バイオ絹糸タンパク質ベース核酸送達システム
絹糸ベース複合体から核酸を放出する絹糸ベース送達システムを用いて核酸導入が成し遂げられる。絹糸ベース複合体は、例えば、プラスミドDNA(pDNA)ならびにポリカチオンおよび特定のポリペプチド配列を含有する組換え絹糸からなり、核酸トランスフェクションのために高い生体適合性、高い送達効率、細胞選択性、および核酸の徐放を示すことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援
本発明は、米国立衛生研究所(Tissue Engineering Resource Center)により与えられた助成金P41 EB002520による資金供与を受けた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2009年7月10日に出願された米国特許仮出願第61/224,618号の優先権の恩典を主張する。米国特許仮出願第61/224,618号の内容はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0003】
発明の分野
本発明は、分子遺伝学、遺伝子療法、生体高分子核酸送達システム、およびバイオ医薬品に関する。より具体的には、本態様は、高度に調整される核酸送達システムの新たなファミリーとしてバイオ絹糸タンパク質を提供する。
【背景技術】
【0004】
背景
遺伝子発現の分子機構についての知識が増えるにつれて、数十年前に遺伝子療法という概念が生まれた。組換えDNA法の出現と共に、クローニングされた遺伝子が利用可能になり、外来遺伝子によってインビトロで哺乳動物細胞の遺伝子異常および疾患表現型を実際に補正できると証明するために用いられた。効率的なレトロウイルスベクターおよび他の遺伝子導入法によって、インビトロおよびインビボでの効率的な表現型補正することが説得力をもって証明されたので、今や、遺伝子療法は治療法として広く受け入れられている。最近、様々な疾患を治療するために、RNA干渉または遺伝子サイレンシングがある特定の配列のRNAを分解する新手法となってきている。欠陥のある遺伝子からコピーされたRNAと適合するように低分子ヘアピン型RNAが設計されれば、その遺伝子の異常タンパク質産物は産生されないだろう。
【0005】
しかしながら、ウイルスベクターの導入によって引き起こされる潜在的に重篤なアレルギー反応を含めて、現行の核酸送達システムには欠点がある。従って、宿主細胞または被験体に核酸を送達するための代替系が依然として必要とされている。具体的には、生体適合性、生分解性があり、毒性が低く、トランスフェクション/送達効率が高く、特定の細胞タイプに標的化することができ、核酸ベクターからの核酸の徐放を調節することができる有用な非ウイルス核酸ベクターが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概要
絹糸タンパク質は、生分解性および生体適合性もある機械的に頑強な材料構造に自己組織化する。このことから、絹糸タンパク質は核酸送達に有用なことが示唆される。絹糸タンパク質はまた遺伝子工学を介して化学的性質、分子量、および他の設計特性を調整することができるので、この核酸送達システムは微調整することができる。本発明は、概して、標的細胞への核酸(例えば、プラスミドDNA、低分子干渉RNA)送達を対象としている。
【0007】
1つの態様において、核酸送達のために新規の絹糸ベースコポリマーがポリ(L-リジン)ドメインを用いて生物工学によって作られた。このポリマーは溶解状態で自己組織化し、イオン相互作用を介して核酸(例えば、DNA)と複合体を形成した。1つの態様において、DNAと複合体を形成したこれらの絹糸-ポリリジンベースコポリマーのイオン複合体は遺伝子をヒト細胞に首尾良く移入した。この材料系は、アガロースゲル電気泳動、原子間力顕微鏡観察、ゼータ電位メーター、共焦点レーザー走査型顕微鏡観察、および動的光散乱によって特徴付けられた。
【0008】
別の態様において、核酸送達のために新規の絹糸ベースマトリックスが1つまたは複数の細胞結合モチーフ(例えば、RGDドメイン)を用いて生物工学によって作られた。このマトリックスは核酸と複合体を形成し、遺伝子(例えば、pDNA)をヒト細胞に首尾良く移入した。
【0009】
別の態様において、核酸送達のために新規の絹糸ベースマトリックスが細胞透過ペプチドおよび細胞膜不安定化ペプチドの1つまたは複数のドメインを用いて生物工学によって作られた。このマトリックスは核酸と複合体を形成し、核酸(例えば、pDNA)をヒト細胞に首尾良く移入した。これらは、高いトランスフェクション効率、制御された酵素分解速度、および複合体からの核酸の徐放を示す。
【0010】
絹糸ベースマトリックスはまた、送達効率および選択性ならびに細胞活性を調整するために、1つまたは複数の他の機能ペプチドドメイン、例えば、ウイルスのシグナルペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、金属結合ドメイン、細胞標的化ペプチド、薬物結合ペプチド、細胞活性を変える機能ドメイン、およびこれらの組み合わせを用いて生物工学によって作ることもできる。
【0011】
特定の態様において、10:1のポリマー/ヌクレオチドモル比で調製された、平均溶液直径(solution diameter)が380nmである、30個のリジン残基を有する絹糸ベース生体高分子/核酸複合体は高い細胞トランスフェクション効率を示した。このDNA複合体は絹糸フィルム上にも固定化され、これらの表面からの直接的な細胞トランスフェクションを示した。
【0012】
別の特定の態様において、アミンの数とDNAのリン酸の数の比(N/Pと呼ぶ)が2で調製され、平均溶液直径が186nmである、30個のリジン残基および11個のRGD配列を有する絹糸ベース生体高分子/核酸複合体は高い細胞トランスフェクション効率を示した。これらの結果から、バイオ絹糸タンパク質が高度に調整される核酸送達システムの新たなファミリーであり、送達効率および選択性を改善するためにさらなる機能特徴を送達システムに加えることができると証明された。
【0013】
さらに別の態様において、アミンの数とDNAのリン酸の数の比(N/Pと呼ぶ)が2で調製され、球形であり、直径が約99nmである、ポリリジンおよびppTG1二量体配列を有する絹糸ベース生体高分子/核酸複合体は高い細胞効率を示した。ppTG1の二量体配列はトランスフェクション効率を大幅に向上させる。ポリリジン配列ならびに細胞透過ペプチドおよび細胞膜不安定化ペプチド(CPP)を含有する組換え絹糸は、トランスフェクション試薬であるリポフェクタミン2000に匹敵する有用なトランスフェクション効率を有する。これらの新たなバイオ絹糸送達システムは、非ウイルス核酸送達システムのための多用途かつ有用な新たなプラットフォームポリマーとして役立つことができる。
【0014】
さらに、組換え絹糸ポリマー/核酸複合体の絹糸配列の二次構造(例えば、βシート形成への移行)は複合体の酵素分解速度を制御することができ、従って、複合体からの核酸の放出プロファイルを調節することができる。
【0015】
本発明は、概して、特定の標的細胞への核酸(例えば、プラスミドDNA送達、低分子干渉RNA送達)送達システムおよび薬物送達システムを対象としている。細胞への核酸マトリックスの導入効率およびその特異性をさらに向上させるために、ある特定の疾患を標的とする特定のペプチド配列、例えば、細胞結合モチーフ、細胞透過ペプチド、ウイルスのシグナルペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、ならびに疾患細胞を加熱および死滅させるためにマイクロ磁気粒子またはナノ磁気粒子をコーティングするための金属結合ドメインを組換え絹糸に付加することができる。
【0016】
核酸複合体のサイズは、ポリリジン配列の分子量または組換え絹糸/核酸比によっても制御される。遺伝子トランスフェクションの誘導時間を制御するために、組換え絹糸の絹糸配列の二次構造によって遺伝子複合体の分解速度も制御することができる。ポリリジン配列を含有するように改変された組換え絹糸は、核酸と共に球状の複合体、例えば、ナノ粒子、ミセル、またはマイクロカプセルを形成する。
【0017】
さらに、絹糸ベース材料の表面に固定された核酸複合体を新たな核酸送達システムとして使用することができる。核酸用または薬物用の、これらの新たな新規のバイオ絹糸タンパク質ベース送達システムの設計および用途に融通がきくことは多くの送達分野において有用である。例えば、絹糸マトリックスは包帯または挿入物として用いられ、組織治癒に有利な増殖因子をコードする核酸を送達することもできる。
【0018】
この特許または出願ファイルは少なくとも1枚のカラー図面を含む。この特許または特許出願刊行物とカラー図面のコピーは、請求により、かつ必要な料金を払うことによって特許庁が提供するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の特定の態様の模式図を示す。(A)絹糸-ポリリジンブロックコポリマーとのプラスミドDNA(pDNA)複合体形成;(B)pDNA複合体を含有する絹糸フィルムの調製;および(C)pDNA複合体を含有する絹糸フィルムを用いた細胞トランスフェクション。
【図2】本発明の1つの態様における絹糸6マー-リジン(組換えクモ絹糸タンパク質)およびポリ-L-リジン配列のアミノ酸配列を示す。下線:代表的な単量体クモ絹糸ユニット。
【図3】Ni-NTAクロマトグラフィーによる精製前(A)およびNi-NTAクロマトグラフィーによる精製後(B)の組換え絹糸タンパク質のSDS-PAGE。レーン1:絹糸6マー、レーン2:絹糸6マー-15lys、レーン3:絹糸6マー-30lys、およびレーン4:絹糸6マー-45lys。レーンM:分子量マーカー。
【図4】シリコンウェーハ基板上での、(A)pDNAを有さない絹糸6マー-15lysタンパク質または(B)pDNAを有する絹糸6マー-15lysタンパク質、(C):絹糸6マー-30lysとのpDNA複合体、(D):絹糸6マー-45lysとのpDNA複合体、および(E):絹糸6マーとのpDNA複合体のAFM凹凸像を示す。この図のpDNA複合体はP/N比10で調製した。
【図5】pDNA、ならびに様々な分子量のリジン配列(A)および様々なポリマー/ヌクレオチド(P/N)比(B)を有するpDNA複合体のアガロースゲルである。A1およびB1:pDNA(対照)、A2:絹糸6マーおよびpDNA(P/N 10)、A3:絹糸6マー-lys15およびpDNA(P/N 10)、4:絹糸6マー-lys30およびpDNA(P/N 10)、A5:絹糸6マー-lys45およびpDNAm(P/N 10)、B2:絹糸6マー-lys30およびpDNA(P/N 2.5)、B3:絹糸6マー-lys30およびpDNA(P/N 5)、B4:絹糸6マー-lys30およびpDNA(P/N 10)、ならびにB5:絹糸6マー-lys30およびpDNA(P/N 25)、B6:絹糸6マー-lys30およびpDNA(P/N 50)。
【図6】(A)絹糸6マー-30lysと複合体を形成したpDNAを含有する絹糸フィルムの表面のAFM凹凸像を示す。(B)図6Aにおける白色の線のラインプロファイルデータを示す。
【図7】様々なP/N比のpDNA複合体をHEK細胞にロードした際のトランスフェクション結果を示す。絹糸6マー30lysのpDNA複合体を含有する絹糸フィルム上でインキュベートした細胞の蛍光顕微鏡画像。(7A)P/N 2.5、(7B)P/N 5、(7C)P/N 10、(7D)P/N 25、および(7E)P/N 50。(7F)蛍光画像による、pDNA複合体をHEK細胞にロードした際のトランスフェクション効率のプロット。データは平均±標準偏差として示した(n=4)。*2群間の有意差p<0.05。
【図8】様々なポリリジン配列を有するpDNA複合体をHEK細胞にロードした際のトランスフェクション結果を示す。絹糸6マー(8A)、絹糸6マー-15lys(8B)、絹糸6マー-30lys(8C)、および絹糸6マー-45lys(8D)のpDNA複合体を含有する絹糸フィルム上でインキュベートした細胞の蛍光顕微鏡画像。画像内の緑色は首尾良くトランスフェクトされた細胞を示す。図(8E)は、蛍光画像からのトランスフェクション効率のプロットを示す。データは平均±標準偏差として示した(n=4)。*2群間の有意差p<0.05。
【図9】様々なリジン配列を有するpDNA複合体(P/N=10)によってHEK細胞を処理した後の細胞生存率を示す。データは平均±標準偏差として示した(n=8)。*2群間の有意差p<0.05。
【図10】絹糸-ポリリジン-RGDブロックコポリマーとのpDNA複合体形成に使用した戦略の模式図およびpDNA複合体を用いた細胞トランスフェクションを示す。
【図11】ポリ-L-リジンおよびRGD配列を含有する組換えクモ絹糸タンパク質のアミノ酸配列を示す。下線:代表的な単量体クモ絹糸ユニット。
【図12】Ni-NTAクロマトグラフィーによる精製後の組換え絹糸タンパク質のSDS-PAGEである。RS、RSR、SR、S2R、11RS、および分子量マーカー(M)を各ラインに列挙した。
【図13】組換え絹糸のpDNA複合体の寸法および形状を示す。(13A)ポリマー/pDNA(P/N)比の関数としての、DLSによって求められた組換え絹糸のpDNA複合体の平均直径。マイカ上にある、P/N比500で調製した、RS(13B)およびRSR(13C)とのpDNA複合体のAFM凹凸像。
【図14】組換え絹糸とのpDNA複合体の電荷を示す。pDNAおよび様々なP/N比を有するRSRのpDNA複合体のアガロースゲル(A)、ならびにP/N 500で調製した様々な組換え絹糸とのpDNA複合体のアガロースゲル(B)。(C)ポリマー/pDNA(P/N)比の関数としての、RSRのpDNA複合体のゼータ電位。
【図15】様々な組換え絹糸とのpDNA複合体(P/N=500、N/P>10)を用いてHEK細胞を処理した後の細胞生存率である。データは平均±標準偏差として示した(n=8). *2群間の有意差p<0.05。
【図16】様々なP/N比を有する組換え絹糸のDNA複合体をHEK細胞にロードした際のトランスフェクション結果を示す(A)。データは平均±標準偏差として示した(n=4)。*2群間の有意差p<0.05。(B、C)P/N 200で調製した、11RSのpDNA複合体によってトランスフェクトされた細胞の蛍光顕微鏡画像。画像内の緑色は首尾良くトランスフェクトされた細胞を示す。
【図17】DLSによって求められた、組換え絹糸および組換え絹糸とpDNAとの複合体のサイズ分布を示す。
【図18】ポリ-L-リジンおよびRGD配列を有する組換えクモ絹糸タンパク質のアミノ酸配列を示す。RGD配列を太字にし、代表的な6マーのクモ絹糸配列には下線を引いた。
【図19】(19A)マイカ上にある、N/P比2で調製した、組換え絹糸-ポリリジン-RGD(11RS)と複合体を形成したpDNAのAFM凹凸像を示す。(19B)図19Aにおける白色の線のラインプロファイルデータを示す。
【図20】組換え絹糸-ポリリジン-RGDとのpDNA複合体の電荷を示す。pDNAおよび様々なN/P比を有する11RSのpDNA複合体のアガロースゲル(20A)、ならびにN/P 2で調製した様々な組換え絹糸とのpDNA複合体のアガロースゲル(20B)。(20C)アミン/DNAのリン酸のモル比(N/P)の関数としての、11RSのpDNA複合体のゼータ電位。
【図21】図21Aは、様々なN/P比の組換え絹糸(11RS)のpDNA複合体をHeLa細胞にロードした際のトランスフェクション結果を示す。 図21Bと図21Cは、N/P2で調製した様々な組換え絹糸(11RS、RS、RSR、SRおよびS2R)を、それぞれHela細胞(B)およびHEK細胞(C)にロードした際のトランスフェクション結果を示す。絹糸6マー-30lysブロックコポリマー(S)およびLIPOFECTAMINE(登録商標)2000トランスフェクション試薬を対照試料として使用した。データは平均±標準偏差として示した(n=4)。*2群間の有意差p<0.05。
【図22】HeLa細胞における組換え絹糸(11RS)とのpDNA複合体の細胞内分布を示す。図22A:3つの画像(22B〜22D)のオーバーレイである。図22Bおよび図22C:DAPI(22B)およびCy5標識(22C)とインキュベートした細胞のCLSM特徴付けを示す。図22D:細胞における複合体の位相差を示す。63x対物レンズを用いてCLSM観察を行った。pDNAをCy5(赤色)によって標識し、核をDAPI(青色)によって染色した。各スケールバーは10μmを表す。
【図23】図23Aは、組換え絹糸タンパク質配列の模式図である。 図23Bは、ポリ-L-リジンおよびppTG1配列を有する組換えクモ絹糸タンパク質のアミノ酸配列を示す。代表的な6マーのクモ絹糸配列に下線を引き、ppTG1配列を太字にした。 図23Cは、Ni-NTAクロマトグラフィーにより精製した後の組換え絹糸タンパク質のSDS-PAGEを示す。図23Cには、それぞれのラインに、分子量ラダー(L)、絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体(M)、および絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体(D)を列挙した。
【図24】メタノール処理前の絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のFTIR-ATRスペクトル(青色の線)および24時間のメタノール処理後の絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のFTIR-ATRスペクトル(灰色の線)を示す。矢印は、βシート構造に由来する1625cm-1でのピークを示す。
【図25】マイカ上にある、N/P 2比で調製した、絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体とのpDNA複合体のAFM凹凸像を示す。
【図26】DNアーゼI酵素からのpDNA保護結果を示す。MeOH処理した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体またはMeOH処理していない絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体について、DNアーゼIに曝露したpDNAの消化を測定した。レーン番号は、(1)遊離pDNAのみ、(2)遊離pDNAおよびDNアーゼ、(3)遊離pDNAおよびα-キモトリプシン、(4)遊離pDNAおよびプロテアーゼXIV、(5)絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびDNアーゼ、(6)DNアーゼ処理後の、絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびプロテアーゼXIV、(7)絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびα-キモトリプシン、(8)絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびプロテアーゼXIV、(9)MeOH処理した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびDNアーゼのpDNA複合体、(10)DNアーゼ処理後の、MeOH処理した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびプロテアーゼXIV、(11)MeOH処理した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびα-キモトリプシン、ならびに(12)MeOH処理した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびプロテアーゼXIVを表す。
【図27】絹糸-ポリリジン-ppTG1のpDNA複合体をHEK細胞およびMDA-MB-435細胞にロードした際のトランスフェクション結果を示す。図27Aは、HEK細胞における、様々なN/P比の絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のトランスフェクション結果を示す。図27Bは、HEK細胞およびMDA-MB-435細胞における、N/P2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体のトランスフェクション結果を示す。リポフェクタミン2000を正の対照試料として使用した。データは平均±標準偏差(n=4)として示した。*2群間の有意差p<0.05。図27Cおよび図27Dは、それぞれ、HEK細胞(27C)およびMDA-MB-435細胞(27D)に対する、N/P2で調製した、絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体と複合体を形成したGFPレポーター遺伝子をコードするDNAを用いたトランスフェクション後の細胞形態を示す。
【図28】MeOH処理前(四角)および24時間のMeOH処理後(三角)の、N/P2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体を用いたトランスフェクション時間経過を示す。*2群間の有意差p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本発明は、本明細書に記載の特定の方法、プロトコール、および試薬などに限定されず、従って、変更してもよい。本明細書において用いられる専門用語は特定の態様の説明のみを目的とし、本発明の範囲の限定を目的とせず、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0021】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる単数形は、文脈によってはっきりと示されていない限り複数の指示物を含み、逆もまた同じである。機能している例を除き、または特に定めのない限り、本明細書において用いられる成分の量または反応条件を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語により修飾されていると理解しなければならない。
【0022】
特定された全ての特許および他の刊行物は、説明および開示のために、例えば、本発明と共に用いられ得るこのような刊行物に記載の方法の説明および開示のために参照として本明細書にはっきりと組み入れられる。これらの刊行物は、本願の出願日前の刊行物の開示のためだけに提供される。この点に関して、本明細書には、先行発明に基づいて、または他の任意の理由により本発明者らがこのような開示に先行する権利がないと認められると解釈されるものは何もない。日付に関する全ての記載またはこれらの文書の内容に関する全ての表記は出願人が入手可能な情報に基づくものであり、これらの文書の日付または内容の正確さに関する是認を構成するものではない。
【0023】
特に定めのない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において任意の公知の方法、装置、および材料を使用することができるが、この点に関して方法、装置、および材料を本明細書において説明する。
【0024】
遺伝子療法には、核酸を標的細胞に導入するために効率的かつ安全な担体が必要とされる。現在、米食品医薬品局(FDA)によって認可された遺伝子療法は無いが、1989年から1,400件を超える遺伝子療法臨床試験が実施されている。Gene The. Clin. Trials Worldwide, J. Gene Med.(2009)。アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスを含むウイルスベクターはトランスフェクション効率が比較的高く、宿主ゲノムに組込まれることで長期間にわたって潜在的な効果があるために遺伝子送達において用いられてきた。Lundstrom, 21 Trends Biotech. 117-22(2003)。しかしながら、担体としてのウイルス導入による免疫応答について安全上の懸念が依然としてある。さらに、遺伝子療法においてレトロウイルスを使用すると白血病などの合併症が引き起こされることがある。なぜなら、ウイルス遺伝子が宿主ゲノムの任意の位置に挿入され得るからである。Edelstein et al., 6 J. Gene. Med. 597-602(2004)。
【0025】
絹糸タンパク質は、数十年間、バイオメディカル分野において縫合糸として首尾良く用いられ、細胞培養用および組織工学用の生体材料としても用いられている。優れた機械的特性、加工における融通性、および生体適合性があるために、このような広い有用性がFDAによって認可されている。Kaplan et al., ACS Symp. Ser. 544(1994); Altman et al., 24 Biomats. 401-16(2003); Wang et al., 27 Biomats. 6064-82(2006)。さらに、最近、βシート構造を有する絹糸タンパク質がα-キモトリプシンに曝露された時の分解産物はインビトロで神経細胞に対して細胞傷害性が無いことが報告され、示されている。Hollander, 43 Med. Hypotheses 155-56(1994); Wen et al., 65 Ann. Allergy 375-78(1990); Kurosaki et al., 66 Nippon Ika Daigaku Zasshi 41-44(1999); Rossitch et al., 3 Childs Nerv. Sys. 375-78(1987); Dewair et al.,76 J. Allergy Clin. Immunol. 537-42(1985); Zaoming et al.,6 J. Invest. Aller. Clin. Immunol. 6 237-41(1995); Numata et al., 31 Biomats. 2926-33(2010)。
【0026】
絹糸タンパク質は一般的に昆虫およびクモによって産生され、天然では繊維材料を形成し、優れた機械的特性および生体適合性があるために医療用縫合糸として用いられてきた。Kaplan et al., ACS Symp. Ser. 544(1994)。従来の用途を超えて、絹糸フィブロンは細胞培養用および組織工学用の生体材料としても用いられ、このような広い有用性がFDAによって認可されている。Altman et al., 24 Biomats. 401-16(2003); Wang et al., 27 Biomats. 6064-82(2006)。
【0027】
遺伝子工学によって改変された絹糸タンパク質は生来の特性と共に新たな特徴を示すことができる。Wong et al., 54 Adv. Drug Deliv. Rev. 1131-43(2002); Cappello et al., 3 Biotechnol. Prog. 198-202(1990); Megeed et al., 54 Adv. Drug Deliv. Rev. 1075-91(2002)。例えば、絹糸およびエラスチンタンパク質の他に例を見ない機械的特性を組み合わせる可能性を証明するために、絹糸様の結晶ブロックおよびエラスチン様の可動性のあるブロックからなるホモブロック(homoblock)タンパク質ポリマーが作製された。Cappello et al., 1990; Megreed et al., 2002。これらの絹糸-エラスチン様ポリマーヒドロゲルから、プラスミドDNA(pDNA)を含有するアデノウイルスベクターを放出させる例も報告されている。Megeed et al., 94 J. Control Release 433-45(2004)。細胞接着を向上させるRGD細胞結合ドメインを含むように生物工学によって作られた改変クモ絹糸も報告されている。Bini et al., 7 Biomacromolecules 3139-45(2006)。さらに、この改変絹糸タンパク質から調製された生体材料足場は、骨形成結果に関してヒト骨髄由来間葉系幹細胞を分化させる能力が高かった。同上。
【0028】
分子トリガーの含有から自己組織化の制御(Szela et al., 1 Biomacromol. 534-42(2000); Winkler et al., 39 Biochem. 12739-46(2000))、制御された石灰化のためのキメラ絹糸タンパク質(Wong et al., 103 P.N.A.S. 9428-33(2006); Huang et al., 28 Biomaterials 2358-67(2007))、および最近の全ての絹糸ブロックコポリマー設計までバイオ絹糸の他の多くの例を説明することができる。Rabotyagova et al., 10 Biomacromol. 229-36(2009)。
【0029】
絹糸フィブロンの二次構造によって、一般的に、材料の可溶性および生分解性が決まる。Huemmerich et al., 43 Biochem. 13604-12(2004)。α-ヘリックスおよびランダムコイル構造があると水溶液中での絹糸フィブロンの可溶性が高まるのに対して、βシート構造があると絹糸タンパク質は水溶液に溶解しなくなる。同上。さらに、βシート含有量が減少するにつれて絹糸フィブロンの分解速度が速まる。Li et al., 24 Biomats. 357-65(2003)。絹糸タンパク質のβシート結晶構造は、メタノール処理、水鈍(water annealing)処理、低pH、電場印加、剪断力の適用などの当業者に公知の方法によって誘導することができる。
【0030】
アルギニン-グリシン-アスパラギン酸であるRGD配列は、ある特定の細胞タイプ、例えば、内皮細胞、破骨細胞、マクロファージ、血小板、および黒色腫の細胞表面に発現するαvβ3インテグリンおよびαvβ5インテグリンを選択的に認識および結合することが知られている。Oba, Bioconjugate Chem.(2006); Kim, J. Controlled Release(2005); Connelly, Biomats.(2007)。インテグリンは、細胞外マトリックスと相互作用する膜貫通糖タンパク質の一種とみなされており、受容体を介したエンドサイトーシスによる細胞結合および細胞進入に用いられる。受容体を介したエンドサイトーシスは遺伝子送達システムの代表的な経路である。Renigunta et al., 17 Bioconj. Chem. 327-34(2006)。従って、RGD配列は、核酸(例えば、プラスミドDNAまたはsiRNA)送達に用いられる遺伝子ベクターのリガンドとして有用な候補である。
【0031】
カチオン性のポリマーおよびポリ(アミノ酸)は静電相互作用を介して核酸と相互作用し、集合して高分子電解質複合体を構築することができる。この高分子電解質複合体は、組換えウイルスに代わる細胞へのpDNA送達方法として提案されている。Zauner et al., 30 Adv. Drug Deliv. Rev. 97-113(1998); Ogris et al., 6 Gene Ther. 595-605(1999);Oupicky et al., 10 Bioconjug. Chem. 764-72(1999); Breitenkamp et al., 9 Biomacromolecules 2495-2500(2008); Fischer et al., 16 Pharm. Res. 1273-79(1999); Ahn et al., 80 J. Controlled Release 273-82(2002); Lavertu et al., 27 Biomats. 4815-24(2006)。核酸送達は様々な疾患状態にとって魅力的なアプローチである。なぜなら、例えば、改変された宿主細胞において導入遺伝子が生理活性タンパク質を産生できるからである。ポリ(L-リジン)は細胞によって分解され、小さな薬物のための送達ビヒクル(ベクター)を形成するカチオン性ポリマーとして用いられている。Zauner et al., 1998。ポリリジンとDNAとの相互作用は、アガロースゲル電気泳動(電荷およびサイズ)、電子顕微鏡(形状およびサイズ)、原子間力顕微鏡観察(AFM)(形状およびサイズ)、ならびに動的光散乱(DLS)(サイズおよびサイズ分布)によって詳細に特徴付けられている。Zauner et al., 1998。正に荷電した複合体は潜在的には細胞傷害性を誘導し、血漿タンパク質を含有する生物学的媒体中で凝集物を形成する可能性があるが(Ogris et al., 1999; Oupicky et al., 1999)、30未満のリジンを含有する本発明の絹糸ベースポリ(L-リジン)コポリマーのDNA複合体はヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞に対して細胞傷害性を示さなかった。
【0032】
有用な非ウイルス核酸ベクターは生体適合性、生分解性であり、毒性が低く、特定の細胞タイプに標的化することができる。これらは、合成ポリマーと一致する困難な設計目標である。近年、遺伝子ベクターとして、カチオン性リポソーム、ポリリジンコポリマー、ポリエチレンイミン(PEI)コポリマー、および多糖を含む様々なカチオン性ブロックコポリマーが研究されている。Zauner et al., 1998; Breitenkamp et al., 2008; Fischer et al., 1999; Ahn et al., 2002); Lavertu et al., 2006。特に、天然生体高分子は毒性が無く、生体適合性があるので非ウイルスベクターとしてますます魅力的になっている。絹糸ベースポリマーは生物工学によって付加的な機能を有することができ、特定の設計に基づいて化学的性質、分子量、および標的化を調整するための効率的な生体材料プラットフォームを提供し、従って、有用な非ウイルス核酸担体となり得る。
【0033】
本発明は、生体適合性、生分解性であり、無毒のカチオン性ポリマーを利用する新規の絹糸ベース非ウイルス核酸ベクターを提供する。絹糸ベースポリマーは、組換え法によって機能を加えることができ、系の設計に基づいて化学的性質、分子量、および標的化を調整するのに非常に効率的なアプローチを提供するので非ウイルス核酸ベクターの有用な候補である。別の例として、細胞トランスフェクション効率およびその細胞選択性を向上させるために、細胞結合モチーフ(RGD)、細胞浸透ペプチド(Elmquist et al., 269 Exp. Cell Res. 237-44(2001); Rittner et al., 5 Mol. Ther. 104-14(2002); Jarver et al., 35 Biochem. Soc'y Trans. 770-74(2007)); ウイルスのシグナルペプチド(Makela et al., 80 J. Virol. 6603-11(2006));腫瘍ホーミングペプチド(Laakkonen et al., 8 Nat. Med. 751-55(2002); Porkka et al., 99 P.N.A.S. 7444-49(2002); Christian et al., 163 J. Cell Biol. 871-78(2003); Laakkonen et al., 101 P.N.A.S. 9381-86(2004); Pilch et al.、103 P.N.A.S. 2800-04(2006));ならびに疾患細胞を加熱および死滅させるためにマイクロ磁気粒子またはナノ磁気粒子をコーティングするための金属結合ドメイン(Obradors et al., 258 Eur. J. Biochem. 207-13 (1998); Park et al., 128 J. Am. Chem. Soc'y 7938-46 (2006))を組換え絹糸に付加することができる。
【0034】
本発明の1つの態様は、1つまたは複数の細胞結合モチーフ、例えば、RGDを組換え絹糸配列に付加することによって、生体適合性、生分解性であり、無毒のカチオン性ポリマーを利用する絹糸ベース核酸ベクターのトランスフェクション効率を向上させる。また、これにより、C末端およびN末端などのRGD配列位置は細胞へのトランスフェクション効率に影響を及ぼし、新規のタンパク質ベース核酸ベクターを構築する際に考慮すべき有益な情報である。インビトロでHeLa細胞およびHEK細胞に核酸を送達するために、絹糸ベースコポリマーとプラスミドDNAとの複合体が調製され(図10)、アガロースゲル電気泳動、ゼータ電位メーター、原子間力顕微鏡観察(AFM)、および動的光散乱(DLS)によって特徴付けられた。
【0035】
本発明の1つの態様は、1つまたは複数のCPP、例えば、ppTG1ペプチドを絹糸ベース核酸ベクターの組換え絹糸配列に付加することによって、細胞傷害性が低くかつ非常に効率的で、トランスフェクション効率が高い核酸担体を提供する。pDNAに結合するリジンリッチ細胞膜不安定化ペプチドであるppTG1ペプチドは細胞膜を不安定化し、核酸導入を促進する。
【0036】
特定の態様では、ポリリジンならびに単量体および二量体のppTG1配列を含有する遺伝子操作された絹糸タンパク質を大腸菌内で合成し、その後に、ヒト胎児由来腎臓細胞においてトランスフェクション実験を行った。トランスフェクションレベルはトランスフェクション試薬であるリポフェクタミン2000と同等である。組換え絹糸と複合体を形成した核酸の構築物は球状形態を示し、平均水力学的直径が99nmであり、βシート構造がほとんど無い。さらに、絹糸ベース核酸複合体は、優れたDNアーゼ耐性ならびに絹糸タンパク質分解酵素による効率的な核酸放出を示す。さらに、βシートによって誘導される絹糸ベース核酸複合体と比較すると、核酸複合体の絹糸配列の二次構造が複合体の酵素分解速度を制御し、従って、複合体からの核酸の放出プロファイルを調節できることが分かる。従って、細胞膜不安定化ペプチドを含有するバイオ絹糸ベース核酸送達ビヒクルは、毒性の低い徐放核酸送達システムを提供する。
【0037】
ポリリジン配列を含有するように改変された組換え絹糸は、核酸と球状の複合体、例えば、ナノ粒子、ミセル、またはマイクロカプセルを形成する。核酸マトリックスは、細胞への効果的かつ選択的な核酸トランスフェクションを示すことができる。細胞への直接的な核酸トランスフェクションのために、核酸複合体が表面に固定化されている絹糸ベース生体材料も使用することができる。絹糸ベースブロックコポリマーの電荷核酸複合体のサイズは、ポリマー/核酸比または生物工学により設計に入れられるポリリジンドメインの分子量に基づいて制御することができる。核酸トランスフェクションの誘導時間を制御するために、組換え絹糸の絹糸配列の二次構造によって、核酸複合体の分解速度も制御することができる。
【0038】
タンパク質発現をもたらす、もしくはタンパク質発現を媒介する、または細胞機能を調節する任意の核酸が本発明の範囲内にある。従って、核酸は、RNA、DNA、siRNA、RNA/DNAキメラ、天然および人工のヌクレオチドまたは配列、またはこれらの組み合わせなどを指してもよいが、それに限定されるわけではない。例えば、組換え絹糸と複合体を形成する核酸には、dsRNA(二本鎖RNA)、siRNA(低分子干渉RNA)、shRNA(ショートヘアピンRNA)、saRNA(低分子活性化RNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、miRNA(ミクロRNA)、プレmiRNA、リボザイム、アンチセンスRNA、DNA、cDNA、DNAまたはRNAのベクター/プラスミドなどが含まれるが、それに限定されない。
【0039】
正電荷側鎖(R基)を含む複数のアミノ酸を用いて絹糸タンパク質を改変して、組換え絹糸配列(絹糸ベースコポリマー)を形成することができる。1つの態様において、組換え絹糸配列は、リジンリッチペプチドまたはアルギニンリッチペプチド、例えば、ポリリジンの1つまたは複数のドメインによって改変される。
【0040】
特定の態様において、クモ絹糸およびポリ(L-リジン)を組み合わせた新規の絹糸ベースブロックコポリマーが設計、作製、および特徴付けられた。HEK細胞へのインビトロ核酸送達のために、これらの絹糸ベースブロックコポリマーとプラスミドDNAの複合体が調製され(図1)、アガロースゲル電気泳動、原子間力顕微鏡観察(AFM)、および動的光散乱(DLS)によって特徴付けられた。DNA複合体を含有する絹糸フィルムも調製され、これらのフィルム上で細胞トランスフェクション実験が行われた。自己組織化、頑強な機械的特性、および制御可能な分解速度と、本明細書において報告された核酸との調整されたイオン複合体形成および細胞標的化の選択肢との組み合わせの点で、新規の絹糸ポリマー特性を考慮した時に、核酸送達研究のための新たなビヒクルファミリーが説明される。さらに、絹糸ベース材料の表面に固定化された核酸複合体を新たな核酸送達システムとして使用することができる。
【0041】
絹糸タンパク質を発現および精製するために、ポリリジンを含む、およびポリリジンを含まない、4種類のクモ絹糸変異体のアミノ酸配列を図2に示した。組換え絹糸タンパク質の収率は精製および透析の後に約10mg/Lであった。Ni-NTAクロマトグラフィーによる精製前および精製後のタンパク質をSDS-PAGEによって分析し、純度を評価するためにコロイダルブルーで染色した(図3)。絹糸6マー対照は約27kDaの分子量に対応するバンドを示した(図3Aおよび3B、レーン1)。リジン配列を含有する組換え絹糸タンパク質である絹糸6マー-15lys、絹糸6マー-30lys、および絹糸6マー-45lysも約30kDaの分子量を示した(図3Aおよび図3B、レーン2、3、および4)。これらは、それぞれ、23kDa、25kDa、および27kDaの理論分子量と一致した。ゲルバンドを用いたLC/MS/MSによるタンパク質特定の結果から、これらのバイオタンパク質は予想された組換え絹糸タンパク質であることが確かめられた。組換えタンパク質は部分的に水に溶け、室温でHFIPにも溶けた(10mg/mL)。
【0042】
さらに、ポリリジンおよびRGD細胞結合モチーフ(RS、RSR、SR、S2R、および11RS)を用いて作製された5種類のクモ絹糸変異体のアミノ酸配列を図11に示したように作製した。RGD-組換え絹糸タンパク質の収率は精製および透析の後に約10mg/Lであった。Ni-NTAクロマトグラフィーによる精製前および精製後のタンパク質をSDS-PAGEによって分析し、純度を評価するためにコロイダルブルーで染色した。RS、RSR、SR、S2R、および11RSは、それぞれ、約33kDa、32kDa、30kDa、30kDa、および35kDaの分子量に対応するバンドを示し(図12)、26068.1Da、26584.4Da、25565.9Da、26082.1Da、31669.86Daの理論分子量(モノアイソトピック質量)と完全に一致しなかった。しかしながら、MALDI-TOFの結果は、それぞれ、26068.1Da、26584.4Da、25565.9Da、26082.1Da、および31669.9Daを示し、バイオタンパク質が予想された組換えRGD-絹糸タンパク質であることを裏付けた。組換えタンパク質は10.6の理論pIを示し、室温で水溶性であった(1.0mg/mL)。
【0043】
GFPをコードするDNAと4種類の組換え絹糸タンパク質(絹糸6マー、絹糸6マー-15lys、絹糸6マー-30lys、絹糸6マー-45lys)とのDNA-タンパク質複合体形成ならびにGFPをコードするDNAと5種類の組換えRDG-絹糸タンパク質(RS、RSR、SR、S2R、および11RS)とのDNA-タンパク質複合体形成を、AFM、DLS、およびアガロースゲル電気泳動によって特徴付けた。
【0044】
図4は、シリコンウェーハ上に成型された組換え絹糸とのDNA複合体(P/N 10)の典型的なAFM凹凸像を示す。pDNAを含まない絹糸6マー-15lys分子は線状であったが(図4A)、DNAを含む絹糸6マー-15lysは球状複合体を形成した(図4B)。さらに、球状複合体は、絹糸6マー-30lysおよび絹糸6マー-45lysを用いた場合にも観察された(図4Cおよび4D)。絹糸6マー-15lys、絹糸6マー-30lys、および絹糸6マー-45lysのDNA複合体の平均直径は、それぞれ、335±104nm、392±77nm、および436±91nmであった(表1)。他方で、絹糸6マー分子はDNAとランダムに凝集し(図4E)、結果として生じた特徴は球状複合体でなく、直径が857±290nmの大きな凝集物であった。また、表1に示したように、AFMによって求められたDNA複合体の寸法の統計解析から、絹糸6マーの複合体と他の試料との間に有意差があることが証明された。
【0045】
(表1)AFMによって求められた組換え絹糸のpDNA複合体(P/N 10)の寸法
値は、平均値±標準偏差、n=30、a, b 同じ上付き符号を共有しない群の間では、p<0.05で統計的有意差が見られた。
【0046】
組換え絹糸およびそのpDNA複合体の水力学的直径をDLSによって測定した(表2および図17)。DNAを含まない絹糸6マーおよびDNAを含む絹糸6マーの平均直径は、それぞれ、570nmおよび約550〜790nmであった。ポリリジンを含有する他の3種類の組換え絹糸は、DNA無しで約210〜270nmの平均直径を示した。ポリリジン配列またはP/N比が増加するにつれて、ポリリジン配列を有する組換え絹糸のDNA複合体の直径は大きくなった。絹糸6マー-30lys(P/N 25)および絹糸6マー-45lys(P/N 10および25)の場合、直径は、小さな複合体と大きな複合体の両方を示す双峰性であった。P/N 50で調製したDNA複合体は大きな沈殿物をもたらし、DLSによって特徴付けることができなかった。
【0047】
(表2)DLSによって求められた組換え絹糸およびその複合体の平均直径
apDNAを含まない組換え絹糸分子
bDLSによる分析には多すぎる沈殿物があった
【0048】
同様に、表3に示したように、組換えRGD-絹糸のDNA複合体の水力学的直径をDLSによって測定した(図4A)。
【0049】
(表3)DLSによって求められた組換え絹糸のDNA複合体の平均直径分布
【0050】
P/N比が増加するにつれて複合体の平均直径は小さくなり、500のP/Nで調製したRS、RSR、SR、S2R、および11RSの平均直径は、それぞれ、32 nm、72 nm、68 nm、59 nm、および66nmであった。P/N 500で調製したRSのDNA複合体はDLSによって最小直径を示し、P/N 500で調製したRSRのDNA複合体はDLSによって最大直径を示した。これらをマイカ上で成型し、AFMによって観察した。DNAを含むRSおよびRSRは球状複合体を形成した(図13Bおよび図13C)。RSおよびRSRのDNA複合体の平均直径は、それぞれ、58±28nmおよび73±12nmであった。AFMによって求められたDNA複合体の寸法の統計解析から、RSとRSRとの間には有意差が無いことが証明された(p=0.12)。
【0051】
pDNAおよび組換え絹糸ポリリジンの複合体の相互作用特性および電解安定性を調べるために、アガロースゲル電気泳動実験を行った。図5Aは、1%アガロースゲルにおける遊離pDNA(レーン1)および組換え絹糸のDNA複合体(レーン2〜5)の移動を示す。DNAと混合した絹糸6マーの移動から、遊離DNAは依然として絹糸6マー分子と共に存在するが、ポリリジン配列を含有する組換え絹糸はウェルの中にバンドを示し、遊離DNAよりゆっくり移動することが証明された。このことから、DNAは組換え絹糸に部分的に結合していおり、電気泳動中にある程度のpDNA放出が起こった可能性があることが分かる。様々なP/N比を有する、DNAおよび絹糸6マー-30lysの混合物をアガロースゲル電気泳動によって分析した(図5B)。2.5〜50のP/N比ではゲル移動の変動はほとんどなかった。このことから、これらのP/N比の間で複合体の安定性は似ていたことが分かる。
【0052】
DNAおよび組換えRGD-絹糸の複合体の相互作用特性および電解安定性を調べるアガロースゲル電気泳動実験も行った。図14Aは、1%アガロースゲルにおける遊離DNAおよび1〜50の様々なP/Nモル比を有するRSRのDNA複合体の移動を示す。P/N 1〜20でRSRとの複合体を形成するDNAは遊離DNAと同じ方向に移動したか、またはウェルから移動しなかったのに対して、P/Nが50を超える複合体は反対方向に移動した。このことから、P/Nが25未満のRSRとのこれらのDNA複合体は負または中性の電荷をもっていたが、P/Nが50を超える複合体は正の電荷をもっていたことが分かる。P/N 500で調製した4種類の組換え絹糸のDNA複合体もアガロースゲル電気泳動によって特徴付けた。5種類全ての試料が正電荷を示した。正電荷の値を測定するために、DNA複合体のゼータ電位を測定した。図14Cは、様々なP/N比を有するRSRのDNA複合体のゼータ電位を示す。ゼータ電位はP/N比と共に増加し、P/N 50で正の値になった。P/N 50および500のゼータ電位は、8.58±5.47 mVおよび22.2±4.03mVであった。
【0053】
特定の態様において、pDNAおよび組換えポリリジン絹糸の複合体を成型絹糸フィルムとして沈着させた。絹糸フィルムを水で洗浄して遊離pDNAを除去した後に、複合体の完全性を評価するために、pDNA複合体を含有する絹糸フィルムの表面をAFMによって調べた。図6は、絹糸6マー-30lysのpDNA複合体を含有する絹糸6マー-30lysフィルムの表面のAFM凹凸像を示す。この粒子はサイズがほぼ同位置であった。pDNA複合体画像はフィルム上で成型する前に取得した(図4C)。これから、フィルム上に成型された後の粒子の完全性が確かめられた。図6から、複合体が個々に絹糸フィルムの表面に固定化されたことは明らかである。図6Bに示したように、pDNA複合体を表面に吸着させた。複合体の高さは約20nmであった。
【0054】
核酸送達のためのカチオン性組換え絹糸との核酸複合体の実現性を評価するために、HEK細胞を用いてインビトロトランスフェクション実験を行った。様々なP/N比を有する様々なDNA複合体のDNAトランスフェクション効率を比較するために、レポーターとしてGFP DNAを用いてHEK細胞をトランスフェクトした。図7は、P/N 2.5(7A)、P/N 5(7B)、P/N 10(7C)、P/N 25(7D)、およびP/N 50(7E)で調製した、絹糸6マー-30lysのpDNA複合体を含有する絹糸フィルム上でインキュベートした細胞の蛍光顕微鏡画像を示す。4つの独立した視野にある蛍光細胞に基づく、様々なP/N比のトランスフェクション効率をまとめた(図7F)。様々なP/N比を用いたトランスフェクション実験から、絹糸6マー-30lys(P/N=10)のpDNA複合体は、様々な複合体の中で最も高いパーセント(14%±3%)のGFP陽性細胞を示した。GFP陽性細胞に基づくトランスフェクション効率は、以下の順序:P/N=10、25、50、5、および2.5で減少した。従って、DNAポリリジン-絹糸複合体に対するさらなる実験はP/N比10で調製した。
【0055】
図16Aは、3つの独立した視野にある蛍光細胞に基づく、P/N比が50〜500の4種類の組換えRGD-絹糸のDNA複合体のトランスフェクション効率を示す。図16Bは、P/N 200で調製した11RSのpDNA複合体を含有する絹糸フィルム上でインキュベートした細胞の蛍光顕微鏡画像を示す。これは、これらの試料の中で最も高いトランスフェクション効率を示した。また、P/N 100または200で調製した試料のpDNA複合体は、様々なP/N比の中で最も高いパーセントのGFP陽性細胞を示した。P/N 200で、11RSのpDNA複合体は、RS、RSR、SR、およびSR2(3±1%、10±2%、2±1%、および13±2%)と比較して高いトランスフェクション効率(24±3%)を示した。P/N 200では、11RSとRSRとの間だけでなく、RSRとRSとの間にも有意差が認められた。従って、P/N 200でのトランスフェクション効率の相対順序は、以下の通り:11RS>S2R=RSR>RS=SRに減少した。このことから、トランスフェクション効率はRGD細胞結合モチーフの数に強く依存したことが分かる。
【0056】
図8は、P/N比10である、絹糸6マー(8A)、絹糸6マー-15lys(8B)、絹糸6マー-30lys(8C)、および絹糸6マー-45lys(8D)のpDNA複合体を含有する絹糸フィルム上でインキュベートした細胞の蛍光顕微鏡画像を示す。図8Eは、前記のようにGFP陽性細胞を計数することによって求められたトランスフェクション効率比を示す。絹糸6マー-30lysのpDNA複合体は4種類の試料の中で最も高いトランスフェクション効率(14%±3%)を示したのに対して、絹糸6マーおよびpDNAの混合物は有効なトランスフェクションを示さなかった(0.4%±0.1%)。トランスフェクション効率の相対順序は以下の通り:絹糸6マー-30lys、絹糸6マー-15lys、絹糸6マー-45lys、および絹糸6マーに減少した。
【0057】
P/N比が10である、絹糸6マー、絹糸6マー-15lys、絹糸6マー-30lys、および絹糸6マー-45lysとのDNA複合体の細胞傷害性をMTTアッセイを用いて測定した。図9は、トランスフェクション実験に使用した濃度(0.76mg/ml)において、絹糸6マー、絹糸6マー-15lys、および絹糸6マー-30lysの複合体がHEK細胞に対して毒性を示さなかったことを示す。絹糸6マー-45lysのDNA複合体は88%±11%の細胞生存率を示した。これは他の組換え絹糸複合体と比較して有意な差があり、かつ低かった。P/N比が500である、RS、RSR、SR、およびS2R のDNA複合体の細胞傷害性もMTTアッセイを用いて測定した。図15は、トランスフェクション実験において使用した最も高い濃度(1.9mg/mL)において、全試料の複合体がHEK細胞に対して細胞傷害性を示さなかったことを示す。
【0058】
本発明の態様は、核酸送達を有する組換え絹糸分子の新規の複合体を提供する。8種類の組換え絹糸をクローニングし、大腸菌から発現させ、精製した。リジン配列を有さない絹糸6マーのDNA複合体はAFM分析に基づいて球状粒子を形成しなかった(図4C)。さらに、絹糸6マー分子と混合した時に、アガロースゲル電気泳動は遊離DNAを示した。他方で、電気泳動実験(図5A)およびAFM画像(図4)によると、ポリリジンを含有する組換え絹糸とのDNAの球状複合体が形成した。このことは、ポリリジン配列が、絹糸分子とDNAとのナノサイズ球状イオン複合体を形成するのに必要であり得ることを示唆している。ポリリジン配列の分子量およびP/N比が増加するにつれて、DNA複合体の直径およびサイズ分布が増加した(表2および図17)。絹糸6マー-lys45またはP/N=25もしくは50で調製した複合体の場合、組換え絹糸の比較的高い正電荷によって、大きくかつ広範囲に分布する複合体が得られた。電気泳動中にDNAの一部が複合体から放出された(図5のレーン3、4、5)。このことは、以前に報告されたように(Blessing et al., 95 P.N.A.S. USA 1427-31(1998); Masotti et al., 19 Nanotech. 55302(2008))、DNAが球状複合体の内部に詰め込まれているが、表面にもある可能性があることを意味している。だが、この問題はさらなる研究によって明らかになるであろう。
【0059】
本発明の別の態様は、核酸送達のための、細胞結合モチーフと複合体を形成した核酸を含有する組換え絹糸を含む組成物を提供する。4種類の組換えRGD-絹糸、RS、RSR、SR、およびS2Rをクローニングし、大腸菌から発現させ、精製した。30個のリジン配列とpDNAを含有する絹糸分子のナノサイズ球状イオン複合体を形成した。平均サイズは、電気泳動実験(図14A)、AFM画像、およびDLS測定(図13)によれば80nm未満であり、例えば、32nm、72nm、68nm、および59nmであった。P/N比が増加すると共に、DNA複合体の直径は小さくなった(図13A)。このことは、複合体のサイズはP/N比によって制御できることを示唆している。また、電気泳動中に複合体からDNAは放出されなかった。このことから、電気泳動中に一部のDNAが複合体から放出された他の実験と比較して、DNAは球状複合体の中に完全に詰め込まれていたことが分かる。
【0060】
表面にプラスミドDNA複合体を含有する絹糸フィルムを調製した(図6A)。フィルム上に沈着させる前の複合体の高さとフィルム上に沈着させた後の複合体の高さの比較(図4Cおよび図6B)から、DNA複合体は半分埋め込まれており、絹糸フィルムの表面に固定化されていることが裏付けられた。これは、HFIPによって表面が蒸発する前に部分的、局所的に可溶化したことに一因がある可能性が高い。さらに、DNA複合体の中の絹糸と絹糸生体材料フィルム表面との間の絹糸-絹糸(タンパク質-タンパク質)疎水性相互作用がDNA複合体の固定化を助ける。
【0061】
HEK細胞に対するGFP遺伝子を含有する複合体を用いたトランスフェクション実験から、P/N 10で調製した絹糸6マー-30lysのDNA複合体はDLSによって直径が380nmであり、絹糸6マーおよびポリリジンブロックコポリマーの最も効率的な複合体であることが明らかになった(図7および図8)。効率のばらつきに関するこれらの知見は、以前に述べられたように粒径と関連しているのかもしれない。Rejman et al., 377 Biochem. J. 159-69(2004); Ross & Hui, 6 Gene Ther. 651-59(1999); Almofti et al., 20 Mol. Membr. Biol. 35-43(2003)。特に、直径が200nm未満の粒子はほぼ例外なく内部に取り込まれているのに対して、直径が500nmの粒子は内部に取り込まれていないことが報告されている。このことは、核酸送達には粒子のサイズが重要であることを示唆している。Rejman et al., 2004; Ross & Hui, 1999; Almofti et al., 2003。理論に拘束されるものではないが、絹糸6マー-45lysのpDNA複合体(P/N 10、590nm)およびP/N>10で調製した複合体(直径が400nmを超える)の直径は細胞に移入するには大きすぎたかもしれない。また、一部の文献において報告されたように、大きなポリリジン分子量およびP/N比による複合体の比較的大きな正電荷が溶解状態で無秩序な凝集物の形成をもたらし、細胞傷害性を誘導して、トランスフェクション効率を低下させたのかもしれない。Ogris et al., 1999; Oupicky et al., 1999; Sato et al., 22 Biomats. 2075-80(2001); Thanou et al., 23 Biomats. 153-59(2002)。この点に関して、絹糸6マー-45lysの大きな正電荷は他の複合体と比較して低い細胞生存率を示し(図9)、トランスフェクション効率も低下させた(図8)。P/N 10で調製した絹糸6マー-30lysのpDNA複合体を含む特定の態様は核酸を送達することができた。
【0062】
GFP遺伝子を含有する絹糸-RGD複合体を用いたHEK細胞へのトランスフェクション実験から、P/N 200で調製したS2RのDNA複合体は正に荷電し(18mVゼータ電位)、DLSにより直径が121nmであり、本研究における最も効率的な組換え絹糸複合体であることが明らかになった(図16)。S2RおよびRSRは様々なP/N比でほぼ同じトランスフェクション効率を示し、有意差は無かった。他方で、RSおよびSRはRGDペプチドを1つしか含まず、S2RおよびRSRと比較して低いトランスフェクション効率を示した。このことは、以下のように2つの重要な話題を示唆している。一方の話題は、トランスフェクション効率がRGD細胞結合モチーフの数に強く依存したことである。他方の話題は、N末端またはC末端にあるRGDモチーフの位置が組換え絹糸の核酸複合体のトランスフェクション効率に影響を及ぼさない可能性があることである。言い換えると、核酸複合体の中にある組換え絹糸分子は、図10に示したように、複合体の表面に存在するDNAおよびRGD残基とランダムに組み合わさると考えられた。従って、複合体の表面にあるRGDペプチドの数は組換え絹糸の中にあるRGD残基の数に比例するはずである。その結果、RGD二量体を含有するRSRおよびS2Rの細胞結合能力およびトランスフェクション効率はRSおよびSRと比較して高くなった。従って、核酸/核酸ベクターとして新規の代替タンパク質を構築するために、他の機能ペプチドをアミノ酸配列の任意の位置に付加することができる。
【0063】
RGD残基は、遺伝子ベクターの細胞結合機能および細胞トランスフェクション効率を向上させるリガンドとして用いられている。特に、いくつかのグループによって、RGD配列を含有するポリマーベース遺伝子ベクターが研究された。Oba, 2006; Kim, 2005; Connelly, 2007; Renigunta, 2006. Sun, Biomats.(2008); Moore, Molecular Pharmaceutics(2008); Oba, Bioconjugate Chem.(2007); Ishikawa, Bioconjugate Chem.(2008); Quinn, Mol. Ther.(2009); Singh, Gene Ther.(2003)。ポリ(エチレンイミン)(PEI)およびRGDペプチドの複合体は、PEI分子のみと比較してHEK細胞に対する高いトランスフェクション効率を示した。しかしながら、PEIおよびRGDペプチドの複合体の細胞傷害性は400μg/mLの使用濃度で約50%であった。Sun, 2008。ポリ(エチレングリコール)(PEG)ベースベクターはHEK細胞に対して細胞傷害性をほとんど示さず、また、PEIと同等のトランスフェクション効率を示す。Moore, 2008。しかしながら、RGDペプチドをプラットフォーム化学合成ポリマーに付加するには多段階の化学反応を必要とする。また、化学合成ポリマーの分子量は分布している。このことは、化学合成ポリマーとDNAとの複合体は不均一であることを示唆している。
【0064】
細胞透過ペプチドおよび細胞膜不安定化ペプチド(CPP)は、細胞脂質二重層を効率的に透過するか、または細胞膜を不安定化する短いペプチドと定義されている。従って、CPPは、新たな非ウイルス核酸ベクターの有用な候補である。CPP内部移行機構は、小胞、クラスリン依存性エンドサイトーシス、およびマクロピノサイトーシスと報告された。Jarver et al., 35 Biochem. Soc. Trans. 770-74(2007); Richard et al., 278 J. Biol. Chem. 585-90(2003); Ferrari et al., 8 Mol. Ther. 284-94(2003); Holm et al., 1 Nat. Protoc. 1001-05(2006); Lundberg & Langel, 12 Intl. J. Pept. Res. Ther. 105-14(2006)。細胞取り込みはまたエンドサイトーシス経路に依存せず、一過的なポア形成によって起こるとも報告されている。Vives et al., 1786 Biochim. Biophys. Acta. 126-38(2008); Deshayes et al., 1667 Biochim. Biophys. Acta. 141-47(2004); Deshayes, 43 Biochem. 1449-57(2004); El-Andaloussi et al., 8 J. Gene. Med. 1262-73(2006); Abes et al., 35 Biochem. Soc. Trans. 53-55(2007)。さらに、CPPは異なるエンドサイトーシス機構を同時に利用することができ、取り込みはさらなる迅速な移行プロセスによって起こることが示唆されている。Duchardt et al., 8 Traffic 848-66(2007)。CPPペプチドをプラットフォーム化学合成ポリマーに付加すると核酸送達システムの効率を向上することができる。しかしながら、非ウイルス核酸送達のためにCPPおよび他の機能配列を組み合わせた組換えタンパク質は無い。
【0065】
本発明は、組換えDNA法および一段階合成である大腸菌系を用いて合成された組換え絹糸を提供する。さらに、合成ポリマーとは対照的に、組換え絹糸タンパク質は分子量の分布を示さない。このことは、タンパク質との均一な核酸複合体を調製するのに役立つ。また、トランスフェクション実験において使用した最も高い濃度(1.9mg/mL)において、組換え絹糸のDNA複合体はHEK細胞に対して細胞傷害性を示さず、PEI(15%〜40%)と比較して同等のトランスフェクション効率(13%±2%)も示した。Fischer et al., 16 Pharm. Res. 1273-79(1999); Ahn et al., 80 J. Controlled Release 273-82(2002); Godbey, Gene Ther.(1999)。
【0066】
さらに、対応するプラスミドが構築されるのであれば、組換え絹糸には、絹糸分子の予想された位置に任意の数の任意のペプチドを付加することができる。この点に関して、この組換え絹糸ベース核酸送達システムは一般的な合成ポリマーベース核酸送達システムより優れている。なぜなら、合成ポリマーベース系では付加ペプチドの分子量が限定されるからである。核酸送達の効率および特異性をさらに向上させるために、本明細書において調製された組換え絹糸は、細胞浸透ペプチドおよび腫瘍ホーミングペプチドなどの多機能ペプチドを用いてさらに改変することができる。Elmquist et al., 269 Exp. Cell Res. 237-44(2001); Rittner et al., 5 Mol. Ther. 104-14(2002); Jarver et al., 35 Biochem. Soc. Trans. 770-74(2007); Makela et al., 80 J. Virol. 80:6603-11(2006); Laakkonen et al., 8 Nat. Med. 751-55(2002); Porkka et al., 99 P.N.A.S. 7444-49(2002); Christian et al., 163 J. Cell Biol. 871-78(2003); Laakkonen et al., 100 P.N.A.S. USA 9381-86(2004); Pilch et al., 103 P.N.A.S. 2800-04(2006)。
【0067】
特に、細胞透過ペプチドとのpDNA複合体の最も高いトランスフェクション効率の1つは、DNA濃度が低く(125ng/mL)、特定の透過ペプチドを含まないPEIのpDNA複合体と比較して約45倍であると報告された。Rittner et al., 2002。従って、トランスフェクション効率および選択性を向上させるアプローチとして、このようなペプチドが付加される。従って、RGDまたはポリリジンを含有するように改変された組換え絹糸は、核酸送達のためのPEGのような新たなプラットフォームポリマーになり得る。
【0068】
化学合成ポリマーベースの非ウイルスDNA送達システムは過去十年間にわたって有効性および生体適合性送達の点で改善されてきた。トランスフェクション効率、DNA保護、細胞結合、およびエンドソーム放出に関して、ポリエチレンイミン(PEI)は多くのインビトロDNA送達例およびインビボDNA送達例における標準となっている。Blessing et al., 95 P.N.A.S. 1427-31(1998); Kataoka et al., 47 Adv. Drug Deliv. Rev. 113-31(2001); Schaffert & Wagner, 15 Gene Ther. 1131-38(2008); Luten et al., 126 J. Control Release 97-110(2008); Feng et al., 50 Biotechnol. Appl. Biochem. 121-32(2008)。HEK細胞に対するPEI/DNA複合体の最も高いトランスフェクション効率の1つは約 75%と報告され、5:1(w/w)のPEI/DNA比の複合体を用いて54時間インキュベーションした後に得られた。Feng et al., 2008。それにもかかわらず、細胞傷害性ならびに特異的な送達性および標的化の点で合成ポリマーベース核酸送達システムを改善することは必要である。Fischer et al., 16 Pharm. Res. 1273-79(1999)。PEIからの細胞生存率は、24時間、0.1mg/mLの濃度で50%未満であると報告されたのに対して(同上)、絹糸6マー-30lysを用いた本発明のバイオ絹糸ベース核酸送達システムは、図9に示したように、48時間、細胞傷害性が無いことが証明された。本研究における最良のトランスフェクション効率(14±3%)はPEIと比較して低かった。Blessing et al., 1998; Kataoka et al., 2001; Schaffert & Wagner, 2008; Luten et al., 2008; Feng et al., 2008; Fischer et al., 1999。恐らく、ウイルス粒径が小さく、正に荷電している絹糸6マー-30lysのpDNA複合体は細胞表面と容易に相互作用し得る。Zauner et al., 1998; Blessing et al., 1998; Kataoka et al., 2001。効果的かつ特異的な送達を向上させるために、本明細書において調製された絹糸およびポリリジンブロックコポリマーは、遺伝子工学を用いて細胞浸透ペプチド、細胞結合ペプチド、および腫瘍ホーミングペプチドなどの機能ペプチドによってさらに改変することができる。Jarver et al., 35 Biochem. Soc'y Trans. 770-74(2007); Rittner et al., 5 Mol Ther. 104-14(2002); Laakkonen et al., 101 P.N.A.S. 9381-86(2004); Laakkonen et al., 1131 Ann. NY Acad. Sci. 37-43(2008)。
【0069】
特に、細胞透過ペプチドとのDNA複合体の最も高いトランスフェクション効率の1つは、DNA濃度が低く(125ng/mL)、特定の透過ペプチドを含まないPEIのDNA複合体と比較して約45倍であると報告された。Rittner et al., 2002。従って、この系は、トランスフェクション効率を向上させるアプローチとして、このようなペプチドを任意に付加することによって改善することができる。それにもかかわらず、ポリリジン配列を含有するように改変された組換え絹糸は、有効で、特異的な、生分解性の、かつ完全に生体に適合する核酸送達システムになる可能性があるが、絹糸ベース送達システムのトランスフェクション効率は他の競合品より低い。
【0070】
さらに、本発明は、絹糸フィルムの表面に固定化された核酸複合体を細胞に直接移入する方法を提供する。これは、ポリマー単層フィルムから核酸を移入する最初の報告である。従って、核酸(例えば、DNA)との絹糸ベース複合体を細胞に移入することができ、絹糸フィルムの表面に吸着させることができた。この新たな核酸送達システムは絹糸フィルムだけではなく、核酸送達のために他の絹糸ベース生体材料にも適用することができる。これらの新規の核酸用バイオ絹糸タンパク質送達システムの設計および用途に融通性があることは多くの核酸送達分野において将来、有用なことを示唆している。
【0071】
カチオン性の組換え絹糸タンパク質には、ポリリジンのみと比較して核酸送達システムとして多くの利点がある。ポリリジンは、核酸送達のためにpDNA複合体を形成し、生分解性、低い細胞傷害性、およびpDNA複合体サイズに関する柔軟性(直径が15nm〜150nm)などの特徴を提供することができる。Zauner et al., 1998。しかしながら、ポリリジンとのpDNA複合体は、pDNAを分解する酵素に対するインビボ安定性を改善する必要がある。同上。さらに、ポリリジンの分子量が不均一なことは、サイズが均一なpDNA複合体の調製における問題となる。対照的に、組換え絹糸タンパク質はpDNA複合体のインビボ安定性を向上することができる。Choi et al., 10 Bioconj. Chem. 62-65(1999); Gottschalk et al., 3 Gene Ther. 448-57(1996)。さらに、本明細書に記載の組換え絹糸ポリリジン系の分子量が均一なことから単分散ポリマー成分が得られる。このために、この系をさらに洗練することによって、望ましいpDNA複合体の管理を改善することができる。さらに、フィルム表面へのpDNA複合体の固定化は細胞内部へのpDNAの取り込みを向上させ、表面を介したトランスフェクションを促進した。Segura et al., 13 Bioconj. Chem. 621-29(2002); Shen et al., 3 Nat. Mats. 569-74(2004); Park et al., 22 Langmuir 8478-84(2006); Jewell & Lynn, 60 Adv. Drug Deliv. Rev. 979-99(2008)。
【0072】
従って、本発明は、生分解性かつ生体適合性の絹糸ベース複合体によって核酸を細胞に移入するための組成物および方法を提供する。ポリリジン配列を含有するように改変された組換え絹糸が調製され、核酸ポリマーとの球状複合体を形成するのに用いられた。表面に核酸複合体を含有する絹糸フィルムも調製され、HEK細胞への、絹糸フィルムの表面に固定化されたDNA複合体の直接的なトランスフェクションも首尾良く行われた。
【0073】
本発明の一部の態様はまた、RGD細胞結合モチーフを含有するように改変された生分解性かつ生体適合性の組換え絹糸を介した、細胞への新規の核酸トランスフェクションを提供する。ポリリジンおよびRGD残基を含有するように改変された組換え絹糸が調製され、pDNAと球状複合体を形成するのに用いられた。HEK細胞へのpDNA複合体のトランスフェクションが首尾良く行われた。HEK細胞における核酸トランスフェクション実験から、DLSにより直径が約100nmであり、ゼータ電位が約10mVであった、P/N 200で調製したS2RのpDNA複合体は、調べられた全ての組換え絹糸の中で最大の効率(13±2%)を有する複合体であることが明らかになった。トランスフェクション効率はRGD細胞結合モチーフの数に強く依存した。さらに、組換え絹糸のN末端またはC末端にあるRGDモチーフの位置はpDNA複合体のトランスフェクション効率に影響を及ぼさなかった。従って、RGDまたはポリリジン残基を含有する組換え絹糸は、核酸送達のために絹糸ベース材料に適用可能なことを証明した。
【0074】
本発明の一部の態様は、CPPを、組換え絹糸-ポリリジンを含有する絹糸ベースカチオン性ブロックコポリマー系に付加することによって、核酸のトランスフェクション効率を向上させる核酸送達ベクターとして新規の方法および組成物を提供する。1つの態様において、使用したCPPはppTG1であった。これは、CPPとのpDNA複合体の高いトランスフェクション効率を示す。Rittner et al., 5 Mol. Ther. 104-14(2002)。しかしながら、組込まれた核酸を核酸分解酵素から保護するために、ppTG1ペプチドとのpDNA複合体のDNアーゼ耐性および安定性は調べられたことがない。恐らく、このペプチドは絹糸配列のような機能配列を含有しないからである。しかしながら、核酸と複合体を形成した、CPP(例えば、ppTG1)を組込んでいる組換え絹糸タンパク質は核酸送達効率が改善しており、DNアーゼに対する安定性および耐性が高い。1つの態様では、HEK細胞およびMDA-MB-435細胞へのインビトロ核酸送達のために、これらの絹糸ベースブロックコポリマーとpDNAとの複合体が調製され、アガロースゲル電気泳動、ゼータ電位メーター、原子間力顕微鏡観察(AFM)、および動的光散乱(DLS)によって特徴付けられた。自己組織化、頑強な機械的特性、および制御可能な分解速度の点から見た絹糸ポリマー特性と、本明細書で報告されるプラスミドDNAとの調整されたイオン複合体化および細胞透過機能との組み合わせから、核酸送達および最適化のための新たなビヒクルファミリーが得られる。
【0075】
特定の態様において、核酸送達のためのCPPとの組換え絹糸タンパク質の新規の複合体が設計され、CPPによってトランスフェクション効率がどのくらい向上するかを調べた。組換え絹糸タンパク質である絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体を大腸菌を用いて調製し、次いで、pDNAと複合体を形成させた(表5)。特徴付けられたpDNA複合体の平均直径は設計されたものと同じであり、文献によれば核酸送達に適している。Yan et al., 276 J. Biol. Chem. 8500-06(2001); Thomas & Smart, 51 J. Pharmacol. Toxicol. Meth. 187-200(2005)。約2〜約5のN/P(すなわち、アミンの数とDNAのリン酸の数との比)で調製したpDNA複合体は有用なトランスフェクション効率を示した。図26に示したように、メタノール処理前およびメタノール処理後のpDNA複合体は、組込まれているpDNAをDNアーゼIから保護することができた。このことは、組換え絹糸タンパク質が保護性であるか、または複合体の外面にある可能性があり、DNアーゼがpDNAに接近しないようにできることを意味する。要約すると、CPPを含有する組換え絹糸のpDNA複合体は生分解性、生体適合性があり、非ウイルス核酸送達担体にとって利点であるDNアーゼ耐性も提供する。
【0076】
絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体は、2種類の試験細胞(HEK細胞およびMDA-MB-435細胞)に対して十分なトランスフェクション効率をもたらすようには見えなかった。しかしながら、図27Bに示したように、絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体は、HEK細胞に対して単量体バージョンより25倍高いトランスフェクション効率を示し、リポフェクタミン2000とほぼ同じレベルの効率を示した。理論に拘束されるものではないが、単量体バージョンに対して、二量体ppTG1配列の付加によって、このようにトランスフェクション効率が向上したことは、このペプチドが細胞進入の点で重要なことを示しているのかもしれない。ppTG1ペプチドは、pDNAに結合し、細胞膜を不安定化する機能を有すると報告された。Rittner et al., 5 Mol. Ther. 104-14(2002)。さらに、インビトロトランスフェクションアッセイでは、ppTG1は、N/P比が低く、低濃度(125ng/mL)であり、ポリエチレンイミンのpDNA複合体と比較して約45倍のトランスフェクション効率を示し、他のCPPとは異なると報告された。同上。液胞プロトンポンプの特異的な阻害剤であるバフィロマイシンAの存在下でのトランスフェクション実験(Sun et al., 29 Biomats.(2008)4356-65(2008))から、ppTG1ペプチドのpDNA複合体は細胞膜を通って、またはエンドサイトーシスを介して細胞に取り込まれる可能性があることが示唆された(Rittner et al., 2002)。さらに、ppTG1の分子モデリングから、構造がαヘリックスの時に、全てのリジンが同じ側に隔離され、このためにヘリックスが両親媒性になり得ることが示唆された。次いで、リジン残基はDNAの負電荷と相互作用することができた。なぜなら、2つのアミン基の間の平均距離はDNA鎖にある2つのリン酸の間の平均距離と類似しているからである。El-Andaloussi et al., 8 J. Gene. Med. 1262-73(2006); Abes et al., 35 Biochem. Soc. Trans. 53-55(2007); Duchardt et al., 8 Traffic 848-66(2007); Rittner et al., 2002。しかしながら、ppTG1に関する以前の研究にもかかわらず、二量体ppTG1の機能は以前に報告されたことがない。組換え絹糸-ポリリジン-ppTG1と複合体を形成した核酸を含む本発明の系では、ポリリジンならびにppTG1配列は核酸と相互作用する可能性があり、核酸複合体は細胞膜を通って細胞に導入することができる。絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体は、ppTG1配列を介して細胞膜を不安定化する推定二次構造を形成し、絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体より有意に高いトランスフェクション効率を示した(図27B)。この場合、ポリリジン配列はppTG1配列に隣接している(図23Aおよび23B)。
【0077】
FTIR-ATR測定に基づいてβシート構造を含有する、メタノール処理したpDNA複合体(図24)は、メタノール処理していない絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体複合体とは異なるトランスフェクション挙動を示した(図28)。この結果から、メタノール処理していない系に対して、メタノール処理した絹糸ベース複合体からpDNAを持続的または一定に放出させる手法が示された。この結果は、メタノール処理によって誘導された絹糸配列のβシート構造が複合体の酵素分解速度を低下させるためである。さらに、メタノール処理したpDNA複合体はα-キモトリプシンによって酵素処理された後に、プロテアーゼXIVによる処理と比較して少量の遊離pDNAを放出した(図26、レーン11、12)。α-キモトリプシンは非結晶性絹糸フィブロンを加水分解するのに対して、プロテアーゼXIVは非結晶性絹糸フィブロンだけでなく、βシート(結晶性)絹糸フィブロンも消化する。Numata et al., 2010; Bowman et al., 1988; Huang et al., 2003。従って、βシート構造内容物などの絹糸配列の二次構造は酵素分解速度が異なるために、これらの複合体からのpDNA放出プロファイルを制御するのに使用することができる。核酸送達用であるが、設計および機能に大きな融通性がある、PEGのようなポリマー。
【0078】
本明細書において提供される方法および組成物はまた、細胞をリプログラミングする目的で核酸を細胞に送達するのに使用することができる。例えば、リプログラミング因子をコードする核酸を細胞に送達して、人工多能性幹(IPS)細胞を作製することができる。本明細書で使用する「リプログラミング」という用語は、高度に分化した体細胞の分化状態を多能性表現型に変えるプロセスを指す。
【0079】
本明細書で使用する「リプログラミング因子」という用語は、例えば、インビトロで、人工多能性幹細胞表現型への細胞リプログラミングを促進する、または人工多能性幹細胞表現型への細胞リプログラミングに寄与する核酸を指す。本明細書に記載の核酸送達法を用いて、リプログラミング因子は細胞に外因的または異所的に添加される。細胞がリプログラミングされる時には、リプログラミング因子は、好ましくは、同じ種に由来するもの、すなわち、ヒト細胞の場合にはヒトリプログラミング因子であるが、必ずしも同じ種に由来するとは限らない。インビトロで体細胞をリプログラミングして多能性にするための関心対象のリプログラミング因子の非限定的な例は、Oct3/4(Pouf51)、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15、Sox18、NANOG、KIf1、Klf2、Klf4、KIf5、c-Myc、1-Myc、n-Myc、およびLIN28、ならびにインビトロでの体細胞リプログラミング法において、これらの1つまたは複数の代わりとなり得る任意の遺伝子/タンパク質または分子である。「インビトロでリプログラミングして多能性状態にする」とは、核もしくは細胞質への導入または細胞融合、例えば、卵母細胞、胚、生殖細胞、もしくは多能性細胞との細胞融合を必要としない、典型的には、これを含まないインビトロリプログラミング法を指すために本明細書において用いられる。
【0080】
多能性幹細胞の誘導を確かめるために、単離されたクローンを幹細胞マーカー発現について試験することができる。このような発現によって、細胞が人工多能性幹細胞と特定される。幹細胞マーカーは、SSEA3、SSEA4、CD9、Nanog、Fbx15、Ecat1、Esg1、Eras、Gdf3、Fgf4、Cripto、Dax1、Zpf296、Slc2a3、Rex1、Utf1、およびNat1を含む非限定的な群より選択することができる。このようなマーカーの発現を検出する方法には、例えば、RT-PCRおよびコードポリペプチドの存在を検出する免疫学的方法が含まれる。
【0081】
単離された細胞の多能性幹細胞特徴は、胚性幹細胞マーカーの発現および3種類の胚葉のそれぞれの細胞に分化する能力を評価する多くの試験のいずれによっても確かめることができる。一例として、ヌードマウスにおけるテラトーマ形成を用いて、単離されたクローンの多能性特徴を評価することができる。細胞をヌードマウスに導入し、その細胞に由来する腫瘍に対して組織学および/または免疫組織化学を行う。さらに、3種類全ての胚葉に由来する細胞を含む腫瘍が成長すると、その細胞が多能性幹細胞であると分かる。
【実施例】
【0082】
実施例1.組換え絹糸-ポリリジン分子の設計およびクローニング
クモ絹糸反復ユニットは、クモであるネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)の引き糸タンパク質MaSp1配列の天然配列(Accession P19837)に由来するコンセンサス反復
に基づいて選択された。この反復の6つの連続コピーを含有する6マーは、以前に公開された手順に従って、制限部位NheIおよびSpeIを有するリンカーによって改変されているpET-30aに、クローニングインサートを導入することによって作り出した。Prince et al., 34 Biochem. 10879-85(1995)。15個のリジン残基をコードする合成オリゴヌクレオチドの配列は以下の通りであった。
【0083】
NheIおよびSpeIの制限部位をイタリック体で示した。Lys-aおよびLys-bは、アニーリングして二本鎖DNAを形成する相補オリゴヌクレオチドである。次いで、新たに形成した二本鎖DNAを連結し、単量体(15リジン)、二量体(30リジン)、および三量体(45リジン)を形成するように多量体化した。DNAリガーゼ(New England Biolabs Inc., Ipswich, MA)によって、ポリリジン配列の二本鎖DNAをpET30-6マーと連結して、pET30-6マー-ポリリジンを作製した。
【0084】
実施例2.組換え絹糸-ポリリジンタンパク質の発現および精製
構築物pET30-6マー(対照)、pET30-6マー-15リジン、pET30-6マー-30リジン、およびpET30-6マー-45リジンを用いて、SlyDタンパク質産生に欠陥のある変異株である大腸菌RY-3041株を形質転換した。タンパク質発現は以前に報告された方法によって行った。Huang et al., 278 J. Biol. Chem. 46117-23(2003); Yan et al., 276 J. Biol. Chem. 8500-06(2001)。簡単に述べると、細胞を、カナマイシン(50μg/ml)を含有するLBブロス中で37℃で培養した。OD600nmが0.6になった時に、0.5mM IPTG(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を添加することによってタンパク質発現を誘導した。約4時間のタンパク質発現の後に、細胞を13,000gの遠心分離によって収集した。細胞ペレットを変性緩衝液(100mM NaH2PO4、10mM Tris HCl、8M尿素、pH8.0)に再懸濁し、12時間攪拌することによって溶解した後に、13,000rcf、4℃で30分間、遠心分離した。変性条件下でNi-NTAアガロース樹脂(Qiagen, Valencia, CA)および20mMイミダゾールを上清に添加することによって(バッチ精製)、タンパク質のHis-タグ精製を行った。カラムをpH6.3の変性緩衝液で洗浄した後に、pH4.5の変性緩衝液(イミダゾールを含まない)によってタンパク質を溶出した。4〜12%プレキャストNuPage Bis-Trisゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を行った。ゲルをコロイダルブルー(Invitrogen)で染色した。精製試料をMilli-Q水に対して大規模に透析した。透析のために、MWCOが3,500のSlide-A-Lyzer Cassettes(Pierce, Rockford, IL)を使用した。透析した試料を1mLのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解した。配列を確認するために、Tufts University Core FacilityにおいてLC/MS/MS分析によって組換えタンパク質をさらに特徴付けた。
【0085】
実施例3.組換え絹糸-ポリリジンと複合体を形成するpDNAの調製および特徴付け
GFP(EGFP、7,650bp)をコードするpDNAをコンピテントDH5α大腸菌(Invitrogen)において増幅し、EndoFree Plasmid Maxi Kits(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて精製した。DNA濃度は260nmにおける吸光度によって求めた。組換え絹糸タンパク質とpDNAの複合体を調製するために、様々なN/P比で、絹糸タンパク質を含有するHFIP溶液(10mg/mL)をpDNA溶液(370μg/mL)と混合した。ここで、P/N比は、組換え絹糸とpDNAのヌクレオチドとのモル比を指す。組換え絹糸およびpDNAの混合物を室温(約20℃)で一晩インキュベートした後に、特徴付けを行った。pDNA複合体を、アガロースゲル電気泳動、動的光散乱(DLS, Brookhaven Instruments Corporation, Holts ville, NY)、および原子間力顕微鏡(AFM, Dimension V, Veeco Instruments Inc., Plainview, NY)によって特徴付けた。アガロースゲル電気泳動のために、10μLの各試料をローディング緩衝液と混合し、臭化エチジウムを含有する1%アガロースゲル上で分析した(TAE緩衝液、100V、60分)。DLSは、532nmレーザーを用いて37℃、散乱角90°で行い、粒径およびその分布は、Dynamic Light Scatteringソフトウェア(Brookhaven Instruments Corp.)を用いて分析した。pDNA絹糸複合体溶液(約70μL)を超純水(450μL)に添加し、次いで、DLS測定のために試料として使用した。AFM観察は、タッピングモードAFMにおいて、ばね定数2.8N/m、長さ200〜250μmのシリコンカンチレバーを用いて室温で空気中で観察した。以前に報告された方法によって、物体の真の寸法を得るために、カンチレバー先端コンボリューション効果(tip-convolution effect)の較正を行った。Numata et al., 6 Macromol. Biosci. 41-50(2006)。
【0086】
実施例4.pDNA複合体を含有するフィルムの調製
絹糸フィブロンを、B.モリ(B.mori)カイコの繭(Tajima Shoji Co., Yokohama, Japan)から抽出し、以前に述べられたように絹糸溶液(5wt%)を調製した。Jin & Kaplan, 424 Nature 1057-61(2003)。絹糸溶液を24マルチウェルプレートおよび96マルチウェルプレートの中で成型し、溶媒を蒸発させた後に絹糸フィルムを得た。その後に、絹糸フィルムをエタノール溶液(70%)で滅菌した。pDNA複合体を含有する絹糸フィルムを調製するために、pDNA絹糸複合体溶液(HFIP/水)を絹糸フィルム上で成型し、溶媒(HFIP/水)を除去するために室温で少なくとも12時間乾燥させた。遊離pDNAを除去するために、絹糸フィルムを超純水(DNアーゼ、RNアーゼフリー、Invitrogen)で洗浄した後に、細胞トランスフェクション実験において使用した。
【0087】
実施例5.細胞培養およびトランスフェクション
HEK細胞(293FT)は組換えタンパク質の発現ツールとして広く役立っており、モデル細胞株として使用した。例えば、Thomas & Smart, 51 J. Pharmacol. Toxicol. Methods 187-200(2005)を参照されたい。DMEM、10%FBS、5%グルタミン、5%NEAAからなる培地を用いて、培養物をコンフルエンスになるまで増殖させた。培養物を、0.25%トリプシン(Invitrogen)を用いて培養基からはがし、次いで、2.5μLリポフェクタミン(Invitrogen)と共に、24マルチウェルプレートに入っているpDNA絹糸複合体がロードされた絹糸フィルム上に5,000個の細胞/cm2の密度で再プレートした。37℃で24時間、細胞をインキュベートした後に、GFPプラスミドトランスフェクションを評価するために、蛍光画像を蛍光顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)によって得た。発現結果(n=4)は、計数した全細胞に対するGFP蛍光陽性細胞のパーセントとして表した。
【0088】
細胞生存率分析のために、HEK細胞(50,000個の細胞/ウェル)を、pDNA複合体を含有する96ウェルプレートに播種し、トランスフェクション実験において使用した培地(100μL)中で48時間培養した。HEK細胞に対するpDNA複合体の細胞傷害性を、標準的な3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(MTT)アッセイ(Promega, Madison, WI)によって製造業者の説明書に従って特徴付けた(n=8)。
【0089】
実施例6.RDGを含む絹糸配列の設計およびクローニング
クモ絹糸反復ユニットは、クモであるネフィラ・クラビペスの引き糸タンパク質MaSp1配列の天然配列(Accession P19837)に由来するコンセンサス反復
に基づいて選択された。この反復の6つの連続コピーおよび30個のリジンを含有する絹糸6マー-30lysを、以前に公開された手順に従って、クローニングインサートをpET-30aに導入することによって作り出した。Prince et al., 1995; Huang et al., 2003。RGD残基をコードする合成オリゴヌクレオチドの配列は以下の通りであった。
NheIおよびSpeIの制限部位をイタリック体で示した。RGD-aおよびRGD-bは、アニーリングして二本鎖DNAを形成する相補オリゴヌクレオチドである。図11に示したように、DNAリガーゼ(New England Biolabs Inc, Ipswich, MA)によって、RGD配列の二本鎖DNAをpET30-6マー-ポリリジンと連結して、5種類のpET30-6マー-ポリリジン-RGDを作製した。
【0090】
実施例7.組換え絹糸-RDGタンパク質の発現および精製
構築物pET30-RGD-6マー-30リジン、pET30-RGD-6マー-30リジン-RGD、pET30-6マー-30リジン-RGD、pET30-6マー-30リジン-2xRGD、およびpET30-11xRGD-6マー-30リジンを用いて、SlyDタンパク質産生に欠陥のある変異株である大腸菌RY-3041株を形質転換した。タンパク質発現は以前に報告された方法によって行った。Huang et al., 278 J. Biol. Chem. 46117-23(2003); Yan et al., 276 J. Biol. Chem. 8500-06(2001)。簡単に述べると、細胞を、カナマイシン(50μg/ml)を含有するLBブロス中で37℃で培養した。OD600nmが0.6になった時に、1.0mM IPTG(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を添加することによってタンパク質発現を誘導した。約4時間のタンパク質発現の後に、細胞を13,000gの遠心分離によって収集した。細胞ペレットを変性緩衝液(100mM NaH2PO4、10mM Tris HCl、8M尿素、pH8.0)に再懸濁し、12時間攪拌することによって溶解した後に、13,000g、4℃で30分間、遠心分離した。変性条件下でNi-NTAアガロース樹脂(Qiagen, Valencia, CA)および20mMイミダゾールを上清に添加することによって(バッチ精製)、タンパク質のHis-タグ精製を行った。カラムをpH6.3の変性緩衝液で洗浄した後に、pH4.5の変性緩衝液(イミダゾールを含まない)によってタンパク質を溶出した。4%〜12%プレキャストNuPage Bis-Trisゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を行った。ゲルをコロイダルブルー(Invitrogen, Carlsbad, CA)で染色した。精製試料をMilli-Q水に対して大規模に透析した。透析のために、MWCOが100〜500DaのSpectra/Por Biotech Cellulose Ester Dialysis Membranes(Spectrum Laboratories Inc, Rancho Dominguez, CA)を使用した。配列および分子量を確かめるために、Tufts University Core FacilityにおいてMALDI-TOFによって組換えタンパク質をさらに特徴付けた。
【0091】
実施例8.組換え絹糸-RGDと複合体を形成するGFPをコードするpDNAの調製および特徴付け
GFP(EGFP、7,650bp)をコードするプラスミドDNA(pDNA)をコンピテントDH5α大腸菌(Invitrogen)において増幅し、EndoFree Plasmid Maxi Kits(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて精製した。DNA濃度は260nmの吸光度によって求めた。組換え絹糸タンパク質とpDNAとの複合体を調製するために、絹糸タンパク質(10mg/mL)を含有する溶液を様々なP/N比でpDNA溶液(370μg/mL)と混合した。ここで、P/N比は、組換え絹糸ポリマーとpDNAのヌクレオチドとの重量比を指す。組換え絹糸およびpDNAの混合物を室温(約20℃)で一晩インキュベートした後に、特徴付けを行った。pDNA複合体を、アガロースゲル電気泳動、ゼータ電位メーター(Zetasizer Nano-ZS, Malvern Instruments Ltd, Worcestershire, UK)、DLS(Brookhaven Instruments Corporation, Holtsville, NY)、およびAFM(Dimension V, Veeco Instruments Inc., Plainview, NY)によって特徴付けた。アガロースゲル電気泳動のために、10μLの各試料をローディング緩衝液と混合し、臭化エチジウムを含有する1%アガロースゲル上で分析した(TAE緩衝液、100V、60分)。試料のゼータ電位およびゼータ偏差(zeta deviation)をゼータ電位メーターによって3回測定した。Dispersion Technology Software バージョン5.03(Malvern Instruments Ltd)を用いて、平均データを得た。DLSは532nmレーザーを用いて、37℃、散乱角90°で行い、粒径およびその分布は、Dynamic Light Scatteringソフトウェア(Brookhaven Instruments Corporation)を用いて分析した。pDNA複合体溶液(約70μL)を超純水(450 μL, Invitrogen)に添加し、次いで、DLS測定のために試料として使用した。pDNA複合体溶液を、切断されたマイカ上で成型し、タッピングモードAFMにおいて、ばね定数2.8N/m、長さ200〜250μmのシリコンカンチレバーを用いて室温で空気中で観察した。以前に報告された方法によって、物体の真の寸法を得るために、カンチレバー先端コンボリューション効果の較正を行った。Numata et al., 6 Macromol. Biosci. 41-50(2006)。
【0092】
実施例9.細胞培養、トランスフェクション、および生存率
HEK細胞(293FT)は組換えタンパク質の発現ツールとして広く役立っており、モデル細胞株として使用した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、10%FBS、5%グルタミン、5%非必須アミノ酸(NEAA)からなる培地を用いて、培養物をコンフルエンスになるまで増殖させた。培養物を、0.25%トリプシン(Invitrogen)を用いて培養基からはがし、次いで、96マルチウェルプレートに入れてフィルム上に1500個の細胞/ウェルの密度で再プレートした。pDNA(1.2μg)および組換え絹糸(適量)の複合体を各ウェルに添加した。細胞を37℃で6時間インキュベートした後に、培地を、pDNA複合体を含まない培地と交換した。さらに48時間インキュベートした後に、GFPプラスミドトランスフェクションを評価するために、蛍光顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)によって蛍光画像を得た。発現結果(n=3)は、計数した全細胞に対するGFP蛍光陽性細胞のパーセントとして表した。細胞生存率については、HEK細胞(50,000個の細胞/ウェル)を、pDNA複合体を含有する96ウェルプレートに播種し、トランスフェクション実験において使用した培地(100μL)中で48時間培養した。HEK細胞に対するpDNA複合体の細胞傷害性を、標準的な3-(4,5-ジメチルチアゾール2-イル)2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(MTT)アッセイ(Promega, Madison, WI)によって製造業者の説明書に従って特徴付けた(n=8)。
【0093】
実施例10.組換え絹糸-RGDと複合体を形成するルシフェラーゼコードpDNAの調製および特徴付け
ホタルルシフェラーゼをコードするpDNA(7041bp)をコンピテントDH5α大腸菌(Invitrogen)において増幅し、EndoFree Plasmid Maxi Kits(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて精製した。DNA濃度は260nmにおける吸光度によって求めた。組換え絹糸タンパク質とpDNAの複合体を調製するために、様々なN/P比(0.1〜10)で、絹糸タンパク質(0.1mg/mL)を含有する溶液をpDNA溶液(370μg/mL)と混合した。ここで、N/P比は、アミンの数とpDNAのリン酸の数との比を指す。複合体のサイズを均一にするために、組換え絹糸およびpDNAの混合物を室温(約20℃)で一晩インキュベートした後に、特徴付けを行った。pDNA複合体は、アガロースゲル電気泳動、ゼータナノサイザー(zeta nanosizer)(Zetasizer Nano-ZS, Malvern Instruments Ltd, Worcestershire, UK)、DLS(Brookhaven Instruments Corp., Holtsville, NY)、およびAFM(Dimension V, Veeco Instruments Inc., Plainview, NY)によって特徴付けた。アガロースゲル電気泳動のために、10μLの各試料をローディング緩衝液と混合し、臭化エチジウムを含有する1%アガロースゲル上で分析した(TAE緩衝液、100V、60分)。試料のゼータ電位およびゼータ偏差をゼータナノサイザーによって3回測定した。Dispersion Technology Softwareバージョン 5.03(Malvern Instruments Ltd)を用いて、平均データを得た。DLSは633nm He-Neレーザーを用いて、25℃、散乱角173°で行った。粒径および分布(PDI)は、Dispersion Technology Softwareバージョン5.03(Malvern Instruments Ltd)を用いて求めた。pDNA複合体溶液を、切断されたマイカ上で成型し、タッピングモードAFMにおいて、ばね定数2.8N/m、長さ200〜250μmのシリコンカンチレバーを用いて室温で空気中で観察した。以前に報告された方法によって、物体の真の寸法を得るために、カンチレバー先端コンボリューション効果の較正を行った。Numata et al., 2006。
【0094】
実施例11.細胞培養、トランスフェクション、および生存率
αvβ3インテグリンおよびαvβ5インテグリンを発現すると報告されているHeLa細胞、ならびに遺伝子発現ツールとして広く用いられており、αvβ3インテグリンが無く、αvβ5インテグリンが少ないと報告されているヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞(293FT)をモデル細胞株として使用した。Oba et al., 2007; Hu et al., 270 J. Biol. Chem. 26232-38(1995); Simon et al., 272 J. Biol. Chem. 29380-89(1997); Thomas & Smart, 2005。DMEM、10%FBS、5%グルタミン、5%NEAAからなる培地を用いて、培養物をコンフルエンスになるまで増殖させた。培養物を、0.25%トリプシン(Invitrogen)を用いて培養基からはがし、次いで、24マルチウェルプレートに入れてフィルム上に7000個の細胞/ウェルの密度で再プレートした。HeLa細胞用およびHEK細胞用のトランスフェクション培地は、10%FBSを含有するDMEMであった。pDNA(1.2μg)および組換え絹糸(適量)の複合体を各ウェルに添加した。細胞を37℃で6時間インキュベートした後に、培地を、pDNA複合体を含まない培地と交換した。さらに48時間インキュベートした後に、ルシフェラーゼ遺伝子発現を定量評価するために、ルシフェラーゼアッセイ(Promega, Madison, WI)を製造業者のプロトコールに従って行った(n=4)。簡単に述べると、トランスフェクトされた細胞をPBS(Invitrogen)で洗浄し、Luciferase Cell Culture Lysis Regent(Promega)によって溶解した。溶解産物をLuciferase Assay SubstrateおよびLuciferase Assay Buffer(Promega)と混合し、次いで、ルシフェラーゼ遺伝子発現を、ルミネセンスマイクロプレートリーダー(Spectra MAX Gemini EM, Molecular Devices Corporation, Sunnyvale, CA)を用いて光ルミネセンスの強度(相対光単位)に基づいて評価した。各ウェルにおけるタンパク質の量を、BCAタンパク質アッセイ(Pierce Biotech., Rockford, IL)を用いて求め、次いで、相対光単位/タンパク質重量(RLU/mg)を得た。本実験では、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を正の対照ベクターとして使用した。細胞生存率については、HEK細胞(5000個の細胞/ウェル)を、pDNA複合体を含有する96ウェルプレートに播種し、トランスフェクション実験において使用した培地(100μL)中で48時間培養した。HEK細胞に対するpDNA複合体の細胞傷害性を、標準的な3-(4,5-ジメチルチアゾール2-イル)2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(MTT)アッセイ(Promega)によって製造業者の説明書に従って特徴付けた(n=8)。
【0095】
統計解析
シリコンウェーハ上にある粒径を、Research Nanoscopeソフトウェアバージョン7.30(Veeco)を用いてAFMによって測定した。30の測定値の平均値を使用した。AFMによる粒径、細胞トランスフェクション効率、および細胞生存率の統計差を独立t検定と両側分布によって求め、p<0.05で統計的に有意な差があるとみなした。AFM、細胞トランスフェクション効率、および細胞生存率実験のデータを平均±標準偏差として表した。
【0096】
実施例12.共焦点レーザー走査型顕微鏡観察(CLSM)
pDNAを、Label IT Nucleic Acid Labeling Kit(Mirus, Madison, WI)を用いて製造業者の手順に従ってCy5で標識した。HeLa細胞をGlass Bottom Culture Dishes(MatTeK Corporation, Ashland, MA)に播種し、2mLのDMEM中で一晩インキュベートした。標識pDNA(2.4μg)と11RSタンパク質との複合体(N/P2)をウェルに添加した。6時間インキュベートした後に、培地を新鮮な培地と交換した。さらに48時間インキュベートした後に、細胞をPBSで2回洗浄し、300nM 4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI, Invitrogen)PBS溶液と10分間インキュベートした。Cy5標識されたpDNA複合体およびDAPI染色された核の細胞内分布を、CLSM(Leica Microsystems)によって488nm(Arレーザー)、633nm(He-Neレーザー)、および710nm(Mai Taiレーザー)の励起波長で観察した。
【0097】
実施例13.組換え絹糸-RGDと複合体を形成したルシフェラーゼコードdRNAを含有する核酸送達システムの結果および考察ならびに細胞トランスフェクションのためのその使用
ポリリジンおよびRGDを含む絹糸タンパク質の発現および精製:
ポリリジンおよびRGD細胞結合モチーフ(RS、RSR、SR、S2R、および11RS)を用いて作製された5種類のクモ絹糸変異体のアミノ酸配列を、図11および図18に示したように作製した。組換え絹糸タンパク質の収率は精製および透析の後に約10mg/Lであった。Ni-NTAクロマトグラフィーによる精製前および精製後のタンパク質をSDS-PAGEによって分析し、純度を評価するためにコロイダルブルーで染色した。RS、RSR、SR、S2R、および11RSはそれぞれ、約33kDa、32kDa、30kDa、30kDa、および35kDaに対応するバンドを示し(図12)、それぞれ、26,068.1Da、26,584.4Da、25,565.9Da、26,082.1Da、31,669.86Daの理論分子量(モノアイソトピック質量)より高かった。典型的に、SDS-PAGEゲルは純度を評価するのに有用であるが、絹糸ベースポリマーが疎水性であるために、このタンパク質の本当のサイズを特徴付けることができない。Prince et al., 1995。しかしながら、MALDI-TOFの結果は、それぞれ、26,068.1Da、26,584.4Da、25,565.9Da、26,082.1Da、31,669.86Daを示し、バイオタンパク質が予想された組換え絹糸タンパク質であることを裏付けた。組換えタンパク質は10.6の理論pIを示し、室温で水溶性であった(5.0mg/mL)。
【0098】
pDNA複合体の特徴付け:
ルシフェラーゼをコードするDNAと5種類の組換え絹糸タンパク質(RS、RSR、SR、S2R、および11RS)のDNA-タンパク質複合体形成を、AFM、DLS、およびゼータ電位メーターによって特徴付けた。
【0099】
組換え絹糸-ポリリジン-RGDのDNA複合体の水力学的直径をDLSによって測定した(表4)。
【0100】
(表4)DLSによって求められた組換え絹糸-RGDのpDNA複合体の平均直径(nm)および分布(PDI)
aN/P比は、アミンの数とpDNAのリン酸との比を指す。
bPDIは双峰分布のために正確に求められなかった。
【0101】
N/P比が増加するにつれて、複合体の平均直径は小さくなった。しかしながら、N/P10などの高いN/P比で調製したpDNA複合体は、これらの直径の双峰分布を示した。N/P2で調製した組換え絹糸-RGDのpDNA複合体をマイカ上で成型し、AFMによって観察した(図19)。図19Aに示したように、複合体は全て球状複合体を形成した。N/P2の11RSのpDNA複合体の平均直径および高さがAFM観察によって求められ、それぞれ、223±32nmおよび30±8nmであった(n=30)。DLSおよびAFMよって求められた寸法は、pDNA複合体粒子の体積を考慮すると妥当な一致を示した。
【0102】
DNAおよび組換え絹糸-ポリリジン-RGDの複合体の相互作用特性および電解安定性を調べるために、アガロースゲル電気泳動実験を行った。図20Aは、1%アガロースゲルにおける遊離DNAおよび0.1〜10の様々なN/P比を有する11RSのDNA複合体の移動を示す。N/P0.1および1の11RSとのDNA複合体は遊離pDNAと同じ方向に移動したのに対して、N/Pが2を超えるDNA複合体は反対方向に移動したか、またはウェルから移動しなかった。これらの結果から、N/Pが1未満の11RSとのDNA複合体は負に荷電していたのに対して、N/Pが2を超えるDNA複合体は正に荷電していたことが分かる。N/P2で調製した他の4種類の組換え絹糸-ポリリジン-RGD(RS、RSR、SR、S2R)のDNA複合体もアガロースゲル電気泳動によって特徴付けられた。全ての試料が正電荷を示した(図20B)。正電荷の値を測定するために、pDNA複合体のゼータ電位を求めた。図20Cは、様々なN/P比を有する11RSのDNA複合体のゼータ電位を示す。ゼータ電位はN/P比と共に増加し、N/P2でプラスになった。N/P2で調製した11RSのpDNA複合体のゼータ電位は0.1±4.5mVであった。
【0103】
N/P比が10を超える、RS、RSR、SR、S2R、および11RSそれぞれとのDNA複合体の細胞傷害性をMTTアッセイを用いて測定した。図20は、トランスフェクション実験において使用した濃度より高い濃度(1.9mg/mL)において、全試料の複合体がHEK細胞に対して細胞傷害性が無かったことを示す。
【0104】
HeLa細胞およびHFK細胞に対するDNAトランスフェクション:
インテグリンを介したエンドサイトーシスによる核酸送達のためにRGDペプチドを含有するカチオン性組換え絹糸とのpDNA複合体の実現性を評価するために、HeLa細胞およびHEK細胞を用いてインビトロトランスフェクション実験を行った。様々なN/P比で様々な組換え絹糸(11RS、RS、RSR、SR、およびS2R)と複合体を形成したDNAのpDNAトランスフェクション効率を比較するために、HeLa細胞にレポーター遺伝子としてルシフェラーゼpDNAを移入した。図21Aは、ルシフェラーゼアッセイに基づいた、HeLa細胞に対する、N/P比が0.1〜10の11RSのpDNA複合体のトランスフェクション効率を示す(n=4)。N/P2で調製した11RSのpDNA複合体は、様々なN/P比の中で最も高いトランスフェクション効率を示し、この後に、効力は急に減少した。これは、恐らく、細胞と相互作用する組換え絹糸が過剰になったためである。図21Bおよび図21Cは、HeLa細胞およびHEK細胞に対する、N/P2の様々な組換え絹糸(11RS、RS、RSR、SR、およびS2R)と複合体を形成したpDNAならびに絹糸6マー-30lysブロックコポリマー(図を参照されたい)および対照であるリポフェクタミン2000のトランスフェクション効率を示す。RGD配列を含有する組換え絹糸と比較して、絹糸6マー-30lysブロックコポリマーはRGD配列を含有せず、HeLa細胞およびHEK細胞に対して実質的なトランスフェクションを示さなかった。N/P2でのトランスフェクション効率の相対順序は以下の通りに減少した:11RS>RSR≒S2R>RS≒SR。さらに、11RSのpDNA複合体は、N/P2で1つまたは2つのRGD配列を含有する他の組換え絹糸のpDNA複合体と比較してHeLa細胞に対して有意に高いトランスフェクション効率を示した(図21B)。他方で、11RSのpDNA複合体は、RSRおよびSR2と比較してHEK細胞に対して有意に高いトランスフェクション効率を示さなかった(図21C)。
【0105】
Cy5標識pDNAとの11RSの複合体およびDAPI染色された核の細胞内分布をCLSMによって調べた。図22は、pDNA複合体とインキュベートしたHeLa細胞の典型的なCLSM画像を示す。Cy5で標識されたpDNA(赤色)は細胞膜の近くに、ならびに核の周囲に分布していた(青色)。このことから、pDNAは、11RS組換えタンパク質を介して核の近くに導入されたことが分かる。
【0106】
pDNA核酸送達のために、細胞結合モチーフを含有する組換え絹糸分子の核酸複合体を設計した。細胞結合ドメインの位置および含有量が複合体の核酸送達にどのように影響を及ぼすのか調べた。5種類の組換え絹糸であるRS、RSR、SR、S2R、および11RSをクローニングし、大腸菌から発現させ、精製した。30個のリジンを含有する絹糸分子の球状ナノサイズイオン複合体を調製し、次いで、pDNAと複合体を形成した(図19)。サイズが均一なpDNA複合体を得るために、pDNA複合体を24時間インキュベートした後に、pDNA複合体の特徴付けおよびトランスフェクション実験を行った。なぜなら、調製直後のpDNA複合体は双峰性のサイズ分布を示し、トランスフェクション効率がほとんど無いからである。N/P2の、RS、RSR、SR、S2R、および11RSのpDNA複合体の平均直径は、DLS測定によれば、それぞれ、382nm、315nm、565nm、207nm、および186nmであった(表4)。N/P比が増加すると共に、pDNA複合体の平均直径は減少した(表4)。このことは、複合体のサイズがN/P比によって制御可能なことを示唆している。また、電気泳動中に複合体からpDNAは放出されなかった(図20Aおよび図20B)。このことから、pDNAは球状複合体の中に完全に詰め込まれていたことが分かる。
【0107】
様々なN/P比で様々な組換え絹糸と複合体を形成したDNAを用いたHeLa細胞およびHEK細胞へのトランスフェクション実験から、N/P2で調製した11RSのpDNA複合体はわずかに正に荷電し(0.1±4.5mV)、直径が186nmであり、本明細書において調製された他の組換え絹糸複合体より効率的であることが明らかになった(図21)。N/P10で調製した11RSのpDNA複合体は、表4に列挙したように、恐らく、双峰性のサイズ分布のために、N/P5およびN/P2と比較してトランスフェクション効率が低かった。S2RおよびRSRのDNA複合体は組換え絹糸配列の様々な位置に2つのRGD配列を含有し、HeLa細胞に対してほぼ同じトランスフェクション効率を示した。RSおよびSRのDNA複合体はRGD配列を1つしか含有せず、S2RおよびRSRと比較してわずかに低いトランスフェクション効率を示した。これらの結果は、N末端またはC末端にあるRGDモチーフの位置が、組換え絹糸ブロックコポリマーとのpDNA複合体のトランスフェクション効率に影響を及ぼすようには見えなかったことを示唆している。言い換えると、pDNA複合体の中にある組換え絹糸分子は、図10に示したように、複合体の表面に存在するpDNAおよびRGD配列とランダムに組み合わさると考えられた。理論に拘束されるものではないが、さらなる新規のタンパク質ベクターを構築するために、他の機能ペプチドも送達システムの配列の様々な位置に付加することができる。
【0108】
RGD配列はαvβ3インテグリンおよびαvβ5インテグリンを選択的に認識し、結合するので、核酸ベクターの細胞結合機能および細胞トランスフェクション効率を向上させるリガンドとして用いられている。αvβ3インテグリンおよびαvβ5インテグリンはHeLa細胞において発現することが報告されている。Oba et al., 2007; Kim et al., 2005; Connelly et al., 2007; Renigunta et al., 2006; Sun et al., 2008; Moore et al., 2008; Ishikawa et al., 2008; Quinn et al., 2009; Singh et al., 2003。理論に拘束されるものではないが、pDNA複合体のトランスフェクション効率は細胞の種類にも依存することがある。HEK細胞の場合、トランスフェクションは、DNA複合体の種類に関係なく(例えば、以前に報告されたような、リポフェクタミン(商標)2000トランスフェクション試薬対ポリ(エチレングリコール)-ポリリジンブロックコポリマー。Oba et al., 2007)、HeLa細胞より簡単に起こることがある。従って、RGD配列の効果をより良く求めるために、様々な核酸ベクターのトランスフェクション効率を同じ細胞株において比較しなければならない。
【0109】
11RGD配列を組換え絹糸に付加すると(11RS)、HeLa細胞へのDNAのトランスフェクション効率が有意に向上したのに対して、RGD配列がより少ない他の組換え絹糸は、HeLa細胞へのトランスフェクション効率が有意に向上しなかった(図21B)。他方で、11RGD配列を有する組換え絹糸(11RS)は、2個のRGD配列を有する組換え絹糸(RSRおよびSR2)と比較してHEK細胞へのトランスフェクション効率を有意に向上しなかった(図21C)。従って、組換え絹糸の中にある11RGD配列は、RGD-インテグリンを介した、RGDと複合体を形成したDNAのトランスフェクションを誘導するように見えたが、他のRGD配列、二量体RGD配列、および単量体RGD配列はRGD-インテグリンを介したトランスフェクションを誘導しなかった。さらに、Cy5標識pDNA複合体とインキュベートしたHeLa細胞のCLSM観察から、pDNAは11RS組換え絹糸タンパク質と共に核の近くに送達されたことが分かった(図22)。
【0110】
要約すると、これらの結果から、インテグリンを介したエンドサイトーシスによって組換え絹糸タンパク質である11RSと共にpDNAを核に導入できることが分かった。11RGD配列は、インテグリンを介したトランスフェクションに十分なように見えた。図20に示したように、pDNAとポリリジン配列とのイオン相互作用の強度を考慮すると、DNA複合体が細胞内にある場合でも、イオン相互作用はpDNA複合体を維持するのに十分な強さがあるように見えた。従って、組換え絹糸タンパク質がリソソームのタンパク質分解活性によって部分的に分解された後に、pDNAを複合体から放出することができる。
【0111】
PEIおよびRGDペプチドの複合体が調べられ、PEI分子のみと比較してHEK細胞に対する高いトランスフェクション効率を示した。PEIおよびRGDペプチドの複合体の細胞傷害性は400μg/mLの濃度で約50%であった。Sun et al., 2008。ポリ(エチレングリコール)(PEG)に基づくベクターはHEK細胞に対して細胞傷害性がほとんど無く、PEIと同等のトランスフェクション効率も示した。Moore et al., 2008。RGDを送達ポリマー化学合成プラットフォームに付加するには、収率が約57%の多段階工程が必要とされることが見出されている。Oba et al., 2007。本発明の態様では、組換え絹糸を一段階合成である遺伝的技法を用いて合成し、結果として単分散ポリマー鎖を得た。
【0112】
トランスフェクション実験において使用した最も高い濃度(1.9mg/mL)の組換え絹糸からのpDNA複合体はHEK細胞に対して細胞傷害性を示さず、11RGD配列によるインテグリンを介したトランスフェクションも示した。さらに、任意の数のペプチドを選択された位置および数で絹糸担体分子に付加するように、組換え絹糸を設計することができる。この点に関して、この組換え絹糸ベース核酸送達システムは、一般的なポリマーベース核酸送達システムに対して利益と選択肢を提供する。核酸送達の効率および特異性をさらに向上させるために、本明細書において調製された組換え絹糸は、細胞浸透ペプチドおよび腫瘍ホーミングペプチドなどの多機能ペプチドを用いてさらに改変することができる。特に、細胞透過ペプチドとのpDNA複合体の最も高いトランスフェクション効率の1つは、DNA濃度が低く(125ng/mL)、特定の透過ペプチドを有さないPEIのpDNA複合体と比較して約45倍であると報告された。Rittner et al., 2002。従って、ポリリジンが装填された複合体およびRGDなどの細胞標的化ドメインを含有するように改変された組換え絹糸は、非ウイルス核酸送達用であるが、設計および機能に大きな融通性がある、PEGのような新たなプラットフォームポリマーである。
【0113】
実施例14.細胞膜不安定化ペプチドを含む絹糸ベース核酸担体
ポリリジンおよびppTG1を含有する絹糸配列の設計およびクローニング:
クモ絹糸反復ユニットは、クモであるネフィラ・クラビペスの引き糸タンパク質MaSp1配列の天然配列(Accession P19837)に由来するコンセンサス反復
に基づいて選択された。この反復の6つの連続コピーおよび30個のリジンを含有する絹糸6マー-30lysを、以前に公開された手順に従って、クローニングインサートをpET-30aに導入することによって作り出した。Numata et al., 30 Biomats. 5775-84(2009); Ferrari et al., 8 Mol. Ther. 284-94(2003); Rabotyagova et al., 10 Macromol. Biosci. 49-59(2010)。ppTG1残基をコードする合成オリゴヌクレオチドの配列は以下の通りであった。
SpeIの制限部位をイタリック体で示した。ppTG1-aおよびppTG1-bは、アニーリングして二本鎖DNAを形成する相補オリゴヌクレオチドである。図23Bに示したように、DNAリガーゼ(New England Biolabs Inc, Ipswich, MA)によって、ppTG1配列の二本鎖DNAをpET30-絹糸6マー-30lysと連結して、pET30-絹糸6マー-30lys-ppTG1を作製した。
【0114】
ポリリジンおよびppTG1を含む絹糸タンパク質の発現および精製:
構築物pET30-絹糸6マー-30lys-ppTG1単量体およびpET30-絹糸6マー-30lys-ppTG1二量体を用いて大腸菌RY-3041株を形質転換し、以前に報告された方法によって、これらのタンパク質の発現および精製を行った。Numata et al., 2009; Numata et al., 6 Macromol. Biosci. 41-50(2006); Arai et al., 91 J. Appl. Polym. Sci. 2383-90(2004)。4%〜12%プレキャストNuPage Bis-Trisゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を行った。ゲルをコロイダルブルー(Invitrogen, Carlsbad, CA)で染色した。精製試料をMilli-Q水に対して大規模に透析した。透析のために、MWCOが100〜500DaのSpectra/Por Biotech Cellulose Ester Dialysis Membranes(Spectrum Laboratories Inc, Rancho Dominguez, CA)を使用した。配列および分子量を確かめるために、Tufts University Core Facilityにおいてマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析によって組換えタンパク質をさらに特徴付けた。
【0115】
ポリリジンおよびppTG1を含有する組換え絹糸のDNA複合体の調製および特徴付け:
Green Fluorescence Protein(GFP、7650bp)またはホタルルシフェラーゼ(Luc、7041bp)をコードする2種類のpDNAをコンピテントDH5α大腸菌(Invitrogen)において増幅し、EndoFree Plasmid Maxi Kits(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて精製した。DNA濃度は260nmにおける吸光度によって求めた。組換え絹糸タンパク質とpDNAの複合体を調製するために、様々なN/P比で、絹糸タンパク質を含有する溶液(0.1mg/mL)をpDNA溶液(370μg/mL)と混合した。ここで、N/P比は、アミンの数とpDNAのリン酸の数との比を指す。組換え絹糸およびpDNAの混合物を室温(約20℃)で一晩インキュベートした後に、特徴付けを行った。さらに多くのβシート構造を誘導するために、pDNA複合体を遠心分離によって収集し、上清を除去し、次いで、pDNA複合体を50%メタノール溶液中で24時間インキュベートした後に、メタノール処理したpDNA複合体を得た。pDNA複合体を、ゼータ電位(Zetasizer Nano-ZS, Malvern Instruments Ltd, Worcestershire, UK)、AFM(Dimension V, Veeco Instruments Inc, Plainview, NY)、および多重反射水平MIRacle ATRアタッチメント(Ge結晶を使用する, Pike Tech, Madison WI)を備えるFTIR-ATR(JASCO FT/IR-6200)によって特徴付けた。pDNA複合体溶液(約70μL)を超純水(450μL, Invitrogen)に添加し、次いで、ゼータ電位およびサイズ測定のために試料として使用した。ゼータ電位メーターによって、試料のゼータ電位およびゼータ偏差を3回測定し、平均データを、Dispersion Technology Softwareバージョン5.03(Malvern Instruments Ltd)を用いて得た。pDNA複合体溶液を、切断されたマイカ上で成型し、タッピングモードAFMにおいて、ばね定数2.8N/m、長さ200〜250μmのシリコンカンチレバーを用いて室温で空気中で観察した。以前に報告された方法によって、物体の真の寸法を得るために、カンチレバー先端コンボリューション効果の較正を行った。Li et al., 24 Biomats. 357-65(2003)。
【0116】
DNアーゼ耐性:
pDNA複合体を、1単位のDNアーゼI(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を含有するPBS 100μLと37℃で1時間インキュベートした。20℃で20μLの0.5M EDTAを添加することによって、消化反応を止めた。pDNA複合体を、プロテアーゼXIVまたはα-キモトリプシン(150μg/mL)でも37℃で2時間処理した。分解産物のアガロースゲル電気泳動のために、20μLの各試料をローディング緩衝液と混合し、臭化エチジウムを含有する1%アガロースゲル上で分析した(TAE緩衝液、100V、60分)。
【0117】
細胞培養、トランスフェクション、および生存率:
組換えタンパク質用の発現ツールとして広く用いられているヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞(293FT)をモデル細胞株として使用した。Ross & Hui, 6 Gene Ther. 651-59(1999)。HEK細胞と比較するために、MDA-MB-435黒色腫細胞株も使用した。培養物を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、10%FBS、5%グルタミン、5%非必須アミノ酸(NEAA)からなる培地を用いてコンフルエンスになるまで増殖させた。培養物を、0.25%トリプシン(Invitrogen)を用いて培養基からはがし、次いで、24マルチウェルプレートに入れて70,000個の細胞/ウェルの密度で再プレートした。pDNA(1.2μg)および組換え絹糸(適量)の複合体を各ウェルに添加した。細胞を37℃で6時間インキュベートした後に、培地を、pDNA複合体を含まない培地と交換した。さらに72時間インキュベートした後に、GFPプラスミドトランスフェクションを評価するために、蛍光画像を蛍光顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)によって得た。ルシフェラーゼ遺伝子発現を定量評価するために、ルシフェラーゼアッセイ(Promega, Madison, WI)を行った(n=4)。各ウェルにおけるタンパク質の量を、BCAタンパク質アッセイ(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)を用いて求め、次いで、相対光単位(アウトプット)/タンパク質重量(RLU/mg)を得た。リポフェクタミン2000(Invitrogen)を正の対照ベクターとして使用した。細胞生存率については、HEK細胞(30,000個の細胞/ウェル)を、pDNA複合体を含有する96ウェルプレートに播種し、トランスフェクション実験において使用した培地(100μL)中で48時間培養した。HEK細胞に対するpDNA複合体の細胞傷害性を、標準的な3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム(MTS)アッセイ(Promega, Madison, WI)によって製造業者の説明書に従って特徴付けた(n=8)。
【0118】
統計解析:
マイカ基板上にある粒径を、Research Nanoscopeソフトウェアバージョン7.30(Veeco Instruments Inc)を用いてAFMによって測定した。30の測定値の平均値を使用した。AFMによる粒径、細胞トランスフェクション効率、および細胞生存率の統計差を独立t検定と両側分布によって求め、p<0.05で統計的に有意な差があるとみなした。AFM、細胞トランスフェクション効率、および細胞生存率実験のデータを平均±標準偏差として表した。
【0119】
組換え絹糸タンパク質の調製:
ポリリジンおよびppTG1配列を含有する組換え絹糸タンパク質を大腸菌において発現させ、Ni-NTAクロマトグラフィーを用いて精製した。ポリリジンおよび細胞膜不安定化ペプチド(ppTG1)を用いて作製したクモ絹糸変異体のドメイン構造およびアミノ酸配列を図23Aおよび図23Bに示した。精製および透析の後に、組換え絹糸タンパク質の収率は約0.7mg/Lであった。Ni-NTAクロマトグラフィーおよび透析による精製の後にタンパク質をSDS-PAGEによって分析し、純度を評価するためにコロイダルブルーで染色した。絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体は、それぞれ、約33kDaおよび34kDaの分子量に対応するメジャーバンドを示し(図23C)、それぞれ、27,602.29Daおよび30,067.87Daの理論分子量(モノアイソトピック質量)より大きかった。典型的に、SDS-PAGEゲルは純度を評価するのに有用であるが、絹糸ベースポリマーが疎水性であるために、このタンパク質の本当のサイズを特徴付けることができない。Numata et al., 30 Biomats. 5775-84(2009); Prince et al., 34 Biochem. 10879-85(1995)。しかしながら、MALDI-TOF質量分析からの結果は、それぞれ、27,602.29Daおよび30,067.87Daを示した。このことから、このバイオタンパク質は、予想された組換えタンパク質であることが裏付けられた。絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体は、それぞれ、10.70および10.75の理論pIを示し、室温で水溶性であった(約2.0mg/mL)。
【0120】
pDNA複合体の特徴付け
ルシフェラーゼをコードするpDNAおよび組換え絹糸タンパク質である絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体とのイオン複合体形成を、様々なN/P比(アミンの数とpDNAのリン酸の数の比)で、AFM、DLS、およびゼータ電位メーターによって特徴付けた。
【0121】
組換え絹糸のpDNA複合体の水力学的直径およびゼータ電位をゼータナノサイザー(zeta-nanosizer)によって測定した(表5)。
【0122】
(表5)組換え絹糸タンパク質のpDNA複合体の平均直径、その分布(PDI)、およびゼータ電位
αSL-単量体:絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体、SL-二量体:絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体。
βPDIは双峰分布のために正確に求められなかった。
【0123】
濃度が0.1mg/mL であり、pDNAを含まない絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体の平均直径は、それぞれ、169nmおよび163nmであった。N/P比が増加するにつれて複合体の平均直径は小さくなり、N/P5で調製したpDNA複合体の直径は双峰性の分布を示した。N/P比が増加するにつれて、pDNA複合体のゼータ電位はわずかに増加した。絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体のゼータ電位が低いために、絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体のpDNA複合体のゼータ電位は絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体と比較して低かった。平均直径およびゼータ電位に基づいて、N/P2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体とのpDNA複合体はインビトロトランスフェクションにより適していた。N/P2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体とのpDNA複合体の平均直径およびゼータ電位は、それぞれ、108nmおよび99nmならびに-37.5±7.1mVおよび-26.2±6.3mVであった。絹糸ドメインのβシートへのタンパク質移行を誘導するために、ppTG1単量体および二量体を含有する組換え絹糸タンパク質のpDNA複合体(N/P2)を、24時間、メタノール処理した。結果から、メタノール処理後に、両複合体の寸法およびPDIはわずかに増加するが、メタノール処理後にゼータ電位は同じままであったことが証明された(表5)。メタノール処理前およびメタノール処理後の絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体もFTIR-ATRによって特徴付けられた。図24に示したように、メタノール処理後にアミドI領域における1625cm-1のピークが存在する。このことから、pDNA複合体における組換え絹糸タンパク質にβシート構造(結晶化)があることが分かる。Almofti et al., 20 Mol. Membr. Biol. 35-43(2003)。
【0124】
N/P2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のDNA複合体をマイカ上で成型し、AFMによって特徴付けた。図25に示したように、N/P 2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のDNA複合体は均一な球状複合体を形成した。AFM観察に基づいて、N/P2でppTG1二量体を含有するこの組換え絹糸DNA複合体は、平均直径が185±43nm であり、高さが3.6±1.1nmであった(n=30)。DLSおよびAFMによって求められた寸法は、DNA複合体粒子の体積を考慮して妥当な一致を示した。
【0125】
N/P比2の絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体とのpDNA複合体の細胞傷害性を標準的なMTSアッセイによって求めた。約100μg/mLの濃度の絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体のpDNA複合体は、それぞれ、75±3%および69±8%の細胞生存率を示した。
【0126】
DNアーゼ耐性および核酸放出挙動:
図26に示したように、DNアーゼに対する、組換え絹糸タンパク質である絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体と共に組込まれたpDNAの安定性を、DNアーゼI処理およびアガロースゲル電気泳動を用いて特徴付けた。全試料の結果を、遊離pDNAのみを含有する試料の結果と比較した(図26、レーン1)。遊離pDNAの場合、1時間のDNアーゼI酵素処理によって遊離pDNAが迅速に分解されたのに対して(図26、レーン2)、2時間のプロテアーゼXIVおよびα-キモトリプシンによる分解は明らかでなかった(図26、レーン3および4)。絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体の場合、DNアーゼI処理後、ウェルの中にpDNAが依然としてあった(図26、レーン5)。DNアーゼI処理に続いて、プロテアーゼXIVによる酵素処理後に、絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体の中のpDNAは複合体から放出された(図26、レーン6)。絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体の場合、絹糸タンパク質を消化する加水分解酵素であるα-キモトリプシンおよびプロテアーゼXIV(Numata et al., 31 Biomats. 2926-33(2010); Almofti et al., 20 Mol. Membr. Biol. 35-43(2003); Bowman et al., 85 P.N.A.S. 7972-76(1988))も複合体からpDNAを放出した(図26、レーン7および8)。メタノール処理したpDNA複合体も、1時間のDNアーゼI処理から、組込まれているpDNAを保護した(図26、レーン9)。α-キモトリプシンによる酵素処理後にメタノール処理pDNA複合体から放出されるpDNAは、プロテアーゼXIVによる処理と比較して少なかった(図26、レーン11および12)。恐らく、このプロテアーゼに対する結晶化絹糸の感受性が、タンパク質を含有する非結晶化(βシートを含有しない)絹糸より小さいからである。Numata et al., 2010; Bowman et al., 1988; Huang et al., 278 J. Biol. Chem. 46117-23(2003)。
【0127】
細胞に対する核酸トランスフェクション:
核酸送達のためのppTG1細胞膜不安定化ペプチドを含有するカチオン性組換え絹糸と複合体を形成したpDNAの実現性を評価するために、HEK細胞およびMDA-MB-435細胞を用いてインビトロトランスフェクション実験を行った。pDNA複合体の最も効率的なN/P比を求めるために、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼpDNAを有する絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体を介して、HEK細胞をトランスフェクトした。図27Aは、ルシフェラーゼアッセイに基づいた、HEK細胞に対する、N/P比が0.1〜5の絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体のトランスフェクション効率を示す(n=4)。N/P2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体は様々なN/P比の中で最も高いトランスフェクション効率を示し、この後に、効力は急に減少した。これは、恐らく、細胞およびpDNAと相互作用する組換え絹糸が過剰になったためである。図27Bは、対照としてトランスフェクション試薬であるリポフェクタミン2000と比較した、HEK細胞およびMDA-MB-435細胞に対する、ppTG1単量体を含有する組換え絹糸タンパク質のpDNA複合体およびppTG1二量体を含有する組換え絹糸タンパク質のpDNA複合体(N/P2)のトランスフェクション効率を示す。絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体はHEK細胞に対してリポフェクタミン2000と同じトランスフェクション効率を示し、両細胞に対して、N/P2の絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体と比較して有意に高いトランスフェクション効率も示した。図27Cおよび図27Dに示したように、HEK細胞およびMDA-MB-435細胞に対してGFPレポーター遺伝子を用いたトランスフェクション実験も行った。このことから、pDNA複合体のトランスフェクションおよび細胞内にあるこれらの分解産物は細胞形態に大きな影響を及ぼさなかった。
【0128】
図28に示したように、メタノール処理前およびメタノール処理後の絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体(N/P2)を用いた144時間以内のインビトロトランスフェクション挙動もルシフェラーゼアッセイによって特徴付けた。メタノール処理した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のトランスフェクション効率はメタノール処理していない同じ複合体より低かったが、メタノール処理したpDNA複合体は、少なくとも144時間(6日間)にわたってゆっくりとした、かつ一定したpDNA放出を示した。
【技術分野】
【0001】
政府支援
本発明は、米国立衛生研究所(Tissue Engineering Resource Center)により与えられた助成金P41 EB002520による資金供与を受けた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2009年7月10日に出願された米国特許仮出願第61/224,618号の優先権の恩典を主張する。米国特許仮出願第61/224,618号の内容はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0003】
発明の分野
本発明は、分子遺伝学、遺伝子療法、生体高分子核酸送達システム、およびバイオ医薬品に関する。より具体的には、本態様は、高度に調整される核酸送達システムの新たなファミリーとしてバイオ絹糸タンパク質を提供する。
【背景技術】
【0004】
背景
遺伝子発現の分子機構についての知識が増えるにつれて、数十年前に遺伝子療法という概念が生まれた。組換えDNA法の出現と共に、クローニングされた遺伝子が利用可能になり、外来遺伝子によってインビトロで哺乳動物細胞の遺伝子異常および疾患表現型を実際に補正できると証明するために用いられた。効率的なレトロウイルスベクターおよび他の遺伝子導入法によって、インビトロおよびインビボでの効率的な表現型補正することが説得力をもって証明されたので、今や、遺伝子療法は治療法として広く受け入れられている。最近、様々な疾患を治療するために、RNA干渉または遺伝子サイレンシングがある特定の配列のRNAを分解する新手法となってきている。欠陥のある遺伝子からコピーされたRNAと適合するように低分子ヘアピン型RNAが設計されれば、その遺伝子の異常タンパク質産物は産生されないだろう。
【0005】
しかしながら、ウイルスベクターの導入によって引き起こされる潜在的に重篤なアレルギー反応を含めて、現行の核酸送達システムには欠点がある。従って、宿主細胞または被験体に核酸を送達するための代替系が依然として必要とされている。具体的には、生体適合性、生分解性があり、毒性が低く、トランスフェクション/送達効率が高く、特定の細胞タイプに標的化することができ、核酸ベクターからの核酸の徐放を調節することができる有用な非ウイルス核酸ベクターが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概要
絹糸タンパク質は、生分解性および生体適合性もある機械的に頑強な材料構造に自己組織化する。このことから、絹糸タンパク質は核酸送達に有用なことが示唆される。絹糸タンパク質はまた遺伝子工学を介して化学的性質、分子量、および他の設計特性を調整することができるので、この核酸送達システムは微調整することができる。本発明は、概して、標的細胞への核酸(例えば、プラスミドDNA、低分子干渉RNA)送達を対象としている。
【0007】
1つの態様において、核酸送達のために新規の絹糸ベースコポリマーがポリ(L-リジン)ドメインを用いて生物工学によって作られた。このポリマーは溶解状態で自己組織化し、イオン相互作用を介して核酸(例えば、DNA)と複合体を形成した。1つの態様において、DNAと複合体を形成したこれらの絹糸-ポリリジンベースコポリマーのイオン複合体は遺伝子をヒト細胞に首尾良く移入した。この材料系は、アガロースゲル電気泳動、原子間力顕微鏡観察、ゼータ電位メーター、共焦点レーザー走査型顕微鏡観察、および動的光散乱によって特徴付けられた。
【0008】
別の態様において、核酸送達のために新規の絹糸ベースマトリックスが1つまたは複数の細胞結合モチーフ(例えば、RGDドメイン)を用いて生物工学によって作られた。このマトリックスは核酸と複合体を形成し、遺伝子(例えば、pDNA)をヒト細胞に首尾良く移入した。
【0009】
別の態様において、核酸送達のために新規の絹糸ベースマトリックスが細胞透過ペプチドおよび細胞膜不安定化ペプチドの1つまたは複数のドメインを用いて生物工学によって作られた。このマトリックスは核酸と複合体を形成し、核酸(例えば、pDNA)をヒト細胞に首尾良く移入した。これらは、高いトランスフェクション効率、制御された酵素分解速度、および複合体からの核酸の徐放を示す。
【0010】
絹糸ベースマトリックスはまた、送達効率および選択性ならびに細胞活性を調整するために、1つまたは複数の他の機能ペプチドドメイン、例えば、ウイルスのシグナルペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、金属結合ドメイン、細胞標的化ペプチド、薬物結合ペプチド、細胞活性を変える機能ドメイン、およびこれらの組み合わせを用いて生物工学によって作ることもできる。
【0011】
特定の態様において、10:1のポリマー/ヌクレオチドモル比で調製された、平均溶液直径(solution diameter)が380nmである、30個のリジン残基を有する絹糸ベース生体高分子/核酸複合体は高い細胞トランスフェクション効率を示した。このDNA複合体は絹糸フィルム上にも固定化され、これらの表面からの直接的な細胞トランスフェクションを示した。
【0012】
別の特定の態様において、アミンの数とDNAのリン酸の数の比(N/Pと呼ぶ)が2で調製され、平均溶液直径が186nmである、30個のリジン残基および11個のRGD配列を有する絹糸ベース生体高分子/核酸複合体は高い細胞トランスフェクション効率を示した。これらの結果から、バイオ絹糸タンパク質が高度に調整される核酸送達システムの新たなファミリーであり、送達効率および選択性を改善するためにさらなる機能特徴を送達システムに加えることができると証明された。
【0013】
さらに別の態様において、アミンの数とDNAのリン酸の数の比(N/Pと呼ぶ)が2で調製され、球形であり、直径が約99nmである、ポリリジンおよびppTG1二量体配列を有する絹糸ベース生体高分子/核酸複合体は高い細胞効率を示した。ppTG1の二量体配列はトランスフェクション効率を大幅に向上させる。ポリリジン配列ならびに細胞透過ペプチドおよび細胞膜不安定化ペプチド(CPP)を含有する組換え絹糸は、トランスフェクション試薬であるリポフェクタミン2000に匹敵する有用なトランスフェクション効率を有する。これらの新たなバイオ絹糸送達システムは、非ウイルス核酸送達システムのための多用途かつ有用な新たなプラットフォームポリマーとして役立つことができる。
【0014】
さらに、組換え絹糸ポリマー/核酸複合体の絹糸配列の二次構造(例えば、βシート形成への移行)は複合体の酵素分解速度を制御することができ、従って、複合体からの核酸の放出プロファイルを調節することができる。
【0015】
本発明は、概して、特定の標的細胞への核酸(例えば、プラスミドDNA送達、低分子干渉RNA送達)送達システムおよび薬物送達システムを対象としている。細胞への核酸マトリックスの導入効率およびその特異性をさらに向上させるために、ある特定の疾患を標的とする特定のペプチド配列、例えば、細胞結合モチーフ、細胞透過ペプチド、ウイルスのシグナルペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、ならびに疾患細胞を加熱および死滅させるためにマイクロ磁気粒子またはナノ磁気粒子をコーティングするための金属結合ドメインを組換え絹糸に付加することができる。
【0016】
核酸複合体のサイズは、ポリリジン配列の分子量または組換え絹糸/核酸比によっても制御される。遺伝子トランスフェクションの誘導時間を制御するために、組換え絹糸の絹糸配列の二次構造によって遺伝子複合体の分解速度も制御することができる。ポリリジン配列を含有するように改変された組換え絹糸は、核酸と共に球状の複合体、例えば、ナノ粒子、ミセル、またはマイクロカプセルを形成する。
【0017】
さらに、絹糸ベース材料の表面に固定された核酸複合体を新たな核酸送達システムとして使用することができる。核酸用または薬物用の、これらの新たな新規のバイオ絹糸タンパク質ベース送達システムの設計および用途に融通がきくことは多くの送達分野において有用である。例えば、絹糸マトリックスは包帯または挿入物として用いられ、組織治癒に有利な増殖因子をコードする核酸を送達することもできる。
【0018】
この特許または出願ファイルは少なくとも1枚のカラー図面を含む。この特許または特許出願刊行物とカラー図面のコピーは、請求により、かつ必要な料金を払うことによって特許庁が提供するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の特定の態様の模式図を示す。(A)絹糸-ポリリジンブロックコポリマーとのプラスミドDNA(pDNA)複合体形成;(B)pDNA複合体を含有する絹糸フィルムの調製;および(C)pDNA複合体を含有する絹糸フィルムを用いた細胞トランスフェクション。
【図2】本発明の1つの態様における絹糸6マー-リジン(組換えクモ絹糸タンパク質)およびポリ-L-リジン配列のアミノ酸配列を示す。下線:代表的な単量体クモ絹糸ユニット。
【図3】Ni-NTAクロマトグラフィーによる精製前(A)およびNi-NTAクロマトグラフィーによる精製後(B)の組換え絹糸タンパク質のSDS-PAGE。レーン1:絹糸6マー、レーン2:絹糸6マー-15lys、レーン3:絹糸6マー-30lys、およびレーン4:絹糸6マー-45lys。レーンM:分子量マーカー。
【図4】シリコンウェーハ基板上での、(A)pDNAを有さない絹糸6マー-15lysタンパク質または(B)pDNAを有する絹糸6マー-15lysタンパク質、(C):絹糸6マー-30lysとのpDNA複合体、(D):絹糸6マー-45lysとのpDNA複合体、および(E):絹糸6マーとのpDNA複合体のAFM凹凸像を示す。この図のpDNA複合体はP/N比10で調製した。
【図5】pDNA、ならびに様々な分子量のリジン配列(A)および様々なポリマー/ヌクレオチド(P/N)比(B)を有するpDNA複合体のアガロースゲルである。A1およびB1:pDNA(対照)、A2:絹糸6マーおよびpDNA(P/N 10)、A3:絹糸6マー-lys15およびpDNA(P/N 10)、4:絹糸6マー-lys30およびpDNA(P/N 10)、A5:絹糸6マー-lys45およびpDNAm(P/N 10)、B2:絹糸6マー-lys30およびpDNA(P/N 2.5)、B3:絹糸6マー-lys30およびpDNA(P/N 5)、B4:絹糸6マー-lys30およびpDNA(P/N 10)、ならびにB5:絹糸6マー-lys30およびpDNA(P/N 25)、B6:絹糸6マー-lys30およびpDNA(P/N 50)。
【図6】(A)絹糸6マー-30lysと複合体を形成したpDNAを含有する絹糸フィルムの表面のAFM凹凸像を示す。(B)図6Aにおける白色の線のラインプロファイルデータを示す。
【図7】様々なP/N比のpDNA複合体をHEK細胞にロードした際のトランスフェクション結果を示す。絹糸6マー30lysのpDNA複合体を含有する絹糸フィルム上でインキュベートした細胞の蛍光顕微鏡画像。(7A)P/N 2.5、(7B)P/N 5、(7C)P/N 10、(7D)P/N 25、および(7E)P/N 50。(7F)蛍光画像による、pDNA複合体をHEK細胞にロードした際のトランスフェクション効率のプロット。データは平均±標準偏差として示した(n=4)。*2群間の有意差p<0.05。
【図8】様々なポリリジン配列を有するpDNA複合体をHEK細胞にロードした際のトランスフェクション結果を示す。絹糸6マー(8A)、絹糸6マー-15lys(8B)、絹糸6マー-30lys(8C)、および絹糸6マー-45lys(8D)のpDNA複合体を含有する絹糸フィルム上でインキュベートした細胞の蛍光顕微鏡画像。画像内の緑色は首尾良くトランスフェクトされた細胞を示す。図(8E)は、蛍光画像からのトランスフェクション効率のプロットを示す。データは平均±標準偏差として示した(n=4)。*2群間の有意差p<0.05。
【図9】様々なリジン配列を有するpDNA複合体(P/N=10)によってHEK細胞を処理した後の細胞生存率を示す。データは平均±標準偏差として示した(n=8)。*2群間の有意差p<0.05。
【図10】絹糸-ポリリジン-RGDブロックコポリマーとのpDNA複合体形成に使用した戦略の模式図およびpDNA複合体を用いた細胞トランスフェクションを示す。
【図11】ポリ-L-リジンおよびRGD配列を含有する組換えクモ絹糸タンパク質のアミノ酸配列を示す。下線:代表的な単量体クモ絹糸ユニット。
【図12】Ni-NTAクロマトグラフィーによる精製後の組換え絹糸タンパク質のSDS-PAGEである。RS、RSR、SR、S2R、11RS、および分子量マーカー(M)を各ラインに列挙した。
【図13】組換え絹糸のpDNA複合体の寸法および形状を示す。(13A)ポリマー/pDNA(P/N)比の関数としての、DLSによって求められた組換え絹糸のpDNA複合体の平均直径。マイカ上にある、P/N比500で調製した、RS(13B)およびRSR(13C)とのpDNA複合体のAFM凹凸像。
【図14】組換え絹糸とのpDNA複合体の電荷を示す。pDNAおよび様々なP/N比を有するRSRのpDNA複合体のアガロースゲル(A)、ならびにP/N 500で調製した様々な組換え絹糸とのpDNA複合体のアガロースゲル(B)。(C)ポリマー/pDNA(P/N)比の関数としての、RSRのpDNA複合体のゼータ電位。
【図15】様々な組換え絹糸とのpDNA複合体(P/N=500、N/P>10)を用いてHEK細胞を処理した後の細胞生存率である。データは平均±標準偏差として示した(n=8). *2群間の有意差p<0.05。
【図16】様々なP/N比を有する組換え絹糸のDNA複合体をHEK細胞にロードした際のトランスフェクション結果を示す(A)。データは平均±標準偏差として示した(n=4)。*2群間の有意差p<0.05。(B、C)P/N 200で調製した、11RSのpDNA複合体によってトランスフェクトされた細胞の蛍光顕微鏡画像。画像内の緑色は首尾良くトランスフェクトされた細胞を示す。
【図17】DLSによって求められた、組換え絹糸および組換え絹糸とpDNAとの複合体のサイズ分布を示す。
【図18】ポリ-L-リジンおよびRGD配列を有する組換えクモ絹糸タンパク質のアミノ酸配列を示す。RGD配列を太字にし、代表的な6マーのクモ絹糸配列には下線を引いた。
【図19】(19A)マイカ上にある、N/P比2で調製した、組換え絹糸-ポリリジン-RGD(11RS)と複合体を形成したpDNAのAFM凹凸像を示す。(19B)図19Aにおける白色の線のラインプロファイルデータを示す。
【図20】組換え絹糸-ポリリジン-RGDとのpDNA複合体の電荷を示す。pDNAおよび様々なN/P比を有する11RSのpDNA複合体のアガロースゲル(20A)、ならびにN/P 2で調製した様々な組換え絹糸とのpDNA複合体のアガロースゲル(20B)。(20C)アミン/DNAのリン酸のモル比(N/P)の関数としての、11RSのpDNA複合体のゼータ電位。
【図21】図21Aは、様々なN/P比の組換え絹糸(11RS)のpDNA複合体をHeLa細胞にロードした際のトランスフェクション結果を示す。 図21Bと図21Cは、N/P2で調製した様々な組換え絹糸(11RS、RS、RSR、SRおよびS2R)を、それぞれHela細胞(B)およびHEK細胞(C)にロードした際のトランスフェクション結果を示す。絹糸6マー-30lysブロックコポリマー(S)およびLIPOFECTAMINE(登録商標)2000トランスフェクション試薬を対照試料として使用した。データは平均±標準偏差として示した(n=4)。*2群間の有意差p<0.05。
【図22】HeLa細胞における組換え絹糸(11RS)とのpDNA複合体の細胞内分布を示す。図22A:3つの画像(22B〜22D)のオーバーレイである。図22Bおよび図22C:DAPI(22B)およびCy5標識(22C)とインキュベートした細胞のCLSM特徴付けを示す。図22D:細胞における複合体の位相差を示す。63x対物レンズを用いてCLSM観察を行った。pDNAをCy5(赤色)によって標識し、核をDAPI(青色)によって染色した。各スケールバーは10μmを表す。
【図23】図23Aは、組換え絹糸タンパク質配列の模式図である。 図23Bは、ポリ-L-リジンおよびppTG1配列を有する組換えクモ絹糸タンパク質のアミノ酸配列を示す。代表的な6マーのクモ絹糸配列に下線を引き、ppTG1配列を太字にした。 図23Cは、Ni-NTAクロマトグラフィーにより精製した後の組換え絹糸タンパク質のSDS-PAGEを示す。図23Cには、それぞれのラインに、分子量ラダー(L)、絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体(M)、および絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体(D)を列挙した。
【図24】メタノール処理前の絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のFTIR-ATRスペクトル(青色の線)および24時間のメタノール処理後の絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のFTIR-ATRスペクトル(灰色の線)を示す。矢印は、βシート構造に由来する1625cm-1でのピークを示す。
【図25】マイカ上にある、N/P 2比で調製した、絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体とのpDNA複合体のAFM凹凸像を示す。
【図26】DNアーゼI酵素からのpDNA保護結果を示す。MeOH処理した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体またはMeOH処理していない絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体について、DNアーゼIに曝露したpDNAの消化を測定した。レーン番号は、(1)遊離pDNAのみ、(2)遊離pDNAおよびDNアーゼ、(3)遊離pDNAおよびα-キモトリプシン、(4)遊離pDNAおよびプロテアーゼXIV、(5)絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびDNアーゼ、(6)DNアーゼ処理後の、絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびプロテアーゼXIV、(7)絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびα-キモトリプシン、(8)絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびプロテアーゼXIV、(9)MeOH処理した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびDNアーゼのpDNA複合体、(10)DNアーゼ処理後の、MeOH処理した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびプロテアーゼXIV、(11)MeOH処理した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびα-キモトリプシン、ならびに(12)MeOH処理した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体およびプロテアーゼXIVを表す。
【図27】絹糸-ポリリジン-ppTG1のpDNA複合体をHEK細胞およびMDA-MB-435細胞にロードした際のトランスフェクション結果を示す。図27Aは、HEK細胞における、様々なN/P比の絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のトランスフェクション結果を示す。図27Bは、HEK細胞およびMDA-MB-435細胞における、N/P2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体のトランスフェクション結果を示す。リポフェクタミン2000を正の対照試料として使用した。データは平均±標準偏差(n=4)として示した。*2群間の有意差p<0.05。図27Cおよび図27Dは、それぞれ、HEK細胞(27C)およびMDA-MB-435細胞(27D)に対する、N/P2で調製した、絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体と複合体を形成したGFPレポーター遺伝子をコードするDNAを用いたトランスフェクション後の細胞形態を示す。
【図28】MeOH処理前(四角)および24時間のMeOH処理後(三角)の、N/P2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体を用いたトランスフェクション時間経過を示す。*2群間の有意差p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本発明は、本明細書に記載の特定の方法、プロトコール、および試薬などに限定されず、従って、変更してもよい。本明細書において用いられる専門用語は特定の態様の説明のみを目的とし、本発明の範囲の限定を目的とせず、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0021】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる単数形は、文脈によってはっきりと示されていない限り複数の指示物を含み、逆もまた同じである。機能している例を除き、または特に定めのない限り、本明細書において用いられる成分の量または反応条件を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語により修飾されていると理解しなければならない。
【0022】
特定された全ての特許および他の刊行物は、説明および開示のために、例えば、本発明と共に用いられ得るこのような刊行物に記載の方法の説明および開示のために参照として本明細書にはっきりと組み入れられる。これらの刊行物は、本願の出願日前の刊行物の開示のためだけに提供される。この点に関して、本明細書には、先行発明に基づいて、または他の任意の理由により本発明者らがこのような開示に先行する権利がないと認められると解釈されるものは何もない。日付に関する全ての記載またはこれらの文書の内容に関する全ての表記は出願人が入手可能な情報に基づくものであり、これらの文書の日付または内容の正確さに関する是認を構成するものではない。
【0023】
特に定めのない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において任意の公知の方法、装置、および材料を使用することができるが、この点に関して方法、装置、および材料を本明細書において説明する。
【0024】
遺伝子療法には、核酸を標的細胞に導入するために効率的かつ安全な担体が必要とされる。現在、米食品医薬品局(FDA)によって認可された遺伝子療法は無いが、1989年から1,400件を超える遺伝子療法臨床試験が実施されている。Gene The. Clin. Trials Worldwide, J. Gene Med.(2009)。アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスを含むウイルスベクターはトランスフェクション効率が比較的高く、宿主ゲノムに組込まれることで長期間にわたって潜在的な効果があるために遺伝子送達において用いられてきた。Lundstrom, 21 Trends Biotech. 117-22(2003)。しかしながら、担体としてのウイルス導入による免疫応答について安全上の懸念が依然としてある。さらに、遺伝子療法においてレトロウイルスを使用すると白血病などの合併症が引き起こされることがある。なぜなら、ウイルス遺伝子が宿主ゲノムの任意の位置に挿入され得るからである。Edelstein et al., 6 J. Gene. Med. 597-602(2004)。
【0025】
絹糸タンパク質は、数十年間、バイオメディカル分野において縫合糸として首尾良く用いられ、細胞培養用および組織工学用の生体材料としても用いられている。優れた機械的特性、加工における融通性、および生体適合性があるために、このような広い有用性がFDAによって認可されている。Kaplan et al., ACS Symp. Ser. 544(1994); Altman et al., 24 Biomats. 401-16(2003); Wang et al., 27 Biomats. 6064-82(2006)。さらに、最近、βシート構造を有する絹糸タンパク質がα-キモトリプシンに曝露された時の分解産物はインビトロで神経細胞に対して細胞傷害性が無いことが報告され、示されている。Hollander, 43 Med. Hypotheses 155-56(1994); Wen et al., 65 Ann. Allergy 375-78(1990); Kurosaki et al., 66 Nippon Ika Daigaku Zasshi 41-44(1999); Rossitch et al., 3 Childs Nerv. Sys. 375-78(1987); Dewair et al.,76 J. Allergy Clin. Immunol. 537-42(1985); Zaoming et al.,6 J. Invest. Aller. Clin. Immunol. 6 237-41(1995); Numata et al., 31 Biomats. 2926-33(2010)。
【0026】
絹糸タンパク質は一般的に昆虫およびクモによって産生され、天然では繊維材料を形成し、優れた機械的特性および生体適合性があるために医療用縫合糸として用いられてきた。Kaplan et al., ACS Symp. Ser. 544(1994)。従来の用途を超えて、絹糸フィブロンは細胞培養用および組織工学用の生体材料としても用いられ、このような広い有用性がFDAによって認可されている。Altman et al., 24 Biomats. 401-16(2003); Wang et al., 27 Biomats. 6064-82(2006)。
【0027】
遺伝子工学によって改変された絹糸タンパク質は生来の特性と共に新たな特徴を示すことができる。Wong et al., 54 Adv. Drug Deliv. Rev. 1131-43(2002); Cappello et al., 3 Biotechnol. Prog. 198-202(1990); Megeed et al., 54 Adv. Drug Deliv. Rev. 1075-91(2002)。例えば、絹糸およびエラスチンタンパク質の他に例を見ない機械的特性を組み合わせる可能性を証明するために、絹糸様の結晶ブロックおよびエラスチン様の可動性のあるブロックからなるホモブロック(homoblock)タンパク質ポリマーが作製された。Cappello et al., 1990; Megreed et al., 2002。これらの絹糸-エラスチン様ポリマーヒドロゲルから、プラスミドDNA(pDNA)を含有するアデノウイルスベクターを放出させる例も報告されている。Megeed et al., 94 J. Control Release 433-45(2004)。細胞接着を向上させるRGD細胞結合ドメインを含むように生物工学によって作られた改変クモ絹糸も報告されている。Bini et al., 7 Biomacromolecules 3139-45(2006)。さらに、この改変絹糸タンパク質から調製された生体材料足場は、骨形成結果に関してヒト骨髄由来間葉系幹細胞を分化させる能力が高かった。同上。
【0028】
分子トリガーの含有から自己組織化の制御(Szela et al., 1 Biomacromol. 534-42(2000); Winkler et al., 39 Biochem. 12739-46(2000))、制御された石灰化のためのキメラ絹糸タンパク質(Wong et al., 103 P.N.A.S. 9428-33(2006); Huang et al., 28 Biomaterials 2358-67(2007))、および最近の全ての絹糸ブロックコポリマー設計までバイオ絹糸の他の多くの例を説明することができる。Rabotyagova et al., 10 Biomacromol. 229-36(2009)。
【0029】
絹糸フィブロンの二次構造によって、一般的に、材料の可溶性および生分解性が決まる。Huemmerich et al., 43 Biochem. 13604-12(2004)。α-ヘリックスおよびランダムコイル構造があると水溶液中での絹糸フィブロンの可溶性が高まるのに対して、βシート構造があると絹糸タンパク質は水溶液に溶解しなくなる。同上。さらに、βシート含有量が減少するにつれて絹糸フィブロンの分解速度が速まる。Li et al., 24 Biomats. 357-65(2003)。絹糸タンパク質のβシート結晶構造は、メタノール処理、水鈍(water annealing)処理、低pH、電場印加、剪断力の適用などの当業者に公知の方法によって誘導することができる。
【0030】
アルギニン-グリシン-アスパラギン酸であるRGD配列は、ある特定の細胞タイプ、例えば、内皮細胞、破骨細胞、マクロファージ、血小板、および黒色腫の細胞表面に発現するαvβ3インテグリンおよびαvβ5インテグリンを選択的に認識および結合することが知られている。Oba, Bioconjugate Chem.(2006); Kim, J. Controlled Release(2005); Connelly, Biomats.(2007)。インテグリンは、細胞外マトリックスと相互作用する膜貫通糖タンパク質の一種とみなされており、受容体を介したエンドサイトーシスによる細胞結合および細胞進入に用いられる。受容体を介したエンドサイトーシスは遺伝子送達システムの代表的な経路である。Renigunta et al., 17 Bioconj. Chem. 327-34(2006)。従って、RGD配列は、核酸(例えば、プラスミドDNAまたはsiRNA)送達に用いられる遺伝子ベクターのリガンドとして有用な候補である。
【0031】
カチオン性のポリマーおよびポリ(アミノ酸)は静電相互作用を介して核酸と相互作用し、集合して高分子電解質複合体を構築することができる。この高分子電解質複合体は、組換えウイルスに代わる細胞へのpDNA送達方法として提案されている。Zauner et al., 30 Adv. Drug Deliv. Rev. 97-113(1998); Ogris et al., 6 Gene Ther. 595-605(1999);Oupicky et al., 10 Bioconjug. Chem. 764-72(1999); Breitenkamp et al., 9 Biomacromolecules 2495-2500(2008); Fischer et al., 16 Pharm. Res. 1273-79(1999); Ahn et al., 80 J. Controlled Release 273-82(2002); Lavertu et al., 27 Biomats. 4815-24(2006)。核酸送達は様々な疾患状態にとって魅力的なアプローチである。なぜなら、例えば、改変された宿主細胞において導入遺伝子が生理活性タンパク質を産生できるからである。ポリ(L-リジン)は細胞によって分解され、小さな薬物のための送達ビヒクル(ベクター)を形成するカチオン性ポリマーとして用いられている。Zauner et al., 1998。ポリリジンとDNAとの相互作用は、アガロースゲル電気泳動(電荷およびサイズ)、電子顕微鏡(形状およびサイズ)、原子間力顕微鏡観察(AFM)(形状およびサイズ)、ならびに動的光散乱(DLS)(サイズおよびサイズ分布)によって詳細に特徴付けられている。Zauner et al., 1998。正に荷電した複合体は潜在的には細胞傷害性を誘導し、血漿タンパク質を含有する生物学的媒体中で凝集物を形成する可能性があるが(Ogris et al., 1999; Oupicky et al., 1999)、30未満のリジンを含有する本発明の絹糸ベースポリ(L-リジン)コポリマーのDNA複合体はヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞に対して細胞傷害性を示さなかった。
【0032】
有用な非ウイルス核酸ベクターは生体適合性、生分解性であり、毒性が低く、特定の細胞タイプに標的化することができる。これらは、合成ポリマーと一致する困難な設計目標である。近年、遺伝子ベクターとして、カチオン性リポソーム、ポリリジンコポリマー、ポリエチレンイミン(PEI)コポリマー、および多糖を含む様々なカチオン性ブロックコポリマーが研究されている。Zauner et al., 1998; Breitenkamp et al., 2008; Fischer et al., 1999; Ahn et al., 2002); Lavertu et al., 2006。特に、天然生体高分子は毒性が無く、生体適合性があるので非ウイルスベクターとしてますます魅力的になっている。絹糸ベースポリマーは生物工学によって付加的な機能を有することができ、特定の設計に基づいて化学的性質、分子量、および標的化を調整するための効率的な生体材料プラットフォームを提供し、従って、有用な非ウイルス核酸担体となり得る。
【0033】
本発明は、生体適合性、生分解性であり、無毒のカチオン性ポリマーを利用する新規の絹糸ベース非ウイルス核酸ベクターを提供する。絹糸ベースポリマーは、組換え法によって機能を加えることができ、系の設計に基づいて化学的性質、分子量、および標的化を調整するのに非常に効率的なアプローチを提供するので非ウイルス核酸ベクターの有用な候補である。別の例として、細胞トランスフェクション効率およびその細胞選択性を向上させるために、細胞結合モチーフ(RGD)、細胞浸透ペプチド(Elmquist et al., 269 Exp. Cell Res. 237-44(2001); Rittner et al., 5 Mol. Ther. 104-14(2002); Jarver et al., 35 Biochem. Soc'y Trans. 770-74(2007)); ウイルスのシグナルペプチド(Makela et al., 80 J. Virol. 6603-11(2006));腫瘍ホーミングペプチド(Laakkonen et al., 8 Nat. Med. 751-55(2002); Porkka et al., 99 P.N.A.S. 7444-49(2002); Christian et al., 163 J. Cell Biol. 871-78(2003); Laakkonen et al., 101 P.N.A.S. 9381-86(2004); Pilch et al.、103 P.N.A.S. 2800-04(2006));ならびに疾患細胞を加熱および死滅させるためにマイクロ磁気粒子またはナノ磁気粒子をコーティングするための金属結合ドメイン(Obradors et al., 258 Eur. J. Biochem. 207-13 (1998); Park et al., 128 J. Am. Chem. Soc'y 7938-46 (2006))を組換え絹糸に付加することができる。
【0034】
本発明の1つの態様は、1つまたは複数の細胞結合モチーフ、例えば、RGDを組換え絹糸配列に付加することによって、生体適合性、生分解性であり、無毒のカチオン性ポリマーを利用する絹糸ベース核酸ベクターのトランスフェクション効率を向上させる。また、これにより、C末端およびN末端などのRGD配列位置は細胞へのトランスフェクション効率に影響を及ぼし、新規のタンパク質ベース核酸ベクターを構築する際に考慮すべき有益な情報である。インビトロでHeLa細胞およびHEK細胞に核酸を送達するために、絹糸ベースコポリマーとプラスミドDNAとの複合体が調製され(図10)、アガロースゲル電気泳動、ゼータ電位メーター、原子間力顕微鏡観察(AFM)、および動的光散乱(DLS)によって特徴付けられた。
【0035】
本発明の1つの態様は、1つまたは複数のCPP、例えば、ppTG1ペプチドを絹糸ベース核酸ベクターの組換え絹糸配列に付加することによって、細胞傷害性が低くかつ非常に効率的で、トランスフェクション効率が高い核酸担体を提供する。pDNAに結合するリジンリッチ細胞膜不安定化ペプチドであるppTG1ペプチドは細胞膜を不安定化し、核酸導入を促進する。
【0036】
特定の態様では、ポリリジンならびに単量体および二量体のppTG1配列を含有する遺伝子操作された絹糸タンパク質を大腸菌内で合成し、その後に、ヒト胎児由来腎臓細胞においてトランスフェクション実験を行った。トランスフェクションレベルはトランスフェクション試薬であるリポフェクタミン2000と同等である。組換え絹糸と複合体を形成した核酸の構築物は球状形態を示し、平均水力学的直径が99nmであり、βシート構造がほとんど無い。さらに、絹糸ベース核酸複合体は、優れたDNアーゼ耐性ならびに絹糸タンパク質分解酵素による効率的な核酸放出を示す。さらに、βシートによって誘導される絹糸ベース核酸複合体と比較すると、核酸複合体の絹糸配列の二次構造が複合体の酵素分解速度を制御し、従って、複合体からの核酸の放出プロファイルを調節できることが分かる。従って、細胞膜不安定化ペプチドを含有するバイオ絹糸ベース核酸送達ビヒクルは、毒性の低い徐放核酸送達システムを提供する。
【0037】
ポリリジン配列を含有するように改変された組換え絹糸は、核酸と球状の複合体、例えば、ナノ粒子、ミセル、またはマイクロカプセルを形成する。核酸マトリックスは、細胞への効果的かつ選択的な核酸トランスフェクションを示すことができる。細胞への直接的な核酸トランスフェクションのために、核酸複合体が表面に固定化されている絹糸ベース生体材料も使用することができる。絹糸ベースブロックコポリマーの電荷核酸複合体のサイズは、ポリマー/核酸比または生物工学により設計に入れられるポリリジンドメインの分子量に基づいて制御することができる。核酸トランスフェクションの誘導時間を制御するために、組換え絹糸の絹糸配列の二次構造によって、核酸複合体の分解速度も制御することができる。
【0038】
タンパク質発現をもたらす、もしくはタンパク質発現を媒介する、または細胞機能を調節する任意の核酸が本発明の範囲内にある。従って、核酸は、RNA、DNA、siRNA、RNA/DNAキメラ、天然および人工のヌクレオチドまたは配列、またはこれらの組み合わせなどを指してもよいが、それに限定されるわけではない。例えば、組換え絹糸と複合体を形成する核酸には、dsRNA(二本鎖RNA)、siRNA(低分子干渉RNA)、shRNA(ショートヘアピンRNA)、saRNA(低分子活性化RNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、miRNA(ミクロRNA)、プレmiRNA、リボザイム、アンチセンスRNA、DNA、cDNA、DNAまたはRNAのベクター/プラスミドなどが含まれるが、それに限定されない。
【0039】
正電荷側鎖(R基)を含む複数のアミノ酸を用いて絹糸タンパク質を改変して、組換え絹糸配列(絹糸ベースコポリマー)を形成することができる。1つの態様において、組換え絹糸配列は、リジンリッチペプチドまたはアルギニンリッチペプチド、例えば、ポリリジンの1つまたは複数のドメインによって改変される。
【0040】
特定の態様において、クモ絹糸およびポリ(L-リジン)を組み合わせた新規の絹糸ベースブロックコポリマーが設計、作製、および特徴付けられた。HEK細胞へのインビトロ核酸送達のために、これらの絹糸ベースブロックコポリマーとプラスミドDNAの複合体が調製され(図1)、アガロースゲル電気泳動、原子間力顕微鏡観察(AFM)、および動的光散乱(DLS)によって特徴付けられた。DNA複合体を含有する絹糸フィルムも調製され、これらのフィルム上で細胞トランスフェクション実験が行われた。自己組織化、頑強な機械的特性、および制御可能な分解速度と、本明細書において報告された核酸との調整されたイオン複合体形成および細胞標的化の選択肢との組み合わせの点で、新規の絹糸ポリマー特性を考慮した時に、核酸送達研究のための新たなビヒクルファミリーが説明される。さらに、絹糸ベース材料の表面に固定化された核酸複合体を新たな核酸送達システムとして使用することができる。
【0041】
絹糸タンパク質を発現および精製するために、ポリリジンを含む、およびポリリジンを含まない、4種類のクモ絹糸変異体のアミノ酸配列を図2に示した。組換え絹糸タンパク質の収率は精製および透析の後に約10mg/Lであった。Ni-NTAクロマトグラフィーによる精製前および精製後のタンパク質をSDS-PAGEによって分析し、純度を評価するためにコロイダルブルーで染色した(図3)。絹糸6マー対照は約27kDaの分子量に対応するバンドを示した(図3Aおよび3B、レーン1)。リジン配列を含有する組換え絹糸タンパク質である絹糸6マー-15lys、絹糸6マー-30lys、および絹糸6マー-45lysも約30kDaの分子量を示した(図3Aおよび図3B、レーン2、3、および4)。これらは、それぞれ、23kDa、25kDa、および27kDaの理論分子量と一致した。ゲルバンドを用いたLC/MS/MSによるタンパク質特定の結果から、これらのバイオタンパク質は予想された組換え絹糸タンパク質であることが確かめられた。組換えタンパク質は部分的に水に溶け、室温でHFIPにも溶けた(10mg/mL)。
【0042】
さらに、ポリリジンおよびRGD細胞結合モチーフ(RS、RSR、SR、S2R、および11RS)を用いて作製された5種類のクモ絹糸変異体のアミノ酸配列を図11に示したように作製した。RGD-組換え絹糸タンパク質の収率は精製および透析の後に約10mg/Lであった。Ni-NTAクロマトグラフィーによる精製前および精製後のタンパク質をSDS-PAGEによって分析し、純度を評価するためにコロイダルブルーで染色した。RS、RSR、SR、S2R、および11RSは、それぞれ、約33kDa、32kDa、30kDa、30kDa、および35kDaの分子量に対応するバンドを示し(図12)、26068.1Da、26584.4Da、25565.9Da、26082.1Da、31669.86Daの理論分子量(モノアイソトピック質量)と完全に一致しなかった。しかしながら、MALDI-TOFの結果は、それぞれ、26068.1Da、26584.4Da、25565.9Da、26082.1Da、および31669.9Daを示し、バイオタンパク質が予想された組換えRGD-絹糸タンパク質であることを裏付けた。組換えタンパク質は10.6の理論pIを示し、室温で水溶性であった(1.0mg/mL)。
【0043】
GFPをコードするDNAと4種類の組換え絹糸タンパク質(絹糸6マー、絹糸6マー-15lys、絹糸6マー-30lys、絹糸6マー-45lys)とのDNA-タンパク質複合体形成ならびにGFPをコードするDNAと5種類の組換えRDG-絹糸タンパク質(RS、RSR、SR、S2R、および11RS)とのDNA-タンパク質複合体形成を、AFM、DLS、およびアガロースゲル電気泳動によって特徴付けた。
【0044】
図4は、シリコンウェーハ上に成型された組換え絹糸とのDNA複合体(P/N 10)の典型的なAFM凹凸像を示す。pDNAを含まない絹糸6マー-15lys分子は線状であったが(図4A)、DNAを含む絹糸6マー-15lysは球状複合体を形成した(図4B)。さらに、球状複合体は、絹糸6マー-30lysおよび絹糸6マー-45lysを用いた場合にも観察された(図4Cおよび4D)。絹糸6マー-15lys、絹糸6マー-30lys、および絹糸6マー-45lysのDNA複合体の平均直径は、それぞれ、335±104nm、392±77nm、および436±91nmであった(表1)。他方で、絹糸6マー分子はDNAとランダムに凝集し(図4E)、結果として生じた特徴は球状複合体でなく、直径が857±290nmの大きな凝集物であった。また、表1に示したように、AFMによって求められたDNA複合体の寸法の統計解析から、絹糸6マーの複合体と他の試料との間に有意差があることが証明された。
【0045】
(表1)AFMによって求められた組換え絹糸のpDNA複合体(P/N 10)の寸法
値は、平均値±標準偏差、n=30、a, b 同じ上付き符号を共有しない群の間では、p<0.05で統計的有意差が見られた。
【0046】
組換え絹糸およびそのpDNA複合体の水力学的直径をDLSによって測定した(表2および図17)。DNAを含まない絹糸6マーおよびDNAを含む絹糸6マーの平均直径は、それぞれ、570nmおよび約550〜790nmであった。ポリリジンを含有する他の3種類の組換え絹糸は、DNA無しで約210〜270nmの平均直径を示した。ポリリジン配列またはP/N比が増加するにつれて、ポリリジン配列を有する組換え絹糸のDNA複合体の直径は大きくなった。絹糸6マー-30lys(P/N 25)および絹糸6マー-45lys(P/N 10および25)の場合、直径は、小さな複合体と大きな複合体の両方を示す双峰性であった。P/N 50で調製したDNA複合体は大きな沈殿物をもたらし、DLSによって特徴付けることができなかった。
【0047】
(表2)DLSによって求められた組換え絹糸およびその複合体の平均直径
apDNAを含まない組換え絹糸分子
bDLSによる分析には多すぎる沈殿物があった
【0048】
同様に、表3に示したように、組換えRGD-絹糸のDNA複合体の水力学的直径をDLSによって測定した(図4A)。
【0049】
(表3)DLSによって求められた組換え絹糸のDNA複合体の平均直径分布
【0050】
P/N比が増加するにつれて複合体の平均直径は小さくなり、500のP/Nで調製したRS、RSR、SR、S2R、および11RSの平均直径は、それぞれ、32 nm、72 nm、68 nm、59 nm、および66nmであった。P/N 500で調製したRSのDNA複合体はDLSによって最小直径を示し、P/N 500で調製したRSRのDNA複合体はDLSによって最大直径を示した。これらをマイカ上で成型し、AFMによって観察した。DNAを含むRSおよびRSRは球状複合体を形成した(図13Bおよび図13C)。RSおよびRSRのDNA複合体の平均直径は、それぞれ、58±28nmおよび73±12nmであった。AFMによって求められたDNA複合体の寸法の統計解析から、RSとRSRとの間には有意差が無いことが証明された(p=0.12)。
【0051】
pDNAおよび組換え絹糸ポリリジンの複合体の相互作用特性および電解安定性を調べるために、アガロースゲル電気泳動実験を行った。図5Aは、1%アガロースゲルにおける遊離pDNA(レーン1)および組換え絹糸のDNA複合体(レーン2〜5)の移動を示す。DNAと混合した絹糸6マーの移動から、遊離DNAは依然として絹糸6マー分子と共に存在するが、ポリリジン配列を含有する組換え絹糸はウェルの中にバンドを示し、遊離DNAよりゆっくり移動することが証明された。このことから、DNAは組換え絹糸に部分的に結合していおり、電気泳動中にある程度のpDNA放出が起こった可能性があることが分かる。様々なP/N比を有する、DNAおよび絹糸6マー-30lysの混合物をアガロースゲル電気泳動によって分析した(図5B)。2.5〜50のP/N比ではゲル移動の変動はほとんどなかった。このことから、これらのP/N比の間で複合体の安定性は似ていたことが分かる。
【0052】
DNAおよび組換えRGD-絹糸の複合体の相互作用特性および電解安定性を調べるアガロースゲル電気泳動実験も行った。図14Aは、1%アガロースゲルにおける遊離DNAおよび1〜50の様々なP/Nモル比を有するRSRのDNA複合体の移動を示す。P/N 1〜20でRSRとの複合体を形成するDNAは遊離DNAと同じ方向に移動したか、またはウェルから移動しなかったのに対して、P/Nが50を超える複合体は反対方向に移動した。このことから、P/Nが25未満のRSRとのこれらのDNA複合体は負または中性の電荷をもっていたが、P/Nが50を超える複合体は正の電荷をもっていたことが分かる。P/N 500で調製した4種類の組換え絹糸のDNA複合体もアガロースゲル電気泳動によって特徴付けた。5種類全ての試料が正電荷を示した。正電荷の値を測定するために、DNA複合体のゼータ電位を測定した。図14Cは、様々なP/N比を有するRSRのDNA複合体のゼータ電位を示す。ゼータ電位はP/N比と共に増加し、P/N 50で正の値になった。P/N 50および500のゼータ電位は、8.58±5.47 mVおよび22.2±4.03mVであった。
【0053】
特定の態様において、pDNAおよび組換えポリリジン絹糸の複合体を成型絹糸フィルムとして沈着させた。絹糸フィルムを水で洗浄して遊離pDNAを除去した後に、複合体の完全性を評価するために、pDNA複合体を含有する絹糸フィルムの表面をAFMによって調べた。図6は、絹糸6マー-30lysのpDNA複合体を含有する絹糸6マー-30lysフィルムの表面のAFM凹凸像を示す。この粒子はサイズがほぼ同位置であった。pDNA複合体画像はフィルム上で成型する前に取得した(図4C)。これから、フィルム上に成型された後の粒子の完全性が確かめられた。図6から、複合体が個々に絹糸フィルムの表面に固定化されたことは明らかである。図6Bに示したように、pDNA複合体を表面に吸着させた。複合体の高さは約20nmであった。
【0054】
核酸送達のためのカチオン性組換え絹糸との核酸複合体の実現性を評価するために、HEK細胞を用いてインビトロトランスフェクション実験を行った。様々なP/N比を有する様々なDNA複合体のDNAトランスフェクション効率を比較するために、レポーターとしてGFP DNAを用いてHEK細胞をトランスフェクトした。図7は、P/N 2.5(7A)、P/N 5(7B)、P/N 10(7C)、P/N 25(7D)、およびP/N 50(7E)で調製した、絹糸6マー-30lysのpDNA複合体を含有する絹糸フィルム上でインキュベートした細胞の蛍光顕微鏡画像を示す。4つの独立した視野にある蛍光細胞に基づく、様々なP/N比のトランスフェクション効率をまとめた(図7F)。様々なP/N比を用いたトランスフェクション実験から、絹糸6マー-30lys(P/N=10)のpDNA複合体は、様々な複合体の中で最も高いパーセント(14%±3%)のGFP陽性細胞を示した。GFP陽性細胞に基づくトランスフェクション効率は、以下の順序:P/N=10、25、50、5、および2.5で減少した。従って、DNAポリリジン-絹糸複合体に対するさらなる実験はP/N比10で調製した。
【0055】
図16Aは、3つの独立した視野にある蛍光細胞に基づく、P/N比が50〜500の4種類の組換えRGD-絹糸のDNA複合体のトランスフェクション効率を示す。図16Bは、P/N 200で調製した11RSのpDNA複合体を含有する絹糸フィルム上でインキュベートした細胞の蛍光顕微鏡画像を示す。これは、これらの試料の中で最も高いトランスフェクション効率を示した。また、P/N 100または200で調製した試料のpDNA複合体は、様々なP/N比の中で最も高いパーセントのGFP陽性細胞を示した。P/N 200で、11RSのpDNA複合体は、RS、RSR、SR、およびSR2(3±1%、10±2%、2±1%、および13±2%)と比較して高いトランスフェクション効率(24±3%)を示した。P/N 200では、11RSとRSRとの間だけでなく、RSRとRSとの間にも有意差が認められた。従って、P/N 200でのトランスフェクション効率の相対順序は、以下の通り:11RS>S2R=RSR>RS=SRに減少した。このことから、トランスフェクション効率はRGD細胞結合モチーフの数に強く依存したことが分かる。
【0056】
図8は、P/N比10である、絹糸6マー(8A)、絹糸6マー-15lys(8B)、絹糸6マー-30lys(8C)、および絹糸6マー-45lys(8D)のpDNA複合体を含有する絹糸フィルム上でインキュベートした細胞の蛍光顕微鏡画像を示す。図8Eは、前記のようにGFP陽性細胞を計数することによって求められたトランスフェクション効率比を示す。絹糸6マー-30lysのpDNA複合体は4種類の試料の中で最も高いトランスフェクション効率(14%±3%)を示したのに対して、絹糸6マーおよびpDNAの混合物は有効なトランスフェクションを示さなかった(0.4%±0.1%)。トランスフェクション効率の相対順序は以下の通り:絹糸6マー-30lys、絹糸6マー-15lys、絹糸6マー-45lys、および絹糸6マーに減少した。
【0057】
P/N比が10である、絹糸6マー、絹糸6マー-15lys、絹糸6マー-30lys、および絹糸6マー-45lysとのDNA複合体の細胞傷害性をMTTアッセイを用いて測定した。図9は、トランスフェクション実験に使用した濃度(0.76mg/ml)において、絹糸6マー、絹糸6マー-15lys、および絹糸6マー-30lysの複合体がHEK細胞に対して毒性を示さなかったことを示す。絹糸6マー-45lysのDNA複合体は88%±11%の細胞生存率を示した。これは他の組換え絹糸複合体と比較して有意な差があり、かつ低かった。P/N比が500である、RS、RSR、SR、およびS2R のDNA複合体の細胞傷害性もMTTアッセイを用いて測定した。図15は、トランスフェクション実験において使用した最も高い濃度(1.9mg/mL)において、全試料の複合体がHEK細胞に対して細胞傷害性を示さなかったことを示す。
【0058】
本発明の態様は、核酸送達を有する組換え絹糸分子の新規の複合体を提供する。8種類の組換え絹糸をクローニングし、大腸菌から発現させ、精製した。リジン配列を有さない絹糸6マーのDNA複合体はAFM分析に基づいて球状粒子を形成しなかった(図4C)。さらに、絹糸6マー分子と混合した時に、アガロースゲル電気泳動は遊離DNAを示した。他方で、電気泳動実験(図5A)およびAFM画像(図4)によると、ポリリジンを含有する組換え絹糸とのDNAの球状複合体が形成した。このことは、ポリリジン配列が、絹糸分子とDNAとのナノサイズ球状イオン複合体を形成するのに必要であり得ることを示唆している。ポリリジン配列の分子量およびP/N比が増加するにつれて、DNA複合体の直径およびサイズ分布が増加した(表2および図17)。絹糸6マー-lys45またはP/N=25もしくは50で調製した複合体の場合、組換え絹糸の比較的高い正電荷によって、大きくかつ広範囲に分布する複合体が得られた。電気泳動中にDNAの一部が複合体から放出された(図5のレーン3、4、5)。このことは、以前に報告されたように(Blessing et al., 95 P.N.A.S. USA 1427-31(1998); Masotti et al., 19 Nanotech. 55302(2008))、DNAが球状複合体の内部に詰め込まれているが、表面にもある可能性があることを意味している。だが、この問題はさらなる研究によって明らかになるであろう。
【0059】
本発明の別の態様は、核酸送達のための、細胞結合モチーフと複合体を形成した核酸を含有する組換え絹糸を含む組成物を提供する。4種類の組換えRGD-絹糸、RS、RSR、SR、およびS2Rをクローニングし、大腸菌から発現させ、精製した。30個のリジン配列とpDNAを含有する絹糸分子のナノサイズ球状イオン複合体を形成した。平均サイズは、電気泳動実験(図14A)、AFM画像、およびDLS測定(図13)によれば80nm未満であり、例えば、32nm、72nm、68nm、および59nmであった。P/N比が増加すると共に、DNA複合体の直径は小さくなった(図13A)。このことは、複合体のサイズはP/N比によって制御できることを示唆している。また、電気泳動中に複合体からDNAは放出されなかった。このことから、電気泳動中に一部のDNAが複合体から放出された他の実験と比較して、DNAは球状複合体の中に完全に詰め込まれていたことが分かる。
【0060】
表面にプラスミドDNA複合体を含有する絹糸フィルムを調製した(図6A)。フィルム上に沈着させる前の複合体の高さとフィルム上に沈着させた後の複合体の高さの比較(図4Cおよび図6B)から、DNA複合体は半分埋め込まれており、絹糸フィルムの表面に固定化されていることが裏付けられた。これは、HFIPによって表面が蒸発する前に部分的、局所的に可溶化したことに一因がある可能性が高い。さらに、DNA複合体の中の絹糸と絹糸生体材料フィルム表面との間の絹糸-絹糸(タンパク質-タンパク質)疎水性相互作用がDNA複合体の固定化を助ける。
【0061】
HEK細胞に対するGFP遺伝子を含有する複合体を用いたトランスフェクション実験から、P/N 10で調製した絹糸6マー-30lysのDNA複合体はDLSによって直径が380nmであり、絹糸6マーおよびポリリジンブロックコポリマーの最も効率的な複合体であることが明らかになった(図7および図8)。効率のばらつきに関するこれらの知見は、以前に述べられたように粒径と関連しているのかもしれない。Rejman et al., 377 Biochem. J. 159-69(2004); Ross & Hui, 6 Gene Ther. 651-59(1999); Almofti et al., 20 Mol. Membr. Biol. 35-43(2003)。特に、直径が200nm未満の粒子はほぼ例外なく内部に取り込まれているのに対して、直径が500nmの粒子は内部に取り込まれていないことが報告されている。このことは、核酸送達には粒子のサイズが重要であることを示唆している。Rejman et al., 2004; Ross & Hui, 1999; Almofti et al., 2003。理論に拘束されるものではないが、絹糸6マー-45lysのpDNA複合体(P/N 10、590nm)およびP/N>10で調製した複合体(直径が400nmを超える)の直径は細胞に移入するには大きすぎたかもしれない。また、一部の文献において報告されたように、大きなポリリジン分子量およびP/N比による複合体の比較的大きな正電荷が溶解状態で無秩序な凝集物の形成をもたらし、細胞傷害性を誘導して、トランスフェクション効率を低下させたのかもしれない。Ogris et al., 1999; Oupicky et al., 1999; Sato et al., 22 Biomats. 2075-80(2001); Thanou et al., 23 Biomats. 153-59(2002)。この点に関して、絹糸6マー-45lysの大きな正電荷は他の複合体と比較して低い細胞生存率を示し(図9)、トランスフェクション効率も低下させた(図8)。P/N 10で調製した絹糸6マー-30lysのpDNA複合体を含む特定の態様は核酸を送達することができた。
【0062】
GFP遺伝子を含有する絹糸-RGD複合体を用いたHEK細胞へのトランスフェクション実験から、P/N 200で調製したS2RのDNA複合体は正に荷電し(18mVゼータ電位)、DLSにより直径が121nmであり、本研究における最も効率的な組換え絹糸複合体であることが明らかになった(図16)。S2RおよびRSRは様々なP/N比でほぼ同じトランスフェクション効率を示し、有意差は無かった。他方で、RSおよびSRはRGDペプチドを1つしか含まず、S2RおよびRSRと比較して低いトランスフェクション効率を示した。このことは、以下のように2つの重要な話題を示唆している。一方の話題は、トランスフェクション効率がRGD細胞結合モチーフの数に強く依存したことである。他方の話題は、N末端またはC末端にあるRGDモチーフの位置が組換え絹糸の核酸複合体のトランスフェクション効率に影響を及ぼさない可能性があることである。言い換えると、核酸複合体の中にある組換え絹糸分子は、図10に示したように、複合体の表面に存在するDNAおよびRGD残基とランダムに組み合わさると考えられた。従って、複合体の表面にあるRGDペプチドの数は組換え絹糸の中にあるRGD残基の数に比例するはずである。その結果、RGD二量体を含有するRSRおよびS2Rの細胞結合能力およびトランスフェクション効率はRSおよびSRと比較して高くなった。従って、核酸/核酸ベクターとして新規の代替タンパク質を構築するために、他の機能ペプチドをアミノ酸配列の任意の位置に付加することができる。
【0063】
RGD残基は、遺伝子ベクターの細胞結合機能および細胞トランスフェクション効率を向上させるリガンドとして用いられている。特に、いくつかのグループによって、RGD配列を含有するポリマーベース遺伝子ベクターが研究された。Oba, 2006; Kim, 2005; Connelly, 2007; Renigunta, 2006. Sun, Biomats.(2008); Moore, Molecular Pharmaceutics(2008); Oba, Bioconjugate Chem.(2007); Ishikawa, Bioconjugate Chem.(2008); Quinn, Mol. Ther.(2009); Singh, Gene Ther.(2003)。ポリ(エチレンイミン)(PEI)およびRGDペプチドの複合体は、PEI分子のみと比較してHEK細胞に対する高いトランスフェクション効率を示した。しかしながら、PEIおよびRGDペプチドの複合体の細胞傷害性は400μg/mLの使用濃度で約50%であった。Sun, 2008。ポリ(エチレングリコール)(PEG)ベースベクターはHEK細胞に対して細胞傷害性をほとんど示さず、また、PEIと同等のトランスフェクション効率を示す。Moore, 2008。しかしながら、RGDペプチドをプラットフォーム化学合成ポリマーに付加するには多段階の化学反応を必要とする。また、化学合成ポリマーの分子量は分布している。このことは、化学合成ポリマーとDNAとの複合体は不均一であることを示唆している。
【0064】
細胞透過ペプチドおよび細胞膜不安定化ペプチド(CPP)は、細胞脂質二重層を効率的に透過するか、または細胞膜を不安定化する短いペプチドと定義されている。従って、CPPは、新たな非ウイルス核酸ベクターの有用な候補である。CPP内部移行機構は、小胞、クラスリン依存性エンドサイトーシス、およびマクロピノサイトーシスと報告された。Jarver et al., 35 Biochem. Soc. Trans. 770-74(2007); Richard et al., 278 J. Biol. Chem. 585-90(2003); Ferrari et al., 8 Mol. Ther. 284-94(2003); Holm et al., 1 Nat. Protoc. 1001-05(2006); Lundberg & Langel, 12 Intl. J. Pept. Res. Ther. 105-14(2006)。細胞取り込みはまたエンドサイトーシス経路に依存せず、一過的なポア形成によって起こるとも報告されている。Vives et al., 1786 Biochim. Biophys. Acta. 126-38(2008); Deshayes et al., 1667 Biochim. Biophys. Acta. 141-47(2004); Deshayes, 43 Biochem. 1449-57(2004); El-Andaloussi et al., 8 J. Gene. Med. 1262-73(2006); Abes et al., 35 Biochem. Soc. Trans. 53-55(2007)。さらに、CPPは異なるエンドサイトーシス機構を同時に利用することができ、取り込みはさらなる迅速な移行プロセスによって起こることが示唆されている。Duchardt et al., 8 Traffic 848-66(2007)。CPPペプチドをプラットフォーム化学合成ポリマーに付加すると核酸送達システムの効率を向上することができる。しかしながら、非ウイルス核酸送達のためにCPPおよび他の機能配列を組み合わせた組換えタンパク質は無い。
【0065】
本発明は、組換えDNA法および一段階合成である大腸菌系を用いて合成された組換え絹糸を提供する。さらに、合成ポリマーとは対照的に、組換え絹糸タンパク質は分子量の分布を示さない。このことは、タンパク質との均一な核酸複合体を調製するのに役立つ。また、トランスフェクション実験において使用した最も高い濃度(1.9mg/mL)において、組換え絹糸のDNA複合体はHEK細胞に対して細胞傷害性を示さず、PEI(15%〜40%)と比較して同等のトランスフェクション効率(13%±2%)も示した。Fischer et al., 16 Pharm. Res. 1273-79(1999); Ahn et al., 80 J. Controlled Release 273-82(2002); Godbey, Gene Ther.(1999)。
【0066】
さらに、対応するプラスミドが構築されるのであれば、組換え絹糸には、絹糸分子の予想された位置に任意の数の任意のペプチドを付加することができる。この点に関して、この組換え絹糸ベース核酸送達システムは一般的な合成ポリマーベース核酸送達システムより優れている。なぜなら、合成ポリマーベース系では付加ペプチドの分子量が限定されるからである。核酸送達の効率および特異性をさらに向上させるために、本明細書において調製された組換え絹糸は、細胞浸透ペプチドおよび腫瘍ホーミングペプチドなどの多機能ペプチドを用いてさらに改変することができる。Elmquist et al., 269 Exp. Cell Res. 237-44(2001); Rittner et al., 5 Mol. Ther. 104-14(2002); Jarver et al., 35 Biochem. Soc. Trans. 770-74(2007); Makela et al., 80 J. Virol. 80:6603-11(2006); Laakkonen et al., 8 Nat. Med. 751-55(2002); Porkka et al., 99 P.N.A.S. 7444-49(2002); Christian et al., 163 J. Cell Biol. 871-78(2003); Laakkonen et al., 100 P.N.A.S. USA 9381-86(2004); Pilch et al., 103 P.N.A.S. 2800-04(2006)。
【0067】
特に、細胞透過ペプチドとのpDNA複合体の最も高いトランスフェクション効率の1つは、DNA濃度が低く(125ng/mL)、特定の透過ペプチドを含まないPEIのpDNA複合体と比較して約45倍であると報告された。Rittner et al., 2002。従って、トランスフェクション効率および選択性を向上させるアプローチとして、このようなペプチドが付加される。従って、RGDまたはポリリジンを含有するように改変された組換え絹糸は、核酸送達のためのPEGのような新たなプラットフォームポリマーになり得る。
【0068】
化学合成ポリマーベースの非ウイルスDNA送達システムは過去十年間にわたって有効性および生体適合性送達の点で改善されてきた。トランスフェクション効率、DNA保護、細胞結合、およびエンドソーム放出に関して、ポリエチレンイミン(PEI)は多くのインビトロDNA送達例およびインビボDNA送達例における標準となっている。Blessing et al., 95 P.N.A.S. 1427-31(1998); Kataoka et al., 47 Adv. Drug Deliv. Rev. 113-31(2001); Schaffert & Wagner, 15 Gene Ther. 1131-38(2008); Luten et al., 126 J. Control Release 97-110(2008); Feng et al., 50 Biotechnol. Appl. Biochem. 121-32(2008)。HEK細胞に対するPEI/DNA複合体の最も高いトランスフェクション効率の1つは約 75%と報告され、5:1(w/w)のPEI/DNA比の複合体を用いて54時間インキュベーションした後に得られた。Feng et al., 2008。それにもかかわらず、細胞傷害性ならびに特異的な送達性および標的化の点で合成ポリマーベース核酸送達システムを改善することは必要である。Fischer et al., 16 Pharm. Res. 1273-79(1999)。PEIからの細胞生存率は、24時間、0.1mg/mLの濃度で50%未満であると報告されたのに対して(同上)、絹糸6マー-30lysを用いた本発明のバイオ絹糸ベース核酸送達システムは、図9に示したように、48時間、細胞傷害性が無いことが証明された。本研究における最良のトランスフェクション効率(14±3%)はPEIと比較して低かった。Blessing et al., 1998; Kataoka et al., 2001; Schaffert & Wagner, 2008; Luten et al., 2008; Feng et al., 2008; Fischer et al., 1999。恐らく、ウイルス粒径が小さく、正に荷電している絹糸6マー-30lysのpDNA複合体は細胞表面と容易に相互作用し得る。Zauner et al., 1998; Blessing et al., 1998; Kataoka et al., 2001。効果的かつ特異的な送達を向上させるために、本明細書において調製された絹糸およびポリリジンブロックコポリマーは、遺伝子工学を用いて細胞浸透ペプチド、細胞結合ペプチド、および腫瘍ホーミングペプチドなどの機能ペプチドによってさらに改変することができる。Jarver et al., 35 Biochem. Soc'y Trans. 770-74(2007); Rittner et al., 5 Mol Ther. 104-14(2002); Laakkonen et al., 101 P.N.A.S. 9381-86(2004); Laakkonen et al., 1131 Ann. NY Acad. Sci. 37-43(2008)。
【0069】
特に、細胞透過ペプチドとのDNA複合体の最も高いトランスフェクション効率の1つは、DNA濃度が低く(125ng/mL)、特定の透過ペプチドを含まないPEIのDNA複合体と比較して約45倍であると報告された。Rittner et al., 2002。従って、この系は、トランスフェクション効率を向上させるアプローチとして、このようなペプチドを任意に付加することによって改善することができる。それにもかかわらず、ポリリジン配列を含有するように改変された組換え絹糸は、有効で、特異的な、生分解性の、かつ完全に生体に適合する核酸送達システムになる可能性があるが、絹糸ベース送達システムのトランスフェクション効率は他の競合品より低い。
【0070】
さらに、本発明は、絹糸フィルムの表面に固定化された核酸複合体を細胞に直接移入する方法を提供する。これは、ポリマー単層フィルムから核酸を移入する最初の報告である。従って、核酸(例えば、DNA)との絹糸ベース複合体を細胞に移入することができ、絹糸フィルムの表面に吸着させることができた。この新たな核酸送達システムは絹糸フィルムだけではなく、核酸送達のために他の絹糸ベース生体材料にも適用することができる。これらの新規の核酸用バイオ絹糸タンパク質送達システムの設計および用途に融通性があることは多くの核酸送達分野において将来、有用なことを示唆している。
【0071】
カチオン性の組換え絹糸タンパク質には、ポリリジンのみと比較して核酸送達システムとして多くの利点がある。ポリリジンは、核酸送達のためにpDNA複合体を形成し、生分解性、低い細胞傷害性、およびpDNA複合体サイズに関する柔軟性(直径が15nm〜150nm)などの特徴を提供することができる。Zauner et al., 1998。しかしながら、ポリリジンとのpDNA複合体は、pDNAを分解する酵素に対するインビボ安定性を改善する必要がある。同上。さらに、ポリリジンの分子量が不均一なことは、サイズが均一なpDNA複合体の調製における問題となる。対照的に、組換え絹糸タンパク質はpDNA複合体のインビボ安定性を向上することができる。Choi et al., 10 Bioconj. Chem. 62-65(1999); Gottschalk et al., 3 Gene Ther. 448-57(1996)。さらに、本明細書に記載の組換え絹糸ポリリジン系の分子量が均一なことから単分散ポリマー成分が得られる。このために、この系をさらに洗練することによって、望ましいpDNA複合体の管理を改善することができる。さらに、フィルム表面へのpDNA複合体の固定化は細胞内部へのpDNAの取り込みを向上させ、表面を介したトランスフェクションを促進した。Segura et al., 13 Bioconj. Chem. 621-29(2002); Shen et al., 3 Nat. Mats. 569-74(2004); Park et al., 22 Langmuir 8478-84(2006); Jewell & Lynn, 60 Adv. Drug Deliv. Rev. 979-99(2008)。
【0072】
従って、本発明は、生分解性かつ生体適合性の絹糸ベース複合体によって核酸を細胞に移入するための組成物および方法を提供する。ポリリジン配列を含有するように改変された組換え絹糸が調製され、核酸ポリマーとの球状複合体を形成するのに用いられた。表面に核酸複合体を含有する絹糸フィルムも調製され、HEK細胞への、絹糸フィルムの表面に固定化されたDNA複合体の直接的なトランスフェクションも首尾良く行われた。
【0073】
本発明の一部の態様はまた、RGD細胞結合モチーフを含有するように改変された生分解性かつ生体適合性の組換え絹糸を介した、細胞への新規の核酸トランスフェクションを提供する。ポリリジンおよびRGD残基を含有するように改変された組換え絹糸が調製され、pDNAと球状複合体を形成するのに用いられた。HEK細胞へのpDNA複合体のトランスフェクションが首尾良く行われた。HEK細胞における核酸トランスフェクション実験から、DLSにより直径が約100nmであり、ゼータ電位が約10mVであった、P/N 200で調製したS2RのpDNA複合体は、調べられた全ての組換え絹糸の中で最大の効率(13±2%)を有する複合体であることが明らかになった。トランスフェクション効率はRGD細胞結合モチーフの数に強く依存した。さらに、組換え絹糸のN末端またはC末端にあるRGDモチーフの位置はpDNA複合体のトランスフェクション効率に影響を及ぼさなかった。従って、RGDまたはポリリジン残基を含有する組換え絹糸は、核酸送達のために絹糸ベース材料に適用可能なことを証明した。
【0074】
本発明の一部の態様は、CPPを、組換え絹糸-ポリリジンを含有する絹糸ベースカチオン性ブロックコポリマー系に付加することによって、核酸のトランスフェクション効率を向上させる核酸送達ベクターとして新規の方法および組成物を提供する。1つの態様において、使用したCPPはppTG1であった。これは、CPPとのpDNA複合体の高いトランスフェクション効率を示す。Rittner et al., 5 Mol. Ther. 104-14(2002)。しかしながら、組込まれた核酸を核酸分解酵素から保護するために、ppTG1ペプチドとのpDNA複合体のDNアーゼ耐性および安定性は調べられたことがない。恐らく、このペプチドは絹糸配列のような機能配列を含有しないからである。しかしながら、核酸と複合体を形成した、CPP(例えば、ppTG1)を組込んでいる組換え絹糸タンパク質は核酸送達効率が改善しており、DNアーゼに対する安定性および耐性が高い。1つの態様では、HEK細胞およびMDA-MB-435細胞へのインビトロ核酸送達のために、これらの絹糸ベースブロックコポリマーとpDNAとの複合体が調製され、アガロースゲル電気泳動、ゼータ電位メーター、原子間力顕微鏡観察(AFM)、および動的光散乱(DLS)によって特徴付けられた。自己組織化、頑強な機械的特性、および制御可能な分解速度の点から見た絹糸ポリマー特性と、本明細書で報告されるプラスミドDNAとの調整されたイオン複合体化および細胞透過機能との組み合わせから、核酸送達および最適化のための新たなビヒクルファミリーが得られる。
【0075】
特定の態様において、核酸送達のためのCPPとの組換え絹糸タンパク質の新規の複合体が設計され、CPPによってトランスフェクション効率がどのくらい向上するかを調べた。組換え絹糸タンパク質である絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体を大腸菌を用いて調製し、次いで、pDNAと複合体を形成させた(表5)。特徴付けられたpDNA複合体の平均直径は設計されたものと同じであり、文献によれば核酸送達に適している。Yan et al., 276 J. Biol. Chem. 8500-06(2001); Thomas & Smart, 51 J. Pharmacol. Toxicol. Meth. 187-200(2005)。約2〜約5のN/P(すなわち、アミンの数とDNAのリン酸の数との比)で調製したpDNA複合体は有用なトランスフェクション効率を示した。図26に示したように、メタノール処理前およびメタノール処理後のpDNA複合体は、組込まれているpDNAをDNアーゼIから保護することができた。このことは、組換え絹糸タンパク質が保護性であるか、または複合体の外面にある可能性があり、DNアーゼがpDNAに接近しないようにできることを意味する。要約すると、CPPを含有する組換え絹糸のpDNA複合体は生分解性、生体適合性があり、非ウイルス核酸送達担体にとって利点であるDNアーゼ耐性も提供する。
【0076】
絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体は、2種類の試験細胞(HEK細胞およびMDA-MB-435細胞)に対して十分なトランスフェクション効率をもたらすようには見えなかった。しかしながら、図27Bに示したように、絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体は、HEK細胞に対して単量体バージョンより25倍高いトランスフェクション効率を示し、リポフェクタミン2000とほぼ同じレベルの効率を示した。理論に拘束されるものではないが、単量体バージョンに対して、二量体ppTG1配列の付加によって、このようにトランスフェクション効率が向上したことは、このペプチドが細胞進入の点で重要なことを示しているのかもしれない。ppTG1ペプチドは、pDNAに結合し、細胞膜を不安定化する機能を有すると報告された。Rittner et al., 5 Mol. Ther. 104-14(2002)。さらに、インビトロトランスフェクションアッセイでは、ppTG1は、N/P比が低く、低濃度(125ng/mL)であり、ポリエチレンイミンのpDNA複合体と比較して約45倍のトランスフェクション効率を示し、他のCPPとは異なると報告された。同上。液胞プロトンポンプの特異的な阻害剤であるバフィロマイシンAの存在下でのトランスフェクション実験(Sun et al., 29 Biomats.(2008)4356-65(2008))から、ppTG1ペプチドのpDNA複合体は細胞膜を通って、またはエンドサイトーシスを介して細胞に取り込まれる可能性があることが示唆された(Rittner et al., 2002)。さらに、ppTG1の分子モデリングから、構造がαヘリックスの時に、全てのリジンが同じ側に隔離され、このためにヘリックスが両親媒性になり得ることが示唆された。次いで、リジン残基はDNAの負電荷と相互作用することができた。なぜなら、2つのアミン基の間の平均距離はDNA鎖にある2つのリン酸の間の平均距離と類似しているからである。El-Andaloussi et al., 8 J. Gene. Med. 1262-73(2006); Abes et al., 35 Biochem. Soc. Trans. 53-55(2007); Duchardt et al., 8 Traffic 848-66(2007); Rittner et al., 2002。しかしながら、ppTG1に関する以前の研究にもかかわらず、二量体ppTG1の機能は以前に報告されたことがない。組換え絹糸-ポリリジン-ppTG1と複合体を形成した核酸を含む本発明の系では、ポリリジンならびにppTG1配列は核酸と相互作用する可能性があり、核酸複合体は細胞膜を通って細胞に導入することができる。絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体は、ppTG1配列を介して細胞膜を不安定化する推定二次構造を形成し、絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体より有意に高いトランスフェクション効率を示した(図27B)。この場合、ポリリジン配列はppTG1配列に隣接している(図23Aおよび23B)。
【0077】
FTIR-ATR測定に基づいてβシート構造を含有する、メタノール処理したpDNA複合体(図24)は、メタノール処理していない絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体複合体とは異なるトランスフェクション挙動を示した(図28)。この結果から、メタノール処理していない系に対して、メタノール処理した絹糸ベース複合体からpDNAを持続的または一定に放出させる手法が示された。この結果は、メタノール処理によって誘導された絹糸配列のβシート構造が複合体の酵素分解速度を低下させるためである。さらに、メタノール処理したpDNA複合体はα-キモトリプシンによって酵素処理された後に、プロテアーゼXIVによる処理と比較して少量の遊離pDNAを放出した(図26、レーン11、12)。α-キモトリプシンは非結晶性絹糸フィブロンを加水分解するのに対して、プロテアーゼXIVは非結晶性絹糸フィブロンだけでなく、βシート(結晶性)絹糸フィブロンも消化する。Numata et al., 2010; Bowman et al., 1988; Huang et al., 2003。従って、βシート構造内容物などの絹糸配列の二次構造は酵素分解速度が異なるために、これらの複合体からのpDNA放出プロファイルを制御するのに使用することができる。核酸送達用であるが、設計および機能に大きな融通性がある、PEGのようなポリマー。
【0078】
本明細書において提供される方法および組成物はまた、細胞をリプログラミングする目的で核酸を細胞に送達するのに使用することができる。例えば、リプログラミング因子をコードする核酸を細胞に送達して、人工多能性幹(IPS)細胞を作製することができる。本明細書で使用する「リプログラミング」という用語は、高度に分化した体細胞の分化状態を多能性表現型に変えるプロセスを指す。
【0079】
本明細書で使用する「リプログラミング因子」という用語は、例えば、インビトロで、人工多能性幹細胞表現型への細胞リプログラミングを促進する、または人工多能性幹細胞表現型への細胞リプログラミングに寄与する核酸を指す。本明細書に記載の核酸送達法を用いて、リプログラミング因子は細胞に外因的または異所的に添加される。細胞がリプログラミングされる時には、リプログラミング因子は、好ましくは、同じ種に由来するもの、すなわち、ヒト細胞の場合にはヒトリプログラミング因子であるが、必ずしも同じ種に由来するとは限らない。インビトロで体細胞をリプログラミングして多能性にするための関心対象のリプログラミング因子の非限定的な例は、Oct3/4(Pouf51)、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15、Sox18、NANOG、KIf1、Klf2、Klf4、KIf5、c-Myc、1-Myc、n-Myc、およびLIN28、ならびにインビトロでの体細胞リプログラミング法において、これらの1つまたは複数の代わりとなり得る任意の遺伝子/タンパク質または分子である。「インビトロでリプログラミングして多能性状態にする」とは、核もしくは細胞質への導入または細胞融合、例えば、卵母細胞、胚、生殖細胞、もしくは多能性細胞との細胞融合を必要としない、典型的には、これを含まないインビトロリプログラミング法を指すために本明細書において用いられる。
【0080】
多能性幹細胞の誘導を確かめるために、単離されたクローンを幹細胞マーカー発現について試験することができる。このような発現によって、細胞が人工多能性幹細胞と特定される。幹細胞マーカーは、SSEA3、SSEA4、CD9、Nanog、Fbx15、Ecat1、Esg1、Eras、Gdf3、Fgf4、Cripto、Dax1、Zpf296、Slc2a3、Rex1、Utf1、およびNat1を含む非限定的な群より選択することができる。このようなマーカーの発現を検出する方法には、例えば、RT-PCRおよびコードポリペプチドの存在を検出する免疫学的方法が含まれる。
【0081】
単離された細胞の多能性幹細胞特徴は、胚性幹細胞マーカーの発現および3種類の胚葉のそれぞれの細胞に分化する能力を評価する多くの試験のいずれによっても確かめることができる。一例として、ヌードマウスにおけるテラトーマ形成を用いて、単離されたクローンの多能性特徴を評価することができる。細胞をヌードマウスに導入し、その細胞に由来する腫瘍に対して組織学および/または免疫組織化学を行う。さらに、3種類全ての胚葉に由来する細胞を含む腫瘍が成長すると、その細胞が多能性幹細胞であると分かる。
【実施例】
【0082】
実施例1.組換え絹糸-ポリリジン分子の設計およびクローニング
クモ絹糸反復ユニットは、クモであるネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)の引き糸タンパク質MaSp1配列の天然配列(Accession P19837)に由来するコンセンサス反復
に基づいて選択された。この反復の6つの連続コピーを含有する6マーは、以前に公開された手順に従って、制限部位NheIおよびSpeIを有するリンカーによって改変されているpET-30aに、クローニングインサートを導入することによって作り出した。Prince et al., 34 Biochem. 10879-85(1995)。15個のリジン残基をコードする合成オリゴヌクレオチドの配列は以下の通りであった。
【0083】
NheIおよびSpeIの制限部位をイタリック体で示した。Lys-aおよびLys-bは、アニーリングして二本鎖DNAを形成する相補オリゴヌクレオチドである。次いで、新たに形成した二本鎖DNAを連結し、単量体(15リジン)、二量体(30リジン)、および三量体(45リジン)を形成するように多量体化した。DNAリガーゼ(New England Biolabs Inc., Ipswich, MA)によって、ポリリジン配列の二本鎖DNAをpET30-6マーと連結して、pET30-6マー-ポリリジンを作製した。
【0084】
実施例2.組換え絹糸-ポリリジンタンパク質の発現および精製
構築物pET30-6マー(対照)、pET30-6マー-15リジン、pET30-6マー-30リジン、およびpET30-6マー-45リジンを用いて、SlyDタンパク質産生に欠陥のある変異株である大腸菌RY-3041株を形質転換した。タンパク質発現は以前に報告された方法によって行った。Huang et al., 278 J. Biol. Chem. 46117-23(2003); Yan et al., 276 J. Biol. Chem. 8500-06(2001)。簡単に述べると、細胞を、カナマイシン(50μg/ml)を含有するLBブロス中で37℃で培養した。OD600nmが0.6になった時に、0.5mM IPTG(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を添加することによってタンパク質発現を誘導した。約4時間のタンパク質発現の後に、細胞を13,000gの遠心分離によって収集した。細胞ペレットを変性緩衝液(100mM NaH2PO4、10mM Tris HCl、8M尿素、pH8.0)に再懸濁し、12時間攪拌することによって溶解した後に、13,000rcf、4℃で30分間、遠心分離した。変性条件下でNi-NTAアガロース樹脂(Qiagen, Valencia, CA)および20mMイミダゾールを上清に添加することによって(バッチ精製)、タンパク質のHis-タグ精製を行った。カラムをpH6.3の変性緩衝液で洗浄した後に、pH4.5の変性緩衝液(イミダゾールを含まない)によってタンパク質を溶出した。4〜12%プレキャストNuPage Bis-Trisゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を行った。ゲルをコロイダルブルー(Invitrogen)で染色した。精製試料をMilli-Q水に対して大規模に透析した。透析のために、MWCOが3,500のSlide-A-Lyzer Cassettes(Pierce, Rockford, IL)を使用した。透析した試料を1mLのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解した。配列を確認するために、Tufts University Core FacilityにおいてLC/MS/MS分析によって組換えタンパク質をさらに特徴付けた。
【0085】
実施例3.組換え絹糸-ポリリジンと複合体を形成するpDNAの調製および特徴付け
GFP(EGFP、7,650bp)をコードするpDNAをコンピテントDH5α大腸菌(Invitrogen)において増幅し、EndoFree Plasmid Maxi Kits(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて精製した。DNA濃度は260nmにおける吸光度によって求めた。組換え絹糸タンパク質とpDNAの複合体を調製するために、様々なN/P比で、絹糸タンパク質を含有するHFIP溶液(10mg/mL)をpDNA溶液(370μg/mL)と混合した。ここで、P/N比は、組換え絹糸とpDNAのヌクレオチドとのモル比を指す。組換え絹糸およびpDNAの混合物を室温(約20℃)で一晩インキュベートした後に、特徴付けを行った。pDNA複合体を、アガロースゲル電気泳動、動的光散乱(DLS, Brookhaven Instruments Corporation, Holts ville, NY)、および原子間力顕微鏡(AFM, Dimension V, Veeco Instruments Inc., Plainview, NY)によって特徴付けた。アガロースゲル電気泳動のために、10μLの各試料をローディング緩衝液と混合し、臭化エチジウムを含有する1%アガロースゲル上で分析した(TAE緩衝液、100V、60分)。DLSは、532nmレーザーを用いて37℃、散乱角90°で行い、粒径およびその分布は、Dynamic Light Scatteringソフトウェア(Brookhaven Instruments Corp.)を用いて分析した。pDNA絹糸複合体溶液(約70μL)を超純水(450μL)に添加し、次いで、DLS測定のために試料として使用した。AFM観察は、タッピングモードAFMにおいて、ばね定数2.8N/m、長さ200〜250μmのシリコンカンチレバーを用いて室温で空気中で観察した。以前に報告された方法によって、物体の真の寸法を得るために、カンチレバー先端コンボリューション効果(tip-convolution effect)の較正を行った。Numata et al., 6 Macromol. Biosci. 41-50(2006)。
【0086】
実施例4.pDNA複合体を含有するフィルムの調製
絹糸フィブロンを、B.モリ(B.mori)カイコの繭(Tajima Shoji Co., Yokohama, Japan)から抽出し、以前に述べられたように絹糸溶液(5wt%)を調製した。Jin & Kaplan, 424 Nature 1057-61(2003)。絹糸溶液を24マルチウェルプレートおよび96マルチウェルプレートの中で成型し、溶媒を蒸発させた後に絹糸フィルムを得た。その後に、絹糸フィルムをエタノール溶液(70%)で滅菌した。pDNA複合体を含有する絹糸フィルムを調製するために、pDNA絹糸複合体溶液(HFIP/水)を絹糸フィルム上で成型し、溶媒(HFIP/水)を除去するために室温で少なくとも12時間乾燥させた。遊離pDNAを除去するために、絹糸フィルムを超純水(DNアーゼ、RNアーゼフリー、Invitrogen)で洗浄した後に、細胞トランスフェクション実験において使用した。
【0087】
実施例5.細胞培養およびトランスフェクション
HEK細胞(293FT)は組換えタンパク質の発現ツールとして広く役立っており、モデル細胞株として使用した。例えば、Thomas & Smart, 51 J. Pharmacol. Toxicol. Methods 187-200(2005)を参照されたい。DMEM、10%FBS、5%グルタミン、5%NEAAからなる培地を用いて、培養物をコンフルエンスになるまで増殖させた。培養物を、0.25%トリプシン(Invitrogen)を用いて培養基からはがし、次いで、2.5μLリポフェクタミン(Invitrogen)と共に、24マルチウェルプレートに入っているpDNA絹糸複合体がロードされた絹糸フィルム上に5,000個の細胞/cm2の密度で再プレートした。37℃で24時間、細胞をインキュベートした後に、GFPプラスミドトランスフェクションを評価するために、蛍光画像を蛍光顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)によって得た。発現結果(n=4)は、計数した全細胞に対するGFP蛍光陽性細胞のパーセントとして表した。
【0088】
細胞生存率分析のために、HEK細胞(50,000個の細胞/ウェル)を、pDNA複合体を含有する96ウェルプレートに播種し、トランスフェクション実験において使用した培地(100μL)中で48時間培養した。HEK細胞に対するpDNA複合体の細胞傷害性を、標準的な3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(MTT)アッセイ(Promega, Madison, WI)によって製造業者の説明書に従って特徴付けた(n=8)。
【0089】
実施例6.RDGを含む絹糸配列の設計およびクローニング
クモ絹糸反復ユニットは、クモであるネフィラ・クラビペスの引き糸タンパク質MaSp1配列の天然配列(Accession P19837)に由来するコンセンサス反復
に基づいて選択された。この反復の6つの連続コピーおよび30個のリジンを含有する絹糸6マー-30lysを、以前に公開された手順に従って、クローニングインサートをpET-30aに導入することによって作り出した。Prince et al., 1995; Huang et al., 2003。RGD残基をコードする合成オリゴヌクレオチドの配列は以下の通りであった。
NheIおよびSpeIの制限部位をイタリック体で示した。RGD-aおよびRGD-bは、アニーリングして二本鎖DNAを形成する相補オリゴヌクレオチドである。図11に示したように、DNAリガーゼ(New England Biolabs Inc, Ipswich, MA)によって、RGD配列の二本鎖DNAをpET30-6マー-ポリリジンと連結して、5種類のpET30-6マー-ポリリジン-RGDを作製した。
【0090】
実施例7.組換え絹糸-RDGタンパク質の発現および精製
構築物pET30-RGD-6マー-30リジン、pET30-RGD-6マー-30リジン-RGD、pET30-6マー-30リジン-RGD、pET30-6マー-30リジン-2xRGD、およびpET30-11xRGD-6マー-30リジンを用いて、SlyDタンパク質産生に欠陥のある変異株である大腸菌RY-3041株を形質転換した。タンパク質発現は以前に報告された方法によって行った。Huang et al., 278 J. Biol. Chem. 46117-23(2003); Yan et al., 276 J. Biol. Chem. 8500-06(2001)。簡単に述べると、細胞を、カナマイシン(50μg/ml)を含有するLBブロス中で37℃で培養した。OD600nmが0.6になった時に、1.0mM IPTG(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を添加することによってタンパク質発現を誘導した。約4時間のタンパク質発現の後に、細胞を13,000gの遠心分離によって収集した。細胞ペレットを変性緩衝液(100mM NaH2PO4、10mM Tris HCl、8M尿素、pH8.0)に再懸濁し、12時間攪拌することによって溶解した後に、13,000g、4℃で30分間、遠心分離した。変性条件下でNi-NTAアガロース樹脂(Qiagen, Valencia, CA)および20mMイミダゾールを上清に添加することによって(バッチ精製)、タンパク質のHis-タグ精製を行った。カラムをpH6.3の変性緩衝液で洗浄した後に、pH4.5の変性緩衝液(イミダゾールを含まない)によってタンパク質を溶出した。4%〜12%プレキャストNuPage Bis-Trisゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を行った。ゲルをコロイダルブルー(Invitrogen, Carlsbad, CA)で染色した。精製試料をMilli-Q水に対して大規模に透析した。透析のために、MWCOが100〜500DaのSpectra/Por Biotech Cellulose Ester Dialysis Membranes(Spectrum Laboratories Inc, Rancho Dominguez, CA)を使用した。配列および分子量を確かめるために、Tufts University Core FacilityにおいてMALDI-TOFによって組換えタンパク質をさらに特徴付けた。
【0091】
実施例8.組換え絹糸-RGDと複合体を形成するGFPをコードするpDNAの調製および特徴付け
GFP(EGFP、7,650bp)をコードするプラスミドDNA(pDNA)をコンピテントDH5α大腸菌(Invitrogen)において増幅し、EndoFree Plasmid Maxi Kits(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて精製した。DNA濃度は260nmの吸光度によって求めた。組換え絹糸タンパク質とpDNAとの複合体を調製するために、絹糸タンパク質(10mg/mL)を含有する溶液を様々なP/N比でpDNA溶液(370μg/mL)と混合した。ここで、P/N比は、組換え絹糸ポリマーとpDNAのヌクレオチドとの重量比を指す。組換え絹糸およびpDNAの混合物を室温(約20℃)で一晩インキュベートした後に、特徴付けを行った。pDNA複合体を、アガロースゲル電気泳動、ゼータ電位メーター(Zetasizer Nano-ZS, Malvern Instruments Ltd, Worcestershire, UK)、DLS(Brookhaven Instruments Corporation, Holtsville, NY)、およびAFM(Dimension V, Veeco Instruments Inc., Plainview, NY)によって特徴付けた。アガロースゲル電気泳動のために、10μLの各試料をローディング緩衝液と混合し、臭化エチジウムを含有する1%アガロースゲル上で分析した(TAE緩衝液、100V、60分)。試料のゼータ電位およびゼータ偏差(zeta deviation)をゼータ電位メーターによって3回測定した。Dispersion Technology Software バージョン5.03(Malvern Instruments Ltd)を用いて、平均データを得た。DLSは532nmレーザーを用いて、37℃、散乱角90°で行い、粒径およびその分布は、Dynamic Light Scatteringソフトウェア(Brookhaven Instruments Corporation)を用いて分析した。pDNA複合体溶液(約70μL)を超純水(450 μL, Invitrogen)に添加し、次いで、DLS測定のために試料として使用した。pDNA複合体溶液を、切断されたマイカ上で成型し、タッピングモードAFMにおいて、ばね定数2.8N/m、長さ200〜250μmのシリコンカンチレバーを用いて室温で空気中で観察した。以前に報告された方法によって、物体の真の寸法を得るために、カンチレバー先端コンボリューション効果の較正を行った。Numata et al., 6 Macromol. Biosci. 41-50(2006)。
【0092】
実施例9.細胞培養、トランスフェクション、および生存率
HEK細胞(293FT)は組換えタンパク質の発現ツールとして広く役立っており、モデル細胞株として使用した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、10%FBS、5%グルタミン、5%非必須アミノ酸(NEAA)からなる培地を用いて、培養物をコンフルエンスになるまで増殖させた。培養物を、0.25%トリプシン(Invitrogen)を用いて培養基からはがし、次いで、96マルチウェルプレートに入れてフィルム上に1500個の細胞/ウェルの密度で再プレートした。pDNA(1.2μg)および組換え絹糸(適量)の複合体を各ウェルに添加した。細胞を37℃で6時間インキュベートした後に、培地を、pDNA複合体を含まない培地と交換した。さらに48時間インキュベートした後に、GFPプラスミドトランスフェクションを評価するために、蛍光顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)によって蛍光画像を得た。発現結果(n=3)は、計数した全細胞に対するGFP蛍光陽性細胞のパーセントとして表した。細胞生存率については、HEK細胞(50,000個の細胞/ウェル)を、pDNA複合体を含有する96ウェルプレートに播種し、トランスフェクション実験において使用した培地(100μL)中で48時間培養した。HEK細胞に対するpDNA複合体の細胞傷害性を、標準的な3-(4,5-ジメチルチアゾール2-イル)2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(MTT)アッセイ(Promega, Madison, WI)によって製造業者の説明書に従って特徴付けた(n=8)。
【0093】
実施例10.組換え絹糸-RGDと複合体を形成するルシフェラーゼコードpDNAの調製および特徴付け
ホタルルシフェラーゼをコードするpDNA(7041bp)をコンピテントDH5α大腸菌(Invitrogen)において増幅し、EndoFree Plasmid Maxi Kits(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて精製した。DNA濃度は260nmにおける吸光度によって求めた。組換え絹糸タンパク質とpDNAの複合体を調製するために、様々なN/P比(0.1〜10)で、絹糸タンパク質(0.1mg/mL)を含有する溶液をpDNA溶液(370μg/mL)と混合した。ここで、N/P比は、アミンの数とpDNAのリン酸の数との比を指す。複合体のサイズを均一にするために、組換え絹糸およびpDNAの混合物を室温(約20℃)で一晩インキュベートした後に、特徴付けを行った。pDNA複合体は、アガロースゲル電気泳動、ゼータナノサイザー(zeta nanosizer)(Zetasizer Nano-ZS, Malvern Instruments Ltd, Worcestershire, UK)、DLS(Brookhaven Instruments Corp., Holtsville, NY)、およびAFM(Dimension V, Veeco Instruments Inc., Plainview, NY)によって特徴付けた。アガロースゲル電気泳動のために、10μLの各試料をローディング緩衝液と混合し、臭化エチジウムを含有する1%アガロースゲル上で分析した(TAE緩衝液、100V、60分)。試料のゼータ電位およびゼータ偏差をゼータナノサイザーによって3回測定した。Dispersion Technology Softwareバージョン 5.03(Malvern Instruments Ltd)を用いて、平均データを得た。DLSは633nm He-Neレーザーを用いて、25℃、散乱角173°で行った。粒径および分布(PDI)は、Dispersion Technology Softwareバージョン5.03(Malvern Instruments Ltd)を用いて求めた。pDNA複合体溶液を、切断されたマイカ上で成型し、タッピングモードAFMにおいて、ばね定数2.8N/m、長さ200〜250μmのシリコンカンチレバーを用いて室温で空気中で観察した。以前に報告された方法によって、物体の真の寸法を得るために、カンチレバー先端コンボリューション効果の較正を行った。Numata et al., 2006。
【0094】
実施例11.細胞培養、トランスフェクション、および生存率
αvβ3インテグリンおよびαvβ5インテグリンを発現すると報告されているHeLa細胞、ならびに遺伝子発現ツールとして広く用いられており、αvβ3インテグリンが無く、αvβ5インテグリンが少ないと報告されているヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞(293FT)をモデル細胞株として使用した。Oba et al., 2007; Hu et al., 270 J. Biol. Chem. 26232-38(1995); Simon et al., 272 J. Biol. Chem. 29380-89(1997); Thomas & Smart, 2005。DMEM、10%FBS、5%グルタミン、5%NEAAからなる培地を用いて、培養物をコンフルエンスになるまで増殖させた。培養物を、0.25%トリプシン(Invitrogen)を用いて培養基からはがし、次いで、24マルチウェルプレートに入れてフィルム上に7000個の細胞/ウェルの密度で再プレートした。HeLa細胞用およびHEK細胞用のトランスフェクション培地は、10%FBSを含有するDMEMであった。pDNA(1.2μg)および組換え絹糸(適量)の複合体を各ウェルに添加した。細胞を37℃で6時間インキュベートした後に、培地を、pDNA複合体を含まない培地と交換した。さらに48時間インキュベートした後に、ルシフェラーゼ遺伝子発現を定量評価するために、ルシフェラーゼアッセイ(Promega, Madison, WI)を製造業者のプロトコールに従って行った(n=4)。簡単に述べると、トランスフェクトされた細胞をPBS(Invitrogen)で洗浄し、Luciferase Cell Culture Lysis Regent(Promega)によって溶解した。溶解産物をLuciferase Assay SubstrateおよびLuciferase Assay Buffer(Promega)と混合し、次いで、ルシフェラーゼ遺伝子発現を、ルミネセンスマイクロプレートリーダー(Spectra MAX Gemini EM, Molecular Devices Corporation, Sunnyvale, CA)を用いて光ルミネセンスの強度(相対光単位)に基づいて評価した。各ウェルにおけるタンパク質の量を、BCAタンパク質アッセイ(Pierce Biotech., Rockford, IL)を用いて求め、次いで、相対光単位/タンパク質重量(RLU/mg)を得た。本実験では、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を正の対照ベクターとして使用した。細胞生存率については、HEK細胞(5000個の細胞/ウェル)を、pDNA複合体を含有する96ウェルプレートに播種し、トランスフェクション実験において使用した培地(100μL)中で48時間培養した。HEK細胞に対するpDNA複合体の細胞傷害性を、標準的な3-(4,5-ジメチルチアゾール2-イル)2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(MTT)アッセイ(Promega)によって製造業者の説明書に従って特徴付けた(n=8)。
【0095】
統計解析
シリコンウェーハ上にある粒径を、Research Nanoscopeソフトウェアバージョン7.30(Veeco)を用いてAFMによって測定した。30の測定値の平均値を使用した。AFMによる粒径、細胞トランスフェクション効率、および細胞生存率の統計差を独立t検定と両側分布によって求め、p<0.05で統計的に有意な差があるとみなした。AFM、細胞トランスフェクション効率、および細胞生存率実験のデータを平均±標準偏差として表した。
【0096】
実施例12.共焦点レーザー走査型顕微鏡観察(CLSM)
pDNAを、Label IT Nucleic Acid Labeling Kit(Mirus, Madison, WI)を用いて製造業者の手順に従ってCy5で標識した。HeLa細胞をGlass Bottom Culture Dishes(MatTeK Corporation, Ashland, MA)に播種し、2mLのDMEM中で一晩インキュベートした。標識pDNA(2.4μg)と11RSタンパク質との複合体(N/P2)をウェルに添加した。6時間インキュベートした後に、培地を新鮮な培地と交換した。さらに48時間インキュベートした後に、細胞をPBSで2回洗浄し、300nM 4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI, Invitrogen)PBS溶液と10分間インキュベートした。Cy5標識されたpDNA複合体およびDAPI染色された核の細胞内分布を、CLSM(Leica Microsystems)によって488nm(Arレーザー)、633nm(He-Neレーザー)、および710nm(Mai Taiレーザー)の励起波長で観察した。
【0097】
実施例13.組換え絹糸-RGDと複合体を形成したルシフェラーゼコードdRNAを含有する核酸送達システムの結果および考察ならびに細胞トランスフェクションのためのその使用
ポリリジンおよびRGDを含む絹糸タンパク質の発現および精製:
ポリリジンおよびRGD細胞結合モチーフ(RS、RSR、SR、S2R、および11RS)を用いて作製された5種類のクモ絹糸変異体のアミノ酸配列を、図11および図18に示したように作製した。組換え絹糸タンパク質の収率は精製および透析の後に約10mg/Lであった。Ni-NTAクロマトグラフィーによる精製前および精製後のタンパク質をSDS-PAGEによって分析し、純度を評価するためにコロイダルブルーで染色した。RS、RSR、SR、S2R、および11RSはそれぞれ、約33kDa、32kDa、30kDa、30kDa、および35kDaに対応するバンドを示し(図12)、それぞれ、26,068.1Da、26,584.4Da、25,565.9Da、26,082.1Da、31,669.86Daの理論分子量(モノアイソトピック質量)より高かった。典型的に、SDS-PAGEゲルは純度を評価するのに有用であるが、絹糸ベースポリマーが疎水性であるために、このタンパク質の本当のサイズを特徴付けることができない。Prince et al., 1995。しかしながら、MALDI-TOFの結果は、それぞれ、26,068.1Da、26,584.4Da、25,565.9Da、26,082.1Da、31,669.86Daを示し、バイオタンパク質が予想された組換え絹糸タンパク質であることを裏付けた。組換えタンパク質は10.6の理論pIを示し、室温で水溶性であった(5.0mg/mL)。
【0098】
pDNA複合体の特徴付け:
ルシフェラーゼをコードするDNAと5種類の組換え絹糸タンパク質(RS、RSR、SR、S2R、および11RS)のDNA-タンパク質複合体形成を、AFM、DLS、およびゼータ電位メーターによって特徴付けた。
【0099】
組換え絹糸-ポリリジン-RGDのDNA複合体の水力学的直径をDLSによって測定した(表4)。
【0100】
(表4)DLSによって求められた組換え絹糸-RGDのpDNA複合体の平均直径(nm)および分布(PDI)
aN/P比は、アミンの数とpDNAのリン酸との比を指す。
bPDIは双峰分布のために正確に求められなかった。
【0101】
N/P比が増加するにつれて、複合体の平均直径は小さくなった。しかしながら、N/P10などの高いN/P比で調製したpDNA複合体は、これらの直径の双峰分布を示した。N/P2で調製した組換え絹糸-RGDのpDNA複合体をマイカ上で成型し、AFMによって観察した(図19)。図19Aに示したように、複合体は全て球状複合体を形成した。N/P2の11RSのpDNA複合体の平均直径および高さがAFM観察によって求められ、それぞれ、223±32nmおよび30±8nmであった(n=30)。DLSおよびAFMよって求められた寸法は、pDNA複合体粒子の体積を考慮すると妥当な一致を示した。
【0102】
DNAおよび組換え絹糸-ポリリジン-RGDの複合体の相互作用特性および電解安定性を調べるために、アガロースゲル電気泳動実験を行った。図20Aは、1%アガロースゲルにおける遊離DNAおよび0.1〜10の様々なN/P比を有する11RSのDNA複合体の移動を示す。N/P0.1および1の11RSとのDNA複合体は遊離pDNAと同じ方向に移動したのに対して、N/Pが2を超えるDNA複合体は反対方向に移動したか、またはウェルから移動しなかった。これらの結果から、N/Pが1未満の11RSとのDNA複合体は負に荷電していたのに対して、N/Pが2を超えるDNA複合体は正に荷電していたことが分かる。N/P2で調製した他の4種類の組換え絹糸-ポリリジン-RGD(RS、RSR、SR、S2R)のDNA複合体もアガロースゲル電気泳動によって特徴付けられた。全ての試料が正電荷を示した(図20B)。正電荷の値を測定するために、pDNA複合体のゼータ電位を求めた。図20Cは、様々なN/P比を有する11RSのDNA複合体のゼータ電位を示す。ゼータ電位はN/P比と共に増加し、N/P2でプラスになった。N/P2で調製した11RSのpDNA複合体のゼータ電位は0.1±4.5mVであった。
【0103】
N/P比が10を超える、RS、RSR、SR、S2R、および11RSそれぞれとのDNA複合体の細胞傷害性をMTTアッセイを用いて測定した。図20は、トランスフェクション実験において使用した濃度より高い濃度(1.9mg/mL)において、全試料の複合体がHEK細胞に対して細胞傷害性が無かったことを示す。
【0104】
HeLa細胞およびHFK細胞に対するDNAトランスフェクション:
インテグリンを介したエンドサイトーシスによる核酸送達のためにRGDペプチドを含有するカチオン性組換え絹糸とのpDNA複合体の実現性を評価するために、HeLa細胞およびHEK細胞を用いてインビトロトランスフェクション実験を行った。様々なN/P比で様々な組換え絹糸(11RS、RS、RSR、SR、およびS2R)と複合体を形成したDNAのpDNAトランスフェクション効率を比較するために、HeLa細胞にレポーター遺伝子としてルシフェラーゼpDNAを移入した。図21Aは、ルシフェラーゼアッセイに基づいた、HeLa細胞に対する、N/P比が0.1〜10の11RSのpDNA複合体のトランスフェクション効率を示す(n=4)。N/P2で調製した11RSのpDNA複合体は、様々なN/P比の中で最も高いトランスフェクション効率を示し、この後に、効力は急に減少した。これは、恐らく、細胞と相互作用する組換え絹糸が過剰になったためである。図21Bおよび図21Cは、HeLa細胞およびHEK細胞に対する、N/P2の様々な組換え絹糸(11RS、RS、RSR、SR、およびS2R)と複合体を形成したpDNAならびに絹糸6マー-30lysブロックコポリマー(図を参照されたい)および対照であるリポフェクタミン2000のトランスフェクション効率を示す。RGD配列を含有する組換え絹糸と比較して、絹糸6マー-30lysブロックコポリマーはRGD配列を含有せず、HeLa細胞およびHEK細胞に対して実質的なトランスフェクションを示さなかった。N/P2でのトランスフェクション効率の相対順序は以下の通りに減少した:11RS>RSR≒S2R>RS≒SR。さらに、11RSのpDNA複合体は、N/P2で1つまたは2つのRGD配列を含有する他の組換え絹糸のpDNA複合体と比較してHeLa細胞に対して有意に高いトランスフェクション効率を示した(図21B)。他方で、11RSのpDNA複合体は、RSRおよびSR2と比較してHEK細胞に対して有意に高いトランスフェクション効率を示さなかった(図21C)。
【0105】
Cy5標識pDNAとの11RSの複合体およびDAPI染色された核の細胞内分布をCLSMによって調べた。図22は、pDNA複合体とインキュベートしたHeLa細胞の典型的なCLSM画像を示す。Cy5で標識されたpDNA(赤色)は細胞膜の近くに、ならびに核の周囲に分布していた(青色)。このことから、pDNAは、11RS組換えタンパク質を介して核の近くに導入されたことが分かる。
【0106】
pDNA核酸送達のために、細胞結合モチーフを含有する組換え絹糸分子の核酸複合体を設計した。細胞結合ドメインの位置および含有量が複合体の核酸送達にどのように影響を及ぼすのか調べた。5種類の組換え絹糸であるRS、RSR、SR、S2R、および11RSをクローニングし、大腸菌から発現させ、精製した。30個のリジンを含有する絹糸分子の球状ナノサイズイオン複合体を調製し、次いで、pDNAと複合体を形成した(図19)。サイズが均一なpDNA複合体を得るために、pDNA複合体を24時間インキュベートした後に、pDNA複合体の特徴付けおよびトランスフェクション実験を行った。なぜなら、調製直後のpDNA複合体は双峰性のサイズ分布を示し、トランスフェクション効率がほとんど無いからである。N/P2の、RS、RSR、SR、S2R、および11RSのpDNA複合体の平均直径は、DLS測定によれば、それぞれ、382nm、315nm、565nm、207nm、および186nmであった(表4)。N/P比が増加すると共に、pDNA複合体の平均直径は減少した(表4)。このことは、複合体のサイズがN/P比によって制御可能なことを示唆している。また、電気泳動中に複合体からpDNAは放出されなかった(図20Aおよび図20B)。このことから、pDNAは球状複合体の中に完全に詰め込まれていたことが分かる。
【0107】
様々なN/P比で様々な組換え絹糸と複合体を形成したDNAを用いたHeLa細胞およびHEK細胞へのトランスフェクション実験から、N/P2で調製した11RSのpDNA複合体はわずかに正に荷電し(0.1±4.5mV)、直径が186nmであり、本明細書において調製された他の組換え絹糸複合体より効率的であることが明らかになった(図21)。N/P10で調製した11RSのpDNA複合体は、表4に列挙したように、恐らく、双峰性のサイズ分布のために、N/P5およびN/P2と比較してトランスフェクション効率が低かった。S2RおよびRSRのDNA複合体は組換え絹糸配列の様々な位置に2つのRGD配列を含有し、HeLa細胞に対してほぼ同じトランスフェクション効率を示した。RSおよびSRのDNA複合体はRGD配列を1つしか含有せず、S2RおよびRSRと比較してわずかに低いトランスフェクション効率を示した。これらの結果は、N末端またはC末端にあるRGDモチーフの位置が、組換え絹糸ブロックコポリマーとのpDNA複合体のトランスフェクション効率に影響を及ぼすようには見えなかったことを示唆している。言い換えると、pDNA複合体の中にある組換え絹糸分子は、図10に示したように、複合体の表面に存在するpDNAおよびRGD配列とランダムに組み合わさると考えられた。理論に拘束されるものではないが、さらなる新規のタンパク質ベクターを構築するために、他の機能ペプチドも送達システムの配列の様々な位置に付加することができる。
【0108】
RGD配列はαvβ3インテグリンおよびαvβ5インテグリンを選択的に認識し、結合するので、核酸ベクターの細胞結合機能および細胞トランスフェクション効率を向上させるリガンドとして用いられている。αvβ3インテグリンおよびαvβ5インテグリンはHeLa細胞において発現することが報告されている。Oba et al., 2007; Kim et al., 2005; Connelly et al., 2007; Renigunta et al., 2006; Sun et al., 2008; Moore et al., 2008; Ishikawa et al., 2008; Quinn et al., 2009; Singh et al., 2003。理論に拘束されるものではないが、pDNA複合体のトランスフェクション効率は細胞の種類にも依存することがある。HEK細胞の場合、トランスフェクションは、DNA複合体の種類に関係なく(例えば、以前に報告されたような、リポフェクタミン(商標)2000トランスフェクション試薬対ポリ(エチレングリコール)-ポリリジンブロックコポリマー。Oba et al., 2007)、HeLa細胞より簡単に起こることがある。従って、RGD配列の効果をより良く求めるために、様々な核酸ベクターのトランスフェクション効率を同じ細胞株において比較しなければならない。
【0109】
11RGD配列を組換え絹糸に付加すると(11RS)、HeLa細胞へのDNAのトランスフェクション効率が有意に向上したのに対して、RGD配列がより少ない他の組換え絹糸は、HeLa細胞へのトランスフェクション効率が有意に向上しなかった(図21B)。他方で、11RGD配列を有する組換え絹糸(11RS)は、2個のRGD配列を有する組換え絹糸(RSRおよびSR2)と比較してHEK細胞へのトランスフェクション効率を有意に向上しなかった(図21C)。従って、組換え絹糸の中にある11RGD配列は、RGD-インテグリンを介した、RGDと複合体を形成したDNAのトランスフェクションを誘導するように見えたが、他のRGD配列、二量体RGD配列、および単量体RGD配列はRGD-インテグリンを介したトランスフェクションを誘導しなかった。さらに、Cy5標識pDNA複合体とインキュベートしたHeLa細胞のCLSM観察から、pDNAは11RS組換え絹糸タンパク質と共に核の近くに送達されたことが分かった(図22)。
【0110】
要約すると、これらの結果から、インテグリンを介したエンドサイトーシスによって組換え絹糸タンパク質である11RSと共にpDNAを核に導入できることが分かった。11RGD配列は、インテグリンを介したトランスフェクションに十分なように見えた。図20に示したように、pDNAとポリリジン配列とのイオン相互作用の強度を考慮すると、DNA複合体が細胞内にある場合でも、イオン相互作用はpDNA複合体を維持するのに十分な強さがあるように見えた。従って、組換え絹糸タンパク質がリソソームのタンパク質分解活性によって部分的に分解された後に、pDNAを複合体から放出することができる。
【0111】
PEIおよびRGDペプチドの複合体が調べられ、PEI分子のみと比較してHEK細胞に対する高いトランスフェクション効率を示した。PEIおよびRGDペプチドの複合体の細胞傷害性は400μg/mLの濃度で約50%であった。Sun et al., 2008。ポリ(エチレングリコール)(PEG)に基づくベクターはHEK細胞に対して細胞傷害性がほとんど無く、PEIと同等のトランスフェクション効率も示した。Moore et al., 2008。RGDを送達ポリマー化学合成プラットフォームに付加するには、収率が約57%の多段階工程が必要とされることが見出されている。Oba et al., 2007。本発明の態様では、組換え絹糸を一段階合成である遺伝的技法を用いて合成し、結果として単分散ポリマー鎖を得た。
【0112】
トランスフェクション実験において使用した最も高い濃度(1.9mg/mL)の組換え絹糸からのpDNA複合体はHEK細胞に対して細胞傷害性を示さず、11RGD配列によるインテグリンを介したトランスフェクションも示した。さらに、任意の数のペプチドを選択された位置および数で絹糸担体分子に付加するように、組換え絹糸を設計することができる。この点に関して、この組換え絹糸ベース核酸送達システムは、一般的なポリマーベース核酸送達システムに対して利益と選択肢を提供する。核酸送達の効率および特異性をさらに向上させるために、本明細書において調製された組換え絹糸は、細胞浸透ペプチドおよび腫瘍ホーミングペプチドなどの多機能ペプチドを用いてさらに改変することができる。特に、細胞透過ペプチドとのpDNA複合体の最も高いトランスフェクション効率の1つは、DNA濃度が低く(125ng/mL)、特定の透過ペプチドを有さないPEIのpDNA複合体と比較して約45倍であると報告された。Rittner et al., 2002。従って、ポリリジンが装填された複合体およびRGDなどの細胞標的化ドメインを含有するように改変された組換え絹糸は、非ウイルス核酸送達用であるが、設計および機能に大きな融通性がある、PEGのような新たなプラットフォームポリマーである。
【0113】
実施例14.細胞膜不安定化ペプチドを含む絹糸ベース核酸担体
ポリリジンおよびppTG1を含有する絹糸配列の設計およびクローニング:
クモ絹糸反復ユニットは、クモであるネフィラ・クラビペスの引き糸タンパク質MaSp1配列の天然配列(Accession P19837)に由来するコンセンサス反復
に基づいて選択された。この反復の6つの連続コピーおよび30個のリジンを含有する絹糸6マー-30lysを、以前に公開された手順に従って、クローニングインサートをpET-30aに導入することによって作り出した。Numata et al., 30 Biomats. 5775-84(2009); Ferrari et al., 8 Mol. Ther. 284-94(2003); Rabotyagova et al., 10 Macromol. Biosci. 49-59(2010)。ppTG1残基をコードする合成オリゴヌクレオチドの配列は以下の通りであった。
SpeIの制限部位をイタリック体で示した。ppTG1-aおよびppTG1-bは、アニーリングして二本鎖DNAを形成する相補オリゴヌクレオチドである。図23Bに示したように、DNAリガーゼ(New England Biolabs Inc, Ipswich, MA)によって、ppTG1配列の二本鎖DNAをpET30-絹糸6マー-30lysと連結して、pET30-絹糸6マー-30lys-ppTG1を作製した。
【0114】
ポリリジンおよびppTG1を含む絹糸タンパク質の発現および精製:
構築物pET30-絹糸6マー-30lys-ppTG1単量体およびpET30-絹糸6マー-30lys-ppTG1二量体を用いて大腸菌RY-3041株を形質転換し、以前に報告された方法によって、これらのタンパク質の発現および精製を行った。Numata et al., 2009; Numata et al., 6 Macromol. Biosci. 41-50(2006); Arai et al., 91 J. Appl. Polym. Sci. 2383-90(2004)。4%〜12%プレキャストNuPage Bis-Trisゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を行った。ゲルをコロイダルブルー(Invitrogen, Carlsbad, CA)で染色した。精製試料をMilli-Q水に対して大規模に透析した。透析のために、MWCOが100〜500DaのSpectra/Por Biotech Cellulose Ester Dialysis Membranes(Spectrum Laboratories Inc, Rancho Dominguez, CA)を使用した。配列および分子量を確かめるために、Tufts University Core Facilityにおいてマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析によって組換えタンパク質をさらに特徴付けた。
【0115】
ポリリジンおよびppTG1を含有する組換え絹糸のDNA複合体の調製および特徴付け:
Green Fluorescence Protein(GFP、7650bp)またはホタルルシフェラーゼ(Luc、7041bp)をコードする2種類のpDNAをコンピテントDH5α大腸菌(Invitrogen)において増幅し、EndoFree Plasmid Maxi Kits(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて精製した。DNA濃度は260nmにおける吸光度によって求めた。組換え絹糸タンパク質とpDNAの複合体を調製するために、様々なN/P比で、絹糸タンパク質を含有する溶液(0.1mg/mL)をpDNA溶液(370μg/mL)と混合した。ここで、N/P比は、アミンの数とpDNAのリン酸の数との比を指す。組換え絹糸およびpDNAの混合物を室温(約20℃)で一晩インキュベートした後に、特徴付けを行った。さらに多くのβシート構造を誘導するために、pDNA複合体を遠心分離によって収集し、上清を除去し、次いで、pDNA複合体を50%メタノール溶液中で24時間インキュベートした後に、メタノール処理したpDNA複合体を得た。pDNA複合体を、ゼータ電位(Zetasizer Nano-ZS, Malvern Instruments Ltd, Worcestershire, UK)、AFM(Dimension V, Veeco Instruments Inc, Plainview, NY)、および多重反射水平MIRacle ATRアタッチメント(Ge結晶を使用する, Pike Tech, Madison WI)を備えるFTIR-ATR(JASCO FT/IR-6200)によって特徴付けた。pDNA複合体溶液(約70μL)を超純水(450μL, Invitrogen)に添加し、次いで、ゼータ電位およびサイズ測定のために試料として使用した。ゼータ電位メーターによって、試料のゼータ電位およびゼータ偏差を3回測定し、平均データを、Dispersion Technology Softwareバージョン5.03(Malvern Instruments Ltd)を用いて得た。pDNA複合体溶液を、切断されたマイカ上で成型し、タッピングモードAFMにおいて、ばね定数2.8N/m、長さ200〜250μmのシリコンカンチレバーを用いて室温で空気中で観察した。以前に報告された方法によって、物体の真の寸法を得るために、カンチレバー先端コンボリューション効果の較正を行った。Li et al., 24 Biomats. 357-65(2003)。
【0116】
DNアーゼ耐性:
pDNA複合体を、1単位のDNアーゼI(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を含有するPBS 100μLと37℃で1時間インキュベートした。20℃で20μLの0.5M EDTAを添加することによって、消化反応を止めた。pDNA複合体を、プロテアーゼXIVまたはα-キモトリプシン(150μg/mL)でも37℃で2時間処理した。分解産物のアガロースゲル電気泳動のために、20μLの各試料をローディング緩衝液と混合し、臭化エチジウムを含有する1%アガロースゲル上で分析した(TAE緩衝液、100V、60分)。
【0117】
細胞培養、トランスフェクション、および生存率:
組換えタンパク質用の発現ツールとして広く用いられているヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞(293FT)をモデル細胞株として使用した。Ross & Hui, 6 Gene Ther. 651-59(1999)。HEK細胞と比較するために、MDA-MB-435黒色腫細胞株も使用した。培養物を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、10%FBS、5%グルタミン、5%非必須アミノ酸(NEAA)からなる培地を用いてコンフルエンスになるまで増殖させた。培養物を、0.25%トリプシン(Invitrogen)を用いて培養基からはがし、次いで、24マルチウェルプレートに入れて70,000個の細胞/ウェルの密度で再プレートした。pDNA(1.2μg)および組換え絹糸(適量)の複合体を各ウェルに添加した。細胞を37℃で6時間インキュベートした後に、培地を、pDNA複合体を含まない培地と交換した。さらに72時間インキュベートした後に、GFPプラスミドトランスフェクションを評価するために、蛍光画像を蛍光顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)によって得た。ルシフェラーゼ遺伝子発現を定量評価するために、ルシフェラーゼアッセイ(Promega, Madison, WI)を行った(n=4)。各ウェルにおけるタンパク質の量を、BCAタンパク質アッセイ(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)を用いて求め、次いで、相対光単位(アウトプット)/タンパク質重量(RLU/mg)を得た。リポフェクタミン2000(Invitrogen)を正の対照ベクターとして使用した。細胞生存率については、HEK細胞(30,000個の細胞/ウェル)を、pDNA複合体を含有する96ウェルプレートに播種し、トランスフェクション実験において使用した培地(100μL)中で48時間培養した。HEK細胞に対するpDNA複合体の細胞傷害性を、標準的な3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム(MTS)アッセイ(Promega, Madison, WI)によって製造業者の説明書に従って特徴付けた(n=8)。
【0118】
統計解析:
マイカ基板上にある粒径を、Research Nanoscopeソフトウェアバージョン7.30(Veeco Instruments Inc)を用いてAFMによって測定した。30の測定値の平均値を使用した。AFMによる粒径、細胞トランスフェクション効率、および細胞生存率の統計差を独立t検定と両側分布によって求め、p<0.05で統計的に有意な差があるとみなした。AFM、細胞トランスフェクション効率、および細胞生存率実験のデータを平均±標準偏差として表した。
【0119】
組換え絹糸タンパク質の調製:
ポリリジンおよびppTG1配列を含有する組換え絹糸タンパク質を大腸菌において発現させ、Ni-NTAクロマトグラフィーを用いて精製した。ポリリジンおよび細胞膜不安定化ペプチド(ppTG1)を用いて作製したクモ絹糸変異体のドメイン構造およびアミノ酸配列を図23Aおよび図23Bに示した。精製および透析の後に、組換え絹糸タンパク質の収率は約0.7mg/Lであった。Ni-NTAクロマトグラフィーおよび透析による精製の後にタンパク質をSDS-PAGEによって分析し、純度を評価するためにコロイダルブルーで染色した。絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体は、それぞれ、約33kDaおよび34kDaの分子量に対応するメジャーバンドを示し(図23C)、それぞれ、27,602.29Daおよび30,067.87Daの理論分子量(モノアイソトピック質量)より大きかった。典型的に、SDS-PAGEゲルは純度を評価するのに有用であるが、絹糸ベースポリマーが疎水性であるために、このタンパク質の本当のサイズを特徴付けることができない。Numata et al., 30 Biomats. 5775-84(2009); Prince et al., 34 Biochem. 10879-85(1995)。しかしながら、MALDI-TOF質量分析からの結果は、それぞれ、27,602.29Daおよび30,067.87Daを示した。このことから、このバイオタンパク質は、予想された組換えタンパク質であることが裏付けられた。絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体は、それぞれ、10.70および10.75の理論pIを示し、室温で水溶性であった(約2.0mg/mL)。
【0120】
pDNA複合体の特徴付け
ルシフェラーゼをコードするpDNAおよび組換え絹糸タンパク質である絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体とのイオン複合体形成を、様々なN/P比(アミンの数とpDNAのリン酸の数の比)で、AFM、DLS、およびゼータ電位メーターによって特徴付けた。
【0121】
組換え絹糸のpDNA複合体の水力学的直径およびゼータ電位をゼータナノサイザー(zeta-nanosizer)によって測定した(表5)。
【0122】
(表5)組換え絹糸タンパク質のpDNA複合体の平均直径、その分布(PDI)、およびゼータ電位
αSL-単量体:絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体、SL-二量体:絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体。
βPDIは双峰分布のために正確に求められなかった。
【0123】
濃度が0.1mg/mL であり、pDNAを含まない絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体の平均直径は、それぞれ、169nmおよび163nmであった。N/P比が増加するにつれて複合体の平均直径は小さくなり、N/P5で調製したpDNA複合体の直径は双峰性の分布を示した。N/P比が増加するにつれて、pDNA複合体のゼータ電位はわずかに増加した。絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体のゼータ電位が低いために、絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体のpDNA複合体のゼータ電位は絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体と比較して低かった。平均直径およびゼータ電位に基づいて、N/P2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体とのpDNA複合体はインビトロトランスフェクションにより適していた。N/P2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体とのpDNA複合体の平均直径およびゼータ電位は、それぞれ、108nmおよび99nmならびに-37.5±7.1mVおよび-26.2±6.3mVであった。絹糸ドメインのβシートへのタンパク質移行を誘導するために、ppTG1単量体および二量体を含有する組換え絹糸タンパク質のpDNA複合体(N/P2)を、24時間、メタノール処理した。結果から、メタノール処理後に、両複合体の寸法およびPDIはわずかに増加するが、メタノール処理後にゼータ電位は同じままであったことが証明された(表5)。メタノール処理前およびメタノール処理後の絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体もFTIR-ATRによって特徴付けられた。図24に示したように、メタノール処理後にアミドI領域における1625cm-1のピークが存在する。このことから、pDNA複合体における組換え絹糸タンパク質にβシート構造(結晶化)があることが分かる。Almofti et al., 20 Mol. Membr. Biol. 35-43(2003)。
【0124】
N/P2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のDNA複合体をマイカ上で成型し、AFMによって特徴付けた。図25に示したように、N/P 2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のDNA複合体は均一な球状複合体を形成した。AFM観察に基づいて、N/P2でppTG1二量体を含有するこの組換え絹糸DNA複合体は、平均直径が185±43nm であり、高さが3.6±1.1nmであった(n=30)。DLSおよびAFMによって求められた寸法は、DNA複合体粒子の体積を考慮して妥当な一致を示した。
【0125】
N/P比2の絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体とのpDNA複合体の細胞傷害性を標準的なMTSアッセイによって求めた。約100μg/mLの濃度の絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体および二量体のpDNA複合体は、それぞれ、75±3%および69±8%の細胞生存率を示した。
【0126】
DNアーゼ耐性および核酸放出挙動:
図26に示したように、DNアーゼに対する、組換え絹糸タンパク質である絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体と共に組込まれたpDNAの安定性を、DNアーゼI処理およびアガロースゲル電気泳動を用いて特徴付けた。全試料の結果を、遊離pDNAのみを含有する試料の結果と比較した(図26、レーン1)。遊離pDNAの場合、1時間のDNアーゼI酵素処理によって遊離pDNAが迅速に分解されたのに対して(図26、レーン2)、2時間のプロテアーゼXIVおよびα-キモトリプシンによる分解は明らかでなかった(図26、レーン3および4)。絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体の場合、DNアーゼI処理後、ウェルの中にpDNAが依然としてあった(図26、レーン5)。DNアーゼI処理に続いて、プロテアーゼXIVによる酵素処理後に、絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体の中のpDNAは複合体から放出された(図26、レーン6)。絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体の場合、絹糸タンパク質を消化する加水分解酵素であるα-キモトリプシンおよびプロテアーゼXIV(Numata et al., 31 Biomats. 2926-33(2010); Almofti et al., 20 Mol. Membr. Biol. 35-43(2003); Bowman et al., 85 P.N.A.S. 7972-76(1988))も複合体からpDNAを放出した(図26、レーン7および8)。メタノール処理したpDNA複合体も、1時間のDNアーゼI処理から、組込まれているpDNAを保護した(図26、レーン9)。α-キモトリプシンによる酵素処理後にメタノール処理pDNA複合体から放出されるpDNAは、プロテアーゼXIVによる処理と比較して少なかった(図26、レーン11および12)。恐らく、このプロテアーゼに対する結晶化絹糸の感受性が、タンパク質を含有する非結晶化(βシートを含有しない)絹糸より小さいからである。Numata et al., 2010; Bowman et al., 1988; Huang et al., 278 J. Biol. Chem. 46117-23(2003)。
【0127】
細胞に対する核酸トランスフェクション:
核酸送達のためのppTG1細胞膜不安定化ペプチドを含有するカチオン性組換え絹糸と複合体を形成したpDNAの実現性を評価するために、HEK細胞およびMDA-MB-435細胞を用いてインビトロトランスフェクション実験を行った。pDNA複合体の最も効率的なN/P比を求めるために、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼpDNAを有する絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体を介して、HEK細胞をトランスフェクトした。図27Aは、ルシフェラーゼアッセイに基づいた、HEK細胞に対する、N/P比が0.1〜5の絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体のトランスフェクション効率を示す(n=4)。N/P2で調製した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体は様々なN/P比の中で最も高いトランスフェクション効率を示し、この後に、効力は急に減少した。これは、恐らく、細胞およびpDNAと相互作用する組換え絹糸が過剰になったためである。図27Bは、対照としてトランスフェクション試薬であるリポフェクタミン2000と比較した、HEK細胞およびMDA-MB-435細胞に対する、ppTG1単量体を含有する組換え絹糸タンパク質のpDNA複合体およびppTG1二量体を含有する組換え絹糸タンパク質のpDNA複合体(N/P2)のトランスフェクション効率を示す。絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体はHEK細胞に対してリポフェクタミン2000と同じトランスフェクション効率を示し、両細胞に対して、N/P2の絹糸-ポリリジン-ppTG1単量体と比較して有意に高いトランスフェクション効率も示した。図27Cおよび図27Dに示したように、HEK細胞およびMDA-MB-435細胞に対してGFPレポーター遺伝子を用いたトランスフェクション実験も行った。このことから、pDNA複合体のトランスフェクションおよび細胞内にあるこれらの分解産物は細胞形態に大きな影響を及ぼさなかった。
【0128】
図28に示したように、メタノール処理前およびメタノール処理後の絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のpDNA複合体(N/P2)を用いた144時間以内のインビトロトランスフェクション挙動もルシフェラーゼアッセイによって特徴付けた。メタノール処理した絹糸-ポリリジン-ppTG1二量体のトランスフェクション効率はメタノール処理していない同じ複合体より低かったが、メタノール処理したpDNA複合体は、少なくとも144時間(6日間)にわたってゆっくりとした、かつ一定したpDNA放出を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正に荷電したR基を有する複数のアミノ酸を含む組換え絹糸タンパク質反復ユニット;および
イオン相互作用を介して組換え絹糸タンパク質と複合体を形成する核酸
を含む、生体材料核酸複合体。
【請求項2】
正に荷電したR基を有するアミノ酸がリジンまたはアルギニンである、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項3】
正に荷電したR基を有する複数のアミノ酸がポリリジンである、請求項2記載の生体材料核酸複合体。
【請求項4】
生体材料核酸複合体が球形である、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項5】
生体材料核酸複合体の組換え絹糸タンパク質が少なくとも部分的にβシート構造に自己組織化する、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項6】
生体材料核酸複合体の組換え絹糸タンパク質がβシート構造を含有しない、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項7】
組換え絹糸タンパク質が1つまたは複数の細胞結合モチーフをさらに含む、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項8】
細胞結合モチーフが1つまたは複数のRGD残基を含む、請求項7記載の生体材料核酸複合体。
【請求項9】
組換え絹糸タンパク質が1つまたは複数の細胞透過ペプチドおよび/または細胞膜不安定化ペプチド(CPP)をさらに含む、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項10】
CPPが1つまたは複数のppTG1配列を含む、請求項9記載の生体材料核酸複合体。
【請求項11】
組換え絹糸タンパク質が、ウイルスのシグナルペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、金属結合ドメイン、細胞標的化ペプチド、薬物結合ペプチド、細胞活性を変える機能ドメイン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の機能ペプチドドメインをさらに含む、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項12】
核酸が、DNA、cDNA、DNAベクターまたはDNAプラスミド、RNAベクターまたはRNAプラスミド、dsRNA、siRNA、shRNA、saRNA、mRNA、miRNA、プレmiRNA、リボザイム、アンチセンスRNA、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項13】
核酸と複合体を形成する組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含み、該コポリマーが絹糸コンセンサス配列の反復ユニットおよびポリ(L-リジン)ドメインを含む、絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項14】
核酸が、DNA、cDNA、DNAベクターまたはDNAプラスミド、RNAベクターまたはRNAプラスミド、dsRNA、siRNA、shRNA、saRNA、mRNA、miRNA、プレmiRNA、リボザイム、アンチセンスRNA、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項15】
絹糸コンセンサス配列が、
の配列を含有し、ポリ(L-リジン)ドメインが1つまたは複数の15 lysを含有し、核酸がDNAである、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項16】
組換え絹糸タンパク質とDNAのヌクレオチドとモル比(P/N)が約2.5〜約50である、請求項15記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項17】
P/Nが約10〜約25である、請求項16の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項18】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが6マーの絹糸コンセンサス残基および30lysのポリ(L-リジン)ドメインであり、P/Nが10である、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項19】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが1つまたは複数のRGDドメインをさらに含む、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項20】
アミンの数とDNAのリン酸の数の比(N/P)が約2〜約10である、請求項19記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項21】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および11RGDのRGDドメインであり、N/Pが2である、請求項20記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項22】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが1つまたは複数のppTG1ドメインをさらに含む、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項23】
アミンの数とDNAのリン酸の数の比(N/P)が約2〜約10である、請求項22記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項24】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および二量体ppTG1であり、N/Pが2である、請求項23記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項25】
複合体が球形であり、平均サイズが約50nm〜約400nmの直径である、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項26】
組換え絹糸タンパク質がβシート構造を含有する、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項27】
組換え絹糸タンパク質がβシート構造を含有しない、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項28】
複合体が中性または正に荷電している、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項29】
複合体が負に荷電している、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項30】
複合体が、複合体を含有する絹糸フィルムの表面に固定化されている、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項31】
核酸が、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼをコードする核酸を含む、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項32】
細胞をトランスフェクトする方法であって、細胞と、核酸と複合体を形成した組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む絹糸ベース核酸送達システムを接触させる工程を含み、コポリマーが絹糸コンセンサス配列の反復ユニットおよびポリ(L-リジン)ドメインを含む、前記方法。
【請求項33】
絹糸ベース核酸送達システムが、P/N 10でDNAと複合体を形成した、
の配列を有する6マーの絹糸コンセンサス配列および30lysのポリ(L-リジン)ドメインを含有する組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが1つまたは複数の細胞結合モチーフをさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項35】
細胞トランスフェクションが細胞結合モチーフの1つによって標的化される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
細胞結合モチーフが1つまたは複数のRGD残基を含む、請求項34記載の方法。
【請求項37】
絹糸ベース核酸送達システムが、N/P 2でDNAと複合体を形成した、
の配列を有する6マーの絹糸コンセンサス配列、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および11RGDのRGDドメインを含有する組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが1つまたは複数のCPPをさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項39】
CPPが1つまたは複数のppTG1残基を含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
絹糸ベース核酸送達システムが、N/P 2でDNAと複合体を形成した、
の配列を有する6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および二量体ppTG1を含有する組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが、細胞透過ペプチド、ウイルスのシグナルペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、金属結合ドメイン、細胞標的化ペプチド、薬物結合ペプチド、細胞活性を変える機能ドメイン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される機能ペプチドドメインをさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項42】
接触させる工程の前に、組換え絹糸生体高分子の二次構造を移行させる工程をさらに含み、複合体からの核酸の放出によって特徴付けられるトランスフェクション挙動が組換え絹糸コポリマーの二次構造によって制御される、請求項32記載の方法。
【請求項43】
正に荷電したR基を有する複数のアミノ酸を含む組換え絹糸タンパク質反復ユニットおよび1つまたは複数の機能ペプチドドメイン;ならびに
イオン相互作用を介して組換え絹糸タンパク質と複合体を形成する核酸
を含む、生体材料核酸複合体。
【請求項44】
機能ペプチドドメインが1つまたは複数の細胞結合モチーフを含む、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項45】
細胞結合モチーフが1つまたは複数のRGD残基を含む、請求項44記載の生体材料核酸複合体。
【請求項46】
機能ペプチドドメインが1つまたは複数の細胞透過ペプチドおよび/または細胞膜不安定化ペプチド(CPP)を含む、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項47】
CPPが1つまたは複数のppTG1配列を含む、請求項46記載の生体材料核酸複合体。
【請求項48】
機能ペプチドドメインが、ウイルスのシグナルペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、金属結合ドメイン、細胞標的化ペプチド、薬物結合ペプチド、細胞活性を変える機能ドメイン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項49】
正に荷電したR基を有するアミノ酸がリジンまたはアルギニンである、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項50】
正に荷電したR基を有する複数のアミノ酸がポリリジンである、請求項43記載の生体材料核酸複合体
【請求項51】
生体材料核酸複合体が球形である、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項52】
生体材料核酸複合体の組換え絹糸タンパク質が少なくとも部分的にβシート構造に自己組織化する、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項53】
生体材料核酸複合体の組換え絹糸タンパク質がβシート構造を含有しない、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項54】
核酸が、DNA、cDNA、DNAベクターまたはDNAプラスミド、RNAベクターまたはRNAプラスミド、dsRNA、siRNA、shRNA、saRNA、mRNA、miRNA、プレmiRNA、リボザイム、アンチセンスRNA、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項43〜53のいずれか一項記載の生体材料核酸複合体。
【請求項55】
核酸と複合体を形成した組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含み、コポリマーが絹糸コンセンサス配列の反復ユニット、ポリ(L-リジン)ドメイン、および1つまたは複数の細胞結合ドメインを含む、絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項56】
細胞結合モチーフが1つまたは複数のRGD残基を含む、請求項55記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項57】
核酸と複合体を形成した組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含み、コポリマーが絹糸コンセンサス配列の反復ユニット、ポリ(L-リジン)ドメイン、ならびに1つまたは複数の細胞透過ペプチドおよび/または細胞膜不安定化ペプチド(CPP)を含む、絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項58】
CPPが1つまたは複数のppTG1残基を含む、請求項57記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項59】
核酸が、DNA、cDNA、DNAベクターまたはDNAプラスミド、RNAベクターまたはRNAプラスミド、dsRNA、siRNA、shRNA、saRNA、mRNA、miRNA、プレmiRNA、リボザイム、アンチセンスRNA、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項55〜58のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項60】
絹糸コンセンサス配列が
の配列を含有し、ポリ(L-リジン)ドメインが1つまたは複数の15lysを含有し、核酸がDNAである、請求項55〜58のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項61】
アミンの数とDNAのリン酸の数の比(N/P)が約2〜約10である、請求項60記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項62】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが、6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および11RGDのRGDドメインであり、N/Pが2である、請求項60記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項63】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが、6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および二量体ppTG1であり、N/Pが2である、請求項60記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項64】
組換え絹糸タンパク質がβシート構造を含有する、請求項55〜63のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項65】
組換え絹糸タンパク質がβシート構造を含有しない、請求項55〜63のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項66】
複合体が球形であり、平均サイズが約50nm〜約400nmの直径である、請求項55〜65のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項67】
複合体が中性または正に荷電している、請求項55〜66のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項68】
複合体が負に荷電している、請求項55〜66のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項69】
複合体が、複合体を含有する絹糸フィルムの表面に固定化されている、請求項55〜68のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項70】
核酸が、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼをコードする核酸を含む、請求項55〜69のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項71】
細胞をトランスフェクトする方法であって、細胞と、核酸と複合体を形成した組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む絹糸ベース核酸送達システムを接触させる工程を含み、コポリマーが、絹糸コンセンサス配列の反復ユニット、ポリ(L-リジン)ドメイン、および1つまたは複数の機能ペプチドドメインを含む、前記方法。
【請求項72】
機能ペプチドドメインが1つまたは複数の細胞結合モチーフを含み、細胞トランスフェクションが細胞結合モチーフの1つによって標的化される、請求項71記載の方法。
【請求項73】
細胞結合モチーフがRGD残基を含む、請求項72記載の方法。
【請求項74】
絹糸ベース核酸送達システムが、N/P 2でDNAと複合体を形成した、配列
を有する6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および11RGDのRGDドメインを含有する組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む、請求項73記載の方法。
【請求項75】
機能ペプチドドメインが1つまたは複数のCPPを含む、請求項71記載の方法。
【請求項76】
CPPが1つまたは複数のppTG1残基を含む、請求項75記載の方法。
【請求項77】
N/P 2でDNAと複合体を形成した、
の配列を有する6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および二量体ppTG1を含有する組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む、請求項76記載の方法。
【請求項78】
機能ペプチドドメインが、細胞透過ペプチド、ウイルスのシグナルペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、金属結合ドメイン、細胞標的化ペプチド、薬物結合ペプチド、細胞活性を変える機能ドメイン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項71記載の方法。
【請求項79】
接触させる工程の前に、組換え絹糸生体高分子の二次構造を移行させる工程をさらに含み、複合体からの核酸の放出によって特徴付けられるトランスフェクション挙動が組換え絹糸コポリマーの二次構造によって制御される、請求項71〜78のいずれか一項記載の方法。
【請求項1】
正に荷電したR基を有する複数のアミノ酸を含む組換え絹糸タンパク質反復ユニット;および
イオン相互作用を介して組換え絹糸タンパク質と複合体を形成する核酸
を含む、生体材料核酸複合体。
【請求項2】
正に荷電したR基を有するアミノ酸がリジンまたはアルギニンである、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項3】
正に荷電したR基を有する複数のアミノ酸がポリリジンである、請求項2記載の生体材料核酸複合体。
【請求項4】
生体材料核酸複合体が球形である、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項5】
生体材料核酸複合体の組換え絹糸タンパク質が少なくとも部分的にβシート構造に自己組織化する、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項6】
生体材料核酸複合体の組換え絹糸タンパク質がβシート構造を含有しない、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項7】
組換え絹糸タンパク質が1つまたは複数の細胞結合モチーフをさらに含む、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項8】
細胞結合モチーフが1つまたは複数のRGD残基を含む、請求項7記載の生体材料核酸複合体。
【請求項9】
組換え絹糸タンパク質が1つまたは複数の細胞透過ペプチドおよび/または細胞膜不安定化ペプチド(CPP)をさらに含む、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項10】
CPPが1つまたは複数のppTG1配列を含む、請求項9記載の生体材料核酸複合体。
【請求項11】
組換え絹糸タンパク質が、ウイルスのシグナルペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、金属結合ドメイン、細胞標的化ペプチド、薬物結合ペプチド、細胞活性を変える機能ドメイン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の機能ペプチドドメインをさらに含む、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項12】
核酸が、DNA、cDNA、DNAベクターまたはDNAプラスミド、RNAベクターまたはRNAプラスミド、dsRNA、siRNA、shRNA、saRNA、mRNA、miRNA、プレmiRNA、リボザイム、アンチセンスRNA、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の生体材料核酸複合体。
【請求項13】
核酸と複合体を形成する組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含み、該コポリマーが絹糸コンセンサス配列の反復ユニットおよびポリ(L-リジン)ドメインを含む、絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項14】
核酸が、DNA、cDNA、DNAベクターまたはDNAプラスミド、RNAベクターまたはRNAプラスミド、dsRNA、siRNA、shRNA、saRNA、mRNA、miRNA、プレmiRNA、リボザイム、アンチセンスRNA、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項15】
絹糸コンセンサス配列が、
の配列を含有し、ポリ(L-リジン)ドメインが1つまたは複数の15 lysを含有し、核酸がDNAである、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項16】
組換え絹糸タンパク質とDNAのヌクレオチドとモル比(P/N)が約2.5〜約50である、請求項15記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項17】
P/Nが約10〜約25である、請求項16の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項18】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが6マーの絹糸コンセンサス残基および30lysのポリ(L-リジン)ドメインであり、P/Nが10である、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項19】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが1つまたは複数のRGDドメインをさらに含む、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項20】
アミンの数とDNAのリン酸の数の比(N/P)が約2〜約10である、請求項19記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項21】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および11RGDのRGDドメインであり、N/Pが2である、請求項20記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項22】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが1つまたは複数のppTG1ドメインをさらに含む、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項23】
アミンの数とDNAのリン酸の数の比(N/P)が約2〜約10である、請求項22記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項24】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および二量体ppTG1であり、N/Pが2である、請求項23記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項25】
複合体が球形であり、平均サイズが約50nm〜約400nmの直径である、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項26】
組換え絹糸タンパク質がβシート構造を含有する、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項27】
組換え絹糸タンパク質がβシート構造を含有しない、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項28】
複合体が中性または正に荷電している、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項29】
複合体が負に荷電している、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項30】
複合体が、複合体を含有する絹糸フィルムの表面に固定化されている、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項31】
核酸が、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼをコードする核酸を含む、請求項13記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項32】
細胞をトランスフェクトする方法であって、細胞と、核酸と複合体を形成した組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む絹糸ベース核酸送達システムを接触させる工程を含み、コポリマーが絹糸コンセンサス配列の反復ユニットおよびポリ(L-リジン)ドメインを含む、前記方法。
【請求項33】
絹糸ベース核酸送達システムが、P/N 10でDNAと複合体を形成した、
の配列を有する6マーの絹糸コンセンサス配列および30lysのポリ(L-リジン)ドメインを含有する組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが1つまたは複数の細胞結合モチーフをさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項35】
細胞トランスフェクションが細胞結合モチーフの1つによって標的化される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
細胞結合モチーフが1つまたは複数のRGD残基を含む、請求項34記載の方法。
【請求項37】
絹糸ベース核酸送達システムが、N/P 2でDNAと複合体を形成した、
の配列を有する6マーの絹糸コンセンサス配列、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および11RGDのRGDドメインを含有する組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが1つまたは複数のCPPをさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項39】
CPPが1つまたは複数のppTG1残基を含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
絹糸ベース核酸送達システムが、N/P 2でDNAと複合体を形成した、
の配列を有する6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および二量体ppTG1を含有する組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが、細胞透過ペプチド、ウイルスのシグナルペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、金属結合ドメイン、細胞標的化ペプチド、薬物結合ペプチド、細胞活性を変える機能ドメイン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される機能ペプチドドメインをさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項42】
接触させる工程の前に、組換え絹糸生体高分子の二次構造を移行させる工程をさらに含み、複合体からの核酸の放出によって特徴付けられるトランスフェクション挙動が組換え絹糸コポリマーの二次構造によって制御される、請求項32記載の方法。
【請求項43】
正に荷電したR基を有する複数のアミノ酸を含む組換え絹糸タンパク質反復ユニットおよび1つまたは複数の機能ペプチドドメイン;ならびに
イオン相互作用を介して組換え絹糸タンパク質と複合体を形成する核酸
を含む、生体材料核酸複合体。
【請求項44】
機能ペプチドドメインが1つまたは複数の細胞結合モチーフを含む、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項45】
細胞結合モチーフが1つまたは複数のRGD残基を含む、請求項44記載の生体材料核酸複合体。
【請求項46】
機能ペプチドドメインが1つまたは複数の細胞透過ペプチドおよび/または細胞膜不安定化ペプチド(CPP)を含む、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項47】
CPPが1つまたは複数のppTG1配列を含む、請求項46記載の生体材料核酸複合体。
【請求項48】
機能ペプチドドメインが、ウイルスのシグナルペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、金属結合ドメイン、細胞標的化ペプチド、薬物結合ペプチド、細胞活性を変える機能ドメイン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項49】
正に荷電したR基を有するアミノ酸がリジンまたはアルギニンである、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項50】
正に荷電したR基を有する複数のアミノ酸がポリリジンである、請求項43記載の生体材料核酸複合体
【請求項51】
生体材料核酸複合体が球形である、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項52】
生体材料核酸複合体の組換え絹糸タンパク質が少なくとも部分的にβシート構造に自己組織化する、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項53】
生体材料核酸複合体の組換え絹糸タンパク質がβシート構造を含有しない、請求項43記載の生体材料核酸複合体。
【請求項54】
核酸が、DNA、cDNA、DNAベクターまたはDNAプラスミド、RNAベクターまたはRNAプラスミド、dsRNA、siRNA、shRNA、saRNA、mRNA、miRNA、プレmiRNA、リボザイム、アンチセンスRNA、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項43〜53のいずれか一項記載の生体材料核酸複合体。
【請求項55】
核酸と複合体を形成した組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含み、コポリマーが絹糸コンセンサス配列の反復ユニット、ポリ(L-リジン)ドメイン、および1つまたは複数の細胞結合ドメインを含む、絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項56】
細胞結合モチーフが1つまたは複数のRGD残基を含む、請求項55記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項57】
核酸と複合体を形成した組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含み、コポリマーが絹糸コンセンサス配列の反復ユニット、ポリ(L-リジン)ドメイン、ならびに1つまたは複数の細胞透過ペプチドおよび/または細胞膜不安定化ペプチド(CPP)を含む、絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項58】
CPPが1つまたは複数のppTG1残基を含む、請求項57記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項59】
核酸が、DNA、cDNA、DNAベクターまたはDNAプラスミド、RNAベクターまたはRNAプラスミド、dsRNA、siRNA、shRNA、saRNA、mRNA、miRNA、プレmiRNA、リボザイム、アンチセンスRNA、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項55〜58のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項60】
絹糸コンセンサス配列が
の配列を含有し、ポリ(L-リジン)ドメインが1つまたは複数の15lysを含有し、核酸がDNAである、請求項55〜58のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項61】
アミンの数とDNAのリン酸の数の比(N/P)が約2〜約10である、請求項60記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項62】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが、6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および11RGDのRGDドメインであり、N/Pが2である、請求項60記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項63】
組換え絹糸ベースブロックコポリマーが、6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および二量体ppTG1であり、N/Pが2である、請求項60記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項64】
組換え絹糸タンパク質がβシート構造を含有する、請求項55〜63のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項65】
組換え絹糸タンパク質がβシート構造を含有しない、請求項55〜63のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項66】
複合体が球形であり、平均サイズが約50nm〜約400nmの直径である、請求項55〜65のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項67】
複合体が中性または正に荷電している、請求項55〜66のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項68】
複合体が負に荷電している、請求項55〜66のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項69】
複合体が、複合体を含有する絹糸フィルムの表面に固定化されている、請求項55〜68のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項70】
核酸が、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼをコードする核酸を含む、請求項55〜69のいずれか一項記載の絹糸ベース核酸送達システム。
【請求項71】
細胞をトランスフェクトする方法であって、細胞と、核酸と複合体を形成した組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む絹糸ベース核酸送達システムを接触させる工程を含み、コポリマーが、絹糸コンセンサス配列の反復ユニット、ポリ(L-リジン)ドメイン、および1つまたは複数の機能ペプチドドメインを含む、前記方法。
【請求項72】
機能ペプチドドメインが1つまたは複数の細胞結合モチーフを含み、細胞トランスフェクションが細胞結合モチーフの1つによって標的化される、請求項71記載の方法。
【請求項73】
細胞結合モチーフがRGD残基を含む、請求項72記載の方法。
【請求項74】
絹糸ベース核酸送達システムが、N/P 2でDNAと複合体を形成した、配列
を有する6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および11RGDのRGDドメインを含有する組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む、請求項73記載の方法。
【請求項75】
機能ペプチドドメインが1つまたは複数のCPPを含む、請求項71記載の方法。
【請求項76】
CPPが1つまたは複数のppTG1残基を含む、請求項75記載の方法。
【請求項77】
N/P 2でDNAと複合体を形成した、
の配列を有する6マーの絹糸コンセンサス残基、30lysのポリ(L-リジン)ドメイン、および二量体ppTG1を含有する組換え絹糸ベースブロックコポリマーを含む、請求項76記載の方法。
【請求項78】
機能ペプチドドメインが、細胞透過ペプチド、ウイルスのシグナルペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、金属結合ドメイン、細胞標的化ペプチド、薬物結合ペプチド、細胞活性を変える機能ドメイン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項71記載の方法。
【請求項79】
接触させる工程の前に、組換え絹糸生体高分子の二次構造を移行させる工程をさらに含み、複合体からの核酸の放出によって特徴付けられるトランスフェクション挙動が組換え絹糸コポリマーの二次構造によって制御される、請求項71〜78のいずれか一項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2012−532614(P2012−532614A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519790(P2012−519790)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/041615
【国際公開番号】WO2011/006133
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(510300430)タフツ ユニバーシティー/トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/041615
【国際公開番号】WO2011/006133
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(510300430)タフツ ユニバーシティー/トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (12)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]