイオマスプラントは安定なバイオマス供給があればよいので、立地場所に制約を受けることが少ない。これらのことを勘案すると、上記の太陽光発電や風力発電に比べると、バイオマス資源はより好ましい代替資源であると言える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、日常生活で排出されるゴミなどの生活廃棄物を焼却して熱エネルギーに変換する場合とは異なり、現状のバイオマスプラントでは連続して資源化を行うことができず、安定したバイオマスの消費が望めない。例えば、バイオマスからエタノールに変換するバイオマスプラントでは、収集されたバイオマスを乾燥、粉砕するといった前処理工程と、糖化工程、アルコール発酵工程という工程を経てエタノールに資源化される。図1は、このバイオマスプラントにおけるバイオマス必要量の時間変化を示すグラフである。前処理により乾燥、粉砕されたバイオマスは、糖化工程で単糖化される。得られた単糖は、発酵用の菌とともに発酵槽に投入されアルコール発酵に付される。このとき糖化工程やアルコール発酵の間は新たなバイオマスは必要としないため、図に示すようにバイオマスプラントにおけるバイオマス必要量は一定の周期(製造周期T)を持つバルス状になるという特徴を有する。また、製造効率(発酵効率)に最も適したバイオマス最適量Mbestがあり、これ以上のバイオマスを投入しても製造効率が低下する。一方、一定量以下のバイオマスにおいても製造効率が低下するため、バイオマス燃料の製造に必要なバイオマス必要最小量Mminが存在するという特徴も有する。
【0006】
バイオマスはその多くが植物に由来するものである。植物由来のバイオマスの発生量は、季節による変動が大きく、広く・薄く分布していると言われるように、地域による差が大きく、その発生量も日常生活で発生する食物、紙やプラスチックなどに代表される生活廃棄物に比べて極めて少ない。
【0007】
そうすると、生活廃棄物を焼却場に持ち込み、焼却能力を上回る場合には余剰廃棄物を各焼却場で保存し、持ち込まれた生活廃棄物の量が少なければ焼却を停止するという現状の回収・焼却方法をそのまま適用することができない。
【0008】
また、バイオマスプラントにおいてはその発酵効率はプラントの規模によりほぼ決まり、最大の製造効率で運転するのが最適である。そのためには、バイオマスプラントの規模に応じた最低限のバイオマス量を確保するのが好ましく、最適なバイオマス量で発酵させることが望まれる。このような観点からは、十分なバイオマス量が常に確保できる地域にバイオマスプラントを建設するのがよいとも言える。
【0009】
ところが現状では上記のようにバイオマスの発生量は少なく、十分なバイオマス量を確保することができない。従って、バイオマスプラントの設置にあたりバイオマスの生産を促す必要がある。
【0010】
また、生産されたバイオマス燃料の供給、例えば需要量や輸送距離(輸送エネルギー)を考慮したり、緑化、特に緑が少ないと言われている都市部における緑化への動機付けを考慮すると、特定の地域に偏ることなく適宜分散させてバイオマスプラントを建設することが望ましいと言える。しかしながら、広く・薄く存在するバイオマスの特性や上記バイオマスプラントの特徴からは、分散させたバイオマスプラントに適当量のバイオマスを臨機応変に供給するというバイオマス供給の計画性がより重要であると言える。
【0011】
本願発明はこのような状況を鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、バイオマスプラントへの効率的な搬送を行うと共にバイオマスの生産・回収を促進することにより、バイオマスプラントの効率的な運転を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明のバイオマスプラント運転支援システムは、バイオマスプラントと1対1の関係で関連づけられたバイオマス収集部に存在するバイオマス量をバイオマス収集部単位で取得するバイオマス量取得部と、前記バイオマス量取得部で取得されたバイオマス量が、該当するバイオマスプラントの運転に必要なバイオマス必要最小量以上である場合に運転を指示又は許可する運転情報伝達部と、バイオマスプラントの運転に際して当該バイオマスプラントにおけるバイオマス必要最小量に足りないバイオマス量を、バイオマス量がバイオマスプラントの運転に際して最適な運転が確保できるバイオマス最適量を越えて存在するバイオマス収集部から補給するに際し、当該補給に必要な輸送エネルギーが最小となるように前記バイオマス最適量を越えてバイオマス量が存在するバイオマス収集部に要求するバイオマス補給量の按分を求める演算部と、求められたバイオマス補給量の按分に従い、バイオマス最適量を越えて存在するバイオマス収集部に対して、バイオマス必要最小量に足りないバイオマス収集部又はバイオマスプラントまでバイオマスの補給を指示するバイオマス移送伝達部を備えることによって、複数のバイオマスプラントにおける運転を支援することにしている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、バイオマスが不足した場合でもバイオマス必要量に応じたバイオマスが効率よく供給され、複数のバイオマスプラントの運転が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図2は本発明のバイオマスプラント支援システムの概略的構成図である。本発明のバイオマスプラント支援システムは、ある特定の地域A内において、複数のバイオマスプラントPi(iは正の整数:以下同じ、以下「プラント」と略称することがある。)が存在していることを前提にしたものであって、図2は3つのバイオマスプラントPi(i=3:P1,P2,P3)が存在する場合を示している。なお、本発明においては3つのバイオマスプラントPiや収集センター(バイオマス収集部)Ciは等価であり、バイオマスプラントPi間には優先順序はない。従って、図面をわかりやすくするために、図2においてはデータセンターDと各バイオマスプラントPi間の情報伝達(何れも破線で示される。)やデータセンターDと各収集センターCi(i=3:C1,C2,C3)間の情報伝達(何れも破線で示される。)はプラントP1についてのみ示されている。
【0015】
本発明のシステムは、3つのバイオマスプラントPiの運転状況を管理する一つのデータセンターDを有する。この地域A内にはバイオマスを収集する3つのバイオマス収集センター(以下、「収集センター」と略称することがある)Ciが配置されている。バイオマス収集センターCiには複数の収集区域Sij(jは正の整数:以下同様)、例えばバイオマス収集センターC1には収集区域S11,S12,・・,S1j,・・S1nが設定されており、収集区域S1jで生じたバイオマスは当該収集区域S1jを管轄する収集センターC1に収集される。また、収集センターC2にも複数の収集区域S2jが、収集センターC3にも複数の収集区域S3jが設定されている。なお、収集区域Sijの数は各収集センターCiにおいて必ずしも同じであるとは限らない。収集区域Sijは任意に設定され、例えば地域の自治会や町内会、工場、商店街などの区域単位毎に一つの収集区域Sijが定められ、A地域内にある場所は必ずいずれかの収集区域Sijに属し、A地域内にある場所の一部地域は複数の収集区域Sijに属しても差し支えない。収集センターCiと収集区域Sijは、エネルギー効率からの観点から、収集センターCiから各収集区域Sijまでの距離Lijと各収集区域Sijにおけるバイオマス収集量Mijとの積の総和が最も小さくなるように設定されるのが好ましいが、収集区域Sijにおけるバイオマス収集量Mijは収集時期や発生量等によって異なり、各収集区域Sijで一定のバイオマス収集量Mijとならないので、本発明においては必ずしもそうである必要はなく、任意の場所に収集センターCiと収集区域Sijが設置される。また、収集センターCiはそれを管轄するバイオマスプラントPiの敷地内又はその近隣に設置することもできる。
【0016】
各バイオマスプラントPiは、製造するバイオマス燃料の種類、その規模などにより、その製造効率に最も適したバイオマス最適量Mibestが存在し、その製造に必要となるバイオマス必要最小量Miminが存在する。そのため、製造周期Ti(バイオマス燃料の製造開始から次回のバイオマス燃料の製造開始までの期間であって、規則的に製造する場合であっても、不規則的に製造する場合の何れの場合も含む。)内に、収集センターCiにはプラントPiが必要とする少なくともバイオマス必要最小量Mimin以上のバイオマスMiが蓄積されることが要求される。このバイオマスは原則として収集センターCiが管轄する収集区域Sijから集められる。そして、このバイオマスは管轄する収集区域Sijから定期的に又は必要に応じて適宜収集される。なお、製造効率に最も適したバイオマス最適量Mibestと、バイオマスの製造に最低限必要なバイオマス必要最小量Miminが存在するのが一般的であるが、場合によってはバイオマス最適量Mibestとバイオマス必要最小量Miminが同じであるバイオプラントも存在することがあり得るが、この場合には、以下の判断においてバイオマス最適量Mibest=バイオマス必要最小量Miminとして処理すればよい。
【0017】
データセンターDは、各プラントPiのバイオマス必要最小量Miminと、全ての収集センターCiと各プラントPi間の距離Lii及び/又は全ての収集センター間の距離Liiを記憶する記憶領域D1と、プラントPiで不足するバイオマス量Mineedを演算し、各収集センターCiに対してバイオマスを必要とするプラントPiに搬送するバイオマス量を演算する演算部D2と、各収集センターCiが管轄内にある収集区域Sijから収集したバイオマス量Miを取得するバイオマス量取得部D3と、各収集センターCiに対してバイオマスの輸送に関する情報を伝達するバイオマス情報伝達部D4と、各プラントPiから入力される製造情報を取得する製造情報取得部D5と、各プラントPiに対して製造情報を伝達する製造情報伝達部D6を有する。ここで、バイオマスの輸送に関する情報とは、輸送すべきバイオマスの絶対量若しくは下記に述べる収集計数Qk、輸送元や輸送先となる収集センターCiの指定を意味し、場合によっては輸送すべき時期を含む場合もある。また、製造情報とは製造開始要求や製造開始の可否に関する決定を意味する。また、前記バイオマス情報伝達部D4は、バイオマスの収集やバイオマスの生産を促す旨のバイオマス情報を、バイオマスが不足しているバイオマス収集センターCiに対して通知する収集通知部を兼ねている。
【0018】
各バイオマス収集センターCiは、定期的又は必要に応じて収集区域Sij(j=1,2,・・・,n)を巡回し、バイオマスを収集、蓄積する。この蓄積されたバイオマス量Miは、バイオマス量取得部D3によって取得される。このバイオマス量Miは、バイオマスの増減、つまり、収集区域Sijからの収集があった場合やバイオマスプラントP1における消費、他の収集センターCiへの移動があった場合などに自動送信若しくは手動送信される。収集センターCiは、データセンターD(例えばバイオマス情報伝達部D4)からの要求に従い、各収集区域Sijに対してバイオマスの不足やバイオマス生産を促す旨のバイオマス要求情報を伝達する(図示せず)。
【0019】
各バイオマスプラントPiで資源化されるバイオマスは最も近傍に位置する収集センターCiからその全量が供給されるのが最も好ましい。従って、原則としてプラントPiには当該プラントPiが管轄する収集センターCiからバイオマスが供給される。係る意味において、バイオマスプラントPiと収集センターCiは1対1の関係で関連づけられている。
【0020】
演算部D2は、各バイオマスプラントPiにおける製造可否を決定するとともに、図3に示すように各プラントPiにおいてバイオマスが不足することなくプラントPiに必要なバイオマスの移送量を決定する。製造情報伝達部D6は、演算部D2における決定に基づき各プラントPiに対して製造開始の可否を伝える。具体的に説明すると、製造情報取得部D5がプラントPiからの製造要求を受け取ると、演算部D2はバイオマス量取得部D3から当該プラントPiが管轄する収集センターCiのバイオマス量Miを把握する。そして、当該収集センターCiにバイオマス必要最小量Mimin以上のバイオマスが蓄積されているかどうか、また最適量Mibestを越える量のバイオマスがあるかどうか、この2点を確認する。このとき、必要最小量Mimin以上のバイオマスがあれば、製造情報伝達部D6を通じて製造要求のあったプラントPiに製造開始の指示(許可)を行う。この判断は製造要求のあったプラントPiごとに判断される。従って、プラントPiには当該プラントPiが管轄する収集センターCiからのバイオマスが優先的に供給される。
【0021】
ここにおいて、製造要求があったプラントPiが管轄する収集センターCiに、バイオマス必要最小量MiminのバイオマスMiが蓄積されていない場合を考える。この状態ではプラントPiにおける製造を行うことができず、他の収集センターCiからの移送が要請される。演算部D2は他のバイオマスプラントPk(kは正の整数であって、i以外の整数、つまりk=1,2,・・・,i−1,i+1,i+2,・・・,nである。)における運転に影響を与えない範囲で、かつバイオマスの輸送エネルギーが最小になるようにバイオマス移動の指示を必要な収集センターCkに伝える。
【0022】
すなわち、演算部D2は、他のプラントPkのすべてに対し製造要求があるか否かを確認し、製造要求があれば当該プラントPkにおける製造を優先し、最適量Mkbestを越える量のバイオマスMkがある場合(Mk>Mkbest)に限って、余剰にあるバイオマス量(Mk−Mkbest)の中から所定量を移動させる。また、製造要求がない場合には、製造要求に備えて待機させ、管轄する収集センターCkに対しては、引き続きバイオマスの収集に努めるようにバイオマス情報伝達部D4を通じて指示を出す。
【0023】
次に演算部D2は、バイオマスが不足している収集センターCiに移動させるバイオマス量を演算する。移動させるバイオマス総量は、不足する収集センターCiにおけるバイオマス不足量Mineed、すなわちバイオマス必要最小量Miminから収集センターCiにあるバイオマス量Miを差し引いた量(=Mimin−Mi)である。この量を、バイオマスをバイオマス最適量Mkbestを越えて確保している収集センターCkにおけるバイオマス余剰量(Mk−Mkbest)から補給する。そして、演算部D2は輸送エネルギーが最小となるように各収集センターCkから収集するバイオマス量を按分する。具体的には、バイオマス最適量Mkbestを越えて保存している収集センターCkからバイオマス量が不足しているプラントPiまでの距離(Lki)と移送量の積の総和が最小となるように、バイオマス量が充足している収集センターCkに対して移動させる収集係数Qk(kは正の整数であって、k=1,2,・・・,i−1,i+1,i+2,・・・,nである)若しくは絶対量(Qk×(Mk−Mkbest))を求める。この演算結果に基づき、バイオマス情報伝達部D4は各収集センターCkに対して収集係数Qk又は絶対量(Qk×(Mk−Mkbest))を伝える。この係数は例えば最小自乗法で決定される。また、収集センターCkに余剰量がない場合にはQi=0として処理し、当該収集センターCkに、引き続きバイオマスの収集を指示する旨の情報を伝達する。
【0024】
このようにして、プラントPiにおけるバイオマス不足量Mineedは、Q1×(M1−M1best)+Q2×(M2−M2best)+,・・・,+Q(i−1)×(M(i−1)−M(i−1)best)+Q(i+1)×(M(i−1)−M(i−1)best)+,・・・,+Qn×(Mn−Mnbest)によって補われる。
【0025】
そして、上記他の収集センターCkにおける余剰のバイオマス量(Mk−Mbest)の総量が不足しているバイオマス量Mineedに達しない場合には、製造情報伝達部D6は製造要求があったプラントPiに対して製造ができない旨を伝える。また、収集センターCiに対して、より一層のバイオマスの収集を行う旨の情報が伝達される。
【0026】
このようにして、輸送エネルギーが最小限になるようにプラントPiには、補給された収集センターCiからバイオマス必要最小量Miminが供給される。また、余剰のバイオマスが有効利用されるとともに各プラントPiにおいては製造に必要なバイオマス必要最小量Miminが管轄する収集センターCiに確保されているので、製造要求に応じて直ちにバイオマス燃料の製造に着手できる。一方、バイオマス必要最小量Mminが確保されていない収集センターCiに対しては、バイオマス量が不足していることが伝わるので、植物の育成等の動機付けにもなる。
【0027】
次に図4及び図5のフロー図に従って本発明の運転支援システムについて説明する。
(初期設定)
データセンターDの記憶領域D1には、プラントPi毎に1サイクルのバイオマス燃料の製造に必要なバイオマス必要最小量Mimin及び1回のバイオマス燃料の製造に最適なバイオマス最適量Mibestがテーブルとして記憶されている。このテーブルは、システムの運用開始時や新たにプラントPiが設置された場合などに作成され、記憶領域D1に保存される。また、全ての収集センターCiと各プラントPi間の距離Lii及び/又は全ての収集センター間の距離Liiが記憶領域D1に保存される。
【0028】
各収集センターCiには、収集区域Sijから収集されたバイオマスの収集量を把握するバイオマス計測部(図示せず)が備えられ、バイオマス量取得部D3の要求に応じて、あるいは手動入力により収集センターCiに収集されたバイオマス量MiをデータセンターDに送信する。
【0029】
(バイオマスプラントP1における製造)
ここにおいてバイオマスプラントP1において製造計画があったことを想定する。データセンターDは製造情報取得部D5を通じて各プラントP1、P2、P3についての製造状況を把握する。今、バイオマスプラントP1に製造計画が伝えられると(S11)、データセンターDはバイオマス量取得部D3を通じて収集センターC1のバイオマス量M1を取得する(S12)。取得されたバイオマス量M1がプラントP1のバイオマス必要最小量M1min以上であるかどうか確認された後(S13)、バイオマス量M1が必要最小量M1min以上であれば製造情報伝達部D6を通じてプラントP1に対して製造指示が通知され(S14)、プラントP1において製造が開始される。この場合においては、他のプラントP2やプラントP3の製造計画や収集センターC2や収集センターC3のバイオマス量M2,M3が影響を受けることはない。
【0030】
(バイオマスプラントP2の状況把握)
次に、ステップS13において、バイオマス量M1がバイオマス必要最小量M1min未満であり、バイオマスが不足していると判断された場合には、バイオマス量取得部D3を通じてプラントP2が管轄している収集センターC2のバイオマス量M2が取得される(S16)。この際、収集センターC1には、バイオマス量M1が不足していることがバイオマス情報伝達部D4を通じて通知され(S15)、収集センターC1はバイオマスの収集を各収集区域S1jに促す。
【0031】
取得された収集センターC2のバイオマス量M2がプラントP2のバイオマス必要最小量M2min以上であるかどうか確認された後(S17)、必要最小量M2min未満であればプラントP2における製造ができないので、収集センターC2にはバイオマス情報伝達部D4を通じて引き続きバイオマスを収集すべき旨が通知される(S18)。そして、バイオマス量取得部D3を通じて、収集センターC3のバイオマス量M3が取得される(S19)。
【0032】
一方、取得された収集センターC2のバイオマス量M2がプラントP2のバイオマス必要最小量M2min以上である場合には、バイオマス量M2がバイオマス最適量M2bestを越えて存在しているかどうか確認される(S20)。このとき、バイオマス量M2がバイオマス最適量M2best以下であればバイオマス量に余剰がないので、プラントP2における製造指示があるまでその状態で待機する(S20,S21)。そして製造指示があれば、製造に必要な必要最小量M2minが収集センターC2に確保されているので、直ちにプラントP2に対して製造指示が通知される(S22)。この間、収集センターC2では、収集の指示を行うまでもなく、定期的または必要に応じて、バイオマスの収集が引き続き行われている。また、バイオマス量M2がバイオマス最適量M2bestを越えて確保されていれば、バイオマスに余剰量があるので、余剰量(M2−M2best)が計算され、その余剰量はステップS28におけるバイオマス必要量の演算ステップにおいて利用される。また、この間にあっても収集センターC2では収集の指示を行うまでもなく、定期的または必要に応じて、バイオマスの収集が引き続き行われている。さらに、フロー図には示されていないが、バイオマス量M2がバイオマス最適量M2bestを越えて確保されている場合においても、プラントP2に対して製造指示があれば、収集センターC2には余剰量のバイオマスが蓄積されているので、そのままプラントP2に対して製造指示が通知される。
【0033】
(バイオマスプラントP3の状況把握)
さらに上記バイオマスプラントP2の状況把握と同様にして、バイオマスプラントP3におけるバイオマスプラントP3の状況把握が行われる(S19,S23〜S27)。すなわち、バイオマス量取得部D3を通じて取得された収集センターC3におけるバイオマス量M3がバイオマス必要最小量M3min以上であるかどうか確認される(S23)。このとき、バイオマス量M3が必要最小量M3min未満であればプラントP3における製造ができないので、収集センターC3には引き続きバイオマスを収集する旨が通知される(S27)。
【0034】
一方、ステップS23においてバイオマス量M3が必要最小量M3min以上にあると判断されると、バイオマス最適量M3bestを越えて存在しているかどうか確認され(S24)、バイオマス最適量M3best以下であればバイオマスに余剰量がないので、プラントP3における製造指示があるまでその状態で待機する(S25,S24)。そして製造指示があれば、製造に必要なバイオマス必要最小量M3minが収集センターC3に確保されているので、直ちにプラントP3に対して製造指示が通知される(S26)。また、ステップS24においてバイオマス量M3がバイオマス最適量M3bestを越えて確保されていればバイオマスに余剰量があると判断されるので、余剰量(M3−M3best)が計算され、その余剰量はステップS28におけるバイオマス必要量の演算ステップにおいて利用される。さらに、フロー図には示されていないが、バイオマス量M3がバイオマス最適量M3bestを越えて確保されている場合においても、プラントP3に対して製造指示があれば、余剰のバイオマス量が収集センターC3に蓄積されているのでそのままプラントP3に対して製造指示が通知される。
【0035】
(バイオマスの収集計画策定)
以上のようにして、収集センターC2における余剰量(M2−M2best)及び収集センターC3における余剰量(M3−M3best)が算出される。一方、記憶領域D1にはプラントP1におけるバイオマス必要最小量M1minが記憶されているので、この必要最小量M1minとバイオマス量取得部D3において取得された収集センターC1にあるバイオマス量M1とから、プラントP1における製造に必要なバイオマス必要量M1needが計算される(S28)。そして、収集センターC2における余剰量(M2−M2best)及び収集センターC3における余剰量(M3−M3best)の総量がバイオマス必要量M1need以上であることが確認された後(S29)、収集センターC2に対する収集係数Q2及び収集センターC3に対する収集係数Q3が、上記述べたように収集センターC1と収集センターC2間の距離L12とバイオマス輸送量の積及び収集センターC1と収集センターC3間の距離L13とバイオマス輸送量の積の和が最小になるように求められる(S30)。そして得られた収集係数Q2は収集センターC2に、収集係数Q3は収集センターC3にそれぞれ伝達され(S31)、必要量のバイオマスが収集センターC1に集められる。また、プラントP1に対して製造指示が通知され(S32)、プラントP1においてバイオマス燃料の製造が開始される。
【0036】
一方、ステップS29において収集センターC2における余剰量(M2−M2best)及び収集センターC3における余剰量(M3−M3best)の総量がバイオマス必要量M1needよりも下回るのであれば、プラントP1において製造に必要なバイオマス量M1minが確保できないので、収集センターC1に対して、再びバイオマスを収集する旨が通知され(S33)、プラントP1に対して製造中止又は製造待機が指示され(S34)、ステップS12へ戻り、再び収集センターC1のバイオマス量M1が把握される。この間、収集センターC2や収集センターC3には引き続きバイオマスが収集される。
【0037】
以上説明したとおり、バイオマスプラントP1における製造が指示された場合において、バイオマス燃料の製造に必要なバイオマス量が確保されていなければ、管轄する収集センターC1に対してバイオマス収集の指示が出されることになるので、全ての収集地区C1jに対してバイオマスを生産することへの動機付け、例えば緑化推進運動への契機となる。
【0038】
また、上記システムにおいては、他のバイオマスプラントP2,P3(実際には各プラントが管轄する収集センターC2,C3)から不足分のバイオマスが供給されるため、バイオマスプラントP2やバイオマスプラントP3の製造計画に狂いが生じることもない。そして、他の収集センターC2,C3から不足分のバイオマスが供給できない場合には、再び、管轄する収集センターC1に対してバイオマス収集の指示が出されることになるので、バイオマスプラントP1が管轄する収集地域S1jに対してより一層のバイオマス生産の動機付けを行うことができ、収集地域S1jにおける緑化推進をより一層推し進めることができる。
【0039】
なお、上記フロー図の説明においては、収集センターC2におけるバイオマス量M2の確認(S17、S20)、収集センターC3におけるバイオマス量M3の確認(S23、S24)が順次行われているが、これらの確認は同時に行ない、各収集センターCiにおけるバイオマス余剰量をステップS28において利用するようにすればよい。また、上記実施形態においては、n=3として説明したが、バイオマスプラントは3つの場合に限られず、対象とする地域A内にそれ以上のプラントが存在する場合も同様に考えることができる。
【0040】
さらに、バイオマスプラントPiは等価であることを前提として説明したが、2以上のバイオマスプラントPiからの製造要求があった場合に備えて、バイオマスプラントPiの優先順位を決めておくこともできる。例えば、データセンターDの記憶領域D1にバイオマスプラントPiの優先順位を記憶させておく。そして、優先順位の高いバイオマスプラントPiに対応するバイオマス収集センターCiに存在するバイオマス量Miをまず確認し、必要最少量Mminに不足する場合には、他のバイオマスプラントPiに優先して、優先順位の高い当該バイオマスプラントPiにバイオマスを供給することにしてもよい。すなわち、図4、5に示すフロー図を参考にして説明すると、ステップS12、S16、S19の順序を優先順位の高い収集センターCiから収集されているバイオマス量Miを問い合わせ、ステップS30の演算において、優先順位の高い収集センターCiへの移動エネルギーが最小となるように収集係数Qkを求めればよい。
【0041】
そして、上記実施形態においては、バイオマス量が不足している収集センターCiに集めることを前提とし、収集センターCkと収集センターCi間の距離を用いて輸送エネルギーが最小となるように計算しているが、収集センターCkからバイオマスプラントPiに直接輸送することを前提にして、輸送エネルギーの算出に、収集センターCkとバイオマスプラントPi間の距離Lkiを用いることにしても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】バイオマスプラントにおけるバイオマスの必要量の推移を示すグラフである。
【図2】本発明のシステムの一例を示す概略説明図である。
【図3】本発明のシステムが目標とするバイオマスの必要量の推移を示すグラフである。
【図4】本発明のシステムにおける手順を示すフロー図である。
【図5】図4の続図である。
【符号の説明】
【0043】
D データセンター
D1 記憶領域
D2 演算部
D3 バイオマス量取得部
D4 バイオマス情報伝達部
D5 製造情報取得部
D6 製造情報伝達部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバイオマスプラントにおける運転を支援するためのシステムであって、
バイオマスプラントと1対1の関係で関連づけられたバイオマス収集部に存在するバイオマス量をバイオマス収集部単位で取得するバイオマス量取得部と、
前記バイオマス量取得部で取得されたバイオマス量が、該当するバイオマスプラントの運転に必要なバイオマス必要最小量以上である場合に運転を指示又は許可する運転情報伝達部と、
バイオマスプラントの運転に際して当該バイオマスプラントにおけるバイオマス必要最小量に足りないバイオマス量を、バイオマス量がバイオマスプラントの運転に際して最適な運転が確保できるバイオマス最適量を越えて存在するバイオマス収集部から補給するに際し、当該補給に必要な輸送エネルギーが最小となるように前記バイオマス最適量を越えてバイオマス量が存在するバイオマス収集部に要求するバイオマス補給量の按分を求める演算部と、
求められたバイオマス補給量の按分に従い、バイオマス最適量を越えて存在するバイオマス収集部に対して、バイオマス必要最小量に足りないバイオマス収集部又はバイオマスプラントまでバイオマスの補給を指示するバイオマス移送伝達部と、
を有するバイオマスプラント運転支援システム。
【請求項2】
前記演算部は、バイオマス最適量を越えてバイオマス量が存在するバイオマス収集部からバイオマス量がバイオマス必要最小量に足りないバイオマス収集部又はバイオマスプラントまでの距離と、前記バイオマス最適量を越えてバイオマス量が存在するバイオマス収集部に対して要求するバイオマス補給量の積の総和が最小となるように前記バイオマス補給量の按分を定める請求項1に記載のバイオマスプラント運転支援システム。
【請求項3】
バイオマスの収集やバイオマスの生産を促す旨のバイオマス情報をバイオマス必要最小量に足りないバイオマス収集部に対して通知する収集通知部を有する請求項1又は2に記載のバイオマスプラント運転支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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