説明

バイオ燃料電池モジュール

【課題】長期利用が可能で、燃料供給が容易なバイオ燃料電池モジュールを提供する。
【解決手段】表面に酸化還元酵素が存在する電極を備えた1又は2以上の発電部を有する平板状又はシート状の燃料電池を、その燃料供給部の位置を揃えて、複数個積層し、バイオ燃料電池モジュールとする。このバイオ燃料電池モジュールでは、複数の燃料電池の全て又は任意の個数の燃料電池に燃料供給することができる。また、各燃料電池の発電部に設けられた電極部を交換可能とすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、酸化還元酵素を用いた燃料電池を備えたバイオ燃料電池モジュールに関する。より詳しくは、複数の燃料電池が積層されたバイオ燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アノード又はカソードの少なくとも一方の電極上に、反応触媒として酸化還元酵素を固定した燃料電池(以下、バイオ燃料電池という。)が注目されている。このバイオ燃料電池は、グルコースやエタノールなどのように通常の工業触媒では反応が困難な燃料から、効率よく電子を取り出すことができるため、高容量でかつ安全性が高い次世代の燃料電池として期待されている。
【0003】
図10は酵素を使用したバイオ燃料電池の発電原理を模式的に示す図である。例えば、図10に示すようなグルコースを燃料とするバイオ燃料電池の場合、負極(アノード)101では表面に固定化された酵素によりグルコース(Glucose)を分解して、電子(e)を取り出すと共にプロトン(H)を発生する。また、正極(カソード)102においては、負極(アノード)101からプロトン伝導体103を介して輸送されたプロトン(H)と、外部回路を通って送られた電子(e)と、例えば空気中の酸素(O)とにより水(HO)を生成する。そして、これら正負極の反応が同時に起こることで、正負極間で電気エネルギーが発生する。
【0004】
一方、ダイレクトメタノール型などの燃料電池は、単セルの電圧が低いという問題がある。このため、従来の燃料電池は、一般に、複数のセルを直列に接続したモジュール形態で使用されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。そして、例えば特許文献3に記載の車両用燃料電池の再利用システムでは、複数のセルをスタック化した燃料電池から、部分スタックを抜き出すことにより、用途に応じた出力調整を行っている。また、従来、バイオ燃料電池においても、出力向上を目的として、複数のセルを並列及び/又は直列に接続した構造が提案されている(例えば、特許文献4,5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−139985号公報
【特許文献2】特開2007−149432号公報
【特許文献3】特開2010−27240号公報
【特許文献4】特開2009−140646号公報
【特許文献5】特開2009−48848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の燃料電池には、以下に示す問題点がある。一般に、バイオ燃料電池では、使用時に燃料を注入するが、複数のセルが直列に接続された燃料電池の場合、各セルに個別に燃料を注入しなければならず、作業が煩雑であるという問題点がある。一方、特許文献4に記載の電力供給装置は、燃料供給後に、空気層をイオン遮断部として利用することで、複数のセルに同時に燃料供給できるようにしているが、発電部を天地逆転させるなどの操作が必要であり、手間がかかる。
【0007】
加えて、従来のバイオ燃料電池は、発電時の酵素の安定性や電子伝達物質の溶出などの制限により、使用開始から数日〜数週間で発電性能が低下するという問題点もある。
【0008】
そこで、本開示は、長期利用が可能で、燃料供給が容易なバイオ燃料電池モジュールを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るバイオ燃料電池モジュールは、表面に酸化還元酵素が存在する電極を備えた1又は2以上の発電部を有する平板状又はシート状の燃料電池が、その燃料供給部の位置を揃えて積層されている。
このバイオ燃料電池では、最上層又は最下層の燃料電池のみに燃料が供給される構成とすることができる。
また、各燃料電池は取り外し又は交換可能とすることができる。
更に、1枚の板又はシートに複数の燃料電池を設けると共に、各燃料電池間には切り込み又は折り目が形成し、該切り込み又は折り目で折りたたむことにより、複数の燃料電池が積層してもよい。
その場合、前記切り込み又は折り目によって、各燃料電池を切り離し可能とすることもできる。
更にまた、各燃料電池の発電部には、アノード又はカソードを構成する1対の電極と、各電極間に配置され短絡を防止するセパレータとが設けられており、各電極及び/又はセパレータは交換可能とすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、複数の燃料電池が、その燃料供給部の位置を揃えて積層されているため、燃料供給が容易になり、更に、長期利用も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は本開示の第1の実施形態のバイオ燃料電池モジュールの構成を模式的に示す側面図であり、(b)はその使用方法を示す図である。
【図2】図1に示す燃料電池1の構成を模式的に示す図である。
【図3】(a)及び(b)は図1に示すバイオ燃料電池モジュール10における燃料供給方法を模式的に示す断面図である。
【図4】燃料電池1の電極部の構成例を示す図である。
【図5】図4に示す電極部を交換する方法を模式的に示す図である。
【図6】保温タンクを備える燃料電池1の燃料供給方法を模式的に示す断面図である。
【図7】(a)及び(b)は本開示の第1の実施形態の第1変形例のバイオ燃料電池モジュールにおける電池交換方法を示す図である。
【図8】(a)〜(c)は本開示の第1の実施形態の第2変形例のバイオ燃料電池モジュールにおける電池交換方法を示す図である。
【図9】本開示の第2の実施形態のバイオ燃料電池モジュールの構成を模式的に示す側面図である。
【図10】酵素を使用したバイオ燃料電池の発電原理を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を実施するための形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す各実施形態に限定されるものではない。また、説明は、以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態
(複数の燃料電池が積層されたバイオ燃料電池モジュールの例)
2.第1の実施の形態の第1変形例
(集電部を開いて燃料電池を交換する例)
3.第1の実施形態の第2変形例
(使用済みの燃料電池が湾曲して取り出される例)
4.第2の実施の形態
(折りたたむことで燃料電池が積層されたバイオ燃料電池モジュールの例)

【0013】
<1.第1の実施の形態>
[全体構成]
先ず、本開示の第1の実施形態に係るバイオ燃料電池モジュールについて説明する。図1(a)は本開示の第1の実施形態のバイオ燃料電池モジュールの構成を模式的に示す側面図であり、図1(b)はその使用方法を示す図である。図1(a)に示すように、本実施形態のバイオ燃料電池モジュール10は、1又は2以上の発電部を有する平板状又はシート状の燃料電池1を、その燃料供給部の位置を揃えて積層した構成となっている。
【0014】
[燃料電池1]
図2は図1に示す燃料電池1の構成を模式的に示す図である。図2に示すように、燃料電池1には、アノード11とカソード13とが設けられており、これらの間には、セパレータ12が配置されている。また、アノード11の外側には、燃料拡散層15及びアノード用シール材17が設けられており、アノード用シール材17の中央部には、蓋14を備えた燃料液溜め部19が形成されている。
【0015】
一方、カソード13の外側には、カソード用シール材18が設けられている。このカソード用シール材18のカソード13と接触する部分は、酸素透過膜16により形成されており、カソード13に酸素が供給されるようになっている。更に、アノード11及びカソード13には、それぞれアノード用端子20及びカソード用端子21が接続されている。
【0016】
このバイオ燃料電池1においては、アノード11若しくはカソード13又はその両方の電極表面に、酸化還元酵素が存在している。ここで、電極の表面とは、電極の外面と電極内部の空隙の内面との全体を含み、以下の記載においても同様とする。
【0017】
(アノード11)
アノード11は、燃料極であり、例えば導電性多孔質材料からなる電極の表面に酸化還元酵素が固定化されているものを使用することができる。その際使用する導電性多孔質材料には、公知の材料を使用することができるが、特に、多孔質カーボン、カーボンペレット、カーボンフェルト、カーボンペーパー、炭素繊維又は炭素微粒子の積層体などのカーボン系材料が好適である。
【0018】
また、アノード11の表面に固定化される酵素としては、例えば燃料成分がグルコースである場合は、グルコースを分解するグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を使用することができる。更に、燃料成分にグルコースなどの単糖類を用いる場合には、アノード表面に、GDHのような単糖類の酸化を促進して分解する酸化酵素と共に、補酵素酸化酵素や電子メディエーターが固定化されていることが望ましい。
【0019】
補酵素酸化酵素は、酸化酵素によって還元される補酵素(例えば、NAD,NADPなど)と、補酵素の還元体(例えば、NADH,NADPHなど)を酸化するものであり、例えば、ジアホラーゼなどが挙げられる。この補酵素酸化酵素の作用により、補酵素が酸化体に戻るときに電子が生成され、補酵素酸化酵素から電子メディエーターを介して電極に電子が渡される。
【0020】
また、電子メディエーターとしては、キノン骨格を有する化合物を使用することが好ましく、特に、ナフトキノン骨格を有する化合物が好適である。具体的には、2−アミノ−1,4−ナフトキノン(ANQ)、2−アミノ−3−メチル−1,4−ナフトキノン(AMNQ)、2−メチル−1,4−ナフトキノン(VK3)、2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノン(ACNQ)などを用いることができる。
【0021】
また、キノン骨格を有する化合物としては、ナフトキノン骨格を有する化合物以外に、例えば、アントラキノン−1−スルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸及びアントラキノン−2−カルボン酸などのアントラキノン骨格を有する化合物やその誘導体を用いることもできる。更に、必要に応じて、キノン骨格を有する化合物と共に、電子メディエーターとして作用する1種又は2種以上の他の化合物を固定化してもよい。
【0022】
一方、燃料成分に多糖類を用いる場合には、前述した酸化酵素、補酵素酸化酵素、補酵素及び電子メディエーターに加えて、多糖類の加水分解などの分解を促進し、グルコースなどの単糖類を生成する分解酵素が固定化されていることが望ましい。なお、ここでいう「多糖類」は、広義の多糖類であり、加水分解によって2分子以上の単糖を生じる全ての炭水化物を指し、二糖、三糖及び四糖などのオリゴ糖を含む。具体的には、デンプン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、マルトース、スクロース及びラクトースなどが挙げられる。これらは2以上の単糖類が結合したものであり、いずれの多糖類においても結合単位の単糖類としてグルコースが含まれている。
【0023】
また、アミロースとアミロペクチンとはデンプンに含まれる成分であり、デンプンはアミロースとアミロペクチンとの混合物である。例えば、多糖類の分解酵素としてグルコアミラーゼを使用し、単糖類を分解する酸化酵素としてグルコースデヒドロゲナーゼを使用する場合には、燃料成分にはグルコアミラーゼによりグルコースにまで分解することができる多糖類を使用することができる。
【0024】
このような多糖類としては、例えばデンプン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン及びマルトースなどが挙げられる。ここで、グルコアミラーゼは、デンプンなどのα−グルカンを加水分解しグルコースを生成する分解酵素であり、グルコースデヒドロゲナーゼは、β−D−グルコースをD−グルコノ−δ−ラクトンに酸化する酸化酵素である。
【0025】
なお、アノード11は、表面に酸化還元酵素が固定化されているものに限定されるものではなく、電極表面に酸化還元酵素が存在しているものであれば、例えば、酸化還元酵素を有し反応触媒として作用する微生物が付着した電極などを使用することも可能である。
【0026】
(カソード13)
カソード13は、空気極であり、気液分離膜16を介して気相(空気)に接触している。このカソード13を構成する電極は、特に限定されるものではないが、例えば導電性多孔質材料からなる電極の表面に、酸化還元酵素及び電子メディエーターが固定化されているものを使用することができる。カソード13を形成する導電性多孔質材料も、公知の材料を使用することができるが、特に、多孔質カーボン、カーボンペレット、カーボンフェルト、カーボンペーパー、炭素繊維又は炭素微粒子の積層体などのカーボン系材料が好適である。
【0027】
このカソード13に固定化される酸素還元酵素としては、例えば、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ及びアスコルビン酸オキシダーゼなどが挙げられる。また、これらの酵素と共に固定化される電子メディエーターとしては、例えば、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、フェリシアン化カリウム及びオクタシアノタングステン酸カリウムなどが挙げられる。
【0028】
なお、カソード13も、表面に酸化還元酵素が固定化されているものに限定されるものではなく、電極表面に酸化還元酵素が存在しているものであれば、例えば、酸化還元酵素を有し反応触媒として作用する微生物が付着した電極などを使用することも可能である。
【0029】
(セパレータ12)
セパレータ12は、各電極(アノード11、カソード13)の短絡を防止するものであり、柔軟性を有し、かつ、プロトンを透過する材料(プロトン伝導体)により形成されている。具体的には、例えば、不織布、セロハン又はパーフルオロスルホン酸系イオン交換膜などを使用することができる。
【0030】
(気液分離膜16)
気液分離膜16は、液体は透過せず気体のみを透過するものであり、例えばPTFE(PolyTetraFluoroEthylene:ポリテトラフルオロエチレン)膜などを使用することができる。また、その厚さや物性は、特に限定されるものではなく、燃料溶液の漏出を防止し、かつ、カソード5に反応に必要な酸素を供給できるものであればよい。
【0031】
(シール材17,18)
アノード用シール材17及びカソード用シール材18は、発電部を封止するものであり、例えばアイオノマーフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム、ナイロンフィルム又はセロファンなどにより構成することができる。また、これらのシール材17,18の発電部側の面に粘着性を付与することで、封止及び開封が容易となる。
【0032】
[燃料供給方法]
次に、本実施形態のバイオ燃料電池モジュール10の各燃料電池1に燃料を供給する方法について説明する。図3(a)及び図3(b)は本実施形態のバイオ燃料電池モジュール10における燃料供給方法を模式的に示す断面図である。積層された複数の燃料電池1が直列に接続されている場合、全ての燃料電池1に燃料を供給する必要がある。その場合は、例えば、図3(a)に示すように、各燃料電池1の対応する位置に燃料供給口兼通気口2となる貫通孔を設ける。
【0033】
そして、この燃料供給口兼通気口2内に燃料4を充填する。これにより、毛細管能力により、電池内部に燃料4が吸収される。その結果、一度の操作で、容易に全ての燃料電池1に燃料4を供給することができる。また、燃料4が全て吸収された後は、燃料供給口兼通気口2から空気(酸素)が供給されるため、発電が開始する。
【0034】
なお、カソード13に撥水加工を施すことで、燃料4を供給する際に、カソード13が水没することを防止できる。また、図3(a)に示す構造では、出力によっては酸素の供給量が不足する虞があるが、その場合は、燃料供給口兼通気口2以外の場所に、厚さ方向に貫通する1又は複数の通気口を設けることにより、酸素の共有量を増やすことが可能である。
【0035】
一方、積層された複数の燃料電池1がそれぞれ独立している場合は、図3(b)に示すように、燃料4の供給量を調整することにより、燃料4が供給される燃料電池1の数を制御することができる。これにより、任意に出力を設定することができる。また、例えば、先ず、最下層の燃料電池1のみに燃料4を供給して発電を行い、その性能が劣化した場合は、その上の燃料電池1に燃料4を供給して発電を行うようにしてもよい。その場合、発電性能が劣化した最下層の燃料電池1を取り除いて、その上にある燃料電池1を最下層の燃料電池1として、燃料4を供給することもできる。
【0036】
なお、図3では、燃料電池1に燃料供給口兼通気口2となる貫通孔を設けた例を示しているが、本開示はこれに限定されるものではなく、積層された複数の燃料電池1がそれぞれ独立している場合は、最上層の燃料電池1のみに燃料4を供給し、発電することができる。その場合は、図1(b)に示すように、先ず、最上層の燃料電池1で発電を行い、その発電性能が劣化した場合は、その燃料電池1を取り除き、その下の燃料電池1で発電を行えばよい。
【0037】
ここで、本実施形態のバイオ燃料電池モジュール10の各燃料電池1に供給される「燃料溶液4」は、糖、アルコール、アルデヒド、脂質及びタンパク質などの燃料成分又はこれら燃料成分のうち少なくとも1種を含有する溶液である。また、燃料電池1で使用される燃料成分としては、例えば、グルコース、フルクトース、ソルボースなどの糖類、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセリン、ポリビニルアルコールなどのアルコール類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、酢酸、蟻酸、ピルビン酸などの有機酸などが挙げられる。その他、脂肪類やタンパク質、これらの糖代謝の中間生成物である有機酸などを燃料成分として使用することも可能である。
【0038】
[電極部の交換]
本実施形態のバイオ燃料電池モジュール10は、発電性能が劣化した燃料電池1について、電極部を交換して使用することもできる。図4は燃料電池1の電極部の構成例を示す図であり、図5は図4に示す電極部を交換する方法を模式的に示す図である。例えば、図4に示すように、電極部をセパレータ12とアノード11及びカソード13とが一体化された構成とした場合、図5に示すように、開閉用タブ22によってシール材17,18による封止を解除し、電極部を交換することで、容易に発電性能を回復させることができる。
【0039】
なお、アノード11、カソード13及びセパレータ12は、必ずしも一体化されている必要はなく、これらをそれぞれ別個に交換することもできる。また、アノード11を、固定化されている酵素が異なるものに交換することで、種々の燃料に対応することが可能となる。
【0040】
[燃料4の加熱]
また、本実施形態のバイオ燃料モジュール10は、燃料拡散層15や燃料液溜め部19に、酸化カルシウムなどの加水型発熱材を充填することができる。このように、加水型発熱材を充填すると、燃料4に含まれる水分によって加水型発熱材が発熱反応を生じ、燃料4が加熱されるため、容易に発電部内の温度を上げて、出力を高めることができる。その結果、例えば、燃料4に冷えた飲料を用いる場合や外気温が低い場合でも、高い出力を安定して得ることができる。
【0041】
又は、燃料電池1内に、別途、加水型発熱材が充填された保温タンクを設けてもよい。図6は保温タンクを備える燃料電池1の燃料供給方法を模式的に示す断面図である。図6に示すように、保温タンク23をアノード11の外側に接触配置した場合、燃料4は、毛細管能力により保温タンク23及びアノード11に吸収される。また、カソード13には、燃料供給口兼通気口2から酸素5が供給される。保温タンク23を備える構成の燃料電池1においても、加水型発熱材の発熱反応により、燃料4を加熱し、発電部の温度を上昇させることができる。
【0042】
以上詳述したように、本実施形態のバイオ燃料モジュール10では、複数の燃料電池1を積層した構造であるため、それらを出力に応じて順次使用することで、長期間の発電が可能となる。また、各燃料電池1は燃料供給口の位置が揃っているため、燃料供給の操作が容易であり、一度の操作で複数の燃料電池1に燃料供給することも可能となる。
【0043】
更に、本実施形態のバイオ燃料モジュール10は、燃料電池1の電極部やその構成部材を交換可能とすることで、低下した発電性能を回復させることもできる。これにより、その他の部材を引き続き使用可能となるため、コストパフォーマンスが高まると共に、廃棄物が少なくなるため、環境負荷も低減することができる。また、長期間使用した場合は、換えの電極部を容易すればよいため、複数の電池を持ち運ぶ必要がなくなり、モバイル性が向上する。更に、異なる酵素を固定化したアノードに交換することで、様々な物質を燃料として活用できるようになる。
【0044】
<2.第1の実施の形態の第1変形例>
図7(a)及び図7(b)は本開示の第1の実施形態の第1変形例のバイオ燃料電池モジュールにおける電池交換方法を示す図である。前述した第1の実施形態では、最上層の燃料電池1を剥がして取り除いているが、本開示はこれに限定されるものではなく、種々の形態を適用することができる。
【0045】
例えば、本変形例のバイオ燃料電池モジュールの場合は、図7(a)に示すように、発電を行う最上層の燃料電池1aに集電部3が接続される。この燃料電池1aの発電性能が劣化した場合、図7(b)に示すように、集電部3を開き、燃料電池1aを取り除く。その後、各燃料電池を押し上げ、最上層となった燃料電池1bに集電部3を取り付け、発電を行う。これにより、容易に燃料電池の交換が可能となる。
【0046】
<3.第1の実施の形態の第2変形例>
図8(a)〜(c)は本開示の第1の実施形態の第2変形例のバイオ燃料電池モジュールにおける電池交換方法を示す図である。また、例えば、図8(a)〜(c)に示すように、燃料電池の柔軟性を利用して、使用済みの燃料電池1aを押し出し、未使用の燃料電池1bが、集電部3に嵌るような構成としてもよい。この場合も、前述した第1の実施形態のバイオ燃料電池モジュールと同様の効果が得られる。
【0047】
<4.第2の実施の形態>
[全体構成]
次に、本開示の第2の実施形態のバイオ燃料電池モジュールについて説明する。図9は本開示の第2の実施形態のバイオ燃料電池モジュールの構成を模式的に示す側面図である。図9に示すように、本実施形態のバイオ燃料モジュール30は、1枚の板又はシートに複数の燃料電池31が設けられており、各燃料電池31間には切り込み32が形成されている。そして、これらの切り込み32で折りたたむことにより、複数の燃料電池31が積層されて、バイオ燃料モジュール30を構成している。
【0048】
このバイオ燃料電池モジュール30では、切り込み32又は折り目によって、各燃料電池31を分離可能としてもよい。これにより、使用済みの燃料電池31を、容易に取り除き、新しい燃料電池31で発電を行うことができる。また、本実施形態のバイオ燃料電池モジュール30も、各燃料電池31を、直列又は並列に接続して使用することが可能である。なお、本実施形態における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0049】
なお、本開示は、以下のような構成もとることができる。
(1)
表面に酸化還元酵素が存在する電極を備えた1又は2以上の発電部を有する平板状又はシート状の燃料電池が、その燃料供給部の位置を揃えて積層されたバイオ燃料電池モジュール。
(2)
最上層又は最下層の燃料電池のみに燃料が供給される(1)に記載のバイオ燃料電池モジュール。
(3)
各燃料電池は取り外し又は交換可能となっている(1)又は(2)に記載のバイオ燃料電池モジュール。
(4)
1枚の板又はシートに複数の燃料電池が設けられており、各燃料電池間には切り込み又は折り目が形成され、該切り込み又は折り目で折りたたむことにより、複数の燃料電池が積層されている(1)〜(3)のいずれかに記載のバイオ燃料電池モジュール。
(5)
前記切り込み又は折り目によって、各燃料電池を切り離し可能である(4)に記載のバイオ燃料電池モジュール。
(6)
各燃料電池の発電部には、アノード又はカソードを構成する1対の電極と、各電極間に配置され短絡を防止するセパレータとが設けられており、各電極及び/又はセパレータは交換可能となっている(1)〜(5)のいずれかに記載のバイオ燃料電池モジュール。
【符号の説明】
【0050】
1、1a、1b、31 燃料電池
2 燃料供給口兼通気口
3 集電部
4 燃料
5 酸素
10、30 バイオ燃料電池モジュール
11 アノード
12 セパレータ
13 カソード
14 蓋
15 燃料拡散層
16 気液分離膜
17、18 シール材
19 燃料液溜め部
20、21 端子
22 開閉用タブ
23 保温タンク
32 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に酸化還元酵素が存在する電極を備えた1又は2以上の発電部を有する平板状又はシート状の燃料電池が、その燃料供給部の位置を揃えて積層されたバイオ燃料電池モジュール。
【請求項2】
最上層又は最下層の燃料電池のみに燃料が供給される請求項1に記載のバイオ燃料電池モジュール。
【請求項3】
各燃料電池は取り外し又は交換可能となっている請求項1に記載のバイオ燃料電池モジュール。
【請求項4】
1枚の板又はシートに複数の燃料電池が設けられており、各燃料電池間には切り込み又は折り目が形成され、該切り込み又は折り目で折りたたむことにより、複数の燃料電池が積層されている請求項1に記載のバイオ燃料電池モジュール。
【請求項5】
前記切り込み又は折り目によって、各燃料電池を切り離し可能である請求項4に記載のバイオ燃料電池モジュール。
【請求項6】
各燃料電池の発電部には、アノード又はカソードを構成する1対の電極と、各電極間に配置され短絡を防止するセパレータとが設けられており、各電極及び/又はセパレータは交換可能となっている請求項1に記載のバイオ燃料電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−84363(P2013−84363A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221772(P2011−221772)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】