説明

バイオマテリアル

1,2−ジオールまたは1,3−ジオール構造を有する単位を含むポリマー主鎖および架橋可能な基を有する少なくとも2つの側鎖を有するマクロマーと両親媒性コモノマーとを架橋させることにより形成されるバイオマテリアル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2004年6月29日に出願されたU.S.Provisional Application Serial No. 60/583,852に関係し、且つ優先権を主張しており、その全体の内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
組織の修復および組織の増強に使用するために適切なバイオマテリアルが必用とされる多くの場合がある。適切なバイオマテリアルの用途は、疾患、傷害または加齢により引き起こされる組織の欠陥および症状の修復、組織の先天性の欠陥および症状の修復、ならびに所望の機能的、再建的または美容的変化を与えるための組織の増強を含む。
【0003】
BioCure, Inc, へのWO 01/68721は、1,2−ジオールおよび/または1,3−ジオール構造を持つ単位を有するポリマーの主鎖を有するマクロマーを含む、組織増大化(tissue bulking)のために有用な組成物を開示する。このようなポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)および酢酸ビニルの加水分解したコポリマー、例えば塩化ビニルまたはN−ビニルピロリドンとのコポリマーを含む。主鎖ポリマーは、架橋可能な基および場合により他の変性剤を有する側鎖を含有する。このマクロマーは架橋されるとヒドロゲルを形成する。
【0004】
WO 01/68721に教示されたヒドロゲルは、多くのバイオ用途に適している。しかしながら、多くの用途において移植片として使用されるバイオマテリアルに必要な性質を有していない。特に、例えば、脊椎椎間板核(spinal disc nucleus)上にかかる繰り返し応力を受けるバイオマテリアルに必要な性質を有していない。
【0005】
本発明の要約
本発明は、バイオマテリアルおよびバイオマテリアルを形成するための組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、架橋可能なマクロモノマー(本明細書ではマクロマーとも呼ばれる)および両親媒性コモノマーを含む組成物から形成されたヒドロゲルを含むバイオマテリアルに関する。コモノマーを含むことは増強された圧縮性およびヒドロゲルへの統合性(integrity)を与える。
【0006】
発明の詳細な説明
本発明は、バイオマテリアルおよびバイオマテリアルを形成するための組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、ある身体組織の置換または増強のために適切な性質を有するバイオマテリアルに関する。
【0007】
バイオマテリアルは、ある性質を有するバイオマテリアルを必要とするバイオ用途に使用することができる。これらの性質は、一般に、バイオマテリアルが生体適合性がありそして望ましくは、低侵襲性手段を使用して移植可能であることを含む。バイオマテリアルは好ましくは注入可能な組成物から形成される。その場で形成されるバイオマテリアルは、それが注入される空間に形状が合致している。
【0008】
バイオマテリアルは、望ましくは、圧縮可能であるべきであり、10〜30%歪で0.2〜40MPa、好ましくは0.5〜3MPaの圧縮弾性率を有し、そして50Mサイクルまでの、しかしそれには限定されない、圧縮、屈曲および捩じりなどの機械的応力に対して耐疲労性である。バイオマテリアルは、望ましくは耐摩耗性である。なぜならば、破片が炎症および痛みを引き起こす可能性がありうるからである。バイオマテリアルは、望ましくは、破断時に約1000〜6000ニュートンの降伏荷重、60〜70%の歪を有する。望ましいことがありうる他の特徴は、生理学的条件下での繰り返し荷重に耐える能力である。さらに、バイオマテリアルが移植されると膨潤してバイオマテリアルが移植される空間を満たすかまたはリフト(lift)を与えるために有利でありうる。さらなる可能性のあるデザインの特徴は、ネイティブ組織への接着および例えば約30分の緩和後の100%の圧縮後のリコイル(recoil)を含む。
【0009】
人工の脊椎椎間板核(spinal disc nucleus)として使用するほかに、他の可能性のある用途は、関節、例えば膝半月、顎関節、手首等において見出される軟骨の置換;椎骨形成手術(vertebroplasty)(弱くなった脊椎の増強または機械的支持);骨セメント(骨断片を互いに接合するのに使用される接着剤または材料);骨充填剤(欠陥における新たな骨充填物として恒久的にまたは一時的に骨の空洞を充填する材料);ねじによる脊椎固定のための金属ケージへの付加物(ポリマーはさらなる機械的支持を与えることができる);および重量を支えない骨(顔の眼窩の骨)に対する骨折の支持を含むが、それらに限定される訳ではない。
【0010】
I.バイオマテリアル
WO 01/68721に記載されたマクロマーと同様なマクロマーを使用してバイオマテリアルは製造される。しかしながら、あるコモノマーの添加はバイオマテリアルに予想外の性質を与えることが見出された。コモノマーを以下に詳細に説明する。
【0011】
マクロマー
マクロマーは、1,2−ジオールおよび/または1,3−ジオール構造を有する単位を含むポリマーの主鎖および架橋可能な基を含む少なくとも2つの側鎖を有する。マクロマー主鎖は、場合により変性剤を含有する他の側鎖を有することができる。
【0012】
マクロマー主鎖として使用することができるポリビニルアルコール(PVA)は、市販されているPVA、例えばAir ProductsからのVinol(登録商標)107(MW22,000〜31,000、98〜98.8%加水分解)、Polysciences 4397(MW 25,000、98.5%加水分解)、Chan ChunからのBF14、DuPontからのElvanol(登録商標)90〜50およびUnitikaからのUF-120を含む。他の製造者は、例えば、Nippon Gohsei (Gohsenol(登録商標))、Monsanto(Gelvatol(登録商標))、Wacker(Polyviol(登録商標))、Kuraray、DerikiおよびShin-Etsuを含む。ある場合には、HoechstからのMowiol(登録商標)製品、特に3-83、4-88、4-98、6-88、6-98、8-88、8-98、10-98、20-98、26-88および40-88型のものを使用するのが有利である。
【0013】
例えば、加水分解されたエチレン−酢酸ビニル(EVA)または塩化ビニル−酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン−酢酸ビニルおよび無水マレイン酸−酢酸ビニルとして得ることができる加水分解されたまたは部分的に加水分解された酢酸ビニルのコポリマーを使用することも可能である。マクロマー主鎖が例えば酢酸ビニルとビニルピロリドンとのコポリマーの場合、市販のコポリマー、例えばBASFから名称Luviskol(登録商標)の下に入手可能な市販の製品を使用することがやはり可能である。特定の例は、Luviskol VA 37 HM 、Luviskol VA 37 E およびLuviskol VA 28である。マクロマー主鎖がポリ酢酸ビニルの場合、HoechstからのMowilith 30が特に適切である。
【0014】
PVAは、好ましくは少なくとも約2,000の分子量を有する。上限として、PVAは、300,000までの分子量を有することができる。好ましくは、PVAは、約130,000までの、さらに好ましくは約60,000までの、特に好ましくは約14,000までの分子量を有する。
【0015】
PVAは、通常ポリ(2−ヒドロキシ)エチレン構造を有する。PVAは1,2−グリコールの形態にあるヒドロキシ基を含むこともできる。PVAは、すべての反復基が−CH−CH(OH)である完全に加水分解されたPVAまたはさまざまな割合の(1%〜25%)のエステル側基を有する部分的に加水分解されたPVAであることができる。エステル側基を有するPVAは、構造CH−CH(OR)(式中、RはCOCH基またはPVAの水溶性が保存される限り、より長いアルキルである)の反復基を有する。エステル基は、PVAにある程度の疎水性および強度を付与するアセチルアルデヒドまたはブチルアルデヒドアセタールにより置換されていてもよい。酸化的に安定なPVAを必要とする用途では、市販のPVAは、NaIO−KMnO酸化により分解されて小さな分子量(2000〜4000)PVAを生じることがありうる。
【0016】
PVAは、ポリ酢酸ビニルの塩基性または酸性での部分的または実質的に完全な加水分解により製造される。好ましい態様では、PVAは、50%未満のアセテート単位、特に25%未満のアセテート単位を含む。PVAにおける残留アセテート単位の好ましい量は、アルコール単位とアセテート単位の和を基準として、約3〜25%である。
【0017】
マクロマーは、架橋することができる基を含有する少なくとも2つの側鎖を有する。基は、単一の重合可能な部分、例えばアクリレートおよびより大きい架橋可能な領域、例えばオリゴマーまたはポリマー領域を含むことが本明細書で定義される。架橋剤は、望ましくは主鎖グラム当たり架橋剤約0.01〜10ミリ当量(meq/g)、さらに望ましくは約0.05〜1.5meq/gの量で存在する。マクロマーは、1つより多くの型の架橋可能な基を含有することができる。
【0018】
側鎖は、主鎖のヒドロキシル基を介して結合される。望ましくは、架橋可能な基を有する側鎖は、1,2−ジオール、1,3−ジオールヒドロキシル基に環状アセタール結合を介して結合される。望ましい架橋可能な基は、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニルエステル、ビニルケトン、ビニルエーテル等を含む。特に望ましいものは、エチレン性不飽和官能基である。特に望ましい架橋剤は、マクロマー当たり約6〜21架橋剤の量のN−アクリロイルアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール(NAAADA)である。
【0019】
組成物において使用するのに適切な特定のマクロマーは、US Patent No.5,508,317、5,665,840、5,807,927、5,849,841、5,932,674、5,939,489および6,011,077に開示されている。
【0020】
1つの態様では、架橋可能な基を含有する単位は、特に式I
【化1】


(式中、Rは、直鎖もしくは分岐状C〜Cアルキレンまたは直鎖もしくは分岐状C〜C12アルカンである)
に合致する。適切なアルキレンの例は、オクチレン、ヘキシレン、ペンチレン、ブチレン、プロピレン、エチレン、メチレン、2−プロピレン、2−ブチレンおよび3−ペンチレンを含む。好ましくは低級アルキレンRは、6個までの、特に好ましくは4個までの炭素原子を有する。基エチレンおよびブチレンが特に好ましい。アルカンは、特にメタン、エタン、n−もしくはイソプロパン、n−、sec−もしくはtert−ブタン、n−もしくはイソペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはオクタンを含む。好ましい基は、1〜4個の炭素原子、特に1個の炭素原子を含有する。
【0021】
は、水素、C〜Cアルキルまたはシクロアルキル、例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチルであり、そしてRは、水素またはC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチルである。RおよびRは、好ましくは各々水素である。
【0022】
は、25個までの炭素原子を有するオレフィン性不飽和の電子吸引性の共重合可能な基である。1つの態様では、Rは、構造
【化2】


(式中、Rは、n=0の場合、
【化3】


基であり、または
n=1の場合、
【化4】


の橋であり;
は、水素またはC〜Cアルキル、例えばn−ブチル、n−もしくはイソプロピル、エチルまたはメチルであり;
nは、0もしくは1、好ましくは0であり;そして
およびRは、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分岐状C〜Cアルキル、アリールまたはシクロヘキシル、例えば下記:オクチル、ヘキシル、ペンチル、ブチル、プロピル、エチル、メチル、2−プロピル、2−ブチルまたは3−ペンチルの1つである。Rは、好ましくは水素またはCH基であり、そしてRは、好ましくはC〜Cアルキル基である。アリールとしてのRおよびRは、好ましくはフェニルである。)
を有する。
【0023】
他の態様では、Rは、式R−CO−(式中、Rは、2〜24個の炭素原子、好ましくは2〜8個の炭素原子、特に好ましくは2〜4個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和の共重合可能な基である)のオレフィン性不飽和アシル基である。2〜24個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和の共重合可能な基Rは、好ましくは2〜24個の炭素原子を有するアルケニル、特に2〜8個の炭素原子を有するアルケニル、特に好ましくは2〜4個の炭素原子を有するアルケニル、例えばエテニル、2−プロペニル、3−プロペニル、2−ブテニル、ヘキセニル、オクテニルまたはドデセニルである。基CO−Rがアクリル酸もしくはメタクリル酸のアシル基であるように、基エテニルおよび2−プロペニルが好ましい。
【0024】
他の態様では、基Rは、式
【化5】


(式中、pおよびqは、0または1であり、そして
およびR10は、各々独立して、2〜8個の炭素原子を有する低級アルキレン、6〜12個の炭素原子を有するアリーレン、6〜10個の炭素原子を有する飽和した二価の環状脂肪族基、7〜14個の炭素原子を有するアリーレンアルキレンもしくはアルキレンアリーレンまたは13〜16個の炭素原子を有するアリーレンアルキレンアリーレンであり、そして
は、上記したとおりである)
で示される基である。
【0025】
低級アルキレンRまたはR10は、好ましくは2〜6個の炭素原子を有しそして特に直鎖状である。適切な例は、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、ジメチルエチレン、特に好ましくはエチレンを含む。
【0026】
アリーレンRまたはR10は、好ましくは非置換であるかまたは低級アルキルもしくは低級アルコキシにより置換されているフェニレン、特に1,3−フェニレン、または1,4−フェニレンまたはメチル−1,4−フェニレンである。
【0027】
飽和した二価の環状脂肪族基RまたはR10は、好ましくは非置換であるかまたは1以上のメチル基で置換されているシクロヘキシレンまたはシクロヘキシレン−低級アルキレン、例えば、シクロヘキシレンメチレン、例えば、トリメチルシクロヘキシレンメチレン、例えば二価のイソホロン基である。
【0028】
アルキレンアリーレンまたはアリーレンアルキレンRまたはR10のアリーレン単位は、好ましくは、非置換であるかまたは低級アルキルもしくは低級アルコキシにより置換されているフェニレンであり、そしてそのアルキレン単位は好ましくは低級アルキレン、例えばメチレンまたはエチレン、特にメチレンである。従って、このような基RまたはR10は、好ましくはフェニレンメチレンまたはメチレンフェニレンである。
【0029】
アリーレンアルキレンアリーレンRまたはR10は、好ましくはアルキレン単位中に4個までの炭素原子を有するフェニレン−低級アルキレン−フェニレン、例えばフェニレンエチレンフェニレンである。
【0030】
基RおよびR10は、各々独立して、好ましくは、2〜6個の炭素原子を有する低級アルキレン、非置換であるかまたは低級アルキルで置換されているフェニレン、非置換であるかまたは低級アルキルで置換されているシクロヘキシレンまたはシクロヘキシレン−低級アルキレン、フェニレン−低級アルキレン、低級アルキレン−フェニレンまたはフェニレン−低級アルキレン−フェニレンである。
【0031】
qが1である場合には、基−R−NH−CO−O−が存在し、そしてqが0である場合には、基−R−NH−CO−O−は存在しない。qが0であるマクロマーが好ましい。
【0032】
pが1である場合には、基−CO−NH−(R−NH−CO−O)−R10−O−が存在し、そしてpが0である場合には、基−CO−NH−(R−NH−CO−O)−R10−O−は存在しない。pが0であるマクロマーが好ましい。
【0033】
pが1であるマクロマーにおいて、qは好ましくは0である。pが1であり、qが0でありそしてR10が低級アルキレンであるマクロマーが特に好ましい。
【0034】
上記基のすべては、一置換または多置換されていてもよく、適切な置換基の例は下記のもの:C〜Cアルキル、例えばメチル、エチルまたはプロピル、−COOH、−OH、−SH、C〜Cアルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシまたはイソブトキシ)、−NO、−NH、−NH(C〜C)、−NH−CO−NH、−N(C〜Cアルキル)、フェニル(非置換であるかまたは、例えば−OHまたはハロゲン、例えばCl、Brまたは特にIで置換されている)、−S(C〜Cアルキル)、5員もしくは6員複素環、例えば、特に、インドールもしくはイミダゾール、−NH−C(NH)−NH、フェノキシフェニル(非置換であるかまたは、例えば−OHまたはハロゲン、例えばCl、Brあるいは特にIで置換されている)、オレフィン基、例えばエチレンまたはビニルおよびCO−NH−C(NH)−NHである。
【0035】
好ましい置換基は、低級アルキル、該低級アルキルはここではこの説明の他の場所と同様であり、好ましくはC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、COOH、SH、−NH、−NH(C〜Cアルキル)、−N(C〜Cアルキル)またはハロゲンである。特に好ましくは、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、COOHおよびSHである。
【0036】
本発明の目的で、シクロアルキルは、特にシクロアルキルでありそしてアリールは特に、非置換であるかまたは上記したとおり置換されているフェニルである。
【0037】
1つの特に好ましいマクロマーは、0.45meq/gN−アクリルアミドアセトアルデヒドジメチルアセタール(NAAADA)重合可能側基(約6.3架橋剤/鎖)で変性されたPVA主鎖(14kDa、17%アセテート包含)を有する。他の特に好ましいマクロマーは、1.07meq/gN−アクリルアミドアセトアルデヒドジメチルアセタール(NAAADA)重合可能側基(約15架橋剤/鎖)で変性されたPVA主鎖(14kDa、17%アセテート包含)を有する。
【0038】
コモノマー
WO 01/68721は、ヒドロゲルの特徴を変えるために親水性または疎水性であるコモノマーの添加を説明する。驚くべきことに、両親媒性コモノマーの包含は材料の降伏荷重を改良するなどのある性質を付加することが見出された。
【0039】
本明細書で使用された用語の両親媒性は、分子の1つの部分が親水性でありそして分子の1つの部分が疎水性であることを意味する。1つの態様では、親水性部分は水溶性でありそして疎水性部分は水溶性ではない。全体としてのモノマーは、好ましくは完全にまたは部分的に水溶性である。有用な両親媒性コモノマーの例は、ジアセトンアクリルアミド(DAA)、N−ビニルカプロラクタム、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−アクロイルモルホリン、クロトンアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミドおよびアクリルアミドである。
【0040】
両親媒性コモノマーが、上記したマクロマーと共重合されると、両親媒性コモノマーを含有していないヒドロゲルよりも凝集性の高い且つ高い圧縮強度を有するヒドロゲルが得られる。望ましくは、コモノマーは、約5〜95重量%、最も好ましくは40〜60重量%(ここで、重量%は全溶液の重量%である)の範囲の量で含まれる。
【0041】
架橋開始剤
マクロマーおよびコモノマーのエチレン性不飽和基は、光開始、酸化還元開始および熱的開始によることを含むフリーラジカル開始重合により架橋することができる。これらの開始手段を使用する系は当業者には良く知られている。
【0042】
1つの態様では、二成分酸化還元系が使用される。系の1つの成分は還元剤を含有する。還元剤の例は鉄(II)塩(例えばグルコン酸鉄(II)二水塩、乳酸鉄(II)二水塩、または酢酸鉄(II))、銅(I)塩、セリウム塩、コバルト塩、過マンガン酸塩、マンガン(II)塩、および第三級アミン、例えばN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)である。溶液の他の半分は、酸化剤、例えば過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、クミルペルオキシド、過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムを含有する。
【0043】
酸化還元溶液のいずれか一方または両方がマクロマーを含有することができ、または第3の溶液中にあってもよい。還元剤および酸化剤を含有する溶液を一緒にして架橋を開始する。例えば、アスコルビン酸塩を共還元剤として使用して還元剤を再循環させ、必要な量を減少させることができる。これは鉄(II)をベースとする系の毒性を減少させることができる。
【0044】
熱的開始は、架橋開始剤として過硫酸アンモニウムを使用し、そして場合によりアミン促進剤であるN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を使用して達成することができる。
【0045】
成分の所望の量は、ゲル化速度、毒性、所望されるゲル化の程度および安定性に関連した問題により決定されるだろう。
【0046】
変性剤基
マクロマーは、さらなる変性剤基および架橋可能な基を含むことができる。いくつかのこのような基は、US Patent Nos. 5,508,317、5,665,840、5,807,927、5,849,841、5,932,674、5,939,489および 6,011,077に記載されており、そして疎水性変性剤、例えばアセトアルデヒドジエチルアセタール(AADA)、ブチルアルデヒドおよびアセトアルデヒドまたは親水性変性剤、例えばN−(2,2−ジメトキシエチル)スクシンアミド酸、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタールおよびアミノブチルアルデヒドジメチルアセタールを含む。これらの基は、マクロマー主鎖に結合していてもよくまたは主鎖に含まれる他のモノマー単位に結合していてもよい。架橋可能な基および場合による変性剤基は、種々の方法で、例えば2−位置に架橋可能な基または更なる変性剤を含有する1,3−ジオキサンを与えるように変性される一定の割合の1,3−ジオール単位を介してマクロマー主鎖に結合させることができる。変性剤は、疎水性を変性するための変性剤、活性作用物質もしくは活性作用物質の結合を可能とするための基、光開始剤、接着性を増強または減少させる変性剤、熱応答性を付与するための変性剤、他のタイプの応答性を付与するための変性剤およびさらなる架橋可能な基を含む。
【0047】
細胞接着促進剤をマクロマーに結合させることは、組成物の細胞結合または接着性を増強させることができる。これらの作用物質は、当業者に良く知られており、そしてカルボキシメチルデキストラン、プロテオグリカン、コラーゲン、ゼラチン、グルコサミノグリカン、フィブロネクチン、レクチン、ポリカチオン、および天然もしくは合成生物学的細胞接着剤、例えばRGDペプチドを含む。
【0048】
例えばアセトアルデヒドまたはブチルアルデヒドアセタールにより置換されているエステル側基を有することは、マクロマーおよび形成されるヒドロゲルの疎水性を増加させることができる。1つの特に有用な疎水性変性剤基は、約0〜4ミリ当量/グラム(meq/g)PVAの量で存在するアセトアルデヒドジエチルアセタール(AADA)である。
【0049】
約0〜2meq/gPVAの量のN−(2,2−ジメトキシ−エチル)スクシンアミド酸の形態の−COOHなどの親水性変性剤を組成物に加えて、膨潤などの組成物の性能を増強させることができる。
【0050】
形成されたヒドロゲルの可視化を可能とする分子をマクロマー上に含ませることが望ましい場合もある。例は、染料および磁気共鳴映像法により見ることができる分子を含む。
【0051】
造影剤
バイオマテリアルは、例えばラジオグラフィーにより監視されることができる生体適合性材料である造影剤を含むことができる。造影剤は、水溶性または水に不溶性であることができる。水溶性造影剤の例は、メトリザミド、イオパミドール、イオタラム酸ナトリウム、ヨーダミドナトリウムおよびメグルミンを含む。ヨウ素化液体造影剤(iodinated liquid contrast agents)はOmnipaque(登録商標)、Visipaque(登録商標)およびHypaque-76(登録商標)を含む。水不溶性造影剤の例は、タンタル、酸化タンタル、硫酸バリウム、金、タングステンおよび白金である。これらは、好ましくは約10μm以下のサイズを有する粒子として普通に入手可能である。被覆された繊維、例えばタンタル被覆されたDacron繊維を使用することもできる。
【0052】
造影剤は、バイオマテリアル中に一時的または恒久的に組み込まれる。固体および液体造影剤は共に、マクロマーおよびコモノマーの架橋の前に液体組成物の溶液と簡単に混合することができる。液体造影剤は、約10〜80容量%、さらに望ましくは約20〜50容量%の濃度で混合することができる。望ましくは、固体造影剤は、約5〜40重量%、さらに好ましくは約5〜20重量%の量で含まれる。
【0053】
活性作用物質
バイオマテリアルは、有効量の1種以上の生物学的または構造的に活性な作用物質を含むことができる。活性作用物質を形成されたヒドロゲルから送達することが望ましい。送達することが望ましい生物学的に活性な作用物質は、有機および無機分子および細胞を含む予防、治療および診断薬(まとめて本明細書では「活性作用物質」または「薬物」と呼ばれる)を含む。広い多様な活性作用物質をヒドロゲルに包含させることができる。包含させた添加剤のヒドロゲルからの放出は、ヒドロゲルからの作用物質の拡散、ヒドロゲルの分解、および/または作用物質をポリマーにカップリングさせる化学的結合の分解により達成される。この状況で、「有効量」は、所望の効果を得るために必要な活性作用物質の量を指す。
【0054】
包含させることができる活性作用物質の例は、抗脈管形成剤、成長因子、化学療法剤、放射線送達装置、例えば近接照射療法のための放射性種、遺伝子治療組成物、痛みの処置のための鎮痛剤、例えばイブプロフェン、アセトアミノフェン、およびアセチルサリチル酸;および感染の処置のための抗生物質、例えばテトラサイクリンおよびペニシリンおよび誘導体;ならびに感染の処置のための添加剤、例えば銀イオン、銀(金属)および銅(金属)を含むが、それらに限定されるわけではない。
【0055】
包含させることができる化学療法剤は、水溶性化学療法剤、例えばシスプラチン(プラチノール)、ドキソルビシン(アドリアマイシン、ルベックス)またはマイトマイシンC(ムタマイシン)を含む。他の化学療法剤はケシ種子油のヨウ素化脂肪酸エチルエステル、例えばリピオドールを含む。
【0056】
組織増殖を促進するための細胞または所望の活性作用物質を分泌するための細胞を含む細胞を、組成物に包含させることができる。例えば包含させることができる細胞は、幹細胞、自己髄核細胞(autologous nucleus pulposus cells)、移植された自己髄核細胞、自己組織、線維芽細胞、軟骨細胞、脊索細胞、同種移植組織および細胞ならびに異種移植組織および細胞を含む。
【0057】
タンパク質、ポリペプチド、多糖、プロテオグリカン成長因子などの生物起源の材料または合成製造法に由来する生物学的材料を包含させるのが有利である。
【0058】
バイオマテリアルの膨潤および空間充填性を改良するための添加剤、例えば脱水した球、繊維等、親水性ポリマー、例えばAMPS等または親水性コロイド、例えば寒天、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、グアーゴム、アラビアゴム、ペクチン、デンプンおよびキサンタンガムを含むことが望ましい場合がある。
【0059】
有利であることを証明することができる他の添加剤は、正に帯電したポリマー、例えばQuats等、主鎖に結合した正に帯電した部分により変性されたPVA、シアノアクリレート、主鎖に結合したシアノアクリレート部分で変性されたPVA、キトサンおよびイガイをベースとする接着剤を含むバイオマテリアルの接着性を改良するための添加剤である。
【0060】
「クラック阻止剤」として作用する低弾性率の球、繊維等および「強化」剤として作用する高弾性率の球および繊維等などのバイオマテリアルの強靭性を改良するための添加剤の包含が、望ましいと示されることがある。
【0061】
活性作用物質は、投与の前に該作用物質を組成物と単に混合することにより組成物中に包含させることができる。活性作用物質は、次いで組成物の投与時に形成されるヒドロゲル中に閉じ込められるであろう。活性作用物質は、カプセル化および当技術分野で知られておりそしてさらに下記する他の方法により予め形成された物品中に包含させることができる。活性作用物質は、コンパウンド形態にでき、または分解性もしくは非分解性ナノもしくはマイクロ球の形態にあることができる。ある場合には、活性作用物質をマクロマーまたは予め形成された物品に結合させることが可能でありそして望ましいことがある。活性作用物質は、予め形成された物品の表面に被覆させることもできる。活性作用物質は、時間と共にまたは環境条件に応答してマクロマーまたはヒドロゲルから放出させることができる。
【0062】
他の添加剤
酸化還元開始系にペルオキシド安定剤を包含させることが望ましいことがある。ペルオキシド安定剤の例は、Solutia IncからのDequest(登録商標)製品、例えばDequest(登録商標)2010およびDequest(登録商標)2060Sである。これらは、ペルオキシド系の安定化を与えるホスホン酸塩およびキレート剤(chelants)である。Dequest(登録商標)2060Sは、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)である。これらは、製造者により推奨されたとおりの量で加えることができる。
【0063】
II.バイオマテリアルを製造しそして使用する方法
バイオマテリアルを製造する方法の1つの態様では、両親媒性コモノマーを各々について所望の濃度でそして互いに所望の割合でマクロマーと混合する。次いで混合物を重合を促進するための条件にさらす。例えば、過硫酸アンモニウムなどの熱開始剤を溶液中に含ませ、次いで溶液を加熱し、熱開始を使用することができる。還元剤を1つの部分に含ませそして酸化剤を第2の部分に含ませ、そしてそれらの部分を一緒にすると重合が起こるような、酸化還元重合を使用することができる。
【0064】
一般的な使用方法に従えば、有効量の組成物を所望の投与部位に投与する。1つの態様では、マクロマーおよびコモノマーをその場で架橋する。他の態様では、マクロマーおよびコモノマーを投与の前にヒドロゲルに成形する。組成物を多数の処置診療にわたり投与することができる。
【0065】
バイオマテリアルの特に有利な使用は、液体前駆体を低侵襲性手段により送達する、バイオマテリアルのその場での架橋である。
【0066】
マクロマー/コモノマー溶液を、造影剤、開始剤および任意のさらなる促進剤または触媒剤などの他の成分と十分に混合する。次いで全ての気泡を追い出すように注意しながら、溶液を10mlルエル−ロク(Luer-Lok)注射器中に吸い上げる。約18ゲージの鈍針を注射器に取り付ける。次いでマクロマーおよびコモノマー溶液を、空間が所望のレベルに充填されるまで蛍光透視下に送達する。次いでマクロマー/コモノマー溶液は、好ましくは注入後に2〜15分以内に架橋して形成されたヒドロゲルになるであろう。
【0067】
別の送達方法では、普通の18ゲージの針または混合チップに接続された対の注射器アプリケータ(twin syringe applicator)を使用することができる。開始剤および場合により造影剤を含有するマクロマー/コモノマー溶液を調製しそして5mlルエル−ロク注射器に吸い込みそして対の注射器アプリケータに取り付ける。第2の溶液を、促進剤/触媒種および場合により造影剤により調製し、他の5mlルエル−ロク注射器に吸い込みそして対の注射器アプリケータに取り付ける。2つの溶液を、空間が所望のレベルに充填されるまで蛍光透視法による案内の下で空間に同時に送達する。次いでマクロマー/コモノマーは好ましくは注入の2〜15分以内に架橋して形成されたポリマーとなるであろう。
【0068】
組成物の粘度は、広い範囲内で、限定はされないが、溶液は、好ましくは適切なサイズのカテーテルまたは注射針により送達されうる流動性溶液であるべきである。マイクロカテーテルによる送達のために、約10〜50cpの範囲の粘度が望ましい。粘度は、注射針を通して送達するために実質的により高くすることができ、例えば機械的補助なしで20〜300cpまたは機械的補助ありで10〜500cpであることができる。粘度は、一般にマクロマーの分子量、溶液の固形分および存在する(もしあれば)造影剤の種類および量により制御されるであろう。溶液の固体含有率は、好ましくは約2重量%〜約30重量%、望ましくは約6〜12重量%の範囲にあるであろう。
【0069】
架橋開始剤は、投与前、投与中または投与後にマクロマーおよびコモノマー組成物と混合される。例えば、酸化還元系は、投与の時点で組成物と混合することができる。1つの態様では、架橋開始剤は、投与部位に存在させていてもよい。例えば、開始剤は、その部位に存在する帯電した血液成分などの物質であることができる。互いに接触するとき架橋するマクロマーおよびコモノマーを使用することができる。これらは、投与前、投与中または投与後に混合することができる。1つの態様では、架橋開始剤は、加えられた刺激、例えば架橋を引き起こす光または熱である。熱、光および酸化還元開始重合のための適切な開始剤は知られている。鉄(II)イオン、ペルオキシドおよびアスコルビン酸塩を使用する酸化還元開始系では、所望の成分の量は、ゲル化速度、毒性、所望されるゲル化の程度および安定性に関連した問題により決定されるであろう。
【0070】
開始剤が投与前に加えられる場合、組成物があまりにも早くゲル化しないように、遅延した架橋を与える系を使用することが望ましいことがある。さらに、遅延した硬化を使用して、組成物は、完全な硬化が起こる前に所望の形状をとるかまたは所望の形状に形成することができる。
【0071】
ある態様では、組成物は、マクロマーの実質的な架橋が起こる前に注入されるべきである。これは、マクロマーがその場で架橋を続けることを可能としそしてゲル化したポリマーによる注射針またはカテーテルの閉塞を防止する。さらに、このようなその場での架橋は、宿主組織内に存在するコラーゲン分子と共有結合することにより宿主組織へのヒドロゲルの固着を可能とすることができる。
【0072】
組成物は、好ましくは望まれない低分子量成分を含まないので、架橋したヒドロゲル製品もこのような成分を含まない。従って、組成物により得られうる増大化剤および被覆剤は、有利な態様では、それらが極めて清浄であることにより区別される。
【0073】
他の態様では、組成物は、移植の前にヒドロゲル物品に形成されうる。この予め形成された物品は、固体移植片を現在移植する方法と同様にして移植されうる。
【0074】
下記の実施例は、本発明をさらに説明するのに役立ち、当業者に本明細書で請求された化合物、組成物、物品、装置および/または方法がいかに製造されそして評価されるかの完全な開示および説明を与え、そして本発明の範囲を限定することを意図しない。実施例では、特記しない限り、量および百分率は重量により、温度は摂氏でありまたは周囲の温度であり、そして圧力は大気圧であるか大気圧付近である。
【0075】
実施例1:先行技術
PVA(分子量=14,000)を、架橋剤としてN−アクリロイル−アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール(NAAADA)0.45ミリモル/g(6.3xl/鎖)で変性した。20%(w/w)の変性したPVA水溶液10gを過硫酸アンモニウムの10%(w/w)溶液1gと混合し、次いで2cm長さの混合チップを備えた二重注射器アプリケータ(dual syringe applicator)の1つの容器に加えた。別に、20%(w/w)の変性PVA水溶液10gをN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)50μlと混合し、次いで二重注射器アプリケータの第2の容器に入れた。混合物をディスクモールド中に射出し、そこでヒドロゲルが室温で約20秒で急速に形成した。ヒドロゲルは透明であり軟質でありそして圧縮可能であるが脆かった。
【0076】
実施例2
同じ変性したPVAを実施例1と同様に使用した。コモノマージアセトンアクリルアミド(DAA)(4.2g)を30%(w/w)変性PVA溶液20gおよび2%Irgacure光開始剤溶液0.8g中に溶解した。溶液をディスクモールド中に分配し、次いでUV光源で3×90秒間照射した。ヒドロゲルは不透明であり、堅くそして強靭であり、なお圧縮可能である。
【0077】
実施例3
同じ変性したPVAを実施例1と同様に使用した。コモノマー(DAA)2.5gを20%(w/w)変性PVA溶液10g中にゆっくりと溶解した。得られる溶液3gを過硫酸アンモニウムの10%(w/w)溶液0.3gと混合し、次いで2cm長さの混合チップを備えた二重注射器アプリケータの1つの容器に加えた。変性したPVA−DAA溶液の別の3gをTMEDA15μlと混合し、次いで二重注射器アプリケータの第2の容器に入れた。混合物をディスクモールド中に射出し、そこでポリマーが室温で約2.5分で形成した。ディスクは不透明であり、堅くそして圧縮可能であった。
【0078】
実施例4
PVA(分子量=14,000)をNAAADA0.55ミリモル/gおよびアセトアルデヒドジメチルアセタール(疎水性変性剤)3ミリモル/gで変性した。コモノマーDAA20gを、23%(w/w)変性PVA溶液20g中にゆっくりと溶解した。得られる溶液3gに、10%過硫酸アンモニウム溶液0.3gを加えた。十分に混合すると、TMEDA15μlを加え、約5秒間混合し、次いでディスクモールドに送達し、ポリマーが急速に形成した。ディスクは、乳白色であり、非常に堅くそして圧縮可能であった。
【0079】
実施例5
同じ変性したPVAを実施例4と同様に使用した。コモノマー(DAA)2.0gを23%(w/w)変性PVA溶液10gおよび2%Irgacure光開始剤溶液0.45gを中に溶解した。溶液をディスクモールド中に分配し、次いでUV光源で3×90秒間照射した。得られるヒドロゲルは乳白色であり、非常に堅くそして圧縮可能であった。
【0080】
実施例6
PVA(分子量=31,000)をNAAADA0.55ミリモル/gおよびアセトアルデヒドジメチルアセタール3ミリモル/gで変性した。コモノマーDAA20gを、19%(w/w)PVA溶液20g中にゆっくりと溶解した。得られる溶液3gに、10%過硫酸アンモニウム溶液0.3gおよびN,N−ジメチルアクリルアミド30mgを加えた。完全に混合すると、TMEDA15μlを加え、約5秒間混合し、次いでディスクモールド中に送達した。得られるヒドロゲルは、乳白色であり、非常に堅くそして圧縮可能であった。
【0081】
実施例7
PVA(分子量=14,000)を、架橋剤としてN−アクリロイル−アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール(NAAADA)1.07ミリモル/gおよびアセトアルデヒドジエチルアセタール(AADA)2.7ミリモル/gで変性した。コモノマーDAA20gを、24%(w/w)PVA溶液20g中にゆっくりと溶解した。得られる溶液5g中に、過硫酸アンモニウム50mgを溶解した。TMEDA20μlを加え、20秒間混合し、次いでディスクモールド中に送達した。得られるヒドロゲルは、乳白色でありそして4800Nの圧縮降伏荷重を有していた。
【0082】
実施例8
PVA(分子量=14,000)を、架橋剤としてN−アクリロイル−アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール(NAAADA)1.07ミリモル/g、アセトアルデヒドジエチルアセタール(AADA)2.7ミリモル/gおよびアミノアセトアルデヒドジエチルアセタール0.5ミリモル/gで変性した。コモノマーDAA20gを、24%(w/w)PVA溶液20g中にゆっくりと溶解した。得られる溶液5g中に、過硫酸アンモニウム25mgを溶解した。TMEDA20μlを加え、20秒間混合し、次いでディスクモールド中に送達した。得られるヒドロゲルは、僅かに不透明でありそして4600Nの圧縮降伏荷重を有していた。
【0083】
実施例9
PVA(分子量=14,000)を、架橋剤としてN−アクリロイル−アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール(NAAADA)1.07ミリモル/g、アセトアルデヒドジエチルアセタール(AADA)2.5ミリモル/gおよびN−(2,2−ジメトキシ−エチル)スクシンアミド酸1.0ミリモル/gで変性した。コモノマーDAA14gを、24%(w/w)PVA溶液20g中にゆっくりと溶解した。得られる溶液5g中に、過硫酸アンモニウム25mgを溶解した。TMEDA20μlを加え、20秒間混合し、次いでディスクモールド中に送達した。得られるヒドロゲルは、半透明でありそして2700Nの圧縮降伏荷重を有していた。
【0084】
下記のチャートは、実施例7〜9の結果を比較する。
【表1】

【0085】
実施例10:コモノマー濃度の比較
下記のチャートは、降伏荷重に対するコモノマー濃度の効果を比較する。コモノマーはジアセトンアクリルアミド(DAA)であった。
【表2】

【0086】
本発明の修正および変更は前記の詳細な説明から当業者には明らかであろう。すべての修正および変更は、特許請求の範囲により包含されることを意図する。本明細書で引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、そのまま参照することにより本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2−ジオールまたは1,3−ジオール構造を有する単位を含むポリマー主鎖および架橋可能な基を有する少なくとも2つの側鎖を有するマクロマーと両親媒性コモノマーとから形成されるヒドロゲルを含むバイオマテリアル。
【請求項2】
ヒドロゲルが約1000〜6000ニュートンの降伏荷重を有する、請求項1に記載のバイオマテリアル。
【請求項3】
ヒドロゲルが、10〜30%歪で約0.2〜40MPaの圧縮弾性率を有する、請求項1に記載のバイオマテリアル。
【請求項4】
コモノマーが、ジアセトンアクリルアミド(DAA)、N−ビニルカプロラクタム、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−アクロイルモルホリン、クロトンアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミドおよびアクリルアミドからなる群より選択される、請求項1に記載のバイオマテリアル。
【請求項5】
コモノマーが、約40〜60重量%の濃度のジアセトンアクリルアミド(DAA)である、請求項1に記載のバイオマテリアル。
【請求項6】
マクロマーが、約2000〜60,000の分子量を有するポリ(ビニルアルコール)主鎖を有し、そして架橋可能な基を有する側鎖がPVA当たり約6〜21個の架橋剤の量のN−アクリルアミドアセトアルデヒドジメチルアセタール(NAAADA)である、請求項1に記載のバイオマテリアル。
【請求項7】
PVA主鎖が、疎水性変性剤または親水性変性剤によりさらに変性される、請求項1に記載のバイオマテリアル。
【請求項8】
疎水性変性剤が、PVAグラム当たり約0〜4ミリ当量(meq/g)の量で存在するアセトアルデヒドジエチルアセタール(AADA)である、請求項7に記載のバイオマテリアル。

【公表番号】特表2008−510021(P2008−510021A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520380(P2007−520380)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/023295
【国際公開番号】WO2006/004941
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(502158232)バイオキュア・インコーポレーテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】BIOCURE,INC.
【出願人】(307025713)
【氏名又は名称原語表記】CHAOUK,Hassan
【出願人】(307025724)
【氏名又は名称原語表記】ASFAW,Bruktawit,T.
【Fターム(参考)】