説明

バイオマス由来熱分解油からの燃料および燃料ブレンド成分

バイオマスから誘導される熱分解油を液体燃料成分に転化させる方法が開示されている。この方法は、熱分解油の二段階脱酸素と生成物の分離によって、ディーゼル燃料沸点範囲、航空燃料沸点範囲、およびナフサ燃料沸点範囲の燃料と燃料ブレンド用成分を製造することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスから炭化水素を得るための方法に関する。さらに詳細には、本発明は、燃料または燃料ブレンド成分もしくは燃料添加剤成分を製造するための、バイオマスの熱分解から得られる熱分解油の処理に関する。燃料または燃料添加剤成分もしくは燃料ブレンド成分は、ガソリン沸点範囲、ディーゼル燃料沸点範囲、および航空燃料沸点範囲のそれらを含んでよい。
【背景技術】
【0002】
再生可能なエネルギー源は益々重要となっている。再生可能エネルギー源は、石油への依存度を少なくする手段であり、化石燃料に対する代替物となる。再生可能な資源はさらに、他の工業において使用される基本的な化学成分(例えば、プラスチックを製造するための化学モノマー)を提供することができる。バイオマスは、化学物質や燃料の供給原に対するニーズの幾らかを提供することができる再生可能資源である。
【0003】
バイオマスとしては、リグニン、植物部位、果実類、野菜、植物加工廃棄物、ウッドチップ、もみがら、穀物、草、トウモロコシ、トウモロコシの皮、雑草、水生植物、干し草、紙、紙製品、再生紙、再生紙製品、およびセルロースを含有するあらゆる生体物質もしくは生物起源物質などがあるが、これらに限定されない。本明細書の他の個所で使用されているリグノセルロース系バイオマスまたはセルロース系バイオマスは、3つの主要なバイオポリマー(セルロース、ヘミセルロース、およびリグニン)からなる。これら3つの成分の割合は、バイオマス源により異なる。セルロース系バイオマスはさらに、種々の量の脂質、灰分、およびタンパク質を含んでよい。バイオマスを燃料や化学物質に転化させる上での経済性は、他の大いに競合する経済的用途が全くないか又は殆どない辺境の土地もしくは水生環境において大量のバイオマスを生産できるかどうかに依存する。経済性はさらに、埋立地に廃棄されるバイオマスの廃棄処分状況によって左右される。
【0004】
バイオマスを水生環境において成長させ、収穫し、そして処理すると、太陽光や栄養物が豊富に存在する(より生産性の高い別の利用法を損なわずに)場所がもたらされる。バイオマスはさらに、廃棄物(例えば、農作物からの廃棄物)として多くの日常の行為において生み出される。バイオマスはさらに、成長していくにつれて、大気からの二酸化炭素の除去に寄与する。バイオマスの使用は、燃料や化学的前駆体をもたらしつつ、大気中の炭素をリサイクルするための1つのプロセスであるといえる。バイオマスは、少量の酸素との短い接触時間にて、あるいは無酸素の状態にてある環境で加熱すると(熱分解と呼ばれる)、熱分解油として知られている液体生成物を生じる。熱分解油に対する類義語としては、バイオ油、熱分解液体、バイオ原油、木材液体(wood liquids)、木材油(wood oil)、燻煙液、木材蒸留液(wood distillates)、木酢液、および液体木材(liquid wood)などがある。
【0005】
バイオマスの熱分解生成物(熱分解油)は、熱分解リグニンとして知られている物質を含有する。熱分解リグニンは、熱分解油の水不溶性部分である。このプロセスの利点は、アップグレードを必要とせずに、現在世界中に行き渡っているエンジンまたは装置で機能する燃料ブレンド成分もしくは燃料を得る上で、熱分解リグニンを予め分離することなく熱分解油を必要に応じて処理することができる、という点である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ナフサ、航空燃料、ディーゼル燃料、ブレンド成分、またはこれらに関連した製造物をバイオマスから高収率で製造する方法を提供する。バイオマスを熱分解にかけて熱分解油を生成させる。熱分解油全体を処理することもできるし、あるいは必要に応じて水性相の少なくとも一部を除去して、バイオマスから熱分解リグニン高含量の熱分解油を得ることもできる。熱分解油または熱分解リグニン高含量熱分解油を部分脱酸素ゾーンにて処理して、部分脱酸素された流れを生じさせる。水、ガス、および軽質エンドを除去し、部分脱酸素された流れの残部を完全脱酸素ゾーンにてさらに処理して、脱酸素生成物の流れを生じさせる。脱酸素生成物流れは、精留したときに、ガソリンやナフサもしくは航空燃料として有用な、あるいは一方または両方の物質への添加剤もしくはブレンド成分として有用な炭化水素化合物を含む。生成物流れをさらにアップグレードして、ディーゼル燃料、ディーゼル燃料ブレンド成分またはディーゼル燃料添加剤を得ることができる。生成物流れはさらに、化学物質または化学的供給原料の供給源としての機能を果たすことができる。
【0007】
完全脱酸素ゾーンの後にて、水、軽質エンド、及びガスを、完全脱酸素ゾーン流出物から除去することができる。水素は、分離してリサイクルすることができる。1つの実施態様においては、第1の脱酸素ゾーンと完全脱酸素ゾーンとが組み合わされて、単一の反応器中に収容される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、熱分解油全体が処理される場合の、本発明の1つの実施態様に対するプロセスフロースキームを示す。
【図2】図2は、熱分解油の水性相の少なくとも一部が熱分解油から分離され、少なくとも熱分解リグニンが処理される場合の、本発明の1つの実施態様に対するプロセスフロースキームを示す。
【図3】図3は、部分脱酸素ゾーンと完全脱酸素ゾーンが、単一の反応器中に収容された逐次的ゾーンとして組み合わされる場合の、本発明の1つの実施態様に対するプロセスフロースキームを示す。
【図4】図4は、幾つかの完全脱酸素熱分解油の沸点分布のプロットであり、得られる炭化水素生成物が、かなりのフラクションが各燃料に対する範囲に存在する状態にて広い沸点範囲を有する、ということを示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
米国および世界中には、しばしば埋立地に、あるいは森の何もない野原に、利用されないで腐敗したままになっている、膨大な量のリグノセルロース物質(すなわちバイオマス)が存在する。リグノセルロース物質は、大量の木材廃棄物、農作物の葉と茎、および定期的に廃棄処分されるかもしくは野原にて腐敗したままの他の植物物質、を含む。再生可能ディーゼル燃料を製造すべく、食用ではない脂質含有農作物を出現させると、採取後のバイオマス(しばしば、あらびき粉として知られている)の量が増大することとなる。セルロースエタノールが増大すると、大量のリグニン副生物も発生する。バイオマスとしては、リグニン、植物部位、果実類、野菜、植物加工廃棄物、ウッドチップ、もみがら、穀物、草、トウモロコシ、トウモロコシの皮、雑草、水生植物、干し草、あらびき粉、紙、紙製品、再生紙、再生紙製品、およびセルロースを含有するあらゆる生体物質もしくは生物起源物質などがあるが、これらに限定されない。このバイオマス物質を熱分解して熱分解油を製造することができるが、熱安定性が良くないこと、熱分解油の含水量が高いこと(しばしば25%以上)、全酸価が高いこと(しばしば100以上)、発熱量(heating value)が低いこと、および石油ベース物質との相溶性がないことから、熱分解油は燃料として広く使用されていない。
【0010】
本発明の方法は、バイオマスからの熱分解油を実質的に、酸性が低くて、含水量が少なくて、酸素含量が少なくて、そしてイオウ含量の少ない、ナフサ、航空燃料沸点範囲成分、およびディーゼル燃料沸点範囲成分に転化させる。熱分解油を製造するためのバイオマスの熱分解は、当業界に公知の任意の方法によって達成される(例えば、“Mohan, D.; Pittman, C. U.; Steele, P. H. Energy and Feels, 2006, 20, 848-889”を参照)。いったんバイオマスから熱分解油を生成させれば(これは任意であるが)、さらなるプロセシングを行う前に熱分解油から熱分解リグニンを分離する必要はなく、したがって業界において従来使用されている工程をなくすことができる。すべての熱分解油を、水性相の一部を除去することなく処理して、熱分解リグニン中の熱分解油の含量を高めることができる。熱分解リグニンは、潜在的に高価な生成物を、酸素原子または炭素原子によってつながった芳香環を含む複雑な構造を有する芳香族化合物およびナフテン系化合物の形で含有する。これらの構造は、脱炭酸反応、脱カルボニル化反応、または水素化脱酸素反応を施すと、芳香環構造を保持しつつより小さなセグメントに分けることができる。1つの望ましい生成物は、少なくとも1種の環状炭化水素高含量流れである。しかしながら、熱分解リグニンのこのプロセシングは、熱分解油が残っていても果たすことができ、プロセシングの前に熱分解リグニンを分離する必要はない。熱分解リグニンは、バイオマスのリグニン部分の熱分解生成物である。熱分解プロセス時に、あるいは後処理により、全熱分解油の残部から熱分解リグニンを分離して、さらなる水性相(バイオマスの主としてセルロース部分とヘミセルロース部分からの熱分解生成物を含む)を得ることができる。熱分解プロセスは、バイオマス供給原料中の全成分を、熱分解油生成物の完全脱酸素の後に、燃料または燃料成分として有用な生成物に転化させることができる。さらに、水溶性成分を、熱分解条件下にてナフテンや芳香族化合物に変換することもできる。より高分子量の生成物を水蒸気分解法により処理して軽質オレフィンが得られる(この場合も熱分解条件下にて行われる)ことも知られている。エタン、プロパン、および軽質ナフサ等の供給原材料でも、これらの熱分解法においてより重質の副生物を生成する。これらのより重質の副生物の量は、熱分解反応器の条件に依存する。必要に応じて、熱分解油を分離して、熱分解油の一部だけを部分脱酸素ゾーンに導入することができる。
【0011】
1つの実施態様では、熱分解油を2つの別個のゾーン(部分脱酸素ゾーンと完全脱酸素ゾーン)において完全に脱酸素する。部分脱酸素ゾーンは水素化処理ゾーンであるとみなすことができ、完全脱酸素ゾーンは水素化分解ゾーンであるとみなすことができる。“完全”脱酸素は、利用可能な酸素化炭化水素の少なくとも99%を脱酸素することを含むように意味されている。本明細書では、これらのゾーンを、主として部分脱酸素ゾーンおよび完全脱酸素ゾーンと呼ぶ。部分脱酸素ゾーンでは、完全脱酸素ゾーンより温和な条件にて部分脱酸素が起こり、水素化処理触媒等の触媒が使用される。一般に、部分酸化ゾーンは、熱的に不安定で反応性の殆どのオキシジェネートを除去する。熱分解油供給原料の酸素レベル(一般には35重量%〜60重量%の範囲である)は、部分脱酸素ゾーンにおいてかなり低いレベル(5重量%〜20重量%)に減少する。水は、10〜40重量%の熱分解油供給原料レベルから2〜11重量%のレベルに減少する。同様に酸性度も、部分脱酸素ゾーンにおいて、熱分解油供給原料における125〜200のTANレベルから、部分脱酸素ゾーン流出物における40〜100のレベルに大幅に減少する。
【0012】
部分脱酸素ゾーンからのより熱的に安定な流出物は、次いで完全脱酸素ゾーンにおいて完全に脱酸素することができる。完全脱酸素ゾーンにおいては、より反応性の低いオキシジェネートの脱酸素を触媒するために、水素化分解触媒(水素化処理触媒と比較してより高い活性を有する)が、より厳しいプロセス条件というオプションを伴って使用される。供給原料分子の幾らかの水素化分解も、部分脱酸素ゾーンにおけるよりも高い程度で起こるであろう。完全脱酸素ゾーンにおいては、酸素含量は、5〜20重量%からはるかに低いレベルに(ppm濃度から0.5重量%に)減少する。完全脱酸素ゾーンにおいては、水も大幅に(2〜11重量%から100〜1000ppmのレベルに)減少する。酸性度は、40〜100mgKOH/gオイルという初期TANレベルから0.5〜4mgKOH/gオイルのレベルに大幅に減少する。完全脱酸素ゾーンの流出物は、ナフテン類と芳香族化合物の含量が高い炭化水素混合物である。
【0013】
図1に示す1つの実施態様では、熱分解油10が分離されないで、リサイクル水素流れ54および任意の炭化水素リサイクル56と共に部分脱酸素ゾーン12に流入し、そこで脱酸素条件下での脱酸素・水素化触媒との接触により、部分脱酸素熱分解油流れ14が生成する。部分脱酸素ゾーン12は、熱分解油中の酸素ポリマーおよび単一酸素化分子の接触脱炭酸、接触脱カルボニル、および接触水素化脱酸素を、酸素結合を断ち切ることによって果たし、酸素から水とCOを形成し、より小さな分子が残る。例えば、熱分解リグニン中のフェニルプロピルエーテル結合が部分的に脱酸素され、幾つかの芳香環化合物(例えば、アルキルベンゼンやポリアルキルベンゼン)が生成する。低分子量カルボン酸を含むかなり反応性の高いオキシジェネートも同様に脱酸素され、したがって生成物の熱安定性が大幅にアップする。セルロース、ヘミセルロース、および遊離糖類を含めたリグニンから誘導されない熱分解油成分は、酢酸、フルフラール、フラン、レボグルコサン、5−ヒドロキシメチルフルフラール、ヒドロキシアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、および他の化合物(例えば、「Mohan,D.;Pittman,C.U.;Steele,P.H.Energy and Fuels,2006,20,848−889」に記載の化合物)等の生成物を生じる得る。したがって、リグニンから誘導されない熱分解油成分はさらに、糖質と共に部分もしくは完全脱酸素され、主として軽質炭化水素フラクションと水をもたらす。軽質炭化水素フラクションは、6個以下の炭素原子を有する炭化水素を含有してよい。脱カルボニル反応、脱炭酸反応、および水素化脱酸素反応は、総称して脱酸素反応と呼ばれる。オレフィンの水素化もこのゾーンで起こる。部分脱酸素ゾーン12の触媒と条件は、より反応性の高い化合物が脱酸素されるように選択される。部分脱酸素ゾーンの流出物は、部分脱酸素熱分解油流れ14であり、この流れは、供給熱分解油と比較して増大した熱安定性を有する。
【0014】
部分脱酸素熱分解油流れ14を分離ゾーン16に送る。炭素酸化物、ことによると硫化水素、およびC以下の軽質化合物を分離してオーバーヘッドライン20にて取り出し、部分脱酸素生成物流れ18を分離ゾーン16から取り出す。分離ゾーン16は分離器を含んでよい。分離器を高温モードで操作するか、または低温モードで操作するかによって、水を、ライン20において蒸気として(高温分離器モード)、あるいはライン22において液体として(低温分離器モード)取り出すことができる。オーバーヘッドライン20は、多量の水素と少なくとも脱炭酸反応からの二酸化炭素を含む。二酸化炭素は、当業界によく知られている方法(例えば、高温炭酸塩溶液との反応や圧力スイング吸着など)によって水素から除去することができる。さらに、同時係属出願USAN60/973,792とUSAN60/973,816(これらの特許出願を参照により本明細書に含める)に記載のプロセスにおけるアミンによる吸収も使用することができる。必要に応じて、使用済みの吸収媒体を再生することによって、実質的に純粋な二酸化炭素を回収することができる。従ってオーバーヘッドライン20を1つ以上のスクラバー44(例えばアミンスクラバー)に通して、ライン46にて二酸化炭素を、ライン48にて硫化水素を除去する。選択するスクラバー技術に応じて、水の一部をスクラバーによって保持することもできる。より軽質の炭化水素とガス(ことによると水の一部を含む)を、ライン50を介して水蒸気改質ゾーン52に導く。1つの実施態様では、軽質炭化水素フラクションは、6個以下の炭素原子を有する炭化水素を含有してよい。精製後、水蒸気改質ゾーンにおいて生成した水素を、ライン54を介して導いて、供給原料10および部分脱酸素生成物流れ18と合流させる。水素は、図示のようにリサイクルして供給原料と合流させることもできるし、あるいは反応ゾーン(主として水素化が行われる)および/または任意の後続する反応器床に直接導入することもできる。
【0015】
部分脱酸素生成物流れ18を、リサイクル水素流れ54および任意の炭化水素リサイクル56と共に、第2の水素化脱酸素ゾーン24(ここで残りの酸素が除去される)に送る。完全脱酸素ゾーン24は、残留酸素化合物(第1の段階において反応した化合物より安定)の接触脱炭酸、接触脱カルボニル、および接触水素化脱酸素を果たす。従って完全脱酸素ゾーン24においては、完全な脱酸素を触媒するために、部分脱酸素ゾーン12と比較してより活性な触媒とより厳しいプロセス条件が使用される。
【0016】
完全脱酸素ゾーン流出物26を相分離器28に導入する。炭素酸化物、ことによると硫化水素、およびC以下の軽質化合物を分離してライン30中に取り出し、液体炭化水素をライン32中に取り出す。分離器が高温モードで操作されるか、または低温モードで操作されるかに応じて、水を、ライン30中に蒸気として(高温分離器モード)、またはライン58中に液体として(低温分離器モード)取り出すことができる。ライン30中のオーバーヘッドは、多量の水素と脱炭酸反応からの二酸化炭素を含む。二酸化炭素は、当業界によく知られている方法(高温の炭酸塩溶液との反応や圧力スイング吸着など)によって水素から取り出すことができる。さらに、同時係属出願USAN60/973,792とUSAN60/973,816(これらの特許出願を参照により本明細書に含める)に記載のプロセスにおけるアミンによる吸収も使用することができる。必要に応じて、使用済みの吸収媒体を再生することによって、実質的に純粋な二酸化炭素を回収することができる。従ってライン30を1つ以上のスクラバー44(例えばアミンスクラバー)に通して、ライン46にて二酸化炭素を、ライン48にて硫化水素を除去する。選択するスクラバー技術に応じて、水の一部をスクラバーによって保持することもできる。より軽質の炭化水素とガス(ことによると水の一部を含む)を、ライン50を介して水蒸気改質ゾーン52に導く。炭化水素を含有する液体流れをライン32にて分離器28から取り出し、生成物分留ゾーン34に導く。生成物分留ゾーン34は、生成物留分36が、ガソリン規格に適合するのに最も好ましい沸点範囲の炭化水素を含有するように操作される。生成物留分38は、航空燃料として、または航空燃料のブレンド用成分として使用するために捕集される。より軽質の物質(例えば、ナフサやLPG)は、分留ゾーンオーバーヘッド流れ60中に取り出される。必要に応じて流れ60の一部を、ライン62にて改質ゾーン52に導くことができる。必要に応じてナフサとLPGを、LPG流れとナフサ流れ(図示せず)にさらに分けることができる。
【0017】
航空燃料の規格に関して許容範囲にあるより高い沸点を有する炭化水素は、ボトム流れ40にて取り出される。ボトム流れ40の一部を回収し、燃料(例えば低硫黄灯油燃料)として使用することができる。ボトム流れ40は、ディーゼル燃料またはディーゼル燃料ブレンド用成分として使用できそうである。これとは別に、ボトム流れ40は、異なるプロセスにてディーゼル燃料にグレードアップすることができると思われる。ボトム流れ40の一部を、必要に応じて、部分脱酸素ゾーン12および/または完全脱酸素反応ゾーン24にリサイクルする。さらに、炭化水素流れの一部を必要に応じて冷却し、脱酸素ゾーンの一方の床間の冷却用クエンチ液体として、あるいは第1の脱酸素ゾーンと完全脱酸素ゾーンとの間の冷却用クエンチ液体として使用して反応熱を制御することができ、また緊急用のクエンチ液体とすることができる。リサイクル流れは、反応ゾーンの一方もしくは両方の入口に、および/または後続する任意の床もしくは反応器に導入することができる。炭化水素リサイクルの1つのメリットは、個々の床の全体にわたって温度上昇を制御できることである。しかしながら、本明細書に記載のように、炭化水素リサイクルの量は、反応ゾーンにおける望ましい水素溶解度に基づいて決定することができる。反応混合物に対する水素溶解度を増大させると、より低い圧力での適切な操作が可能となり、従ってコスト低減が可能となる。多量のリサイクルで操作すること、および液相中に高レベルの水素を保持することで、触媒表面におけるホットスポットが散逸しやすくなり、また好ましくない重質成分(コーキングと触媒の失活をきたす)の形成が減少する。分留ゾーン26は、2つ以上の精留塔を含んでよく、従って分離されたそれぞれの流れの場所は、図面に示されているものとは異なってよい。
【0018】
図2に示す他の実施態様では、熱分解油供給流れ10を相分離器4に通し、ここで熱分解油供給流れが水相と熱分解リグニン相とに分けられる。熱分解リグニンの一部もしくは全部が相分離器4から流れ7にて取り出され、次いで流れ6と合流して合流流れ2を形成する。必要に応じて、熱分解リグニンの一部もしくは全部を、流れ8を介して取り出す。水相の一部または全部が相分離器4から流れ6にて取り出され、次いで流れ7と合流して合流流れ2を形成する。必要に応じて、水相の熱分解油を、ライン5を介して取り出すことができる。合流流れ2(熱分解リグニンの含量が多い熱分解油)が部分脱酸素ゾーン12に進み、前述したようにここで、部分脱酸素が反応性官能基の水素化と共に起こる。部分脱酸素生成物流れ14が分離器16を通過し、ここでCO、CO、HO、およびHSが除去される。生成物流れ18が完全脱酸素ゾーン24を通過し、ここで触媒作用により完全な脱酸素が果たされる。完全脱酸素ゾーン生成物流れ26が分離器28を通過し、ここで水、CO、CO、およびHSが除去され、液体炭化水素流れ32が得られる。液体炭化水素流れ32が分留ゾーン34に通され、ここで前述のように所望の燃料留分に分けられる。
【0019】
図3に示す他の実施態様では、必要に応じて熱分解油供給流れ10が相分離器4に通され、ここで水相と熱分解リグニン相とに分けられる。熱分解リグニンの一部もしくは全部が分離器4から流れ7にて取り出され、次いで流れ6と合流して合流流れ2を形成する。必要に応じて、熱分解リグニンの一部もしくは全部を流れ8にて取り出す。水相の一部もしくは全部が分離器4から流れ6にて取り出され、次いで流れ7と合流して合流流れ2を形成する。必要に応じて、水相の熱分解油を、ライン5を介して取り出すことができる。合流流れ2(熱分解リグニンの含量が多い熱分解油を使用する実施態様の場合)または熱分解油供給流れ10(全熱分解油を使用する実施態様の場合)が脱酸素ゾーン25を通過し、ここで1種以上の触媒との接触により供給物を完全に脱酸素して、完全脱酸素生成物流れ27を生成する。脱酸素ゾーン25では、脱酸素と水素化が可能な多機能触媒を使用することもできるし、あるいは複数の触媒の一組を使用することもできる。例えば、部分脱酸素と水素化は、ゾーン12の第1の部分において第1の触媒により行うことができるが、完全脱酸素は、ゾーン25の第2の部分においてより活性な触媒にて起こる。積み重ねた床構造が有利である。なぜなら、上部ゾーンにおけるより活性の低い触媒が、熱コークスの形成を促進しうる発熱を生成することなく、最も反応性の高い酸素化合物を脱酸素するからである。完全脱酸素生成物流れ27を相分離器28に送り、ここで水、CO、CO、およびHSが除去されて液体炭化水素流れ32が生じる。液体炭化水素流れ32が分留ゾーン34に送られ、ここで前述のように所望の燃料留分に分けられる。
【0020】
上記の脱酸素反応や水素化反応に対しては水素が必要とされ、そして効果的であるためには、十分な量の水素が、触媒反応に最も効果的に参加すべく、脱酸素ゾーンにおいて溶解状態で存在しなければならない。触媒の反応部位に水素が得られない場合は、触媒上にコークスが生じ、これが触媒を不活性化する。所望量の水素を溶解状態にて、且つ容易に反応に利用できるように得るために、そして触媒上でのコークス生成反応を避けるために、高い操作圧力を使用することができる。しかしながら、より高い圧力での操作は、より低い圧力での操作と比較して、装置を造り上げて運転するのにより多くのコストがかかる。
【0021】
多量の炭化水素リサイクルを使用することによって、所望量の水素を、より低い圧力にて溶解状態に保持することができる。脱酸素反応は発熱反応であるので、さらなるメリットは、脱酸素ゾーンにおける温度が制御できることである。しかしながら、ここで使用されるリサイクル対供給原料比の範囲は、液相中の水素のレベルを制御する必要性に基づいて、したがって触媒の不活性化速度を遅くする必要性に基づいて設定される。リサイクルの量は、温度制御の要件ではなく、水素の溶解度の要件に基づいて決定される。水素は、熱分解油供給原料または分離後の熱分解油供給原料の一部に対してよりも、炭化水素生成物に対してより高い溶解度を有する。多量の炭化水素リサイクルを使用することによって、反応ゾーンにおける液相中への水素の溶解度が大幅に増大し、溶解状態の水素の量を増大させる上で、また低い圧力での触媒の不活性化を避ける上で、より高い圧力は必要とされない。炭化水素リサイクルは、ライン24、34、32、または30のいずれか、あるいはこれらの任意の組み合わせにおける流れの一部であってよく、炭化水素リサイクルは脱酸素ゾーン12に送られる。図面は、任意の炭化水素リサイクル34aを、ディーゼル燃料沸点範囲成分34の一部として示している。しかしながら、他の実施態様においては、種々の流れの一部または流れの組み合わせ(例えば、生成物流れ24、または分留ゾーン流れ28、30、もしくは32のいずれか)を炭化水素リサイクルとして使用できることは言うまでもない。炭化水素リサイクルと熱分解油供給原料との適切な容量比は2:1〜8:1である。他の実施態様では、この比は3:1〜6:1の範囲であり、さらに他の実施態様では、この比は4:1〜5:1の範囲である。
【0022】
さらに、脱酸素ゾーンにおける反応速度は炭化水素リサイクルと共に増大し、従って所定の時間において反応器を通過する物質の処理量が増大する。操作圧力をより低くすると、水素化脱酸素反応が減少しつつ脱炭酸反応が増大するという点で、さらなる利点がもたらされる。この結果、供給原料成分から酸素を除去するのに、そして最終生成物を得るのに必要とされる水素の量が減少する。水素はコストのかかる供給成分であり、水素の要求量が少なくなるということは、経済的な観点から有益である。
【0023】
他の実施態様では、熱分解油と他の再生可能供給原料もしくは石油由来炭化水素との混合物またはコフィード(co−feeds)も、脱酸素ゾーンへの供給原料として使用することができる。熱分解油と他の再生可能供給原料もしくは石油由来炭化水素との混合物は、より高い水素溶解度が得られるように選定される。前記したバイオマス物質からの熱分解油と組み合わせてコフィード成分として使用できる他の供給原料成分としては、使用済みモーター油と工業用潤滑油、使用済みパラフィンワックス、石炭ガス化から誘導される液体、バイオマス、または下流にて液化工程が施される天然ガス(例えばフィッシャー−トロプシュ技術);廃プラスチック(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、および低密度ポリエチレン)の解重合(熱的もしくは化学的)から誘導される液体;および石油化学プロセスや化学プロセスからの副生物として生じる他の合成油;などがある。コフィード成分を使用することの1つの利点は、石油ベースまたは他のプロセスからの廃棄物として考えられていたものを、最新のプロセスに対する有用なコフィード成分に変換できることである。
【0024】
部分脱酸素ゾーンは、3.4MPa(500psia)〜14MPa(3000psia)の圧力で操作され、好ましくは3.4MPa(500psia)〜12MPa(1800psia)の圧力で操作される。部分脱酸素ゾーンは200℃〜400℃の温度で操作され、1つの実施態様では300℃〜375℃である。部分脱酸素ゾーンは、熱分解油供給原料をベースとして0.1LHSVh−1〜1.5LHSVh−1の空間速度で操作され、この空間速度範囲は、リサイクル流れからの寄与を全く含まない。1つの実施態様では、空間速度は0.25〜1.0LHSVh−1である。水素と液体炭化水素との供給比は、5000〜20000scf/bbl(889〜3,555stdm/m)であり、1つの実施態様では10,000〜15,000scf/bbl(1,778〜2,666stdm/m)である。部分脱酸素ゾーン中の触媒は、当業界によく知られている任意の水素化触媒や水素化処理触媒(例えば、高表面積の担体上に分散されたニッケルもしくはニッケル/モリブデン)であってよい。他の水素化触媒としては、高表面積の担体上に分散された1種以上の貴金属元素触媒がある。貴金属触媒の例としては、γ−アルミナもしくは活性炭上に分散されたPtおよび/またはPdなどがあるが、これらに限定されない。他の例としては、米国特許第6,841,085号(該特許を参照により本明細書に含める)に開示の触媒がある。
【0025】
完全脱酸素ゾーンでは、反応条件がより厳しく、触媒は、部分脱酸素ゾーンの触媒と比較してより活性が高い。触媒は、当業界においてよく知られている、水素化分解機能を有する任意の水素化分解触媒(例えば、高表面積の担体上に分散されたニッケルまたはニッケル/モリブデン)であってよい。他の例は、金属が触媒上に堆積した状態のゼオライト/非晶質シリカ−アルミナ組合せ触媒である。触媒は、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、およびレニウム(Re)から選ばれる少なくとも1種の金属を含む。1つの実施態様では、触媒は、Ni金属とMo金属との混合物を触媒上に含む。触媒は、より大きな分子が細孔中に入り込んでより小さな分子成分にクラッキングできるよう、充分な細孔径をもたらす大きめ細孔の触媒であるのが好ましい。使用される触媒上に堆積される金属は、0.1重量%〜20重量%の量にて堆積され、特定の実施態様では、0.5重量%〜10重量%の範囲のニッケル、5重量%〜20重量%の範囲のタングステン、および5重量%〜20重量%の範囲のモリブデンを含む(これらに限定されない)。金属はさらに、組み合わせて触媒上に堆積させることができ、例えば、NiとWとの組み合わせ、およびNiとMoとの組み合わせなどがある。触媒用に使用されるゼオライトとしては、β−ゼオライト、Y−ゼオライト、MFI型ゼオライト、モルデナイト、シリカライト、SM3、およびフォージャサイトなどがあるが、これらに限定されない。触媒は、供給原料の脱炭酸反応、脱カルボニル反応、および/または水素化脱酸素反応を触媒して酸素を除去することができるだけでなく、オレフィンを飽和するよう水素化を触媒することができる。クラッキングも起こることがある。脱炭酸反応、脱カルボニル反応、および水素化脱酸素反応を、本明細書では総称して脱酸素反応と呼んでいる。
【0026】
完全脱酸素ゾーンの反応条件は、6890kPa(1000psia)〜13,790kPa(2000psia)の比較的低い圧力、300℃〜500℃の温度、およびリサイクルでないフレッシュな供給物を基準として0.1〜3hr−1の液空間速度を含む。他の実施態様では、脱酸素反応の条件は、6890kPa(1000psia)〜6895kPa(1700psia)の同じ圧力、350℃〜450℃の温度、および0.15〜0.40hr−1の液空間速度を含む。すべての反応がゾーン内で同時に起こっていることも考えられ、このことも本発明の範囲内である。
【実施例】
【0027】
水素化処理触媒を装填した固定床反応器に、全混合木材熱分解油供給原料を、下記の表1における部分脱酸素ゾーン(ゾーン1)に対して特定された条件にて一度に供給した。反応にて生成した水を分離した後に、流出油を単離した。部分脱酸素ゾーンからの流出油の特性を表1に示す。部分脱酸素ゾーンからの部分脱酸素流出油を、次いで完全脱酸素ゾーンに送り、表1に示す高温のプロセス条件にて第2の触媒と接触させた。この第2の触媒は、UOP社製造のアルミナ上硫化ニッケル・モリブデン触媒であった。完全脱酸素ゾーンの流出物から単離した炭化水素の全容量収率は、初期の全混合木材熱分解油供給原料の51容量%であった。
【0028】
水素化処理触媒を装填した固定床反応器に、トウモロコシ茎葉から得られた全熱分解油供給原料を、下記の表2における部分脱酸素ゾーン(ゾーン1)に対して特定された条件にて一度に供給した。反応にて生成した水を分離した後に、流出油を単離した。部分脱酸素ゾーンからの流出油の特性を表2に示す。次いで部分脱酸素ゾーンからの部分脱酸素流出油を、表2に示す高温のプロセス条件にて完全脱酸素ゾーン中の第2の触媒上に送った。この第2の触媒は、UOP社製造のアルミナ上硫化ニッケル・モリブデン触媒であった。完全脱酸素ゾーンの流出物から単離した炭化水素の全容量収率は、トウモロコシ茎葉からの初期の全熱分解油供給原料の67容量%であった。
【0029】
第三の例は、トウモロコシ茎葉から得られる全熱分解油の完全な脱酸素を示す。積み重ねた固定床反応器に、熱分解油を一度に供給した。反応器の上部ゾーン(部分脱酸素ゾーン)により温和な水素化処理触媒を装填し、表3に示すように250℃で行った。反応器の下部ゾーン(完全脱酸素ゾーン)に、UOP社製造のアルミナ上硫化ニッケル・モリブデン触媒を装填し、400℃に保持した。他のプロセス変数を表3に示す。この例は、積み重ねた触媒床を有する単一反応器が、完全脱酸素を行って炭化水素生成物をもたらすことができる、ということを示している。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
表4は、全熱分解油の完全脱酸素後に得られる炭化水素種の代表的な分布を示している。最終的な分布は、処理される供給原料の種類、触媒の選択、およびプロセス条件によって決まる。上記実施例2からの最終生成物の分布を、表4の“実施例2の生成物”欄に示す。これは、表2に記載のように処理された固体トウモロコシ茎葉の熱分解油から得られる炭化水素生成物を示している。
【0034】
【表4】

【0035】
幾つかの完全脱酸素熱分解油の沸点分布を図4に示す。図からわかるように、得られた炭化水素生成物は、かなりのフラションが各燃料に対する範囲に存在する状態の広い沸点範囲を有する。ガソリン燃料、航空燃料、またはディーゼル燃料の範囲に入らないより重質の成分も幾らか存在している。これらの重質成分は、さらなる水素化分解のための第2のゾーン中にリサイクルすることもできるし、あるいは他の工業的用途のために単離することもできる。
【0036】
さらなる実施態様は、(a)脱酸素条件にて水素の存在下で、熱分解油と部分脱酸素・水素化触媒とを脱酸素ゾーンの第1の部分において、そして熱分解油と完全脱酸素触媒とを脱酸素ゾーンの第2の部分において接触させることにより脱酸素ゾーンにて熱分解油供給原料を脱酸素して、水、ガス、軽質エンド、および炭化水素を含む脱酸素熱分解油流れを生成させること;(b)脱酸素熱分解油流れを分離ゾーンに送って、水、ガス、および軽質エンドを含む流れを炭化水素流れから分離すること;および(c)炭化水素流れを分留ゾーンに送って、ガソリンの沸点範囲の炭化水素化合物をガソリン範囲流れに、航空燃料の沸点範囲の炭化水素化合物を航空燃料範囲流れに、そしてディーゼル燃料の沸点範囲の炭化水素化合物をディーゼル燃料範囲流れに分けること;を含む、熱分解油供給原料から炭化水素生成物を製造する方法を含む。
【0037】
さらに、(a)脱酸素条件にて水素の存在下で、部分脱酸素触媒と完全脱酸素触媒との混合物と熱分解油とを接触させることにより脱酸素ゾーンにて熱分解油供給原料を脱酸素して、水、ガス、軽質エンド、および炭化水素を含む脱酸素熱分解油流れを生成させること、ここで部分脱酸素触媒は水素化処理触媒であり、完全脱酸素触媒は水素化分解触媒である;(b)脱酸素熱分解油流れを分離ゾーンに送って、水、ガス、および軽質エンドを含む流れを炭化水素流れから分離すること;および(c)炭化水素流れを分留ゾーンに送って、ガソリンの沸点範囲の炭化水素化合物をガソリン範囲流れに、航空燃料の沸点範囲の炭化水素化合物を航空燃料範囲流れに、そしてディーゼル燃料の沸点範囲の炭化水素化合物をディーゼル燃料範囲流れに分けること;を含む、熱分解油供給原料から炭化水素生成物を製造する方法。
【0038】

他の実施態様は、(a)熱分解油供給原料から水相の少なくとも一部を分離して、熱分解リグニン含量の高い熱分解油を生成させること;(b)脱酸素条件にて水素の存在下で、熱分解リグニン含量の高い熱分解油と部分脱酸素・水素化触媒とを接触させることにより部分脱酸素ゾーンにて熱分解リグニン含量の高い熱分解油を部分脱酸素して、水、ガス、軽質エンド、および炭化水素を含む部分脱酸素熱分解油流れを生成させること;(c)部分脱酸素熱分解油流れを分離ゾーンに送って、水、ガス、および軽質エンドを含む流れを炭化水素流れから分離すること;(d)炭化水素流れを完全脱酸素ゾーンに送り、脱酸素条件下にて脱酸素触媒と接触させることによって炭化水素流れを脱酸素して、ガソリン、航空燃料、ディーゼル燃料、およびこれらの任意の組み合わせ物の沸点範囲の燃料もしくは燃料ブレンド用成分として有用な炭化水素化合物を含む生成物流れを生成させること;および(e)生成物流れを分留ゾーンに送って、ガソリンの沸点範囲の炭化水素化合物をガソリン範囲流れに、航空燃料の沸点範囲の炭化水素化合物を航空燃料範囲流れに、そしてディーゼル燃料の沸点範囲の炭化水素化合物をディーゼル燃料範囲流れに分けること;を含む、熱分解油供給原料から炭化水素生成物を製造する方法である。この方法はさらに、生成物流れ、ガソリン範囲流れ、航空燃料範囲流れ、ディーゼル燃料範囲流れ、またはこれらの任意の組み合わせ流れの一部を、部分脱酸素ゾーン、完全脱酸素ゾーン、またはこれらの両方にリサイクルすることを含んでよく、このとき脱酸素ゾーンへのリサイクルと供給原料との容量比は2:1〜8:1の範囲である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱酸素条件にて水素の存在下で、全熱分解油供給原料と部分脱酸素・水素化触媒とを接触させることにより、部分脱酸素ゾーンにおいて全熱分解油供給原料を部分脱酸素して、
水、ガス、軽質エンドおよび炭化水素を含む部分脱酸素熱分解油流れを生成すること;
部分脱酸素熱分解油流れを分離ゾーンに送って、水、ガス、および軽質エンドを含む流れを炭化水素流れから分離すること;および
炭化水素流れを完全脱酸素ゾーンに送り、脱酸素条件下にて脱酸素触媒と接触させることによって炭化水素流れを脱酸素して、ガソリン、航空燃料、ディーゼル燃料、およびこれらの任意の組み合わせ物の沸点範囲の燃料もしくは燃料ブレンド用成分として有用な炭化水素化合物を含む生成物流れを生成させること;
を含む、全熱分解油供給原料から炭化水素生成物を製造する方法。
【請求項2】
生成物流れを第2の分離ゾーンに送って、水、ガス、および軽質エンドを生成物流れから分離して、精製された生成物流れを生じさせること;および、精製された生成物流れを生成物分留ゾーンに送って、ガソリンの沸点範囲の炭化水素化合物とディーゼル燃料の沸点範囲の炭化水素化合物とに分離すること;をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生成物分留ゾーンにおいて航空燃料の沸点範囲の炭化水素化合物を分離することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ガソリンの沸点範囲の炭化水素化合物、航空燃料の沸点範囲の炭化水素化合物、ディーゼル燃料の沸点範囲の炭化水素化合物、またはこれらの任意の組み合わせ物の一部を部分脱酸素ゾーン、完全脱酸素ゾーン、またはこれらの両方にリサイクルすることをさらに含み、このとき脱酸素ゾーンへのリサイクルと供給原料との容量比が2:1〜8:1の範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
生成物流れの一部を部分脱酸素ゾーン、完全脱酸素ゾーン、またはこれらの両方にリサイクルすることをさらに含み、このとき脱酸素ゾーンへのリサイクルと供給原料との容量比が2:1〜8:1の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
完全脱酸素ゾーン中の触媒が、部分脱酸素ゾーン中の触媒より高活性であり、完全脱酸素ゾーンにおける脱酸素条件が、部分脱酸素ゾーンまたは部分脱酸素ゾーンと完全脱酸素ゾーンの両方における脱酸素条件より厳しい、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
水、ガス、および軽質エンドを含む流れを分離ゾーンから改質ゾーンに送って水素流れを生成させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
水素流れを部分脱酸素ゾーン、完全脱酸素ゾーン、またはこれらの両方に送ることをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水、ガス、および軽質エンドを含む流れを第2の分離ゾーンから改質ゾーンに送って水素流れを生成させること、およびこの水素流れを部分脱酸素ゾーン、完全脱酸素ゾーン、またはこれらの両方に送ることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
水、ガス、および軽質エンドを含む流れを分離ゾーンから送ること、水、ガス、および軽質エンドを含む流れを第2の分離ゾーンから改質ゾーンに送って水素流れを生成させること、およびこの水素流れを部分脱酸素ゾーン、完全脱酸素ゾーン、またはこれらの両方に送ることをさらに含む、請求項2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−517470(P2011−517470A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504083(P2011−504083)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/039291
【国際公開番号】WO2009/126508
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】